(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100175
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】木屑燃料の異物検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20240719BHJP
【FI】
G01N23/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003976
(22)【出願日】2023-01-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】澤柳 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】森 光徳
(72)【発明者】
【氏名】川口 哲史
(72)【発明者】
【氏名】宮部 昇三
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 巖
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001FA08
2G001GA01
2G001HA07
2G001HA13
2G001JA09
2G001KA01
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】木屑燃料に混入した異物を検出できる、木屑燃料の異物検出装置を提供する。
【解決手段】本発明による、木屑燃料の異物検出装置10は、X線出力部12と、複数のX線検出素子を備え、1つのX線検出素子を1画素とし、それぞれの画素におけるX線のエネルギーの大きさを画素情報として取得するX線検出部13と、制御部14を備える。X線出力部12は、木屑燃料21の始端部から終端部までX線16を照射する。X線検出部13は、木屑燃料21を透過したX線16についての画素情報を取得する。制御部14は、X線検出部13から取得した画素情報を、第一の基準値より小さい値の第一の画素情報と、第一の基準値以上の値の第二の画素情報とに分類し、第一の画素情報を持つ画素に対して、隣接する画素から画素情報に基づいてクラスタを構成するための近傍処理を行って、第一の画素情報を持つ画素を1つまたは複数のクラスタにクラスタリングする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を出力するX線出力部と、
複数のX線検出素子を備え、1つの前記X線検出素子を1画素として前記画素で前記X線を検出し、それぞれの前記画素における前記X線のエネルギーの大きさを画素情報として取得するX線検出部と、
前記X線出力部と前記X線検出部を制御する制御部と、
を備え、
前記X線出力部は、木屑燃料の始端部から終端部までに対し前記X線を照射し、
前記X線検出部は、前記木屑燃料を透過した前記X線についての前記画素情報を取得し、
前記制御部は、
前記X線検出部が取得した前記画素情報を取得して、前記画素情報を、第一の基準値より小さい値の第一の画素情報と、前記第一の基準値以上の値の第二の画素情報とに分類し、
前記第一の画素情報を持つ前記画素に対して、隣接する前記画素から前記画素情報に基づいてクラスタを構成するための近傍処理を行って、前記第一の画素情報を持つ前記画素を1つまたは複数の前記クラスタにクラスタリングする、
ことを特徴とする、木屑燃料の異物検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記クラスタの面積を算出し、前記面積が第二の基準値以上である場合には、前記クラスタが異物を表すと判定する、
請求項1に記載の、木屑燃料の異物検出装置。
【請求項3】
前記X線検出部は、一次元に配列された複数の前記X線検出素子を備え、
前記制御部は、
前記X線検出素子が並んでいる方向をX方向とし、
前記木屑燃料の前記始端部から前記終端部までの方向をY方向とし、
前記画素に対して、前記画素の位置を示すX座標とY座標と、前記画素情報と、前記画素を分類するためのラベルを設定し、
前記第一の画素情報を持つ前記画素の前記ラベルに第一の値を設定し、
前記第二の画素情報を持つ前記画素の前記ラベルに前記第一の値と異なる第二の値の値を設定する、
請求項1に記載の、木屑燃料の異物検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記近傍処理において、
前記第一の画素情報を持つ前記画素のなかから1つの前記画素を、第一の対象画素として選択する第一の選択処理を実施し、
前記第一の対象画素の前記ラベルに、前記クラスタを識別する識別子を設定する第一のラベリング処理を実施し、
前記第一の対象画素の近傍画素であって前記第一の画素情報を持つ前記画素を、第二の対象画素として選択する第二の選択処理を実施し、
前記第二の対象画素の前記ラベルに、前記第一の対象画素の前記ラベルに設定したのと同じ前記識別子を設定する第二のラベリング処理を実施し、
前記第二のラベリング処理で前記識別子が設定された前記第二の対象画素の近傍画素のなかに、前記第一の画素情報を持つ前記画素が存在する場合には、この前記第二の対象画素を前記第一の対象画素に置き換える置き換え処理を実施し、
前記置き換え処理で置き換えられた前記第一の対象画素に対し、前記第一のラベリング処理と前記第二の選択処理と前記第二のラベリング処理と前記置き換え処理とを実施する第一の繰り返し処理を実施し、
前記第一の画素情報を持つ前記画素がなくなるまで、前記第一の選択処理と前記第一の繰り返し処理とを繰り返す第二の繰り返し処理を実施し、
前記第二の繰り返し処理では、前記ラベルに、既に使用した前記識別子と異なる前記識別子を設定する、
