(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100195
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】超純水製造装置、超純水の製造方法、及び超純水の製造プログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240719BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004010
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】飯山 真充
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA17
4D006GA32
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4D006PB28
4D006PC02
4D006PC03
(57)【要約】
【課題】pH調整剤が添加された被処理水を膜処理装置の系内に還流させてもpH調整剤の系内濃縮を抑制できる。
【解決手段】超純水の製造方法は、第2逆浸透膜装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、第2逆浸透膜装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に処理水の他の一部をpH調整剤の添加位置に対する上流側に還流する第1工程(ステップS11~S13)と、処理水が還流した後の被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、第2逆浸透膜装置に供給する被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる第2工程(ステップS14~S15)と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、前記膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に前記処理水の他の一部を前記pH調整剤の添加位置に対する上流側に還流する第1工程と、
前記処理水が還流した後の前記被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、前記膜処理装置に供給する前記被処理水に対する前記pH調整剤の添加量を低下させる第2工程と、
を含む、超純水の製造方法。
【請求項2】
前記指標は、前記被処理水のpHであり、
前記第2工程では、前記処理水が還流した後の前記被処理水のpHの塩基性が予め設定された閾値よりも高い場合、前記膜処理装置に供給する前記被処理水に対する前記pH調整剤の添加量を低下させる、
請求項1に記載の超純水の製造方法。
【請求項3】
前記膜処理装置によって実行される膜処理は、逆浸透膜処理である、
請求項1又は2に記載の超純水の製造方法。
【請求項4】
膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、前記膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に前記処理水の他の一部を前記pH調整剤の添加位置に対する上流側に予め設定された還流量で還流する第1工程と、
前記膜処理装置への前記処理水の還流量を前記第1工程よりも増加させ、前記膜処理装置に供給する前記被処理水に対する前記pH調整剤の添加量を低下させる第2工程と、
を含む、超純水の製造方法。
【請求項5】
供給される被処理水に膜処理を施す膜処理装置と、
前記膜処理装置の上流側に配置され、前記被処理水の塩基性を高めるpH調整剤を前記被処理水に添加するpH調整剤添加装置と、
前記膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出す配管と、
前記処理水の他の一部を前記pH調整剤添加装置に対する上流側に還流する還流管と、
還流後の前記被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、前記膜処理装置に供給する前記被処理水に対する前記pH調整剤の添加量を低下させるように前記pH調整剤添加装置を制御する制御装置と、
を備える、超純水製造装置。
【請求項6】
膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、前記膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に前記処理水の他の一部を前記pH調整剤の添加位置に対する上流側に還流する第1処理と、
前記処理水が還流した後の前記被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、前記膜処理装置に供給する前記被処理水に対する前記pH調整剤の添加量を低下させる第2処理と、
をプロセッサに実行させる、超純水の製造プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超純水製造装置、超純水の製造方法、及び超純水の製造プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超純水製造装置の製造ラインに含まれる純水製造装置は、所定の目的のために実行される膜処理を、被処理水(すなわち、処理対象水)に対して施す膜処理装置系を備える。具体的な膜処理としては、例えば、逆浸透膜分離(RO)処理、限外濾過膜処理(UF)、マイクロフィルター処理(MF)、ナノフィルター処理(NF)、電気脱イオン膜処理(EDI)等がある。
【0003】
それぞれの膜処理装置系は、系内に含まれる複数の膜処理装置によって多段に構成され得る。膜処理装置に被処理水が供給されると、所定の膜処理が施された濾過水としての透過水と、濾過されることなく排出される濃縮水とが、処理水として得られる。なお、本明細書では、濃縮水と透過水とは、いずれも被処理水として使用される。
【0004】
膜処理装置系として、例えば特許文献1の純水製造装置では、原水供給路と、供給ポンプと、原水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜を備える逆浸透膜分離処理装置が開示されている。また、特許文献1では、逆浸透膜の透過水路から分岐され透過水の一部を原水供給路に還流可能な循環水路としての還流管が設けられる。そして、原水等の温度が基準温度を超えた場合に循環水路が開かれると共に、透過水の流量が所定の基準流量範囲から外れた場合に、供給ポンプによる原水の供給量が制御される。特許文献1では、水温が上昇した場合であっても、純水の水質を低下させず、かつ、純水の生産量を過剰にさせないことが可能であるとされている。
【0005】
一方、純水製造装置では、ホウ素、シリカ等の弱電解質のイオン化を促進し、逆浸透膜での除去率を上げる目的のため、被処理水の液性(pH)を塩基性に調整する工程、すなわち、pHを高める処理が行われる。具体的には、被処理水に水酸化ナトリウム(NaOH)等のpH調整剤が添加される。
【0006】
例えば、特許文献2では、膜処理装置系における第1段目の膜処理装置としての逆浸透膜分離装置(第1RO装置)を透過した第1の透過水は、塩基性のpH調整剤が添加されることによって、pH8.5以上に調整される。塩基性に調整された第1の透過水は、第1RO装置の後段に配置された逆浸透膜分離装置(第2RO装置)に、加圧された状態で供給されることによって脱塩される。pH調整によって、シリカ、ホウ素及び残留する炭酸ガスは、イオン化状態で除去されると共に、塩基性条件下で除去可能な不純物が除去できるとされている。
【0007】
また、特許文献2では、水回収率を高める目的で、第2RO装置の濃縮水は、別の処理装置において酸化処理が施された後、第1RO装置の上流側へ還流される。還流された第2RO装置の濃縮水は、第1RO装置に再度供給される。
【0008】
