(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100161
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル、ヘッドマウントディスプレイ及び表示システム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240719BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240719BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20240719BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240719BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1335 500
G02F1/1337 505
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003946
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】島田 伸二
【テーマコード(参考)】
2H088
2H199
2H290
2H291
【Fターム(参考)】
2H088EA10
2H088HA03
2H088HA08
2H088HA12
2H088HA18
2H088HA28
2H088JA10
2H088KA14
2H088KA27
2H088KA30
2H088LA02
2H088LA08
2H088MA02
2H199CA04
2H199CA23
2H199CA62
2H199CA63
2H199CA69
2H199CA70
2H199CA77
2H199CA81
2H199CA85
2H199CA92
2H199CA96
2H290AA34
2H290BA12
2H290BA53
2H290BF25
2H290CA12
2H290CA46
2H290CB24
2H291FA02Y
2H291FA14Y
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA81Z
2H291FD22
2H291FD26
2H291GA08
2H291GA19
2H291HA11
2H291LA22
2H291MA02
(57)【要約】
【課題】高精細であっても良好な視野角特性及び透過率が得られるヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル、ヘッドマウントディスプレイ、並びに、表示システムを提供する。
【解決手段】平面視において行方向及び列方向に配置された複数の画素を含む表示領域を備えたヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルであって、第一基板と、液晶分子を含む液晶層と、第二基板とを備え、上記表示領域は、上記行方向に沿った第一の分割線と、上記第一の分割線と交差し、かつ上記列方向に沿った第二の分割線により、第一、第二、第三及び第四の領域に区分され、上記第一、第二、第三及び第四の領域の各々において、上記複数の画素における液晶分子の配向方位は、略平行であり、かつ、上記第一の分割線と上記第二の分割線の交点に向かうヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において行方向及び列方向に配置された複数の画素を含む表示領域を備えたヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルであって、
第一基板と、液晶分子を含む液晶層と、第二基板とを備え、
前記表示領域は、前記行方向に沿った第一の分割線と、前記第一の分割線と交差し、かつ前記列方向に沿った第二の分割線により、第一、第二、第三及び第四の領域に区分され、
前記液晶層への電圧無印加状態において、前記第一、第二、第三及び第四の領域の各々において、各領域に含まれる前記複数の画素の液晶分子の配向方位は、略平行であり、かつ、上記液晶層の厚み方向の中央付近の液晶分子は、観察者側から見て、前記第一の分割線と前記第二の分割線の交点に向かうことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【請求項2】
前記第一基板は、前記複数の画素毎に配置された画素電極を有し、
前記第二基板は、前記液晶層を挟んで前記複数の画素電極と対向して配置された対向電極を有することを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【請求項3】
前記第一基板の表面及び前記第二基板の表面に対する、電圧無印加状態における前記液晶分子のチルト角は、前記第一基板及び前記第二基板の法線方向を0°とした場合に、0.1°以上、10°以下であることを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【請求項4】
電圧無印加状態において、前記第一基板の表面付近の前記液晶分子の配向方位、及び、前記第二基板の表面付近の前記液晶分子の配向方位は、それぞれ、平面視で前記第一の分割線又は前記第二の分割線を境界として反平行であり、かつ、
前記第一、第二、第三及び第四の領域における、前記第一基板の表面付近の前記液晶分子の配向方位と、前記第二基板の表面付近の前記液晶分子の配向方位とは、略直交することを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【請求項5】