請求項3に記載の、木屑燃料の異物検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、互いに同じ前記識別子を持つ前記画素の集合体を、1つの前記クラスタとする、
請求項4に記載の、木屑燃料の異物検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記木屑燃料が存在しない空気部分を透過した前記X線のエネルギーの大きさで前記画素情報を正規化した正規化画素情報を、前記画素情報として用いる、
請求項1に記載の、木屑燃料の異物検出装置。
【請求項7】
前記第一の基準値は、テスト運用または実験において設定された値である、
請求項1に記載の、木屑燃料の異物検出装置。
【請求項8】
前記第二の基準値は、テスト運用または実験において設定された値であり、前記画素の数で表される、
請求項2に記載の、木屑燃料の異物検出装置。
【請求項9】
前記木屑燃料を検知可能な木屑燃料検出部を備え、
前記制御部は、前記木屑燃料検出部から前記木屑燃料を検知したことを示す信号を取得すると、前記X線出力部に前記X線を出力する指令を送信する、
請求項1に記載の、木屑燃料の異物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木屑燃料に混入した異物を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス発電プラントでは、木屑などの木質バイオマスを燃料として使用することがある。この木屑燃料は、破砕機で破砕されて木材チップとなって発電の燃料に使用される。木屑燃料に異物が混入していると、異物の大きさによっては、破砕機が破損したり破砕機が木屑燃料を破砕できなかったりするなど、破砕機に影響を与える場合がある。このため、木屑燃料に混入した異物を検出し、木屑燃料から異物を除去する必要がある。
【0003】
被検査物に混入した物の中から異物を検出する異物検出装置の例は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された異物検出機は、被検査物に照射するX線を発生するX線発生器と、被検査物を透過したX線が変換された電気信号によりX線透過画像を形成する透過画像形成部と、形成されたX線透過画像を画像処理して注意異物を検出する注意異物検出部を備え、注意異物検出部では、異物画素の濃度、異物画素の画素数、異物画素の濃度の累積値、及び線状異物のうちの少なくとも1つに基づいて注意異物を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
木屑燃料には、金属片や石などの混入物が異物として混ざり合っていることがある。バイオマス発電プラントで使用する木屑燃料については、木屑燃料に混入した異物を検出して除去し、破砕工程において破砕機が木屑燃料を破砕できるようにする必要がある。
【0006】
特許文献1に記載された異物検出機など、従来の異物検出装置では、製品または製品を包装したパッケージを被検査物とし、被検査物に混入した異物(例えば、食品に混入した金属、大きい異物、及び線状異物)を検出する。このため、被検査物に混入した異物の大きさと数は、ある程度特定されている。従来の異物検出装置は、このような大きさと数が特定された異物を検出するのに適している。
【0007】
しかし、木屑燃料に混入した異物は、大きさと数が不明であるとともに、木屑燃料に散在していることもあるので、従来の異物検出装置では十分に検出できない場合がある。このため、木屑燃料に混入した異物を除去できず、木屑燃料を破砕機で破砕できないという懸念がある。そこで、木屑燃料を破砕機で破砕できるように、木屑燃料に混入した異物を検出できる異物検出装置が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、木屑燃料に混入した異物を検出できる、木屑燃料の異物検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による、木屑燃料の異物検出装置は、X線を出力するX線出力部と、複数のX線検出素子を備え、1つの前記X線検出素子を1画素として前記画素で前記X線を検出し、それぞれの前記画素における前記X線のエネルギーの大きさを画素情報として取得するX線検出部と、前記X線出力部と前記X線検出部を制御する制御部とを備える。前記X線出力部は、木屑燃料の始端部から終端部までに対し前記X線を照射する。前記X線検出部は、前記木屑燃料を透過した前記X線についての前記画素情報を取得する。前記制御部は、前記X線検出部が取得した前記画素情報を取得して、前記画素情報を、第一の基準値より小さい値の第一の画素情報と、前記第一の基準値以上の値の第二の画素情報とに分類し、前記第一の画素情報を持つ前記画素に対して、隣接する前記画素から前記画素情報に基づいてクラスタを構成するための近傍処理を行って、前記第一の画素情報を持つ前記画素を1つまたは複数の前記クラスタにクラスタリングする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、木屑燃料に混入した異物を検出できる、木屑燃料の異物検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施例による、木屑燃料の異物検出装置の全体構成を示す図である。
【
図2】X線出力部が木屑燃料に照射するライン状のX線の例を示す図である。
【
図3】木屑燃料を透過したライン状の透過X線を検出し、画素情報を取得するX線検出部を示す図である。
【
図4】木屑燃料の全体を表す、画素情報を持つ画素で構成された二次元画像の例を示す図である。
【
図5A】木屑燃料上に仮想的に設定されたXY平面の例を示す図である。
【
図5B】それぞれの画素が持つデータを示す図である。
【
図6】XY平面において、ラベルに「999」の値または「0」の値が設定された画素の例を示す図である。
