(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100162
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】チタン合金板、チタン合金部品の製造方法及びチタン合金板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 14/00 20060101AFI20240719BHJP
C22F 1/18 20060101ALI20240719BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C22C14/00 Z
C22F1/18 H
C22F1/00 604
C22F1/00 623
C22F1/00 626
C22F1/00 630G
C22F1/00 630K
C22F1/00 640B
C22F1/00 650A
C22F1/00 650D
C22F1/00 651B
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
C22F1/00 691Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003949
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】今野 昂
(72)【発明者】
【氏名】岡本 明夫
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 貴司
(57)【要約】
【課題】本開示は、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、加工時にひずみが加えられた場合でも、高温耐久性に優れるチタン合金部品を形成できるチタン合金板を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の一態様に係るチタン合金板は、元素としてAl:0.4質量%以上0.6質量%以下、Si:0.3質量%以上0.6質量%以下を含み、Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、残部がTi及び不可避的不純物であり、板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素として
Al:0.4質量%以上0.6質量%以下、
Si:0.3質量%以上0.6質量%以下
を含み、
Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、
残部がTi及び不可避的不純物であり、
板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下であるチタン合金板。
【請求項2】
下記式1で表されるMo当量[Mo]eqが0.12以上である請求項1に記載のチタン合金板。
[Mo]eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.6+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ・・・1
但し、上記式1における[X]は、チタン合金板における元素Xの含有量[質量%]を意味する。
【請求項3】
Nb:0.1質量%以上0.5質量%以下を含む請求項1に記載のチタン合金板。
【請求項4】
下記式2を満たす請求項1に記載のチタン合金板。
9≦3.4[Al]+13.4[Si]+13.9[Mo]eq≦14・・・2
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチタン合金板を用い、
3%以上8%以下のひずみを加える加工工程を備えるチタン合金部品の製造方法。
【請求項6】
上記チタン合金部品が排気管である請求項5に記載のチタン合金部品の製造方法。
【請求項7】
元素として
Al:0.4質量%以上0.6質量%以下、
Si:0.3質量%以上0.6質量%以下
を含み、
Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、
残部がTi及び不可避的不純物である板材を用い、
上記板材を熱間圧延する熱間圧延工程と、
上記熱間圧延工程によって得られた熱延板を冷間圧延する冷間圧延工程と
を備え、
下記(a)及び(b)の少なくともいずれかの要件を満たすチタン合金板の製造方法。
(a)上記熱間圧延工程が、0.6以上0.9以下の圧延率で圧延する工程を含む。
(b)上記冷間圧延工程が、0.5以上0.9以下の圧延率で圧延する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チタン合金板、チタン合金部品の製造方法及びチタン合金板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気管等には、軽量でかつ意匠性を高められる等の観点から、チタン材又はチタン合金材が用いられている。排気管等の部品は、板状のチタン材又はチタン合金材に曲げ加工やプレス加工を施すことで形成される。そのため、チタン材又はチタン合金材には、圧延によって形成でき、かつ加工のための十分な延性を備えていることが必要とされる。
【0003】
