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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100211
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】コイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20240719BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01F41/04 C
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004030
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】石間 雄也
(72)【発明者】
【氏名】小森田 健二
(72)【発明者】
【氏名】服部 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】戸沢 洋司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 聖樹
(72)【発明者】
【氏名】梅田 秀信
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】生出 章彦
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062DD04
5E070AA01
5E070AB02
5E070BA12
5E070CB13
(57)【要約】
【課題】形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制可能なコイル部品の製造方法を提供する。
【解決手段】コイル部品の製造方法は、素体と、素体内に配置され、互いに異なる形状を有している第一コイル導体及び第二コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、基板上に第一感光性導電ペーストを付与し、第一コイル導体に対応するパターンで露光することにより、第一硬化パターンを形成する工程S2と、第一硬化パターンを形成する工程S2後に、第一感光性導電ペースト上に第二感光性導電ペーストを付与し、第二コイル導体に対応するパターンで露光することにより、第二硬化パターンを形成する工程S4と、第二硬化パターンを形成する工程後S4に、露光されなかった第一感光性導電ペースト及び第二感光性導電ペーストを現像する工程S7と、現像する工程S7後に、基板上に絶縁材を充填する工程S9と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、前記素体内に配置され、互いに異なる形状を有している第一コイル導体及び第二コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、
基板上に第一感光性導電ペーストを付与し、前記第一コイル導体に対応するパターンで露光することにより、第一硬化パターンを形成する工程と、
前記第一硬化パターンを形成する工程後に、前記第一感光性導電ペースト上に第二感光性導電ペーストを付与し、前記第二コイル導体に対応するパターンで露光することにより、第二硬化パターンを形成する工程と、
前記第二硬化パターンを形成する工程後に、露光されなかった前記第一感光性導電ペースト及び前記第二感光性導電ペーストを現像する工程と、
前記現像する工程後に、前記基板上に絶縁材を充填する工程と、を含む、
コイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記第一硬化パターンを形成する工程では、前記第一感光性導電ペーストの付与及び露光を繰り返して前記第一硬化パターンを形成し、
前記現像する工程では、露光されなかった複数の前記第一感光性導電ペースト及び前記第二感光性導電ペーストを現像する、
請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記第一硬化パターンを形成する工程と前記第二硬化パターンを形成する工程との間に、前記第一硬化パターン上に絶縁層を形成する工程を更に含む、
請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記現像する工程と前記充填する工程との間に、前記第一硬化パターン及び前記第二硬化パターンを焼成する工程を更に含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記充填する工程後に、前記第一硬化パターン、前記第二硬化パターン、及び前記絶縁材を焼成する工程を更に含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記現像する工程前に、前記コイルに接続される端子電極となる導電ペーストを前記基板上に形成する工程を更に含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項7】
素体と、前記素体内に配置され、コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、
基板上に感光性導電ペーストを付与し、前記コイル導体に対応するパターンで露光することにより、硬化パターンを形成する工程と、
前記硬化パターンを形成する工程後に、露光されなかった前記感光性導電ペーストを現像する工程と、
前記現像する工程後に、前記基板上に絶縁材を充填する工程と、を含み、
前記硬化パターンを形成する工程では、前記感光性導電ペーストの付与及び露光を繰り返して前記硬化パターンを形成し、
前記現像する工程では、露光されなかった複数の前記感光性導電ペーストを現像する、
コイル部品の製造方法。
【請求項8】
素体と、前記素体内に配置され、コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、
基板上に感光性導電ペーストを付与し、前記コイル導体に対応するパターンで露光することにより、硬化パターンを形成する工程と、
