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特開2024-100156樹脂組成物、発泡層の材料及び多層管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100156
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物、発泡層の材料及び多層管
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20240719BHJP
   F16L 9/12 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 27/24 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20240719BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20240719BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240719BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08L27/06
F16L9/12
C08L27/24
C08L33/08
B32B1/08 B
B32B5/18
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003936
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 裕次郎
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA03
3H111BA15
3H111BA34
3H111CB04
3H111CB29
3H111DA15
3H111DB05
3H111EA04
4F100AK15
4F100AK15B
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA01
4F100CA01B
4F100DA11
4F100DA11A
4F100DA11B
4F100DA11C
4F100DJ01
4F100DJ01B
4F100EJ02
4F100EJ02B
4F100JA06
4F100JA06B
4F100JA13
4F100JA13B
4F100JJ02
4F100JK02
4F100JK02B
4F100JK08
4F100JK08B
4F100YY00B
4J002BD03W
4J002BD18X
4J002BG04Y
4J002DE206
4J002FD01Y
4J002FD326
4J002GF00
4J002GL00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】得られる多層管の断熱性を高めることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂組成物は、内層と、前記内層の外側に配置された発泡層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備える多層管における発泡層の形成に用いられる樹脂組成物であり、前記樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含み、180℃及び歪み速度10/秒の条件で伸長試験をしたときに、伸長時間0.05秒での伸長粘度が5.0×10Pa・s以上15.0×10Pa・s以下であり、伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間が0.45秒以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、前記内層の外側に配置された発泡層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備える多層管における発泡層の形成に用いられる樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含み、
180℃及び歪み速度10/秒の条件で伸長試験をしたときに、伸長時間0.05秒での伸長粘度が5.0×10Pa・s以上15.0×10Pa・s以下であり、伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間が0.45秒以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記伸長試験において、伸長時間t+0.05秒での伸長粘度と伸長時間tでの伸長粘度との差を求めたときに、前記差の最大値の、前記差の最小値に対する比が、10以上になる伸長時間tが、0.05秒以上0.40秒以下の区間に存在する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、塩素化塩化ビニル系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、アクリル系樹脂をさらに含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物100重量%中、前記アクリル系樹脂の含有量が、5重量%以上50重量%以下である、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物と、発泡剤とを含む、発泡層の材料。
【請求項7】
内層と、前記内層の外側に配置された発泡層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備え、
前記発泡層が、請求項1又は2に記載の樹脂組成物により形成されている、多層管。
【請求項8】
前記発泡層が、化学発泡剤により発泡された発泡体である、請求項7に記載の多層管。
【請求項9】
前記発泡層の見かけ密度が、0.40g/cm以下である、請求項7に記載の多層管。
【請求項10】
前記発泡層の独立気泡率が、45%以上である、請求項7に記載の多層管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層管における発泡層に用いられる樹脂組成物及び発泡層の材料に関する。また、本発明は、上記樹脂組成物を用いた多層管に関する。
【背景技術】
【0002】
空調ドレン用管として、樹脂製の多層管が用いられている。空調ドレン用管は、高い断熱性を有することが要求される。断熱性を高めるために、発泡層を備える多層管が用いられることがある。
【0003】
下記の特許文献1には、塩化ビニル系樹脂(B)を含む筒状の発泡層と、上記発泡層の外面に設けられており、かつ塩化ビニル系樹脂(A)を含む非発泡外層とを備える空調ドレン用管が開示されている。該空調ドレン用管では、上記発泡層の発泡倍率が3.5倍以上であり、上記塩化ビニル系樹脂(A)が、塩化ビニル樹脂とエラストマー樹脂との混合物、又は塩化ビニル樹脂にエラストマー樹脂がグラフト重合されたグラフト重合体である。また、特許文献1には、上記発泡層が、塩化ビニル系樹脂(B)以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよいことが記載されている。
【0004】
下記の特許文献2には、外径50~180mmの有機高分子パイプと、該パイプの外表面上に配置された発泡ポリウレタン断熱層と、該発泡ポリウレタン断熱層の外表面上に配置されたシースとを備える断熱パイプが開示されている。上記発泡ポリウレタン断熱層は、10~50倍の発泡度を有し、30~60mmの厚さを有する、連続発泡層である。上記シースは、ポリ塩化ビニル又はポリエチレンにより形成されており、少なくとも3mmの厚さを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-059633号公報
【特許文献2】実開昭60-24998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載のような従来の樹脂組成物により得られる多層管では、断熱性をある程度高めることができる。
【0007】
しかしながら、近年の地球温暖化により、空調ドレン用管等に用いられる多層管の使用環境はより厳しくなっており、従来の樹脂組成物により得られる多層管では断熱性が不十分であることがある。
【0008】