この部品は、内燃機関の振動や、二輪車、四輪車等の車両の走行に基づく振動に耐えられるように設計される。また、この部品は、内燃機関の排気によって高温にさらされるため、耐酸化性が高いことが求められる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チタン材又はチタン合金材を用いた部品では、加工時にひずみが加わった部分で粒成長が促進しやすくなる。その結果、疲労強度が低下し、高温耐久性が低下しやすくなる。
【0006】
特許文献1には、Siを特定量含むとともに、Alを積極的に規制することで、チタン合金の耐高温酸化性を向上できることが記載されている。しかしながら、特許文献1では、加工時に加えられるひずみと高温耐久性との関係については検討されていない。
【0007】
本開示は、このような事情に基づいてなされたもので、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、加工時にひずみが加えられた場合でも、高温耐久性に優れるチタン合金部品を形成できるチタン合金板を提供することを目的とする。すなわち、本開示は、高温強度と高温耐久性との両立を図ることが可能なチタン合金部品を形成できるチタン合金板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るチタン合金板は、元素としてAl:0.4質量%以上0.6質量%以下、Si:0.3質量%以上0.6質量%以下を含み、Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、残部がTi及び不可避的不純物であり、板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係るチタン合金板は、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、加工時にひずみが加えられた場合でも、高温耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るチタン合金板の製造方法を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るチタン合金部品の製造方法を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、No.1のチタン合金板における破断部を含む断面組織を示す光学顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、No.5のチタン合金板における破断部を含む断面組織を示す光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
(1)本開示の一態様に係るチタン合金板は、元素としてAl:0.4質量%以上0.6質量%以下、Si:0.3質量%以上0.6質量%以下を含み、Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、残部がTi及び不可避的不純物であり、板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下である。
【0013】
当該チタン合金板は、Al及びSiを上記範囲内で含んでいるとともに、Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、かつ板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下であるので、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、加工時にひずみが加えられた場合でも、高温耐久性に優れる。
【0014】
上記(1)において、下記式1で表されるMo当量[Mo]eqが0.12以上であるとよい。
[Mo]eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.6+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ・・・1
但し、上記式1における[X]は、チタン合金板における元素Xの含有量[質量%]を意味する。
【0015】
このように、当該チタン合金板は、上記式1を満たすことで、5%程度のひずみが加えられた場合において高温における金属組織の急激な粗大化を容易に抑制できる。その結果、高温耐久性をより確実に高めることができる。
【0016】
(3)上記(1)又は(2)において、Nb:0.1質量%以上0.5質量%以下を含むとよい。このように、Nbを上記範囲内で含むことによって、耐酸化性及びひずみが加えられた場合の高温耐久性をともに向上することができる。
【0017】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、下記式2をさらに満たすとよい。
9≦3.4[Al]+13.4[Si]+13.9[Mo]eq≦14・・・2
【0018】
このように、当該チタン合金板は、上記式2をさらに満たすことによって、加工のための延性、高温強度及びひずみが加えられた場合の高温耐久性を全体としてより向上することができる。
【0019】
(5)本開示の別の一態様に係るチタン合金部品の製造方法は、上記(1)から(4)のいずれかのチタン合金板を用い、3%以上8%以下のひずみを加える加工工程を備える。なお、「ひずみ」とは、公称ひずみεを意味する。また、「3%以上8%以下のひずみを加える」とは、ε=ΔL/L0(ΔL:長さの変化分、L0:変化前の長さ)とした場合に、3≦ε×100≦8となる部分が存在していることを意味する。
