(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100197
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】精米機の流量制御機構
(51)【国際特許分類】
B02B 7/02 20060101AFI20240719BHJP
B02B 7/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B02B7/02 103
B02B7/00 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004012
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田川 澄夫
(72)【発明者】
【氏名】川上 晃司
【テーマコード(参考)】
4D043
【Fターム(参考)】
4D043FA06
4D043HA04
4D043HB02
4D043JA14
4D043JE06
4D043KA01
(57)【要約】
【課題】従来よりも効率的に精米することが可能な、精米機の流量制御機構を提供すること。
【解決手段】米穀を精米する精米部20と、前記精米部の上方に設けられて米穀を貯留することが可能な精米タンク10と、を有し、前記精米タンクは、前記精米タンク内で上下動することによって前記精米部への米穀の供給量を調整することが可能な流量制御バルブ11と、前記精米タンクの壁部に設けられるとともに、該壁部と前記流量制御バルブとの間における米穀の流量を検出することが可能な光学流量検出部13と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米穀を精米する精米部と、前記精米部の上方に設けられて米穀を貯留することが可能な精米タンクと、を有し、
前記精米タンクは、
前記精米タンク内で上下動することによって前記精米部への米穀の供給量を調整することが可能な流量制御バルブと、
前記精米タンクの壁部に設けられるとともに、該壁部と前記流量制御バルブとの間における米穀の流量を検出することが可能な光学流量検出部と、を備えている
ことを特徴とする精米機の流量制御機構。
【請求項2】
前記流量制御バルブを制御することが可能な制御部を有し、
前記制御部は、前記光学流量検出部の検出データに基づいて前記流量制御バルブを上方又は下方へ移動させることが可能である
請求項1に記載の精米機の流量制御機構。
【請求項3】
前記流量制御バルブは、円錐部と、該円錐部の下部に形成される円柱部とを備え、
前記光学流量検出部は、前記精米タンクの前記壁部と、前記流量制御バルブの前記円柱部との間における米穀の流量を検出する
請求項1又は2に記載の精米機の流量制御機構。
【請求項4】
前記光学流量検出部は、
垂直共振器面発光レーザを使用して取得した米穀の連続画像から、米穀の変位量及び変位方向を出力することが可能である
請求項1又は2に記載の精米機の流量制御機構。
【請求項5】
前記光学流量検出部は、
垂直共振器面発光レーザを使用して取得した米穀の連続画像から、米穀の変位量及び変位方向を出力することが可能である
請求項3に記載の精米機の流量制御機構。
【請求項6】
前記光学流量検出部は、
TOFカメラを使用して取得した米穀の連続画像から、米穀の変位量及び変位方向を出力することが可能である
請求項1又は2に記載の精米機の流量制御機構。
【請求項7】
前記光学流量検出部は、
TOFカメラを使用して取得した米穀の連続画像から、米穀の変位量及び変位方向を出力することが可能である
請求項3に記載の精米機の流量制御機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米機の精米部へ供給される穀粒の流量を制御して調整することが可能な、精米機の流量制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1には、調整弁による流量制御によって精白室の米穀量を一定に保つため、精白室の縦方向に穀粒検出センサを5箇所に設けた技術が開示されている。また、特許文献2には、米穀の流量を搬送機モータM1の負荷電流値として検出し、設定電流を超えたときに、給穀弁を調整して精白室への米穀の流量を定量化制御する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、精白室へ供給する給穀装置に、ロータリバルブによる開閉機能と流量調節機能を備えた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6-102159号公報
【特許文献2】特開平6-047295号公報