【
図7A】近傍画素を説明するための図であり、第一の対象画素とその近傍画素の例を示す図である。
【
図7B】近傍画素を説明するための図であり、第一の対象画素とその近傍画素の例を示す図である。
【
図8】制御部が第一の正規化画素情報を持つ画素に対して近傍処理を行って得られた2つのクラスタの例を示す図である。
【
図9A】第一の選択処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図9B】第一のラベリング処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図9C】第二の選択処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図9D】第二のラベリング処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図9E】置き換え処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図9F】置き換え処理で置き換えられた第一の対象画素に対し、第一のラベリング処理と第二の選択処理と第二のラベリング処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図9G】第一のラベリング処理と第二の選択処理と第二のラベリング処理が実施された画素に対し、置き換え処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図9H】置き換え処理で置き換えられた第一の対象画素に対し、さらに第一の繰り返し処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図9I】2回目の第二の繰り返し処理において、第一の選択処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図9J】2回目の第二の繰り返し処理において、第一の繰り返し処理の第二のラベリング処理が実施されたXY平面の例を示す図である。
【
図10】2つのクラスタを有するXY平面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による、木屑燃料の異物検出装置は、木屑燃料に含まれる異物を検出することができ、木屑燃料にX線を照射して木屑燃料を透過したX線の画像を取得し、この画像における混入物の存在する部分の面積の大きさによって異物を検出する。本発明による異物検出装置は、例えば、バイオマス発電プラントに使用する木屑燃料に含まれる異物を検出するのに用いることができる。
【0013】
本発明による、木屑燃料の異物検出装置は、木屑燃料への混入物の大きさと数が不明であっても、全ての混入物を確実に検出可能であり、混入物の大きさに応じて混入物が異物か否かを判定する。例えば、木屑燃料を破砕する破砕機に影響を与えないような小さい混入物は、異物と判定せず、破砕機に影響を与えるような大きい混入物は、異物と判定する。このため、異物(すなわち、大きい混入物)を含む木屑燃料は、例えば、バイオマス発電プラントでの破砕工程で使用しないようにすることができる。本発明による異物検出装置を用いると、バイオマス発電プラントに影響を与える異物を取り除くことができ、プラント機器の故障を未然に防いでプラントの稼働率を維持することに貢献できる。
【実施例0014】
以下、本発明の実施例による、木屑燃料の異物検出装置を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施例による、木屑燃料の異物検出装置10の全体構成を示す図である。本実施例による異物検出装置10は、木屑燃料検出部11と、X線出力部12と、X線検出部13と、制御部14を備える。
【0016】
木屑燃料21は、搬送用コンベア等の搬送装置22によって異物検出装置10に搬送される。木屑燃料21は、例えば、塊状の木材であり、搬送装置22の搬送面に載置されて搬送される。木屑燃料21が搬送装置22によって搬送されると、木屑燃料21への混入物も併せて搬送される。
【0017】
木屑燃料検出部11は、物体を検出可能なセンサで構成することができ、例えば光電センサを用いて構成することができる。木屑燃料検出部11は、木屑燃料21が異物検出装置10に搬送されてきたことを検知可能である。
【0018】
X線出力部12は、所定の出力値でX線16を出力し、搬送装置22によって搬送されてきた木屑燃料21にX線16を照射する。
【0019】
X線検出部13は、一次元に配列された複数のX線検出素子を備え、X線出力部12が照射して木屑燃料21を透過したX線16(透過X線)を検出する。X線検出部13は、1つのX線検出素子を1画素として、それぞれの画素で透過X線を検出して、それぞれの画素における単位時間当たりの透過X線のエネルギーの大きさを画素情報として出力する。なお、X線検出部13は、二次元に配列された複数のX線検出素子を備えることもできる。
【0020】
制御部14は、木屑燃料に含まれる異物を検出する処理を実行するとともに、木屑燃料検出部11とX線出力部12とX線検出部13など、異物検出装置10の全体を制御する。制御部14は、記憶部を備え、入力した情報や演算処理で取得した情報を記憶部に記憶することができる。
【0021】
また、異物検出装置10は、木屑燃料21の搬入部と搬出部に遮蔽カーテン15を備え、X線16が異物検出装置10の外部に漏れるのを防止する。
【0022】
木屑燃料検出部11は、搬送装置22によって搬送されてきた木屑燃料21が木屑燃料検出部11の検出範囲に入ると、木屑燃料21を検知する。木屑燃料検出部11は、木屑燃料21を検知したら、木屑燃料21を検知したことを示す信号を制御部14に送信する。この信号は、木屑燃料21が異物検出装置10に搬送されたことを示す信号である。