また、断熱性を高めるために、従来の多層管において単に発泡層の発泡倍率を高めた場合には、発泡層の気泡が破泡する原因となり、管継ぎ手部分において発泡層の端部から水が浸透しやすくなることがある。結果として、熱交換率が上がり、断熱効果が低下することがある。断熱性が十分に高くない多層管を空調ドレン用管として用いた場合には、内部を流れる液体と外気との温度差に起因して、空調ドレン用管の外表面に結露が生じやすいという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、得られる多層管の断熱性を高めることができる樹脂組成物及び発泡層の材料を提供することである。また、本発明は、上記樹脂組成物を用いた多層管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
項1.内層と、前記内層の外側に配置された発泡層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備える多層管における発泡層の形成に用いられる樹脂組成物であり、前記樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含み、180℃及び歪み速度10/秒の条件で伸長試験をしたときに、伸長時間0.05秒での伸長粘度が5.0×10Pa・s以上15.0×10Pa・s以下であり、伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間が0.45秒以下である、樹脂組成物。
【0011】
項2.前記伸長試験において、伸長時間t+0.05秒での伸長粘度と伸長時間tでの伸長粘度との差を求めたときに、前記差の最大値の、前記差の最小値に対する比が、10以上になる伸長時間tが、0.05秒以上0.40秒以下の区間に存在する、項1に記載の樹脂組成物。
【0012】
項3.前記樹脂組成物が、塩素化塩化ビニル系樹脂を含む、項1又は2に記載の樹脂組成物。
【0013】
項4.前記樹脂組成物が、アクリル系樹脂をさらに含む、項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0014】
項5.前記樹脂組成物100重量%中、前記アクリル系樹脂の含有量が、5重量%以上50重量%以下である、項4に記載の樹脂組成物。
【0015】
項6.項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、発泡剤とを含む、発泡層の材料。
【0016】
項7.内層と、前記内層の外側に配置された発泡層と、前記発泡層の外側に配置された外層とを備え、前記発泡層が、項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物により形成されている、多層管。
【0017】
項8.前記発泡層が、化学発泡剤により発泡された発泡体である、項7に記載の多層管。
【0018】
項9.前記発泡層の見かけ密度が、0.40g/cm以下である、項7又は8に記載の多層管。
【0019】
項10.前記発泡層の独立気泡率が、45%以上である、項7~9のいずれか1項に記載の多層管。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る樹脂組成物は、内層と、上記内層の外側に配置された発泡層と、上記発泡層の外側に配置された外層とを備える多層管における発泡層の形成に用いられる樹脂組成物である。本発明に係る樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含む。本発明に係る樹脂組成物では、180℃及び歪み速度10/秒の条件で伸長試験をしたときに、伸長時間0.05秒での伸長粘度が5.0×10Pa・s以上15.0×10Pa・s以下であり、伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間が0.45秒以下である。本発明に係る樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、得られる多層管の断熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る多層管を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る多層管を製造するために用いられる製造装置を模式的に示す平面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る多層管を製造するために用いられる製造装置を模式的に示す正面図である。
図4図4は、製造装置における金型部分及び管外面成形用チューブ部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、内層と、上記内層の外側に配置された発泡層と、上記発泡層の外側に配置された外層とを備える多層管における発泡層の形成に用いられる。すなわち、本発明に係る樹脂組成物は、特定の上記発泡層を形成するために用いられる。本発明に係る樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含む。本発明に係る樹脂組成物では、180℃及び歪み速度10/秒の条件で伸長試験をしたときに、伸長時間0.05秒での伸長粘度が5.0×10Pa・s以上15.0×10Pa・s以下であり、伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間が0.45秒以下である。
【0024】
本発明者は、樹脂組成物の伸長粘度及び伸長時間を特定の範囲に調整することにより、得られる発泡層の独立気泡率を高め、得られる多層管の断熱性を高めることができることを見出した。
【0025】
本発明に係る樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、得られる発泡層の独立気泡率を高めることができ、結果として、得られる多層管の断熱性を高めることができる。また、本発明に係る樹脂組成物では、独立気泡率が高いので、誘電特性を効果的に高めることができる。
【0026】
上記伸長試験において、上記伸長時間0.05秒での伸長粘度は、好ましくは5.5×10Pa・s以上、より好ましくは6.0×10Pa・s以上、さらに好ましくは7.0×10Pa・s以上である。上記伸長時間0.05秒での伸長粘度は、好ましくは14.0×10Pa・s以下、より好ましくは12.0×10Pa・s以下、さらに好ましくは10.0×10Pa・s以下である。上記伸長時間0.05秒での伸長粘度が上記下限以上であると、得られる発泡層において破泡を防ぐことができる。上記伸長時間0.05秒での伸長粘度が上記上限以下であると、得られる発泡層において発泡倍率を高めることができる。
【0027】
上記伸長試験において、上記伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間は、好ましくは0.43秒以下、より好ましくは0.40秒以下、さらに好ましくは0.35秒以下である。上記伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間が上記上限以下であると、得られる発泡層において破泡を防ぐことができる。上記伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間の下限は、特に限定されない。上記伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間は、0.10秒以上であってもよく、0.15秒以上であってもよい。
【0028】
上記伸長試験は、以下の方法で行うことができる。上記樹脂組成物について、180℃のロールを用いてシート品を作製し、180℃のプレス成形により縦150mm×横150mm×厚み0.5mmのプレス品を得た後、縦10mm×横25mm×厚み0.5mmに切り出して、伸長試験用サンプルを作製する。測定装置のオーブンを180℃に設定し、温度が安定した段階で、伸長試験用サンプルを治具にセットする。3分間静置後、初期たわみの校正を行って、180℃及び歪み速度10/秒の条件で伸長試験を行い、伸長試験用サンプルが破断したとき、又は、治具が1回転したときまで、伸長粘度を測定し、0.01秒ごとにプロットする。上記測定装置としては、アントンパール社製「ユニバーサル伸長測定システム(UXF)」等が挙げられる。
【0029】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記伸長試験において、伸長時間t+0.05秒での伸長粘度と伸長時間tでの伸長粘度との差を求めたときに、上記差の最大値の、上記差の最小値に対する比(上記差の最大値/上記差の最小値)が、10以上になる伸長時間tが、存在することが好ましい。なお、上記伸長試験では、伸長粘度は、単調増加することが好ましい。伸長時間t+0.05秒での伸長粘度から伸長時間tでの伸長粘度を差し引いた値は、常に正であることが好ましい。
