(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100199
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】剣道握り及び素振り用グリップ
(51)【国際特許分類】
A63B 69/02 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A63B69/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004014
(22)【出願日】2023-01-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】522495854
【氏名又は名称】塩澤 好久
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 好久
(57)【要約】
【課題】初心者であっても、的確な握りを体得でき、また、樹脂製のシャフトに接続して撓りと戻りを好適に体感でき、効果的に剣道の竹刀の握り及び振り(スイング)の練習ができる剣道握り及び素振り用グリップを提供する。
【解決手段】可撓性を有する樹脂製のシャフトの一端の外周に取り付けて剣道竹刀の握り及び素振りを練習するためのグリップであって、前記グリップにおいて、前記シャフトが延びる側に位置する前方端部及び前記前方端部とは反対側に位置する後方端部に、それぞれ右握り溝及び左握り溝、又は、左握り溝及び右握り溝、が互いに所定の距離をおいて形成されており、前記右握り溝及び前記左握り溝のそれぞれが、親指用溝、人差し指用溝、中指用溝、薬指用溝及び小指用溝を有すること、を特徴とする剣道握り及び素振り用グリップ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する樹脂製のシャフトの一端の外周に取り付けて剣道竹刀の握り及び素振りを練習するためのグリップであって、
前記グリップにおいて、前記シャフトが延びる側に位置する前方端部及び前記前方端部とは反対側に位置する後方端部に、それぞれ右握り溝及び左握り溝、又は、左握り溝及び右握り溝、が互いに所定の距離をおいて形成されており、
前記右握り溝及び前記左握り溝のそれぞれが、親指用溝、人差し指用溝、中指用溝、薬指用溝及び小指用溝を有すること、
を特徴とする剣道握り及び素振り用グリップ。
【請求項2】
最大外径が40mm~50mmであり、
長さが250mm~350mmであり、
中央部分の外径が25mm~30mmであること、
を特徴とする請求項1に記載の剣道握り及び素振り用グリップ。
【請求項3】
前記前方端部の径m1が20mm~30mmであり、
前記後方端部の径m2が30mm~40mmであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の剣道握り及び素振り用グリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剣道の練習において素振りをするために用いることができる剣道握り及び素振り用グリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、剣道の練習においては素振りのために、竹刀、木刀、模擬刀などの様々な練習器具が用いられており、竹刀を模した棒状の練習器具も種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1(実用新案登録第3163146号公報)においては、「試合用竹刀よりも若干重く、室内など小スペースで効率的に素振りや相手を想定したしかけ技、応じ技の稽古ができる剣道練習用の素振り棒」が提案されているが、全長が700~1000mmとされており、いわゆる竹刀の撓りを実感することができず、実際に竹刀をタイミング良く振るためには不十分であった。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2(実用新案登録第3197683号公報)においては、「スピードや打撃力が最大になるように、竹刀をタイミングよく振るための力の加え方を覚えることの可能な剣道練習具」が提案されている。具体的には、「打突部とグリップ部とからなり内部に中空部が形成された長尺状の本体部と、前記中空部を長手方向に移動可能な錘とを有することを特徴とする剣道練習具。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3163146号公報
