(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100141
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】自律走行車両
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240719BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003911
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 遼
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
(57)【要約】
【課題】物体と自律走行車両とが接触することを抑制すること。
【解決手段】自律走行車両は、構造物までの距離を非接触で測定する距離計と、制御装置と、を備える。制御装置は、探索有効エリアに存在する構造物までの距離を距離計から取得する。制御装置は、探索有効エリアに存在する構造物までの距離を自律走行車両の車幅方向の距離に変換する。制御装置は、車幅方向の距離に基づいて取得される離間距離が所定距離となるように自律走行車両を操舵する。探索有効エリアは、構造物の備える凹部の幅よりも構造物における探索有効エリアの幅のほうが広くなるように設定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物から所定距離離れた状態で前記構造物に沿って走行する自律走行車両であって、
前記構造物までの距離を非接触で測定する距離計と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
予め把握した前記構造物の形状に基づいて設定された探索有効エリアに存在する前記構造物までの前記距離を前記距離計から取得し、
前記探索有効エリアに存在する前記構造物までの前記距離を前記自律走行車両の車幅方向の距離に変換し、
前記車幅方向の距離に基づいて取得される離間距離が前記所定距離となるように前記自律走行車両を操舵し、
前記探索有効エリアは、前記構造物の備える凹部の幅よりも前記構造物における前記探索有効エリアの幅のほうが広くなるように設定されている、自律走行車両。
【請求項2】
前記距離計は、水平方向に拡がる測定可能範囲に存在する前記構造物までの距離を測定し、
前記探索有効エリアは、前記測定可能範囲の一部である、請求項1に記載の自律走行車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記車幅方向の距離のうち最短距離を前記離間距離とする、請求項1又は請求項2に記載の自律走行車両。
【請求項4】
前記自律走行車両の自己位置を推定する自己位置推定装置を備え、
前記制御装置は、前記自己位置推定装置による前記自己位置の推定を行えない場所であって予め設定された場所で、前記構造物から前記所定距離離れた状態で前記構造物に沿って前記自律走行車両を走行させる、請求項1又は請求項2に記載の自律走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の自律走行車両は、複数の接触センサと、光学式測距センサと、を備える。複数の接触センサは、自律走行車両の前後方向に並んで設けられている。自律走行車両は、複数の接触センサを壁に接触させながら走行を行う。壁に凹部が存在している場合、自律走行車両は、光学式測距センサによって測定した距離から壁の形状を認識する。そして、自律走行車両は、壁に凹部が存在している箇所では、光学式測距センサによって測定した距離に基づいて走行を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の自律走行車両は、接触センサを用いることで走行を行っている。自律走行車両では、壁に接触センサを接触させることができない場合がある。例えば、壁に沿って物体が存在している場合、当該物体と接触センサとが接触するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する自律走行車両は、構造物から所定距離離れた状態で前記構造物に沿って走行する自律走行車両であって、前記構造物までの距離を非接触で測定する距離計と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、予め把握した前記構造物の形状に基づいて設定された探索有効エリアに存在する前記構造物までの前記距離を前記距離計から取得し、前記探索有効エリアに存在する前記構造物までの前記距離を前記自律走行車両の車幅方向の距離に変換し、前記車幅方向の距離に基づいて取得される離間距離が前記所定距離となるように前記自律走行車両を操舵し、前記探索有効エリアは、前記構造物の備える凹部の幅よりも前記構造物における前記探索有効エリアの幅のほうが広くなるように設定されている。