【0023】
制御部14は、木屑燃料検出部11から木屑燃料21を検知したことを示す信号を取得すると、X線出力部12にX線16を出力する指令を送信する。
【0024】
X線出力部12は、X線16を出力する指令を取得すると、X線16を出力する。木屑燃料21は、X線出力部12が出力したX線16の照射範囲に到達すると、X線16が照射される。
【0025】
X線検出部13は、木屑燃料21を透過したX線16(透過X線)を検出し、画素ごとに画素情報を取得する。画素情報は、上述したように、それぞれの画素(X線検出部13のそれぞれのX線検出素子)における単位時間当たりの透過X線のエネルギーの大きさを示す。X線検出部13は、取得した画素情報を制御部14に出力する。
【0026】
制御部14は、X線検出部13から画素情報を取得すると、木屑燃料21に混入した異物を検出する処理を開始する。
【0027】
図2は、X線出力部12が木屑燃料21に照射するライン状のX線16の例を示す図である。
【0028】
X線出力部12は、搬送装置22によって移動する木屑燃料21の始端部21aから終端部21bまでに対し、ライン状のX線16を連続的に照射する。木屑燃料21の始端部21aは、木屑燃料21の搬送方向(移動方向)の先端部である。木屑燃料21の終端部21bは、木屑燃料21の搬送方向の後端部である。X線16は、搬送装置22の搬送面において、木屑燃料21の搬送方向に垂直な方向に延伸するライン状である。X線出力部12は、木屑燃料21が搬送装置22によって移動している間、ライン状のX線16を木屑燃料21の始端部21aから終端部21bまでの全域に渡って連続的に照射する。
【0029】
図2において、ライン状のX線16が延伸する方向をX方向とし、木屑燃料21の搬送方向をY方向とする。X線検出部13のX線検出素子は、X方向に並んでいる。木屑燃料21の始端部21aから終端部21bまでの方向は、Y方向である。
【0030】
X線検出部13は、搬送装置22を挟んで、X線出力部12と対向する位置に配置されている。X線検出部13は、木屑燃料21を透過したライン状の透過X線を検出する。
【0031】
図3は、木屑燃料21を透過したライン状の透過X線を検出し、画素情報を取得するX線検出部13を示す図である。
【0032】
X線検出部13は、X線出力部12によるライン状のX線16の照射に対応して、ライン状の透過X線を検出する。X線検出部13は、木屑燃料21が搬送装置22によって移動している間、ライン状の透過X線を木屑燃料21の始端部21aから終端部21bに渡って連続的に検出するので、木屑燃料21の全体を二次元にスキャンすることが可能である。
【0033】
X線検出部13は、X線検出部13を構成するそれぞれのX線検出素子を1画素として、それぞれの画素で画素情報(それぞれの画素における単位時間当たりの透過X線のエネルギーの大きさ)を取得する。X線検出部13は、木屑燃料21の全体について画素情報を取得する。X線検出部13は、取得した画素情報を制御部14に出力する。
【0034】
制御部14は、X線検出部13から取得した画素情報に基づき、木屑燃料21の全体を、画素情報を持つ画素で構成された二次元画像で表すことができる。
【0035】
図4は、木屑燃料21の全体を表す、画素情報を持つ画素42で構成された二次元画像41の例を示す図である。上述したように、X線検出部13は、一次元に配列された複数のX線検出素子を備え、1つのX線検出素子が1画素に相当する。以下では、この二次元画像41のことを、二次元空間41またはXY平面41とも呼ぶ。
【0036】
図4において、
図2に示したように、ライン状のX線16が延伸する方向をX方向とし、木屑燃料21の搬送方向(移動方向)をY方向とする。上述したように、X線検出部13のX線検出素子は、ライン状のX線16が延伸するX方向に並んでいる。
【0037】
図4に示した二次元空間41において、原点を示す画素42を画素Oとする。二次元空間41の内部の画素42の位置は、X座標とY座標で表される。
【0038】
原点である画素Oは、X方向の一端にあり、ライン状のX線16(ライン状の透過X線)の始点に対応する位置にある画素42である。二次元空間41において、画素OのX方向の他端にある画素A(X座標が異なりY座標が同じ画素)は、ライン状のX線16(ライン状の透過X線)の終点に対応する位置にある画素42である。
【0039】
X座標は、始点である画素Oから終点である画素Aに向かって増えていく。画素Oから画素AまでのX座標の範囲が、X線出力部12によるライン状のX線16の1回の照射に対応して、X線検出部13がライン状の透過X線を検出可能な範囲である。
【0040】
また、画素Oは、Y方向の一端にあり、木屑燃料21の始端部21aに対応する位置にある。二次元空間41において、画素OのY方向の他端にある画素B(X座標が同じでY座標が異なる画素)は、木屑燃料21の終端部21bに対応する位置にある画素42である。
【0041】
Y座標は、始端部21aに対応する画素Oから終端部21bに対応する画素Bに向かって増えていく。すなわち、Y座標の増加方向は、木屑燃料21の移動方向と反対方向である。
【0042】
制御部14は、このようなXY平面41(二次元空間41)を木屑燃料21上に仮想的に設定し、それぞれの画素42に対して、画素42の位置を示すX座標とY座標を設定する。
【0043】
図5Aは、木屑燃料21上に仮想的に設定されたXY平面41の例を示す図である。XY平面41は、X方向とY方向の2次元に配置された複数の画素42で構成されている。
図5Aでは、画素42のそれぞれに、第一画素、第二画素、第三画素、及び第m画素などと名前を付けている。第一画素は、
図4に示した画素Oである。それぞれの画素42は、画素情報をデータとして持つ。
【0044】