【特許文献3】特開平7-308593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、穀粒検出センサによって穀粒が精白室に常に一定量充填されるように調整弁が制御されているため、穀粒の量が各穀粒検出センサ間で増減を繰り返すことになり、精米のムラや精米効率の低下を招くおそれがある。
【0005】
また、米穀を効率よく精米するためには、抵抗蓋による精白室内の圧力、砥石の周速度、精米機における米穀の流量や排出量を、精米の程度に応じて操作・調整することが必要であるが、上記特許文献1~3に示されるような、精白室における米穀の充填量を管理するだけの方法では、効率的な精米を行うことは難しい。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、従来よりも効率的に精米することが可能な、精米機の流量制御機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)に係る発明は、米穀を精米する精米部と、前記精米部の上方に設けられて米穀を貯留することが可能な精米タンクと、を有し、前記精米タンクは、前記精米タンク内で上下動することによって前記精米部への米穀の供給量を調整することが可能な流量制御バルブと、前記精米タンクの壁部に設けられるとともに、該壁部と前記流量制御バルブとの間における米穀の流量を検出することが可能な光学流量検出部と、を備えていることを特徴とする精米機の流量制御機構である。
【0008】
(2)に係る発明はさらに、前記流量制御バルブを制御することが可能な制御部を有し、前記制御部は、前記光学流量検出部の検出データに基づいて前記流量制御バルブを上方又は下方へ移動させることが可能である。
【0009】
(3)に係る発明はさらに、前記流量制御バルブは、円錐部と、該円錐部の下部に形成される円柱部とを備え、前記光学流量検出部は、前記精米タンクの前記壁部と、前記流量制御バルブの前記円柱部との間における米穀の流量を検出する。
【0010】
(4)、(5)に係る発明はさらに、前記光学流量検出部は、垂直共振器面発光レーザを使用して取得した米穀の連続画像から、米穀の変位量及び変位方向を出力することが可能である。
【0011】
(6)、(7)に係る発明はさらに、前記光学流量検出部は、TOFカメラを使用して取得した米穀の連続画像から、米穀の変位量及び変位方向を出力することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、精米タンクの壁部と流量制御バルブとの間における米穀の流量を検出することが可能な光学流量検出部を、精米タンクの壁部に設けている。これにより、精米タンクの内側面で流下する米穀の流速を検出して流量を算出し、流量制御バルブの上下動により、適切な米穀の流量制御が可能となっている。すなわち、精米部の直近上流側の精米タンクに、直接米穀の流量を光学的に検出できる光学流量検出部を構成して、米穀の流量監視精度を向上するとともに、検出データによるフィードバック制御によって、米穀の流量を微調整することが可能となり、精米効率及び精米品質の向上を図ることができる。
【0013】
従来技術では、調整弁の開度によって米穀の流量を調整しようとしていたが、実際は精米部による搗精の進行具合によって、米穀の形状や、米穀表面のでん粉組成の変化による摩擦抵抗の変化で米穀の流速が変わり、調整弁の開度を一定にしても米穀の流量が変化して流量の調整が困難となる。一方、本発明によれば、精米タンクの内側面で流下する米穀の流速を検出して、それに流下範囲の断面積を掛けて米穀の流量を算出しているので、この場合の米穀の流量は体積密度になり、かさ比重の影響を受けることなく、精米部への適切な流量調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における精米機の概略構成図である。
【
図2】本実施形態における精米タンクの平面視及び側面視による断面図である。
【
図3】本実施形態における光学画像方式による検出構成を説明する説明図である。
【
図4】本実施形態における光学画像方式による検出構成を説明するフロー図である。
【
図5】別実施形態におけるTOFカメラ方式による検出構成を説明する説明図である。
【
図6】別実施形態におけるTOFカメラ方式による検出構成を説明するフロー図である。
【
図7】本実施形態における流量制御バルブの移動態様を説明する精米タンクの断面図である。
【
図8】本実施形態における流量制御機構の制御構成を説明するフロー図である。
【
図9】別実施形態における流量制御バルブの移動態様を説明する精米タンクの断面図である。
【
図10】別実施形態における光学流量検出部の設置可能範囲を説明する精米タンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の精米機の流量制御機構の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
