(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100128
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】光測定装置、光測定システム及び光測定方法、ディスプレイ調整システム及び調整方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 17/04 20060101AFI20240719BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H04N17/04 C
H04N5/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003878
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】桐山 知宏
(72)【発明者】
【氏名】村田 智寛
(72)【発明者】
【氏名】深水 智博
【テーマコード(参考)】
5C058
5C061
【Fターム(参考)】
5C058BA05
5C058BA07
5C058BA13
5C058BA35
5C061BB03
5C061BB09
5C061BB11
5C061BB15
(57)【要約】
【課題】ディスプレイ等の発光可能な測定対象物から測定される輝度、色度等の測定対象パラメータを、異なる発光条件であっても高精度に測定することができる光測定装置、光測定システム及び光測定方法、ディスプレイ調整システム及び調整方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】発光可能な測定対象物4からの光を受光する受光手段20と、測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶する記憶手段29bと、受光手段で受光した光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、受光手段で受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する発光情報算出手段27dと、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光可能な測定対象物からの光を受光する受光手段と、
前記測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶する記憶手段と、
前記受光手段で受光した光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、前記受光手段で受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する発光情報算出手段と、
を備えたことを特徴とする光測定装置。
【請求項2】
前記複数の発光モードは、ガンマ曲線、測定対象物の発光駆動周波数、測定対象物の駆動回路の少なくとも何れかが異なっている請求項1に記載の光測定装置。
【請求項3】
前記校正データは測定条件または環境状況の少なくとも何れかが考慮されている請求項1に記載の光測定装置。
【請求項4】
前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力手段を備え、
前記発光情報算出手段は、前記発光モード信号入力手段に入力された前記発光モード信号に基づいて前記校正データを選択する請求項1に記載の光測定装置。
【請求項5】
実際の光強度信号に基づいて前記校正データを選択する請求項1に記載の光測定装置。
【請求項6】
前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力手段を備え、
前記発光情報算出手段は、前記記憶手段に記憶されている校正データに基づき、前記発光モード信号入力手段に入力された前記発光モード信号に適合するように補間した校正データを用いて前記発光情報を算出する請求項1に記載の光測定装置。
【請求項7】
前記発光情報算出手段は、実際の光強度信号に基づいて前記記憶手段に記憶されている校正データを補間し、補間された校正データを用いて前記発光情報を算出する請求項1に記載の光測定装置。
【請求項8】
前記発光情報算出手段による発光情報の算出に用いられた校正データに関する校正データ情報を出力する校正データ情報出力手段を備えている請求項1に記載の光測定装置。
【請求項9】
発光可能な測定対象物からの光を受光する受光手段と、情報処理装置とを備え、
前記情報処理装置は、
前記測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶する記憶手段と、
前記受光手段で受光した光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、前記受光手段で受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する発光情報算出手段と、
を備えていることを特徴とする光測定システム。
【請求項10】
前記複数の発光モードは、ガンマ曲線、測定対象物の発光駆動周波数、測定対象物の駆動回路の少なくとも何れかが異なっている請求項9に記載の光測定システム。
【請求項11】
前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力手段を備え、
前記発光情報算出手段は、前記発光モード信号入力手段に入力された前記発光モード信号に基づいて前記校正データを選択する請求項9に記載の光測定システム。
【請求項12】
実際の光強度信号に基づいて前記校正データを選択する請求項9に記載の光測定システム。
【請求項13】
前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力手段を備え、
前記発光情報算出手段は、前記記憶手段に記憶されている校正データに基づき、前記発光モード信号入力手段に入力された前記発光モード信号に適合するように補間した校正データを用いて前記発光情報を算出する請求項9に記載の光測定システム。
【請求項14】
前記発光情報算出手段は、実際の光強度信号に基づいて前記記憶手段に記憶されている校正データを補間し、補間された校正データを用いて前記発光情報を算出する請求項9に記載の光測定システム。
【請求項15】
前記発光情報算出手段により算出された発光情報と、発光情報の算出に用いられた校正データを保存する保存手段を備えている請求項9に記載の光測定システム。
【請求項16】
前記保存手段はさらに測定条件または環境状況の少なくとも何れかを保存する請求項15に記載の光測定システム。
【請求項17】
ディスプレイの発光部を測定対象物とし、前記ディスプレイのガンマ調整を行うディスプレイ調整システムであって、
請求項1~8の何れかに記載の光測定装置または請求項9~16の何れかに記載の光測定システムと、
前記ディスプレイに前記ガンマ調整のためのパネル表示情報を表示させる発光駆動信号出力手段と、
前記発光情報算出手段により前記パネル表示情報に対応する校正データを用いて算出された発光情報に基づいてガンマ調整を行うガンマ調整制御手段と、
