(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100174
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】無線局および無線システム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H04B1/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003975
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘和
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬三
(72)【発明者】
【氏名】難波 正憲
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060CC04
5K060HH06
5K060HH16
5K060HH22
5K060HH31
5K060HH32
5K060JJ21
5K060JJ23
5K060LL01
(57)【要約】
【課題】付加装置が接続される無線局に関して、簡易な構成で送信信号の電力を維持可能な無線局および無線システムを提供する。
【解決手段】無線局10は、調節値M0に応じて変調信号の振幅を調節する第1調節器13と、該変調信号を増幅して生成される第1送信信号S1の電力と目標値との差を低減させる第1調節値M1を求める第1ALC回路17と、を備える。付加装置20は、第1送信信号S1に基づく第2送信信号S2の電力と目標値との差を低減させる第2調節値M2を求める。ALC切替回路18は、第1送信信号S1が第1アンテナ41から送信されるときに、第1調節値M1を調節値M0として第1調節器13に供給し、第2送信信号S2が第2アンテナ42から送信されるときに、付加装置20から取得した第2調節値M2を調節値M0として第1調節器13に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナから信号を送信し、または、後段に接続される少なくとも1つの付加装置を介して第2アンテナから信号を送信する無線局であって、
送信用データを変調することで生成された変調信号の振幅を、供給される調節値に応じて調節する第1調節器と、
前記第1調節器で振幅が調節された前記変調信号を増幅して第1送信信号を生成する第1増幅器と、
前記第1送信信号の電力を検出する第1検出器と、
前記第1検出器で検出された前記第1送信信号の電力と前記第1送信信号の電力の目標値との差を低減させる第1調節値を求める第1ALC回路と、
前記第1送信信号に基づいて第2送信信号を生成し、前記第2送信信号の電力と前記第2送信信号の電力の目標値との差を低減させる第2調節値を求める前記付加装置から、前記第2調節値を取得し、前記第1調節値または前記第2調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給するALC切替回路と、を備え、
前記ALC切替回路は、前記第1送信信号が前記第1アンテナから送信されるときに、前記第1調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給し、前記第2送信信号が前記第2アンテナから送信されるときに、前記第2調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給する、
無線局。
【請求項2】
前記無線局の目標ゲインに応じて定められた第1減衰量に基づいて前記変調信号を減衰させる第1減衰器をさらに備え、
前記第1調節器は、前記第1減衰器で減衰された前記変調信号の振幅を前記調節値に応じて調節する、
請求項1に記載の無線局。
【請求項3】
前記第1調節器は、前記第1減衰器で減衰された前記変調信号を前記調節値に応じて減衰させる可変減衰器を有し、
前記第1減衰器の前記第1減衰量は、前記可変減衰器での減衰量が最小となる前記調節値が前記可変減衰器に供給されている状態で、前記無線局の目標ゲインに応じて定められる、
請求項2に記載の無線局。
【請求項4】
前記第1増幅器の出力端子を前記第1アンテナおよび前記付加装置のいずれかに接続する第1経路切替回路をさらに備え、
前記ALC切替回路は、前記第1経路切替回路によって前記第1増幅器の出力端子が前記第1アンテナに接続されているときに、前記第1調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給し、前記第1経路切替回路によって前記第1増幅器の出力端子が前記付加装置に接続されているときに、前記第2調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線局。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線局と、
