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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100140
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】自動運転車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/17 20200101AFI20240719BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240719BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240719BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240719BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240719BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240719BHJP
【FI】
B60W30/17
G05D1/02 S
G08G1/16 C
B60T7/12 F
B60W40/04
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003910
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元太
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BA02
3D241BA31
3D241CC02
3D241CC03
3D241CC08
3D241CD11
3D241CD15
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA51Z
3D241DB01Z
3D241DC02Z
3D241DC28Z
3D241DC33Z
3D246GB34
3D246GC16
3D246HA13A
3D246HA64A
3D246HB12C
3D246JA02
3D246JB11
5H181AA01
5H181AA07
5H181CC03
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL09
5H301AA01
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301LL07
5H301LL11
5H301LL14
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】自動運転車両が前方障害物に過剰に近付くことを抑制すること。
【解決手段】自動運転車両は、距離計と、制御装置と、を備える。制御装置は、前方障害物までの距離が予め定められた境界値以上の場合、停止時障害物最短距離に、一定値を加えた値を停止時障害物距離として指示速度を算出する。制御装置は、前方障害物までの距離が境界値未満の場合、停止時障害物最短距離に、距離計により検知された前方障害物までの距離が短くなるほど小さくなる可変値であって一定値よりも小さい可変値を加えた値を停止時障害物距離として指示速度を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示速度に実速度を追従させて走行する自動運転車両であって、
鉛直方向に対する所定の角度毎に電磁波を照射して前記電磁波が当たった点までの距離を検知する距離計と、
前記距離計により検知された前方障害物までの距離が長いほど高い値になり、かつ、前記距離計により検知された前記前方障害物までの距離が停止時障害物距離と一致する地点で前記自動運転車両が停止するように設定された前記指示速度を算出する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記前方障害物までの距離が予め定められた境界値以上の場合、前記自動運転車両が停止した際の前記前方障害物までの距離の目標値である停止時障害物最短距離に、一定値を加えた値を前記停止時障害物距離として前記指示速度を算出し、
前記前方障害物までの距離が前記境界値未満の場合、前記停止時障害物最短距離に、前記距離計により検知された前記前方障害物までの距離が短くなるほど小さくなる可変値であって前記一定値よりも小さい可変値を加えた値を前記停止時障害物距離として前記指示速度を算出する、自動運転車両。
【請求項2】
前記境界値は、前記前方障害物になると想定される想定障害物を前記距離計によって検知することができる検知可能距離と前記想定障害物の全長とを加えた値である、請求項1に記載の自動運転車両。
【請求項3】