また、特許文献3では、活性炭処理等の前処理が施された被処理水としての原水は、pH6以下に調整して脱気処理された後、膜処理装置系における第1段目の膜処理装置としての逆浸透膜分離装置(第1RO装置)に通水される。第1RO装置の透過水は、水酸化ナトリウム(NaOH)等のpH調整剤が添加されることによって、塩基性に調整される。塩基性に調整された第1RO装置の透過水は、第2段目の逆浸透膜分離装置(第2RO装置)及び第3段目の逆浸透膜分離装置(第3RO装置)に順次通水される。
【0009】
また、特許文献3では、原水中に含まれる炭酸成分を二酸化炭素(CO2)の形態で効率的に除去する目的で、第2RO装置の濃縮水と第3RO装置の濃縮水とは、それぞれの透過水と共に膜脱気装置によって脱気処理が施される。脱気処理が施された第2RO装置の濃縮水と第3RO装置の濃縮水は、第1RO装置の上流側へ還流されると共に、第1RO装置に再度供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-163254号公報
【特許文献2】特開2000-015257号公報
【特許文献3】特開2000-061464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、pH調整剤が添加された被処理水が膜処理装置で処理が施された後、膜処理装置から得られる処理水が膜処理装置の上流側へ還流すると、膜処理装置の系内へのpH調整剤の還流量が増大する。このため、pH調整剤が系内で濃縮される状態、すなわち、系内濃縮が生じる。系内濃縮が進行することによって被処理水の塩基性が高くなると、膜処理装置の膜の詰まりや、透過水のpHに設計範囲を超える変動が生じ易い。特に、系内濃縮が生じると、pH調整剤が添加された被処理水が直接供給される膜処理装置だけでなく、同じ系内に配置されpH調整剤が添加された被処理水が直接供給されない他の膜処理装置においても、膜の詰まり等の思いがけない不具合が連動して発生し得る。
【0012】
この点、特許文献1では、水温が上昇した場合における純水の水質及び生産量が改善されるだけであると共に、pH調整剤の系内濃縮については何ら検討されていない。また、特許文献2及び特許文献3においても、pHを塩基性に調整するpH調整が行われることが開示されているだけであると共に、pH調整剤の系内濃縮については何ら検討されていない。
【0013】
本開示は、pH調整剤が添加された被処理水を膜処理装置の系内に還流させてもpH調整剤の系内濃縮を抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第一態様に係る超純水の製造方法は、膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に処理水の他の一部をpH調整剤の添加位置に対する上流側に還流する第1工程と、処理水が還流した後の被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、膜処理装置に供給する被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる第2工程と、を含む。
【0015】
第一態様では、第1工程で、膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤が添加される。また、膜処理装置の処理水の一部が、下流側に送り出されると共に、処理水の他の一部が、pH調整剤の添加位置に対する上流側に還流される。また、第2工程で、処理水が還流した後の被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、膜処理装置に供給される被処理水に対するpH調整剤の添加量が低下する。
【0016】
第一態様では、処理水が還流した後の被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、膜処理装置に供給する被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる。このため、pH調整剤が添加された被処理水を膜処理装置の系内に還流させても、pH調整剤の系内濃縮を抑制できる。
【0017】
第二態様では、第一態様において、指標は、被処理水のpHであり、第2工程では、処理水が還流した後の被処理水のpHの塩基性が予め設定された閾値よりも高い場合、膜処理装置に供給する被処理水に対する前記pH調整剤の添加量を低下させる。
【0018】
第二態様では、pH調整剤の添加位置に対する上流側へ還流する処理水のpHの塩基性の高まりに応じて、被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる。このため、pH調整剤が添加された被処理水を膜処理装置の系内に還流させても、pH調整剤の系内濃縮を抑制できる。
【0019】
第三態様では、第一態様又は第二態様において、膜処理装置によって実行される膜処理は、逆浸透膜処理である。
【0020】
第三態様によれば、特に、逆浸透膜処理装置の系内濃縮を効果的に抑制できる。
【0021】
第四態様に係る超純水の製造方法は、膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に処理水の他の一部をpH調整剤の添加位置に対する上流側に予め設定された還流量で還流する第1工程と、膜処理装置処理水への還流量を増加させる場合、膜処理装置に供給する被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる第2工程と、を含む。
【0022】
第四態様では、第1工程で、膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤が添加される。また、膜処理装置の処理水の一部が、下流側に送り出されると共に、処理水の他の一部が、pH調整剤の添加位置に対する上流側に還流される。また、第2工程で、処理水の還流量を第1工程よりも増加させ、膜処理装置に供給される被処理水に対するpH調整剤の添加量が低下する。
【0023】
すなわち、pH調整剤の添加位置に対する上流側への処理水の還流量の増加に応じて、被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる。このため、pH調整剤が添加された第一処理水を膜処理装置の系内に還流させても、pH調整剤の系内濃縮を抑制できる。
【0024】
第五態様に係る超純水製造装置は、供給される被処理水に膜処理を施す膜処理装置と、膜処理装置の上流側に配置され、被処理水の塩基性を高めるpH調整剤を被処理水に添加するpH調整剤添加装置と、膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出す配管と、処理水の他の一部をpH調整剤添加装置に対する上流側に還流する還流管と、還流後の被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、膜処理装置に供給する被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させるようにpH調整剤添加装置を制御する制御装置と、を備える。
【0025】
第五態様では、第一態様と同様、pH調整剤が添加された第一処理水を膜処理装置の系内に還流させても、pH調整剤の系内濃縮を抑制できる。
【0026】
第六態様に係る超純水の製造プログラムは、膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に処理水の他の一部をpH調整剤の添加位置に対する上流側に還流する第1処理と、処理水が還流した後の被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、膜処理装置に供給する被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる第2処理と、をプロセッサに実行させる。
【0027】
第六態様では、第一態様と同様、pH調整剤が添加された第一処理水を膜処理装置の系内に還流させても、pH調整剤の系内濃縮を抑制できる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、pH調整剤が添加された被処理水を膜処理装置の系内に還流させてもpH調整剤の系内濃縮を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態に係る超純水製造装置を説明するブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る純水製造装置を説明するブロック図である。
