(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100187
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F04B49/06 321B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004001
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸栄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕大
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA16
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA28
3H145BA33
3H145BA41
3H145CA21
3H145DA07
3H145DA33
3H145EA20
3H145EA37
(57)【要約】
【課題】予備機有りの場合であっても、断水を回避すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ポンプ装置は、設置台数から予備機のポンプを除いた台数の非予備機のポンプの定格電力に対応する電源容量とを有し、電源容量とマージン容量とを合計した合計容量が設置台数のポンプの定格電力より低い装置である。ポンプ装置は、設置台数のポンプのうち、運転中のポンプに関する運転情報を取得する。ポンプ装置は、運転情報に基づいて、全ての非予備機のポンプが最大能力に到達したと判定した場合に、設置台数のポンプを運転するための許可要求を発生する。ポンプ装置は、許可要求に応じた許可信号が入力されると、設置台数のポンプの消費電力を合計容量以下とし且つマージン容量を用いた運転を許容する許容時間の範囲で、設置台数のポンプを並列運転させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置台数から予備機のポンプを除いた台数の非予備機のポンプの定格電力に対応する電源容量と、前記電源容量に付加したマージン容量とを有し、前記電源容量と前記マージン容量とを合計した合計容量が前記設置台数のポンプの定格電力より低いポンプ装置であって、
前記設置台数のポンプのうち、運転中のポンプに関する運転情報を取得する取得部と、
前記運転情報に基づいて、全ての前記非予備機のポンプが最大能力に到達したと判定した場合に、前記設置台数のポンプを運転するための許可要求を発生する要求部と、
前記許可要求に応じた許可信号が入力されると、前記設置台数のポンプの消費電力を前記合計容量以下とし且つ前記マージン容量を用いた運転を許容する許容時間の範囲で、前記設置台数のポンプを並列運転させる制御部と
を備えたポンプ装置。
【請求項2】
前記運転情報は、前記ポンプを駆動するインバータの出力周波数と、前記ポンプの給水量とを含んでおり、
前記要求部は、前記運転情報に基づいて、前記出力周波数が上限値に到達した状態と、前記給水量が最大給水量に到達した状態とのいずれかの状態を検知したとき、前記最大能力に到達したと判定する、
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記許可要求を管理装置に通知する通知部と、
前記管理装置から前記許可信号を受信すると、前記受信した許可信号を前記制御部に入力する受信部と、
を備えた請求項1又は2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記許可要求の発生から一定時間内に前記許可信号が入力されない場合、前記並列運転を実行する、請求項3に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記要求部は、前記許可要求に基づき、前記許可信号の入力を操作者に促す情報を出力し、前記操作者の操作に応じて、前記許可信号を前記制御部に入力する、請求項1又は2に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台のポンプを有し、ポンプ毎または並列に運転可能なポンプ装置が広く知られている。この種のポンプ装置は、ポンプの予備機の有無が製品形式により決定されている。予備機が有る場合、交互運転される複数台のポンプのうち、少なくとも1台のポンプが交替的に停止状態となる。予備機がない場合、交互運転される複数台のポンプのうち、最大で全てのポンプが並列運転される。このようなポンプ装置は、設置先の需要を満たすように、予備機の有無に関する製品形式が選定され、設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-178248号公報