【0020】
当該チタン合金部品の製造方法は、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、高温耐久性に優れるチタン合金部品を製造できる。
【0021】
(6)上記(5)において、上記チタン合金部品が排気管であるとよい。当該チタン合金部品の製造方法は、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、高温耐久性に優れる排気管の製造方法として適している。
【0022】
(7)本開示のさらに別の一態様に係るチタン合金板の製造方法は、元素としてAl:0.4質量%以上0.6質量%以下、Si:0.3質量%以上0.6質量%以下を含み、Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、残部がTi及び不可避的不純物である板材を用い、上記板材を熱間圧延する熱間圧延工程と、上記熱間圧延工程によって得られた熱延板を冷間圧延する冷間圧延工程とを備え、下記(a)及び(b)の少なくともいずれかの要件を満たす。
(a)上記熱間圧延工程が、0.6以上0.9以下の圧延率で圧延する工程を含む。
(b)上記冷間圧延工程が、0.5以上0.9以下の圧延率で圧延する工程を含む。
【0023】
当該チタン合金板の製造方法は、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、加工時にひずみが加えられた場合でも、高温耐久性に優れるチタン合金板を製造することができる。
【0024】
なお、本開示において、「圧延率」とは、圧延前の板厚をh1、圧延後の板厚をh2とした場合、(h1-h2)/h1で算出される値を意味する。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、適宜図面を参照しつつ、本開示の実施の形態を詳説する。なお、本明細書に記載されている数値については、記載された上限値と下限値との一方のみを採用すること、或いは上限値と下限値を任意に組み合わせることが可能である。
【0026】
<チタン合金板>
当該チタン合金板は、元素として、Al:0.4質量%以上0.6質量%以下、Si:0.3質量%以上0.6質量%以下を含み、Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、残部がTi及び不可避的不純物である。また、当該チタン合金板は、板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下である。
【0027】
当該チタン合金板は板状である。当該チタン合金板は、例えば内燃機関の排気管等のチタン合金部品に形成される。上記排気管としては、例えば自動二輪車や自動四輪車等の車両用のものが挙げられ、エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、触媒マフラー、プリマフラー、サイレンサー(メインマフラー)等のマフラー部材を含む。
【0028】
排気管等のチタン合金部品に形成されるチタン合金板においては、加工のための延性に優れるとともに、高温環境下における強度と高温耐久性とを両立できることが望まれる。加工による変形量は部分によって異なるが、10%を超えるようなひずみが加えられた部分では、高温において再結晶が生じるため、金属組織の急激な粗大化は生じない。一方で、5%程度のひずみが加えられた部分では、高温において金属組織が急激に粗大化し、耐久性が低下しやすい。そのため、当該チタン合金板において十分な高温耐久性を得るためには、5%程度のひずみが加えられた場合でも金属組織の急激な粗大化を抑制できることが望ましい。
【0029】
このような観点において、当該チタン合金板は、Al及びSiを上記範囲内で含んでいるとともに、Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、かつ板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下であるので、高温環境下における強度を十分に保つことができるとともに、加工のための延性に優れており、かつ加工時にひずみが加えられた場合でも、高温耐久性に優れる。
【0030】
(Al)
Al(アルミニウム)は、当該チタン合金板において、主にα相に固溶し、固溶強化によって高温強度を向上させる。当該チタン合金板におけるAlの含有量の下限としては、上述のように0.4質量%であり、0.45質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。一方、当該チタン合金板におけるAlの含有量の上限としては、上述のように0.6質量%であり、0.55質量%が好ましい。上記含有量が上記下限に満たないと、高温強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記含有量が上記上限を超えると、当該チタン合金板の延性が不十分となり、内燃機関の排気管等への加工が困難になるおそれがある。
【0031】
(Si)
Si(ケイ素)は、当該チタン合金板のクリープ特性及び耐酸化性を向上させる。当該チタン合金板におけるSiの含有量の下限としては、上述のように0.3質量%であり、0.4質量%が好ましい。一方、当該チタン合金板におけるSiの含有量の上限としては、上述のように0.6質量%であり、0.5質量%が好ましい。上記含有量が上記下限に満たないと、耐酸化性の向上効果が十分に得られないおそれがある。逆に、上記含有量が