【0006】
制御装置は、距離計から取得した距離を車幅方向の距離に変換する。制御装置は、離間距離が所定距離となるように自律走行車両を操舵する。非接触で構造物までの距離を測定する距離計を用いて自律走行車両の操舵を行うことができる。このため、構造物に沿って物体が存在していた場合であっても、当該物体と自律走行車両とが接触することを抑制できる。
【0007】
上記自律走行車両について、前記距離計は、水平方向に拡がる測定可能範囲に存在する前記構造物までの距離を測定し、前記探索有効エリアは、前記測定可能範囲の一部であってもよい。
【0008】
上記自律走行車両について、前記制御装置は、前記車幅方向の距離のうち最短距離を前記離間距離としてもよい。
上記自律走行車両について、前記自律走行車両の自己位置を推定する自己位置推定装置を備え、前記制御装置は、前記自己位置推定装置による前記自己位置の推定を行えない場所であって予め設定された場所で、前記構造物から前記所定距離離れた状態で前記構造物に沿って前記自律走行車両を走行させてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、物体と自律走行車両とが接触することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自律走行車両の使用される区域の模式図である。
【
図2】
図1の区域に存在するトンネルの模式図である。
【
図4】
図3の制御装置が実行する判定制御を示すフローチャートである。
【
図5】
図3の制御装置が実行する壁沿い操舵制御を示すフローチャートである。
【
図6】
図5の壁沿い操舵制御で用いられる探索有効エリアの導出方法を説明するための図である。
【
図7】
図2のトンネル内を走行する自律走行車両を示す模式図である。
【
図8】
図2のトンネル内を走行する自律走行車両を示す模式図である。
【
図9】
図2のトンネル内を走行する自律走行車両を示す模式図である。
【
図10】
図2のトンネル内を走行する自律走行車両を示す模式図である。
【
図11】
図3の制御装置が実行する操舵制御を示すフローチャートである。
【
図12】凸部を備えるトンネル内を走行する自律走行車両を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、自律走行車両の一実施形態について説明する。以下の説明において、前後左右とは、自律走行車両を基準とした場合の前後左右である。
<自律走行車両>
図1に示すように、自律走行車両10の使用される区域は、第1地点A1と、第2地点A2と、トンネルTと、を含む。区域は、例えば、空港、工場、港湾、商業施設、及び公共施設等の場所の全体、あるいは、一部である。トンネルTは、第1地点A1と第2地点A2とを繋いでいる。第1地点A1及び第2地点A2は、自律走行車両10がGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの衛星信号を受信可能な場所である。トンネルT内は、自律走行車両10がGNSS衛星からの衛星信号を受信不能な場所である。自律走行車両10は、例えば、産業車両又は乗用車である。産業車両は、例えば、トーイングトラクタ又はフォークリフトである。
【0012】
図2に示すように、トンネルT内には、走行帯A3と、停止帯A4と、が設定されている。走行帯A3は、自律走行車両10の走行する場所である。停止帯A4は、自律走行車両10の異常時などに自律走行車両10を停止させる場所である。トンネルTは、壁Wを備える。壁Wは、走行部W1と、凹部W2と、を備える。走行部W1は、走行帯A3に沿って設けられている。凹部W2は、停止帯A4に沿って設けられている。凹部W2は、第1部位W3と、第2部位W4と、を備える。第1部位W3と第2部位W4とは、走行部W1の延びる方向に間隔を空けて互いに向かい合っている。凹部W2によって走行部W1は分断されている。凹部W2は、走行部W1からトンネルTの外部に向けて凹んでいる部分である。
【0013】
図3に示すように、自律走行車両10は、制御装置11を備える。制御装置11は、プロセッサ12と、記憶部13と、を備える。プロセッサ12としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びDSP(Digital Signal Processor)を挙げることができる。記憶部13は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部13は、処理をプロセッサ12に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部13、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置11は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0014】