【特許文献2】実用新案登録第3197683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の剣道練習具では、中空部を長手方向に移動可能な錘を有することから、その錘の移動に伴って重心の位置が変動したり、移動する錘の音が不快であったりすることから、実際に竹刀を振ったときの感覚とかけ離れており、必ずしも十分な剣道の振りを体得できるものではなかった。
【0007】
そもそも剣道では、構えが重要であり、構えが決まると自然に体が動いて素早い振りもできると言われており、構えが決まる前提として、しっかりとした握りが必要になるが、竹刀や木刀、更には従来の素振り練習器具ではそこに着目したものはなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、初心者であっても、的確な握りを体得でき、また、樹脂製のシャフトに接続して撓りと戻りを好適に体感でき、効果的に剣道の竹刀の握り及び振り(スイング)の練習ができる剣道握り及び素振り用グリップを提供することにある。また、本発明の目的は、竹刀の振り(スイング)の正確なフォームを体得しつつ、実際の竹刀に近い撓りと戻りと握りを体感しながら、竹刀が相手の面や防具に当たる最適なインパクトを実現することができ、併せて振りのスピードやパワーの向上を図ることができる安価な剣道素振り用練習器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的を達成すべく、剣道素振り用練習器具の形状、構造及び素材等について鋭意研究を重ねた結果、振り時の撓り及び戻りが適度でかつ握りが重要であり、シャフト部分及びグリップ部分に特定の形状及び構造を採用することが極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、
可撓性を有する樹脂製のシャフトの一端の外周に取り付けて剣道竹刀の握り及び素振りを練習するためのグリップであって、
前記グリップにおいて、前記シャフトが延びる側に位置する前方端部及び前記前方端部とは反対側に位置する後方端部に、それぞれ右握り溝及び左握り溝、又は、左握り溝及び右握り溝、が互いに所定の距離をおいて形成されており、
前記右握り溝及び前記左握り溝のそれぞれが、親指用溝、人差し指用溝、中指用溝、薬指用溝及び小指用溝を有すること、
を特徴とする剣道握り及び素振り用グリップ、
を提供する。
【0011】
上記の本発明の剣道握り及び素振り用グリップにおいては、
最大外径が40mm~50mmであり、
長さが250mm~350mmであり、
中央部分の外径が25mm~30mmであること、
が好ましい。
【0012】
更に、上記の本発明の剣道握り及び素振り用グリップにおいては、
前記前方端部の径m1が20mm~30mmであり、
前記後方端部の径m2が30mm~40mmであること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の剣道握り及び素振り用グリップは、例えばグリップに剣道の達人の握りを模した形状及び構造を採用することができるため、初心者であっても、的確な握りを体得でき、また、樹脂製のシャフトに接続すれば、撓りと戻りを好適に体感でき、効果的に剣道の竹刀の握り及び振り(スイング)の練習ができる。
【0014】
また、上記のとおり剣道では、構えが重要であり、構えが決まると自然に体が動いて素早い振りもできると言われており、構えが決まる前提として、しっかりとした握りが必要になるが、本発明の剣道素振り用練習器具によれば、まずはしっかりとした握りを実現しかつ定着させることができ、握りが絞れて脇がしまり、ほぼ自然かつ勝手に力が入ってスピードとパワーが出る。そのため、総じて、実際の竹刀の振りに近い正確なフォームを体得しつつ、竹刀の撓りと戻りをその重みとともに体感して竹刀が相手の面や防具に的確に当たる最適なインパクトの瞬間を体感・体得することができ、併せて振りのスピードやパワーの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る剣道握り及び素振り用グリップ2の概略正面図である。
【
図2】剣道握り及び素振り用グリップ2の右側面図である。
【
図3】剣道握り及び素振り用グリップ2の概略斜視図である。
【
図4】剣道握り及び素振り用グリップ2の概略正面図である。
【
図5】剣道握り及び素振り用グリップ2の概略背面図である。
【
図6】剣道握り及び素振り用グリップ2の概略平面図である。
【