前記無線局の後段に接続され、前記第1送信信号に基づいて前記第2送信信号を生成する少なくとも1つの付加装置と、を備え、
前記付加装置は、
前記第1送信信号の振幅を調節する第2調節器と、
前記第2調節器で振幅が調節された前記第1送信信号に信号処理を施して前記第2送信信号を生成する信号生成回路と、
前記第2送信信号の電力を検出する第2検出器と、
前記第2検出器で検出された前記第2送信信号の電力と前記第2送信信号の電力の目標値との差を低減させる前記第2調節値を求め、前記第2調節値を前記無線局の前記ALC切替回路に出力する第2ALC回路と、を有する、
無線システム。
【請求項6】
前記付加装置は、前記無線局の出力端子を前記第1アンテナおよび前記第2調節器のいずれかに接続する第2経路切替回路をさらに備え、
前記ALC切替回路は、前記第2経路切替回路によって前記無線局の出力端子が前記第1アンテナに接続されているときに、前記第1調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給し、前記第2経路切替回路によって前記無線局の出力端子が前記第2調節器に接続されているときに、前記第2調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給する、
請求項5に記載の無線システム。
【請求項7】
前記第2調節器は、前記付加装置の目標ゲインに応じて定められた第2減衰量に基づいて前記第1送信信号を減衰させる第2減衰器を有し、
前記信号生成回路は、前記第2減衰器で減衰された前記第1送信信号に信号処理を施して前記第2送信信号を生成する、
請求項5に記載の無線システム。
【請求項8】
前記信号生成回路は、
前記第2減衰器で減衰された前記第1送信信号の周波数変換を行うミキサと、
前記ミキサによって周波数変換された前記第1送信信号を増幅して前記第2送信信号を生成する第2増幅器と、をさらに有する、
請求項7に記載の無線システム。
【請求項9】
前記無線局が備える前記第1調節器は、前記第1減衰器で減衰された前記変調信号を前記調節値に応じて減衰させる可変減衰器を有し、
前記第2減衰器の前記第2減衰量は、前記可変減衰器での減衰量が最小となる前記調節値が前記可変減衰器に供給されている状態で、前記付加装置の目標ゲインに応じて定められる、
請求項7に記載の無線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線局および無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線局には、送信信号の電力を一定に保つために、ALC(Automatic Level Control:自動レベル制御)回路を備えるものがある。この種の無線局の一例が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される無線局において、ALC回路が出力する制御電圧によって前段増幅器のゲインが調節され、送信信号の電力が一定に保たれる。特許文献1に開示される無線局の後段に、トランスバーター、ブースター等の付加装置が設けられると、付加装置の送信信号の電力を一定に保つために、無線局側のALC回路は、無線局の送信信号の電力に加えて、付加装置側のALC回路から取得した制御電圧を考慮して、前段増幅器に対する制御電圧を決定し、前段増幅器のゲインを調節する必要がある。このため、無線局側のALC回路は、付加装置側のALC回路の出力を無線局側の制御電圧範囲に変換する回路、付加装置側のALC回路の出力に基づいて調節値を決定する回路等を必要とするため、構成が複雑である。
【0005】
上述のように、無線局側のALC回路が付加装置側のALC回路から取得した制御電圧に基づいて動作する場合は、付加装置の送信信号の電力を一定に保つために、無線局および付加装置の組合せごとに、無線局および付加装置のそれぞれの増幅器のゲイン、減衰器の減衰量等が定められる。このため、無線局または付加装置を交換する際に、無線局および付加装置のそれぞれについて増幅器のゲイン、減衰器の減衰量等を調節する煩雑な作業が必要となる。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、付加装置が接続される無線局に関して、簡易な構成で送信信号の電力を維持可能な無線局および無線システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る無線局は、
第1アンテナから信号を送信し、または、後段に接続される少なくとも1つの付加装置を介して第2アンテナから信号を送信する無線局であって、
送信用データを変調することで生成された変調信号の振幅を、供給される調節値に応じて調節する第1調節器と、