【
図3】測定対象である弱電解質がホウ素である場合における被処理水中のpHと処理水のホウ素除去率との関係を説明するグラフである。
【
図4】被処理水中のホウ素濃度と処理水中のホウ素濃度1ppbを得るために必要なpHとの関係を説明するグラフである。
【
図5】本実施形態に係る超純水製造装置のプロセッサのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態に係る超純水製造装置を用いた超純水の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図7】本実施形態の変形例に係る超純水製造装置を用いた超純水の製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本開示の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや平面寸法は、以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0031】
<超純水製造装置>
まず、本実施形態に係る純水製造装置1を備える超純水製造装置2を、
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示すように、超純水製造装置2は、被処理水がそれぞれ通水される一次純水システム21と二次純水システム22とを備える。
【0032】
(被処理水)
被処理水としては、地下水、河川水、市水、その他の工業用水等の原水、又は半導体工場や液晶工場等の使用済み超純水を回収した回収水が用いられる。被処理水中のホウ素濃度は、例えば、5μg/L~200μg/L、特に10μg/L~100μg/L程度が好適である。また被処理水のpHは、中性付近、例えばpH5~8の範囲であることが好ましい。
【0033】
なお、本明細書における「5μg/L~200μg/L」のような数値範囲の表記は、下限値及び上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「5μg/L~200μg/L」とは「5μg/L以上200μg/L以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0034】
被処理水として回収水を用いる場合、回収水は、イオン交換処理又は中和処理によって、pHを例えばpH5~8の範囲に調整されることが好ましい。被処理水は、原水又は回収水を、前処理システム又はこれと同様の装置で処理したものであってもよい。前処理システムは例えば、凝集沈殿装置、加圧浮上装置、ろ過装置、活性炭装置等により構成され、原水中の濁質分等を除去する。
【0035】
また、被処理水の全炭酸(CO2+HCO3
-+CO3
2-)濃度は、3mg/L~50mg/Lであることが好ましく、30mg/L以下であることがより好ましい。全炭酸濃度は、CO2換算濃度である。全炭酸濃度が3mg/L~50mg/Lであることによって、逆浸透膜装置への供給水中の炭酸イオン濃度又は炭酸水素イオン濃度が低減される。結果、逆浸透膜装置への供給水のpHを調整するために必要とされるpH調整剤又はpH調整のためのスケール防止剤の量を低減できる。
【0036】
そのため、
図2に示すように、一次純水システム21の純水製造装置1は、第1逆浸透膜装置11の前段、すなわち上流側に被処理水中の炭酸ガスを除去する脱炭酸装置を備えることが好ましい。脱炭酸装置としては、炭酸ガスを除去できるものであれば特に限定されず、脱気塔、脱気膜装置、真空脱気装置等を使用できる。
【0037】
なお、純水製造装置では、一般的に、脱炭酸装置により溶存炭酸を除去する場合、溶存炭酸の除去率を上げる目的で、脱炭酸装置の供給水に酸を注入して、供給水のpHを6以下に設定することが行われる。本実施形態の純水製造装置1では、酸や塩基等薬品の使用量の増加を抑えるため、脱炭酸装置の供給水への酸の添加量は極力少ない方がよい。
【0038】
(一次純水システム)
図1に示すように、一次純水システム21は、例えば、純水製造装置1の下流側に、電気脱イオン装置(EDI)23、紫外線酸化装置(TOC-UV)24、再生型混床式イオン交換装置(MB)25を組み合わせることによって構成される。一次純水システム21では、純水製造装置1でホウ素が除去された処理水から、電気脱イオン装置23によって微量のイオン成分が除去される。
【0039】
さらに、残存する有機物が紫外線酸化装置24で分解及び除去された後、紫外線酸化装置24で生じた低分子量の有機酸等が、再生型混床式イオン交換装置25によって除去される。結果、一次純水システム21で、一次純水が製造される。一次純水のTOC濃度は、例えば、10μgC/L以下であると共に、一次純水の比抵抗率は、例えば、17MΩ・cm以上である。
【0040】
また、一次純水システム21は、電気脱イオン装置23、紫外線酸化装置24、再生型混床式イオン交換装置25以外に、又は、これらに代えて、水の純度を高めるその他の装置を備えてもよい。その他の装置としては、例えば、水中の溶存ガスを除去する膜脱気装置又は真空脱気装置、イオン成分を除去する陰イオン交換樹脂装置又は陽イオン交換樹脂装置、及びホウ素選択性イオン交換樹脂を充填したホウ素樹脂装置、または、これらイオン交換樹脂を複層床としたイオン交換装置等を採用できる。電気脱イオン装置23は、複数台の電気脱イオン装置が直列に接続された、多段形式であってもよい。
【0041】
(二次純水システム)
二次純水システム22は、一次純水システム21で製造された一次純水中の微量有機物や微量微粒子を除去する装置である。二次純水システム22は、紫外線酸化装置、膜脱気装置、非再生型混床式イオン交換装置、及び、限外ろ過装置を組み合わせることによって構成できる。二次純水システム22により得られる超純水のTOC濃度は、例えば、5μgC/L以下まで低減される。また、超純水の比抵抗率は、例えば、17.5MΩ・cm以上まで低減される。また、超純水のホウ素濃度は、例えば、1ng/L以下まで低減される。
【0042】
<純水製造装置>
次に、本実施形態に係る一次純水システム21に含まれる純水製造装置1を説明する。
図2に示すように、純水製造装置1は、第1逆浸透膜装置(第1RO)11と、第2逆浸透膜装置(第2RO)12と、第3逆浸透膜装置(第3RO)13と、を備える。
【0043】
第1逆浸透膜装置11は、被処理水を逆浸透膜処理して被処理水中の塩類を除去する。第2逆浸透膜装置12は、第1逆浸透膜装置11の透過水(すなわち、第1透過水)を逆浸透膜処理して第1透過水中に残留する有機物、微粒子等の不純物及びホウ素を除去する。第3逆浸透膜装置13は、第1逆浸透膜装置11の濃縮水(すなわち、第1濃縮水)を逆浸透膜処理することによって、第1逆浸透膜装置11への被処理水を回収する。
【0044】
(第1逆浸透膜装置)
第1逆浸透膜装置11は、被処理水を導入する供給管11aと、透過水配管11bと、濃縮水配管11cとを備える。第1逆浸透膜装置11で得られる第1透過水は、透過水配管11bを介して第2逆浸透膜装置12に供給される。第1濃縮水は、濃縮水配管11cを介して第3逆浸透膜装置13に供給される。
【0045】
供給管11aの上流側の端部は、第一ピット17に接続される。第1逆浸透膜装置11への被処理水は、第一ピット17から供給される。第1透過水の一部は、第一ピット17と透過水配管11bとの間を接続する透過水還流配管11dを介して、第一ピット17に還流する。
【0046】
本開示では、第一ピット17と第1逆浸透膜装置11との間の供給管11aの位置に、スケール防止剤又は酸を被処理水に添加するための添加装置が設けられてもよい。また、本開示では、第一ピット17と第1逆浸透膜装置11との間の供給管11aの位置に、pH測定装置が設けられると共に、供給管11aの位置で測定されたpHに基づいてpH調整剤添加装置15によるpH調整剤の添加量が制御されてもよい。なお、ピットの代わりにタンクが設けられてもよい。ピットの位置、pH測定装置、pH調整剤添加装置の順は、本開示の趣旨の範囲で任意に変更可能である。
【0047】