前記ガンマ調整制御手段によるガンマ調整の結果を前記ディスプレイに通知するガンマ調整結果通知部と、
を備えたことを特徴とするディスプレイ調整システム。
【請求項18】
発光可能な測定対象物からの光を受光手段で受光する受光ステップと、
前記測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記受光手段で受光した光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、前記受光ステップで受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する発光情報算出ステップと、
を含む光測定方法。
【請求項19】
前記複数の発光モードは、ガンマ曲線、測定対象物の発光駆動周波数、測定対象物の駆動回路の少なくとも何れかが異なっている請求項18に記載の光測定方法。
【請求項20】
前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力ステップを含み、
前記発光情報算出ステップでは、前記発光モード信号入力ステップで入力された前記発光モード信号に基づいて前記校正データを選択する請求項18に記載の光測定方法。
【請求項21】
実際の光強度信号に基づいて前記校正データを選択する請求項18に記載の光測定方法。
【請求項22】
前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力ステップを含み、
前記発光情報算出ステップでは、前記記憶ステップで記憶された校正データを用いて、前記発光モード信号入力ステップにより入力された前記発光モード信号に適合するように変換した変換校正データを用いて前記発光情報を算出する請求項18に記載の光測定方法。
【請求項23】
前記発光情報算出ステップによる発光情報の算出に用いられた校正データに関する校正データ情報を出力する校正データ情報出力ステップを含む請求項18に記載の光測定方法。
【請求項24】
ディスプレイの発光部を測定対象物とし、前記ディスプレイのガンマ調整を行うディスプレイ調整方法であって、
前記ディスプレイに前記ガンマ調整のためのパネル表示情報を表示させる発光駆動信号出力ステップと、
前記パネル表示情報に対応する校正データを用いて、請求項18における発光情報算出ステップにより算出された発光情報に基づいて、ガンマ調整を行うガンマ調整制御ステップと、
前記ガンマ調整制御ステップによるガンマ調整の結果を前記ディスプレイに通知するガンマ調整結果通知ステップと、
を含むディスプレイ調整方法。
【請求項25】
発光可能な測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶する記憶手段を備えた光測定装置のコンピュータに、
前記測定対象物からの光を受光手段で受光したときの光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、前記受光手段で受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する発光情報算出ステップを実行させるためのプログラム。
【請求項26】
ディスプレイの発光部を測定対象物とし、前記ディスプレイにガンマ調整のためのパネル表示情報を表示させる発光駆動信号出力ステップと、
前記パネル表示情報に対応する校正データを用いて、請求項25における発光情報算出ステップにより算出された発光情報に基づいて、ガンマ調整を行うガンマ調整制御ステップと、
前記ガンマ調整制御ステップによるガンマ調整の結果を前記ディスプレイに通知するガンマ調整結果通知ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスプレイ等の測定対象物の輝度、色度等の測定対象パラメータを測定可能な光測定装置、光測定システム及び光測定方法、光測定装置を用いたディスプレイ調整システム及び調整方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発光可能な測定対象物であるディスプレイの製造工程においては、ディスプレイの発光状態に関するパラメータの一つである輝度をカラーアナライザ等の光測定装置で測定するとともに、測定した輝度に基づくディスプレイのガンマ調整が行われている。また、測定データの誤差が大きいと高精度なガンマ調整を行えないことから、測定データの誤差をなくすため校正データを用いて校正するのが通常である。
【0003】
このような測定データの校正について、従来では、特定のパネル駆動周波数(例えば60Hz)での1つの輝度に対してのみ校正データを作成し、この作成した校正データをすべての輝度、ガンマカーブ、ディスプレイの発光駆動周波数に適用して、測定を行っていた。
【0004】
また、特許文献1及び特許文献2には、ディスプレイ側から取得した階調情報に基づいて校正データを作成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-168466号公報
【特許文献2】特許第5589299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、複数の発光モードでの発光が可能なディスプレイが増えており、このようなディスプレイのガンマ調整においては、ガンマ調整条件が増加している。このため、従来のように特定のパネル駆動周波数での輝度に対する校正データのみの使用、あるいは特許文献1及び2に記載されているような階調情報に基づく校正データの使用では、校正データの作成時の条件とのずれが大きいと、測定データの誤差が大きくなるため、要求される輝度、ガンマカーブ、パネル駆動に対する十分な測定精度(確度)を確保できないという課題がある。
【0007】
この発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであって、ディスプレイ等の発光可能な測定対象物から測定される輝度、色度等の測定対象パラメータを、異なる発光条件であっても高精度に測定することができる光測定装置、光測定システム及び光測定方法、ディスプレイ調整システム及び調整方法並びにプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)発光可能な測定対象物からの光を受光する受光手段と、
前記測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶する記憶手段と、
前記受光手段で受光した光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、前記受光手段で受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する発光情報算出手段と、
を備えたことを特徴とする光測定装置。
(2)前記複数の発光モードは、ガンマ曲線、測定対象物の発光駆動周波数、測定対象物の駆動回路の少なくとも何れかが異なっている前項1に記載の光測定装置。
(3)前記校正データは測定条件または環境状況の少なくとも何れかが考慮されている前項1に記載の光測定装置。
