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  • 特開-防舷構造物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100202
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】防舷構造物
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/26 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
E02B3/26 J
E02B3/26 Z
E02B3/26 C
E02B3/26 B
E02B3/26 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004017
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中村 直志
(72)【発明者】
【氏名】八木 健太郎
(57)【要約】
【課題】すきま腐食の発生が抑制される防舷構造物を提供することを目的とする。
【解決手段】海洋構造物に取り付けられるステンレス鋼板10と、前記ステンレス鋼板10に取り付けられ、摩擦係数が所定値以下である防水材20と、前記防水材20に取り付けられるゴム製防舷材30と、を備え、前記防水材20は、前記ステンレス鋼板10の表面であって前記防水材20及び前記ゴム製防舷材30の側の表面、に垂直な方向に沿って見て、前記ゴム製防舷材30の端部であって前記防水材20及び前記ステンレス鋼板10の側の端部と前記ステンレス鋼板10とが重なる範囲を含む、ことを特徴とする防舷構造物100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋構造物に取り付けられるステンレス鋼板と、
前記ステンレス鋼板に取り付けられ、摩擦係数が所定値以下である防水材と、
前記防水材に取り付けられるゴム製防舷材と、を備え、
前記防水材は、前記ステンレス鋼板の表面であって前記防水材及び前記ゴム製防舷材の側の表面、に垂直な方向に沿って見て、前記ゴム製防舷材の端部であって前記防水材及び前記ステンレス鋼板の側の端部と前記ステンレス鋼板とが重なる範囲を含む、ことを特徴とする防舷構造物。
【請求項2】
前記ステンレス鋼板の表面は、防食のためにコーティング処理されることを特徴とする請求項1に記載の防舷構造物。
【請求項3】
前記防水材は、シート状又は板状であることを特徴とする請求項2に記載の防舷構造物。
【請求項4】
前記防水材と前記ステンレス鋼板の表面が密着することを特徴とする請求項3に記載の防舷構造物。
【請求項5】
前記防水材と前記ステンレス鋼板の表面がくっつくことを特徴とする請求項4に記載の防舷構造物。
【請求項6】
前記防水材は、前記ステンレス鋼板より薄いことを特徴とする請求項5に記載の防舷構造物。
【請求項7】
前記ゴム製防舷材は、前記防水材及び前記ステンレス鋼板にボルトで取り付けられ、
前記ステンレス鋼板に設けられるボルト穴部であって、前記ボルトが挿通される前記ボルト穴部の内周面が、前記防食のために前記コーティング処理されることを特徴とする請求項6に記載の防舷構造物。
【請求項8】
前記ボルトは、コーティング処理される炭素鋼であることを特徴とする請求項7に記載の防舷構造物。
【請求項9】
前記防水材は、テフロン(登録商標)製の板を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の防舷構造物。
【請求項10】
前記防水材の摩擦係数が0.08~0.1であることを特徴とする請求項9に記載の防舷構造物。
【請求項11】
前記テフロン(登録商標)製の板の表面のうち、前記ステンレス鋼板の側の表面が、スパッタエッチング処理されることを特徴とする請求項9に記載の防舷構造物。
【請求項12】
前記防水材は、UHMWPE板またはHDPE板であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の防舷構造物。
【請求項13】