第1逆浸透膜装置11は、逆浸透膜を有する。第1逆浸透膜装置11の逆浸透膜によって、加圧下で被処理水を逆浸透膜分離処理して、塩類を濃縮した第1濃縮水と塩類の除去された第1透過水とに分離できる。第1逆浸透膜装置11としては、純水製造に通常使用される逆浸透膜装置を特に限定なく使用できる。第1逆浸透膜装置11としては、例えば、超低圧型、低圧型、中圧型、又は高圧型の逆浸透膜装置を用いることができる。
【0048】
第1逆浸透膜装置11が有する逆浸透膜としては、例えば、三酢酸セルロース系非対称膜や、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系又はポリスルホン系の複合膜等が挙げられる。膜形状としては、シート平膜、スパイラル膜、管状膜、中空糸膜等を特に限定されず用いることができる。特に、逆浸透膜としては、塩類の除去率が高い点で、ポリアミド系の複合膜であることが好ましく、架橋全芳香族ポリアミド系の複合膜であることが、特に好ましい。膜形状は、スパイラル膜であることが好ましい。
【0049】
第1逆浸透膜装置11の塩類除去能は、例えばNaClの除去率として95%以上であることが好ましく、99.5%以上であることがより好ましい。第1逆浸透膜装置11の市販品としては、東レ社製のTMG20、TM720、TM800K、ダウ社製のBW30等を使用できる。
【0050】
第1逆浸透膜装置11への被処理水の供給圧は、第1逆浸透膜装置の型式等によって好ましくは0.4MPa~6MPaの範囲で設定される。例えば、第1逆浸透膜装置11が超低圧型である場合、被処理水の供給圧は、0.4MPa~0.8MPaであることが好ましく、0.6MPa~0.7MPaがより好ましい。
【0051】
第1逆浸透膜装置11が低圧型である場合、被処理水の供給圧は、0.8MPaを超え、且つ、2.0MPa未満であることが好ましく、1MPa~1.6MPaであることが、より好ましい。第1逆浸透膜装置11が中圧型である場合、被処理水の供給圧は、2MPa~4MPaであることが好ましく、2MPa~3MPaであることがより好ましい。
【0052】
第1逆浸透膜装置11が高圧型である場合、被処理水の供給圧は、4MPaを超え、且つ、8MPa以下であることが好ましく、4MPaを超え、且つ、6MPa以下であることがより好ましい。このため、第1逆浸透膜装置11の前段、すなわち上流側には、給水ポンプが設けられることが好ましい。
【0053】
逆浸透膜においては一般に、給水圧力が高いほど、塩類の除去率は向上する一方、スケールが生じやすい傾向がある。例えば、第1逆浸透膜装置11が超低圧型の場合、第1逆浸透膜装置11への被処理水の供給圧が0.4MPa以上であることによって、塩類の除去率を向上できるので、純水製造装置1で得られる純水中のホウ素やシリカ濃度をより低減できる。また、被処理水の供給圧が6MPa以下であることによって、スケールに起因する膜閉塞を抑制し、結果、長期間安定してホウ素の低減された純水を得ることができる。
【0054】
純水製造装置1におけるホウ素の除去率の向上の点で、第1逆浸透膜装置11における水回収率は、50%~95%であることが好ましく、60%~90%であることがより好ましく、65~85%であることがさらに好ましい。
【0055】
第1逆浸透膜装置11への被処理水の供給流量は、100m3/h~1000m3/hであることが好ましい。これは、第1逆浸透膜装置11の循環流路を使って、運転を継続することで、断続運転をする際の立ち上げ時のフラッシングによる排水量を大きく減らせるためである。
【0056】
被処理水が第1逆浸透膜装置11で処理されることによって、第1透過水及び第1濃縮水が得られる。第1濃縮水は、濃縮によって高濃度の塩類を有するため、濃縮水配管11cを介して第3逆浸透膜装置13に供給される。第1透過水は、導電率が例えば5μS/cm以上である。
【0057】
本開示では、第1逆浸透膜装置11におけるスケールの防止のために、酸やアルカリを添加する場合がある。スケール防止剤は、原水中の硬度(すなわち、カルシウムやマグネシウム)やシリカが、スケールとしてRO膜に付着することを防ぐ。第1逆浸透膜装置のスケール防止のために添加された薬品(すなわち、スケール防止剤、酸、アルカリ)は、濃縮水に濃縮される。濃縮された濃縮水は、第3逆浸透膜装置13に供給され、第3逆浸透膜装置13でのスケール防止にも寄与する。
【0058】
なお、スケール防止剤や酸、アルカリは、第3逆浸透膜装置13の入口に(すなわち、第1逆浸透膜装置11の濃縮水に対して)添加される場合もある。また、第2逆浸透膜装置の位置で、スケール防止剤を入れることも可能である。この場合、第2逆浸透膜装置のスケール防止とともに、濃縮水が前段に戻るため、第1逆浸透膜装置と、さらにその第1濃縮水が供給される第3逆浸透膜装置のスケール防止にもスケール防止剤は有効に機能できる。
【0059】
(第2逆浸透膜装置)
第2逆浸透膜装置12は、透過水配管11bによって第1逆浸透膜装置11に接続される。第2逆浸透膜装置12は、透過水配管12bと、濃縮水還流配管12cと、透過水還流配管12dと、を備える。透過水配管12bは、本開示の「膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出す配管」に対応する。透過水還流配管12dは、本開示の「還流管」に対応する。
【0060】
透過水配管11bにおいて、第1逆浸透膜装置11とpH調整剤添加装置15との間の位置には、第二ピット18が設けられる。第2逆浸透膜装置12への被処理水は、第二ピット18から供給される。なお、本開示では、第二ピット18を設けることなく、透過水還流配管12dを第一ピット17に戻してもよい。
【0061】
第2逆浸透膜装置12は、本開示の「膜処理装置」に対応する。すなわち、本実施形態では、本開示の膜処理としての逆浸透膜処理が実施される。なお、本開示では、膜処理としては、逆浸透膜処理以外に例えば、限外濾過膜処理、マイクロフィルター処理、ナノフィルター処理、電気脱イオン膜処理等であってよい。
【0062】
また、本実施形態では、上流側に還流する処理水が透過水と濃縮水との両方である場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。本開示では、逆浸透膜処理では、上流側に還流する処理水は、透過水と濃縮水とのいずれか一方であってよい。また、本開示では、限外濾過膜処理、マイクロフィルター処理、ナノフィルター処理、電気脱イオン膜処理のそれぞれの処理において上流側に還流する処理水は、濃縮水である。
【0063】
濃縮水還流配管12cは、第一ピット17に接続される。透過水還流配管12dは、第1逆浸透膜装置11と第2逆浸透膜装置12との間であって上流側の第二ピット18に接続される。また、第二ピット18を設けることのない場合は、透過水還流配管12dを第一ピット17に戻してもよい。
【0064】
透過水還流配管12dの透過水配管11bへの接続位置よりも下流側であって第2逆浸透膜装置12の上流側の位置の透過水配管11bには、pH調整剤添加装置15が接続される。pH調整剤添加装置15の透過水配管11bへの接続位置よりも下流側であって第2逆浸透膜装置12の上流側の位置の透過水配管11bには、pH測定装置14が接続される。すなわち、pH調整剤添加装置15は、第2逆浸透膜装置12の上流側に配置される。また、透過水還流配管12dには第2透過水の還流量を計測する流量計16が接続される。
【0065】
pH測定装置14とpH調整剤添加装置15と流量計16とは、制御装置30にそれぞれ接続される。制御装置30には、第2逆浸透膜装置12に供給される被処理水のpHのデータ、被処理水に添加されるpH調整剤の添加量のデータ、及び、第2透過水の還流量のデータが、時間的に連続して入力される。
【0066】
第2逆浸透膜装置12で得られる透過水(すなわち、第2透過水)の一部は、透過水配管12bを介して第2逆浸透膜装置12の下流側に送り出される。第2逆浸透膜装置12で得られる第2透過水の一部は、透過水還流配管12dを介して第2逆浸透膜装置12の上流側の第二ピット18に還流する。第2逆浸透膜装置12で得られる濃縮水(すなわち、第2濃縮水)は、濃縮水還流配管12cを介して第一ピット17に導入され、再度、第1逆浸透膜装置11で処理される。
【0067】