(4)前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力手段を備え、
前記発光情報算出手段は、前記発光モード信号入力手段に入力された前記発光モード信号に基づいて前記校正データを選択する前項1に記載の光測定装置。
(5)実際の光強度信号に基づいて前記校正データを選択する前項1に記載の光測定装置。
(6)前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力手段を備え、
前記発光情報算出手段は、前記記憶手段に記憶されている校正データに基づき、前記発光モード信号入力手段に入力された前記発光モード信号に適合するように補間した校正データを用いて前記発光情報を算出する前項1に記載の光測定装置。
(7)前記発光情報算出手段は、実際の光強度信号に基づいて前記記憶手段に記憶されている校正データを補間し、補完された校正データを用いて前記発光情報を算出する前項1に記載の光測定装置。
(8)前記発光情報算出手段による発光情報の算出に用いられた校正データに関する校正データ情報を出力する校正データ情報出力手段を備えている前項1に記載の光測定装置。
(9)発光可能な測定対象物からの光を受光する受光手段と、情報処理装置とを備え、
前記情報処理装置は、
前記測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶する記憶手段と、
前記受光手段で受光した光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、前記受光手段で受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する発光情報算出手段と、
を備えていることを特徴とする光測定システム。
(10)前記複数の発光モードは、ガンマ曲線、測定対象物の発光駆動周波数、測定対象物の駆動回路の少なくとも何れかが異なっている前項9に記載の光測定システム。
(11)前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力手段を備え、
前記発光情報算出手段は、前記発光モード信号入力手段に入力された前記発光モード信号に基づいて前記校正データを選択する前項9に記載の光測定システム。
(12)実際の光強度信号に基づいて前記校正データを選択する前項9に記載の光測定システム。
(13)前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力手段を備え、
前記発光情報算出手段は、前記記憶手段に記憶されている校正データに基づき、前記発光モード信号入力手段に入力された前記発光モード信号に適合するように補間した校正データを用いて前記発光情報を算出する前項9に記載の光測定システム。
(14)前記発光情報算出手段は、実際の光強度信号に基づいて前記記憶手段に記憶されている校正データを補間し、補間された校正データを用いて前記発光情報を算出する前項9に記載の光測定システム。
(15)前記発光情報算出手段により算出された発光情報と、発光情報の算出に用いられた校正データを保存する保存手段を備えている前項9に記載の光測定システム。
(16)前記保存手段はさらに測定条件または環境状況の少なくとも何れかを保存する前項15に記載の光測定システム。
(17)ディスプレイの発光部を測定対象物とし、前記ディスプレイのガンマ調整を行うディスプレイ調整システムであって、
前項1~8の何れかに記載の光測定装置または前項9~16の何れかに記載の光測定システムと、
前記ディスプレイに前記ガンマ調整のためのパネル表示情報を表示させる発光駆動信号出力手段と、
前記発光情報算出手段により前記パネル表示情報に対応する校正データを用いて算出された発光情報に基づいてガンマ調整を行うガンマ調整制御手段と、
前記ガンマ調整制御手段によるガンマ調整の結果を前記ディスプレイに通知するガンマ調整結果通知部と、
を備えたことを特徴とするディスプレイ調整システム。
(18)発光可能な測定対象物からの光を受光手段で受光する受光ステップと、
前記測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記受光手段で受光した光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、前記受光ステップで受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する発光情報算出ステップと、
を含む光測定方法。
(19)前記複数の発光モードは、ガンマ曲線、測定対象物の発光駆動周波数、測定対象物の駆動回路の少なくとも何れかが異なっている前項18に記載の光測定方法。
(20)前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力ステップを含み、
前記発光情報算出ステップでは、前記発光モード信号入力ステップで入力された前記発光モード信号に基づいて前記校正データを選択する前項18に記載の光測定方法。
(21)実際の光強度信号に基づいて前記校正データを選択する前項18に記載の光測定方法。
(22)前記測定対象物の発光状態を示す発光モード信号が入力される発光モード信号入力ステップを含み、
前記発光情報算出ステップでは、前記記憶ステップで記憶された校正データを用いて、前記発光モード信号入力ステップにより入力された前記発光モード信号に適合するように変換した変換校正データを用いて前記発光情報を算出する前項18に記載の光測定方法。
(23)前記発光情報算出ステップによる発光情報の算出に用いられた校正データに関する校正データ情報を出力する校正データ情報出力ステップを含む前項18に記載の光測定方法。
(24)ディスプレイの発光部を測定対象物とし、前記ディスプレイのガンマ調整を行うディスプレイ調整方法であって、
前記ディスプレイに前記ガンマ調整のためのパネル表示情報を表示させる発光駆動信号出力ステップと、
前記パネル表示情報に対応する校正データを用いて、前項18における発光情報算出ステップにより算出された発光情報に基づいて、ガンマ調整を行うガンマ調整制御ステップと、
前記ガンマ調整制御ステップによるガンマ調整の結果を前記ディスプレイに通知するガンマ調整結果通知ステップと、
を含むディスプレイ調整方法。
(25)発光可能な測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶する記憶手段を備えた光測定装置のコンピュータに、
前記測定対象物からの光を受光手段で受光したときの光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、前記受光手段で受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する発光情報算出ステップを実行させるためのプログラム。
(26)ディスプレイの発光部を測定対象物とし、前記ディスプレイにガンマ調整のためのパネル表示情報を表示させる発光駆動信号出力ステップと、
前記パネル表示情報に対応する校正データを用いて、前項25における発光情報算出ステップにより算出された発光情報に基づいて、ガンマ調整を行うガンマ調整制御ステップと、