前記第1調節器で振幅が調節された前記変調信号を増幅して第1送信信号を生成する第1増幅器と、
前記第1送信信号の電力を検出する第1検出器と、
前記第1検出器で検出された前記第1送信信号の電力と前記第1送信信号の電力の目標値との差を低減させる第1調節値を求める第1ALC回路と、
前記第1送信信号に基づいて第2送信信号を生成し、前記第2送信信号の電力と前記第2送信信号の電力の目標値との差を低減させる第2調節値を求める前記付加装置から、前記第2調節値を取得し、前記第1調節値または前記第2調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給するALC切替回路と、を備え、
前記ALC切替回路は、前記第1送信信号が前記第1アンテナから送信されるときに、前記第1調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給し、前記第2送信信号が前記第2アンテナから送信されるときに、前記第2調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給する。
【0008】
好ましくは、前記無線局の目標ゲインに応じて定められた第1減衰量に基づいて前記変調信号を減衰させる第1減衰器をさらに備え、
前記第1調節器は、前記第1減衰器で減衰された前記変調信号の振幅を前記調節値に応じて調節する。
【0009】
好ましくは、前記第1調節器は、前記第1減衰器で減衰された前記変調信号を前記調節値に応じて減衰させる可変減衰器を有し、
前記第1減衰器の前記第1減衰量は、前記可変減衰器での減衰量が最小となる前記調節値が前記可変減衰器に供給されている状態で、前記無線局の目標ゲインに応じて定められる。
【0010】
好ましくは、前記第1増幅器の出力端子を前記第1アンテナおよび前記付加装置のいずれかに接続する第1経路切替回路をさらに備え、
前記ALC切替回路は、前記第1経路切替回路によって前記第1増幅器の出力端子が前記第1アンテナに接続されているときに、前記第1調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給し、前記第1経路切替回路によって前記第1増幅器の出力端子が前記付加装置に接続されているときに、前記第2調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給する。
【0011】
本発明の第2の観点に係る無線システムは、
上述の無線局と
前記無線局の後段に接続され、前記第1送信信号に基づいて前記第2送信信号を生成する少なくとも1つの付加装置と、を備え、
前記付加装置は、
前記第1送信信号の振幅を調節する第2調節器と、
前記第2調節器で振幅が調節された前記第1送信信号に信号処理を施して前記第2送信信号を生成する信号生成回路と、
前記第2送信信号の電力を検出する第2検出器と、
前記第2検出器で検出された前記第2送信信号の電力と前記第2送信信号の電力の目標値との差を低減させる前記第2調節値を求め、前記第2調節値を前記無線局の前記ALC切替回路に出力する第2ALC回路と、を有する。
【0012】
好ましくは、前記付加装置は、前記無線局の出力端子を前記第1アンテナおよび前記第2調節器のいずれかに接続する第2経路切替回路をさらに備え、
前記ALC切替回路は、前記第2経路切替回路によって前記無線局の出力端子が前記第1アンテナに接続されているときに、前記第1調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給し、前記第2経路切替回路によって前記無線局の出力端子が前記第2調節器に接続されているときに、前記第2調節値を前記調節値として前記第1調節器に供給する。
【0013】
好ましくは、前記第2調節器は、前記付加装置の目標ゲインに応じて定められた第2減衰量に基づいて前記第1送信信号を減衰させる第2減衰器を有し、
前記信号生成回路は、前記第2減衰器で減衰された前記第1送信信号に信号処理を施して前記第2送信信号を生成する。
【0014】
好ましくは、前記信号生成回路は、
前記第2減衰器で減衰された前記第1送信信号の周波数変換を行うミキサと、
前記ミキサによって周波数変換された前記第1送信信号を増幅して前記第2送信信号を生成する第2増幅器と、をさらに有する。
【0015】
好ましくは、前記無線局が備える前記第1調節器は、前記第1減衰器で減衰された前記変調信号を前記調節値に応じて減衰させる可変減衰器を有し、