【0030】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記伸長試験において、伸長時間t+0.05秒での伸長粘度と伸長時間tでの伸長粘度との差を求めたときに、上記差の最大値の、上記差の最小値に対する比(上記差の最大値/上記差の最小値)が、10以上になる伸長時間tが、0.05秒以上0.40秒以下の区間に存在することが好ましい。すなわち、上記伸長試験では、伸長時間0.05秒以上0.40秒以下において、伸長時間t+0.05秒での伸長粘度と伸長時間tでの伸長粘度との差を求めたときに、上記差の最大値の、上記差の最小値に対する比(上記差の最大値/上記差の最小値)が、10以上になる伸長時間tが存在することが好ましい。
【0031】
上記伸長試験において、上記比(上記差の最大値/上記差の最小値)が10以上になる伸長時間tは、好ましくは0.05秒以上、より好ましくは0.07秒以上、さらに好ましくは0.09秒以上、好ましくは0.40秒以下、より好ましくは0.37秒以下、さらに好ましくは0.35秒以下の区間に存在する。上記伸長時間tが、上記下限以上及び上記上限以下の区間に存在すると、得られる発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0032】
上記伸長試験では、伸長時間0.05秒以上0.40秒以下において、伸長時間t+0.05秒での伸長粘度と伸長時間tでの伸長粘度との差を求めたときに、上記比(上記差の最大値/上記差の最小値)は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは15以上である。上記比(上記差の最大値/上記差の最小値)が、上記下限以上であると、得られる発泡層において破泡を防ぐことができる。上記比(上記差の最大値/上記差の最小値)の上限は、特に限定されない。上記比(上記差の最大値/上記差の最小値)は、100以下であってもよく、50以下であってもよい。
【0033】
上記伸長試験では、伸長時間0.05秒以上0.40秒以下において、伸長時間t+0.05秒での伸長粘度と伸長時間tでの伸長粘度との差の最大値は、好ましくは20.0×10Pa・s以上、より好ましくは30.0×10Pa・s以上、さらに好ましくは40.0×10Pa・s以上である。上記差の最大値が上記下限以上であると、得られる発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、上記差の最大値は、100×10Pa・s以上であってもよく、150×10Pa・s以上であってもよい。上記差の最大値の上限は、特に限定されない。上記差の最大値は、1000×10Pa・s以下であってもよく、500×10Pa・s以下であってもよい。
【0034】
上記伸長試験では、伸長時間0.05秒以上0.40秒以下において、伸長時間t+0.05秒での伸長粘度と伸長時間tでの伸長粘度との差の最小値は、好ましくは1.0×10Pa・s以上、より好ましくは3.0×10Pa・s以上、さらに好ましくは5.0×10Pa・s以上である。上記差の最小値は、好ましくは20.0×10Pa・s以下、より好ましくは15.0×10Pa・s以下、さらに好ましくは10.0×10Pa・s以下である。上記差の最大値が上記下限以上及び上記上限以下であると、得られる発泡層において発泡倍率を高めることができる。
【0035】
上記樹脂組成物は、内層と、上記内層の外側に配置された発泡層と、上記発泡層の外側に配置された外層とを備える多層管における発泡層の形成に用いられる。上記樹脂組成物は、多層管における発泡層を形成するために用いられる。上記樹脂組成物は、多層管における発泡層の材料(発泡層を得るための組成物、発泡層用樹脂組成物、発泡層形成材料)に好適に用いられる。
【0036】
以下、上記樹脂組成物に用いられる各材料を説明する。
【0037】
上記樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含む。上記樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂を含んでいてもよく、塩素化塩化ビニル系樹脂を含んでいてもよく、塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂の双方を含んでいてもよい。
【0038】
上記樹脂組成物100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂の合計の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0039】
<塩化ビニル系樹脂>
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと塩化ビニル以外の単量体との共重合体、及び塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル又は塩化ビニル系樹脂がグラフトされたグラフト共重合体等が挙げられる。上記塩化ビニル系樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記塩化ビニル以外の単量体としては、炭素数2以上16以下のα-オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、及びブチレン);炭素数2以上16以下の脂肪族カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル);炭素数2以上16以下のアルキルビニルエーテル(例えば、ブチルビニルエーテル及びセチルビニルエーテル);炭素数1以上16以下のアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びブチルアクリレート);アリール(メタ)アクリレート(例えば、フェニルメタクリレート);芳香族ビニル(例えば、スチレン及びα-置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン));ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニリデン及びフッ化ビニリデン);及びN-置換マレイミド(N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド)等が挙げられる。
【0041】
上記塩化ビニル系樹脂以外の重合体としては、α-オレフィンとビニルエステルとの共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体);α-オレフィンとビニルエステルと一酸化炭素との共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体);α-オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合体及びエチレン-エチルアクリレート共重合体);α-オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートと一酸化炭素との共重合体(例えば、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体);異なる2種以上のα-オレフィンの共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体);不飽和ニトリルとジエンとの共重合体(例えば、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体);ポリウレタン;及び塩素化ポリオレフィン(例えば、塩素化ポリエチレン及び塩素化ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0042】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、好ましくは400以上、より好ましくは600以上であり、好ましくは1600以下、より好ましくは1400以下である。上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記下限以上であると、内層及び外層の耐衝撃性を高めることができる。上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記上限以下であると、内層及び外層の溶融粘度の上昇を防ぎ、成形性を高めることができる。