自律走行車両10は、駆動輪21と、走行モータ22と、走行モータドライバ23と、回転数センサ24と、を備える。走行モータ22は、駆動輪21を回転させるためのモータである。走行モータドライバ23は、走行モータ22を駆動させる。回転数センサ24は、走行モータ22の回転数を検知する。走行モータ22の駆動により駆動輪21が回転することで、自律走行車両10は走行する。
【0015】
自律走行車両10は、操舵輪31と、操舵モータ32と、操舵モータドライバ33と、操舵センサ34と、を備える。操舵モータ32は、操舵輪31を操舵するためのモータである。操舵モータドライバ33は、操舵モータ32を駆動させる。操舵センサ34は、操舵モータ32の回転数を検知する。操舵モータ32の駆動により操舵輪31が操舵されることで、自律走行車両10は旋回する。
【0016】
自律走行車両10は、距離計41を備える。距離計41は、物体までの距離を非接触で測定する。距離計41は、例えば、レーザ距離計、レーダー、又はステレオカメラである。本実施形態の距離計41は、レーザ距離計である。距離計41は、水平方向への照射角度を変更しながらレーザ光を照射する。距離計41は、レーザ光が当たった点から反射された反射光を受光することで点までの距離を測定する。レーザ光が当たった点は、物体の表面の一部を表す。点の位置は、極座標系の座標で表すことができる。極座標系における点の座標は、直交座標系の座標に変換されてもよい。
【0017】
自律走行車両10は、衛星航法装置51を備える。衛星航法装置51は、GNSS衛星から送信される衛星信号を受信する。衛星航法装置51は、衛星信号を用いて位置を測定する。
【0018】
自律走行車両10は、補助記憶装置61を備える。補助記憶装置61は、データを書き換え可能な不揮発性記憶装置である。補助記憶装置61は、例えば、ハードディスクドライブ、又はソリッドステートドライブである。
【0019】
補助記憶装置61は、地図データを記憶している。地図データは、区域の構造を地図座標系の座標で表したデータである。地図座標系は、2次元座標系であってもよいし、3次元座標系であってもよい。地図座標系は、自律走行車両10が用いられる区域の任意の一点を原点とする座標系である。
【0020】
制御装置11は、自律走行車両10の自己位置を推定する。自己位置とは、地図座標系での自律走行車両10の一点を示す座標である。自律走行車両10の一点は任意であるが、例えば、自律走行車両10の水平方向での中心位置を挙げることができる。自己位置の推定は、距離計41の測定結果と地図データとを照合することで行われれてもよい。自己位置の推定は、衛星航法装置51により得られた位置を用いて行われてもよい。自己位置の推定は、距離計41を用いた自己位置の推定と衛星航法装置51を用いた自己位置の推定とを組み合わせて行われてもよい。自己位置の推定は、上記した自己位置の推定に内界センサを用いたデッドレコニングを組み合わせて行われてもよい。内界センサとしては、回転数センサ24、及び操舵センサ34を挙げることができる。制御装置11は、自己位置推定装置の一例である。自律走行車両10は、制御装置11とは異なる自己位置推定装置を備えていてもよい。
【0021】
制御装置11は、走行モータ22及び操舵モータ32を制御することによって自律走行車両10に走行を行わせる。制御装置11は、例えば、目標地点までの経路を生成する。制御装置11は、経路に沿って自律走行車両10が移動するように走行モータドライバ23及び操舵モータドライバ33に指令を与える。これにより、自律走行車両10は走行を行う。
【0022】
<判定制御>
次に、制御装置11が行う判定制御について説明する。判定制御は、自律走行車両10がトンネルTに進入したか否かを判定する制御である。
【0023】
図4に示すように、ステップS1において、制御装置11は、自律走行車両10がトンネルTに進入したか否かを判定する。制御装置11は、推定した自己位置から自律走行車両10がトンネルTに進入したか否かを判定する。地図座標系におけるトンネルTの座標を予め認識しておくことで、制御装置11は、自己位置がトンネルTの座標に移動した場合に自律走行車両10がトンネルTに進入したと認識できる。区域に複数のトンネルTが存在する場合、制御装置11は、自律走行車両10が複数のトンネルTのうちいずれのトンネルTに進入したかを判定することもできる。ステップS1の判定結果が否定の場合、制御装置11は、判定制御を終了する。ステップS1の判定結果が肯定の場合、制御装置11は、ステップS2の処理を行う。