前記第2減衰器の前記第2減衰量は、前記可変減衰器での減衰量が最小となる前記調節値が前記可変減衰器に供給されている状態で、前記付加装置の目標ゲインに応じて定められる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る無線局は、第1送信信号が第1アンテナから送信されるときに第1送信信号の電力と第1送信信号の電力の目標値との差を低減させる第1調節値に応じて変調信号の振幅を調節する。無線局は、第1送信信号に基づいて付加装置で生成された第2送信信号が第2アンテナから送信されるときに第2送信信号の電力と第2送信信号の電力の目標値との差を低減させる第2調節値を付加装置から取得し、取得した第2調節値に応じて変調信号の振幅を調節する。これにより、簡易な構成で送信信号の電力を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る無線局の構成を示すブロック図
【
図2】実施の形態に係る第1ALC回路および第2ALC回路の構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態に係る無線局の第1変形例の構成を示すブロック図
【
図4】実施の形態に係る無線局の第2変形例の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る無線局および無線システムについて図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0019】
図1に示す無線システム1は、無線局10と、無線局10の後段、具体的には、無線局10よりアンテナに近い位置に接続される付加装置20と、第1アンテナ41と、第2アンテナ42と、を備える。無線局10は、第1アンテナ41から信号を送信し、または、付加装置20を介して第2アンテナ42から信号を送信する。詳細には、無線局10は、第1送信信号S1を生成し、第1送信信号S1を第1アンテナ41から他の無線局に送信し、または、第1送信信号S1を付加装置20に送信する。付加装置20は、無線局10で生成された第1送信信号S1に対して信号処理を施すことで第2送信信号S2を生成する。第2送信信号S2は、第2アンテナ42から他の無線局に送信される。他の無線局は、無線局に限られず、中継装置を含むものとする。
【0020】
無線局10は、変調部11と、第1減衰器12と、第1調節器13と、第1増幅器14と、第1経路切替回路15と、第1検出器16と、第1ALC(Automatic Level Control:自動レベル制御)回路17と、ALC切替回路18と、を備える。
【0021】
上述の各部を制御するため、無線局10はコントローラ50を備える。コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)51と、I/O(Input/Output)52と、RAM(Random Access Memory)53と、ROM(Read-Only Memory)54と、を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ50から無線局10の各部への信号線が省略されている。コントローラ50は無線局10の各部にI/O52を介して接続され、各部の処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。CPU51は、ROM54に記憶されている制御プログラムを実行して、無線局10の制御を行う。またI/O52を介して入力されるコマンド、データ等は、処理され、RAM53に一時的に記憶される。CPU51は、RAM53に記憶されたコマンド、データ等を必要に応じて読み出し、無線局10の制御を行う。
【0022】
付加装置20は、第1送信信号S1の振幅を調節する第2調節器としての第2減衰器21と、信号生成回路22と、第2検出器23と、第2ALC回路24と、を備える。
【0023】
上述の各部を制御するため、付加装置20はコントローラ60を備える。コントローラ60は、CPU61と、I/O62と、RAM63と、ROM64と、を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ60から付加装置20の各部への信号線が省略されている。コントローラ60は付加装置20の各部にI/O62を介して接続され、各部の処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。CPU61は、ROM64に記憶されている制御プログラムを実行して、付加装置20の制御を行う。またI/O62を介して入力されるコマンド、データ等は、処理され、RAM63に一時的に記憶される。CPU61は、RAM63に記憶されたコマンド、データ等を必要に応じて読み出し、付加装置20の制御を行う。
【0024】
第1ALC回路17および第2ALC回路24のいずれかの出力を第1調節器13に供給するALC切替回路18と第1増幅器14の出力端子を第1アンテナ41および付加装置20のいずれかに接続する第1経路切替回路15とは、無線局10の図示しない操作部の操作に応じて連動して動作する。
【0025】
