(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100193
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】溶存炭酸ガス検出器
(51)【国際特許分類】
G01N 21/05 20060101AFI20240719BHJP
G01N 21/61 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01N21/05
G01N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004008
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】592086112
【氏名又は名称】株式会社ティ・アンド・シー・テクニカル
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】榎木 努
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA03
2G057AB02
2G057AC01
2G057AC03
2G057AD01
2G057BA05
2G057BD01
2G057DA03
2G057DC10
2G059AA01
2G059BB01
2G059BB04
2G059CC04
2G059DD13
2G059EE01
2G059HH01
(57)【要約】
【課題】 本発明は水溶液中の炭酸ガスを簡単に測定する方法で、安定して長期間連続作動が可能な検出器であって、透過膜を用いる方式であるが、炭酸ガスを測定する水溶液に接するように配置した透過膜に浸透した炭酸ガス・窒素・酸素や他のガスの中で炭酸ガスのみを選択的に直接測定する方法を用いた溶存CO
2検出器を提供する。
【解決手段】 溶液中のCO
2量の検出が、前記溶液が吸収したCO
2を、透過膜内に取り込んで直接前記透過膜内を中赤外線で検出するが、透過膜内のCO
2は溶液中から自由に出入りできる透過膜を経て分離し、CO
2ガスを得た後に、前記CO
2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする溶存CO
2検出器。
【選択図】
図2-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中のCO2量の検出が、前記溶液が吸収したCO2を、透過膜内に取り込んで直接前記透過膜内を中赤外線で検出するが、透過膜内のCO2は溶液中から自由に出入りできる透過膜を経て分離し、CO2ガスを得た後に、前記CO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする溶存CO2検出器。
【請求項2】
溶液中のCO2量の検出が、前記溶液が吸収したCO2を、透過膜内に取り込んで直接前記透過膜内を中赤外線で検出するが、前記透過膜を通過し、前記透過膜の外側へ出たCO2ガスの影響を避けるために、前記透過膜を通過し、前記透過膜の外側へ出たCO2ガスを前記溶存CO2検出器の外部へ排出して測定には用いず、前記透過膜の中に含まれるCO2ガスを中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする請求項1に記載の溶存CO2検出器。
【請求項3】
溶液中のCO2量の検出が、前記溶液の側から、CO2透過膜/保護部材の順で構成された複合膜を得て、前記溶液に含まれるCO2は前記透過膜を透過し、外部に排出されたCO2ガスは測定には用いず、前記透過膜の内部のCO2が、前記透過膜の内部で中赤外線を複数回往復させ、CO2ガスの中赤外線の吸収度を高めることで感度を上げたCO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする請求項1に記載の溶存CO2検出器。
【請求項4】
溶液中のCO2量の検出が、前記溶液の側から、反射板/CO2透過膜/保護部材の順で構成された複合膜を得て、前記溶液に含まれるCO2は前記透過膜を透過し、外部に排出されたCO2ガスは測定には用いず、前記透過膜の内部のCO2が、前記透過膜の内部で中赤外線を複数回往復させ、CO2ガスの中赤外線の吸収度を高めることで感度を上げたCO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする請求項1に記載の溶存CO2検出器。
【請求項5】
溶液中のCO2量の検出が、前記溶液の側から、CO2透過膜/反射板の順で構成された複合膜を得て、前記溶液に含まれるCO2は前記透過膜を透過し、外部に排出されたCO2ガスは測定には用いず、前記透過膜の内部のCO2が、前記透過膜の内部で中赤外線を複数回往復させ、CO2ガスの中赤外線の吸収度を高めることで感度を上げたCO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする請求項1に記載の溶存CO2検出器。