前記UHMWPE板または前記HDPE板の表面のうち、前記ステンレス鋼板の側の表面は、ポリオレフィン系接着剤が塗布されることを特徴とする請求項12に記載の防舷構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防舷構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な構造の防舷材が知られている。防舷材の構造としては、防舷材が弾性材を介して鋼板に取り付けられるものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-20625号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「材料」第31巻 第349号 保坂信義、石川雄一、西田脩著「ゴム質材料によるステンレス鋼のすきま腐食とその防食法に関する二,三の検討」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非特許文献1によれば、ステンレス鋼のすきま腐食に及ぼすゴム質材料の影響について開示されている。特許文献1に開示された防舷材では、この種のすきま腐食が発生を抑制することに改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、すきま腐食の発生が抑制される防舷構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
【0008】
本発明の防舷構造物は、海洋構造物に取り付けられるステンレス鋼板と、前記ステンレス鋼板に取り付けられ、摩擦係数が所定値以下である防水材と、前記防水材に取り付けられるゴム製防舷材と、を備え、前記防水材は、前記ステンレス鋼板の表面であって前記防水材及び前記ゴム製防舷材の側の表面、に垂直な方向に沿って見て、前記ゴム製防舷材の端部であって前記防水材及び前記ステンレス鋼板の側の端部と前記ステンレス鋼板とが重なる範囲を含むことを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、前記垂直な方向に沿ってみて、ゴム製防舷材におけるステンレス鋼板側の端部と、ステンレス鋼板と、が重なる範囲に防水材が配置されている。防水材を設けることで海水がステンレス鋼板に接触し難くなり、ステンレス鋼板が錆びにくくなる効果が得られる。
【0010】
また、上記の防舷構造物において、前記ステンレス鋼板の表面は、防食のためにコーティング処理されていてもよい。
【0011】
この発明によれば、耐食性の高いステンレス鋼板にさらにコーティング処理を行うことで、より高い耐食性を有するステンレス鋼板を得られることが出来る。
【0012】
また、上記の防舷構造物において、前記防水材は、シート状又は板状であってもよい。
【0013】
この発明によれば、防水材がステンレス鋼板に密着させやすくなり、ステンレス鋼板のすきま腐食をより確実に抑制出来る効果が得られる。
【0014】
また、上記の防舷構造物において、前記防水材と前記ステンレス鋼板の表面が密着してもよい。
【0015】
この発明によれば、より確実にすきま腐食を抑制することが出来る。
【0016】
また、上記の防舷構造物において、前記防水材と前記ステンレス鋼板の表面がくっついてもよい。
【0017】
この発明によれば、より確実にすきま腐食を抑制することが出来る。
【0018】
また、上記の防舷構造物において、前記防水材は、前記ステンレス鋼板より薄くてもよい。
【0019】
この発明によれば、より低いコストで防舷構造物を製造することが出来る。
【0020】
また、上記の防舷構造物において、前記ゴム製防舷材は、前記防水材及び前記ステンレス鋼板にボルトで取り付けられ、前記ステンレス鋼板に設けられるボルト穴部であって、前記ボルトが挿通される前記ボルト穴部の内周面が、前記防食のために前記コーティング処理されていてもよい。
【0021】
この発明によれば、ボルト穴部の内周面がコーティング処理されているため、ボルト穴部が腐食しにくくなる効果が得られる。
【0022】
また、上記の防舷構造物において、前記ボルトは、コーティング処理される、炭素鋼であってもよい。
【0023】
この発明によれば、ボルトがコーティング処理されているため、ボルトが腐食しにくくなる効果が得られる。また、ボルトにステンレスでなく、比較的安価な鋼材を採用すること等もできる。
【0024】
また、上記の防舷構造物において、前記防水材は、テフロン(登録商標)製の板を含んでもよい。
【0025】
この発明によれば、テフロン(登録商標)製の板の表面がなめらかであるため、防舷構造物に対象物が接舷したときにゴム製防舷材が変形しても、ゴム製防舷材がテフロン(登録商標)製の板の表面に引っ掛かりにくい。これにより、テフロン(登録商標)製の板が捲れ上がるような力が生じにくい。これにより、防水材とステンレス鋼板が密着する状態が持続され、ステンレス鋼板のすきま腐食をより確実に抑制出来る効果が得られる。
【0026】
また、上記の防舷構造物において、前記防水材の摩擦係数が0.08~0.1であってもよい。