例えば、無線局10の操作部において、無線局10が第1アンテナ41から信号を送信する動作モードが選択されると、第1経路切替回路15は、第1増幅器14の出力端子を第1アンテナ41に接続する。第1経路切替回路15によって第1増幅器14の出力端子が第1アンテナ41に接続されているとき、ALC切替回路18は、第1ALC回路17の出力を調節値として第1調節器13に供給する。第1送信信号S1が第1アンテナ41から送信されるときに、第1ALC回路17の出力が第1調節器13に供給されることで、第1ALC回路17によって第1送信信号S1の電力が所望のレベルに維持される。例えば、第1ALC回路17によって第1送信信号S1の電力が第1送信信号S1の電力の最大許容値以下に維持される。
【0026】
一方、無線局10の操作部において、無線局10が付加装置20を介して第2アンテナ42から信号を送信する動作モードが選択されると、第1経路切替回路15は、第1増幅器14の出力端子を付加装置20に接続する。第1経路切替回路15によって第1増幅器14の出力端子が付加装置20に接続されているとき、ALC切替回路18は、第2ALC回路24の出力を調節値として第1調節器13に供給する。第1送信信号S1に基づいて付加装置20で生成された第2送信信号S2が第2アンテナ42から送信されるときに、第2ALC回路24の出力が第1調節器13に供給されることで、第2ALC回路24によって、第1送信信号S1の電力が調節されて第2送信信号S2の電力が所望のレベルに維持される。例えば、第2ALC回路24によって第2送信信号S2の電力が第2送信信号S2の電力の最大許容値以下に維持される。
【0027】
第1増幅器14の出力端子が第1経路切替回路15を介して第1アンテナ41に接続されることで第1送信信号S1が第1アンテナ41から送信されるときの無線局10および付加装置20の各部について以下に説明する。このとき、ALC切替回路18は、第1ALC回路17の出力を第1調節器13に供給する。
【0028】
変調部11は、図示しない入力部から入力される送信用データ、例えば、音声データに対して、A/D(Analog/Digital)変換を行ってデジタル信号を生成し、定められた変調方式に従ってデジタル信号を変調して変調信号を生成する。変調部11は、変調信号を第1減衰器12に出力する。変調方式は、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)、FSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)、PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)等の任意の変調方式である。
【0029】
第1減衰器12は、減衰量が可変である可変減衰器で構成される。詳細には、第1減衰器12は、変調信号を第1減衰量ATT1に基づいて減衰させ、減衰させた変調信号を第1調節器13に出力する。無線局10の個体差によってゲインのばらつきが生じることを抑制するために、無線局10ごとに第1減衰量ATT1が調節される。第1減衰量ATT1は、無線局10ごとに予め定められている無線局10の目標ゲインに応じて定められる。
【0030】
第1調節器13は、ALC切替回路18から供給される調節値M0に応じて、第1減衰器12で減衰された変調信号の振幅を調節する。実施の形態では、第1調節器13は、減衰量が調節値M0に応じて変化する可変減衰器で構成される。詳細には、第1調節器13は、第1減衰器12で減衰された変調信号を、ALC切替回路18から供給される調節値M0に応じて減衰させる。第1調節器13は、減衰された変調信号を第1増幅器14に出力する。
【0031】
第1増幅器14は、第1調節器13で減衰された変調信号を増幅して第1送信信号S1を生成し、第1送信信号S1を第1経路切替回路15および第1検出器16に出力する。第1増幅器14のゲインは、無線局10の目標ゲインに応じて予め定められている。
【0032】
第1経路切替回路15は、通信経路を切り替える回路素子、例えば、スイッチで形成される。第1経路切替回路15が、第1増幅器14の出力端子を第1アンテナ41に接続することで、第1送信信号S1は、第1アンテナ41から送信される。
【0033】
第1検出器16は、第1送信信号S1の電力を検出する。詳細には、第1検出器16は、第1送信信号S1を抽出するCM型方向性結合器と、CM型方向性結合器の出力を検波して第1送信信号S1の信号レベルを示す検波電圧を出力する検波器と、を有する。
【0034】
第1ALC回路17は、第1検出器16で検出された第1送信信号S1の電力と第1送信信号S1の電力の目標値である第1電力目標値W1との差を低減させる第1調節値M1を求める。操作部の操作に応じた第1電力目標値W1が、第1ALC回路17に入力される。具体的には、操作部の操作によって選択された無線局10の周波数帯に応じた第1電力目標値W1が第1ALC回路17に入力される。