制御部14は、さらに、それぞれの画素42に対して、正規化画素情報とラベルをデータとして設定する。ラベルには、それぞれの画素42を分類するための値が設定される。正規化画素情報については、後で説明する。
【0045】
図5Bは、それぞれの画素42が持つデータを示す図である。それぞれの画素42は、画素42の位置を示す座標(X座標とY座標)と、正規化画素情報と、ラベルをデータとして持つ。すなわち、それぞれの画素42は、複数のデータを持つデータ集合体である。例えば、第一画素(画素O)は、X座標が1、Y座標が1、正規化画素情報が0.4であるというデータを持ち、第m画素は、X座標がXm、Y座標がYm、正規化画素情報が0.6であるというデータを持つ。
【0046】
制御部14は、XY平面41を構成するそれぞれの画素42について、画素42が持つデータ(X座標とY座標と正規化画素情報とラベル)を記憶部に記憶する。そして、制御部14は、正規化画素情報に基づいて、それぞれの画素42をクラスタリングして1つまたは複数のクラスタに分ける。クラスタは、XY平面41において、木屑燃料21への混入物を示す画素42の集合体である。制御部14は、クラスタを構成する画素42に対応する位置に混入物が存在すると判断する。
【0047】
以下では、制御部14が画素42をクラスタリングする処理について説明する。
【0048】
初めに、画素42に設定される正規化画素情報について説明する。制御部14は、全ての画素42の画素情報を特定の値の範囲内で単純化して取り扱うために、画素情報を正規化して正規化画素情報を得て、この正規化画素情報をそれぞれの画素42に設定する。具体的には、制御部14は、木屑燃料21が存在しない空気部分を透過したX線16のエネルギーの大きさで画素情報を正規化(スケーリング)した正規化画素情報を、画素42の画素情報として用いる。例えば、制御部14は、木屑燃料21が存在しない空気部分を透過したX線16のエネルギーの大きさを1とし、このエネルギーの大きさを最大値として、木屑燃料21を透過した透過X線の大きさを正規化する。
【0049】
なお、制御部14は、この正規化(スケーリング)を行わず、透過X線の大きさをそのまま画素情報としてもよい。すなわち、制御部14は、正規化画素情報を用いずに、画素情報をそのまま用いてもよい。以下では、一例として、正規化画素情報を用いた例を説明するが、以下の説明は、正規化画素情報を用いない場合にもあてはまる。
【0050】
以下では、予め定めた第一の基準値より小さい値の正規化画素情報を「第一の正規化画素情報」と呼び、第一の基準値以上の値の正規化画素情報を「第二の正規化画素情報」と呼ぶ。制御部14は、画素情報を、第一の正規化画素情報と第二の正規化画素情報とに分類する。第一の基準値は、木屑燃料21への混入物の有無を判定するための値である。
【0051】
画素42をクラスタリングする処理において、制御部14は、初めに、それぞれの画素42のラベルを初期化する。この初期化において、制御部14は、全ての画素42のラベルに、互いに異なる2つの値のうち一方の値を設定する。本実施例では、制御部14は、一例として、全ての画素42のラベルに「999」または「0」の値を設定する。
【0052】
制御部14は、画素情報に応じて画素42を分類する。具体的には、制御部14は、第一の正規化画素情報を持つ画素42のラベルに「999」の値を設定し、第二の正規化画素情報を持つ画素42のラベルに「0」の値を設定する。ラベルに「999」の値が設定された画素42は、正規化画素情報が第一の基準値より小さい値の画素である。ラベルに「0」の値が設定された画素42は、正規化画素情報が第一の基準値以上の値の画素である。
【0053】
図6は、XY平面41において、ラベルに「999」の値または「0」の値が設定された画素42の例を示す図である。
図6に示すXY平面41では、画素42ごとに、それぞれの画素42のラベルの値を示している。制御部14は、例えば
図6に示すように、XY平面41のそれぞれの画素42のラベルを初期化する。なお、
図6では、画素42の位置を示すX座標とY座標を、一例として1から8までの数値で表している。
【0054】
制御部14は、第一の正規化画素情報を持つ画素42に対して近傍処理を施し、これらの画素42を1つまたは複数のクラスタにクラスタリングする。混入物を透過したX線のエネルギーは、混入物を透過しないX線のエネルギーよりも小さい。そこで、制御部14は、透過X線のエネルギーが小さい画素42、すなわち第一の正規化画素情報を持つ画素42(すなわち、ラベルに「999」の値が設定された画素42)に対して、近傍処理を実施して異物を検出する処理を実行する。
【0055】
近傍処理は、第一の正規化画素情報を持つ画素42に対して、正規化画素情報に基づいて、隣接する画素42(近傍画素)からクラスタを構成するための処理である。具体的には、近傍処理は、第一の正規化画素情報を持つ画素42のうち着目している画素42と、この画素42に隣接する画素42(近傍画素)とのラベルの値に基づいて、着目している画素42のラベルの値を書き換えていって1つのクラスタを構成する処理である。制御部14は、第一の正規化画素情報を持つ画素42に対して近傍処理を行い、第一の正規化画素情報を持つ全ての画素42を1つまたは複数のクラスタに分ける。木屑燃料21への混入物は、XY平面41において、クラスタで表される。
【0056】
ここで、近傍画素について説明する。以下では、第一の正規化画素情報を持つ画素42のうち着目している画素42を「第一の対象画素」と呼ぶ。
【0057】
図7Aと
図7Bは、近傍画素を説明するための図であり、第一の対象画素71とその近傍画素73の例を示す図である。
【0058】
図7Aに示す例では、XY平面41において、第一の対象画素71の全周囲に画素が存在し、第一の対象画素71に8個の画素が隣接している。これら8個の画素が、第一の対象画素71の近傍画素73である。
【0059】