前記硬化パターンを形成する工程後に、前記硬化パターン上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を形成する工程後に、露光されなかった前記感光性導電ペーストを現像する工程と、
前記現像する工程後に、前記基板上に絶縁材を充填する工程と、を含む、
コイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、素体内に配置されたコイルとを備えるコイル部品の製造方法として、たとえば、特許文献1及び特許文献2に記載された製造方法が知られている。特許文献1に記載された製造方法は、フォトリソグラフィ法により導体層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法により開口が設けられた絶縁ペースト層を形成する工程とを含む。特許文献2に記載された製造方法は、フォトリソグラフィ法を用いて基板上に導体ペースト層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法を用いて導体ペースト層を覆うようにガラスペースト層を形成する工程と、基板上の導体ペースト層及びガラスペースト層が存在しない領域に、焼成後に除去可能な保持層を形成する工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/006542号公報
【特許文献2】特開2019-186525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、導体層のパターン上に絶縁ペースト層のパターンを形成する際、形成面の段差を埋めるために、絶縁ペーストを厚く形成する必要がある。特許文献2に記載された製造方法では、保持層を設けることにより、形成面をフラットに保つことができるものの、工程数が増加する。
【0005】
本開示は、形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制可能なコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一態様に係るコイル部品の製造方法は、素体と、素体内に配置され、互いに異なる形状を有している第一コイル導体及び第二コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、基板上に第一感光性導電ペーストを付与し、第一コイル導体に対応するパターンで露光することにより、第一硬化パターンを形成する工程と、第一硬化パターンを形成する工程後に、第一感光性導電ペースト上に第二感光性導電ペーストを付与し、第二コイル導体に対応するパターンで露光することにより、第二硬化パターンを形成する工程と、第二硬化パターンを形成する工程後に、露光されなかった第一感光性導電ペースト及び第二感光性導電ペーストを現像する工程と、現像する工程後に、基板上に絶縁材を充填する工程と、を含む。
【0007】
上記第一態様に係るコイル部品の製造方法では、第一感光性導電ペースト及び第二感光性導電ペーストを露光して第一硬化パターン及び第二硬化パターンを形成した後に、露光されなかった第一感光性導電ペースト及び第二感光性導電ペーストを一括で現像するので、第二感光性導電ペーストが形成される形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制することができる。
【0008】
第一硬化パターンを形成する工程では、第一感光性導電ペーストの付与及び露光を繰り返して第一硬化パターンを形成し、現像する工程では、露光されなかった複数の第一感光性導電ペースト及び第二感光性導電ペーストを現像してもよい。この場合、二層目以降の第一感光性導電ペースト及び第二感光性導電ペーストが形成される形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制しつつ、第一硬化パターンを高アスペクトで形成することができる。
【0009】
上記第一態様に係るコイル部品の製造方法は、第一硬化パターンを形成する工程と第二硬化パターンを形成する工程との間に、第一硬化パターン上に絶縁層を形成する工程を更に含んでもよい。このように、第一硬化パターンと第二硬化パターンとの間に絶縁層を挟む場合も、絶縁層及び第二感光性導電ペーストが形成される形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制することができる。
【0010】
上記第一態様に係るコイル部品の製造方法は、現像する工程と充填する工程との間に、第一硬化パターン及び第二硬化パターンを焼成する工程を更に含んでもよい。この場合、充填する絶縁材として、耐熱性が低い材料を用いることができる。
【0011】
上記第一態様に係るコイル部品の製造方法は、充填する工程後に、第一硬化パターン、第二硬化パターン、及び絶縁材を焼成する工程を更に含んでもよい。この場合、充填する絶縁材として、焼成により磁性が発現する材料を用いることができる。
【0012】
上記第一態様に係るコイル部品の製造方法は、現像する工程前に、コイルに接続される端子電極となる導電ペーストを基板上に形成する工程を更に含んでもよい。この場合、コイルと共に端子電極を形成することができる。コイルの形成後に端子電極を形成する必要がないので、工程数を減らすことができる。
【0013】
本開示の第二態様に係るコイル部品の製造方法は、素体と、素体内に配置され、コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、基板上に感光性導電ペーストを付与し、コイル導体に対応するパターンで露光することにより、硬化パターンを形成する工程と、硬化パターンを形成する工程後に、露光されなかった感光性導電ペーストを現像する工程と、現像する工程後に、基板上に絶縁材を充填する工程と、を含み、硬化パターンを形成する工程では、感光性導電ペーストの付与及び露光を繰り返して硬化パターンを形成し、現像する工程では、露光されなかった複数の感光性導電ペーストを現像する。
【0014】
上記第二態様に係るコイル部品の製造方法では、感光性導電ペーストの付与及び露光を繰り返して硬化パターンを形成した後に、露光されなかった複数の感光性導電ペーストを一括で現像するので、二層目以降の感光性導電ペーストが形成される形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制しつつ、硬化パターンを高アスペクト比で形成することができる。