第2逆浸透膜装置12は、逆浸透膜を有する。第2逆浸透膜装置12の逆浸透膜によって、第1透過水に加圧下で逆浸透膜分離処理が施される。このため、第1透過水中に残留する有機物、微粒子等の不純物及びホウ素の除去された第2透過水と、上記不純物及びホウ素を濃縮した第2濃縮水とに、第1透過水は分離される。第2逆浸透膜装置としては、第1逆浸透膜装置11と同様の装置を用いることができる。第2逆浸透膜装置12としては、超低圧型、低圧型、中圧型、又は高圧型のいずれであってもよいが、超低圧型又は低圧型の逆浸透膜装置であることが好ましい。
【0068】
第2逆浸透膜装置12の塩類除去能は、ホウ素の除去率を向上させる点で、例えば、NaClの除去率としては、95%以上であることが好ましく、99.5%以上であることがより好ましい。
【0069】
第2逆浸透膜装置12への供給水圧は、第1逆浸透膜装置11への供給水圧と同様に、第2逆浸透膜装置12の型式等によって好ましくは0.4MPa~6MPaの範囲で設定される。超低圧型、低圧型、中圧型、又は高圧型の各型式の逆浸透膜装置を用いた場合の好ましい供給水圧は、第1逆浸透膜装置11における供給水圧と同様である。
【0070】
第1透過水のpHは、pH測定装置14によって連続的に測定される。なお、本開示では、pH測定装置14の代わりに例えば、シリカ計、ホウ素モニタ等の他の弱電解質測定装置が設置されてもよい。本開示では、シリカ及びホウ素等は、弱電解質である。他の弱電解質測定装置は、被処理水中の弱電解質濃度を測定する。弱電解質濃度の変化に応じて、被処理水のpHは変動する。
【0071】
例えば、ホウ素を含む被処理水としての原水においては、被処理水中のpHと、処理水、すなわち、逆浸透膜装置の透過水中のホウ素濃度とは、相関を有する。具体的には、本件開示者らは、超純水にホウ酸を注入することによって、実験用の被処理水としての原水を生成した。生成された原水のホウ素濃度は、約50ppbであった。
【0072】
実験では、本実施形態の第2逆浸透膜装置12に対応する逆浸透膜装置に原水を、約1.3MPaの圧力で透過させると共に回収することによって、ホウ素が除去された。実験用の逆浸透膜装置の逆浸透膜は、ダウ社製のBW30であった。原水の回収率は、約75%であった。そして、処理水中のホウ素除去率と被処理水中のpHとが測定された。
図3に示すように、被処理水中のpHが低い程、処理水中のホウ素除去率は、低くなる。換言すると、被処理水中のpHが低い程、逆浸透膜を透過した処理水の中に、より多くのホウ素が残存する。
【0073】
また、
図3の結果をもとに、被処理水中のホウ素濃度と、逆浸透膜を透過した処理水中のホウ素濃度1ppbを得るために必要なpHとの関係を求めた。求められた関係を
図4に示す。
図4に示すように、被処理水中のホウ素濃度が小さくなる程、処理水中のホウ素濃度1ppbを得るために必要なpHは低くてよいことが分かった。
【0074】
なお、
図4では被処理水中のホウ素濃度との関係を説明するパラメータは、処理水中のホウ素濃度1ppbを得るために必要なpHであったが、他のpHの場合も、被処理水中のホウ素濃度との関係は、同様の傾向となる。また、図示を省略するが、シリカの場合におけるpHと濃度との関係は、ホウ素の場合とほぼ同等の傾向を有する。また、他の弱電解質に関するpHと濃度との関係も、ホウ素及びシリカの場合と同様である。
【0075】
すなわち、上記の実験のように、pHの塩基性と弱電解質濃度とは、本開示の「予め設定された指標」に対応する。本開示では、他の測定装置の測定値に応じてpH調整剤の添加量を調整することも可能である。調整では、例えば、測定された弱電解質濃度の値が規定値以下に変化した場合、pH調整剤の添加を停止するといったオンオフ制御も可能である。
【0076】
第2逆浸透膜装置12で得られた第2透過水は、下流側に送り出される。第2透過水は、導電率が例えば50μS/cm以下である。送り出された第2透過水は、そのまま使用される。或いは、第2透過水には、一次純水、二次純水、又は超純水を製造するためのさらなる処理が施される。第2透過水は、さらに逆浸透膜装置で処理してもよい。また、第2逆浸透膜装置12で得られた第2濃縮水は、濃縮水還流配管12cを介して供給管11aに導入された後、濃縮水還流配管12cを介して第一ピット17に還流する。第一ピット17に還流した第2濃縮水は、第1逆浸透膜装置11に供給される。
【0077】
第2逆浸透膜装置12における水回収率は、50%~95%であることが好ましく60%~90%であることがより好ましく、65~90%であることがさらに好ましく、65~85%であってもよい。
【0078】
また、第1逆浸透膜装置11と第2逆浸透膜装置12との組合せとしては、ホウ素除去率を向上させる点で、一方が超低圧型若しくは低圧型であると共に、他方が高圧型若しくは中圧型であることが好ましい。また、第1逆浸透膜装置11が高圧型又は中圧型であると共に、第2逆浸透膜装置12が低圧型又は超低圧型であることが、より好ましい。或いは、運転圧力を下げ、運転コストを低減させるために、第1逆浸透膜装置11と第2逆浸透膜装置12との両方が、低圧型若しくは超低圧型であることが好ましい。
【0079】
(第3逆浸透膜装置)
第3逆浸透膜装置13は、濃縮水排水管13bと、透過水還流配管13cとを備える。第1逆浸透膜装置11から供給された第1濃縮水は、第3逆浸透膜装置13で逆浸透膜処理される。第3逆浸透膜装置13で得られる濃縮水(すなわち、第3濃縮水)は、濃縮水排水管13bを介して系外に排出される。透過水還流配管13cは、第1逆浸透膜装置11の上流側の位置の供給管11aに接続される。第3逆浸透膜装置13で得られる透過水(すなわち、第3透過水)は、透過水還流配管13cを介して第1逆浸透膜装置11の上流側の第一ピット17に還流する。第一ピット17に還流した第3透過水は、第1逆浸透膜装置11に供給される。
【0080】
(pH調整剤添加装置)
pH調整剤添加装置15は、第1透過水の液性を塩基性に調整する、すなわち、塩基性を高めるpH調整剤を第1透過水に添加する。
【0081】
pH調整剤としては水溶性であり、第2逆浸透膜装置12への供給水としての第1透過水のpHを塩基性に調整するものであれば、特に制限なく使用できる。Hを塩基性に調整するpH調整剤としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。pH調整剤としては、1種が単独で用いられてもよいし、或いは、2種以上が併用されてもよい。
【0082】
なお、本開示では、液性が塩基性のスケール防止剤をpH調整剤として用いることによって、第1透過水の液性を塩基性に調整してもよい。また、本開示では、pH調整剤添加装置15は、第1逆浸透膜装置11におけるスケール生成を防止するスケール防止剤又はスライムコントロール剤を膜閉塞防止剤として、第1透過水中に添加する膜閉塞防止剤添加装置を備えてもよい。
【0083】
調整後のpHの値は、特に限定されないが、例えば、8.5~10.5が好ましく、9~9.5がより好ましい。この範囲とすることで、シリカやホウ素などの弱電解質をイオン化させ、第1逆浸透膜装置11における除去率を上げることができる。pH8.5未満では、除去率がやや低下する。また、pH10.5を超えると、添加したpH調整剤のアルカリ金属の量が多くなるので、処理水のアルカリ金属の量が増加してしまう。この時、除去率は、シリカ、ホウ素ともに、90%以上となる。
【0084】
本開示において、装置の規模は特に限定されないが、処理量(供給水量)が100m3/h~1000m3/hである装置が好ましい。この場合、第2逆浸透膜装置に循環運転を採用し、第2逆浸透膜装置を継続して運転することにより、処理水質を悪化させないことが特に重要である。これは、第2逆浸透膜装置をオンオフ運転した場合に生じる、立ち上げ操作の際の多量の排水の発生を避けることができるためである。
【0085】
(制御装置)
制御装置30は、純水製造装置1における被処理水及び処理水に関する、流量、温度、pH等を制御する演算制御部である。具体的には制御装置30は、還流後の被処理水のpHの塩基性が予め設定された閾値よりも高い場合、現在のpH調整剤の添加量よりも少ない量のpH調整剤を第2逆浸透膜装置12に供給する被処理水に対して添加する。
【0086】
本開示では、制御装置30は、還流後の被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、現在のpH調整剤の添加量よりも少ない量のpH調整剤を第2逆浸透膜装置12に供給する被処理水に対して添加するように、pH調整剤添加装置15を制御する。本開示では、制御によって低下されるpH調整剤の添加量は、ゼロを含む。