【0035】
第1ALC回路17は、
図2に示すように、電圧目標出力器171と、差動増幅器172と、積分回路173と、を有する。電圧目標出力器171は、第1電力目標値W1の供給を受けて、第1電力目標値W1に応じた第1電圧目標値V1を差動増幅器172に出力する。差動増幅器172は、第1検出器16が出力する検波電圧と電圧目標出力器171が出力する第1電圧目標値V1との差を増幅して積分回路173に出力する。積分回路173は、抵抗とコンデンサとを有するRC回路であって、リップルフィルタとして動作する。積分回路173の出力が第1調節値M1としてALC切替回路18に供給される。積分回路173が有する抵抗の抵抗値およびコンデンサの静電容量に応じて第1ALC回路17の時定数が決まる。
【0036】
ALC切替回路18が、第1ALC回路17が出力する第1調節値M1を第1調節器13に調節値M0として供給することで、第1調節器13を構成する可変減衰器の減衰量が第1ALC回路17によって調節される。この結果、第1送信信号S1の電力が所望のレベル、具体的には、第1電力目標値W1に維持される。
【0037】
図1に示す無線局10が新たに設置されたときは、第1増幅器14の出力端子が第1経路切替回路15を介して第1アンテナ41に接続された状態で、第1減衰量ATT1が設定される。詳細には、第1減衰量ATT1は、可変減衰器で構成される第1調節器13での減衰量が最小となる調節値M0が第1調節器13に供給されている状態で、無線局10の目標ゲインに応じて定められる。
【0038】
第1増幅器14の出力端子が付加装置20に接続されることで、第1送信信号S1に基づいて付加装置20で生成される第2送信信号S2が第2アンテナ42から送信されるときの無線局10および付加装置20の各部について以下に説明する。このとき、ALC切替回路18は、第2ALC回路24の出力を第1調節器13に供給する。
【0039】
変調部11、第1減衰器12、第1調節器13、および第1増幅器14の動作は、上述の例と同様である。第1経路切替回路15が、第1増幅器14の出力端子を付加装置20に接続することで、第1送信信号S1が付加装置20の第2減衰器21に供給される。
【0040】
第2減衰器21は、第2減衰量ATT2に基づいて第1送信信号S1を減衰させ、減衰された第1送信信号S1を信号生成回路22に出力する。付加装置20の個体差によってゲインのばらつきが生じることを抑制するために、付加装置20ごとに第2減衰量ATT2が調節される。第2減衰量ATT2は、付加装置20ごとに予め定められている付加装置20の目標ゲインに応じて定められる。
【0041】
信号生成回路22は、振幅が調節された第1送信信号S1、具体的には、第2減衰器21で減衰された第1送信信号S1に信号処理を施して第2送信信号S2を生成する。詳細には、信号生成回路22は、ミキサ31と、第2増幅器32と、を有する。ミキサ31は、第2減衰器21で減衰された第1送信信号S1に、図示しない局部発振器から出力される基準信号LOを乗算することで、第1送信信号S1の周波数変換を行う。ミキサ31は、例えば無線局10の周波数帯とは異なる周波数帯に周波数変換された第1送信信号S1を第2増幅器32に出力する。
【0042】
第2増幅器32は、ミキサ31によって周波数変換された第1送信信号S1を増幅して第2送信信号S2を生成し、第2送信信号S2を第2アンテナ42および第2検出器23に出力する。第2増幅器32のゲインは、付加装置20の目標ゲインに応じて予め定められている。
【0043】
第2検出器23は、第2送信信号S2の電力を検出する。詳細には、第2検出器23は、第2送信信号S2を抽出するCM型方向性結合器と、CM型方向性結合器の出力を検波して第2送信信号S2の信号レベルを示す検波電圧を出力する検波器と、を有する。
【0044】
第2ALC回路24は、第2検出器23で検出された第2送信信号S2の電力と第2送信信号S2の電力の目標値である第2電力目標値W2との差を低減させる第2調節値M2を求め、第2調節値M2を無線局10のALC切替回路18に出力する。付加装置20の図示しない操作部の操作に応じた第2電力目標値W2が、第2ALC回路24に入力される。具体的には、操作部の操作によって選択された付加装置20の周波数帯に応じた第2電力目標値W2が第2ALC回路24に入力される。
【0045】
第2ALC回路24は、第1ALC回路17と同様の構成を有する。詳細には、第2ALC回路24は、
