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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100120
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】分散剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/42 20220101AFI20240719BHJP
   C08G 65/332 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C09K23/42
C08G65/332
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003867
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】北村 匠
【テーマコード(参考)】
4D077
4J005
【Fターム(参考)】
4D077AA03
4D077AB03
4D077AC05
4D077BA02
4D077BA03
4D077BA07
4D077DC04Z
4D077DC28Z
4D077DC32Y
4D077DD32Y
4D077DD33Y
4D077DE04Z
4D077DE07Z
4J005AA04
4J005AA12
4J005AA21
4J005BD02
(57)【要約】
【課題】優れた分散性を発揮し、溶剤の使用量を増加させなくても低粘度のスラリーが容易に得られる分散剤の提供を目的とする。
【解決手段】式(1)で表されるモノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルからなることを特徴とする分散剤を用いる。
RO-(AO)n-H (1)
Rは炭素数4~22の直鎖炭化水素基、nは4~16の整数、AOはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基、Hは水素原子、Oは酸素原子である。
モノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルのエステル化率はモノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルに含まれる-CO-で表される基の全モル数に対して10~90モル%が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるモノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルからなることを特徴とする分散剤。

RO-(AO)n-H (1)

Rは炭素数4~22の直鎖炭化水素基、nは4~40の整数、AOはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基、Hは水素原子、Oは酸素原子である。
【請求項2】
モノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルのエステル化率がモノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルに含まれる-CO-で表される基の全モル数に対して10~90モル%である請求項1に記載の分散剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
分散剤として、「下記の式(1)で示される非水系分散剤。
【化1】
(式(1)において、
Rは炭素数1~22の直鎖あるいは分岐鎖状の炭化水素基である。
Oはオキシエチレン基であり、mはAOで示されるオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1~30である。
Oは炭素数3~4のオキシアルキレン基であり、nはAOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~30である。
mとnは、0.1≦m/n≦10、かつ、5≦m+n≦40の関係を満たす。
aは芳香環の数であり、1~2である。
Mは水素原子、アンモニウムまたはアルカノールアンモニウムを示す。)」(特許文献1)や、
「分散剤は、少なくとも1つの疎水性ブロックAと少なくとも1つの親水性ブロックBとを含むブロックコポリマーであり、かつ前記ブロックAおよび前記ブロックBは、以下の一般式I
【化2】
(式中、Rは、水素原子、1個~10個の炭素原子を有する線状または分岐状アルキル基、および4個~6個の炭素原子を有する環状アルキル基から選択される)によって表される繰返単位を含み、かつ少なくとも1つのカルボン酸基またはその塩が前記ブロックコポリマーに共有結合されており、ここで、該共有結合にはカルボン酸エステル基が含まれ、かつ前記分散剤は、一般式(2)または(3)
【化3】
によって表されるブロックコポリマーであり、
前記一般式(2)および(3)において、
は、-R11-CO-であり、ここで、R11は、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、2個~10個の炭素原子を有するアルケニレン基、または任意に置換されたフェニレン基であり、
は、-COOHであり、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはフェノキシ基であり、
10は、-OC2n+1または-OC2n-Phであり、ここで、nは、1~10であり、かつ、
a、bおよびcは、1~10である」(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-147261号公報
【特許文献2】特表2022-509403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の分散剤では顔料に対する分散性が不十分な場合があるという問題の他に、従来の分散剤を使用したスラリーが高粘度であるため、溶剤の使用量を増加して低粘度化する必要があり高濃度化が困難であるという問題がある。
本発明は、優れた分散性を発揮し、溶剤の使用量を増加させなくても低粘度のスラリーが容易に得られる分散剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の分散剤の特徴は、式(1)で表されるモノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルからなる点を要旨とする。