前記ガンマ調整制御ステップによるガンマ調整の結果を前記ディスプレイに通知するガンマ調整結果通知ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る光測定装置、光測定システム及び光測定方法によれば、発光可能な測定対象物の発光色毎に、測定対象物の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予め記憶手段に記憶しておく。そして、受光手段で受光した測定対象物からの光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、受光手段で受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報が算出される。このため、異なる色、異なる発光モードでの発光が可能な測定対象物であっても、その発光条件に対応する校正データあるいはその発光条件に近い校正データを用いることができるから、従来のように特定のパネル駆動周波数での輝度に対する校正データのみを使用する場合、あるいは階調情報に基づく校正データを使用する場合に較べて、適正な校正データを選択し使用することができる。その結果、輝度、色度等の測定対象パラメータを、異なる発光条件にもかかわらず少ない誤差で高精度に測定することができる。
【0010】
また、この発明に係るディスプレイ調整システム及び調整方法によれば、発光駆動信号を出力してディスプレイにガンマ調整のためのパネル表示情報を表示させたときのガンマ調整を、パネル表示情報に対応した校正データを用いて算出された精度の高い発光情報に基づいて行い、ガンマ調整の結果をディスプレイに通知するから、ガンマ調整を高精度に行うことができ、精度の高い調整結果をディスプレイに通知することができる。
【0011】
また、この発明のプログラムによれば、測定対象物からの光を受光手段で受光したときの光強度信号と、測定対象物の発光状態に対応した校正データとを用いて、受光手段で受光した光の測定対象パラメータを含む発光情報を算出する処理を、光測定装置のコンピュータに実行させることができ、また、ディスプレイの発光部を測定対象物とし、ディスプレイにガンマ調整のためのパネル表示情報を表示させ、発光情報算出ステップによりパネル表示情報に対応する校正データを用いて算出された発光情報に基づいてガンマ調整を行い、ガンマ調整の結果をディスプレイに通知する処理をコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の一実施形態に係るディスプレイ検査・調整システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】光測定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】(A)は従来のユーザー校正による校正データの説明図、(B)は本実施形態でのユーザー校正による校正データの説明図である。
【
図5】ユーザー校正データを保持するルックアップテーブルの一例を示す図である。
【
図6】ユーザー校正データを保持するルックアップテーブルの他の例を示す図である。
【
図7】ディスプレイ検査・調整装置及びディスプレイのそれぞれ具体的な構成を示すブロック図である。
【
図8】ガンマ調整処理の概要を示すシーケンス図である。
【
図9】(A)は、ディスプレイ検査・調整装置のガンマ調整処理動作を示すフローチャート、(B)は(A)におけるステップS23のガンマ調整実行処理の内容を示すフローチャート、(C)は(B)におけるステップS238の結果判定処理の内容を示すフローチャートである。
【
図10】(A)は光測定装置のガンマ調整時の測定動作を示すフローチャート、(B)は(A)におけるステップS45のユーザー校正データ取得処理の一例を示すフローチャート、(C)は(A)におけるステップS45のユーザー校正データ取得処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の一実施形態に係るディスプレイ検査・調整システム1の全体構成を示すブロック図である。このディスプレイ検査・調整システム1は、光測定装置2と、パーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置からなるディスプレイ検査・調整装置3とを備えている。
【0015】
光測定装置2は例えばカラーアナライザと称される装置であり、測定対象物の測定対象パラメータである輝度や色度等を測定できる。この実施形態では、測定対象物がLED等の複数の発光体を備えたディスプレイ4であり、またディスプレイ4のガンマ調整を行うために光測定装置2は輝度を測定する場合について説明するが、色度の測定についても同様である。
【0016】
図2は光測定装置2の電気的構成を示すブロック図である。
【0017】
光測定装置2は受光素子から成る受光センサ(受光手段に相当)20を備えている。ディスプレイ4から発光され受光センサ20の受光窓に入射した光は、赤外線吸収フィルタ21を透過した後、X,Y,Zの各色フィルタ22X,22Y,22Zを通過することで分光され、シリコンフォトダイオード23X,23Y,23Zで各波長の光が光電変換される。
【0018】
シリコンフォトダイオード23X,23Y,23Zで電流として得られた信号は、電流電圧変換回路(I/V変換回路)24X,24Y,24Zで電圧信号に変換され、ゲイン切替回路25X,25Y,25Zを通じてA/D変換回路26に入力される。ゲイン切替回路25X,25Y,25Zは、電圧信号をA/D変換回路16のダイナミックレンジに適応させるために設けられており、単体のA/D変換回路26が電圧信号をマルチプレックス動作によって所定周期でアナログ/デジタル変換した結果に基づいて、CPU27の回路ゲイン制御部27aが、ゲイン切替回路25X,25Y,25Zのゲインを制御する。また、CPU27のA/D変換回路制御部27bが、A/D変換回路26のサンプリングを制御する。こうして、I/V変換回路24X,24Y,24Z、ゲイン切替回路25X,25Y,25ZおよびA/D変換回路26は、センサ20からのアナログ信号を、演算部となるCPU27で処理するためのデジタル信号に変換する信号変換部を構成する。
【0019】
CPU27は、信号変換部から入力された信号を演算し、Lv値、x,y値等の輝度値および色度値を得る演算部となり、回路ゲイン制御部27aおよびA/D変換回路制御部27bに加えて、A/D変換回路26からのX,Y,Zの各カウント値が入力されるA/Dカウント入力部27cと、そのカウント値から演算・補正を行って輝度値および色度値を得る演算・補正部27dと、通信インターフェースであるインターフェース部28を介して、ディスプレイ検査・調整装置3等と通信を行うデータ入出力部(発光モード信号入力手段、校正データ情報出力手段に相当)27eとを備えて構成される。
【0020】