【0043】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、以下のようにして測定することができる。塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ろ過により不要成分を除去した後、ろ液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して、塩化ビニル系樹脂の平均重合度を測定する。
【0044】
上記樹脂組成物が、上記塩化ビニル系樹脂を含む場合には、上記樹脂組成物100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0045】
<塩素化塩化ビニル系樹脂>
上記塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂が塩素化された樹脂である。具体的には、上記塩素化塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体が塩素化された樹脂、又は、塩化ビニル80重量%以上と、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体が塩素化された樹脂が挙げられる。上記塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。上記塩素化塩化ビニル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記塩化ビニルと共重合可能な他の単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂における塩素含有率は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは62重量%以上、さらに好ましくは64重量%以上であり、好ましくは75重量%以下、より好ましくは72重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。上記塩素含有率が上記下限以上であると、多層管の耐衝撃性及び耐熱性を高めることができる。上記塩素含有率が上記上限以下であると、多層管の耐衝撃性を高めることができる。
【0047】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、好ましくは400以上、より好ましくは500以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下である。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記下限以上であると、多層管の耐衝撃性を高めることができる。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記上限以下であると、溶融粘度の上昇を防ぎ、多層管の成形性を高めることができる。
【0048】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、以下のようにして測定することができる。塩素化塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ろ過により不要成分を除去した後、ろ液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して、塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度を測定する。
【0049】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂として、市販品を用いてもよい。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の市販品としては、H829、H716S、H727、H527、H516A、H547、H536、及びH305(以上、カネカ社製);HA-15E、HA-05E、HA-15F、HA-24F、HA-22H、HA-36F、HA-05K、HA-24K、HA-24L、HA-31K、及びHA-54K(以上、積水化学工業社製)等が挙げられる。
【0050】
上記樹脂組成物が、上記塩素化塩化ビニル系樹脂を含む場合には、上記樹脂組成物100重量%中、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0051】
<アクリル系樹脂>
得られる発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記樹脂組成物は、アクリル系樹脂をさらに含むことが好ましい。
【0052】
上記アクリル系樹脂としては特に限定されず、(メタ)アクリル酸アルキルの重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルの重合体は、共重合体であってもよい。上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸メチルの重合体であってもよい。上記(メタ)アクリル酸メチルの重合体は、重合性性分として(メタ)アクリル酸メチルが少なくとも用いられた重合体である。上記(メタ)アクリル酸メチルの重合体は、(メタ)アクリル酸メチルと、該(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。上記アクリル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、アルキル基の炭素数が2~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ブチレン、置換スチレン及び(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能な単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
上記アクリル系樹脂として、市販品を用いてもよい。上記アクリル系樹脂の市販品としては、メタブレンP-530A(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0055】
得られる発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは250万以上、より好ましくは300万以上であり、好ましくは800万以下、より好ましくは600万以下である。
【0056】
得られる発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、上記塩化ビニル樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量よりも大きいことが好ましい。
【0057】
上記アクリル系樹脂の重量平均分子量の、上記塩化ビニル樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量に対する比を、比(上記アクリル系樹脂の重量平均分子量/上記塩化ビニル樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量)とする。得られる発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記比(上記アクリル系樹脂の重量平均分子量/上記塩化ビニル樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量)は、好ましくは1.0を超え、より好ましくは1.1以上である。上記比(上記アクリル系樹脂の重量平均分子量/上記塩化ビニル樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量)は、5000以下であってもよく、3000以下であってもよい。
【0058】
上記アクリル系樹脂及び上記塩化ビニル樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0059】
上記樹脂組成物100重量%中、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、気泡保持力が高くなり、発泡倍率を効果的に高めることができる。
【0060】
上記塩化ビニル系樹脂と上記塩素化塩化ビニル系樹脂との合計100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、気泡保持力が高くなり、発泡倍率を効果的に高めることができる。