【特許文献2】特開2021-188519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のようなポンプ装置は、ポンプ設置当時において需要を満たすようにポンプを選定したとしても、ポンプ劣化や、建物の改築等の経年的原因によって、当初に想定したポンプ性能では給水を賄えなくなる可能性がある。予備機の有無に応じてポンプ装置が備える制御盤の電子部品の耐量が異なる。例えば、予備機有りのポンプ装置は、予備機を含めた並列運転に対応できない耐量の電子部品からなる制御盤から構成されている場合がある。そのため、例えば、予備機1台を含むポンプ2台からなるポンプ装置が、ポンプ1台にて給水を賄えない状況において、隣接する予備機に並列運転させることが困難である。
【0005】
本発明は、予備機有りの場合であっても、断水を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ポンプ装置は、設置台数から予備機のポンプを除いた台数の非予備機のポンプの定格電力に対応する電源容量と、前記電源容量に付加したマージン容量とを有し、前記電源容量と前記マージン容量とを合計した合計容量が前記設置台数のポンプの定格電力より低い装置である。前記ポンプ装置は、取得部と、要求部と、制御部とを備える。前記取得部は、前記設置台数のポンプのうち、運転中のポンプに関する運転情報を取得する。前記要求部は、前記運転情報に基づいて、全ての前記非予備機のポンプが最大能力に到達したと判定した場合に、前記設置台数のポンプを運転するための許可要求を発生する。前記制御部は、前記許可要求に応じた許可信号が入力されると、前記設置台数のポンプの消費電力を前記合計容量以下とし且つ前記マージン容量を用いた運転を許容する許容時間の範囲で、前記設置台数のポンプを並列運転させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予備機有りの場合であっても、断水を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る管理システムの一例を示す図。
【
図2】本実施形態に係るポンプ装置を示すブロック図。
【
図3】本実施形態に係るマージン容量を説明するための模式図。
【
図4】本実施形態における動作を説明するためのフローチャート。
【
図5】本実施形態の変形例における動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るポンプ装置について説明する。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えて枝番号を用いることもある。
【0010】
図1は、本実施形態に係る管理システムを例示するブロック図である。
図1に示すように、管理システムは、管理サーバ1、複数のポンプ装置3-n(nはインデックス)および複数の端末7-nを含む。
図1では、nが2である場合の構成を示しているが、これに限定する必要はなく、nは1以上であれば幾つでもよい。以下、特に区別しないときは単にポンプ装置3および端末7と記載することとする。管理システムでは、ポンプ装置3の運転情報、許可要求などを管理サーバ1を用いて管理するコンピュータシステムである。
【0011】
図1に示すように、管理サーバ1とポンプ装置3と端末7とは、ネットワークNWを介して、4G、5Gといった携帯通信網や、Wimaxなどの比較的遠距離の無線通信回線を介して接続される。また、ポンプ装置3と端末7とは、上述した無線通信回線に加え、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、赤外線通信といった比較的近距離の無線通信手段により接続されることを想定する。なお、ポンプ装置3と端末7とは、USBやケーブルによるLAN接続といった有線通信回線を介して接続されてもよい。
【0012】
管理サーバ1は、管理装置の一例であり、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、表示機器、入力機器及び通信機器を有するコンピュータである。管理サーバ1は、複数のポンプ装置3に関する各種データを管理するためのHDD、SSD、集積回路記憶装置等の大容量記憶装置を有する。当該大容量記憶装置をデータベースと呼ぶことにする。例えば、管理サーバ1は、ポンプ装置3に関する各種データをデータベースに記憶したり、ポンプ装置3の稼働状況を管理する。なお、管理サーバ1は、オンプレミスサーバに限らず、クラウドサーバであってもよい。