本実施形態では、輝度値および色度値を得る過程の中で、CPU27の演算・補正部27dは、インターフェース部28を介してディスプレイ検査・調整装置3から取得し、データ入出力部27eから入力されたディスプレイ4の発光モード信号に基づいて、メモリ19の工場校正データ記憶部29aとユーザー校正データ記憶部29bに格納されている校正データを参照し、さらに必要に応じて補間演算などを行い、実際の測定値を補正する。前記データ入出力部27eは、ディスプレイ4のガンマ調整に際しては、インターフェース部28を介して、ディスプレイ検査・調整装置3からの発光モード信号の入力だけでなく、補正結果を測定情報としてディスプレイ検査・調整装置3へ出力したり、ディスプレイ検査・調整装置3からの測定開始指示等を入力する。
【0021】
工場校正データ記憶部29aには工場校正データが、ユーザー校正データ記憶部29bにはユーザー校正データが、それぞれ記憶されている。工場校正データは光測定装置2の出荷時に工場での基準光源に基づいて設定された校正データである。
【0022】
ユーザー校正データはユーザー校正によって設定された校正データである。ユーザー校正とは、ユーザーが設定する基準光源例えば所定のディスプレイの色を測定して、校正値を光測定装置2に設定することにより、ユーザー独自の補正係数を光測定装置2の校正チャンネルに設定することをいう。校正データは、白(W)/赤(R)/緑(G)/青(B)に対しての表色系データ(LV/x/yやXYZなど)であっても良いし、表色系データの代わりにRGBに対する発光強度であっても良い。
【0023】
ユーザー校正は、限定はされないが、
図3に示すように、基準となる分光輝度計5と校正を行う光測定装置2とにより、基準となるディスプレイ(マスターディスプレイ)40からの光を測定することにより行われる。測定値の相違分がユーザー校正データによって補正される。
【0024】
この実施形態では、ユーザー校正データとして、ディスプレイ4の発光色である白(W)、赤(R)、緑(G)、青(B)毎に、ディスプレイ4の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じたユーザー校正データを作成し、ユーザー校正データ記憶部29bに記憶しておく。ユーザー校正データの作成は、光測定装置2で行っても良いし、ディスプレイ検査・調整装置3あるいは他の情報処理装置で行い、作成されたユーザー校正データを光測定装置2のユーザー校正データ記憶部29bに記憶させても良い。
【0025】
ディスプレイ4の発光モードは、この実施形態では、ガンマ曲線、測定対象物の発光駆動周波数、測定対象物の駆動回路(発光回路)のうちの少なくとも何れかによって特定され、これらの異なる組み合わせで複数の発光モードが設定される。
【0026】
一例として異なるガンマ曲線に応じたユーザー校正データについて説明する。
【0027】
図4(A)(B)のように、ガンマ調整対象のディスプレイ4に対して、ある発光駆動周波数(例えば60Hz)においてガンマモード1~3の3個のガンマ曲線が設定されているとする。従来では、同図(A)のように、ガンマモード1における特定の輝度での1つの校正ポイントP1でのみユーザー校正を行って校正データを作成し、この校正データをガンマモード1~3の各階調におけるガンマ調整に適用していた。
【0028】
しかし、これではガンマ調整ポイントと校正ポイントが大きくずれていると、測定誤差が大きくなって十分な測定精度が得られず、ガンマ調整の精度が低下する。
【0029】
そこで、この実施形態では、同図(B)に示すように、ガンマモード1において複数の階調毎にユーザー校正を行うと共に、他の全てのガンマモード2及び3についても複数の階調毎にユーザー校正を行って、複数の校正ポイントP2において校正データを作成している。
【0030】
さらに、他の発光駆動周波数において1個または複数個のガンマモードが設定されている場合も同様に、各発光駆動周波数の各ガンマモードについて、複数の階調毎にユーザー校正を行って、複数の校正ポイントP2においてユーザー校正データを作成している。
【0031】
さらに、ディスプレイ4の駆動回路が異なると発光状態も変化するから、ディスプレイ4の駆動回路の種類と発光駆動周波数の種類とガンマモードの種類を組み合わせて、それぞれ階調毎にユーザー校正を行って、複数の校正ポイントP2においてユーザー校正データを作成している。
【0032】
なお、ディスプレイ4の発光状態に関与する要素は、ガンマ曲線、発光駆動周波数、駆動回路以外にも、キャビティ、電流値、温度、点灯時間、外気温、生産ロット等があるが、これらを1つ以上組み合わせて複数の発光モードを設定し、各発光モードについて複数の階調に応じたユーザー校正データを作成しても良い。
【0033】
さらに、校正データは発光モードに対応するのみならず、測定条件または環境状況の少なくとも何れかを考慮して作成されているのが望ましい。測定条件としては、例えば光測定装置2の設置情報、ディスプレイ4に対する測定位置、点灯時間等の少なくとも何れかが挙げられ、光測定装置2の設置情報としては、例えばディスプレイ4に対する測定角度、ディスプレイ4とレンズの距離の少なくとも何れかが挙げられる。また、環境状況としては例えば温度、湿度の少なくとも何れかがが挙げられる。
【0034】
ユーザー校正データの具体例について説明する。
[具体例1]
この例は、マスターディスプレイ40を基準となる分光輝度計5で測定したときの測定結果と、校正対象の光測定装置2で測定したときの測定結果を、ユーザー校正データとして保持する例であり、駆動周波数毎にルックアップテーブル(LUT)として用意する。
【0035】
図5の上図は60Hzの駆動周波数についてのルックアップテーブルである。このルックアップテーブルでは、ガンマモード(
図5では「Gamma Mode」と記している)としてモード1(高輝度)、モード2、モード3、モード4(低輝度)の4つのモードが設定されている。そして、各モード毎に、白(W)、赤(R)、緑(G)、青(B)について、基準となる分光輝度計5による測定結果である基準値と、校正対象の光測定装置2による測定結果である校正対象測定値が、いずれも「Lvxy」で記載されている。
【0036】
図5下図は、
図5上図の太枠で示したルックアップテーブルのモード1(高輝度)における基準値と校正対象測定値の具体的なデータを示すルックアップテーブルである。このルックアップテーブルには、所定の階調(Tone)毎に、白(W)、赤(R)、緑(G)、青(B)についての測定結果のデータが示されている。左側の4つの白(W)、赤(R)、緑(G)、青(B)の値が基準値、右側の4つの白(W)、赤(R)、緑(G)、青(B)の値が校正対象測定値である。
【0037】
なお、図示は省略したが、モード2、モード3、モード4の各ガンマモードについても、
図5下図と同様に基準値と校正対象測定値の具体的なデータを示すルックアップテーブルが作成され記憶されている。
【0038】
また、60Hz以外の他の発光駆動周波数についても、
図5上図及び下図に示すルックアップテーブルが記憶されている。
【0039】
つまり、異なる発光モード毎に、
図5上図及び下図に示したようなルックアップテーブルが記憶されている。
[具体例2]
この例は、基準となる分光輝度計5による測定結果と校正対象の光測定装置2による測定結果から算出したマトリクス校正係数を、校正データとして保持する例であり、駆動周波数毎にルックアップテーブルとして用意する。
【0040】