【0006】

RO-(AO)n-H (1)

Rは炭素数4~22の直鎖炭化水素基、nは4~40の整数、AOはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基、Hは水素原子、Oは酸素原子である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の分散剤は、優れた分散性を発揮し、溶剤の使用量を増加させなくても低粘度のスラリーが容易に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
炭素数4~22の直鎖炭化水素基(R)としては、アルキル基(n-ブチル、n-ペンシル、n-ヘキシル、n-へプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、n-イコシル及びn-ドコシル等)、及びアルケニル基(n-へキセニル、n-デセニル及びn-オクタデセニル等)が挙げられる。直鎖炭化水素基として、直鎖アルキル基を置換してもよいアリール基(フェニル、メチルフェニル、ノニルフェニル及びベンジル等)も使用できる。これらのうち、アルキル基及びアルケニル基が好ましく、さらに好ましくはアルキル基である。
【0009】
nは、4~40の整数が好ましく、さらに好ましくは5~35の整数、特に好ましくは7~30の整数である。この範囲であると、さらに分散性が良好となる。
【0010】
(AO)nは、ポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基を表し、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基(AO)のうち、オキシエチレンが好ましい。すなわち、(AO)nがポリオキシエチレン基であることが好ましい。
【0011】
式(1)で表されるモノオールとしては、公知の方法(アルコールのアルキレンオキシド付加反応等)により容易に得られる他に、市場からも容易に入手できる。市場から入手できるモノオールとしては、エマルミンNLシリーズ、エマルミンCCシリーズ、エマルミンCOシリーズ(三洋化成工業株式会社、「エマルミン」は同社の登録商標である。);ニューポールLBシリーズ(三洋化成工業株式会社、「ニューポール」は同社の登録商標である。);ファインサーフ Dシリーズ、ファインサーフ TDシリーズ(青木油脂工業株式会社、「ファインサーフ」は同社の登録商標である。);ブラウノン ELシリーズ、ブラウノン CHシリーズ、ブラウノン SRシリーズ、ブラウノン ENシリーズ、ブラウノン BEシリーズ(青木油脂工業株式会社、「ブラウノン」は同社の登録商標である。);及びセフティカット IDシリーズ(青木油脂工業株式会社)等が挙げられる。
【0012】
芳香族多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸(1,2-ベンゼンジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸及び1,4-ベンゼンジカルボン酸及び1,4-ナフタレンジカルボン酸、及び1,8-ナフタレンジカルボン酸等)、芳香族トリカルボン酸(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸及び1,3,5-ベンゼントリカルボン酸等)、芳香族テトラカルボン酸(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、ジフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、ジフェニル-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸及び1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸等)、芳香族ペンタカルボン酸(1,2,3,4,5-ベンゼンペンタカルボン酸等)、及び芳香族ヘキサカルボン酸(1,2,3,4,5,6-ベンゼンヘキサカルボン酸等)等が挙げられる。
【0013】
モノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルは、芳香族多価カルボン酸のカルボキシル基のうち、少なくとも1つがエステルを形成していればよいが、部分エステルが形成されたRO-(AO)n-CO-で表されるカルボキシレート基{各アルファベットは式(1)と同じ意味である。}の個数は、-CO-で表される基の全個数のうち、1/6~5/6個が好ましく、さらに好ましくは1/5~4/5個、特に好ましくは1/4~3/4個、最も好ましくは1/3~2/3個である。この範囲であると、さらに分散性が良好となる。
【0014】
モノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルには、RO-(AO)n-CO-で表されるカルボキシレート基{各アルファベットは式(1)と同じ意味である。}の複数種類が結合されていてもよい。すなわち、部分エステル中に含まれるR、AO、nが全て同じであっても、一部異なっても、全て異なっていてもよい。
【0015】
モノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルは、式(1)で表されるモノオールと芳香族多価カルボン酸とのエステル化反応;又は式(1)で表されるモノオールと芳香族多価カルボン酸エステルとのエステル交換反応により調製できる。また、芳香族多価カルボン酸無水物と式(1)で表されるモノオールとのハーフエステル化反応によっても得ることができる。
【0016】
本発明の分散剤は、モノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルの1種又は2種以上からなる。すなわち、少なくとも1種のモノオール成分と少なくとも1種の芳香族多価カルボン酸成分とからなる部分エステルから構成されればよい。
【0017】
モノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルのエステル化率は、モノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルに含まれる-CO-で表される基の全モル数に対して、10~90モル%が好ましく、さらに好ましくは20~75モル%、特に好ましくは30~50モル%である。この範囲であると、さらに分散性が良好となる。
【0018】