【0015】
本開示の第三態様に係るコイル部品の製造方法は、素体と、素体内に配置され、コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、基板上に感光性導電ペーストを付与し、コイル導体に対応するパターンで露光することにより、硬化パターンを形成する工程と、硬化パターンを形成する工程後に、硬化パターン上に絶縁層を形成する工程と、絶縁層を形成する工程後に、露光されなかった感光性導電ペーストを現像する工程と、現像する工程後に、基板上に絶縁材を充填する工程と、を含む。
【0016】
上記第三態様に係るコイル部品の製造方法では、感光性導電ペーストを露光して硬化パターンを形成した後、露光されなかった感光性導電ペーストを現像する前に、硬化パターン上に絶縁層を形成するので、絶縁層が形成される形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
図2図2は、図1のコイル部品の断面構成を示す図である。
図3図3は、図1のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。
図4図4は、図1のコイル部品の製造工程を示す図である。
図5図5は、図1のコイル部品の製造工程を示す図である。
図6図6は、図1のコイル部品の製造工程を示す図である。
図7図7は、図1のコイル部品の製造工程を示す図である。
図8図8は、図1のコイル部品の製造工程を示す図である。
図9図9は、図1のコイル部品の製造工程を示す図である。
図10図10は、図1のコイル部品の製造工程を示す図である。
図11図11は、図1のコイル部品の製造工程を示す図である。
図12図12は、第二実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
図13図13は、図12のコイル部品の内部構成を示す斜視図である。
図14図14は、図12のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。
図15図15は、図12のコイル部品の製造工程を示す図である。
図16図16は、図12のコイル部品の製造工程を示す図である。
図17図17は、図12のコイル部品の製造工程を示す図である。
図18図18は、図12のコイル部品の製造工程を示す図である。
図19図19は、図12のコイル部品の製造工程を示す図である。
図20図20は、図12のコイル部品の製造工程を示す図である。
図21図21は、図12のコイル部品の製造工程を示す図である。
図22図22は、第三実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
図23図23は、図22のコイル部品の断面構成を示す図である。
図24図24は、図22のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。
図25図25は、図22のコイル部品の製造工程を示す図である。
図26図26は、図22のコイル部品の製造工程を示す図である。
図27図27は、図22のコイル部品の製造工程を示す図である。
図28図28は、図22のコイル部品の製造工程を示す図である。
図29図29は、図22のコイル部品の製造工程を示す図である。
図30図30は、図22のコイル部品の製造工程を示す図である。
図31図31は、図22のコイル部品の製造工程を示す図である。
図32図32は、図22のコイル部品の製造工程を示す図である。
図33図33は、第四実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
図34図34は、図33のコイル部品の断面構成を示す図である。
図35図35は、図33のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。
図36図36は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図37図37は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図38図38は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図39図39は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図40図40は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図41図41は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図42図42は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図43図43は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図44図44は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図45図45は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図46図46は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図47図47は、図33のコイル部品の製造工程を示す図である。
図48図48は、第一実施形態の第一変形例に係るコイル部品の製造工程を示す図である。
図49図49は、第一実施形態の第二変形例に係るコイル部品の断面構成を示す図である。
図50図50は、図49のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。
図51図51は、図49のコイル部品の製造工程を示す図である。
図52図52は、図49のコイル部品の他の製造方法を示すフローチャートである。
図53図53は、第一実施形態の第三変形例に係るコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[第一実施形態]