【0024】
ステップS2において、制御装置11は、壁沿い操舵制御を行う。壁沿い操舵制御は、トンネルT内で行われる操舵に関する制御である。トンネルT内は、以下の要因から自己位置の推定を行えない。なお、「自己位置の推定を行えない」状況は、自己位置の推定を行える場合であっても自己位置の推定精度が低いことによって自律走行車両10の実用に支障を来す状況を含む。
【0025】
トンネルT内には、ランドマークとなり得る物体が少ないため距離計41を用いた自己位置の推定を行いにくい。トンネルT内では衛星信号を受信しにくいため、衛星航法装置51による自己位置の推定が行いにくい。また、地図データを作成する際に衛星航法装置51によって取得できる位置を用いる場合には、地図データの生成を行いにくい。デッドレコニングでは、自己位置のずれが蓄積していくため、自己位置の推定が行いにくい。
【0026】
制御装置11は、トンネルT外である第1地点A1及び第2地点A2では推定した自己位置が経路に沿うように自律走行車両10の制御を行う。制御装置11は、トンネルT内では壁沿い操舵制御によって自律走行車両10の制御を行う。トンネルTは、自己位置の推定を行えない場所であって予め設定された場所の一例である。
【0027】
<壁沿い操舵制御>
制御装置11が行う壁沿い操舵制御について説明する。壁沿い操舵制御は、自律走行車両10を壁Wに沿って走行させる制御である。制御装置11は、自律走行車両10が壁Wから所定距離離れた状態で壁Wに沿って自律走行車両10を走行させる。壁Wは、構造物の一例である。所定距離は、任意に設定することができる。所定距離は、例えば、自律走行車両10が走行帯A3を走行するように設定されている。
【0028】
図5に示すように、ステップS10において、制御装置11は、設定値を読み込む。設定値は、壁沿い操舵制御を行うために必要となる値である。設定値は、自律走行車両10から壁Wまでの目標値D1、即ち、所定距離の目標値D1を含む。設定値は、凹部W2の幅W11を含んでいてもよい。凹部W2の幅W11は、第1部位W3と第2部位W4との間の寸法である。トンネルTが幅W11の異なる複数の凹部W2を備えている場合、設定値として設定される凹部W2の幅W11は、凹部W2の幅W11のうち最長のものを選べばよい。凹部W2の幅W11が第1部位W3と第2部位W4との間で一定ではない場合、凹部W2の幅W11は、最も走行帯A3に近い位置での幅であってもよい。区域に複数のトンネルTが存在する場合、トンネルT毎に設定値が異なっていてもよい。この場合、自律走行車両10が進入したトンネルTに対応する設定値を読み込めばよい。設定値は、記憶部13に記憶されていてもよいし、補助記憶装置61に記憶されていてもよい。
【0029】
図5及び
図6に示すように、次に、ステップS11において、制御装置11は、探索有効エリアA12を決定する。探索有効エリアA12は、距離計41によって距離を測定可能な測定可能範囲A11のうち一部の範囲である。探索有効エリアA12は、予め定められている。区域に複数のトンネルTが存在する場合、トンネルT毎に探索有効エリアA12が異なっていてもよい。この場合、自律走行車両10が進入したトンネルTに対応する探索有効エリアA12を決定すればよい。
【0030】
探索有効エリアA12の導出方法について説明する。
図6に示すように、測定可能範囲A11は、水平方向に拡がる範囲である。測定可能範囲A11は、自律走行車両10の前方向に延びる基準軸RAから左右のそれぞれに対して所定角度の扇形の範囲である。所定角度は、例えば、135°である。この場合、測定可能範囲A11は、水平方向に対して270°の扇形の範囲である。自律走行車両10を左の壁Wに沿って走行させる場合、探索有効エリアA12は基準軸RAから左に対する範囲から設定される。自律走行車両10を右の壁Wに沿って走行させる場合、探索有効エリアA12は基準軸RAから右に対する範囲から設定される。本実施形態において、探索有効エリアA12は、基準軸RAから左に対する範囲から設定されるため、
図6では、測定可能範囲A11のうち基準軸RAから左に対する範囲のみを示す。
【0031】
距離計41は、測定可能範囲A11内で水平方向に対する角度分解能に従い距離を測定する。距離計41は、走査線Lと物体とが交わる位置までの距離を測定する。走査線Lは、角度分解能に従って距離が測定される箇所を意味する。距離計41がレーザ距離計であれば、走査線Lはレーザ光の軌跡である。走査線Lの長さは、レーザ光の到達可能距離である。従って、測定可能範囲A11の半径は、レーザ光の到達可能距離である。