平面視において、前記第一の分割線は、前記列方向に隣接する前記画素電極間に位置するか、又は、前記第二の分割線は、前記行方向に隣接する前記画素電極間に位置することを特徴とする請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【請求項6】
前記列方向に隣接する前記画素電極間の距離、又は、前記行方向に隣接する前記画素電極間の距離は、10μm以下であることを特徴とする請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【請求項7】
前記第二基板は、赤色、緑色及び青色のカラーフィルタを含むカラーフィルタ層を備え、
前記赤色のカラーフィルタと前記青色のカラーフィルタとは、前記行方向又は前記列方向に隣接し、
前記第一の分割線又は前記第二の分割線のいずれか一方は、平面視において、前記赤色のカラーフィルタと前記青色のカラーフィルタとの間に位置することを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【請求項8】
前記第一基板と前記液晶層との間、及び、前記第二基板と前記液晶層との間に、それぞれ光配向膜を有することを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【請求項9】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルと、前記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルを支持する支持部とを備え、ユーザの頭部に装着するヘッドマウントディスプレイであって、
前記第一の分割線と前記第二の分割線の交点は、前記ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着し正面を見た状態で、前記ユーザの瞳孔の位置と重なることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
請求項9に記載のヘッドマウントディスプレイと、前記ユーザの眼球の動きを検出する検出部と、前記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルの位置を調整するパネル位置調整機構とを備え、
前記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルは、少なくとも前記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルが配置された面内方向において、位置調整が可能であるように前記支持部に支持されており、
前記パネル位置調整機構は、前記検出部により検出された前記ユーザの眼球の動きに合わせて、前記第一の分割線と前記第二の分割線の交点が前記ユーザの瞳孔の位置と重なるように、前記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルの位置を調整することを特徴とする表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル、上記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルを備えたヘッドマウントディスプレイ、及び、上記ヘッドマウントディスプレイを備えた表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの視野角特性を向上させる方法として、従来から液晶分子の配向方位が異なる複数のドメインを配置する方法が検討されている。例えば、特許文献1では、一つの画素を4つの配向領域(ドメイン)に分割する方法が開示されている。
図14は、特許文献1に記載の配向分割方法を説明した一画素の平面模式図である。
図14中、実線の矢印は、観察者に近い側の基板(上側基板)に対する配向処理方向を示し、点線の矢印は、観察者から遠い側の基板(下側基板)に対する配向処理方向を示す。黒塗り矢印は、液晶分子の配向方位を示す。上側基板及び下側基板は、それぞれ表面に光配向膜を有し、
図14に示したように、上側基板表面の光配向膜に対し、0°方位と180°方位に光配向処理がなされ、上下に2分割されている。下側基板表面の光配向膜に対し、90°方位と270°方位に光配向処理がなされ、左右に2分割されている。上下基板を貼り合わせると、1つの画素2001は、液晶分子の配向方位が互いに異なる4つのドメインに配向分割され、上記4つのドメインの液晶分子の配向方位は左回りに回転した方向になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDともいう)に用いられる液晶パネルは高精細であることが求められ、一つの画素のサイズが小さいため、特許文献1のように1つの画素を配向分割することは困難であった。また、ドメインの境界では、液晶分子の配向が干渉するため暗線が発生しやすく、特許文献1のように、1つの画素を縦横2個ずつの合計4個の配向領域に分割した場合は、一つの画素内で縦方向及び横方向に暗線が視認されることがあった。