エステル化率は、けん化価(JIS K0070-1992「4.2電位差滴定法」、加熱温度80℃)と、酸価(JIS K0070-1992「3.2電位差滴定法」)とを求め、次式で求められる。

エステル化率(モル%)={1-(酸価/けん化価)}×100
【0019】
本発明の分散剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、モノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステル以外に必要により他の添加剤(消泡剤、湿潤剤等)等を含有してもよい。
【0020】
消泡剤としてはSNデフォーマー180及び同184(サンノプコ株式会社)等が挙げられ、湿潤剤としてはSNウエット125及び同126(サンノプコ株式会社)等が挙げられる。なお、公知の添加剤を含有する場合、これらの含有量はモノオールの芳香族多価カルボン酸部分エステルの重量に基づいて、0.01~10重量%程度が好ましい。
【0021】
本発明の分散剤は、顔料を分散媒へ分散するのに適用できる。
【0022】
顔料としては、無機顔料(アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等)、有機顔料(フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等)に好適である。これらのうち、無機顔料が好ましく、さらに好ましくは酸化チタン及びチタン酸バリウムである。
【0023】
分散媒としては、水系分散媒(水を必須構成成分として含有する分散媒)及び非水系分散媒(水を必須構成成分として含有しない分散媒)のいずれにも適用できるが、非水系分散媒に対して効果的である。
【0024】
非水系分散媒としては、芳香族炭化水素分散媒(ベンゼン、トルエン及びキシレン等)、脂肪族炭化水素分散媒(ヘキサン、ヘプタン及びオクタン等)、ハロゲン分散媒(ジクロロメタン及びトリクロロメタン等)、アルコール分散媒(メタノール、エタノール、2―プロパノール及びブタノール等)、ケトン分散媒(アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、エステル分散媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸ブチル及び酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル等)、アミド分散媒(ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドン等)、エーテル分散媒(ジエチルエーテル、テトロヒドロフラン及びシクロペンチルメチルエーテル等)、グリコール分散媒(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリオキシエチレングリコールのブチルモノエーテル及びトリオキシエチレングリコールのジメチルエーテル等)、反応性基を有するビニル単量体(メチルアクリレート、エチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン及びスチレン等)、並びにこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、芳香族炭化水素分散媒、アルコール分散媒、エステル分散媒及びこれらの混合溶媒が好ましく、さらに好ましくは芳香族炭化水素分散媒、芳香族炭化水素分散媒とアルコール分散媒の混合溶媒及びエステル分散媒である。なお、本発明の分散剤を非水系分散媒(水を必須構成成分として含有しない分散媒)に適用する場合、非水系分散媒に対して意図的又は偶発的に、分散工程等で水の混入を否定するものではない。
【0025】
本発明の分散剤の使用量(重量%)は、顔料の重量に基づいて、0.01~100が好ましく、さらに好ましくは0.05~50、特に好ましくは、0.1~10である。この範囲であると、さらに優れた分散性を発揮する。
【実施例0026】
以下、特記しない限り、部は重量部を意味する。
【0027】
<実施例1>
モノオール(1;ファインサーフD-1310、ポリオキシエチレンデシルエーテル、式(1)におけるnは10、青木油脂工業株式会社、「ファインサーフ」は同社の登録商標である。)598部(1モル部)及び芳香族多価カルボン酸(2;無水トリメリット酸、三菱ガス化学株式会社)192部(1モル部)を撹拌しながら120℃まで昇温し、同温度にて6時間撹拌を続け、本発明の分散剤(1)を得た。なお、けん化価及び酸価をJIS K0070-1992に準拠して測定し、上式からエステル化率30モル%と算出した(以下、エステル化率を同様に算出した。)。
【0028】
<実施例2>
「モノオール(1)598部(1モル部)」を「モノオール(2;ブラウノンEL-1509、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、式(1)におけるnは9、青木油脂工業株式会社、「ブラウノン」は同社の登録商標である。)665部(1モル部)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の分散剤(2)を得た。エステル化率は30モル%であった。
【0029】
<実施例3>
「モノオール(1)598部(1モル部)」を「モノオール(3;ブラウノンCH-308、ポリオキシエチレンセチルエーテル、式(1)におけるnは8、青木油脂工業株式会社、「ブラウノン」は同社の登録商標である。)595部(1モル部)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の分散剤(3)を得た。エステル化率は30モル%であった。
【0030】
<実施例4>
「モノオール(1)598部(1モル部)」を「モノオール(4;ブラウノンEL-1530、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、式(1)におけるnは30、青木油脂工業株式会社、「ブラウノン」は同社の登録商標である。)1506部(1モル部)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の分散剤(4)を得た。エステル化率は30モル%であった。
【0031】
<実施例5>
モノオール(1)を「598部(1モル部)」から「1196部(2モル部)」に変更したこと、及び「芳香族多価カルボン酸(1)192部(1モル部)」を「芳香族多価カルボン酸(2;ピロメリット酸無水物、東京化成工業株式会社)218部(1モル部)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の分散剤(5)を得た。エステル化率は50モル%であった。