図2に示すように、電圧目標出力器241と、差動増幅器242と、積分回路243と、を有する。電圧目標出力器241は、第2電力目標値W2の供給を受けて、第2電力目標値W2に応じた第2電圧目標値V2を差動増幅器242に出力する。差動増幅器242は、第2検出器23が出力する検波電圧と電圧目標出力器241が出力する第2電圧目標値V2との差を増幅して積分回路243に出力する。積分回路243は抵抗とコンデンサとを有するRC回路であって、リップルフィルタとして動作する。積分回路243の出力が第2調節値M2としてALC切替回路18に供給される。積分回路243が有する抵抗の抵抗値およびコンデンサの静電容量に応じて第2ALC回路24の時定数が決まる。
【0046】
ALC切替回路18が、第2ALC回路24が出力する第2調節値M2を第1調節器13に調節値M0として供給することで、第1調節器13を構成する可変減衰器の減衰量が第2ALC回路24によって調節される。この結果、第1送信信号S1の電力が調節されることで、第1送信信号S1に基づいて生成される第2送信信号S2の電力が所望のレベル、具体的には、第2電力目標値W2に維持される。
【0047】
付加装置20が新たに設置されたときは、第1増幅器14の出力端子が第1経路切替回路15を介して付加装置20に接続された状態で、第2減衰量ATT2が設定される。詳細には、第2減衰量ATT2は、第1調節器13を構成する可変減衰器での減衰量が最小となる調節値M0が第1調節器13に供給されている状態で、付加装置20の目標ゲインに応じて定められる。
【0048】
以上説明した通り、実施の形態に係る無線局10によれば、第1アンテナ41から第1送信信号S1が送信されるときは、第1ALC回路17によって第1送信信号S1の電力が所望のレベルに維持され、第2アンテナ42から第2送信信号S2が送信されるときは、第2ALC回路24によって第1送信信号S1の電力が調節されて第2送信信号S2の電力が所望のレベルに維持される。
【0049】
第1ALC回路17および第2ALC回路24は同様の構成を有し、互いに独立して動作している。このため、無線局10が備える第1ALC回路17において、第2ALC回路24が出力する第2調節値M2を第1ALC回路17の制御電圧範囲に変換する回路および第2ALC回路24が出力する第2調節値M2に基づいて調節値を決定する回路は不要である。したがって、無線局側のALC回路が、付加装置側のALC回路の出力を無線局側の制御電圧範囲に変換する回路、付加装置側のALC回路の出力に基づいて調節値を決定する回路等を必要とする従来の無線局と比べて、無線局10の構成は簡易である。
【0050】
上述のように、第1ALC回路17と第2ALC回路24とは互いに独立して動作している。このため、例えば、無線局10または付加装置20を交換した際には、交換された無線局10または付加装置20の調節のみを行えばよい。換言すれば、無線局10および付加装置20の組合せごとに、例えば、無線局10が備える第1減衰器12の第1減衰量ATT1および付加装置20が備える第2減衰器21の第2減衰量ATT2をそれぞれ調節する煩雑な作業は不要である。
【0051】
また例えば、工場出荷時に無線局10を調節する際には、無線局10の後段に調節用の付加装置が接続された状態で無線局10の調節が行われる。調節用の付加装置とは、ゲインが目標ゲインに一致している付加装置である。詳細には、第2電力目標値W2ごとに、第2アンテナ42から送信される第2送信信号S2の電力が所望のレベルになるように、無線局10における第1減衰量ATT1が調節される。調節後の第1減衰量ATT1は、無線局10に記憶される。
【0052】
同様に、工場出荷時に付加装置20を調節する際には、調節用の機器の後続に付加装置20が接続された状態で付加装置20の調節が行われる。調節用の機器は、例えばSSG(Standard Signal Generator:標準信号発生器)のように、出力レベルが既知の信号源である。調節用の機器として、出力レベルが既知の無線局が用いられてもよい。詳細には、第2電力目標値W2ごとに、第2アンテナ42から送信される第2送信信号S2の電力が所望のレベルとなるように、付加装置20における第2減衰量ATT2が調節される。調節後の第2減衰量ATT2は、付加装置20に記憶される。
【0053】
第1ALC回路17と第2ALC回路24とは互いに独立しているため、第1ALC回路17の時定数と第2ALC回路24の時定数とは互いに異なる値でもよいし、同じ値でもよい。このため、第1ALC回路17および第2ALC回路24の設計の自由度は高い。
【0054】
増幅器の入力インピーダンスは高いため、付加装置側のALC回路の出力が無線局側のALC回路の増幅器に入力される従来の無線局では、ハイインピーダンスのラインを付加装置と無線局との間に引き通す必要があり、ノイズの影響を受けやすい。一方、無線システム1において、第2ALC回路24の出力は、第1ALC回路17の差動増幅器172に入力されることはないため、ハイインピーダンスのラインを無線局10と付加装置20との間に引き通す必要がない。このため、無線局10はノイズの影響を受けにくい。