高精細なパネルでは特に、一つの画素を複数のドメインに配向分割する方法では、充分な透過率が得られないことがあった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高精細であっても良好な視野角特性及び透過率が得られるヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル、ヘッドマウントディスプレイ、並びに、表示システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一実施形態は、平面視において行方向及び列方向に配置された複数の画素を含む表示領域を備えたヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルであって、第一基板と、液晶分子を含む液晶層と、第二基板とを備え、上記表示領域は、上記行方向に沿った第一の分割線と、上記第一の分割線と交差し、かつ上記列方向に沿った第二の分割線により、第一、第二、第三及び第四の領域に区分され、前記液晶層への電圧無印加状態において、上記第一、第二、第三及び第四の領域の各々において、各領域に含まれる上記複数の画素の液晶分子の配向方位は、略平行であり、かつ、上記液晶層の厚み方向の中央付近の液晶分子は観察者側から見て、上記第一の分割線と上記第二の分割線の交点に向かうヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【0007】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記第一基板は、上記複数の画素毎に配置された画素電極を有し、上記第二基板は、上記液晶層を挟んで上記複数の画素電極と対向して配置された対向電極を有するヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【0008】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は(2)の構成に加え、上記第一基板の表面及び上記第二基板の表面に対する、電圧無印加状態における上記液晶分子のチルト角は、上記第一基板及び上記第二基板の法線方向を0°とした場合に、0.1°以上、10°以下であるヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【0009】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(3)のいずれかの構成に加え、電圧無印加状態において、上記第一基板の表面付近の上記液晶分子の配向方位、及び、上記第二基板の表面付近の上記液晶分子の配向方位は、それぞれ、平面視で上記第一の分割線又は上記第二の分割線を境界として反平行であり、かつ、上記第一、第二、第三及び第四の領域における、上記第一基板の表面付近の上記液晶分子の配向方位と、上記第二基板の表面付近の上記液晶分子の配向方位とは、略直交するヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【0010】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(2)~(4)のいずれかの構成に加え、平面視において、上記第一の分割線は、上記列方向に隣接する上記画素電極間に位置するか、又は、上記第二の分割線は、上記行方向に隣接する上記画素電極間に位置するヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【0011】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、上記列方向に隣接する上記画素電極間の距離、又は、上記行方向に隣接する上記画素電極間の距離は、10μm以下であるヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【0012】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(6)のいずれかの構成に加え、上記第二基板は、赤色、緑色及び青色のカラーフィルタを含むカラーフィルタ層を備え、上記赤色のカラーフィルタと上記青色のカラーフィルタとは、上記行方向又は上記列方向に隣接し、上記第一の分割線又は上記第二の分割線のいずれか一方は、平面視において、上記赤色のカラーフィルタと上記青色のカラーフィルタとの間に位置するヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【0013】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(7)のいずれかの構成に加え、上記第一基板と上記液晶層との間、及び、上記第二基板と上記液晶層との間に、それぞれ光配向膜を有するヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル。
【0014】
(9)本発明の他の一実施形態は、上記(1)~(8)のいずれかの構成を有するヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルと、上記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルを支持する支持部とを備え、ユーザの頭部に装着するヘッドマウントディスプレイであって、上記第一の分割線と上記第二の分割線の交点は、上記ユーザが上記ヘッドマウントディスプレイを装着し正面を見た状態で、上記ユーザの瞳孔の位置と重なるヘッドマウントディスプレイ。
【0015】