上記上限を超えると、当該チタン合金板の延性が不十分となり、内燃機関の排気管等への加工が困難になるおそれがある。
【0032】
(Mo当量)
上述のように、当該チタン合金板は、プレス加工や曲げ加工などの加工を経てチタン合金部品に形成されるが、十分な高温耐久性を得るためには、5%程度のひずみが加えられた場合でも金属組織の急激な粗大化を抑制できることが望まれる。この点、当該チタン合金板は、下記式1で表されるMo当量[Mo]eqを制御することで、5%程度のひずみが加えられた場合でも、高温における金属組織の急激な粗大化を容易に抑制しやすい。
[Mo]eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.6+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ・・・1
但し、上記式1における[X]は、チタン合金板における元素Xの含有量[質量%]を意味する。
【0033】
上記Mo当量は、β相の安定性を示す指標として用いられる。換言すると、当該チタン合金板において、Mo当量は、β相安定化元素の含有量としての意味合いを有する。本発明者らが鋭意検討したところ、Mo当量を制御することで、5%程度のひずみが加えられた場合でも、高温における金属組織の急激な粗大化を抑制できるとの知見を得た。
【0034】
上記Mo当量の下限としては、0.12が好ましく、0.35がより好ましく、0.4がさらに好ましい。一方、上記Mo当量の上限としては、0.8が好ましく、0.6がより好ましい。上記Mo当量が上記下限に満たないと、加工によるひずみ(特に5%程度のひずみ)が加えられた場合に粒成長を抑制することができず、金属組織が粗大化することで、高温耐久性が不十分となるおそれがある。逆に、上記Mo当量が上記上限を超えると、当該チタン合金板の延性が不十分となるおそれがある。
【0035】
また、当該チタン合金板は、下記式2を満たすことが好ましい。
9≦3.4[Al]+13.4[Si]+13.9[Mo]eq≦14・・・2
【0036】
当該チタン合金板は、上記式2を満たすことで、加工のための延性、高温強度及びひずみが加えられた場合の高温耐久性を全体として向上することができる。より詳しく説明すると、当該チタン合金板は、上記式2のうち、[Al]及び[Si]を大きくすることで高温強度を大きくすることができる。また、当該チタン合金板は、上記式2のうち、[Mo]eqを大きくすることで高温強度を維持しやすくなる。そのため、当該チタン合金板は、上記式2において、9≦3.4[Al]+13.4[Si]+13.9[Mo]eqとすることで、高温強度を大きくするとともに、この強度を十分に維持することができ、これによって高温における疲労特性を向上することができる。上記式2の下限値としては、10がより好ましい。さらに、当該チタン合金板は、上記式2において、3.4[Al]+13.4[Si]+13.9[Mo]eq≦14とすることで、延性が不十分となることを抑制することができる。
【0037】
当該チタン合金板にあっては、上記Mo当量が所望の範囲内である場合、β相を安定化するための元素(β相安定化元素)の種類は、特に限定されない。すなわち、β相安定化元素としては、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、W(タングステン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)、Fe(鉄)のいずれを含んでいてもよい。但し、当該チタン合金板は、β相安定化元素として、Nbを含むことが好ましい。Nbは、比較的微量の添加で当該チタン合金板の耐酸化性を向上することができる。また、Nbは、比較的含有量を大きくしても、当該チタン合金板の延性の低下を抑制することができる。
【0038】
上記β相安定化元素として、Nbを含む場合、Nbの含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。一方、Nbの含有量の上限としては、0.5質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましい。上記含有量が上記下限に満たないと、当該チタン合金板の耐酸化性を効果的に向上することが容易でなくなるおそれがある。逆に、上記含有量が上記上限を超えると、当該チタン合金板の延性が不十分となるおそれがある。
【0039】
(不可避的不純物)
当該チタン合金板において、その他の元素は、Ti及び不可避的不純物である。当該チタン合金板には、鉱石及び製造方法に起因して、一般に不可避的不純物が含まれる。
【0040】
当該チタン合金板に含まれ得る不可避的不純物としては、例えばC(炭素)、Fe、Ni、Cr、Pd(パラジウム)、N(窒素)、O(酸素)等が挙げられる。上記不可避的不純物としてCを含む場合、Cの含有量としては、例えば0.05質量%以下とすることができる。上記不可避的不純物としてFeを含む場合、Feの含有量としては、例えば0.1質量%以下とすることができる。上記不可避的不純物としてNi、Cr又はPdを含む場合、これらの元素の含有量としては、例えば各元素について0.01質量%以下とすることができる。上記不可避的不純物としてNを含む場合、Nの含有量としては、例えば0.01質量%以下とすることができる。上記不可避的不純物としてOを含む場合、Oの含有量としては、例えば0.2質量%以下とすることができる。