図7Bに示す例では、第一の対象画素71は、XY平面41の端部に存在し、第一の対象画素71に5個の画素が隣接している。これら5個の画素が、第一の対象画素71の近傍画素73である。
図7Bに示す第一の対象画素71は、
図7Aに示す第一の対象画素71よりも、近傍画素73の数が少ない。このように、近傍画素73の数は、第一の対象画素71により異なる。
【0060】
以下では、第一の対象画素71の近傍画素73のうち、第一の正規化画素情報を持つ画素(すなわち、ラベルに「999」の値が設定された画素)を「第二の対象画素」と呼ぶ。
【0061】
図8は、制御部14が第一の正規化画素情報を持つ画素42に対して近傍処理を行って得られた2つのクラスタ81、82の例を示す図である。
図8に示すXY平面41において、ラベルの値「1」が示されている画素42が1つのクラスタ81を構成し、ラベルの値「2」が示されている画素42が他の1つのクラスタ82を構成している。
【0062】
図8に示す2つのクラスタ81、82は、制御部14が、後述する第二の繰り返し処理を2回行って、第一の正規化画素情報を持つ画素42(すなわち、ラベルに「999」の値が設定された画素42)に対して近傍処理を行うことで得られる。
【0063】
以下では、制御部14が、近傍処理を行って第一の正規化画素情報を持つ画素42を1つまたは複数のクラスタに分ける手順について、
図9Aから
図9Jを参照して説明する。制御部14は、第一の選択処理と、第一のラベリング処理と、第二の選択処理と、第二のラベリング処理と、置き換え処理を実施するとともに、第一の繰り返し処理(第一のラベリング処理と第二の選択処理と第二のラベリング処理と置き換え処理を繰り返す処理)と、第二の繰り返し処理(第一の選択処理と第一の繰り返し処理を繰り返す処理)を実施する。なお、
図9Aから
図9Jに示すXY平面41では、画素42ごとに、それぞれの画素42のラベルの値を示している。
【0064】
初めに、制御部14は、1回目の第二の繰り返し処理(第一の選択処理と第一の繰り返し処理)を実施する。制御部14は、最初に第一の選択処理を実施する。
【0065】
図9Aは、第一の選択処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。制御部14は、第一の選択処理において、第一の正規化画素情報を持つ画素42(すなわち、ラベルに「999」の値が設定された画素42)がXY平面41に存在するか否かを調べる。第一の正規化画素情報を持つ画素42が存在する場合には、制御部14は、第一の正規化画素情報を持つ画素42のなかから1つの画素を第一の対象画素71として選択する。例えば、制御部14は、X座標とY座標が最も小さい画素42を第一の対象画素71として選択する。
【0066】
図9Aに示す例では、ラベルに「999」の値が設定された画素42のうち、円で囲まれた画素42が第一の対象画素71である。
【0067】
次に、制御部14は、第一の対象画素71に対し、第一の繰り返し処理を実施する。第一の繰り返し処理とは、第一のラベリング処理と第二の選択処理と第二のラベリング処理と置き換え処理を繰り返す処理である。
【0068】
図9Bは、第一のラベリング処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。制御部14は、次に第一のラベリング処理を実施する。制御部14は、第一のラベリング処理において、第一の対象画素71のラベルに値「n」を設定する。このnは、クラスタを識別するための識別子であり、任意の値(数値と文字を含む)を用いることができる。但し、nは、画素42のラベルの初期値(第一の正規化画素情報を持つ画素42と第二の正規化画素情報を持つ画素42とを区別するための値)とは異なる値である。本実施例では、一例として、nは、クラスタ番号の役割を果たす数値であり、999と0(ゼロ)以外の数値であるとする。
【0069】
図9Bに示す例では、円で囲まれた第一の対象画素71のラベルに値「n」が設定されている。
【0070】
図9Cは、第二の選択処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。制御部14は、次に第二の選択処理を実施する。制御部14は、第二の選択処理において、第一の対象画素71の近傍画素のなかに、第一の正規化画素情報を持つ画素(すなわち、ラベルに「999」の値が設定された画素)が存在するか否かを調べる。第一の正規化画素情報を持つ画素が存在する場合には、制御部14は、第一の正規化画素情報を持つ画素の全てを第二の対象画素72として選択する。
【0071】
図9Cに示す例では、第一の対象画素71の近傍画素のうち、四角形で囲まれた画素が第二の対象画素72である。
【0072】
図9Dは、第二のラベリング処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。制御部14は、次に第二のラベリング処理を実施する。制御部14は、第二のラベリング処理において、第二の対象画素72のラベルに、第一の対象画素71のラベルに設定したのと同じ識別子(本実施例では値「n」)を設定する。
【0073】
図9Dに示す例では、四角形で囲まれた第二の対象画素72のラベルに値「n」が設定されている。
【0074】
図9Eは、置き換え処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。制御部14は、次に置き換え処理を実施する。制御部14は、置き換え処理において、第二のラベリング処理でラベルに値「n」を設定した第二の対象画素72の近傍画素のなかに、第一の正規化画素情報を持つ画素(すなわち、ラベルに「999」の値が設定された画素)が存在するか否かを調べる。第一の正規化画素情報を持つ画素が存在する場合には、制御部14は、この第二の対象画素72を第一の対象画素71に置き換える。制御部14は、第二の対象画素72から置き換えた第一の対象画素71を、新たな第一の対象画素71として扱う。