(10)本発明の更に他の一実施形態は、上記(9)の構成を有するヘッドマウントディスプレイと、上記ユーザの眼球の動きを検出する検出部と、上記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルの位置を調整するパネル位置調整機構とを備え、上記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルは、少なくとも上記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルが配置された面内方向において、位置調整が可能であるように上記支持部に支持されており、上記パネル位置調整機構は、上記検出部により検出された上記ユーザの眼球の動きに合わせて、上記第一の分割線と上記第二の分割線の交点が上記ユーザの瞳孔の位置と重なるように、上記ヘッドマウントディスプレイ用液晶パネルの位置を調整する表示システム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高精細であっても良好な視野角特性及び透過率が得られるヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル、ヘッドマウントディスプレイ、並びに、表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係るHMD用液晶パネルの一例を示した平面模式図である。
【
図2】
図1のX1-X2線における断面模式図である。
【
図3】
図1中、一点鎖線で囲んだ4個分の画素の平面模式図である。
【
図4】第一配向膜及び第二配向膜に対する配向処理方向を示した平面模式図である。
【
図5】第一配向膜に対する配向処理の第一工程を説明した図面である。
【
図6】第一配向膜に対する配向処理の第二工程を説明した図面である。
【
図7】第二配向膜に対する配向処理の第一工程を説明した図面である。
【
図8】第二配向膜に対する配向処理の第二工程を説明した図面である。
【
図9】配向処理後の第一基板と第二基板とを貼り合わせた液晶パネルの斜視図である。
【
図10】実施形態2に係るHMDの一例を模式的に示した斜視図である。
【
図11】実施形態2に係るHMDをユーザが装着した状態で、ユーザの正面側から見た模式図である。
【
図12】実施形態3に係る表示システムを説明した模式図である。
【
図13】実施例1に係るHMD用液晶パネルの各領域におけるコントラスト視野角を示したシミュレーション図である。
【
図14】特許文献1に記載の配向分割方法を説明した一画素の平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【0019】
本明細書中、略直交とは、2つの方向のなす角度が、好ましくは90°±3°の範囲内であり、より好ましくは90°±1°の範囲内であり、更に好ましくは90°±0.5°の範囲内である。略平行とは、2つの方向のなす角度が、好ましくは0°±3°の範囲内であり、より好ましくは0°±1°の範囲内であり、更に好ましくは0°±0.5°の範囲内である。反平行とは、一つの方向に対して、他の方向が180°±3°の範囲内で異なることをいい、より好ましくは180°±1°の範囲内であり、更に好ましくは180°±0.5°の範囲内である。
【0020】
本明細書中、前面側とは、観察者(ユーザ)が液晶パネルを観察する面をいい、観察者側ともいう。背面側とは、液晶パネルの上記前面側と反対側の面をいう。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るHMD用液晶パネルの一例を示した平面模式図である。
図1に示したように、実施形態1に係るヘッドマウントディスプレイ用液晶パネル(以下、HMD用液晶パネルともいう)100は、平面視において行方向及び列方向に配置された複数の画素1を含む表示領域Aを備える。表示領域Aは、表示状態において、HMD用液晶パネル100の背面側から入射された光を前面側に透過し、所望の画像を表示する領域である。
【0022】
表示領域Aは、行方向に沿った第一の分割線L1と、第一の分割線L1と交差し、かつ列方向に沿った第二の分割線L2により、第一の領域A-1、第二の領域A-2、第三の領域A-3及び第四の領域A-4に区分される。第一の領域A-1、第二の領域A-2、第三の領域A-3及び第四の領域A-4には、それぞれ複数の画素1が含まれる。
【0023】
図1中、画素1毎に示した矢印は、液晶分子の配向方位を表す。第一の領域A-1、第二の領域A-2、第三の領域A-3及び第四の領域A-4の各々の領域において、電圧が印加されていない状態(無印加状態)において、一つの領域に含まれる複数の画素1の液晶層20の液晶分子の配向方位は、互いに略平行である。すなわち、各領域に含まれる上記複数の画素の液晶分子の配向方位が略同一であるともいえる。かつ、各々の領域において、一つの領域に含まれる複数の画素1の液晶層20の液晶分子の配向方位は、第一の分割線L1と第二の分割線L2の交点Pに向かう。本明細書中、一つの領域に含まれる複数の画素の平均的な液晶分子の配向方位を「最適視野角」とすると、観察者側から見た場合に各領域の最適視野角が交点Pに向かうといえる。上記最適視野角は、画素電極と対向電極との間に無印加状態における、液晶層20の厚み方向の中央付近の液晶分子の配向方位でもある。上記無印加状態は、液晶分子の閾値未満の電圧も含む。
【0024】
HMD用液晶パネル100は、表示領域Aを視野角が異なる領域に分割していることから、良好な視野角特性が得られる。また、一つの画素内ではなく、表示領域Aを配向分割することで、透過率を高め、高精細化が可能となる。画素内で配向分割を行うと、配向分割領域の境界で液晶分子の配向が不安定となり、暗線として視認されるが、本実施形態では画素内で配向分割を行っていないため、画素内に暗線が発生せず、高い透過率が得られる。上記高精細パネルは、例えば、500~2000ppiのパネルをいう。本実施形態のHMD用液晶パネル100を1000ppi程度の高精細パネルとすると、各画素内を4つに配向分割した場合に比べ、2倍以上の透過率が得られる。
【0025】