前記一定値は、前記前方障害物になると想定される想定障害物の全長である、請求項1又は請求項2に記載の自動運転車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、自動運転車両は、距離計と、制御装置と、を備える。特許文献1では、距離計としてレーザ距離計が用いられている。制御装置は、距離計の検知結果に基づいて自動運転車両の制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-25880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転車両では、前方障害物までの距離によって自動運転車両の速度を制御する場合がある。この場合、距離計の角度分解能や前方障害物の形状によっては、距離計によって検知される前方障害物までの距離が自動運転車両と前方障害物との位置関係の変化によって急激に変化する場合がある。この場合、自動運転車両が前方障害物に過剰に近付いてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する自動運転車両は、指示速度に実速度を追従させて走行する自動運転車両であって、鉛直方向に対する所定の角度毎に電磁波を照射して前記電磁波が当たった点までの距離を検知する距離計と、前記距離計により検知された前方障害物までの距離が長いほど高い値になり、かつ、前記距離計により検知された前記前方障害物までの距離が停止時障害物距離と一致する地点で前記自動運転車両が停止するように設定された前記指示速度を算出する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記前方障害物までの距離が予め定められた境界値以上の場合、前記自動運転車両が停止した際の前記前方障害物までの距離の目標値である停止時障害物最短距離に、一定値を加えた値を前記停止時障害物距離として前記指示速度を算出し、前記前方障害物までの距離が前記境界値未満の場合、前記停止時障害物最短距離に、前記距離計により検知された前記前方障害物までの距離が短くなるほど小さくなる可変値であって前記一定値よりも小さい可変値を加えた値を前記停止時障害物距離として前記指示速度を算出する。
【0006】
制御装置は、前方障害物までの距離が長いほど指示速度を高い値にする。このため、自動運転車両が前方障害物に近付くにつれて指示速度は低くなっていく。制御装置は、前方障害物までの距離が境界値以上の場合、停止時障害物最短距離に一定値を加えた値を停止時障害物距離として指示速度を算出する。自動運転車両が停止した際の前方障害物までの距離の目標値は、停止時障害物最短距離である。前方障害物までの距離が境界値以上の場合、停止時障害物最短距離に一定値が加わるため、前方障害物までの距離が境界値未満の場合に比べて停止時障害物距離が長くなる。これにより、自動運転車両が前方障害物に過剰に近付くことを抑制できる。
【0007】
上記自動運転車両について、前記境界値は、前記前方障害物になると想定される想定障害物を前記距離計によって検知することができる検知可能距離と前記想定障害物の全長とを加えた値であってもよい。
【0008】
上記自動運転車両について、前記一定値は、前記前方障害物になると想定される想定障害物の全長であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動運転車両が前方障害物に過剰に近付くことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自動運転車両の模式図である。
図2図1の自動運転車両の概略構成図である。
図3図2の制御装置が実行する指示速度算出制御を示すフローチャートである。
図4】検知可能距離、及び牽引物の全長を示す図である。
図5】自動運転車両の前方に牽引物を牽引している牽引車が存在している場合の指示速度の変化を示す図である。
図6】自動運転車両の前方に牽引物を牽引しない牽引車が存在している場合の指示速度の変化を示す図である。
図7】自動運転車両の前方に牽引物を牽引しない牽引車が存在している場合の指示速度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、自動運転車両の一実施形態について説明する。
<自動運転車両>
図1に示すように、自動運転車両10は、牽引車30の存在する環境で用いられる。自動運転車両10は、例えば、空港で用いられる。牽引車30は、例えば、トーイングトラクタである。牽引車30は、牽引物31を牽引する。牽引物31は、例えば、トーバー、又は台車である。牽引物31の鉛直方向の寸法は、牽引車30の鉛直方向の寸法よりも短い。牽引物31の鉛直方向の寸法は、例えば、牽引物31の背面33の鉛直方向の寸法である。自動運転車両10は、牽引車であってもよいし、牽引車とは異なる車両であってもよい。牽引車とは異なる車両は、例えば、乗用車、又はフォークリフトである。
【0012】
図2に示すように、自動運転車両10は、制御装置11を備える。制御装置11は、プロセッサ12と、記憶部13と、を備える。プロセッサ12としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びDSP(Digital Signal Processor)を挙げることができる。記憶部13は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部13は、処理をプロセッサ12に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部13、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置11は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0013】