【0087】
図5に示すように、制御装置30は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、ストレージ34、ユーザインタフェース35及び通信インタフェース36を有する。制御装置30のそれぞれの構成は、バス37を介して相互に通信可能に接続されている。
【0088】
CPU31は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU31は、ROM32又はストレージ34からプログラムを読み出し、RAM33を作業領域としてプログラムを実行する。CPU31は、ROM32又はストレージ34に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。CPU31は、本開示のプロセッサである。
【0089】
本実施形態では、ROM32又はストレージ34には、超純水の製造プログラムが格納されている。超純水の製造プログラムは、超純水を製造するための演算プログラムである。
【0090】
ROM32は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM33は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ34は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0091】
ユーザインタフェース35は、純水製造装置1を操作する作業者が制御装置30を操作する際のインタフェースである。ユーザインタフェース35は、例えば、作業者によるタッチ操作を可能とするタッチパネルを備えた液晶ディスプレイ、作業者による音声入力を受け付ける音声入力受付部、及び作業者が押下可能なボタン等の少なくとも一つを含み得る。
【0092】
通信インタフェース36は、制御装置30が、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0093】
超純水の製造プログラムを実行する際に、純水製造装置1は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。純水製造装置1が実現する機能構成として、純水製造装置1は、pH調整剤添加部、処理水送出部、処理水還流部、pH比較部、還流量比較部、及びpH調整剤添加量低下部を有する。各機能構成は、CPU31が、ROM32又はストレージ34に記憶された超純水の製造プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0094】
<超純水の製造方法>
次に、本実施形態に係る超純水製造装置2を用いた超純水の製造方法について、説明する。まず、超純水製造装置2に含まれる一次純水システム21の純水製造装置1を用いて一次純水を製造する。本実施形態では、一次純水の製造が、作業者ではなく、制御装置30のコンピューター制御によって自動的に実施される場合を例示的に説明する。なお、本開示では、超純水製造装置2の作業者が、制御装置30を用いて一次純水の製造に係る各工程を実施してもよい。
【0095】
具体的には、純水製造装置1において、被処理水は、供給管11aを介して第1逆浸透膜装置11に供給されると共に第1逆浸透膜装置11で逆浸透膜処理される。本実施形態では、第1逆浸透膜装置11に供給される被処理水の水温は、必要に応じて調整する。被処理水の水温は、例えば室温(20℃~30℃)程度でよい。
【0096】
次に、超純水製造装置2の制御装置30は、
図6中のステップS11で、第2逆浸透膜装置12に供給する第1透過水に、pH調整剤添加装置15を用いてpH調整剤を添加する。第1透過水に添加されるpH調整剤の量は、第2逆浸透膜装置12への供給水のpHを、予め設定された閾値、例えば9.2~10の値に調整するように設定できる。なお、閾値は、上限値及び下限値を有する範囲によって設定されてもよいし、或いは、特定の値によって設定されてもよい。
【0097】
なお、本開示では、スケール防止剤を添加する工程が、pH調整剤を添加する工程であるステップS11の前後のいずれかに、又は、ステップS11と同時に実行されてよい。pHが調整された第1透過水は、透過水配管11bを介して第2逆浸透膜装置12に供給された後、第2逆浸透膜装置12で逆浸透膜処理される。
【0098】
次に、超純水製造装置2の制御装置30は、
図6中のステップS12で、第2逆浸透膜装置12の第2透過水の一部を、透過水配管12bを用いて下流側に送り出す。また、超純水製造装置2の制御装置30は、
図6中のステップS13で、透過水配管12b中を流れる第2透過水の他の一部を、透過水配管12bから分岐する透過水還流配管12dを用いてpH調整剤の添加位置に対する上流側に還流する。
【0099】
次に、超純水製造装置2の制御装置30は、ステップS14で、第2透過水が還流した後の被処理水のpHを、pH測定装置14を用いて測定する。そして、制御装置30は、測定されたpHの塩基性が予め設定された閾値よりも高いかどうかを判定する。判定の結果、処理水が還流した後の被処理水のpHの塩基性が予め設定された閾値よりも高い場合、すなわち、被処理水の塩基性が還流前に比べて高まった場合、処理は、
図6中のステップS15に移行する。
【0100】
ステップS15で、制御装置30は、第2逆浸透膜装置12に供給する被処理水に、ステップS11における添加量よりも少ない量のpH調整剤を添加する。換言すると、pH調整剤が添加された先行の被処理水のpHをモニタすると共に、モニタ結果に基づいて、後続の被処理水に添加されるpH調整剤の添加量が、フィードバック制御される。
【0101】
なお、フィードバック制御は、一般的に、例えば1段目の逆浸透膜装置で原水を処理する場合のように被処理水の水質が大きく変動する位置で行われる。一方、1段目の透過水を処理する2段目のように後段の逆浸透膜装置では、水質変動が少ないため、フィードバック制御の必要性は、通常、着目され難い。しかし、本実施形態では、意図的に第2逆浸透膜装置12におけるpH調整剤の添加量のフィードバック制御が行われることによって、系内濃縮の抑制が図られることになる。
【0102】
一方、ステップS14における判定の結果、処理水が還流した後の被処理水のpHの塩基性が予め設定された閾値以下である場合、処理はステップS15に移行することなく終了する。本実施形態では、上記のステップS11~ステップS15の一連の工程が、逆浸透膜処理が行われる間全体に亘って、繰り返し連続的に実施される。すなわち、処理が
図6中のステップS15の後の終了に移行した後、処理は、再び
図6中の開始に戻る。
【0103】
このため、第2逆浸透膜装置12への供給水のpHは、予め設定された閾値である9.2~10の塩基性に調整される。第2逆浸透膜装置12への供給水のpHが9.2以上であれば、第2逆浸透膜装置12におけるホウ素の除去率を大幅に向上させることができる。
【0104】
なお、本開示では、制御装置30は、測定されたpHの塩基性が予め設定された閾値よりも低いかどうかを判定するように構成されてもよい。例えば、
図6中のステップS14における判定の結果、測定されたpHの塩基性が予め設定された閾値よりも低い場合、すなわち、被処理水の塩基性が還流前に比べて低下した場合に、処理が、
図6中のステップS15に移行してもよい。ステップS15で、制御装置30は、第2逆浸透膜装置12に供給する被処理水に、
図6中のステップS11における添加量よりも多い量のpH調整剤を添加する。
【0105】
すなわち、本開示では、本実施形態のように塩基性が高まる場合だけでなく、塩基性が低下する場合(すなわち、閾値としての所定の値又は範囲内から低下する場合)に、pH調整剤の添加量を増加させるようなフィードバック制御を実行できる。
【0106】
なお、本開示では、上記のステップS11~ステップS15の一連の工程が、逆浸透膜処理が行われる間全体に亘って連続的に実施されることは必須ではない。本開示では、ステップS11~ステップS15の一連の工程が、逆浸透膜処理が行われる間において少なくとも1回実施されてもよい。或いは、一連の工程が複数回、間欠的に実施されてもよいし、連続的に行われてもよい。
【0107】