図7】(A)は剣道握り及び素振り用グリップ2の試作品の右握り溝Rを実際に右手で握った様子を示す写真であり、(B)は同試作品の左握り溝Lを実際に左手で握った様子を示す写真である。
【
図8】剣道握り及び素振り用グリップ2を具備する剣道握り及び素振り用練習器具1の概略斜視図である。
【
図9】剣道握り及び素振り用練習器具1の概略正面図である。
【
図10】(a)は剣道握り及び素振り用練習器具1に用いる錘の概略正面図、(b)は同錘の概略平面図、(c)は同錘の概略底面図である。
【
図11】剣道握り及び素振り用練習器具1のグリップ側周辺を拡大して示す概略断面図である。
【
図12】剣道握り及び素振り用練習器具1における撓り幅Xを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の剣道握り及び素振り用グリップ及びこれを含む剣道握り及び素振り用練習器具の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る右利き用の剣道握り及び素振り用グリップ2の概略正面図を示し、
図2に、剣道握り及び素振り用グリップ2の右側面図を示す。また、後述するが、
図8に、剣道握り及び素振り用グリップ2を用いた剣道握り及び素振り用練習器具1の概略斜視図を示し、
図9に、剣道握り及び素振り用練習器具1の概略正面図を示す。
【0018】
図8及び
図9に示すように、本実施形態の剣道握り及び素振り用グリップ2を用いた剣道握り及び素振り用練習器具1は、剣道握り及び素振り用グリップ2と、シャフト4と、を有しており、グリップ2はシャフト4の一端の外周を覆うように設けられている。
【0019】
(1)シャフト
剣道握り及び素振り用グリップ2及び剣道握り及び素振り用練習器具1について種々の素材及び構造を試したところ、握り並びに素振り時の適度な撓り及び戻りを体感でき、本発明の効果をより確実に得るためには、樹脂製のシャフト4の外径が15~20mmであり、剣道素振り用練習器具1の全長が85~125cmであり、撓り時の先端部分から静止時のシャフト4までの垂線の距離(撓り幅)が40~90cm(好ましくは50~80cm)であるのが好ましい。
【0020】
即ち、シャフト4の外径、剣道素振り用練習器具1の全長及び撓り幅を、上記の値とすることで、理想的な重量及び機械的特性(スイング時の撓り及び戻り等)を有する剣道素振り用練習器具を、安価に製造することができる。
【0021】
本実施形態において、シャフト4はポリカーボネート製であり、中空パイプ形状である。外径は上記のとおり、15~20mmであればよく、内径は5~10mmであればよい。シャフト4の製造方法は特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の製造方法を用いることができるが、生産性及び製品価格の観点から、押出成型法又は射出成型法を用いることが好ましい。
【0022】
ポリカーボネートをシャフト4に用いる場合、一般的には、ポリカーボネート樹脂組成物の押出成型又は射出成型は困難であるが、本発明者は、当該組成物の組成を適宜工夫することにより、中空パイプ形状のシャフトも作製できることを見出した。押出成型であればウェルドラインが表れず綺麗な外観を有するシャフト4とすることができる。
【0023】
ここで、剣道握り及び素振り用練習器具1は、全長が85~125cmである。上述のとおり、剣道素振り用練習器具1の全長(
図2における長さl)を85~125cmとすることで、上記のような撓り及び戻りを確実に得られるように、また、使用者の体格や身長並びに剣道で用いられる竹刀の長さに合わせて適当な剣道素振り用練習器具1の長さを選択することができる。
【0024】
(2)グリップ
本実施形態のシャフト4の一端の外周に設けられた剣道握り及び素振り用グリップ2においては、竹刀の握り方を模して、右手と左手と間隔を空けて握ることができる構造を有しており、なかでも剣道の達人の握りを模した形状を持たせるのがこのましい。これにより初心者であっても的確な握りを体得しながら、剣道の素振り練習ができる。
【0025】
ここで、
図3~7は、それぞれ、右利き用の剣道握り及び素振り用練習器具1における剣道握り及び素振り用グリップ2の概略斜視図、概略正面図、概略背面図、概略平面図及び概略底面図である。
図3に示すように、左端部にはシャフト4を挿入する開口部6が設けられており、図示しないがこの開口部6がグリップ2の右端部まで内部空間として延びている。なお、右端部は閉じており有底である。
【0026】