自動運転車両10は、走行モータ14と、走行モータドライバ15と、走行量センサ16と、を備える。走行モータ14は、駆動輪を回転させるためのモータである。走行モータドライバ15は、走行モータ14を駆動させる。走行量センサ16は、走行モータ14の回転数を検出する。走行モータ14の駆動により駆動輪が回転することで、自動運転車両10は走行する。
【0014】
自動運転車両10は、操舵モータ17と、操舵モータドライバ18と、操舵量センサ19と、を備える。操舵モータ17は、操舵輪を操舵するためのモータである。操舵モータドライバ18は、操舵モータ17を駆動させる。操舵量センサ19は、操舵モータ17の回転数を検出する。操舵モータ17の駆動により操舵輪が操舵されることで、自動運転車両10は旋回する。
【0015】
自動運転車両10は、距離計20を備える。距離計20は、電磁波を照射して電磁波が当たった点までの距離を検知する。図1に示すように、本実施形態の距離計20は、電磁波としてレーザ光Laを照射するレーザ距離計である。レーザ距離計は、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)と称されることもある。距離計20としては、電磁波として電波を照射するレーダーであってもよい。
【0016】
距離計20は、3次元座標系の座標で物体の位置を検出する。距離計20は、周囲にレーザ光Laを照射し、レーザ光Laが当たった点から反射された反射光を受光することで点までの距離を検知する。レーザ光Laが当たった点は、物体の表面の一部を表す。点の位置は、極座標系の座標で表すことができる。極座標系における点の座標は、直交座標系の座標に変換される。極座標系から直交座標系への変換は、距離計20によって行われてもよいし、距離計20とは異なる装置で行われてもよい。本実施形態では、距離計20により極座標系から直交座標系への変換が行われているとする。距離計20は、センサ座標系での点の座標を導出する。センサ座標系は、距離計20を原点とする3軸直交座標系である。一例として、センサ座標系は、水平方向のうち自動運転車両10の左右方向に延びる軸をX軸、水平方向のうち自動運転車両10の前後方向に延びる軸をY軸、X軸及びY軸に直交する軸をZ軸とする座標系である。距離計20は、レーザ光Laを照射することにより得られた複数の点の座標を点群データとして出力する。
【0017】
距離計20は、水平方向に対する所定の角度毎にレーザ光Laを照射する。距離計20は、鉛直方向に対する所定の角度毎にレーザ光Laを照射する。これらの所定の角度は、距離計20の仕様によって定まっている。鉛直方向に対する所定の角度は、水平方向に対する所定の角度よりも大きい。即ち、鉛直方向に対する角度分解能は、水平方向に対する角度分解能よりも粗い。
【0018】
制御装置11は、自動運転車両10の自己位置を推定してもよい。自己位置とは、地図座標系での自動運転車両10の一点を示す座標である。自動運転車両10の一点は任意であるが、例えば、自動運転車両10の水平方向での中心位置を挙げることができる。地図座標系は、3軸直交座標系である。地図座標系は、自動運転車両10が用いられる環境の任意の一点を原点とする座標系である。自己位置の推定は、距離計20の検出結果と地図データとを照合することで行われる。地図データは、自動運転車両10が用いられる環境に存在する物体の形状、自動運転車両10が用いられる環境の広さ等、自動運転車両10が用いられる環境の物理的構造に関する情報である。即ち、地図データは、自動運転車両10が用いられる環境を地図座標系の座標で表したデータである。自己位置の推定は、距離計20を用いた自己位置の推定に、内界センサを用いたデッドレコニングを組み合わせて行われてもよい。内界センサとしては、走行量センサ16、及び操舵量センサ19を挙げることができる。自己位置の推定は、距離計20を用いた自己位置の推定に、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から送信される衛星信号を用いた自己位置の推定を組み合わせて行われてもよい。
【0019】
制御装置11は、自動運転車両10の速度制御を行う。制御装置11は、走行モータドライバ15に指示速度vを与える。走行モータドライバ15は、実速度が指示速度vに追従するように走行モータ14を制御する。これにより、自動運転車両10の実速度が指示速度vに追従する。制御装置11は、走行モータドライバ15に指示減速度を与える。走行モータドライバ15は、減速度が指示減速度に追従するように走行モータ14を制御する。
【0020】
<指示速度算出制御>
制御装置11は、指示速度算出制御によって算出した指示速度vを走行モータドライバ15に出力する。指示速度算出制御は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0021】