図1には、本実施形態における精米機100の概略構成図が示されている。図示されるように、精米機100は、米穀を精米する精米部20と、当該精米部20の上方に設けられて米穀を貯留することが可能な精米タンク10とを少なくとも有し、精米部20には精米室22と精米ロール21が配置されている。
【0017】
さらに、精米部20の精品排出口24には抵抗板23が配置され、排出された米穀は万石30を介して昇降機40に運ばれる。そして昇降機40から精米タンク10へ米穀が貯留されるように構成されている。精米タンク10には、米穀の流量制御機構として、精米タンク10内で上下動することによって精米部20への米穀の供給量を調整することが可能な流量制御バルブ11と、精米タンク10の壁部に設けられるとともに、当該壁部と流量制御バルブ11との間における米穀の流量を検出することが可能な光学流量検出部13が備えられている。
【0018】
また、精米タンク10には、上記流量制御バルブ11の駆動源となる駆動シリンダ14が備えられ、上記光学流量検出部13が設置される壁部には精米タンク10内を透視可能な流量観測窓12が設けられている。さらに、精米機100と一体又は別体に、精米機100の流量制御機構を少なくとも制御可能な制御部50が設けられている。
【0019】
以上のように、精米タンク10に流量観測窓12を設け、そこから内部の米穀に光を照射して米穀の画像を光学流量検出部13で読み取り、読み取った画像から画像の特徴点を抽出して、その特徴点の移動を計測することによって、米穀の移動方向と移動速度を算出するように構成されている。
【0020】
図2には、上記した精米タンク10の平面視及び側面視による断面図が示されている。前述したように、精米タンク10の壁部に設けられるとともに、当該壁部と流量制御バルブ11との間における米穀の流量を検出することが可能な光学流量検出部13が、流量観測窓12を介して設置されている。
【0021】
また、本実施形態の流量制御バルブ11は、円錐部111と、当該円錐部111の下部に形成される円柱部112とから構成されており、貯留された米穀は流量制御バルブ11の周囲(
図2のA部)を流下する。これにより、光学流量検出部13は、精米タンク10の壁部と、流量制御バルブ11の円柱部112との間(
図2の一点鎖線部)における米穀の流量を検出することが可能となる。
【0022】
貯留された米穀は、
図2のA部を流下することで光学流量検出部13によって流速u(m/s)が計測される。そして、精米タンク10の内径R1と、流量制御バルブ11の外径R2に基づいてA部の面積(m
2)が求められることから、この面積(m
2)に流速u(m/s)を乗じることで米穀の流量Q(m
3/s)が算出される。
【0023】
なお、流量制御バルブ11の形状は、図示される形状に必ずしも限定されるものではないが、精米タンク10を円筒状とし、流量制御バルブ11の形状を図示されるような弾丸形状とすることにより、貯留されている米穀を、精米タンク10の内壁面に沿って均質に流下させることが可能となる。
【0024】
また、本実施形態では、精米タンク10に光学流量検出部13及び流量観測窓12を一箇所設けたが、これらを複数箇所に設けるようにしてもよい。これにより、流量制御バルブ11の一部に糠が付着したり、或いは、流量制御バルブ11の近傍で米穀がブリッジするなど、何らかの原因で米穀の流れが阻害された場合に、光学流量検出部13の検出データから、これらを早期に発見することが可能となる。
【0025】
次に、光学流量検出部13について説明する。光学流量検出部13の検出構成として、
図3には光学画像方式による検出構成が図示され、
図4にはその検出フローが図示されている。
【0026】
すなわち、光学画像検出方式における光学流量検出部13は、少なくとも光源装置131と、検出器アレイ装置132と、画像プロセッサ133とを備えている。そして、LEDランプ等からなる光源装置131から流量観測窓12を介して米穀に光を照射(S100)し、鏡面反射方向の検出器アレイ装置132で米穀の影パターン像を取得(S110)して、画像プロセッサ133で、一つ前に取得した米穀の画像と比較して、米穀の変位量と変位方向を算出(S120)することができる。
【0027】
なお、上記光源装置131において、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を用いてレーザを米穀に照射し、発生したレーザスペックルの画像を検出器アレイ装置132で取得する方法もある。この場合は、検出器アレイ装置132を検出面に対して垂直に配置することができる。
【0028】
次に、光学流量検出部13の別実施形態について説明する。光学流量検出部13の検出構成として、
図5にはTOF(Time Of Flight)カメラ方式による検出構成が図示され、