【0075】
図9Eに示す例では、円で囲まれた2つの画素が、第二の対象画素72から新たな第一の対象画素71に置き換えられた画素である。
【0076】
次に、制御部14は、置き換え処理で置き換えられた新たな第一の対象画素71に対し、第一の繰り返し処理を実施する。第一の繰り返し処理とは、上述したように、第一のラベリング処理と第二の選択処理と第二のラベリング処理と置き換え処理を繰り返す処理である。
【0077】
図9Fは、置き換え処理で置き換えられた第一の対象画素71(
図9E)に対し、第一のラベリング処理と第二の選択処理と第二のラベリング処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。制御部14は、置き換え処理で第二の対象画素72から置き換えられた第一の対象画素71(
図9E)に対し、第一のラベリング処理と第二の選択処理と第二のラベリング処理を実施し、第二の対象画素72のラベルに、第一の対象画素71のラベルに設定したのと同じ識別子(本実施例では値「n」)を設定する。
【0078】
図9Fに示す例では、円で囲まれた第一の対象画素71の近傍画素のうち、四角形で囲まれた第二の対象画素72のラベルに値「n」が設定されている。
【0079】
図9Gは、第一のラベリング処理と第二の選択処理と第二のラベリング処理が実施された画素(
図9F)に対し、置き換え処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。制御部14は、第二のラベリング処理が実施された画素(
図9Fの第二の対象画素72)を新たな第一の対象画素71に置き換える。
【0080】
図9Gに示す例では、円で囲まれた4つの画素が、第二の対象画素72から新たな第一の対象画素71に置き換えられた画素である。
【0081】
図9Hは、置き換え処理で置き換えられた第一の対象画素71(
図9G)に対し、さらに第一の繰り返し処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。
【0082】
制御部14は、第一の繰り返し処理を、第一の対象画素71の近傍画素のなかに第一の正規化画素情報を持つ画素(すなわち、ラベルに「999」の値が設定された画素)が存在しなくなるまで、連続的に繰り返す。
【0083】
図9Hに示す例では、第二の対象画素72から置き換えられる新たな第一の対象画素には、第一の正規化画素情報を持つ近傍画素が存在しないので、制御部14は、第一の繰り返し処理を終了する。
【0084】
制御部14は、以上の第一の繰り返し処理により、互いに同じ識別子をラベルに持つ画素42の集合体を、1つのクラスタとする。本実施例では、制御部14は、ラベルに値「n」が設定された11個の画素42で構成されたクラスタを1つ得ることができる。制御部14は、1つのクラスタを得たら、第一の繰り返し処理で近傍処理を行った画素以外の画素42について、次の第二の繰り返し処理(第一の選択処理と第一の繰り返し処理)を実施する。本実施例では、制御部14は、2回目の第二の繰り返し処理を実施する。
【0085】
制御部14は、2回目の第二の繰り返し処理において、最初に、第一の繰り返し処理で近傍処理を行った画素以外の画素42について、第一の選択処理を実施する。すなわち、制御部14は、第一の繰り返し処理で近傍処理を行った画素以外の画素42について、第一の正規化画素情報を持つ画素42(すなわち、ラベルに「999」の値が設定された画素42)が存在するか否かを調べる。このような画素42が存在する場合には、制御部14は、このような画素42のうちX座標とY座標が最も小さい画素42を第一の対象画素71として選択する。
【0086】
図9Iは、2回目の第二の繰り返し処理において、第一の選択処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。
図9Iに示す例では、ラベルに「999」の値が設定された画素42のうち、円で囲まれた画素42が第一の対象画素71である。なお、
図9Iには、1回目の第二の繰り返し処理での第一の繰り返し処理により得られた1つのクラスタ81(ラベルに値「n」が設定された画素42で構成されたクラスタ81)も示している。
【0087】
制御部14は、2回目の第二の繰り返し処理において、次に、上述した第一の繰り返し処理を実施する。但し、制御部14は、第一のラベリング処理において、第一の対象画素71のラベルに値「n+1」を設定する。上述したように、nは、クラスタを識別するための識別子であるので、ラベルには、識別子として、既に使用した値(n)と異なる値(n+1)を設定する。
【0088】
図9Jは、2回目の第二の繰り返し処理において、第一の繰り返し処理の第二のラベリング処理が実施されたXY平面41の例を示す図である。
【0089】
制御部14は、第二のラベリング処理において、四角形で囲まれた第二の対象画素72のラベルに、第一の対象画素71のラベルに設定したのと同じ値「n+1」を設定する。ラベルに値「n+1」が設定された4個の画素42は、1つのクラスタ82(
図8)を構成する。
【0090】
制御部14は、このようにして、XY平面41の全領域において、第一の正規化画素情報を持つ画素42(すなわち、ラベルに「999」の値が設定された画素42)がなくなるまで、第二の繰り返し処理を実施する。
【0091】
本実施例では、制御部14は、第二の繰り返し処理を2回行って、
図8に示す2つのクラスタ81、82を得る。
図8では、一例として、
図9Jに示した画素42のラベルの値において、n=1としている。すなわち、クラスタ81は、ラベルに値「1」が設定された画素42で構成されており、クラスタ82は、ラベルに値「2」が設定された画素42で構成されている。
【0092】