【請求項6】
溶液中のCO2量の検出が、前記溶液の側から、反射板/透過膜/反射板の順で構成された複合膜を得て、前記溶液に含まれるCO2は前記透過膜を透過し、外部に排出されたCO2ガスは測定には用いず、前記透過膜の内部のCO2が、前記透過膜の内部で中赤外線を複数回往復させ、CO2ガスの中赤外線の吸収度を高めることで感度を上げたCO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする請求項1に記載の溶存CO2検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
溶液に含まれるCO2(炭酸ガス)濃度を測る技術に関し、CO2透過膜を用い、その透過膜内部に含まれているCO2濃度を、赤外線の吸光度変化を用いて計測する検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水溶液に含まれる溶存炭酸ガスを測定する方法は複数あり、血液中炭酸ガス濃度測定の医療・医薬用に適した、いわゆるセバリングハウス型センサーや、測定したい水溶液を窒素ガスなどでバブリングを行って、窒素ガスと共にCO2(炭酸ガス)を気体として取り出し、非拡散型赤外線分析計を用いて濃度測定を行う方法があり、これらの技術を応用した検出器が多く販売されている。
【0003】
しかしながら、これらの検出器は精度が高いものの、長期間連続した測定など工業計器として採用するには、耐久性や安定性及び消耗品の交換など人手を簡略化する近年のメンテナンスフリーへの対応が困難である。
そこで、常時行う作動監視や頻繁な校正及びメンテナンスを必要とする医薬・製薬などに用いる検出器と異なったコンセプトを目的として、多少乱雑な扱いや手入れを怠ってもある程度の作動が継続可能で、かつ安価で取り扱いやすい溶存炭酸ガス検出器を目的とした各種溶液中の溶存炭酸ガスを測定する工業計器類として開発が行われている。
その開発目標としては、第一に安価であること、第二に構造が簡単であること、第三に長期間安定して作動すること、第四にメンテナンスが容易なこと、第五に工業計器類に組み込みができることを掲げられていた。
【0004】
尚、溶液中の溶存炭酸ガスは、
図1に示すように、溶液のpHによって、その態様が推移することが知られている。本発明に係る溶存炭酸ガス検出器は、CO
2を検出する装置であって、「炭酸水素イオン(重炭酸イオン)」や「炭酸イオン」の測定はできない。
【0005】
そこで、すべての態様の炭酸を測定したい場合は、硫酸やリン酸などの酸を測定溶液に添加してpHを4以下にすることで、炭酸水素イオン(重炭酸イオン)と炭酸イオンはCO2に変化し、IC(Inorganic Carbon)として測定が可能となるので、本検出器のような溶存炭酸ガス検出器には酸注入回路を設ければすべての合算された炭酸を測定することが可能となることが知られている。例えば、特許文献1では、「全有機炭素測定装置」の一構成要素としての溶存炭酸ガス検出器が開示されている。
【0006】
ところで、従来の測定方法として、以下に述べる方法が知られている。
1-1.ランベルト・ベール方式
測定溶液に硫酸などの酸を添加してpHを2程度まで下げ、窒素ガスなどのCO2を含まないガスでバブリングを行い、CO2ガスを水中から追い出し、NDIR(非拡散型赤外線分析)などでCO2ガス量を測定する方法である。
この方式の特徴は、透過膜を必要としない点であるが、その欠点としてバブリング用ガスの定流量制御と除湿機構などが複雑になる点と高価である点が挙げられる。
【0007】
1-2.セバリングハウス型
電位差を用いる方法であり、測定溶液中のCO2を、薄い隔膜を通して反対側の電解液に移し、電解液中のpHを測定することで、CO2濃度と比例した電位が得られる。
一般的な方法で多くの測定器に用いられる方法であるが、欠点として取り扱いが難しく、メンテナンスの頻度と価格が高価である点が挙げられる。
特にイオンが電解液に流入するのを防がなければならず、イオンの移送を起こさせない膜が必要である。
【0008】
1-3.導電率型
上記1-2の「セバリングハウス型」と同じ考え方であるが、電解液ではなく超純水を用いた方式であり、膜を透過したCO2が超純水に溶解すると超純水の導電率がCO2濃度に比例して上昇するので、その導電率変化を捉えることで、CO2濃度を求める方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は水溶液中の炭酸ガスを簡単に測定する方法で、安定して長期間連続作動が可能な検出器であって、透過膜を用いる方式であるが、炭酸ガスを測定する水溶液に接するように配置した透過膜に浸透した炭酸ガス・窒素・酸素や他のガスの中で炭酸ガスのみを選択的に直接測定する方法で、炭酸ガスの吸光度が高い4.3μmの波長を用いる赤外線分析方法を用いている。