図6にはその検出フローが図示されている。
【0029】
すなわち、TOFカメラ方式における光学流量検出部13は、少なくとも光源装置151と、検出器アレイ装置152と、TOFプロセッサ153と、画像プロセッサ154とを備えている。そして、光源装置151から流量観測窓12を介して米穀にレーザ光を照射(S100)し、検出器アレイ装置152及びTOFプロセッサ153において、米穀の表面からの反射時間を計測し、米穀表面までの距離を算出して得た立体画像を画像プロセッサ154へ出力(S110)する。さらに画像プロセッサ154では、一つ前に取得した米穀の立体画像と比較して、米穀の変位量と変位方向を算出(S120)することができる。
【0030】
上記したTOFカメラ方式によれば、レーザ光を米穀にほぼ垂直に照射するので、流量観測窓12での鏡面反射等の影響を大幅に軽減することが可能となる。また、本方式はレーザ光の強弱を利用するものではないため、流量観測窓12が多少汚れても、レーザ光の出力を上げることでその影響を回避することが可能である。
【0031】
続いて、流量制御バルブ11の制御構成について説明する。前述したように、精米機100と一体又は別体に、精米機100の流量制御機構を少なくとも制御可能な制御部50が設けられており、
図7には、流量制御機構を構成する流量制御バルブ11の移動態様が図示されている。
【0032】
図7(a)は流量制御バルブ11が全閉位置、
図7(b)は流量制御バルブ11が中間位置、
図7(c)は流量制御バルブ11が全開位置にある状態が示しており、制御部50によって、光学流量検出部13の検出データに基づいて必要な流量を確保すべく、流量制御バルブ11を上方又は下方へ移動させることが可能となっている。
【0033】
図7に示されるように、本実施形態では、光学流量検出部13による流量検出位置を、流量制御バルブ11の円柱部112とすることで、流量制御バルブ11を上下動させても、流量検出位置における米穀の流路の隙間は一定となるように構成されている。これにより、安定して米穀の流量を検出することが可能となっている。
【0034】
図8には、本実施形態における流量制御機構の制御構成がフローで示されている。図示されるように、精米機100における精米をスタート(S200)させて、精米部20への目標となる米穀の流量を設定(S210)する。続いて、流量制御バルブ11が開かれて(S220)、光学流量検出部13による米穀の流量が検出(S230)される。そして、光学流量検出部13による検出データに基づいて、目標の米穀の流量となるように、流量制御バルブ11を上下動させながら流量の調整(S240)が行われる。精米が終了(S250)すると、流量制御バルブ11が全閉(S260)して、全ての制御が終了する。
【0035】
(別実施形態)
以上、本実施形態における精米機の流量制御機構について説明したが、本発明は前述した実施形態に必ずしも限定されるものではなく、以下に示す種々の変更が可能である。
【0036】
前述した実施形態の流量制御バルブ11は、
図7に示されるように、円錐部111と円柱部112とが一体に形成されて上下動するものであった。しかし、
図9に示されるように、円錐部と円筒部とからなる整流頭を精米タンク10内に固定配置し、円筒又は円柱状の流量制御バルブ11が、上記整流頭の円筒部内から出入りするように構成して、米穀の流量を調整することも可能である。このように構成すれば、流量制御バルブ11の動作時における負荷を大幅に軽減することが可能である。なお、
図10に示される実施形態のように、流量制御バルブ11の動作状態にかかわらず、米穀が流下する断面が一定である範囲(図示、「光学流量検出部13設置可能範囲」)であれば、光学流量検出部13は精米タンク10の垂直な壁部に限らず、傾斜する壁面に設けることも可能である。
【0037】
また、前述した実施形態に限定されず、本発明の精米機の流量制御機構は、横型の摩擦式精米機や、米粒を研磨する研米機など、他の形式の精米機等に適用することが可能であり、効率的な米穀の流量調整が可能となる。
【0038】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、又は、省略が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 精米タンク
11 流量制御バルブ
12 流量観測窓
13 光学流量検出部
14 駆動シリンダ
20 精米部
21 精米ロール
22 精米室
23 抵抗板
24 精品排出口
30 万石
40 昇降機
50 制御部
100 精米機
111 円錐部
112 円柱部
131 光源装置
132 検出器アレイ装置
133 画像プロセッサ
151 光源装置
152 検出器アレイ装置
153 TOFプロセッサ
154 画像プロセッサ