【0027】
この発明によれば、テフロン(登録商標)製の板の表面が確実になめらかになり、上述の効果が顕著に得られる。
【0028】
また、上記の防舷構造物において、前記テフロン(登録商標)製の板の表面のうち、前記ステンレス鋼板の側の表面が、スパッタエッチング処理されていてもよい。
【0029】
この発明によれば、ステンレス鋼板とテフロン板がより密着しやすくなる効果が得られる。
【0030】
また、上記の防舷構造物において、前記防水材は、UHMWPE板またはHDPE板であってもよい。
【0031】
この発明によれば、UHMWPE板またはHDPE板の表面がなめらかであるため、防舷構造物に対象物が接舷したときにゴム製防舷材が変形しても、ゴム製防舷材がUHMWPE板またはHDPE板の表面に引っ掛かりにくい。これにより、UHMWPE板またはHDPE板が捲れ上がるような力が生じにくい。これにより、防水材とステンレス鋼板が密着する状態が持続され、ステンレス鋼板のすきま腐食をより確実に抑制出来る効果が得られる。
【0032】
また、上記の防舷構造物において、前記UHMWPE板または前記HDPE板の表面のうち、前記ステンレス鋼板の側の表面は、ポリオレフィン系接着剤が塗布されていてもよい。
【0033】
この発明によれば、ステンレス鋼板とUHMWPE板またはHDPE板がより密着しやすくなる効果が得られる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、すきま腐食の発生が抑制される防舷構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態に係る防舷構造物の概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る防舷構造物の部分概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る防舷構造物100について説明する。図1は、ステンレス鋼板10と、ステンレス鋼板10に取り付けられる防水材20と、防水材20に取り付けられるゴム製防舷材30と、を備える。なお、ステンレス鋼板10は、例えば、岸壁にある海洋構造物に取り付けられる。海洋構造物としては、例えば、ジャケット構造体が挙げられる。ジャケット構造体は、複数の鋼材が組み合わされてなる。
【0037】
(ステンレス鋼板10)
ステンレス鋼板10は、海洋構造物に接するように平板状に設けられており、海洋構造物に接する側と反対の側においてゴム製防舷材30と接続されている。ステンレス鋼板10の表面(例えば、前記反対の側を向く面)は、防食のためにコーティング処理される。コーティング処理は、超厚膜エポキシ樹脂、接着剤、防錆剤、テフロン(登録商標)系塗装等を用いてもよい。また、コーティング処理はステンレス鋼板10の表面全体に塗布されていてもよい。コーティング処理により、ステンレス鋼板10と、防水材20の表面が密着し、くっつく。ここで、ステンレス鋼板10と防水材20とが密着していることは、ステンレス鋼板10と防水材20とが固着されているか否かによらず、ステンレス鋼板10と防水材20とが密に接している状態を表す。ステンレス鋼板10と防水材20とがくっついていることは、ステンレス鋼板10と防水材20とが密着している上で、ステンレス鋼板10と防水材20とが固着されている状態を表す。
【0038】
図2の通り、ステンレス鋼板10は、防舷構造物100を岸壁に取り付けるためのボルト40を挿通するための複数のボルト穴部11を備える。複数のボルト穴部11は、ステンレス鋼板10とゴム製防舷材30との接続部分の外側の取り付け部分において設けられており、ステンレス鋼板10を貫通している。ボルト穴部11には、雌ねじが設けられていない。ボルト穴部11は、内周面が平滑な単なる円柱状の空洞である。ボルト穴部11には、後述するボルト40が単に挿通されているだけであり、ボルト40が固定されていない。なおこのボルト穴部11は、後述するように、ステンレス鋼板10、防水材20、ゴム製防舷材30と一体に貫通している。
【0039】
(防水材20)
防水材20は、ステンレス鋼板10の表面であって防水材20及びゴム製防舷材30の側の表面、に垂直な方向(すなわち、図1に示す紙面の上下方向A)に沿って見て、ゴム製防舷材30の端部であって防水材20及びステンレス鋼板10の側の端部とステンレス鋼板10とが重なる範囲を含む。これにより、ゴム製防舷材30およびステンレス鋼板10の端部から水が入り難くなり、すきま腐食の発生が抑制される。
【0040】