【0061】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上であり、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、気泡保持力が高くなり、発泡倍率を効果的に高めることができる。
【0062】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上であり、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、気泡保持力が高くなり、発泡倍率を効果的に高めることができる。
【0063】
<他の成分>
上記樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、充填材、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、難燃剤、造核剤、及び顔料等が挙げられる。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記充填材としては、無機充填材、及び有機充填材等が挙げられる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記充填材は、無機充填材であることが好ましい。上記無機充填材としては、タルク、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、クレー、マイカ、ウォラストナイト、ゼオライト、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、及び金属繊維等が挙げられる。上記有機充填材としては、ポリアミド等が挙げられる。上記充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記熱安定剤としては、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート及びジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛及び三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム-亜鉛系安定剤;バリウム-亜鉛系安定剤;バリウム-カドミウム系安定剤等が挙げられる。上記熱安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
上記安定化助剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
上記滑剤としては、内部滑剤及び外部滑剤が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記内部滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、及びモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記外部滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
上記難燃剤としては、臭素系難燃剤;リン系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム及びメラミンシアヌレート等のイントメッセント系難燃剤;水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化化合物;酸化アンチモン;酸化亜鉛等が挙げられる。上記難燃剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0071】
上記造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ゼオライト及びタルク等の無機化合物が挙げられる。
【0072】
上記樹脂組成物は、発泡剤と併用して発泡層の形成に用いられることが好ましく、化学発泡剤と併用して発泡層の形成に用いられることがより好ましい。上記樹脂組成物は、発泡剤を含まないことが好ましい。上記樹脂組成物は、発泡剤を含まない樹脂組成物であることが好ましい。上記樹脂組成物は、発泡剤を添加する前の樹脂組成物であることが好ましい。
【0073】
(多層管)
本発明に係る多層管は、内層と、上記内層の外側に配置された発泡層と、上記発泡層の外側に配置された外層とを備える。本発明に係る多層管では、上記発泡層は、上述した樹脂材料により形成されている。上記発泡層の材料(発泡層を得るための組成物)が、上述した樹脂組成物を含む。本発明に係る多層管では、上記の構成が備えられているので、断熱性を高めることができる。
【0074】
上記多層管は、中心から外側に向かって、内層と発泡層と外層とをこの順で備える。上記多層管では、上記発泡層は中間層である。上記内層は、上記発泡層の内側に位置する層である。上記外層は、上記発泡層の外側に位置する層である。上記内層は、単層であってもよく、多層であってもよい。上記内層は、1層であってもよく、2層であってもよく、2層以上であってもよく、3層以上であってもよい。上記発泡層は、単層であってもよく、多層であってもよい。上記発泡層は、1層であってもよく、2層であってもよく、2層以上であってもよく、3層以上であってもよい。上記外層は、単層であってもよく、多層であってもよい。上記外層は、1層であってもよく、2層であってもよく、2層以上であってもよく、3層以上であってもよい。
【0075】
上記内層は、発泡層でなくてもよい。上記内層は、本発明に係る樹脂組成物以外の樹脂組成物により形成されていることが好ましい。上記外層は、発泡層でなくてもよい。上記外層は、本発明に係る樹脂組成物以外の樹脂組成物により形成されていることが好ましい。
【0076】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。なお、以下の図面において、大きさ、厚み及び形状等は、図示の便宜上、実際の大きさ、厚み及び形状等と異なる場合がある。
【0077】
図1は、本発明の一実施形態に係る多層管を模式的に示す断面図である。図1には、多層管の径方向に沿う断面図が示されている。
【0078】
図1に示す多層管10は、内層1と、発泡層2と、外層3とを備える。多層管10は、3層構造を有する。内層1の外側に発泡層2が配置されている。発泡層2の外側に外層3が配置されている。発泡層2は、内層1の外表面上に配置されており、積層されている。外層3は、発泡層2の外表面上に配置されており、積層されている。内層1は、単層である。内層1は、最内層であり、表面層である。発泡層2は、単層である。発泡層2は、中間層である。外層3は、単層である。外層3は、最外層であり、表面層である。内層1と、発泡層2と、外層3とはそれぞれ管状である。
【0079】
発泡層2は、上述した樹脂組成物により形成されている。
【0080】
上記内層の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上であり、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.8mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下である。上記内層の厚みが上記下限以上であると、多層管に十分な水量を流すことができる。上記内層の厚みが上記上限以下であると、断熱性をより一層高めることができる。
【0081】
上記発泡層の厚みは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは9.5mm以下、さらに好ましくは9.0mm以下である。上記発泡層の厚みが上記下限以上であると、断熱性をより一層高めることができる。上記発泡層の厚みが上記上限以下であると、多層管の製造時に内径を均一に成形することができる。
【0082】
上記外層の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上であり、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.8mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下である。上記外層の厚みが上記下限以上であると、断熱性をより一層高めることができる。上記外層の厚みが上記上限以下であると、施工性を良好にすることができる。