シャフト4が延びる側に位置する前方端部には、右手で握るための右握り溝Rが設けられており、前方端部とは反対側に位置する後方端部には、左手で握るための左握り溝Lが設けられている。また、右握り溝Rと左握り溝Lとは互いに所定の間隔Sの距離をおいて形成されている。即ち、
図3に示すように、右手で握る右握り溝Rの最も手前の部分から、左手で握る左握り溝Lの最も先端の部分までに、所定の間隔Sが設けられている。
【0027】
グリップ2の長さL(
図1参照)及び所定の間隔S(
図3~7参照)は、実際の竹刀の柄の長さに応じて、使用者が選択することができる。グリップ2の長さLは、例えば250mm~350mmであればよく、所定の間隔Sは、例えば50mm~150mmであればよい。
【0028】
また、グリップ2においては、
図1及び
図2に示されるそれぞれの部分の寸法が、下記のとおりであるのが好ましいことを見出した。
(1)最大外径D(
図2参照): 40mm~50mm
(2)中央部分の外径d(
図1参照): 25mm~30mm
(3)前方端部の径m1(
図1参照): 20mm~30mm
(4)後方端部の径m2(
図1参照): 30mm~40mm
【0029】
より詳細に説明すると、本実施形態のグリップ2の右握り溝Rは、
図4及び
図5に示すように、右手で握って指を巻き付けることができるように、互いに隣接して設けられた親指用溝fr1、人差し指用溝fr2、中指用溝fr3、薬指用溝fr4及び小指用溝fr5を有している。また、左握り溝Lは、
図4~
図6に示すように、左手で握って指を巻き付けることができるように、互いに隣接して設けられた親指用溝fl1、人差し指用溝fl2、中指用溝fl3、薬指用溝fl4及び小指用溝fl5を有している。
【0030】
なお、
図4において、右握り溝Rの中指用溝fr3、薬指用溝fr4及び小指用溝fr5の長さ方向の角度は、グリップ2の長さ方向に対して、いずれも30°~50°(好ましくは40°~50°)であるのがよい。また、
図6において、左握り溝Lの中指用溝fl3、薬指用溝fl4及び小指用溝fl5の長さ方向の角度は、グリップ2の長さ方向に対して、いずれも40°~60°(好ましくは45°~60°)であるのがよい。
【0031】
更に、的確な握りと素振りを習得する観点から、右握り溝Rの中指用溝fr3の幅X、薬指用溝fr4の幅Y及び小指用溝fr5の幅Z(
図4及び1参照)は、それぞれ15mm~20mmであり、左握り溝Lの中指用溝fl3の幅P、薬指用溝fl4の幅Q及び小指用溝fl5の幅Rは、それぞれ20~25mmであるのが好ましい。また、P、Q、R及びSのほうがX、Y及びZよりも若干広いほうが、左手を右手よりも強く握ることとなり、的確な握りと素振りをより効果的に習得できる。
【0032】
なお、本発明者は本実施形態のグリップ2を試作し、右握り溝R及び左握り溝Lをそれぞれ右手及び左手で握った様子を示す写真を、
図7に示す。
図7(A)はグリップ2の試作品の右握り溝Rを実際に右手で握った様子を示す写真であり、
図7(B)は同試作品の左握り溝Lを実際に左手で握った様子を示す写真である。
【0033】
このように本実施形態のグリップ2では、模した達人の握りに合わせて、自然と小指及び薬指の部分でしっかりと握ることができ、他方人差し指及び親指の部分ではやや緩やかに握ることができることから、実際の竹刀の撓りと戻りを体感して竹刀が相手の面や防具に的確に当たる最適なインパクトの瞬間を体感・体得できる。
【0034】
グリップ2は、例えば弾性材料を用いて成形されたものであり、グリップ2の外周面は、平滑面でも粗面であってもよいが、竹刀の柄を模して、例えばシボ加工により、滑り止めを兼ねた細かい凹凸模様等が形成されていてもよい。
【0035】
グリップ2を構成する弾性材料としては、例えばゴムや合成樹脂エラストマー等が好ましく使用されるが、これらに限定されるものではなく、インサート成形が可能でグリップに適した弾力性や柔軟性を有する材料であれば、全て使用可能である。
【0036】
(3)錘
次に、本実施形態の剣道握り及び素振り用練習器具1に用いるグリップ2の開口部6の奥底、又は、シャフト4が中空の場合にはその内部に、剣道素振り用練習器具1の長さ方向における重心の位置を調整するために、錘を入れてもよい。
【0037】
図10は、中空のシャフト4の末端部と、グリップ2の開口部6の奥底と、の間に設けることのできる錘8の概略正面図(a)、同錘の概略平面図(b)及び同錘の概略底面図(c)を示す。錘8の形状は特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で種々の形状とすることができるが、錘本体10と差込部10aとを有していることが好ましい。