【0013】
ポンプ装置3は、例えば、建物に給水する機械装置(給水装置)である。ポンプ装置3は、例えば、受水槽からの定圧給水を想定した定圧給水型給水装置であるとする。なお、水道本管に直結され、水道本管を流れる水を直接増圧し、建物に設けられた蛇口やシャワーヘッド等の供給先に給水する、いわゆる直結増圧型給水装置でもよいし、直結直圧型でもよい。
【0014】
端末7は、点検作業員等のユーザが持ち運び可能な通信端末であり、例えば、ノートPC、モバイル端末(スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット)が挙げられる。なお、端末7は、ポンプ装置3の管理専用に構成された通信デバイスであってもよい。端末7から、ポンプ装置3を制御可能としてもよく、例えば、ポンプ装置3を制御するためのアプリケーション(以下、制御アプリケーションともいう)が搭載されてもよいし、Webブラウザからポンプ装置3を制御可能としてもよい。
【0015】
次に、第1の実施形態に係るポンプ装置3について
図2のブロック図及び
図3の模式図を参照して説明する。
【0016】
ポンプ装置3は、
図2に示すように、制御盤30とポンプ部60とを含む。ポンプ装置3は、他に、図示しない吸込配管と吐出配管とを含んでもよい。ポンプ装置3は、ポンプ部60により、吸込配管を介して一次側にある水を取り込み、吐出配管を介して二次側へ給水する。吸込配管は、例えば、水道本管から分岐された水道分管およびポンプ部60を接続する。吐出配管は、ポンプ部60とその二次側の給水先とを接続する。ポンプ装置3は、複数台のポンプ部60を含んでもよい。この場合に、ポンプ装置3は、複数台のポンプ部60を交互に駆動する交互運転、複数台のポンプ部60を同時に駆動する並列運転などを行うことができる。但し、ポンプ装置3は、図示しない物理スイッチに減台設定がされており、設置台数から予備機1台を除いた台数の非予備機の電源容量を有する仕様であることから、(設置台数-1台)以下のポンプを並列運転可能となっている。すなわち、ポンプ装置3は、設置台数分のポンプを長時間、並列運転するには電源容量が不足している仕様である。このため、仮にポンプ装置3が設置台数分のポンプを長時間、並列運転した場合には、消費電力が過大となることで、電源部39のノイズフィルタ等の電子部品が焼損するか、又は電源部39とインバータ34との間の漏電遮断器が回路を遮断してしまう。しかしながら、これに対し、一実施形態に係るポンプ装置3は、電源容量の余裕分であるマージン容量を設け、マージン容量を用いた運転を許容時間だけ許容する構成となっている。詳しくは、ポンプ装置3は、
図3(a)に設置台数が2台の例を示すように、設置台数から予備機のポンプを除いた台数の非予備機のポンプの定格電力に対応する電源容量と、電源容量に付加したマージン容量とを有している。マージン容量は、ポンプ装置3の設計や、ポンプ装置3に実装される電気/電子部品、回路パターンなどの電気的な耐量に余裕分を持たせることで付加することが可能である。当該ポンプ装置3は、電源容量とマージン容量とを合計した合計容量が設置台数のポンプの定格電力より低い装置であり、マージン容量を用いた運転が許容時間だけ許容される。ここで、合計容量に比較された「設置台数のポンプの定格電力」は、
図3(b)に示すように、比較例のポンプ装置の定格電力である。比較例のポンプ装置は、本実施形態のポンプ装置3とは異なり、予備機がなく、設置台数分のポンプを時間制限なしに並列運転可能である。一方、本実施形態のポンプ装置3は、設置台数のポンプの消費電力を合計容量以下とし且つマージン容量を用いた運転を許容する許容時間の範囲であれば、設置台数のポンプを並列運転可能な構成となっている。なお、
図3(a)中、予備機のポンプ1台の稼働電力(消費電力)をマージン容量に対応した大きさで示したが、これに限らず、予備機のポンプ1台の稼働電力は、合計容量を設置台数で除算した大きさとしてもよい。すなわち、予備機を含む設置台数分の各ポンプの稼働電力は、互いに略同一の大きさとしてもよい。例えば、設置台数が2台の場合、予備機のポンプ1台の稼働電力は、非予備機のポンプ1台の稼働電力と略同一の大きさとしてもよい。
【0017】
図2に戻り、制御盤30は、互いにバスを介して接続された近距離通信器31と、遠距離通信器32と、入力機器33と、インバータ34と、インタフェース35と、表示機器36と、記憶装置37と、プロセッサ38と、電源部39とを含む。