又、測定感度向上のために、表面のみならず透過膜の内部及び膜を透過した測定光を再び膜内部へ戻す機構を備えた溶存炭酸ガス検出器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような状況に鑑み、本発明の第1の態様は、溶液中のCO2量の検出が、前記溶液が吸収したCO2を、透過膜内に取り込んで直接前記透過膜内を中赤外線で検出するが、透過膜内のCO2は溶液中から自由に出入りできる透過膜を経て分離し、CO2ガスを得た後に、前記CO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする溶存CO2検出器である。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様における溶液中のCO2量の検出が、前記溶液が吸収したCO2を、透過膜内に取り込んで直接膜内を中赤外線で検出するが、前記透過膜を通過し、前記透過膜の外側へ出たCO2ガスの影響を避けるために、前記透過膜を通過し、前記透過膜の外側へ出たCO2ガスを前記溶存CO2検出器の外部へ排出して測定には用いず、透過膜の中に含まれるCO2ガスを中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする溶存CO2検出器である。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1の態様における溶液中のCO2量の検出が、前記溶液の側から、CO2透過膜/保護部材の順で構成された複合膜を得て、前記溶液に含まれるCO2は前記透過膜を透過し、外部に排出されたCO2ガスは測定には用いず、前記透過膜の内部のCO2が、前記透過膜の内部で中赤外線を複数回往復させ、CO2ガスの中赤外線の吸収度を高めることで感度を上げたCO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする溶存CO2検出器である。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1の態様における溶液中のCO2量の検出が、前記溶液の側から、反射板/CO2透過膜/保護部材の順で構成された複合膜を得て、前記溶液に含まれるCO2は前記透過膜を透過し、外部に排出されたCO2ガスは測定には用いず、前記透過膜の内部のCO2が、前記透過膜の内部で中赤外線を複数回往復させ、CO2ガスの中赤外線の吸収度を高めることで感度を上げたCO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする溶存CO2検出器である。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1の態様における溶液中のCO2量の検出が、前記溶液の側から、CO2透過膜/反射板の順で構成された複合膜を得て、前記溶液に含まれるCO2は前記透過膜を透過し、外部に排出されたCO2ガスは測定には用いず、前記透過膜の内部のCO2が、前記透過膜の内部で中赤外線を複数回往復させ、CO2ガスの中赤外線の吸収度を高めることで感度を上げたCO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする溶存CO2検出器である。
【0016】
本発明の第6の態様は、第1の態様における溶液中のCO2量の検出が、前記溶液の側から、反射板/透過膜/反射板の順で構成された複合膜を得て、前記溶液に含まれるCO2は前記透過膜を透過し、外部に排出されたCO2ガスは測定には用いず、前記透過膜の内部のCO2が、前記透過膜の内部で中赤外線を複数回往復させ、CO2ガスの中赤外線の吸収度を高めることで感度を上げたCO2ガスの中赤外線の吸収度を用いて定量分析を連続測定することを特徴とする溶存CO2検出器である。
【発明の効果】
【0017】
全有機炭素計(TOC計)の炭素検出部に用いることで、全炭素量(TC)、無機炭素量(IC)、全有機炭素量(TOC)が直接測定でき、揮発性有機物の測定も可能である。
又、従来のセバリングハウス式DCO2計などと比較して、定期的交換部品もなく耐久性が高いために長期間安定した作動が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】溶液のpHによる溶存炭酸ガスの状態推移を示す図である。
【
図2-1】本発明に係る溶液中のCO
2量を計測する溶存CO
2検出器の実施態様を示す模式図で、(a)は本発明に係る溶存CO
2の検出原理の説明図、(b)は本発明に係る溶存CO
2検出器10aの実施態様の一例を示す図、(c)は本発明に係る溶存CO
2検出器10bの実施態様の一例を示す図である。
【
図2-2】本発明に係る溶液中のCO