【0041】
上記不可避的不純物のうち、Fe、Ni及びCrは、上述のβ相安定化元素に含まれる。そのため、当該チタン合金板は、上記不可避的不純物として、Fe、Ni及びCrの1種又は2種以上を含むことで、Mo当量を大きくすることが可能である。なお、当該チタン合金板は、Mo当量を大きくする観点から、Fe、Ni及びCrの1種又は2種以上を積極的に添加することも可能である。
【0042】
上記不可避的不純物のうち、Fe及びOは、強度延性バランスの調整に利用できる。また、Oは、常温で延性を確保できる限り、本開示の効果に影響を及ぼさない。当該チタン合金板は、Fe、O等の濃度の高い原料を使用して強度を高めることが可能であり、これとは反対に純度の高い原料を使用して、より厳しい成形の要求に対応できる高成形性を得ることも可能である。
【0043】
(平均結晶粒径)
当該チタン合金板は、板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下である。つまり、当該チタン合金板は、板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下範囲内における任意の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、この引張ひずみを付与した部分に対して、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下である。上記平均結晶粒径の上限としては、疲労強度を高め高温耐久性を向上する観点から、25μmが好ましく、20μmがより好ましく、15μmがさらに好ましい。一方、上記平均結晶粒径の下限としては、特に限定されるものではないが、部品加工時の成形性確保の観点から、3μmであってもよく、6μmであってもよい。なお、「チタン合金の平均結晶粒径」とは、板厚1/2の位置が中心(測定位置)となるように破断部分近傍(破断部分から500μm以下の部分)で、かつ板厚の20%を含む視野で、切断法を用いて測定される値を意味する。
【0044】
上述のチタン合金の平均結晶粒径は、例えば当該チタン合金板の製造過程における圧延条件を制御し、元の素材の平均結晶粒径を小さくすることで調整できる。例えば当該チタン合金板は、熱間圧延工程及び冷間圧延工程を経て板状に形成される。上記チタン合金の平均結晶粒径は、上記熱間圧延工程及び上記冷間圧延工程の一方又は両方の圧延率を制御することで調整できる。
【0045】
上記熱間圧延工程は、0.6以上0.9以下の圧延率で圧延する工程を含むことが好ましい。上記熱間圧延工程は、例えば粗圧延工程及び仕上げ圧延工程を含んでいる。上記粗圧延工程及び上記仕上げ圧延工程は、例えば分塊工程の後に行われる。上記熱間圧延工程では、上記粗圧延工程及び上記仕上げ圧延工程のうちのいずれの工程における圧延率を上記範囲内に制御してもよい。ただ、上記熱間圧延工程では、上記仕上げ圧延工程における圧延率を上記範囲内に制御することが好ましい。
【0046】
上記圧延率の下限としては、組織をより均一化させて粒成長の抑制効果を高める観点から、上述のように0.6が好ましく、0.65がより好ましく、0.7がさらに好ましい。また、上記圧延率の上限としては、表層の酸素影響層除去に伴う歩留まり低下を防ぐ観点から、上述のように0.9とすることができる。すなわち、当該チタン合金板は、上記熱間圧延工程において、0.6以上0.9以下の圧延率で圧延されたものであってもよく、0.65以上0.9以下の圧延率で圧延されたものであってもよく、0.7以上0.9以下の圧延率で圧延されたものであってもよい。
【0047】
上記冷間圧延工程は、0.5以上0.9以下の圧延率で圧延する工程を含むことが好ましい。上記圧延率の下限としては、組織をより均一化させて粒成長の抑制効果を高める観点から、上述のように0.5が好ましく、0.6がより好ましく、0.65がさらに好ましい。また、上記圧延率の上限としては、端部の割れ除去に伴う歩留まり低下を防ぐ観点から、上述のように0.9とすることができる。すなわち、当該チタン合金板は、上記冷間圧延工程において、0.5以上0.9以下の圧延率で圧延されたものであってもよく、0.6以上0.9以下の圧延率で圧延されたものであてもよく、0.65以上0.9以下の圧延率で圧延されたものであってもよい。
【0048】
<チタン合金板の製造方法>
当該チタン合金板の製造方法は、元素として、Al:0.4質量%以上0.6質量%以下、Si:0.3質量%以上0.6質量%以下を含み、Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、残部がTi及び不可避的不純物である板材を用いる。
図1に示すように、当該チタン合金板の製造方法は、上記板材を熱間圧延する熱間圧延工程S2と、熱間圧延工程S2によって得られた熱延板を冷間圧延する冷間圧延工程S3とを備える。また、当該チタン合金板の製造方法は、鋳塊が凝固した際の粗大な金属組織を持つ素材を分塊することで上記板材を形成する分塊工程S1と、冷間圧延工程S3によって得られた冷延板を熱処理する熱処理工程S4とを備える。
【0049】
当該チタン合金板の製造方法は、下記(a)及び(b)の少なくともいずれかの要件を満たす。また、当該チタン合金板の製造方法は、下記(a)及び(b)の両方の要件を満たすことが好ましい。