【0018】
近距離通信器31は、Bluetooth、Wi-FiまたはNFC等の無線通信の規格に準拠した無線通信モジュール311を搭載し、近距離無線通信を行なう。近距離通信器31は、USB等の有線通信の規格を用いた近距離通信を行なってもよい。近距離通信器31は、端末7との間で、近距離通信回線を介して、ポンプ装置3の運転モードの設定および各種データの送受信などを行なう。
【0019】
遠距離通信器32は、携帯通信網、WimaxおよびWi-Fi等の無線通信の規格を用いた遠距離通信を行なう。遠距離通信器32は、管理サーバ1または端末7との間で、遠距離通信回線を介して各種データの送受信を行なう。
【0020】
近距離通信器31および遠距離通信器32による無線接続の確立については、例えば、Bluetoothであれば、一般的なペアリング接続により無線接続が確立されればよく、Wi-Fiであれば、Wi-Fiのアクセスポイントに予め設定されたSSIDおよびパスワードを入力することで、無線接続が確立されればよい。なお、一度、ポンプ装置3と端末7との無線接続が確立していれば、端末7の無線機能をオンにしてポンプ装置3と接近することで、自動的に無線接続が確立されるものとする。
【0021】
入力機器33は、ユーザの指示を電気信号に変換する。入力機器33としては、例えば、操作パネルやタッチパネル、キーボード、マウス、各種スイッチ等が用いられればよい。なお、入力機器33としては、音声入力装置が用いられてもよい。入力機器33からの電気信号はバスを介してプロセッサ38に供給される。
【0022】
インバータ34は、ポンプ部60を作動する動力を発生する。具体的には、インバータ34は、ポンプ部60(のモータ)に所定周波数の交流電力を供給する。また、インバータ34は、プロセッサ38からインバータ制御信号を受け取る。インバータ34は、インバータ制御信号に応じて動作する。例えば、インバータ34は、運転停止信号または運転開始信号に相当するインバータ制御信号に応じて運転を停止または開始する。また、インバータ34は、回転数制御信号に相当するインバータ制御信号に応じてモータの回転数を制御する。
【0023】
具体的には、インバータ34は、図示しないコンバータ回路、平滑コンデンサ及びインバータ回路を含む。コンバータ回路は、電源部39内のノイズフィルタを介して供給される交流電力を取り込み整流することで直流電力に変換する。平滑コンデンサは、コンバータ回路によって出力される直流電力の電圧を平滑化し、略一定電圧の直流電力を得る。そして、インバータ回路は、平滑コンデンサによって得られた直流電力を制御盤30からのインバータ制御信号(回転数制御信号に相当)に応じた所定周波数の交流電力へと変換してモータに供給する。
【0024】
インタフェース35は、例えば、ポート等の入出力インタフェースである。インタフェース35は、例えば、制御盤30とポンプ部60とを接続し、ポンプ部60内の流量センサ及び圧力センサなどの各種センサから各種データを送受信する。
【0025】
表示機器36は、各種データを表示する。表示機器36としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ等の任意のディスプレイが用いられればよい。なお、表示機器36として、プロジェクタが用いられてもよい。
【0026】
記憶装置37は、各種データを記憶するROMやRAM、HDD、SSD、集積回路記憶装置等のメモリ装置である。記憶装置37は、物理的に一つのメモリ装置により実現されてもよいし、ポンプ装置3内に物理的に分離された複数のメモリ装置により実現されてもよい。以下、記憶装置37を単にメモリと呼ぶことにする。
【0027】
プロセッサ38は、CPUやマイクロプロセッサ等の演算装置である。プロセッサ38は、ASICやFPGA等の専用の回路により構成されてもよい。プロセッサ38は、記憶装置37に保存された各種プログラムを実行することで、ポンプ装置としての機能、例えば、取得部381と、要求部382と、制御部383と、通信部384との各機能を実現する。
【0028】
取得部381は、設置台数のポンプのうち、運転中のポンプに関する運転情報を取得する。ここで、運転情報は、例えば、ポンプを駆動するインバータ34の出力周波数と、流量センサにより計測された流量(ポンプの給水量)とを含んでいる。運転情報は、これに限らず、例えば、電源から制御盤30に供給される電圧、電流、電力、積算運転時間、運転回数、液面(電極)情報が挙げられる。液面情報は、例えば、満水、減水、渇水、異常無しといった液面の水位の情報である。なお、運転情報として、ポンプの吐出し圧力、加速時間、減速時間、PI制御設定値、運転周波数、最大運転周波数、最小運転周波数といった制御設定値を含んでもよい。また、運転情報として、例えば故障が発生した日時、故障個所、原因などの故障情報を含めてもよい。