図3に示すように、ステップS1において、制御装置11は、検知距離Lを取得する。検知距離Lは、自動運転車両10から前方障害物までの距離である。前方障害物は、自動運転車両10の前方に存在する物体である。本実施形態では、一例として、牽引物31を前方障害物とする。検知距離Lは、距離計20によって検知された前方障害物までの距離である。
【0022】
図1に示すように、鉛直方向に対するレーザ光Laの照射角度によってはレーザ光Laが路面に照射される。このため、制御装置11は、Z座標が予め定められた値よりも大きい点の座標について前方障害物の座標と判断すればよい。予め定められた値としては、路面にレーザ光Laが照射されることで得られた点の座標を除外できるように設定されている。Z座標は、センサ座標系のZ軸の座標である。
【0023】
距離計20は、鉛直方向に対する所定の角度毎にレーザ光Laを照射するため、距離計20によって検知される距離は鉛直方向成分を含む。検知距離Lは、距離計20によって検知される距離から鉛直方向成分を除去して水平方向成分のみにしたものであってもよい。鉛直方向成分は、鉛直方向に対するレーザ光Laの照射角度と、距離計20によって検知される距離とに基づいて除去することができる。本実施形態において、制御装置11は、鉛直方向成分を除去した距離のうち最も短いものを検知距離Lとする。即ち、制御装置11は、Y座標が最も自動運転車両10に近い点までの距離を検知距離Lとする。Y座標は、センサ座標系のY軸の座標である。
【0024】
自動運転車両10と牽引物31との位置関係によっては、レーザ光Laが牽引物31に照射されない場合がある。距離計20の鉛直方向に対する角度分解能が粗いほどレーザ光Laは牽引物31に照射されにくい。自動運転車両10と牽引物31とが離れているほどレーザ光Laは牽引物31に照射されにくい。図1に示す例では、牽引車30にはレーザ光Laが照射される一方で、牽引物31にはレーザ光Laが照射されていない。この場合、検知距離Lは、牽引車30までの距離になる。また、牽引物31にレーザ光Laが照射された場合であっても、牽引物31の上面32にレーザ光Laが照射された場合、レーザ光Laは牽引物31の上面32で牽引車30に向けて反射される。そして、牽引車30で再度反射された反射光が距離計20に到達することになる。このため、検知距離Lが自動運転車両10から牽引物31までの距離となる場合は、実質的には、レーザ光Laが牽引物31の背面33に照射された場合に限られる。
【0025】
図3に示すように、次に、ステップS2において、制御装置11は、検知距離Lが境界値P以上か否かを判定する。本実施形態の境界値Pは、検知可能距離Mと牽引物31の全長Nとを加えた値である。
【0026】
図4に示すように、検知可能距離Mは、前方障害物になると想定される想定障害物を距離計20によって検知することができる距離である。想定障害物は、自動運転車両10を運用する際に検知したいと想定される障害物である。想定障害物としては、例えば、自動運転車両10が用いられる環境に存在する物体のうち鉛直方向の寸法が最も短いものである。鉛直方向の寸法が短いほど、距離計20を用いた検知が行われにくいため、鉛直方向の寸法が最も短いものを想定障害物とすれば、その他の物体についても検知を行えるからである。本実施形態において、想定障害物は牽引物31である。
【0027】
検知可能距離Mは、予め算出されている。検知可能距離Mは、距離計20の鉛直方向に対する角度分解能、及び牽引物31の鉛直方向の寸法によって定まる。鉛直方向に隣り合うレーザ光La同士の間隔は、距離計20から離れるにつれて長くなる。鉛直方向に隣り合うレーザ光La同士の間隔が牽引物31の鉛直方向の寸法よりも短い場合、鉛直方向に隣り合うレーザ光Laの少なくとも一方が牽引物31の背面33に照射される。このため、距離計20から水平方向に向かう距離であって鉛直方向に隣り合うレーザ光La同士の間隔が牽引物31の鉛直方向の寸法と同一となる距離よりも若干小さい値を検知可能距離Mとすればよい。自動運転車両10が用いられる環境に、鉛直方向の寸法が異なる複数種類の牽引物31が存在する場合がある。この場合、牽引物31の鉛直方向の寸法としては、最も短いものを採用すればよい。
【0028】
牽引物31の全長Nは、想定障害物の水平方向の寸法である。牽引物31の全長Nは、予め把握することができる。自動運転車両10が用いられる環境に、全長が異なる複数種類の牽引物31が存在する場合がある。この場合、牽引物31の全長Nとしては、最も長いものを採用すればよい。
【0029】
検知可能距離M、及び牽引物31の全長Nは、例えば、記憶部13に記憶されている。これにより、制御装置11は、検知距離Lが境界値P以上か否かを判定できる。ステップS2の判定結果が肯定の場合、制御装置11は、ステップS3の処理を行う。ステップS2の判定結果が否定の場合、制御装置11は、ステップS4の処理を行う。
【0030】
ステップS3において、制御装置11は、第1算出式によって指示速度vを算出する。第1算出式は、(1)式及び(2)式である。
【0031】
【数1】