【0032】
探索有効エリアA12は、第1走査線L
Aと第2走査線L
Bとの間の範囲である。第1走査線L
Aは、複数の走査線Lのうち探索有効エリアA12の開始となる走査線Lである。第2走査線L
Bは、複数の走査線Lのうち探索有効エリアA12の終了となる走査線Lである。第1走査線L
A及び第2走査線L
Bは、壁Wまでの目標値D1、及び凹部W2の幅W11から求めることができる。
図6では、図示の都合上、凹部W2の幅W11を
図2よりも長く表現している。
【0033】
第1走査線LAは、壁Wまでの目標値D1から求めることができる。走査線Lの寸法は、Y軸方向距離に変換することができる。Y軸方向距離は、距離計41の測定結果を直交座標系で表した際のY軸の座標である。直交座標系は、水平方向のうち基準軸RAをX軸とし、水平方向のうちX軸に直交する軸をY軸とする座標系である。直交座標系の原点は、距離計41の配置位置である。
【0034】
各走査線Lの寸法をRiとし、各走査線Lと基準軸RAとの間の角度を走査線角度θiとすると、各走査線LのY軸方向距離はRi×sinθiで求めることができる。第1走査線LAは、基準軸RAから順に角度分解能に従って距離を測定した場合にY軸方向距離が最初に目標値D1を超える走査線Lである。第1走査線LAは、基準軸RAから順番にレーザ光を照射した際に、最初にレーザ光が壁Wに到達する角度の走査線Lである。
【0035】
第1走査線LA上でY軸方向距離が目標値D1となる点を始点Aとする。始点Aは、自律走行車両10を壁Wに沿って走行させた際に、第1走査線LAが走行部W1に当たると想定される点である。始点Aの直交座標系での座標を(X,Y)で表すと、(D1/tanθA,D1)である。角度θAは、第1走査線LAの走査線角度θiである。
【0036】
X軸方向のうち自律走行車両10の後方に向かう方向に、始点Aから凹部W2の幅W11だけ離れた点を終点Bとする。終点Bの直交座標系での座標は、((D1/tanθA)-W11,D1)である。角度θBは、原点と終点Bとを結ぶ仮想的な線分と基準軸RAとのなす角の角度である。角度θBは、以下の(1)式で求めることができる。
【0037】
【数1】
第2走査線L
Bは、基準軸RAから順に角度分解能に従って距離を測定した場合に、走査線角度θ
iが最初に角度θ
Bより大きくなる走査線Lである。
【0038】
上記のように定められた探索有効エリアA12は、自律走行車両10が壁Wに沿って走行している場合において、凹部W2の幅W11全体が探索有効エリアA12に収まるように設定されている。詳細にいえば、壁Wの備える凹部W2の幅W11よりも壁Wにおける探索有効エリアA12の幅のほうが広くなるように探索有効エリアA12は設定されている。壁Wにおける探索有効エリアA12の幅とは、第1走査線LAと壁Wとが交わる点と第2走査線LBと壁Wとが交わる点との間のX軸方向の寸法である。距離計41がレーザ距離計であれば、レーザ光が壁Wに照射されている場合に、壁Wに照射されているレーザ光の範囲の幅が壁Wにおける探索有効エリアA12の幅である。目標値D1は、自律走行車両10と壁Wとの間の距離であるため、Y座標が目標値D1となる位置における探索有効エリアA12のX軸方向の寸法を凹部W2の幅W11よりも大きくすることで、壁Wの備える凹部W2の幅W11よりも壁Wにおける探索有効エリアA12の幅のほうが広くなる。従って、自律走行車両10が壁Wに沿って走行している場合において、探索有効エリアA12に含まれる走査線Lの少なくとも1つは、走行部W1に当たるように設定されている。詳細にいえば、自律走行車両10が壁Wに沿って走行している場合において、第1走査線LA及び第2走査線LBの少なくとも1つは、自律走行車両10と凹部W2との位置関係に関わらず走行部W1に当たる。本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0039】
上記のように導出された探索有効エリアA12は、記憶部13に記憶されていてもよいし、補助記憶装置61に記憶されていてもよい。上記したように、探索有効エリアA12は、予め把握した壁Wの形状に基づいて設定されている。
【0040】
図5に示すように、次に、ステップS12において、制御装置11は、距離計41から測定結果を取得する。
次に、ステップS13において、制御装置11は、ステップS12で取得した測定結果のうち探索有効エリアA12内のY軸方向距離の最短距離を取得する。以下、詳細に説明を行う。
【0041】
図7に示すように、制御装置11は、探索有効エリアA12内で測定された距離のそれぞれを、Y軸方向距離Y1に変換する。Y軸方向距離Y1は、自律走行車両10の車幅方向の距離である。Y軸方向距離Y1は、走査線LのY軸方向距離を算出するのと同様に、距離計41の測定した距離と走査線角度θ