【0055】
本発明は、上述の実施の形態に限られない。経路切替回路は、付加装置に設けられてもよい。詳細には、
図3に示す無線システム2は、経路切替回路を有さない無線局70と、経路切替回路を有する付加装置80と、を備える。無線局70の構成は、実施の形態に係る無線局10の構成から第1経路切替回路15を除いたものと同じである。付加装置80は、実施の形態に係る付加装置20の構成に加えて、第2経路切替回路25をさらに備える。
【0056】
第2経路切替回路25は、無線局70の出力端子を第1アンテナ41および第2調節器として動作する第2減衰器21のいずれかに接続する。ALC切替回路18と第2経路切替回路25は、無線局70の操作部の操作に応じて連動して動作する。
【0057】
詳細には、第2経路切替回路25によって無線局70の出力端子が第1アンテナ41に接続されているときに、ALC切替回路18は、第1ALC回路17が出力する第1調節値M1を調節値M0として第1調節器13に供給する。これにより、第1送信信号S1が第1アンテナ41から送信されるときに、第1ALC回路17が出力する第1調節値M1が第1調節器13に供給されるため、第1ALC回路17によって第1送信信号S1の電力が所望のレベルに維持される。
【0058】
一方、第2経路切替回路25によって無線局70の出力端子が第2減衰器21に接続されているときに、ALC切替回路18は、第2ALC回路24が出力する第2調節値M2を調節値M0として第1調節器13に供給する。これにより、第1送信信号S1に基づいて付加装置80が備える信号生成回路22で生成された第2送信信号S2が第2アンテナ42から送信されるときに、第2ALC回路24が出力する第2調節値M2が第1調節器13に供給されるため、第2ALC回路24によって第1送信信号S1の電力が調節されて第2送信信号S2の電力が所望のレベルに維持される。
【0059】
無線局10の周波数帯の内、同一周波数帯における無線局10のゲインのばらつきが生じることを抑制するために、例えば、第1減衰量ATT1は、無線局10の周波数帯の内、高周波数帯域、中間周波数帯域、および低周波数帯域のそれぞれについて予め定められている無線局10の目標ゲインに応じて定められてもよい。
【0060】
同様に、付加装置20の周波数帯の内、同一周波数帯における付加装置20のゲインのばらつきが生じることを抑制するために、例えば、第2減衰量ATT2は、付加装置20の周波数帯の内、高周波数帯域、中間周波数帯域、および低周波数帯域のそれぞれについて予め定められている付加装置20の目標ゲインに応じて定められてもよい。
【0061】
第1増幅器14は、単一の増幅器に限られず、複数の増幅器で構成されてもよい。同様に、第2増幅器32は、単一の増幅器に限られず、複数の増幅器で構成されてもよい。
【0062】
信号生成回路22の回路構成は、上述の例に限られず、第1送信信号S1に基づいて第2送信信号S2を生成する回路であれば任意である。一例として、
図4に示す無線システム3が備える付加装置90の信号生成回路22のように、信号生成回路22は、第2増幅器32のみを有してもよい。
【0063】
無線システム1-3が備える付加装置の個数は、上述の例に限られず任意である。一例として、無線システム1は、1つの無線局10と、複数の付加装置20と、を備えてもよい。このとき、第1経路切替回路15は、第1増幅器14の出力端子を第1アンテナ41および複数の付加装置20のいずれかに接続する。
【0064】
無線システム1-3の構成は、上述の例に限られない。一例として、無線システム1-3は、上述の送信機能に加えて、受信機能を有してもよい。
【0065】
第1アンテナ41および第2アンテナ42は、共通のアンテナで実現されてもよい。
【0066】
その他、上述のハードウェア構成および回路構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1,2,3 無線システム
10,70 無線局
11 変調部
12 第1減衰器
13 第1調節器
14 第1増幅器
15 第1経路切替回路
16 第1検出器
17 第1ALC回路
18 ALC切替回路
20,80,90 付加装置
21 第2減衰器
22 信号生成回路
23 第2検出器
24 第2ALC回路
25 第2経路切替回路
31 ミキサ
32 第2増幅器
41 第1アンテナ
42 第2アンテナ
50,60 コントローラ
51,61 CPU
52,62 I/O
53,63 RAM
54,64 ROM
171,241 電圧目標出力器
172,242 差動増幅器
173,243 積分回路
ATT1 第1減衰量
ATT2 第2減衰量
LO 基準信号
M0 調節値
M1 第1調節値
M2 第2調節値
S1 第1送信信号
S2 第2送信信号
V1 第1電圧目標値
V2 第2電圧目標値
W1 第1電力目標値
W2 第2電力目標値