なお、クラスタを識別するための識別子として画素42のラベルに設定される値(本実施例では、nとn+1)は、初期値を1として、新たに第二の繰り返し処理を実施するごとに1つずつ増加する値であることを標準とする。但し、上述したように、この値は、クラスタを識別するための識別子であるので、他の値と重複しなければ任意の値を用いることができる。
【0093】
次に、制御部14が、木屑燃料21への混入物が異物か否かを判定する手順について説明する。制御部14は、それぞれのクラスタ81、82の面積を算出し、クラスタ81、82の面積の大きさに基づいて、木屑燃料21への混入物が異物か否かを判定する。上述したように、木屑燃料21への混入物は、XY平面41においてクラスタで表される。制御部14は、混入物の大きさ、すなわちクラスタ81、82の面積に応じて、混入物が異物か否かを判定する。
【0094】
制御部14が、クラスタの面積を算出し、クラスタの面積の大きさに基づいて木屑燃料21への混入物が異物か否かを判定する処理について、
図10を参照して説明する。
【0095】
図10は、2つのクラスタ101、102を有するXY平面41の例を示す図である。
図10に示すXY平面41では、画素42ごとに、それぞれの画素42のラベルの値を示している。
【0096】
図10に示すXY平面41は、ラベルに値「1」が設定された画素42で構成されたクラスタ101と、ラベルに値「2」が設定された画素42で構成されたクラスタ102を持つ。なお、ラベルに値「0」が設定された画素42は、正規化画素情報が第一の基準値以上の値の画素、すなわち透過X線のエネルギーが大きい画素であり、木屑燃料21において混入物が存在しない部分に対応する画素である。
【0097】
制御部14は、クラスタ101とクラスタ102の面積を算出する。制御部14は、例えば、クラスタ101、102を構成する画素42の数をクラスタ101、102の面積とすることができる。
図10に示す例では、クラスタ101の面積(クラスタ101を構成する画素42の数)は、53であり、クラスタ102の面積(クラスタ102を構成する画素42の数)は、9である。
【0098】
制御部14は、クラスタの面積が予め定めた第二の基準値以上である場合には、そのクラスタは、異物を表すと判定し、クラスタの面積が第二の基準値より小さい場合には、そのクラスタは、異物を表していないと判定する。クラスタの面積が画素42の数で表される場合には、第二の基準値も画素42の数で表すことができる。本実施例では、一例として、第二の基準値を20とし、クラスタ101は、第二の基準値以上の面積(53)を有するので異物を表すと判定され、クラスタ102は、第二の基準値より小さい面積(9)を有するので異物を表さないと判定される。
【0099】
第二の基準値以上の面積を有するクラスタを、異物を表すと判定し、第二の基準値より小さい面積を有するクラスタを、異物を表さないと判定するのは、大きい混入物を異物と判定し、小さい混入物を異物でないと判定するからである。小さい混入物は、木屑燃料21を破砕する破砕機に影響を与えないとみなすことができるので、異物と判定しない。大きい混入物は、破砕機に影響を与える可能性が高いので、異物と判定する。第二の基準値は、破砕機に影響を与えるか否かを判定するための値であり、予め定められた値である。
【0100】
第一の基準値と第二の基準値は、異物検出装置10を実際に運用する前に実施したテスト運用または実験などにおいて、異物の検出後の工程で木屑燃料21を破砕するために使用する破砕機の条件等に応じて、適正な値に設定することができる。例えば、バイオマス発電プラントで使用する木屑燃料21については、プラントの破砕工程で使用される破砕機に影響を与える異物を検出することができるように、第一の基準値と第二の基準値を設定する。
【0101】
本実施例による、木屑燃料の異物検出装置10の運用例を示す。搬送装置22(
図1、2)の横幅、すなわちX方向の長さは、1,000mmであるとする。一塊の木屑燃料21の長さ、すなわちY方向の長さは、500~1,000mm程度である。X線検出部13が備えるX線検出素子は、画素の大きさが1mm四方であるため、1,000個程度がX方向に一次元に並んでいる。異物は、金属片や石などが多く、5,000mm
2(100mmx50mm)程度の大きさである場合が多い。
【0102】
木屑燃料の異物検出装置10は、第二の基準値以上の面積を有するクラスタを異物として検出すると、異物を検出したことを示す信号を出力し、次工程において異物を除去するなどの処置ができるようにする。例えば、異物検出装置10は、異物を検出したらアラームを発報し、木屑燃料21に異物が存在することを作業員に知らせることができる。
【0103】
なお、画素42のラベルを初期化するのに用いる値(本実施例では「999」または「0」)は、第一の正規化画素情報と第二の正規化画素情報とが区別できればよく、クラスタ番号として使用する値(本実施例では、「n」と「n+1」)と重複しなければ、任意の値を用いることができる。
【0104】
本実施例による、木屑燃料の異物検出装置10は、以上説明したような構成を備え、木屑燃料21への混入物の大きさと数が不明であっても、全ての混入物を確実に検出可能であり、混入物の大きさに応じて混入物が異物か否かを判定して、木屑燃料21に混入した異物を検出できる。
【0105】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
10…木屑燃料の異物検出装置、11…木屑燃料検出部、12…X線出力部、13…X線検出部、14…制御部、15…遮蔽カーテン、16…X線、21…木屑燃料、21a…始端部、21b…終端部、22…搬送装置、41…二次元画像、二次元空間、XY平面、42…画素、71…第一の対象画素、72…第二の対象画素、73…近傍画素、81、82、101、102…クラスタ。