図1は、液晶パネルの交点P付近を抜き出した図面であり、一つの領域に、赤色の画素32R、緑色の画素32G及び青色の画素32Bがそれぞれ4個ずつ、合計12個の画素が示されているが、各領域は、行方向及び列方向に更に多くの画素を含んでもよい。L1は、表示領域Aの列方向の中心に配置されても、されなくてもよい。また、L2は、表示領域Aの行方向の中心に配置されても、されなくてもよい。更に、各領域に含まれる画素の数は、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0026】
図2は、
図1のX1-X2線における断面模式図である。
図2に示したように、HMD用液晶パネル100は、第一基板10と、液晶分子を含む液晶層20と、第二基板30とを備える。第一基板10は、複数の画素1毎に配置された画素電極12を有し、第二基板30は、液晶層20を挟んで複数の画素電極12と対向して配置された対向電極32を有してもよい。すなわち、HMD用液晶パネル100は、液晶層20を挟んで、第一基板10と第二基板30にそれぞれ電極が配置された縦配向モードの液晶パネルであってもよい。
【0027】
従来は、良好な視野角特性が得られやすいことから、HMD用液晶パネルとして、FFS(Fringe Field Switching)モード等の水平配向モードの液晶パネルが用いられることが多かった。FFSモードの液晶パネルは、一方の基板に、画素電極と対向電極とが絶縁層を介して積層され、画素電極に設けられたスリットや開口を通過した電気力線に沿って、液晶分子が配向することで表示を行う。しかしながら、FFSモードの液晶パネルは、1つの画素内でも、スリットからの距離によって、透過率の差異が生じることがあった。また、液晶分子が電極表面に平行配向しているため、電極表面の凹凸の影響を受けやすく、偏光光の散乱が生じて遮光性が不充分となることがあった。HMD用液晶パネルは、画素の高精細化に伴って、実表示に有効な画素面積の割合が低下することに加え、本水平配向モードの液晶パネルは、液晶分子の揺らぎや画素電極上の凹凸の影響により遮光性が不充分となるおそれがあり、充分な透過率及びコントラストが得られ難いと考えられた。
【0028】
一方で、VA(Vertical Alignment)モード等の縦配向モードの液晶パネルは、高いコントラストが得られやすいものの、一般的に視野角特性が得られ難い。しかしながら、上述のように、本実施形態のHMD用液晶パネル100は、表示領域Aが第一の分割線L1及び第二の分割線L2により、第一~第四の領域の4つの領域に区分され、かつ、各領域の最適視野角が第一の分割線L1と第二の分割線L2の交点Pに向かうことで、良好な視野角特性及び透過率が得られるため、縦配向モードとすることで、良好な視野角特性及び透過率に加え、高いコントラストが得られる。
【0029】
第一基板10は、画素電極12を駆動させるスイッチング素子を有するアクティブマトリクス基板であってもよい。
図3は、
図1中、一点鎖線で囲んだ4個分の画素の平面模式図である。第一基板10は、例えば、
図3に示したように、透明基板11上に、互いに平行に延設された複数のゲート配線GLと、各ゲート配線GLと交差する方向に互いに平行に延設された複数のソース配線SLとを備え、ゲート配線GLとソース配線SLとの交点にはスイッチング素子として、薄膜トランジスタ(TFT)等の非線形素子が配置されてもよい。ゲート配線GLとソース配線SLとは、略直交することが好ましい。本明細書中、互いに隣接する2本の上記ゲート配線と互いに隣接する2本の上記ソース配線とに囲まれた領域を画素という。画素電極12は、ドレイン電極、コンタクトホールCHを介して上記TFTと接続されてもよい。
【0030】
透明基板11及び後述する透明基板31は、光透過性の基材である。透明基板11、31の材質としては、特に限定されず、例えば、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0031】
画素電極12及び後述する対向電極32の材料としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の光透過性の導電材料が挙げられる。
【0032】
図2では、第二基板30が、透明基板31と、透明基板31上に配置されたカラーフィルタ層33とブラックマトリクス34を有する場合を例示する。カラーフィルタ層33は、赤色のカラーフィルタ33R、緑色のカラーフィルタ33G、及び青色のカラーフィルタ33Bを含んでもよい。ブラックマトリクス34は、
図1及び
図3に示したように、平面視においてカラーフィルタを区切るように配置された遮光部材であり、液晶パネルの分野において通常用いられるものを用いることができる。各カラーフィルタは、平面視において画素と重畳するように配置される。上記HMD用液晶パネルは、TFT等のスイッチング素子とカラーフィルタ層とが同じ基板に含まれるカラーフィルタ・オン・アレイであってもよい。この場合、カラーフィルタ層は、第一基板10に含まれてもよく、画素電極12と透明基板11との間に配置されることが好ましい。
【0033】
赤色のカラーフィルタ33R、緑色のカラーフィルタ33G、及び青色のカラーフィルタ33Bの配置方法としては、行方向及び列方向のいずれか一方に沿って、異なる色のカラーフィルタが所定の順で繰り返し配置され、他方の方向に沿って同色のカラーフィルタが配置されるストライプ配置であってもよい。
図1では、行方向に赤色の画素32R、緑色の画素32G及び青色の画素32Bの並びが繰り返し配置されており、列方向に同色の画素が配置される場合を例示した。
【0034】
赤色のカラーフィルタ33Rと青色のカラーフィルタ33Bとは、行方向又は列方向に隣接することが好ましく、第一の分割線L1又は第二の分割線L2のいずれか一方は、平面視において、赤色のカラーフィルタ33Rと青色のカラーフィルタ33Bとの間に位置することが好ましい。同色のカラーフィルタ間に分割線を配置すると目立つことから、第一の分割線L1及び第二の分割線L2のいずれか一方は、異なる色のカラーフィルタ間に配置されることが好ましい。また、緑色よりも赤色及び青色の方が視認され難いことから、第一の分割線L1及び第二の分割線L2のいずれか一方は、赤色のカラーフィルタ33Rと青色のカラーフィルタ33Bとの間に配置されることが好ましい。