【0029】
要求部382は、運転情報に基づいて、全ての非予備機のポンプが最大能力に到達したと判定した場合に、設置台数のポンプを運転するための許可要求を発生する。例えば、要求部382は、運転情報に基づいて、当該出力周波数が上限値に到達した状態と、当該給水量が最大給水量に到達した状態とのいずれかの状態を検知したとき、最大能力に到達したと判定する。
【0030】
制御部383は、許可要求に応じた許可信号が入力されると、設置台数のポンプの消費電力を合計容量以下とし且つ許容時間の範囲で、設置台数のポンプを並列運転させる。
【0031】
通信部384は、接続が確立した端末7との間、または遠距離通信器32を介して管理サーバ1との間で運転情報、許可要求などの送受信を行う。例えば、通信部384は、許可要求を管理装置としての管理サーバ1に通知する。また、例えば、通信部384は、管理装置から許可信号を受信すると、当該受信した許可信号を制御部383に入力する。通信部384は、通知部及び受信部の一例である。
【0032】
電源部39は、図示しないノイズフィルタを介してインバータ34に交流電力を供給し、制御盤30を構成する基板上の各要素31~33,35~38にノイズフィルタ及び電圧調整部を介して直流電力を供給する。ここで、ノイズフィルタは、交流電源のノイズを除去して出力するコイルやコンデンサ等を含む電子部品であり、予備機有りを想定した電気的な耐量を有している。但し、ノイズフィルタは、
図3中、電源容量にマージン容量を加えた合計容量でポンプを運転した場合、許容時間だけ耐えられる耐量を有している。一方、ノイズフィルタは、
図3中、設置台数の定格電力でポンプを運転した場合、電気的な耐量を超えて焼損してしまう。このような耐量については、電圧調整部も同様である。
【0033】
なお、制御盤30を構成する基板の枚数は任意に設計可能であり、各基板が近距離通信器31、遠距離通信器32、入力機器33、インバータ34、インタフェース35、表示機器36、記憶装置37、プロセッサ38及び電源部39のうちの何れの機器を物理的に装備するのかも任意に設計可能である。また、取得部381と、要求部382と、制御部383と、通信部384とは、一のプロセッサ38が担うものとしたが、物理的に分離した複数のプロセッサが分担してもよい。
【0034】
次に、以上のように構成されたポンプ装置の動作について
図4のフローチャートを参照して説明する。ここでは、設置台数が2台、予備機有りの仕様であり、通常の場合には並列運転できないが、上記構成によって一時的に並列運転を可能とした例について述べる。
【0035】
ステップST1では、ポンプ装置3の取得部381が、設置台数のポンプのうち、運転中のポンプに関する運転情報を取得する。運転情報は、インバータの出力周波数と、ポンプの給水量とを含んでいる。
【0036】
ステップST2では、要求部382が、運転情報に基づいて、全ての非予備機のポンプが最大能力に到達したか否かを判定する。例えば、要求部382は、運転情報に基づいて、当該出力周波数が上限値に到達した状態と、当該給水量が最大給水量に到達した状態とのいずれかの状態を検知したとき、最大能力に到達したと判定する。最大能力に到達した場合にはステップST3に進み、否の場合にはステップST1に戻る。
【0037】
ステップST3では、要求部382は、全ての非予備機に予備機を追加した設置台数のポンプを運転するための許可要求を発生する。
【0038】
ステップST4では、通信部384が、許可要求を管理サーバ1に通知する。管理サーバ1では、例えば、通知された許可要求に基づき、当該許可要求に応じた許可信号の入力を管理者に促す情報を出力する。また、管理サーバ1では、管理者の操作に応じて、許可信号の入力を受け付けると、当該許可信号をポンプ装置3に返信する。
【0039】
一方、ステップST5では、ポンプ装置3の制御部383が、許可信号が入力されたか否かを判定し、入力された場合にはステップST7に進み、否の場合にはステップST6に進む。なお、ステップST5の処理に並行して、ポンプ装置3の通信部384は、管理サーバ1から許可信号を受信した場合には、当該受信した許可信号を制御部383に入力する。
【0040】
ステップST6では、制御部383が、許可要求の発生から一定時間が経過したか否かを判定し、経過した場合には、許可要求の発生から一定時間内に許可信号が入力されない状況のため、ステップST7に進む。判定の結果、否の場合にはステップST5に戻る。