図6上図は60Hzの駆動周波数についてのルックアップテーブルであり、ガンマモードとしてモード1(高輝度)、モード2、モード3、モード4(低輝度)の4つのモードが設定されている。そして、各ガンマモード毎に、白(W)、赤(R)、緑(G)、青(B)について、基準測定値がいずれも「Lvxy」で記載されるとともに、ユーザー校正データとしてマトリクス校正係数である「行列」が記載されている。
【0041】
図6下図は、
図6上図の太枠で示したルックアップテーブルのモード1(高輝度)における具体的なデータを示すルックアップテーブルである。このルックアップテーブルには、所定の階調(Tone)毎に、白(W)、赤(R)、緑(G)、青(B)についての基準測定値のデータが示されている。また、ユーザー校正係数(基準測定器との誤差を校正する係数)として、具体的なマトリクス校正係数が示されている。
【0042】
なお、図示は省略したが、モード2、モード3、モード4の各ガンマモードについても、
図6下図と同様の具体的なマトリクス校正係数が作成され記憶されている。
【0043】
また、60Hz以外の他の発光駆動周波数についても、
図6上図及び下図に示すルックアップテーブルが記憶されている。
【0044】
つまり、異なる発光モード毎に、
図6上図及び下図に示したようなルックアップテーブルが記憶されている。
【0045】
具体例1の場合には、ユーザー校正データである基準測定値と校正対象測定値のデータを用いて、光測定装置2で測定された輝度を補正する。具体例2の場合には、ユーザー校正データであるマトリクス校正係数を用いて、光測定装置2で測定された輝度を補正する。
【0046】
記憶されたユーザー校正データのうち、どの校正データを使用して測定値の補正を行うかは、ユーザーがディスプレイ4の発光状態、例えば発光駆動周波数、ガンマモード等に対応するものを選択しても良いが、好ましくは、光測定装置2が外部インターフェース18及びデータ入出力部27eを介して、ディスプレイ検査・調整装置3から発光状態を示す発光モード信号を入力し、この発光モード信号に基づいて、CPU17が対応するユーザー校正データを自動選択するのが良い。ガンマ調整条件に応じてユーザーが選択しようとすると、ガンマ調整条件毎にユーザー校正データを選択する必要があるため、システム構築や検証に時間がかかり設定ミスも誘発してしまう。このため、このような問題が生じない点で、光測定装置2が発光モード信号に基づいてユーザー校正データを自動選択するのが良い。
【0047】
また、使用したユーザー校正データと補正の結果をディスプレイ検査・調整装置3に出力し、ディスプレイ検査・調整装置3の記憶部に履歴として保存しても良い。これにより、ディスプレイ検査・調整装置3は光測定装置2の補正内容と使用したユーザー校正データを把握管理することができる。また、測定条件または環境状況の少なくとも何れかを併せて保存することが望ましい。測定条件としては、例えば光測定装置2の設置情報、ディスプレイ4に対する測定位置、点灯時間等の少なくとも何れかが挙げられ、光測定装置2の設置情報としては、例えばディスプレイ4に対する測定角度、ディスプレイ4とレンズの距離の少なくとも何れかが挙げられる。また、環境状況としては例えば温度、湿度の少なくとも何れかがが挙げられる。
【0048】
以上の実施形態では、光測定装置2に工場校正データやユーザー校正データが記憶されている構成としたが、ディスプレイ検査・調整装置3やその他の情報処理装置が工場校正データ及びユーザー校正データの全てを記憶管理し、ディスプレイの発光モード信号に対応した必要最小限の校正データを光測定装置2に送信する構成であっても良い。
【0049】
あるいは、工場校正データやユーザー校正データを記憶したディスプレイ検査・調整装置3やその他の情報処理装置が、光測定装置2からディスプレイ4の受光結果を受信すると共に、ディスプレイ4の発光モードに対応する校正データを選択し、この選択した校正データを用いて測定結果を補正しても良い。
【0050】
また、輝度情報は、光測定装置2自身が測定したA/D変換回路26の出力値に基づいて判断しても良い。即ち、A/D変換回路26の出力値に対し、基準光源による工場校正データを使用してLvを算出し、ユーザー校正データが選択されている場合は、算出したLvに対して校正データを加味して出力Lvを得る。
【0051】
次に、
図1のディスプレイ検査・調整システム1によるディスプレイ4のガンマ調整について説明する。
【0052】
ガンマ調整時には、ディスプレイ検査・調整装置3は、ディスプレイ4の発光状態を制御すると共に、校正データにより補正された光測定装置2の輝度測定の結果を基にガンマ調整を行うものであり、
図1に示すように発光駆動信号出力部31と、ガンマ(
図1では「γ」と記している)調整部32を備えている。
【0053】
発光駆動信号出力部31は、光測定装置2によるディスプレイ4の輝度測定に際して、ディスプレイ4を発光駆動するためのパルス状の発光駆動信号をディスプレイ4に出力する。具体的には、発光駆動信号出力部31で発生される発光駆動信号の周波数(ディスプレイ4の発光駆動周波数)や形状等を、ディスプレイ4の製造者が予定しているものと整合させてディスプレイ4に供給する。
【0054】
ガンマ調整部32はディスプレイ4のガンマ調整を行うが、この点については後述する。
【0055】
ディスプレイ検査・調整装置3は、プロセッサであるCPUと、メモリであるRAMと、ハードディスクやSSD等の記憶装置等を備えたPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等で構成され、発光駆動信号出力部31やガンマ調整部32等は、CPUが記憶装置に格納されRAMに展開された動作プログラムに従って動作することにより機能が実行される。
【0056】
図7は、ディスプレイ検査・調整装置3とディスプレイ4の具体的な構成を示すブロック図である。
【0057】
ディスプレイ検査・調整装置3は、通信部301と、ディスプレイ検査調整パターン記憶部302と、表示情報伝達部303と、ガンマ調整制御部304と、ガンマ調整モード/輝度/周波数切り替え部305と、ディスプレイ輝度安定判定部306と、ガンマ調整許容幅記憶部307と、ガンマ調整結果判定部308と、ガンマ調整結果通知部309と、時間計測部310等を備えている。
【0058】
通信部301は、光測定装置2との間でデータの送受信を行うインターフェースとして機能する。
【0059】
ディスプレイ検査調整パターン記憶部302は、ディスプレイ4の発光駆動信号のパターンを記憶するものであり、顧客毎のパターンが記憶されている。発光駆動信号のパターンには、ディスプレイ4への入力信号(電圧値)と出力輝度の関係式(理想曲線)も含まれる。ガンマ調整処理においては、入力電圧値に対する出力輝度と理想曲線との差異を補正するように、入力信号に対する出力輝度の関係を再設定する。
【0060】
表示情報伝達部303は、ディスプレイ4に表示させる情報をディスプレイ4に伝達する。これらのディスプレイ検査調整パターン記憶部302や表示情報伝達部303等によって、
図1に示した発光駆動信号出力部31が構成される。
【0061】
ガンマ調整制御部304はガンマ調整処理の制御を行い、ガンマ調整モード/輝度/周波数切り替え部305は、ガンマ調整モードと輝度と周波数を切り替える。
【0062】