図1では、赤色のカラーフィルタ33Rと青色のカラーフィルタ33Bとが行方向に隣接し、第二の分割線L2が平面視において、赤色のカラーフィルタ33Rと青色のカラーフィルタ33Bとの間に位置する場合を例示した。
【0035】
平面視において、第一の分割線L1は、列方向に隣接する画素電極12間に位置するか、又は、第二の分割線L2は、行方向に隣接する画素電極12間に位置することが好ましい。
図1では、第一の分割線L1が列方向に隣接する画素電極12間に位置し、かつ第二の分割線L2が行方向に隣接する画素電極12間に位置する場合を例示した。
【0036】
列方向に隣接する画素電極12間の距離W
1、又は、行方向に隣接する画素電極12間の距離W
2は、小さいことが好ましい。ゲート配線GLの延伸方向が行方向であり、ソース配線SLの延伸方向が列方向である場合、
図3に示したように、ゲート配線GLの延伸方向にドレイン電極DLと画素電極12を接続するためのスルーホール等が設けられることから、列方向に隣接する画素電極12間の距離W
1は、行方向に隣接する画素電極12間の距離W
2よりも広くてもよい。上記W
1及びW
2のうち狭い方の幅は10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。
図3の構成で500ppiの場合を例示すると、ソース配線SLが配置された行方向に隣接する画素電極12間の距離W
2は6μm以下であってもよく、ゲート配線GLが配置された列方向に隣接する画素電極12間の距離W
1は6~24μmであってもよい。
【0037】
液晶層20は、液晶分子を含有する。上記液晶分子は、下記式(L)で定義される誘電率異方性(Δε)が負の値を有するもの(ネガ型液晶)が好ましい。また、上記液晶分子は、0℃~60℃の範囲でネマティック性を示すものが好ましい。
Δε=(液晶分子の長軸方向の誘電率)-(液晶分子の短軸方向の誘電率) (L)
【0038】
第一基板10と液晶層20との間に第一配向膜41を有し、第二基板30と液晶層20との間に第二配向膜42を有してもよい。電圧無印加状態における第一基板10の表面に対する液晶分子の配向方位及びチルト角は、第一配向膜41により制御し、電圧無印加状態における第二基板30の表面に対する液晶分子の配向方位及びチルト角は、第二配向膜42により制御することができる。
【0039】
第一配向膜41及び第二配向膜42は、電圧無印加状態において、液晶分子を配向膜に対して略垂直に配向させる垂直配向膜であることが好ましい。(ここの部分はカットで)
【0040】
第一配向膜41及び第二配向膜42は、光配向膜であることが好ましい。上記光配向膜は、紫外光、可視光等の光(電磁波)が照射されることによって構造変化を生じ、その近傍に存在する液晶分子の配向を規制する性質(配向規制力)を発現するものや、配向規制力の大きさ及び/又は向きが変化するものが挙げられる。
【0041】
光配向膜の材料としては、例えば、光反応部位を含むポリアミド(ポリアミック酸)、ポリイミド、ポリシロキサン誘導体、メタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール等の主鎖を有するポリマーが挙げられ、主鎖又は側鎖に光反応部位(官能基)を有する光配向膜材料が好適に用いられる。
【0042】
上記光反応部位としては、シンナメート、シンナモイル、4-カルコン、クマリン、スチルベン等の二量化(二量体形成)及び異性化するもの、アゾベンゼン等の異性化するもの;フェノールエステル構造等の光フリース転移するもの;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸-1,2:3,4-二無水物(CBDA)等のシクロブタン環を含む二無水物等の光照射によって分解するもの等が挙げられる。
【0043】
HMD用液晶パネル100は、第一基板10の液晶層20と反対側に第一偏光板51を有し、第二基板30の液晶層20と反対側に第二偏光板52を有してもよい。第一偏光板51及び第二偏光板52は、液晶パネルの分野で通常用いられるものを用いることができる。第一偏光板51及び第二偏光板52は、例えば、吸収型の直線偏光板であってもよい。第一偏光板51と第二偏光板52とは、互いの透過軸が略直交するようにクロスニコルに配置されることが好ましい。
【0044】
以下に
図4を用いて、電圧無印加状態における液晶分子の配向方位について説明する。
図4は、第一配向膜及び第二配向膜に対する配向処理方向を示した平面模式図である。
図4中、実線の矢印は、観察者に近い側の基板(第二基板30)の表面に配置された配向膜(第二配向膜42)に対する配向処理方向を示し、点線の矢印は、観察者から遠い側の基板(第一基板10)の表面に配置された配向膜(第一配向膜41)に対する配向処理方向を示す。黒塗り矢印は、各領域における最適視野角の方位を示す。
【0045】
電圧無印加状態において、第一基板10の表面付近の液晶分子の配向方位、及び、第二基板30の表面付近の液晶分子の配向方位は、それぞれ、平面視で第一の分割線L1又は第二の分割線L2を境界として反平行であることが好ましい。かつ、第一、第二、第三及び第四の領域における、第一基板10の表面付近の液晶分子の配向方位と、第二基板30の表面付近の液晶分子の配向方位とは、略直交することが好ましい。
【0046】
電圧無印加状態において、各基板付近の液晶分子は、各基板の表面に配置された配向膜の配向処理方向に沿って配向する。第二基板30の表面付近の液晶分子の配向方位は、