(コイル部品)
図1及び図2を参照して、第一実施形態に係るコイル部品を説明する。図1は、第一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。図2は、図1に示すコイル部品の断面構成を示す図である。図1及び図2に示されるように、コイル部品1は、素体2と、端子電極3,4と、コイル5と、絶縁層6と、接続導体7と、接続導体8と、を備えている。コイル部品1は、積層コイル部品である。
【0021】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、外面として、側面2a,2b,2c,2d,2e,2fを有している。側面2a,2bは、互いに対向している。側面2c,2dは、互いに対向している。側面2e,2fは、互いに対向している。以下では、側面2c,2dの対向方向を第一方向D1、側面2a,2bの対向方向を第二方向D2、及び、側面2e,2fの対向方向を第三方向D3とする。第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は互いに略直交している。
【0022】
側面2a,2bは、側面2c,2dを連結するように第一方向D1に延在している。側面2a,2bは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。側面2c,2dは、側面2a,2bを連結するように第二方向D2に延在している。側面2c,2dは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。側面2e,2fは、側面2c,2dを連結するように第一方向D1に延在している。側面2e,2fは、側面2a,2bを連結するように第二方向D2にも延在している。
【0023】
本実施形態では、例えば、側面2dは、実装面であり、コイル部品1を図示しない他の電子機器(たとえば、回路基材、又は積層電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する面である。側面2c、側面2e、または、側面2fが実装面であってもよい。
【0024】
本実施形態では、素体2の第二方向D2における長さは、素体2の第三方向D3における長さ及び素体2の第一方向D1における長さよりも長い。素体2の第三方向D3における長さと素体2の第一方向D1における長さとは、たとえば互いに同等である。すなわち、本実施形態では、側面2a,2bは正方形状を呈し、側面2c,2d,2e,2fは、長方形状を呈している。素体2の第二方向D2における長さは、素体2の第三方向D3における長さ、及び素体2の第一方向D1における長さと同等であってもよいし、これらの長さよりも短くてもよい。素体2の第三方向D3における長さ及び素体2の第一方向D1における長さは、互いに異なっていてもよい。
【0025】
本実施形態で「同等」とは、等しいことに加えて、予め設定した範囲での微差又は製造誤差などを含んだ値を同等としてもよい。たとえば、複数の値が、当該複数の値の平均値の±5%の範囲内に含まれているのであれば、当該複数の値は同等であると規定する。
【0026】
素体2は、たとえば絶縁材(Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mn系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料など)により構成されている。素体2を構成する絶縁材には、Fe合金などが含まれていてもよい。素体2は、磁性材料により構成されている。
【0027】
素体2は、ベース層9及び充填体10を含む。ベース層9は、側面2dの全体を含む。充填体10は、ベース層9の側面2dと対向する表面上に配置されている。充填体10は、コイル5の周りに隙間なく充填されている。充填体10は、側面2cの全体を含む。ベース層9及び充填体10は、同じ絶縁材から構成されていてもよいし、異なる絶縁材から構成されていてもよい。
【0028】
端子電極3,4は、第二方向D2で互いに対向するように素体2に配置されている。端子電極3,4は、第二方向D2で互いに離間している。端子電極3は、素体2の側面2aに配置されている。端子電極3は、側面2aの全体と、側面2c、側面2d、側面2e、及び側面2fの側面2a側の各端部とを一体的に覆っている。端子電極4は、素体2の側面2bに配置されている。端子電極4は、側面2bの全体と、側面2c、側面2d、側面2e、及び側面2fの側面2b側の各端部とを覆っている。端子電極3,4は、導電性材料(たとえば、Ag又はPd)を含んでいる。端子電極3,4は、導電ペーストの焼結体として構成されている。導電ペーストは、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末又はPd粉末)及びガラスフリットを含んでいる。
【0029】
コイル5は、素体2内に配置されている。コイル5は、素体2の各側面2a,2b,2c,2d,2e,2fから離間し、素体2から露出していない。コイル5のコイル軸は、第一方向D1に沿っている。コイル5は、互いに電気的に接続された複数のコイル導体5a,5b,5cを含んでいる。複数のコイル導体5a,5b,5cは、ベース層9上において、この順で第一方向D1において積層されている。複数のコイル導体5a,5b,5cのうち積層方向(第一方向D1)において隣り合う一対のコイル導体は、互いに異なる形状を有している。複数のコイル導体5a,5b,5cのうち積層方向において隣り合う一対のコイル導体は、少なくとも一部が互いに重なるように積層されている。コイル導体5aは、コイル5の一端を含む。コイル導体5cは、コイル5の他端を含む。なお、コイル導体の数は、3に限られない。
【0030】
コイル導体5aは、ベース層9と接するように、ベース層9上に配置されている。コイル5の一端を構成するコイル導体5aの一端は、接続導体7により端子電極4に接続されている。コイル導体5bは、絶縁層6を介してコイル導体5a上に配置されている。コイル導体5bの一端部は、コイル導体5bの他端部と接続されている。コイル導体5cは、絶縁層6を介してコイル導体5b上に配置されている。コイル導体5cの一端部は、コイル導体5bの他端部と接続されている。コイル5の他端を構成するコイル導体5cの他端は、接続導体8により端子電極3に接続されている。複数のコイル導体5a,5b,5cは、導電材料(例えば、Ag又はPd)により構成されている。