aは、自動運転車両10の減速度である。Dは、停止時障害物距離である。停止時障害物距離Dは、自動運転車両10が停止した場合における自動運転車両10から前方障害物までの検知距離Lである。言い換えれば、(1)式で算出した指示速度vは、自動運転車両10から前方障害物までの検知距離Lが停止時障害物距離Dと一致する地点で自動運転車両10が停止できるように設定されている。Dは、停止時障害物最短距離Dである。停止時障害物最短距離Dは、自動運転車両10が停止した際の前方障害物までの検知距離Lの目標値である。第1算出式は、停止時障害物最短距離Dに、一定値である牽引物31の全長Nを加えた値を停止時障害物距離Dとして指示速度vを算出する式である。
【0032】
(1)式から把握できるように、指示速度vは、検知距離Lが長いほど、即ち、自動運転車両10と前方障害物との距離が離れているほど高い値になる。指示速度vは、減速度aで減速を行った場合に、自動運転車両10と前方障害物との検知距離Lが停止時障害物距離Dとなる地点で自動運転車両10が停止できるように算出される。第1算出式では、停止時障害物距離Dは、停止時障害物最短距離Dに牽引物31の全長Nを加えた距離になる。従って、第1算出式で算出される指示速度vは、検知距離Lが牽引物31までの距離か牽引車30までの距離かに関わらず、牽引物31からの検知距離Lが停止時障害物距離D以上離れた地点で自動運転車両10が停止できるように算出される。例えば、検知距離Lが牽引物31までの距離であった場合、停止時障害物最短距離D+牽引物31の全長Nの値だけ牽引物31から離れた地点で自動運転車両10が停止するように指示速度vが算出される。検知距離Lが牽引車30までの距離であった場合、停止時障害物最短距離D+牽引物31の全長Nの値だけ牽引車30から離れた地点で自動運転車両10が停止するように指示速度vが算出される。この場合、牽引物31からの検知距離Lが停止時障害物最短距離Dとなる地点で自動運転車両10が停止するように指示速度vが算出される。
【0033】
ステップS4において、制御装置11は、第2算出式によって指示速度vを算出する。第2算出式は、(1)式及び(3)式である。
【0034】
【数2】
(3)式から把握できるように、(3)式の第2項は、検知距離Lが短いほど、即ち、自動運転車両10が前方障害物に近付くほど小さくなる可変値である。可変値は、牽引物31の全長Nよりも小さい値である。検知距離Lが停止時障害物最短距離Dと同一の値になると、(3)式の第2項は0になる。検知距離Lが停止時障害物最短距離Dと同一の値のとき、指示速度vは0になる。即ち、自動運転車両10は、停止する。(3)式から把握できるように、制御装置11は、停止時障害物最短距離Dに、可変値を加えた値を停止時障害物距離Dとして指示速度vを算出する。
【0035】
[本実施形態の作用]
指示速度vは、(1)式から算出される。検知距離Lが長いほど指示速度vは高い値になるため、制御装置11は、前方障害物までの距離が長いほど指示速度vを高い値にする。自動運転車両10が前方障害物に近付くにつれて指示速度vは低くなっていく。
【0036】
制御装置11は、前方障害物までの検知距離Lが境界値P以上の場合、停止時障害物最短距離Dに一定値を加えた値を停止時障害物距離Dとして指示速度vを算出する。自動運転車両10が停止した際の前方障害物までの検知距離Lの目標値は、停止時障害物最短距離Dである。前方障害物までの検知距離Lが境界値P以上の場合、停止時障害物最短距離Dに一定値である牽引物31の全長Nが加わるため、前方障害物までの検知距離Lが境界値P未満の場合に比べて停止時障害物距離Dが長くなる。
【0037】
本実施形態において、一定値は、牽引物31の全長Nである。また、境界値Pは、検知可能距離Mと牽引物31の全長Nとを加算した値である。検知距離Lが境界値P以上の場合、検知距離Lは牽引物31までの距離ではなく、牽引車30までの距離であるおそれがある。この場合、自動運転車両10と牽引物31との位置関係によっては、検知距離Lが牽引車30までの距離から牽引物31までの距離に変わる場合がある。詳細にいえば、レーザ光Laが牽引物31には照射されずに牽引車30に照射される状態から、レーザ光Laが牽引物31に照射される状態に切り替わることで、検知距離Lが牽引車30までの距離から牽引物31までの距離に変わる場合がある。この場合、検知距離Lが急激に変化する。この際、指示速度vも急激に変化する。
【0038】
本実施形態においては、検知距離Lが牽引物31までの距離か否かに関わらず、停止時障害物距離Dは牽引物31の全長Nが加算された値である。即ち、検知距離Lが牽引車30までの距離であったとしても牽引物31までの距離とみなして指示速度vが算出されることになる。これにより、停止時障害物距離Dを停止時障害物最短距離Dとする場合に比べて、指示速度vが低い値になる。
【0039】
図5には、自動運転車両10の前方に牽引物31を牽引する牽引車30が存在している場合の指示速度vの変化を示す。図5において、実線は指示速度vを示す。破線は、実速度を示す。自動運転車両10から牽引物31までの距離は、時間経過に伴い短くなっているとする。時刻T11で検知距離Lが牽引車30までの距離から牽引物31までの距離に変化したとする。この場合、検知距離Lが急激に短くなることによって指示速度vも急激に低下する。本実施形態において、制御装置11は、減速度aに制限を加えることによって減速度aを一定に維持する。これにより、実速度は急激に低下することなく、滑らかな減速が行われる。時刻T11で指示速度vは急激に低下するものの、時刻T11以前でも検知距離Lが牽引物31までの距離であるとみなして指示速度vを算出している。このため、指示速度vが急激に低下した際に、これに追従して実速度を急激に低下させなかったとしても、検知距離Lが停止時障害物最短距離Dとなる地点で自動運転車両10を停止させることができる。即ち、停止時障害物距離Dを牽引物31の全長Nが加算された値とすることによって、第1算出式で算出される指示速度vは、検知距離Lが牽引物31までの距離ではない場合であっても、牽引物31までの距離が停止時障害物最短距離Dとなる地点で自動運転車両10を停止させることができる指示速度vになる。これにより、減速度aに制限を加えた場合であっても検知距離Lが停止時障害物最短距離Dとなる地点で自動運転車両10を停止させることができる。