ディスプレイ輝度安定判定部306は、ガンマ調整に際してディスプレイ4の輝度が安定したかどうかを判定し、安定した状態でガンマ調整が行われる。ガンマ調整許容幅記憶部307は、ガンマ調整の許容幅を例えば顧客毎あるいはディスプレイ4毎に記憶する。
【0063】
ガンマ調整結果判定部308はガンマ調整の結果を判定し、ガンマ調整結果通知部309はガンマ調整の結果をディスプレイ4に通知する。ガンマ調整の結果は、再設定された入力信号に対する出力輝度の関係(式あるいはルックアップテーブル等)あるいは、ディスプレイ検査調整パターン記憶部202に記憶されているディスプレイへの入力信号(電圧値)と出力輝度の関係式に対する補正係数等である。時間計測部310はガンマ調整時等において時間計測を行う。
【0064】
上述のガンマ調整制御部304、ガンマ調整モード/輝度/周波数切り替え部305、ディスプレイ輝度安定判定部306、ガンマ調整許容幅記憶部307、ガンマ調整結果判定部308、ガンマ調整結果通知部309、時間計測部310等によって、
図1に示したガンマ調整部31が構成される。
【0065】
ディスプレイ4は、制御部41と、発光部42と、駆動周波数制御部43と、表示情報取得部44と、ガンマ調整結果記憶部45等を備えている。
【0066】
制御部41はディスプレイ4の全体を統括的に制御し、発光部42はLED等の発光素子からなる。駆動周波数制御部43は、ディスプレイ検査・調整装置3から出力された発光駆動周波数で発光するように発光部2を駆動制御する。
【0067】
表示情報取得部44は、ディスプレイ検査・調整装置3の表示情報伝達部303から伝達されるディスプレイ4に表示させる情報を取得する。ガンマ調整結果記憶部45はディスプレイ検査・調整装置3のガンマ調整結果通知部309から通知されるガンマ調整結果を記憶する。
【0068】
この実施形態では、前述したように、光測定装置2は測定した輝度をユーザー校正データを使用して補正する。ユーザー校正データは、ディスプレイ4の発光色毎に、ディスプレイ4の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた複数の校正ポイントにおいて作成されている。ガンマ調整処理における複数の調整ポイントの全てに対応する校正データが作成されているのが望ましいが、多数のユーザー校正データを用意する必要があるため、ユーザー校正データの作成に時間がかかり、実際上困難である。
【0069】
このため、ディスプレイ検査・調整装置3から入力された発光モード信号に基づいて、ガンマ調整ポイントに近い校正ポイントのユーザー校正データを用いて測定値を補正するが、ガンマ調整ポイントから離れるにつれ補正精度が低下する。
【0070】
そこで、発光モード(ガンマ調整ポイント)に適合するように、メモリに記憶されているユーザー校正データに基づいて補間し、この補間した新たな校正データを使用して測定値を補正しても良い。例えば複数の校正ポイントのユーザー校正データを使用して補間計算処理を行い、2つの校正ポイント間の校正データとして新たな校正データを演算により作成する。このように、実際の測定に基づいて作成したユーザー校正データを利用して、新たな校正データを演算にて作成することにより、記憶されるユーザー校正データの数が少なくても、発光モードに適合したユーザー校正データを作成することができる。
【0071】
図8はガンマ調整処理の概要を示すシーケンス図である。
【0072】
ディスプレイ検査・調整装置3はガンマ調整条件を決定したのち(ステップS01)、ディスプレイ4に対し、決定したガンマ調整条件に対応する階調、ガンマモード、駆動周波数を含む発光モードを指定する(ステップS02)。指定を受けたディスプレイ4は指定された発光モードで発光する(ステップS03)。
【0073】
一方で、ディスプレイ検査・調整装置3は光測定装置2に対し、階調、ガンマモード、駆動周波数を含む測定条件設定、換言すればディスプレイ4に対して指定した発光モードを示す信号を送信するとともに(ステップS04)、測定開始指示を送信する(ステップS05)。なお、測定条件設定と測定開始指示は別々に送信しても良いし同時でも良い。
【0074】
測定条件設定と測定開始指示を受信した光測定装置2は測定を行う。具体的には、受光センサ20で受光しA/D変換回路26の出力値であるAD値を取得したのち(ステップS06)、輝度を決定する(ステップS07)。
【0075】
次いで、光測定装置2は、ユーザー校正データ記憶部29bに記憶されている多数のユーザー校正データの中から使用するユーザー校正データを決定する(ステップS08)。ユーザー校正データは基本的には発光モード信号に基づいて決定されるが、輝度(実際の光強度信号)に基づいて、実際の光強度信号に最も近い輝度を有するユーザー校正データを使用すべき校正データとして決定しても良い。この理由は、もしこのユーザー校正データを使用して補正された測定結果が、ガンマ調整の適正範囲外であった場合は、再度ディスプレイ4の出力調整がなされることから、最終的には適正範囲に収まるように問題なく調整されるからである。
【0076】
なお、ガンマ調整ポイントに近い校正データが存在しない場合、校正データを補間して新たな校正データを作成しても良い。この場合の補間方法は前述した方法でも良いが、実際の光強度信号に基づいて補間しても良い。例えば、実際の光強度信号にそれぞれ最も近い輝度を有する2つのユーザー校正データから、中間の輝度を有するユーザー校正データを作成し、この補間後のユーザー校正データを用いて輝度の補正を行っても良い。
【0077】
使用するユーザー校正データの決定後、このユーザー校正データを用いて測定値を補正し、測定結果を決定する(ステップS09)。光測定装置2は補正後の測定結果をディスプレイ検査・調整装置3に通知する(ステップS10)。また、使用したユーザー校正データもディスプレイ検査・調整装置3に通知する(ステップS11)。ディスプレイ検査・調整装置3からの取得要請に基づいて、ユーザー校正データを通知しても良い。
【0078】
ディスプレイ検査・調整装置3は通知された測定結果と校正データを履歴として保持する(ステップS12)。また、測定結果について適否判定を行い(ステップS13)、許容範囲かどうかを調べる(ステップS14)。許容範囲でなければ(ステップS14でNO)、出力の変更をディスプレイ4に指示する(ステップS15)。この場合、ディスプレイ4は変更した出力で発光を行い、適正判定が出されるまで発光、測定、結果判定、出力変更指示が繰り返される。
【0079】
許容範囲である場合(ステップS14でYES)、ディスプレイ検査・調整装置3は次のガンマ調整条件に変更したのち(ステップS16)、ディスプレイ4に対しそのガンマ調整条件に対応する発光モードを指定する(ステップS17)。以降、ガンマ調整の終了までこれらの処理を繰り返す。
【0080】
図9(A)は、ディスプレイ検査・調整装置3のガンマ調整処理動作を示すフローチャートである。
【0081】
ステップS21ではガンマ調整条件を決定した後、ステップS22で、決定したガンマ調整条件に基づいてディスプレイを発光させ、ステップS23でガンマ調整を実行する。ガンマ調整の実行については後述する。
【0082】