【0041】
ステップST7では、制御部383が、設置台数のポンプの消費電力を合計容量以下とし且つ許容時間の範囲で、設置台数のポンプを並列運転させる。
【0042】
ステップST8では、制御部383が、設置台数のポンプの並列運転を開始してから許容時間が経過したか否かを判定する。ステップST8の判定の結果、経過した場合にはステップST9に進み、否の場合にはステップST7に戻る。
【0043】
ステップST9では、予備機の運転を終了し、非予備機のポンプを運転させる。
【0044】
上述したように一実施形態によれば、ポンプ装置3は、設置台数から予備機のポンプを除いた台数の非予備機のポンプの定格電力に対応する電源容量とを有している。このポンプ装置3は、電源容量とマージン容量とを合計した合計容量が設置台数のポンプの定格電力より低い装置である。取得部381は、設置台数のポンプのうち、運転中のポンプに関する運転情報を取得する。要求部382は、運転情報に基づいて、全ての非予備機のポンプが最大能力に到達したと判定した場合に、設置台数のポンプを運転するための許可要求を発生する。制御部383は、許可要求に応じた許可信号が入力されると、設置台数のポンプの消費電力を合計容量以下とし且つマージン容量を用いた運転を許容する許容時間の範囲で、設置台数のポンプを並列運転させる。このように、設置台数から予備機のポンプを除いた台数の非予備機のポンプが最大能力に到達した場合でも、消費電力を合計容量以下とし且つ許容時間の範囲で、設置台数のポンプを並列運転できるので、予備機有りの場合であっても、断水を回避することができる。補足すると、給水状況、運転情報を管理サーバ1で監視し、給水を賄えない場合には管理サーバ1側での判定により、電気素子の耐えられる条件を上限に、一時的に予備機有りの設定から予備機無しの設定への変更を許可する構成により、ポンプ装置3では、緊急的な断水回避を行うことができる。
【0045】
また、一実施形態によれば、運転情報は、インバータの出力周波数と、ポンプの給水量とを含んでもよい。要求部382は、運転情報に基づいて、出力周波数が上限値に到達した状態と、給水量が最大給水量に到達した状態とのいずれかの状態を検知したとき、最大能力に到達したと判定してもよい。この場合、前述した効果に加え、運転情報に過不足無く、全ての非予備機のポンプが最大能力に到達したか否かを判定することができる。
【0046】
また、一実施形態によれば、通信部384が、許可要求を管理サーバ1に通知し、管理サーバ1から許可信号を受信すると、受信した許可信号を制御部383に入力してもよい。この場合、ポンプ装置3の近傍に作業員がいなくても、管理サーバ1側から許可信号を得ることにより、断水を回避することができる。
【0047】
また、一実施形態によれば、制御部383は、許可要求の発生から一定時間内に許可信号が入力されない場合、並列運転を実行してもよい。この場合、管理サーバ1側との通信環境が不調であっても、一定時間後には並列運転を実行して断水を回避することができる。
【0048】
(変形例)
一実施形態では、ポンプ装置3が許可要求を管理サーバ1に通知し、許可信号を管理サーバ1から受信したが、これに限定されない。例えば、ポンプ装置3は、許可要求に基づき、許可信号の入力を操作者に促す情報を出力し、操作者の操作に応じて、許可信号を制御部383に入力するように動作してもよい。この場合、例えば、前述したステップST4に代えて、
図5に示す如き、ステップST4aが実行される。ステップST4aでは、要求部382が、許可要求に基づき、許可信号の入力を操作者に促す情報を表示機器36から表示出力する。また例えば、ステップST5の処理に並行して、要求部382が、操作者による入力機器33の操作に応じて、許可信号を制御部383に入力する。このように変形しても、一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、例えば汎用のコンピュータに搭載されたプロセッサを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0051】
1・・・管理サーバ、3・・・ポンプ装置、7・・・端末、30・・・制御盤、31・・・近距離通信器、32・・・遠距離通信器、33・・・入力機器、34・・・インバータ、35・・・インタフェース、36・・・表示機器、37・・・記憶装置、38・・・プロセッサ、39・・・電源部、381・・・取得部、382・・・要求部、383・・・制御部、384・・・通信部。