図4に示した実線の矢印の方向に沿って配向しており、第一の領域A-1及び第四の領域A-4の第二基板30の表面付近の液晶分子は、図面の左側から第二の分割線L2に向かって0°方位に配向し、第二の領域A-2及び第三の領域A-3の第二基板30の表面付近の液晶分子は、図面の右側から第二の分割線L2に向かって180°方位に配向している。すなわち、第二基板30の表面付近の液晶分子は、第二の分割線L2を境界として反平行に配向している。第一基板10の表面付近の液晶分子の配向方位は、
図4に示した点線の矢印の方向に沿って配向しており、第一の領域A-1及び第二の領域A-2の第一基板10の表面付近の液晶分子は、第一の分割線L1から図面の上側に向かって90°方位に配向し、第三の領域A-3及び第四の領域A-4の第一基板10の表面付近の液晶分子は、第一の分割線L1から図面の下側に向かって270°方位に配向している。すなわち、第一基板10の表面付近の液晶分子は、第一の分割線L1を境界として反平行に配向している。
【0047】
更に、
図4に示したように、各領域において、実線の矢印と点線の矢印の方向は直交しており、第一、第二、第三及び第四の領域における、第一基板10の表面付近の液晶分子の配向方位と、第二基板30の表面付近の液晶分子の配向方位とは、直交することが好ましい。電圧無印加状態において、液晶層20の厚み方向の中央付近の液晶分子は、第一基板10の表面付近の液晶分子の配向方位と、第二基板30の表面付近の液晶分子の配向方位との影響を受け、上下基板近傍の液晶分子の配向方位の中間方向に配向する。そのため、
図4中に黒塗りの矢印で示したように、電圧無印加状態において、液晶層20の厚み方向の中央付近の液晶分子は、第一の分割線L1と第二の分割線L2との交点Pに向かって配向する。上述のように、電圧無印加状態における、液晶層20の厚み方向の中央付近の液晶分子の観察者側から見た配向方位が「最適視野角」である。
【0048】
第一基板10の表面及び第二基板30の表面に対する、電圧無印加状態における液晶分子のチルト角は、第一基板10及び第二基板30の法線方向を0°とした場合に、0.1°以上、10°以下であることが好ましい。電圧無印加状態で液晶分子が縦配向していることで、金属配線や電極表面で起こる光の散乱による光漏れを抑制することができ、コントラストを高くすることができる。HMD用液晶パネル100は、電圧無印加状態で黒表示となるノーマリーブラックであってもよい。電圧無印加状態では、液晶分子は、第一基板10及び第二基板30に対して、ほぼ垂直に、かつ平面視においては、領域毎に異なった方位を向いて配向していることが好ましい。
【0049】
HMD用液晶パネル100を縦配向モードとし、ネガ型液晶を用いた場合、画素電極12と対向電極32との間に電圧を印加すると、液晶層20の厚み方向に沿って電界が形成される。各領域における液晶分子は、各領域の適視野角の方向に沿って、チルト角が大きくなるよう傾斜する。その結果、HMD用液晶パネル100の背面側から出射された光を観察者側に透過し、所望の画像を表示することができる。
【0050】
以下に
図5~
図9を用いて、
図4に示した配向処理方法の一例を説明する。
図5は、第一配向膜に対する配向処理の第一工程を説明した図面である。
図6は、第一配向膜に対する配向処理の第二工程を説明した図面である。
図7は、第二配向膜に対する配向処理の第一工程を説明した図面である。
図8は、第二配向膜に対する配向処理の第二工程を説明した図面である。
図9は、配向処理後の第一基板と第二基板とを貼り合わせた液晶パネルの斜視図である。以下では特定の方位から光を照射する場合を説明するが、各領域の最適視野角が、第一の分割線L1と第二の分割線L2の交点Pに向かえばよく、光の照射方向や手順は下記の説明に限定されない。
【0051】
図5に示したように、第一基板10の表面に第一配向膜41を形成し、第一工程として、270°方位から第一配向膜41の全体に対して斜めに紫外線等の光を照射する。その後、
図6に示したように、液晶分子の配向方位を変えたい領域をフォトマスク60で遮光し、90°方位から、第一配向膜41の表面に対して光を照射する。フォトマスク60で遮光して配向分割することで、液晶分子の傾斜方位が異なる領域間の間隔を狭くすることができ、例えば1μm未満にすることができる。フォトマスク60としては、特に限定されず、光配向膜への光配向で通常用いられる遮光部材を用いることができる。
【0052】
図7に示したように、第二基板30の表面に第二配向膜42を形成し、第一工程として、0°方位から、第二配向膜42の全体に対して斜めに光を照射する。その後、
図8に示したように、液晶分子の配向方位を変えたい領域をフォトマスク60で遮光し、180°方位から、第二配向膜42の表面に対して斜めに光を照射する。
【0053】
光照射は、第一基板10及び第二基板30の法線方向を0°とした場合に、第一配向膜41及び第二配向膜42の表面に対して、30~60°であってもよい。第一配向膜41及び第二配向膜42に照射される光は、配向膜に含まれる光反応部位が構造変化を起こす波長を含めばよく、紫外光、可視光等の光(電磁波)である。
【0054】
図9に示したように、光配向処理を行った第一基板10及び第二基板30を貼り合わせ、液晶分子を充填することで、
図4に示したように、電圧無印加状態において、第一基板10の表面付近の液晶分子21の配向方位、及び、第二基板30の表面付近の液晶分子21の配向方位は、それぞれ、平面視で第一の分割線L1又は第二の分割線L2を境界として反平行であり、かつ、第一、第二、第三及び第四の領域における、第一基板10の表面付近の液晶分子21の配向方位と、第二基板30の表面付近の液晶分子21の配向方位とは、略直交する液晶パネルが得られる。