そして、純水製造装置1を用いて製造された一次純水を、
図1に示したような二次純水システム22に供給すると共に所定の処理を施すことによって、最終的に、超純水を製造できる。
【0108】
(純水製造装置の他の運転パターンについて)
次に、本実施形態に係る純水製造装置1の他の運転パターンを説明する。
【0109】
(オンオフパターン)
例えば、第2逆浸透膜装置12の透過水量を100として、透過水配管12bに99の透過水量、透過水還流配管12dに1の透過水量を流しておく場合を条件Aとして設定する。条件Aでの純水製造装置1の運転中、図示しない第2逆浸透膜装置12の後段のタンクが一杯になったために透過水配管12bへ第2透過水を供給できなくなった場合、条件Bとして、例えば透過水還流配管12dの透過水量を99に、透過水配管12bの透過水量を1にそれぞれ調整する。
【0110】
条件Bでの純水製造装置1の運転を開始した後、後段のタンクの貯水レベルが所定値より低くなったら、純水製造装置1の運転条件を条件Aに戻す。すなわち、後段のタンクの貯水状態に応じて、条件Aと条件Bを交互に変化させる制御が行われる。
【0111】
ここで、条件Aとしては、透過水配管12bの透過水量を100、透過水還流配管12dの透過水量を0と設定する場合が含まれてもよい。また、条件Bとして、透過水配管12bの透過水量を0、透過水還流配管12dの透過水量を100と設定する場合が含まれてもよい。すなわち、透過水配管12bの透過水量と透過水還流配管12dの透過水量とのうちの一方が0であると共に他方が100である。
【0112】
透過水配管12bの透過水量と透過水還流配管12dの透過水量とのうちの一方が0であると共に他方が100である場合の条件Aと条件Bとの切り替えは、換言すると、オンオフ制御である。オンオフ制御の場合、条件A及び条件Bでのそれぞれのアルカリの添加量を予め決めた上で、条件を切り替えることも可能である。オンオフ制御である条件Aと条件Bとの切り替えの場合、透過水量を制御する必要が生じないので、装置をシンプルに構成できる。
【0113】
また、条件Bでは、第2逆浸透膜装置12の後段の透過水配管12b以下の設備に第2透過水がほとんど流れないと共に透過水還流配管12dから還流した第2透過水が第2逆浸透膜装置12の供給側に戻るので、第2逆浸透膜装置12への供給水の水質が向上する。このため、pH調整剤としてのアルカリの注入量を0にすることも可能である。勿論、条件BにおいてpH調整剤の添加量が制御されてもよい。
【0114】
なお、
図2中、条件Bにおいて透過水還流配管12dによって第2透過水のほぼ全量が第二ピット18に戻る場合には、第1逆浸透膜装置11の第1透過水を透過水配管11bを用いて第2逆浸透膜装置12へ供給する処理は、ほぼ不要になる。このため、第1透過水は、透過水配管11bの透過水還流配管11dによって第一ピット17に戻る。
【0115】
ここで、条件Bにおいて、従来のように例えばアルカリの添加量が一定であるように固定された場合、第2逆浸透膜装置12への供給水は、ほぼ透過水還流配管12dからの第2透過水になる。このため、第2逆浸透膜装置12への供給水の水質は、第1逆浸透膜装置11の透過水の水質より向上し、結果、第2逆浸透膜装置12への供給水中のアルカリの量が過剰になってしまう。
【0116】
第2逆浸透膜装置12への供給水中で余ったアルカリは、濃縮水還流配管12cを介して第一ピット17に供給され、結果、第1逆浸透膜装置11の供給側に添加される酸が消費されることになる。このため、第1逆浸透膜装置11への供給水のpHが高くなる。結果、第1逆浸透膜装置11と第3逆浸透膜装置13とにおいて、例えば、供給水中のランゲラーインデックスが、1~2程度増加して硬度スケールが生じ易くなる。しかし、本実施形態では、アルカリの注入量を低下させる制御が行われるので、第1逆浸透膜装置11と第3逆浸透膜装置13とにおける硬度スケールの発生を抑制できる。
【0117】
(循環流量の自動制御)
また、本開示では、例えば、第2逆浸透膜装置12の後段のタンクの貯水レベルを一定にするように透過水配管12bの流量をフレキシブルに変化させる場合、透過水還流配管12dの循環流量もフレキシブルに変化する。すなわち、循環流量の自動制御が行われる。本開示では制御装置30によって第2逆浸透膜装置12へ供給される被処理水のpH調整剤の添加量が制御されるため、透過水還流配管12dの循環流量のフレキシブルな変化に対して有効に対応できる。この場合、pH調整剤の添加量は、循環流量に応じて変化させてもよい。第2逆浸透膜装置12へ供給される供給水のpH、もしくは、不純物量に応じてフィードバック制御してもよい。
【0118】
なお、本開示では、循環流量が閾値以上になった場合、もしくは、後段への供給流量が閾値以下になった場合、アルカリの添加量を規定の設定量、もしくは、0に設定してもよい。これは、後段の処理水が供給されていても、循環流量が多い場合には、pH調整剤を供給しなくても処理水の水質を維持できるためである。たとえば、後段の装置(例えばEDI等)の供給水質の許容値を超えることがない。
【0119】
また、透過水量のオンオフ制御の場合と同様に、循環流量が閾値以上になった後、循環水量を制御する必要が生じないので、装置をシンプルに構成できる。また、pH調整剤の使用量を必要最低限にすることが可能である。アルカリの添加量を規定の設定量、もしくは、0に設定する際は、タイマーによって規定の時間経過後に行うことも可能である。これは、循環による第2逆浸透膜装置12へ供給される供給水の水質が向上し且つ安定することを待つためである。
【実施例0120】
次に、本実施形態に係る実施例と比較例とを説明する。具体的には、以下のように実施例の運転条件と比較例の運転条件とを異ならせて、それぞれの実験が行われた。
【0121】
[比較例]
まず、比較例では、
図2中に例示された本実施形態に係る純水製造装置1を用いて、以下の条件で純水が製造された。
【0122】
(運転条件)
被処理水:工水(工業用水)、導電率:90μS/cm、pH=6.8、流量:500m3/h
第1逆浸透膜装置11:低圧逆浸透膜装置(TM720、東レ株式会社製)、水回収率が85%になるように供給水圧力が調整された。
第2逆浸透膜装置12:低圧逆浸透膜装置(TM720、東レ株式会社製)、水回収率が90%になるように供給水圧力が調整された。
pH調整剤添加装置15:水酸化ナトリウム水を添加し、pHを9.2に調整した。
第3逆浸透膜装置13:低圧逆浸透膜装置(TM720、東レ株式会社製)、水回収率が65%になるように供給水圧力が調整された。
【0123】
比較例では、上記の運転条件で、制御装置30によって純水製造装置1が15日運転された。運転では、概ね3~4時間周期で、循環を伴わない純水製造装置1から後段への処理水の供給と、純水製造装置1の系内における循環運転とが、上記オンオフパターンによって切り替えられた。
【0124】
[実施例]
次に、実施例では、比較例と同様に、
図2中に例示された本実施形態に係る純水製造装置1を用いて純水が製造された。なお、実施例では、循環運転の際、第2逆浸透膜装置12において、pH調整剤添加装置15による水酸化ナトリウム水の添加は停止された。第2逆浸透膜装置12に関する条件以外の実施例の運転条件は、比較例の運転条件と同様であった。
【0125】
[結果]
次に、実験の結果として、純水製造装置1が15日運転された場合における第3逆浸透膜装置13への供給圧力の変化を以下の表1に示す。
【0126】
【0127】
表1に示すように、比較例の場合、運転開始から15日後、第2逆浸透膜装置12の運転の影響によって、第3逆浸透膜装置13の膜に詰まりが生じ、既定の水回収率を得るための運転圧力が上昇した。一方、実施例では、運転開始から15日経過しても、既定の水回収率に影響を及ぼす膜の詰まりは生じなかった。なお、比較例の場合、純水製造装置1から後段への処理水の供給中は、第1逆浸透膜装置11から後段への供給水(第1処理水)のpHは、6.8であったが、循環運転中には、後段への供給水(第1処理水)のpHは、8.3に上昇していた。
【0128】
(作用効果)
本実施形態では、ステップS11で、第2逆浸透膜装置12に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤が添加される。また、ステップS12で、第2逆浸透膜装置12の処理水の一部が、下流側に送り出されると共に、ステップS13で、処理水の他の一部が、pH調整剤の添加位置に対する上流側に還流される。