【0083】
(発泡層)
上記多層管では、上記発泡層は、発泡剤により発泡された発泡体であることが好ましく、化学発泡剤により発泡された発泡体であることがより好ましい。上記発泡層は、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含む。上記発泡層は、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。上記発泡層は、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含む発泡体である。上記発泡層は、アクリル系樹脂を含む発泡体であることが好ましい。
【0084】
上記多層管では、上記発泡層の材料(発泡層を得るための組成物、発泡層用樹脂組成物、発泡層形成材料)が、発泡剤を含むことが好ましく、化学発泡剤を含むことがより好ましい。上記多層管では、上記発泡層の材料は、上記樹脂組成物と、発泡剤とを含むことが好ましく、上記樹脂組成物と、化学発泡剤とを含むことがより好ましい。
【0085】
多層管の軽量性及び緩衝性を高め、断熱性をより一層効果的に高める観点からは、上記発泡層の見かけ密度は、好ましくは0.40g/cm以下、より好ましくは0.35g/cm以下、さらに好ましくは0.30g/cm以下、特に好ましくは0.25g/cm以下である。上記発泡層の見かけ密度の下限は、特に限定されない。上記発泡層の見かけ密度は、0.10g/cm以上であってもよく、0.15g/cm以上であってもよく、0.20g/cm以上であってもよい。
【0086】
上記発泡体の見かけ密度は、以下のようにして測定することができる。多層管を軸方向の長さが50mmになるように切断する。切断された多層管を、周方向に均等に4分割となるように軸方向に沿って切断した後、内層及び外層を切削して除去し、発泡層のみにより構成された長さ50mmの板状体の試験片を4個作製する。置換式比重測定機を用いて、JIS K7112:1999に準拠して、4個の試験片それぞれの23℃±2℃での見かけ密度を小数点以下3桁まで求め、平均を算出する。
【0087】
上記発泡層の独立気泡率は、好ましくは45%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。上記発泡層の独立気泡率が上記下限以上であると、多層管の端部から毛細管現象等により発泡層内に水が浸入した場合に、気泡を通じて水が発泡層全体に染み渡るリスクを低くすることができる。そのため、断熱性の低下を抑えることができる。上記発泡層の独立気泡率の上限は、特に限定されない。上記発泡層の独立気泡率は、90%以下であってもよく、80%以下であってもよく、70%以下であってもよい。
【0088】
上記発泡層の独立気泡率は、以下のようにして測定することができる。多層管を任意の長さに切断する。切断された多層管から内層及び外層を切削して除去し、発泡層のみにより構成された試験片を得る。試験片の厚みを測定し、試験片の見かけ体積V1を算出する。さらに、試験片の重量W1を測定する。次に、試験片における気泡の占める体積V2を下記式に基づいて算出する。なお、試験片の密度をρとする。
【0089】
V2=V1-W1/ρ
V1:試験片の見かけ体積(cm
V2:試験片における気泡の占める体積(cm
W1:試験片の重量(g)
ρ:試験片の密度(g/cm
【0090】
次に、試験片を23℃の水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に所定の圧力を所定時間加える。その後、試験片を水中から取り出し、試験片の表面に付着した水分を除去して、試験片の重量W2を測定する。
【0091】
下記式により、試験片の独立気泡率F1を算出する。
【0092】
F1=100-100×(W2-W1)/V2
F1:試験片の独立気泡率(%)
W1:水に沈める前の試験片の重量(g)
W2:水に沈めた後の試験片の重量(g)
V2:試験片における気泡の占める体積(cm
【0093】
上記独立気泡率の測定に用いる試験片のサイズは、縦5cm×横5cm×厚み5mmであってもよい。
【0094】
(発泡層の材料)
本発明に係る発泡層の材料は、上述した樹脂組成物と、発泡剤とを含む。上記発泡層の材料は、発泡層を得るために用いられる。上記発泡層の材料は、発泡層を得るための組成物(発泡層用樹脂組成物、発泡層形成材料)である。本発明に係る発泡層の材料では、上記の構成が備えられているので、得られる多層管の断熱性を高めることができる。
【0095】
<発泡剤>
上記発泡剤としては、物理発泡剤、及び化学発泡剤等が挙げられる。上記発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0096】
発泡層の成形性を良好にする観点からは、上記発泡剤は、化学発泡剤であることが好ましい。発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記発泡層は、化学発泡剤により発泡された発泡体であることが好ましい。
【0097】
上記化学発泡剤としては、無機系発泡剤及び有機系発泡剤が挙げられる。上記化学発泡剤は、無機系発泡剤であってもよく、有機系発泡剤であってもよい。上記化学発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記無機系発泡剤としては、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、及びホウ水素化ナトリウム等が挙げられる。上記無機系発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
上記有機系発泡剤としては、アゾ系発泡剤及びアミン系発泡剤等が挙げられる。上記有機系発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
上記アゾ系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド及びアゾジカルボン酸バリウム等が挙げられる。
【0101】
上記アミン系発泡剤としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。
【0102】
本発明の効果を効果的に発揮する観点からは、上記化学発泡剤は、無機系発泡剤であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記化学発泡剤は、炭酸系発泡剤であることが好ましい。特に、上記化学発泡剤が炭酸系発泡剤であると、高い独立気泡率を有し、かつ、成形性に優れかつ外観が良好である発泡体を得ることができる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記炭酸系発泡剤は、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、又は重炭酸アンモニウムであることが好ましい。上記炭酸系発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
上記化学発泡剤として、化学発泡剤が内包成分として熱可塑性樹脂内に内包された熱膨張性カプセルを用いてもよい。
【0104】
上記化学発泡剤は、熱分解型発泡剤であることが好ましい。上記熱分解型発泡剤は、加熱により自己分解してガスを発生させる発泡剤である。上記化学発泡剤は、塩素化塩化ビニル系樹脂の軟化点より高い分解温度を有する熱分解型発泡剤であることが好ましい。上記化学発泡剤は、アクリル系樹脂の軟化点より高い分解温度を有する熱分解型発泡剤であることが好ましい。
【0105】
上記化学発泡剤の分解温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。上記化学発泡剤の分解温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する。
【0106】
上記化学発泡剤の分解温度は、以下のようにして測定することができる。
【0107】
化学発泡剤について、融点測定装置(例えば、ビュッヒ社製「B540」)を用いて、大気中で100℃から5℃/分の昇温条件で加熱し、目視において化学発泡剤の色調の変化が確認された温度を外化学発泡剤の分解温度とする。
【0108】
上記発泡層(発泡体)の材料100重量%中、上記発泡剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは18重量%以下、さらに好ましくは16重量%以下である。上記発泡剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する。