防水材20の表面の摩擦係数(例えば、静止摩擦係数)が所定値以下である。摩擦係数を所定値以下の低摩擦係数とすることで、防舷構造物100に対象物が接舷したときにゴム製防舷材30が変形しても、ゴム製防舷材30が防水材20の表面に引っ掛かりにくい。これにより、防水材20が捲れ上がるような力が生じにくい。これにより、防水材20とステンレス鋼板10が密着する状態が持続され、ステンレス鋼板10のすきま腐食をより確実に抑制出来る効果が得られる。
【0041】
防水材20は、シート状又は板状であってもよい。防水材20をシート状又は板状とすることで、コーティング処理を介してステンレス鋼板10により密着させやすくなる。
【0042】
防水材20は、ステンレス鋼板10より薄くてもよい。これにより、より低コストで防舷構造物100を施工することが出来る。
【0043】
防水材20としては、例えば、エポキシ系樹脂・アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂・フッ素系樹脂・ビニルエステル樹脂・フタル酸系樹脂・ガラスフレーク入り樹脂・炭素繊維入り樹脂等の樹脂系塗装・シート・板、ペトロラタム系シート・テープ、コンクリート・モルタル・グラウト等セメント、ポリウレタン被覆を用いてもよい。
【0044】
また、防水材20は、テフロン(登録商標)製の板を含んでもよい。テフロン(登録商標)とは、フッ素樹脂の一種であり、テフロン(登録商標)製の板とは、フッ素樹脂製の板である。以下、テフロン(登録商標)製の板を、フッ素樹脂板とも言う。防舷構造物100に対象物が接舷したときに、その衝撃でゴム製防舷材30が変形することがある。防水材20の摩擦係数が高いと、ゴム製防舷材30が変形する衝撃で防水材20も捲れあがることがあった。これにより、防水材20とステンレス鋼板10の間にすきまが生じ、すきま腐食が発生することがあった。
フッ素樹脂板を備えた防水材20の表面はなめらかであるため、防舷構造物100に対象物が接舷したときにゴム製防舷材30が変形しても、ゴム製防舷材30がフッ素樹脂板の表面に引っ掛かりにくい。これにより、フッ素樹脂板の板が捲れ上がるような力が生じにくい。また、フッ素樹脂板の表面のうち、ステンレス鋼板10の側の表面が、スパッタエッチング処理されていてもよい。スパッタエッチング処理をすることで、ステンレス鋼板10の側の表面が粗くなり、よりステンレス鋼板10の側の表面が防水材20のフッ素樹脂板との接着性が向上し、密着しやすくなる。
【0045】
また、フッ素樹脂板を備えた防水材20は、その表面の摩擦係数(例えば、静止摩擦係数)が0.08~0.1であってもよい。摩擦係数を0.08~0.1の低摩擦係数とすることで防舷構造物100に対象物が接舷したときにゴム製防舷材30が変形しても、ゴム製防舷材30がフッ素樹脂板の表面に引っ掛かりにくい。これにより、フッ素樹脂板の板が捲れ上がるような力が生じにくい。これにより、防水材20とステンレス鋼板10が密着する状態が持続され、ステンレス鋼板10のすきま腐食をより確実に抑制出来る効果が得られる。
【0046】
また、防水材20は、UHMWPE板やHDPE板であってもよい。UHMWPE板は、UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)製の板であり、またHDPE板はHDPE(高密度ポリエチレン)製の板である。UHMWPE板、またはHDPE板を備えた防水材20は、フッ素樹脂板と同様に、より摩擦係数が低くなる。これにより、防舷構造物100に対象物が接舷したときにゴム製防舷材30が変形しても、ゴム製防舷材30がUHMWPE板、またはHDPE板の表面に引っ掛かりにくい。これにより、UHMWPE板、またはHDPE板が捲れ上がるような力が生じにくい。また、UHMWPE板、またはHDPE板の表面のうち、ステンレス鋼板10の側の表面は、ポリオレフィン系接着剤が塗布されていてもよい。
【0047】
(ゴム製防舷材30)
また、図2のように、ゴム製防舷材30は、板状部31と、突出部32と、を備えている。板状部31は、ゴム製防舷材30の端部であって、防水材20及びステンレス鋼板10の側の端部となる。突出部32は、板状部31から、防水材20及びステンレス鋼板10に対する反対の側に突出する。突出部32の形状は、適宜選択可能である。例えば、突出部32は、中実の台形状であってもよく、中空の台形状や太鼓状や円柱状であってもよい。また太鼓状、円柱状のエクセルコーン(登録商標、西武ポリマ化成株式会社製)II型防舷材であってもよく、受衝板付防舷材CP型またはSPC型(シバタ工業株式会社製)であってもよい。突出部32は、防水材20の端部であって、前記反対の側の端部となる。突出部32には、対象物が接舷する。
【0048】