【0055】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係るHMDの一例を模式的に示した斜視図である。実施形態2に係るHMD200は、ユーザの頭部に装着するものであって、実施形態1に係るHMD用液晶パネル100と、HMD用液晶パネル100を支持する支持部201とを備える。HMD200は、HMD用液晶パネル100として、右眼用のHMD用液晶パネル100Rと左眼用のHMD用液晶パネル100Lを有してもよい。以下、特に右眼用と左目用のHMD用液晶パネルを特に区別しない場合は、単にHMD用液晶パネル100という。
【0056】
支持部201は、HMD用液晶パネル100を格納する筐体202と、筐体202をユーザの頭部に固定する固定バンド等の固定部203を有してもよい。また、HMD200は、筐体202とユーザUの顔との間に配置されたフェイスクッション204を有してもよい。
図10ではゴーグル型のHMDを例示したが、メガネ型であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0057】
HMD200は、HMD用液晶パネル100の背面側にバックライト205を備えてもよい。バックライト205は、ユーザ側に光を照射するものであれば特に限定されず、直下型やエッジ型やその他のどの方式でもよい。バックライト205は、筐体202に格納されてもよい。
【0058】
第一の分割線L1と第二の分割線L2の交点Pは、ユーザがHMD200を装着し正面を見た状態で、ユーザの瞳孔の位置と重なることが好ましい。交点Pの位置を瞳孔の位置と重なるように配置することで、視野角を良好とすることができる。なお、瞳孔の中心が交点Pと一致していなくてもよく、ユーザの視野の中央付近に交点Pが配置されていればよい。
【0059】
図11は、実施形態2に係るHMDをユーザが装着した状態で、ユーザの正面側から見た模式図である。
図11に示したように、ユーザがHMD200を装着し正面を見た状態で、右眼用のHMD用液晶パネル100Rの第一の分割線L1と第二の分割線L2の交点Pは、ユーザの右眼の瞳孔の位置と重なり、左眼用のHMD用液晶パネル100Lの第一の分割線L1と第二の分割線L2の交点Pは、ユーザの左眼の瞳孔の位置と重なることが好ましい。交点Pとユーザの瞳孔の位置とが重なるように配置することで、実際に視認可能なコントラスト値は約1500となり、光の入射角を広くとった場合には、画面内でも液晶パネル全体でも配向分割していない一般的な液晶パネルのコントラスト値(約1000)よりも高くなる。
【0060】
HMD用液晶パネル100は、ユーザがHMD200を装着し正面を見た状態で、交点Pが概ねユーザの瞳孔の位置と重なる位置に固定されていてもよい。また、HMD用液晶パネル100は、少なくともHMD用液晶パネルが配置された面内方向において、位置調整が可能であるように支持部201に支持されていてもよい。
【0061】
(実施形態3)
図12は、実施形態3に係る表示システムを説明した模式図である。実施形態3に係る表示システム300は、HMD200と、ユーザの眼球の動きを検出する検出部301と、HMD用液晶パネル100の位置を調整するパネル位置調整機構302とを備える。
【0062】
実施形態3では、HMD用液晶パネル100は、少なくともHMD用液晶パネルが配置された面内方向において、位置調整が可能であるように支持部201に支持されている。ユーザが視線を動かすと、検出部301が眼球の位置を特定して、眼球の位置情報303をパネル位置調整機構302にパネル位置調情報304を出力する。入力された眼球の位置情報303をもとに、パネル位置調整機構302は、検出部301により検出されたユーザの眼球の動きに合わせて、第一の分割線L1と第二の分割線L2の交点Pがユーザの瞳孔の位置と重なるように、右眼用のHMD用液晶パネル100R及び左眼用のHMD用液晶パネル100Lの位置を調整する。右眼用のHMD用液晶パネル100Rと左眼用のHMD用液晶パネル100Lとは独立して制御されることが好ましい。
【0063】
ユーザの視線を検出する方法は、公知の視線追跡(アイトラッキング)技術を用いることができ、瞳孔中心角膜反射法(PCCR)等を用いることができる。検出部301には、カメラ、赤外線センサー等を用いることができる。
図12では、筐体202の四隅に検出部301を配置した例を示したが、ユーザの視線を検出できれば、検出部301の配置場所や配置数は限定されない。
【実施例0064】
以下に、実施例を挙げて本発明の効果を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
VAモードの1200ppiの液晶パネルについて、表示領域を
図1、
図4等に示したように4つの領域に配向分割した場合について、各領域の中央付近における0~360°方位のコントラストをシミュレーションした。シミュレーションは、LCDマスター(シンテック社製)を用いて、セル厚2μm、液晶分子の初期配向の基板法線方向からの傾き2°、印加電圧0.5~6Vの条件で行った。なお、コントラスト(CR)は、下記式(1)で表される。
CR=白表示(255階調)時の輝度/黒表示(0階調)時の輝度 (1)
【0066】
図13は、実施例1に係るHMD用液晶パネルの各領域におけるコントラスト視野角を示したシミュレーション図である。
図13中の各領域に示した曲線は、コントラストが同じであえる点を繋いだ等コントラスト曲線であり、外側からコントラスト100、200、300の等コントラスト曲線である。コントラストの値が高い方位は、該方位における視認性が良好であるといえる。
図13に示したように、4つの領域はいずれも、交点Pに向かって視野角特性がよく、コントラストが高くなることが分かった。