【0032】
<実施例6>
「モノオール(1)598部(1モル部)」を「モノオール(5;ファインサーフD-1307、ポリオキシエチレンデシルエーテル、式(1)におけるnは7、青木油脂工業株式会社、「ファインサーフ」は同社の登録商標である。)932部(2モル部)」に変更したこと、及び「芳香族多価カルボン酸(1)192部(1モル部)」を「芳香族多価カルボン酸(2)218部(1モル部)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の分散剤(6)を得た。エステル化率は50モル%であった。
【0033】
<実施例7>
「芳香族多価カルボン酸(1)192部(1モル部)」を「芳香族多価カルボン酸(3;1,8-ナフタル酸無水物、東京化成工業株式会社)198部(1モル部)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の分散剤(7)を得た。エステル化率は50モル%であった。
【0034】
<実施例8>
撹拌機、加熱冷却装置を備えた耐圧反応容器に、カルコール8098{n-ステアリルアルコール、花王株式会社、「カルコール」は同社の登録商標である。}271部(1モル部)及び水酸化カリウム0.07部を投入し、窒素ガスを用いて、ゲージ圧で0.2MPaになるまで加圧し0.1MPaになるまで排出する操作を3回繰り返した後、減圧下(-0.1MPa)、攪拌しながら内容物を130℃に昇温し、内容物を撹拌しながら、プロピレンオキシド(PO)696部(12モル部)を4時間かけて滴下し、さらに同温度にて2時間攪拌を続け、モノオール(6;ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、式(1)におけるnは12)を得た。
【0035】
「モノオール(1)598部(1モル部)」を「モノオール(6)967部(1モル部)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の分散剤(8)を得た。エステル化率は30モル%であった。
【0036】
<実施例9>
「モノオール(1)598部(1モル部)」を「モノオール(6)1934部(2モル部)」に変更したこと、及び「芳香族多価カルボン酸(1)192部(1モル部)」を「芳香族多価カルボン酸(2)218部(1モル部)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の分散剤(9)を得た。エステル化率は50モル%であった。
【0037】
<実施例10>
「モノオール(1)598部(1モル部)」をモノオール(7;ニューポールLB-385、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、水酸基価=36.8mgKOH/g、水酸基から換算した式(1)におけるnは25、三洋化成工業株式会社、「ニューポール」は同社の登録商標である。)1524部(1モル部)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の分散剤(10)を得た。エステル化率は30モル%であった。
【0038】
<比較例1>
特許文献1(特開2016-147261号公報)に記載された合成例1に準拠して、比較用の分散剤(H1;3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノールのエチレンオキシド8モル・プロピレンオキシド3モルブロック付加体とトリメリット酸との部分エステル)を調製した。エステル化率は30モル%であった。
【0039】
<比較例2>
特許文献2(特開2022-509403号公報)の実施例の欄に準拠して、比較用の分散剤(H2;メトキシプロパノールのプロピレンオキシド3モル・エチレンオキシド5モルブロック付加体とコハク酸との部分エステル)を調製した。エステル化率は50モル%であった。
【0040】
<評価1>チタン酸バリウムスラリーの分散性
トルエン125g、エタノール125g部及び評価試料{分散剤(1)~(7)及び比較用の分散剤(H1)~(H2)のいずれか}5gを均一混合してからホモディスパー(2000rpm)で撹拌しながら、チタン酸バリウム(BT-01、堺化学工業株式会社)750gを徐々に加え、チタン酸バリウムを全量加え終わってからさらに5分間撹拌して、スラリーを調製した。
各スラリーを25℃に調整した後、粘度測定(TVB15粘度計、東機産業株式会社、25℃、60rpm)し、下表に示した。この粘度の値が小さい程、分散性が優れていることを意味する。
【0041】
比較用の分散剤(H1)を用いて調製したスラリーにトルエン100g及びエタノール100gからなる混合溶剤10gを加えた後、上記と同様にして粘度測定する操作を繰り返して、粘度が100mPa・s以下になったときの混合溶剤の追加量を計測したところ、追加合計量は100gであった。
【0042】
同様に、比較用の分散剤(H2)を用いて調製したスラリーについて、粘度が100mPa・s以下になったときの混合溶剤の追加合計量は200gであった。
【0043】
【表1】
【0044】
<評価2>酸化チタンスラリーの分散性
酪酸ブチル250g及び評価試料{分散剤(8)~(10)及び比較用の分散剤(H1)~(H2)のいずれか}3部を均一混合してからホモディスパー(2000rpm)で撹拌しながら、酸化チタン(AEROXIDE TiO2 P25、EVONIK社、「AEROXIDE」は同社の登録商標である)750gを徐々に加え、酸化チタンを全量加え終わってからさらに5分間撹拌して、スラリーを調製した。
各スラリーを25℃に調整した後、粘度測定(TVB15粘度計、東機産業株式会社、25℃、60rpm)し、下表に示した。この粘度の値が小さい程、分散性が優れていることを意味する。
【0045】
比較用の分散剤(H1)を用いて調製したスラリーに酢酸ブチル10gを加えた後、上記と同様にして粘度測定する操作を繰り返して、粘度が150mPa・s以下になったときの酢酸ブチルの追加量を計測したところ、追加合計量は150gであった。
【0046】
同様に、比較用の分散剤(H2)を用いて調製したスラリーについて、粘度が150mPa・s以下になったときの混合溶剤の追加合計量は200gであった。
【0047】
【表2】
【0048】
本発明の分散剤は、優れた分散性を発揮し、溶剤の使用量を増加させなくても低粘度のスラリーが容易に得られた。一方、比較例の分散剤では顔料に対する分散性が不十分であり、これらを使用したスラリーが高粘度であるため、溶剤の使用量を増加して低粘度化する必要があり高濃度化が困難であった。