iとで算出することができる。
【0042】
制御装置11は、算出されたY軸方向距離Y1のうち最短距離を取得する。制御装置11は、Y軸方向距離Y1のうち最短距離を離間距離とみなす。離間距離とは、自律走行車両10と壁Wとの間の距離である。
図7から把握できるように、レーザ光が凹部W2に囲まれる領域である停止帯A4に入り込んでいる場合、即ち、距離計41が凹部W2までの距離を測定している場合、走行部W1までの距離を測定している場合に比べてY軸方向距離Y1が長くなる。また、探索有効エリアA12は、探索有効エリアA12に含まれる走査線Lの少なくとも1つが走行部W1に当たるように設定されている。このため、Y軸方向距離Y1のうち最短距離は、自律走行車両10から走行部W1までのY軸方向距離Y1を表している。
【0043】
図8に示すように、自律走行車両10が凹部W2に差し掛かる前の場合、Y軸方向距離Y1の最短距離は、凹部W2よりも後方に存在する走行部W1までのY軸方向距離Y1である。
【0044】
図9に示すように、自律走行車両10が凹部W2に差し掛かろうとしている場合、Y軸方向距離Y1の最短距離は、凹部W2よりも前方に存在する走行部W1までのY軸方向距離Y1である。
【0045】
図10に示すように、自律走行車両10が凹部W2に向かい合う位置を走行している場合であっても、Y軸方向距離Y1の最短距離は、凹部W2よりも前方に存在する走行部W1までのY軸方向距離Y1である。
【0046】
次に、ステップS14において、制御装置11は、ステップS14において、操舵制御を行う。
次に、ステップS15において、制御装置11は、自律走行車両10がトンネルTから離脱したか否かを判定する。制御装置11は、例えば、衛星航法装置51が衛星信号を受信した場合に、自律走行車両10がトンネルTから離脱したと判断してもよい。ステップS15の判定結果が肯定の場合、制御装置11は、壁沿い操舵制御を終了する。ステップS15の判定結果が否定の場合、制御装置11は、ステップS12に戻る。
【0047】
<操舵制御>
制御装置11が行う操舵制御について説明する。操舵制御は、自律走行車両10が壁Wから所定距離離れた状態で壁Wに沿って走行するように操舵を行う制御である。
【0048】
図11に示すように、ステップS20において、制御装置11は、Y軸方向距離Y1の最短距離と目標値D1とが等しいか否かを判定する。ステップS20の判定結果が肯定の場合、制御装置11は、ステップS21の処理を行う。ステップS20の判定結果が否定の場合、制御装置11は、ステップS22の処理を行う。
【0049】
ステップS21において、制御装置11は、現在の操舵を維持する。
ステップS22において、制御装置11は、Y軸方向距離Y1の最短距離が目標値D1より大きいか否かを判定する。ステップS22の判定結果が肯定の場合、制御装置11は、ステップS23の処理を行う。ステップS22の判定結果が否定の場合、制御装置11は、ステップS24の処理を行う。
【0050】
ステップS23において、制御装置11は、自律走行車両10が壁Wに近づくように操舵を行う。例えば、制御装置11は、操舵モータドライバ33に指令を与えることによって自律走行車両10が壁Wに近付くように操舵モータ32を制御する。
【0051】
ステップS24において、制御装置11は、自律走行車両10が壁Wから離れるように操舵を行う。例えば、制御装置11は、操舵モータドライバ33に指令を与えることによって自律走行車両10が壁Wから離れるように操舵モータ32を制御する。
【0052】
上記したように操舵制御を行うことで、自律走行車両10は、壁Wから所定距離離れた状態で壁Wに沿って走行する。
[本実施形態の作用]
制御装置11は、自律走行車両10がトンネルTに進入した場合に壁沿い操舵制御を行う。制御装置11は、探索有効エリアA12に存在する壁Wまでの距離をY軸方向距離Y1に変換する。制御装置11は、Y軸方向距離Y1の最短距離が目標値D1となるように自律走行車両10を制御する。Y軸方向距離Y1の最短距離は、自律走行車両10と凹部W2との位置関係に関わらず自律走行車両10から走行部W1までの距離である。このため、Y軸方向距離Y1の最短距離が目標値D1となるように自律走行車両10を制御すると、自律走行車両10は走行部W1から自律走行車両10までの距離が目標値D1となるように操舵されることになる。トンネルTのように、停止帯A4が設けられている場合であっても自律走行車両10が停止帯A4に入り込むことが抑制される。即ち、停止帯A4が存在する場合であっても、自律走行車両10は、走行帯A3の走行を維持する。
【0053】