【0040】
図6には、自動運転車両10の前方に牽引物31を牽引しない牽引車30が存在している場合の指示速度vの変化を示す。自動運転車両10から牽引車30までの距離は、時間経過に伴い短くなっているとする。時刻T12で検知距離Lが境界値P以上から境界値P未満に切り替わることで、減速度aは切り替わるものの滑らかな減速が行われる。
【0041】
[本実施形態の効果]
(1)制御装置11は、前方障害物までの検知距離Lが境界値P以上の場合、停止時障害物最短距離Dに一定値を加えた値を停止時障害物距離Dとして指示速度vを算出する。これにより、自動運転車両10が前方障害物に過剰に近付くことを抑制できる。
【0042】
(2)境界値Pは、牽引物31を距離計20によって検知することができる検知可能距離Mと牽引物31の全長Nとを加えた値である。境界値Pをこのように設定することによって検知距離Lが牽引車30までの距離である場合であっても、牽引物31までの距離とみなして指示速度vを算出できる。
【0043】
(3)一定値は、牽引物31の全長Nである。これにより、第1算出式で算出される指示速度vは、停止時障害物最短距離Dに牽引物31の全長Nが加算された値に基づいて算出されたものになる。これにより、検知距離Lが停止時障害物最短距離Dとなる地点で自動運転車両10を停止させることができる。
【0044】
(4)制御装置11は、減速度aに制限を加える。これにより、自動運転車両10は、緩やかに減速を行うことができる。自動運転車両10の急制動を抑制することができる。自動運転車両10が大きな減速度aを出せない場合であっても、前方障害物に過剰に近づくことなく自動運転車両10を停止させることができる。
【0045】
(5)牽引車30が牽引物31を牽引している場合、自動運転車両10は、牽引物31から停止時障害物最短距離D離れた地点で停止する。牽引車30が牽引物31を牽引していない場合、自動運転車両10は、牽引車30から停止時障害物最短距離D離れた地点で停止する。このように、牽引物31の有無に関わらず、前方障害物から一定距離で自動運転車両10を停止させることができる。
【0046】
(6)距離計20の鉛直方向に対する角度分解能が粗い場合であっても、自動運転車両10が前方障害物に過剰に近付くことを抑制できる。自動運転車両10が前方障害物に過剰に近付くことを抑制するために、鉛直方向に対する角度分解能が細かい距離計を用いる必要がない。従って、製造コストの低減を図ることができる。
【0047】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
○境界値Pは、検知可能距離M+牽引物31の全長Nより大きい値であってもよい。例えば、境界値Pは、検知可能距離Mであってもよい。
○一定値は、牽引物31の全長Nにマージンを加えた値であってもよい。
【0049】
○距離計20は、自己位置の推定に用いられなくてもよい。例えば、距離計20は、前方障害物までの距離を検知するために設けられた専用のものであってもよい。
○距離計20は、鉛直方向に対する所定の角度毎にレーザ光Laを照射できればよく、水平方向に対するレーザ光Laの照射角度を変更しないものであってもよい。即ち、距離計20は、2次元座標系の座標で物体の位置を検出するものであってもよい。
【0050】
○自己位置の推定は、制御装置11とは異なる装置によって行われてもよい。
○想定障害物は、例えば、トラックの荷台であってもよい。
○(3)式は、以下の(4)式に置き換えてもよい。
【0051】
【数3】
(4)式の第2項は、自動運転車両10が前方障害物に近付くほど小さくなる可変値である。可変値は、牽引物31の全長Nよりも小さい。(4)式から把握できるように、制御装置11は、停止時障害物最短距離Dに、可変値を加えた値を停止時障害物距離Dとして指示速度vを算出する。
【0052】
図7には、自動運転車両10の前方に牽引物31を牽引しない牽引車30が存在している場合に、(1)式及び(4)式を用いて指示速度vを算出した場合の指示速度vの変化を示す。図7から把握できるように、自動運転車両10は、緩やかに減速する。
【0053】
○自動運転車両10は、エンジンによって走行する車両でもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…自動運転車両、11…制御装置、20…距離計、31…前方障害物及び想定障害物である牽引物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7