なお前述したように、防水材20は、前記垂直な方向に沿って見て、ゴム製防舷材30の端部であって防水材20及びステンレス鋼板10の側の端部とステンレス鋼板10とが重なる範囲を含んでおり、本実施形態では、防水材20は、板状部31とステンレス鋼板10とが重なる範囲を含んでいる。防水材20は、板状部31とステンレス鋼板10とが重なる範囲の全域にわたって設けられている。言い換えると、図示の例では、板状部31とステンレス鋼板10との間に、防水材20が設けられていない領域は存在していない。
【0049】
また本実施形態のように、ゴム製防舷材30は、防水材20及びステンレス鋼板10にボルト40で取り付けられていてもよい。ボルト40は、ステンレス鋼板10に設けられるボルト穴部11により取り付けられる。なお、ボルト40の雄ネジは、ステンレス鋼板10が取り付けられる海洋構造物に螺着されていればよい。この場合、ボルト40の頭部と海洋構造物との間で、ゴム製防舷材30、防水材20及びステンレス鋼板10を一体に挟み込んで固定できる。なおボルト穴部11は、ゴム製防舷材30において、突出部32ではなく板状部31に設けられている。
【0050】
ボルト40は、コーティング処理又はテフロン系塗装される炭素鋼であってもよい。また、ボルト40はステンレス製であってもよい。さらに、ボルト40が挿通されるボルト穴部11の内周面が、防食のためにコーティング処理されていてもよい。特にボルト穴部11のうち、ステンレス鋼板10に設けられている部分の内周面に、コーティング処理がされていることが好ましい。ボルト40およびボルト穴部11へのコーティング処理は、ステンレス鋼板10へのコーティング処理と同様の構成が採用できる。これにより、ボルト40も、ボルト穴部11もより腐食しにくくなる効果が得られる。
【0051】
また、ゴム製防舷材30は、船舶の接舷時の衝撃を和らげる。ゴム製防舷材30としては、ゴム(天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等)、弾性を有するポリウレタン等よりなる高分子材料等の弾性体により形成されていてもよい。
【0052】
また、ゴム製防舷材30の形状は、台形であってもよい。台形とすることで、摩擦力が均等にゴム製防舷材30に生じる。これにより、摩擦力が防水材20にも均等に生じ、防水材20が捲れあがりにくくなる。
【0053】
また、ゴム製防舷材30は、一枚板、平板、平板状であってもよい。一枚板、平板、平板状とすることで、摩擦力が均等にゴム製防舷材30に生じる。これにより、摩擦力が防水材20にも均等に生じ、防水材20が捲れあがりにくくなる。
【0054】
(防舷構造物100)
防舷構造物100は、1つの海洋構造物に1つあってもよく複数あってもよい。また、複数の防水材20の厚みは同じであってもよい。工場で製造されたジャケット構造体に防舷構造物100が取り付けられている状態で、防舷構造物100は海洋構造物の一部として現地に運ばれる。防舷構造物100に対象物が接舷したときに、ゴム製防舷材30は衝突によりそれぞれ歪み、ゴム製防舷材30の高さがそれぞれ異なることがある。そのため、防水材20の表面にライナープレートを設けて高さを調整してもよい。実際の岸壁には凸凹があるが、ライナープレートを設けることで防舷構造物100が海洋構造物により強固に接弦しやすくなる。
【0055】
このようにして構成すると、ステンレス鋼板10と防水材20がコーティング処理によりぴったりと密着し、ステンレス鋼板10の表面全体に防水材20が覆っているため、ステンレス鋼板10と防水材20のすきまが生じにくく、高い耐腐食性を有する。さらに、防舷構造物100に対象物が接舷したときにゴム製防舷材30が変形しても、防水材20の捲れあがりが起きにくくなり、ステンレス鋼板10と防水材20のすきまが生じにくくなる。これにより、ステンレス鋼板10と防水材20の間にすきま腐食が発生しにくい効果が得られる。さらに、防舷構造物100が防水材20を設けることでステンレス鋼板がより腐食しにくくなる。
【0056】
また、防舷構造物100を岸壁に取り付けたとき、ステンレス鋼板10自体が岸壁に直接的に接するようになる。このため、ステンレス鋼板10を岸壁に取り付けたとき、岸壁への固定がより強固なものとなる。
【0057】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、本実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 防舷構造物
10 ステンレス鋼板
11 ボルト穴部
20 防水材
30 ゴム製防舷材
31 板状部
32 突出部
40 ボルト
図1
図2