図12に示すように、壁WがトンネルT内に向けて突出する凸部W5を備えているとする。この場合、自律走行車両10が凸部W5に近付くにつれてY軸方向距離Y1の最短距離が短くなる。自律走行車両10は、Y軸方向距離Y1の最短距離が目標値D1となるように走行するため、凸部W5から離れるように自律走行車両10は制御されることになる。これにより、自律走行車両10は、凸部W5を回避するように操舵を行う。従って、壁Wに凸部W5が存在する場合であっても、自律走行車両10は走行を継続することができる。
【0054】
[本実施形態の効果]
(1)制御装置11は、距離計41から取得した距離をY軸方向距離Y1に変換する。制御装置11は、Y軸方向距離Y1に基づいて取得される離間距離が所定距離となるように自律走行車両10を操舵する。非接触で壁Wまでの距離を測定する距離計41を用いて自律走行車両10の操舵を行うことができる。このため、壁Wに沿って物体が存在していた場合であっても、当該物体と自律走行車両10とが接触することを抑制できる。例えば、壁Wに沿って歩行帯が設定されている場合、人や人以外の物体が歩行帯に存在している場合がある。このような場合、壁Wに接触センサを接触させると、これらの物体と接触センサとが接触するおそれがある。これに対し、実施形態の自律走行車両10であれば、物体と自律走行車両10とが接触することを抑制できる。
【0055】
(2)制御装置11は、探索有効エリアA12に存在する壁Wまでの距離を取得する。探索有効エリアA12は、凹部W2の幅W11よりも壁Wにおける探索有効エリアA12の幅のほうが広くなるように設定されている。このため、Y軸方向距離Y1は、走行部W1までの距離を含む。これにより、停止帯A4のように、自律走行車両10が入り込む場所が存在する場合であっても、自律走行車両10が当該場所に入り込むことを抑制できる。
【0056】
(3)制御装置11は、Y軸方向距離Y1のうち最短距離を離間距離としている。Y軸方向距離Y1のうち最短距離は、走行部W1までの距離である。従って、走行部W1と自律走行車両10とのY軸方向距離Y1の間隔を一定に維持しやすい。
【0057】
(4)制御装置11は、自己位置の推定を行えない場所であって予め設定された場所で、壁沿い操舵制御を実行する。これにより、自己位置の推定を行えない場所であっても、自律走行車両10を走行させることができる。
【0058】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
○制御装置11は、探索有効エリアA12に存在する壁WまでのY軸方向距離Y1の平均値を離間距離としてもよい。この場合、制御装置11は、Y軸方向距離Y1のうち最短距離を含む所定数のY軸方向距離Y1の平均値を離間距離としてもよい。例えば、所定数が3であれば、制御装置11は、Y軸方向距離Y1のうち最短距離、2番目に短い距離、3番目に短い距離の平均値を離間距離してもよい。所定数は、任意に設定することができる。制御装置11は、離間距離が目標値D1となるように自律走行車両10の操舵を行う。
【0060】
○制御装置11は、自己位置の推定を行わなくてもよい。この場合、制御装置11は、壁沿い操舵制御のみによって自律走行車両10を制御してもよい。
○距離計41は、一方向への距離を測定するものであってもよい。この場合、自律走行車両10は、少なくとも2つの距離計41を備える。1つの距離計41は、第1走査線LAの距離を測定するように配置される。1つの距離計41は、第2走査線LBの距離を測定するように配置される。これらの2つの距離計41の間が探索有効エリアA12である。
【0061】
○第2走査線LBは、走査線角度θiが角度θBより大きくなる走査線Lであればよい。
○構造物は、自律走行車両10の走行する場所に設けられていればよい。例えば、構造物は、ガードレールであってもよい。
【0062】
○距離計41として鉛直方向に対する角度分解能にしたがって鉛直方向成分を含んだ距離を測定する距離計を用いてもよい。この場合、制御装置11は、距離計41から取得できる距離のうち距離計41の配置位置と同一の高さに位置する走査線Lによって測定された距離を用いてY軸方向距離Y1を算出してもよい。即ち、距離計41の測定結果を表す直交座標系においてX軸及びY軸に直交する軸をZ軸とした場合、距離計41のZ座標とZ座標が同一である距離からY軸方向距離Y1を算出してもよい。また、鉛直方向成分を含んだ距離からY軸方向距離Y1を算出することができる。このため、制御装置11は、距離計41から取得できる距離のうち距離計41の配置位置とは異なる高さに位置する走査線Lによって測定された距離を用いてY軸方向距離Y1を算出してもよい。
【符号の説明】
【0063】
A11…測定可能範囲、A12…探索有効エリア、W…構造物である壁、W2…凹部、10…自律走行車両、11…自己位置推定装置である制御装置、41…距離計。