(a)熱間圧延工程S2が、0.6以上0.9以下の圧延率で圧延する工程を含む。
(b)冷間圧延工程S3が、0.5以上0.9以下の圧延率で圧延する工程を含む。
【0050】
当該チタン合金板の製造方法は、上記(a)及び(b)の少なくともいずれかの要件を満たすことで、得られるチタン合金板におけるチタン合金の平均結晶粒径を制御することができる。より詳しくは、当該チタン合金板の製造方法によると、板厚と垂直な方向に5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与し、800℃で30分間保持した後に、応力振幅80MPa、応力比-1、周波数25Hzで板厚方向への両振り負荷を加え、初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径が30μm以下であるチタン合金板を製造することができる。そのため、当該チタン合金板の製造方法によると、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、加工時にひずみが加えられた場合でも、高温耐久性に優れるチタン合金板を製造することができる。
【0051】
(分塊工程)
分塊工程S1では、鋳塊が凝固した際の粗大な金属組織を持つ素材に対して分塊鍛造または分塊圧延もしくはその両方を施すことで、熱間圧延工程S2に供する板材を形成する。分塊工程S1では、熱間圧延工程S2よりも高い温度(例えば900℃以上1100℃以下の温度)で上記素材を加工する。
【0052】
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程S2は、例えば粗圧延工程及び仕上げ圧延工程を含む。上記仕上げ圧延工程は、熱間圧延工程S2における最後の圧延手順として行われる。熱間圧延工程S2では、上記粗圧延工程及び上記仕上げ圧延工程のうちのいずれの工程における圧延率を上記(a)の要件を満たすように制御してもよい。ただ、熱間圧延工程S2では、上記仕上げ圧延工程における圧延率を上記(a)の要件を満たすように制御することが好ましい。上記(a)の要件について、より好ましい圧延率としては、当該チタン合金板について説明した範囲と同じである。
【0053】
(冷間圧延工程)
冷間圧延工程S3は、熱間圧延工程S2によって得られた熱延板に対して、焼鈍、空冷、平面研削等を行った後に実施されてもよい。上記(b)の要件について、より好ましい圧延率としては、当該チタン合金板について説明した範囲と同じである。
【0054】
(熱処理工程)
熱処理工程S4では、例えば冷間圧延工程S3によって得られた冷延板に対して、仕上げ焼鈍を施す。熱処理工程S4における熱処理温度としては、例えば600℃以上700℃以下とすることができる。また、熱処理工程S4における熱処理時間としては、例えば10時間以上40時間以下とすることができる。
【0055】
<チタン合金部品の製造方法>
図2を参照して、本開示の一実施形態に係るチタン合金部品の製造方法について説明する。
【0056】
当該チタン合金部品の製造方法は、上述の当該チタン合金板を用いる。当該チタン合金部品の製造方法は、3%以上8%以下のひずみを加える加工工程S11を備える。
【0057】
当該チタン合金部品の製造方法は、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、高温耐久性に優れるチタン合金部品を製造できる。
【0058】
当該チタン合金部品の製造方法は、上述の当該チタン合金板を用いて例えば内燃機関の排気管を製造する。すなわち、当該チタン合金部品の製造方法で製造されるチタン合金部品としては、排気管が好ましい。上記排気管としては、例えば自動二輪車や自動四輪車等の車両用のものが挙げられ、エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、触媒マフラー、プリマフラー、サイレンサー(メインマフラー)等のマフラー部材を含む。当該チタン合金部品の製造方法は、高温環境下における強度を十分に保ちつつ、高温耐久性に優れる排気管の製造方法として適している。
【0059】
(加工工程)
加工工程S11では、当該チタン合金板に3%以上8%以下のひずみを加えて所望の形状に加工する。換言すると、加工工程S11では、当該チタン合金板の少なくとも一部に3%以上8%以下のひずみが加わるように、当該チタン合金板を所望の形状に加工する。例えば加工工程S11で当該チタン合金板を曲げ加工する場合、上記範囲内のひずみが加えられる部分は、板厚方向(径方向)における一部の領域であってもよい。上述のように、当該チタン合金板は、5%程度のひずみが加えられた場合でも、高温における金属組織の急激な粗大化を抑制することができる。そのため、当該チタン合金部品の製造方法は、加工工程S11を備えることで、所望の形状を有すると共に、高温強度に優れるとともに、耐酸化性及び高温耐久性に優れるチタン合金部品を製造することができる。
【0060】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0061】
例えば当該チタン合金板は、排気管以外のチタン合金部品に形成されてもよい。
【実施例0062】
以下、実施例に基づき本開示を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本開示が限定的に解釈されるものではない。
【0063】