【0129】
また、ステップS14及びステップS15で、処理水が還流した後の被処理水のpHの塩基性が予め設定された閾値よりも高い場合、第2逆浸透膜装置12に供給される被処理水に対するpH調整剤の添加量が低下する。すなわち、pH調整剤の添加位置に対する上流側へ還流する処理水のpHの塩基性の高まりに応じて、被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる。このため、pH調整剤が添加された被処理水を第2逆浸透膜装置12の系内に還流させても、pH調整剤の系内濃縮を抑制できる。
【0130】
ここで、系内濃縮の進行を抑制する手段として、例えば、第2逆浸透膜装置12の運転を停止することが考えられる。しかし、停止後に第2逆浸透膜装置12を再起動する際、被処理水の品質が安定するまで時間がかかる。また、停止或いは再稼働処理に伴って、超純水製造装置2の製造ライン中の他の処理装置や配管中を流れる被処理水の流れ状態が設計範囲を超えて変動し易くなるので、他の水処理においても不具合が懸念される。結果、超純水の品質の劣化及び歩留まりの低下が生じ易い。
【0131】
この点、本実施形態では、第2逆浸透膜装置12の運転を停止する必要がないため、再稼働処理の負担、超純水の品質の劣化及び歩留まりの低下が生じ難い。
【0132】
また、本実施形態では、本開示が適用される膜処理装置が第2逆浸透膜装置12であるため、特に、第2逆浸透膜装置12の系内濃縮を効果的に抑制できる。
【0133】
(変形例)
本実施形態では、pH調整剤の添加位置に対する上流側へ還流する処理水のpHの塩基性の高まりに応じて、被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる、もしくは増加させる場合が例示された。しかし、本開示では、pH調整剤の添加量を低下させる条件としては、これに限定されない。例えば、pH調整剤の添加位置に対する上流側への処理水の還流量の増加に応じて、被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させてもよい。
【0134】
変形例に係る超純水の製造方法においても、
図1~
図5中に例示された本実施形態の超純水製造装置2を使用できる。また、変形例に係る超純水の製造方法では、第2逆浸透膜装置12に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加する工程(
図7中のステップS11)は、本実施形態の
図6中のステップS11と同じである。
【0135】
また、変形例では、第2逆浸透膜装置12の処理水を下流側に送り出す工程(
図7中のステップS12)は、本実施形態の
図6中のステップS12と同じである。また、第2逆浸透膜装置12に供給する被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる工程(
図7中のステップS15)は、本実施形態の
図6中のステップS15と同じである。
【0136】
しかし、変形例では、
図7中のステップS14Aにおいて処理水の還流量が増加するかどうか、すなわち、ステップS14Aにおいて処理水の還流量が、先行するステップS13Aにおける処理水の還流量よりも多いかどうかを判定する点が、本実施形態と異なる。
【0137】
本実施形態では、ステップS13Aにおける処理水の還流量が、本開示の「予め設定された還流量」に対応する。なお、本開示では、予め設定された還流量は、これに限定さない。例えば経験則等に基づいて設定された特定の還流量、又は、上限値と下限値とを有する範囲等を、予め設定された還流量として設定できる。
【0138】
変形例では、ステップS14Aにおける判定の結果、処理水の還流量がステップS13Aにおける還流量よりも増加する場合、処理は、
図7中のステップS15に移行する。ステップS15で、超純水製造装置2の制御装置30は、第2逆浸透膜装置12に供給する被処理水にステップS11における添加量よりも少ない量のpH調整剤を添加する。
【0139】
一方、ステップS14Aにおける判定の結果、処理水の還流量が増加しない、すなわち、処理水の還流量がステップS13Aにおける処理水の還流量以下である場合、処理は、ステップS15に移行することなく終了する。変形例における他の構成は、
図1~
図6中に例示された本実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0140】
変形例では、ステップS14A及びステップS15で、処理水の還流量をステップS13Aにおける還流量よりも増加させると、第2逆浸透膜装置12に供給される被処理水に対するpH調整剤の添加量が低下する。すなわち、pH調整剤の添加位置に対する上流側への処理水の還流量の増加に応じて、被処理水に対するpH調整剤の添加量を低下させる。このため、pH調整剤が添加された第一処理水を第2逆浸透膜装置12の系内に還流させても、pH調整剤の系内濃縮を抑制できる。変形例の他の効果は、本実施形態の場合と同様である。
【0141】
<その他の実施形態>
本開示は下記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本開示を限定するものであると理解すべきではない。本開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。
【0142】
例えば、本開示では、図示を省略するが、濃縮水を上流側に戻す際に、紫外線酸化処理等の処理を施す設備が、純水製造装置に付加されてもよい。例えば、純水製造装置に紫外線酸化処理が施される場合、濃縮水中の有機物を酸化分解できる。
【0143】
また、例えば、本開示では、上記の実施形態で、CPU31がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した超純水の製造処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。
【0144】
また、超純水の製造処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0145】
また、上記各実施形態では、超純水の製造プログラムがROM32又はストレージ34に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0146】
また、
図1~
図7中に例示した構成を部分的に組み合わせて、本開示を構成することもできる。以上のとおり本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、前記膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に前記処理水の他の一部を前記pH調整剤の添加位置に対する上流側に還流する第1工程と、
前記処理水が還流した後の前記被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、前記膜処理装置に供給する前記被処理水に対する前記pH調整剤の添加量を低下させる第2工程と、
を含む、超純水の製造方法。
膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、前記膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に前記処理水の他の一部を前記pH調整剤の添加位置に対する上流側に予め設定された還流量で還流する第1工程と、
前記膜処理装置への前記処理水の還流量を前記第1工程よりも増加させ、前記膜処理装置に供給する前記被処理水に対する前記pH調整剤の添加量を低下させる第2工程と、
を含む、超純水の製造方法。
膜処理装置に供給する被処理水に塩基性を高めるpH調整剤を添加し、前記膜処理装置の処理水の一部を下流側に送り出すと共に前記処理水の他の一部を前記pH調整剤の添加位置に対する上流側に還流する第1処理と、
前記処理水が還流した後の前記被処理水の予め設定された指標の変化に応じて、前記膜処理装置に供給する前記被処理水に対する前記pH調整剤の添加量を低下させる第2処理と、
をコンピュータに実行させる、超純水の製造プログラム。