2量を計測する溶存CO
2検出器の別の実施態様を示す模式図で、(d)は本発明に係る溶存CO
2検出器10cの実施態様の一例を示す図、(e)は本発明に係る溶存CO
2検出器10dの実施態様の一例を示す図である。
【
図2-3】本発明に係る溶液中のCO
2量を計測する溶存CO
2検出器の別の実施態様を示す模式図で、(f)は本発明に係る溶存CO
2検出器10eの実施態様の一例を示す図、(g)は本発明に係る溶存CO
2検出器10fの実施態様の一例を示す図である。
【
図2-4】本発明に係る溶液中のCO
2量を計測する溶存CO
2検出器の別の実施態様を示す模式図で、(h)は本発明に係る溶存CO
2検出器10gの実施態様の一例を示す図である。
【
図3】本発明に係る検出器を用いた炭素濃度と計測値の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る検出器の特徴は、従来の分離膜を用い、分離膜を透過してきたCO
2ガスを抽出して測定する方法とは異なり、
図2-1(a)に示すように、測定溶液MSに含まれるCO
2から透過膜1を通過したCO
2ガスを計測するのではなく、透過膜1に入り込んだCO
2ガスを、透過膜内部で直接測定する方法であって、従来のような分離膜を通過したCO
2ガスは測定に用いず、検出器系外に排出し、透過膜内部に存在するCO
2のみを測定する方法である。
【0020】
この透過膜内部でのCO2ガス測定は、先に述べた「ランベルト・ベール方式」の応用であるが、従来の知られている分離膜の厚みは0.1mm以下のきわめて薄い膜(薄膜)であり、そのような薄膜では、本発明のように膜内部に存在するCO2の測定は、CO2量が少なすぎて測定ができない。
そこで、本発明者は、膜の厚みは、少なくとも1.0mm程度の厚みまでの透過膜が望ましいことを知見した。なお、この厚みの範囲は、用いる透過膜の材質により変化する。
【0021】
さらに、
図2-1(b)に示す本発明に係る検出器10aは、発光部Leとして赤外線発光ランプを用い、赤外線を透過膜1に照射すると、赤外線は表面反射のほか透過膜1の内部へ透過した赤外線が透過膜1の内部で乱反射を起こし、この透過膜1の内部で乱反射した赤外線を集約して受光部Lrで受光し、検出することを特徴としている。
【0022】
又、「ランベルト・ベールの法則:A(吸光度)=a(吸光係数)×b(光路長)×c(試料濃度)」を利用して、透過膜1に含まれたCO2の量に応じて4.3μmの赤外線吸収度が変化することを用いると、CO2がゼロの時を基準としてCO2量が多ければ赤外線の吸収量も多くなるため、この吸収量からCO2濃度を導き出す方法を用いている。
【0023】
しかしながら、1回の反射では乱反射する量が少なく十分な感度が得られない。そこで、感度を上げるために、「光学積分球の原理」を応用し、反射板2と透過膜1の間を複数回往復した赤外線を集光する方法を用いて十分な感度を得る、
図2-1(c)に示す検出器10bがある。
ここで用いた反射板2は、反射効率と劣化を考慮して金メッキを施してあるものが望ましい。
【0024】
ところで、透過膜1の膜内部のCO2を直接計測する利点としては、今までの透過膜1を通過したCO2を計測する方式では、測定水の膜に対する圧力が1~10cm/H2Oと微圧で用いる必要があり、水圧によってCO2の透過量が大きく依存するので、水圧を安定して一定に制御可能な室内実験測定以外は使いにくいという弱点を有している点にある。
【0025】
一方、本発明に係る検出器は、透過膜内に存在するCO
2のみを測定するので、膜内のCO
2はボイルシャルルの法則で決まり、測定溶液の水圧の影響は受けにくい構造となっている。
又、実施に際し、CO
2ガスが検出機構に影響がないよう保護部材として赤外線を透過する薄いサファイアガラス(赤外線透過ガラス)ItGを用いて透過膜1と検出機構(発光部Le+受光部Lrから構成)を遮蔽した、
図2-2(d)に示す検出器10cとしても良い。
ただ、サファイアガラスItGと透過膜1の接着界面は、浸透圧によって、サファイアガラスItGと透過膜1との間にCO
2ガスが入り込み、透過膜1との間に気泡ができたり、透過膜1が剥離する現象が生じることがあり、接着技術の向上以外に、その対処法として以下の手法を用いることも可能である。
【0026】
サファイアガラスItGと透過膜1を並べただけではCO
2ガスの逃げ道がなくなり、浸透圧によって透過膜1が膨らんで測定ができなくなるので、CO
2ガスを逃散させる必要があり、
図2-2(e)に示す検出器10dに見られるように逃げ道としての間隙S(幅w)が必要となる。
その間隙Sの幅wを0.2mm以上と広くすると大気の影響が有ること、および人間の呼気が掛かると同様に影響が出るので注意が必要である。
【0027】