【0038】
また、差込部10aの形状は特に限定されないが、シャフト4の内径に挿入可能な形状が好ましく、シャフト4の内径に略同一の横断面を有する円柱状で軸状であることがより好ましい。差込部10aの形状がシャフト4の内径に略同一な円柱状であれば、差込部10aをシャフト4の内径に挿入することで機械的に接続することが可能となる。加えて、差込部10aの表面に接着剤を塗布した状態でシャフト4の内径に挿入することで、より強固に錘8をシャフト4に固定することができる。
【0039】
また、錘本体10の形状も特に限定されないが、シャフト4の外径と略同一な直径を有する略円柱状であることが好ましい。錘本体10をシャフト4の外径と略同一な直径を有する円柱状とすることで、差込部10aをシャフト4の内径に挿入した際、錘本体10はシャフト4内部に入り込むことに対するストッパーとして用いることができるだけでなく、グリップ2の被覆が容易となる。
【0040】
錘8の比重及び長さはそれぞれ5~22及び3~20cm(好ましくは5~10cm)であればよい。これにより、より確実に、グリップ2に重みを与えることができ、重みを実感しつつ竹刀の素振りの練習をすることができる。また、比較的比重が大きな材質の長い錘を用いることで、グリップ2内部の限られた空間に好適に錘8を挿入・固定することができる。
【0041】
錘8に用いる材料は、比重が5~22であれば特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の材料を用いることができるが、例えば、亜鉛(比重7.14)、鉄(比重7.86)、銅(比重8.93)、鉛(比重11.34)等の汎用金属や、真鍮(比重8.45)等のそれらの合金を用いることが好ましい。
【0042】
図11に、本発明の一実施形態に係る剣道握り及び素振り用練習器具1のグリップ側周辺を拡大して示す概略断面図を示す。グリップ2は図示していないが、シャフト4の一方の端部に錘8を挿入・固定した状態でグリップ2の開口部6に挿入することにより、グリップ2でシャフト4の当該一方の端部を被覆する。また、シャフト4及び錘8とグリップ2との間に両面テープを配置することで、シャフト4及び錘8とグリップ2とをより強固に固定することもできる。
【0043】
(4)その他
次に、
図12に、剣道握り及び素振り用練習器具1における撓り幅Xを説明するための模式図を示す。本実施形態の剣道握り及び素振り用練習器具1は、
図12に示すように、撓り時P1の先端部分から静止時P2のシャフトまでの垂線の距離(撓り幅X)が40~90cm(好ましくは50~80cm)である。
【0044】
本実施形態の剣道握り及び素振り用練習器具1は、上記のような構成を具備することにより、剣道の竹刀の素振りに適した従来に無い撓り幅Xを実現することができる。この撓り幅Xは、素振り時の動画撮影をして得た映像をコマ送りすることや、剣道素振り用練習器具1の一端を万力等で固定しながら曲げて行き、破断直前の他端の位置を特定すること等により、測定することができる。
【0045】
このような従来に無い剣道の竹刀を想定した撓り幅Xにより、特に、通常の竹刀に対する利点として、安価で簡易な構造によって通常の竹刀と同等以上の撓りと戻りを体感することができ、好ましい握り方と相俟って、竹刀の素振りの正確なフォームを体得しつつ、竹刀の撓りと戻りを体感して竹刀が相手の面や防具に当たる最適なインパクトゾーンを身に付けることができ、併せて振りのスピードやパワーの向上を図ることができる。
【0046】
以上のように構成された本実施形態の剣道握り及び素振り用グリップによれば、初心者であっても、的確な握りを体得でき、また、樹脂製のシャフトに接続して撓りと戻りを好適に体感でき、効果的に剣道の竹刀の握り及び振り(スイング)の練習ができる。また、本実施形態の剣道握り及び素振り用練習器具を用いてスイングパワーの向上を図る場合、使用者は適度な重量感と撓りを体感でき、素振りを繰り返すことでパワーアップ効果及びストレッチ効果を得ることができる。加えて、スイングの正確なリズムやタメ等をチェックすることができ、理想的な剣道の素振りを短期間で効果的に体得することができる。
【0047】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・剣道握り及び素振り用練習器具、
2・・・剣道握り及び素振り用グリップ、
4・・・シャフト、
6・・・開口部、
8・・・錘、
10・・・錘本体、
10a・・・差込部。