<試験例1>
(サンプルの作製)
チタン合金板としては、表1に示す組成のものを用いた。なお、表1において、各元素の含有量は、サンプル作製時の配合割合を示している。また、表1中の「-」は、配合していないことを意味している。
【0064】
試験例1では、試験片として、以下の製造工程を経て形成されたものを用いた。
表1に示す組成を有する鋳塊を1000℃で30分加熱した後、板厚20mmまで分塊鍛造し、表面から1mm切削し酸化層を除去した。次いで850℃で30分間加熱し、板厚18mmから4mmまで圧延を行った。得られた熱延板を750℃で5分間焼鈍し、空冷した後、表面の酸化スケール除去のための平面研削を行い、さらに板厚3.5mmから0.9mmまで冷間圧延を行った。その後、最終仕上げとして、660℃×28時間(均熱時間)の真空焼鈍を行い、試験片を得た。
【0065】
【0066】
(高温耐久性)
No.1からNo.5のチタン合金板について、板厚と垂直な方向(圧延方向)に圧延によって5.5%以上6.5%以下の引張ひずみを付与したうえで、東京衡機試験機社製のシェンク式平面曲げ疲労試験機「PTF-160」を用いて、大気中にて曲げ疲労試験を行った。この曲げ疲労試験は、800℃で試験片を30分間保持した後に開始した。試験条件は、応力振幅80MPa、応力比-1の板厚方向への両振り負荷とし、周波数は25Hzとし、初期負荷応力が50%まで低下した時点を破断と判定した。曲げ疲労試験開始前において、No.1からNo.5のチタン合金の平均結晶粒径はいずれも10μm程度であった。破断時の繰り返し数を表2に示す。また、No.1の破断時における破断部を含む断面組織を
図3に示し、No.5の破断時における破断部を含む断面組織を
図4に示す。
【0067】
(粒成長)
No.1からNo.5について、上記曲げ疲労試験において初期負荷応力が50%に低下した時点での板厚1/2の位置のチタン合金の平均結晶粒径を測定した。チタン合金の平均結晶粒径は、板厚1/2の位置が中心(測定位置)となるように破断部分近傍(破断部分から500μm以下の部分)で、かつ板厚の20%を含む視野で、切断法を用いて測定した。この測定結果を表2に示す。
【0068】
【0069】
[評価結果]
表2に示すように、No.1からNo.3は、チタン合金の平均結晶粒径が30μm以下に制御されることで、繰り返し数を大きくすることができており、高温耐久性に優れている。これに対し、No.5は、チタン合金の平均結晶粒径が30μm超と大きいため、金属組織の粗大化に起因して繰り返し数が小さくなっている。
図4に示すように、No.5では、曲げ疲労試験によって生じた亀裂は、結晶粒界に沿っており、金属組織の粗大化が、疲労寿命の低下につながったことが分かる。また、No.4は、チタン合金板におけるAlの含有量が不足しているため、高温強度が不十分となり、繰り返し数が小さくなったと推測される。
【0070】
<試験例2>
表1、表2及び
図3を基に本発明者らがさらに調査したところ、No.1のチタン合金板において金属組織が細かく保てている根拠として、チタンのβ相のピン留め効果があることが分かった。この知見を基に、No.1からNo.5について、以下の試験を行い、チタン合金板の品質について評価した。また、No.1からNo.5について、3.4[Al]+13.4[Si]+13.9[Mo]eqの値を算出した。この結果を表3に示す。
【0071】
(サンプルの作製)
表1に示す組成を有しており、かつ板厚が0.9mmのチタン合金板を作製した。
【0072】
(伸び)
No.1からNo.5のチタン合金板について、引張荷重軸が圧延方向と平行となるようにASTM E8/E8Mに準拠して、サブサイズ引張試験片を切り出し、室温で、ひずみ速度を0.2%耐力取得までは0.5%/min、0.2%耐力取得から破断までは12.8mm/minとして、引張試験を行い、伸び[%]を求めた。この結果を表3に示す。
【0073】
(酸化重量増加量)
No.1からNo.5のチタン合金板について、それぞれ長さ50mm、幅20mmの試験片を切り出し、曲率半径6mmで長さ方向と曲げ線が垂直になるように90°曲げを行ったうえ、大気中で、100時間、800℃±14℃以内の温度に保持し、その後空冷した。加熱前後で試験片の重量を測定し、表面積当たりの酸化重量増加量[mg/cm2]を算出した。この結果を表3に示す。
【0074】
(高温強度)
No.1からNo.5のチタン合金板について、G.L.(Gauge Length:応力のかかる有効距離)23mmの試験片を切り出し、800℃の大気中にて、引張速度を0.2%耐力取得までは0.13mm/min、0.2%耐力取得から破断までは1.25mm/minとして、引張試験を行い、高温強度(800℃における引張強度)[MPa]を求めた。この結果を表3に示す。
【0075】
【0076】
[評価結果]
表3に示しているように、Alの含有量が0.4質量%以上0.6質量%以下、Siの含有量が0.3質量%以上0.6質量%以下で、Mo、Ta、Nb、W、V、Mn、Coからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでおり、粒成長が30μm以下であるNo.1からNo.3は、伸び、酸化重量増加量、及び高温強度のいずれについても好ましい値となっている。
以上説明したように、本開示の一態様に係るチタン合金板は、高温強度に優れているとともに、ひずみを加えつつも、高温耐久性に優れるチタン合金部品を形成するのに適している。