【0109】
上記発泡層(発泡体)の材料100重量%中、上記化学発泡剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは18重量%以下、さらに好ましくは16重量%以下である。上記化学発泡剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、発泡層の独立気泡率を高め、本発明の効果をより一層効果的に発揮する。
【0110】
<他の成分>
上記発泡層(発泡体)は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、充填材、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、難燃剤、造核剤、及び顔料等が挙げられる。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0111】
上記充填材としては、無機充填材、及び有機充填材等が挙げられる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記充填材は、無機充填材であることが好ましい。上記無機充填材としては、タルク、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、クレー、マイカ、ウォラストナイト、ゼオライト、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、及び金属繊維等が挙げられる。上記有機充填材しては、ポリアミド等が挙げられる。上記充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0112】
上記熱安定剤としては、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート及びジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛及び三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム-亜鉛系安定剤;バリウム-亜鉛系安定剤;バリウム-カドミウム系安定剤等が挙げられる。上記熱安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0113】
上記安定化助剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0114】
上記滑剤としては、内部滑剤及び外部滑剤が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記内部滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0116】
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、及びモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記外部滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0117】
上記難燃剤としては、臭素系難燃剤;リン系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム及びメラミンシアヌレート等のイントメッセント系難燃剤;水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化化合物;酸化アンチモン;酸化亜鉛等が挙げられる。上記難燃剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0118】
上記造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ゼオライト及びタルク等の無機化合物が挙げられる。
【0119】
(内層及び外層)
上記内層及び上記外層は、発泡層(発泡体)ではないことが好ましい。上記内層及び上記外層は、非発泡層であることが好ましい。
【0120】
発泡層の成形性を良好にする観点からは、上記内層及び上記外層は、塩化ビニル系樹脂又は塩素化塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましい。
【0121】
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと塩化ビニル以外の単量体との共重合体、及び塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル又は塩化ビニル系樹脂がグラフトされたグラフト共重合体等が挙げられる。上記塩化ビニル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0122】
上記塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、炭素数2以上16以下のα-オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、及びブチレン);炭素数2以上16以下の脂肪族カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル);炭素数2以上16以下のアルキルビニルエーテル(例えば、ブチルビニルエーテル及びセチルビニルエーテル);炭素数1以上16以下のアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びブチルアクリレート);アリール(メタ)アクリレート(例えば、フェニルメタクリレート);芳香族ビニル(例えば、スチレン及びα-置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン));ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニリデン及びフッ化ビニリデン);及びN-置換マレイミド(N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド)等が挙げられる。
【0123】
上記塩化ビニル系樹脂以外の重合体としては、α-オレフィンとビニルエステルとの共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体);α-オレフィンとビニルエステルと一酸化炭素との共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体);α-オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合体及びエチレン-エチルアクリレート共重合体);α-オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートと一酸化炭素との共重合体(例えば、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体);異なる2種以上のα-オレフィンの共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体);不飽和ニトリルとジエンとの共重合体(例えば、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体);ポリウレタン;及び塩素化ポリオレフィン(例えば、塩素化ポリエチレン及び塩素化ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0124】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、好ましくは400以上、より好ましくは600以上であり、好ましくは1600以下、より好ましくは1400以下である。上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記下限以上であると、内層及び外層の耐衝撃性を高めることができる。上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記上限以下であると、内層及び外層の溶融粘度の上昇を防ぎ、成形性を高めることができる。
【0125】