次いで、ステップS24で、全ての駆動周波数でガンマ調整を完了したかどうかを判断する。完了していなければ(ステップS24でNO)、ステップS22に戻り、完了するまでガンマ調整条件を変えてガンマ調整の実行と、完了判断を繰り返す。完了すると(ステップS24でYES)、処理を終了する。
【0083】
図9(B)は、同図(A)におけるステップS23のガンマ調整実行処理の内容を示すフローチャートである。
【0084】
ステップS231ではガンマ調整の開始を待ち(ステップS231でNO)、開始されると(ステップS231でYES)、ステップS232でガンマモードを決定する。
【0085】
次にステップS233でガンマ調整する階調を決定したのち、ステップS234でディスプレイ4の出力値を決定し、ステップS235で、ディスプレイ4の表示が安定するのを待つ(ステップS235でNO)。表示が安定すると(ステップS235でYES)、ステップS236で測定開始を光測定装置2に指示したのち、ステップS237で光測定装置2からの測定結果の通知を待つ(ステップS237でNO)。測定結果の通知があると(ステップS237でYES)、ステップS238で結果判定処理を行う。結果判定処理については後述する。
【0086】
次にステップS239で、測定結果が許容範囲かどうかを調べる。許容範囲でなければ(ステップS239でNO)、ステップS240で、予め設定された繰り返し上限回数に達したかどうかを調べる。達していれば(ステップS240でYES)、異常と判断して処理を終了する。上限回数に達していなければ(ステップS240でNO)、ステップS234に戻り、新たなディスプレイ出力値を決定してステップS235以降の処理を繰り返す。
【0087】
ステップS239で測定値が許容範囲であれば(ステップS239でYES)、ステップS242で、全ての階調でガンマ調整が完了したかどうかを調べる。完了していなければ(ステップS242でNO)、ステップS233に戻り、次の階調を決定してステップS234以降の処理を繰り返す。全ての階調でガンマ調整が完了していれば(ステップS242でYES)、ステップS243に進む。
【0088】
ステップS243では、全てのガンマモードについて調整が完了したかどうかを調べる。完了していなければ(ステップS243でNO)、ステップS232に戻り、次のガンマモードを決定してステップS233以降の処理を繰り返す。
【0089】
ステップS243で、全てのガンマモードについて調整が完了した場合は(ステップS243でYES)、ガンマ調整実行処理を終了する。
【0090】
図9(C)は同図(B)におけるステップS238の結果判定処理の内容を示すフローチャートである。
【0091】
ステップS2381では輝度色度目標値を取得し、ステップS2382では輝度色度の許容範囲を取得する。次いで、ステップS2383で測定結果を取得したのち、ステップS2384では輝度色度が目標値に対して許容範囲内であるかを判定して、結果判定処理を終了する。
【0092】
図10(A)は、光測定装置2のガンマ調整時の測定動作を示すフローチャートである。
【0093】
ステップS41では、ディスプレイ検査・調整装置3からの測定開始指示を待ち(ステップS41でNO)、測定開始指示があると(ステップS41でYES)、ステップS42で測定を行う。次いでステップS43で、工場校正データ(工場校正値)を取得した後、ステップS44で工場校正値に基づいて補正を行い測定結果(1)を算出する。
【0094】
次にステップS45で、ユーザー校正データ(ユーザー校正値)を取得した後、ステップS46で、ユーザー校正値に基づいて補正を行い測定結果(2)を算出する。
【0095】
次いでステップS47で、測定結果をディスプレイ検査・調整装置3に通知した後、ステップS48で、使用したユーザー校正値を通知して、測定処理を終了する。
【0096】
図10(B)は、同図(A)におけるステップS45のユーザー校正値取得処理の一例を示すフローチャートである。
【0097】
ステップS451で、ガンマ調整条件つまり発光モード信号をディスプレイ検査・調整装置3から取得する。次いで、ステップS452で、発光モード信号を基に校正データが規定されたルックアップテーブルの参照パラメータを決定したのち、ステップS453で、参照パラメータを基にルックアップテーブルを参照し、ステップS454でユーザー校正値を取得して処理を終了する。
【0098】
図10(C)は、
図10(A)におけるステップS45のユーザー校正値取得処理の他の例を示すフローチャートである。この例では、複数のユーザー校正値を用いて、新たなユーザー校正値を変換作成するものである。
【0099】
ステップS455で、ガンマ調整条件つまり発光モード信号をディスプレイ検査・調整装置3から取得する。次いで、ステップS456で、発光モード信号を基に校正データが規定されたルックアップテーブルの参照パラメータを決定したのち、ステップS457で、参照パラメータを基にルックアップテーブルを参照する。
【0100】
次に、ステップS458で補間係数を算出した後、ステップS459で、既存のユーザー校正値と補間係数とを組み合わせて新たなユーザー校正値に変換取得し、処理を終了する。
【0101】
このようにこの実施形態では、ディスプレイ4の発光色毎に、ディスプレイ4の複数の発光モードに対応する複数の階調に応じた校正データを予めメモリ29等の記憶部に記憶しておき、光測定装置2の受光センサ20で受光したディスプレイ4からの光強度信号と、ディスプレイ4の発光状態に対応した校正データとを用いて、受光センサ20で受光した光の輝度等を含む測定値が算出される。このため、異なる色、異なる発光モードでの発光が可能なディスプレイ4であっても、その発光条件に対応する校正データあるいはその発光条件に近い校正データを用いることができるから、従来のように特定のパネル駆動周波数での輝度に対する校正データのみを使用する場合、あるいは階調情報に基づく校正データを使用する場合に較べて、適正な校正データを選択し使用することができる。その結果、輝度、色度等の測定対象パラメータを、異なる発光条件にもかかわらず少ない誤差で高精度に校正することができ、ひいてはガンマ調整を高精度に行うことができる。
【0102】
また、低輝度域でのガンマ調整の場合、低輝度は光量が少ないため測定結果がばらつく傾向があるため、従来では出力調整が繰り返されるが、本実施形態では、低輝度域においても、適正な校正データの使用により精度良く測定できるから、従来に較べて測定を繰り返す必要がなく、短時間での調整が可能となる。
【0103】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。
【0104】
例えば、ディスプレイ検査・調整装置3がガンマ調整を行うものとしたが、光測定装置2がガンマ調整機能を内蔵していても良い。
【符号の説明】
【0105】
1 ディスプレイ検査・調整システム
2 光測定装置
20 受光センサ
26 A/D変換回路
27 CPU
27d 演算・補正部
27e データ入出力部(発光モード信号入力手段)
29 メモリ
29a 工場校正データ記憶部
29b ユーザー校正データ記憶部
3 ディスプレイ検査・調整装置
31 発光駆動信号出力部
32 ガンマ調整部
301 通信部
304 ガンマ調整制御部
4 ディスプレイ(測定対象物)