そこで、透過膜1と検出機構を赤外線透過ガラス(例えば、サファイアガラス)ItGで仕切り、その透過膜1とサファイアガラスItG間の間隙Sの幅wを0.1mm程度設けることで、透過してきたCO2を外部に逃がすCO2逃散機構を備える。その間隙Sの幅wは、厚み0.1mm程度のメッシュ材を用いると、CO2逃散機構のみならず、組み立ても容易となる。尚、赤外線透過ガラス(例えば、サファイアガラス)と透過膜が剥離できないような強力な接着を可能とすることができればこの機構の省略は可能である。
【0028】
又、他の対応策として、
図2-3(f)に示すような検出器10eで有っても良い。
この検出器10eは、上記問題を解決するために、窒素またはCO
2フリーガス等をスイープガスSWgに用い、透過膜表面をスイープして透過したCO
2ガスを検出器外部へ追い出すことで、透過したCO
2ガスが赤外線測定機構に影響を与えない機構とするものである。
【0029】
この方法における具体的な構造を、
図2-3(g)に示す。
検出器10fは、透過膜1を介して、2つの密閉空間、即ち、CO
2の検出作業を行う検出部11と、測定溶液MSを貯留する溶液部12とを備え、検出部11には、以下の構成からなるCO
2検出機構が備えられる。つまり、赤外線を照射する発光部Leと、CO
2により反射された赤外線を受ける受光部Lr、及び透過膜1を抜け出てきたCO
2ガスを検出部11の外部に排出するスイープ装置(スイープガス導入管21、排出管22、及び排気ポンプPで構成)を有している。一方、溶液部12には、測定溶液MSが貯留され、その測定溶液の流入口31、流出口32を備える。
【0030】
図2-3(g)に示す検出器10fにおけるスイープガスSWgの流量は、測定値に影響を与えない範囲において設定できるが、10~40cm
3/分が好ましく、20cm
3/分が推奨される。
ただし、スイープガスSWgを加圧で注入すると測定溶液側の水圧を上回る場合は、透過膜1に対して逆浸透となり、CO
2ガスの抽出ができないので本検出器の場合は負圧による吸引方式が望ましく、実施例では吸出し方式を採用した。
使用するスイープガスSWgは、窒素ガスや、CO
2フリーガス(例えば、CO
2フリーエア)、または
図2-3(g)のようにソーダ石灰23を用いて大気24を吸入しCO
2フリーガスとしてスイープガスSWgに利用する方法もある。
【0031】
また、高真空になると膜が破損するので微差圧で作動するように配管径などに気を付ける必要がある。基本的に最低量のスイープガスを流せば透過したガスの影響は無いが、実際には制作構造にもより浮遊する微量CO2の影響があるので本検出器でのスイープガス流量の影響を把握しておくと良い。
【0032】
次に、測定感度を上げるため、
図2-4(h)の検出器10gのように、透過膜1の検出部側に赤外線反射板2、及び測定溶液側に赤外線反射板3を設置しても良い。
このような赤外線反射板3を設ける利点は、透過膜1が1mm以上だと赤外線が通過しないので効果がないが、測定スピードを上げるために膜を薄くすると透過した赤外線が測定溶液に吸収されてしまうので、この透過した赤外線を透過膜に戻すことで感度を上げることができる点である。
【0033】
さらに、透過膜の利用に関しては測定溶液(純水)の水圧による影響を考慮することも重要となる。この水圧は、透過膜の寸法と厚さなどで最大圧力が決まるが透過膜の特性上から500mmH
2O以上の高圧力を採用する場合は、透過膜に補強機構を設ける必要がある。
また、水温変化が透過膜の透過係数に影響を与えるが、その温度補償については、本発明に係る検出器では、機械的に補償はできないので、より高い精度を求める場合は使用する透過膜によって係数が異なるため実際に採用する膜の特性を計測してソフトウエアによる演算や電気回路によって測定データの補正を行うことで温度補償する。
ところで、
図2-1~
図2-4に示す本発明に係る検出器10a~10gは、CO
2透過膜内のCO
2を測定することを主な目的としているため、波長4.3μmの赤外線のCO
2が吸収する原理や吸収による減衰量測定電気回路及びデジタル表示回路は省略したが、本検出器はデジタル表示器を内蔵しても良く、その場合にはゼロ点校正ボタンを装備し、ゼロ水(超純水や酸を加えてバブリングする方法)校正で作動するよう設定する。
【実施例0034】
図2-2(e)に示す溶存CO
2検出器10d(DCO
2検出器とも称す)における測定値の検証試験を実施した。
既知の溶存CO
2濃度(6、86、120、192、380[mg/L])に調整済みの測定溶液を準備し、所定時間の経過ごとに、DCO
2検出器10dを低濃度の測定溶液から順に移し替えて設置し、溶存CO
2濃度の測定値変化がサチュレートするのに必要な時間(設定時間として10分間)、その測定溶液に浸漬、維持して濃度測定を行った。
【0035】
その結果を
図3に示す。
測定結果から90%反応速度はおおよそ5分程度で、測定値も基準液で校正することで精度は数%程度には調整可能であった。