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、以下のようにして測定することができる。塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ろ過により不要成分を除去した後、ろ液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して、塩化ビニル系樹脂の平均重合度を測定する。
【0126】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂としては、上述した塩素化塩化ビニル系樹脂が挙げられる。
【0127】
上記内層及び上記外層の材料(内層及び外層を得るための組成物)は、発泡剤を含まないことが好ましい。上記内層及び上記外層の材料は、非発泡層用樹脂組成物であることが好ましい。
【0128】
上記内層及び上記外層の材料(内層及び外層を得るための組成物)は、上述した添加剤を含んでいてもよい。
【0129】
(多層管の製造方法)
図2は、本発明の一実施形態に係る多層管を製造するために用いられる製造装置を模式的に示す平面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る多層管を製造するために用いられる製造装置を模式的に示す正面図である。図2,3は、多層管10を製造するための製造装置を模式的に示す図である。
【0130】
製造装置20は、内外層押出機11と、発泡層押出機12と、金型13と、冷却水槽15と、引取機16と、切断機17とを備える。内外層押出機11及び発泡層押出機12に、金型13が接続されている。金型13に冷却水槽15が接続されている。冷却水槽15に引取機16が接続されている。引取機16に切断機17が接続されている。発泡層押出機12にガスボンベ18及び定量ポンプ19が接続されている。
【0131】
内層の材料及び外層の材料をホッパーから入れ、内外層押出機11内で内層の材料及び外層の材料(内層及び外層を得るための組成物)を溶融混練し、金型13に押し出す。
【0132】
発泡層の材料をホッパーから入れ、発泡層押出機12内で発泡層の材料(発泡層を得るための組成物)を溶融混練し、金型13に押し出す。
【0133】
金型13の出口から、3層構造を有する未硬化の多層管が押し出される。
【0134】
冷却水槽15には、未硬化の多層管を所定寸法に成形するための管外面成形用チューブ14が取り付けられており、未硬化の多層管の外面を、管外面成形用チューブ14と接触した状態で冷却する。引取機16は、冷却水槽15で冷却された多層管10を受け取る。切断機17は、引取機16から送られてきた多層管10を所定の長さに切断する。
【0135】
図4は、製造装置における金型部分及び管外面成形用チューブ部分を拡大して示す断面図である。
【0136】
図4に示すように、内外層押出機11により溶融混練された内層の材料21及び外層の材料23と、発泡層押出機12により溶融混練された発泡層の材料22とを、金型13に注入し、未硬化の多層管10Xを成形する。未硬化の多層管10Xは、未硬化の内層31及び未硬化の外層33と、未硬化の発泡層32とを備える。
【0137】
未硬化の多層管10Xを管外面成形用チューブ14内に挿入し、未硬化の多層管10Xは所定寸法に型成形されながら冷却水槽15内で冷却される。
【0138】
次いで、図2,3に示すように、引取機16を用いて、冷却水槽15で冷却された多層管10を引き取り、また、切断機17を用いて、引取機16から送られてきた多層管10を所定の長さに切断する。このようにして、所定の長さを有する多層管10を得る。
【0139】
金型13での加熱温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下である。金型13での加熱時間は、好ましくは10分以上、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下である。
【0140】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0141】
以下の材料を用意した。
【0142】
(発泡層の材料)
塩化ビニル系樹脂:
A-1(徳山積水工業社製「TS-640M」、平均重合度640)
A-2(徳山積水工業社製「TS-800E」、平均重合度800)
A-3(徳山積水工業社製「TS-1000R」、平均重合度1000)
塩素化塩化ビニル系樹脂:
A-4(徳山積水工業社製「HA-05K」、塩素含有率67.5重量%、平均重合度500)
A-5(徳山積水工業社製「HA-27K」、塩素含有率67.5重量%、平均重合度700)
A-6(徳山積水工業社製「HA-58K」、塩素含有率67.5重量%、平均重合度1000)
【0143】
アクリル系樹脂:
B-1(三菱ケミカル社製「メタブレンP-530A」)
【0144】
化学発泡剤:
C-1(永和化成工業社製「セルボンSC-855」、分解温度150℃、ガス発生量150ml/g)
【0145】
熱安定剤
滑剤
【0146】
(内層及び外層の材料)
塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ社製「TH1000」)100重量部
ALC(住友金属鉱山シポレックス社製「シポレックス外壁パネルWH」、組成:SiO:50重量%、CaO:30重量%、Al:3.0重量%、その他の無機充填材:17重量%)15重量部
鉛系安定剤(堺化学工業社製「SL-1000」)2.0重量部
ポリエチレン系滑剤(三井化学社製「ハイワックス4202E」)0.5重量部
【0147】
(実施例1~10及び比較例1~6)
樹脂組成物の調製:
塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂、及びアクリル系樹脂を、表1~4に示す含有量となるように配合し、熱安定剤2.0重量部と、滑剤2.5重量部とを添加し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(カワタ社製)で撹拌混合して、樹脂組成物を得た。
【0148】
発泡層の材料の調製:
得られた樹脂組成物に、化学発泡剤を表1~4に示す含有量で配合し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(カワタ社製)で撹拌混合して、発泡層の材料(発泡層を得るための組成物)を得た。
【0149】
内層及び外層の材料の調製:
内容積200リットルのヘンシェルミキサー(カワタ社製)で上記の成分を撹拌混合して、内層及び外層の材料を得た。
【0150】
多層管の作製:
得られた発泡層、内層及び外層の材料について、上述した方法で、多層管を作製した。
【0151】
(評価)
(1)伸長試験
得られた樹脂組成物について、上述した方法で、伸長試験を行い、伸長時間0.05秒での伸長粘度、及び、伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間を求めた。また、伸長時間0.05秒以上0.40秒以下において、伸長時間t+0.05秒での伸長粘度と伸長時間tでの伸長粘度との差を求め、上記差の最大値の、上記差の最小値に対する比(上記差の最大値/上記差の最小値)を求めた。
【0152】
(2)発泡層の見かけ密度
上述した方法で、発泡層の見かけ密度を測定した。
【0153】
(3)発泡層の独立気泡率
上述した方法で、発泡層の独立気泡率を測定した。
【0154】
(4)断熱性
「(2)発泡層の見かけ密度」及び「(3)発泡層の独立気泡率」により、多層管の断熱性を、以下の基準で判定した。
【0155】
[断熱性の判定基準]
○○:発泡層の見かけ密度が0.4g/cm以下であり、かつ、発泡層の独立気泡率が80%以上
○:発泡層の見かけ密度が0.4g/cm以下であり、かつ、発泡層の独立気泡率が45%以上80%未満
×:発泡層の見かけ密度が0.4g/cmを超える、又は、発泡層の独立気泡率が45%未満
【0156】
多層管の構成及び結果を表1~4に示す。
【0157】
なお、比較例1~6では、伸長粘度が90.0×10Pa・sに到達する前に、試験体が破断したため、伸長粘度が90.0×10Pa・sとなる伸長時間を測定することができなかった。
【0158】
【表1】
【0159】
【表2】
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【符号の説明】
【0162】
1…内層
2…発泡層
3…外層
10…多層管
10X…未硬化の多層管
11…内外層押出機
12…発泡層押出機
13…金型
14…管外面成形用チューブ
15…冷却水槽
16…引取機
17…切断機
18…ガスボンベ
19…定量ポンプ
20…製造装置
21…内層の材料
22…発泡層の材料
23…外層の材料
31…未硬化の内層
32…未硬化の発泡層
33…未硬化の外層
図1
図2
図3
図4