【0031】
絶縁層6は、複数の絶縁層6a,6bを含む。各絶縁層6a,6bは、複数のコイル導体5a,5b,5cのうち、積層方向(第一方向D1)において隣り合うコイル導体間に配置されている。絶縁層6aは、コイル導体5a,5b間に配置されている。絶縁層6bは、コイル導体5b,5c間に配置されている。各絶縁層6a,6bは、対応するコイル導体の幅と同じか、それ以上の幅で形成されている。各絶縁層6a,6bは、積層方向において隣り合うコイル導体の端部同士が直接接続されるように、当該端部間には配置されていない。
【0032】
各絶縁層6は、素体2と同じ絶縁材により構成されてもよいし、素体2と異なる絶縁材により構成されてもよい。各絶縁層6は、磁性材料により構成されてもよいし、非磁性材料により構成されてもよい。各絶縁層6は、単層構造を有していてもよいし、多層構造を有していてもよい。各絶縁層6は、磁性層と非磁性層とが積層されてなる多層構造を有していてもよい。各絶縁層6の厚さは、コイル導体5a,5b,5cの厚さに比べて薄い。
【0033】
接続導体7は、第二方向D2において延在している。接続導体7の一端は、側面2bに露出し、端子電極4と接続されている。接続導体7の他端は、コイル5の一端と接続されている。接続導体8は、第二方向D2において延在している。接続導体8の一端は、側面2aに露出し、端子電極3と接続されている。接続導体8の他端は、コイル5の他端と接続されている。接続導体7,8は、例えば、複数のコイル導体5a,5b,5cと同じ材料により構成されている。
【0034】
(コイル部品の製造方法)
コイル部品1の製造方法の一例について、図3図11を参照して説明する。図3は、図1のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。図4図11において、(a)は、製造工程における斜視図を示し、(b)は、(a)のb-b線断面図を示し、(c)は、(a)のc-c線断面図を示し、(d)は、(a)のd-d線断面図を示す。コイル部品1は、フォトリソグラフィ法を用いて製造される。ここで、「フォトリソグラフィ法」とは、感光性材料を含む加工対象の層を露光及び現像することにより、所望のパターンに加工するものであればよく、マスクの種類などに限定されない。
【0035】
図3に示されるように、コイル部品1の製造方法は、ベース層形成工程S1と、硬化パターン形成工程S2と、絶縁層形成工程S3と、硬化パターン形成工程S4と、絶縁層形成工程S5と、硬化パターン形成工程S6と、現像工程S7と、焼成工程S8と、充填工程S9と、研磨工程S10と、切断工程S11と、剥離工程S12と、端子電極形成工程S13と、を含む。工程S1~工程S13は、この順で行われる。
【0036】
ベース層形成工程S1は、基板11にベース層13を形成する工程である。ベース層13は、ベース層9となる層である。基板11上には、予め剥離層12が形成されている。剥離層12は、例えば、バインダ成分を含むシリコン系の離型剤により構成されている。剥離層12によれば、ベース層13を基板11から容易に剥離することができる。物理的な力によりベース層13を基板11から剥離可能であれば、剥離層12を設けなくてもよい。ベース層13は、絶縁性ペーストを剥離層12上に塗布することにより形成される。絶縁性ペーストは、ベース層9を構成する上記絶縁材の粉末に有機溶剤及び有機バインダ等を加えて混錬することにより作製される。
【0037】
硬化パターン形成工程S2は、図4に示されるように、基板11上に、感光性導電ペースト14aを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5a及び接続導体7に対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15aを形成する工程である。感光性導電ペースト14aは、具体的には、ベース層13上に付与される。感光性導電ペースト14aは、コイル5及び接続導体7,8を構成する上記導電性材料の粉末及び感光性材料に有機溶媒及び有機バインダ等を加えて混錬することにより作製される。感光性材料は、露光及び現像により消失する成分である。感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。硬化パターン15aは、コイル導体5a及び接続導体7となるパターンである。硬化パターン15aは、例えば、コイル導体5a及び接続導体7に対応するパターンを有するマスクを介し、感光性導電ペースト14aに紫外線を照射して露光することにより形成される。
【0038】
絶縁層形成工程S3は、図5に示されるように、硬化パターン15a上に絶縁層16aを形成する工程である。絶縁層16aは、絶縁層6aとなる層である。絶縁層16aは、例えば、絶縁性ペーストをスクリーン印刷により硬化パターン15a上に塗布することにより形成される。絶縁性ペーストは、絶縁層6を構成する材料の粉末に有機溶剤及び有機バインダ等を加えて混錬することにより作製される。絶縁層16aは、硬化パターン15aを覆う形状を有している。絶縁層16aは、硬化パターン15aのうち、コイル導体5bと接続されるコイル導体5aの他端部となる部分には設けられない。絶縁層16aは、フォトリソグラフィ法を用いて形成されてもよい。
【0039】
硬化パターン形成工程S4は、図6に示されるように、感光性導電ペースト14a及び絶縁層16a上に感光性導電ペースト14bを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5bに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15bを形成する工程である。硬化パターン15bは、コイル導体5bとなるパターンである。感光性導電ペースト14b及び硬化パターン15bは、感光性導電ペースト14a及び硬化パターン15aと同様に形成される。図6(b)に示されるように、硬化パターン15bは、硬化パターン15aのうち、絶縁層16aが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0040】
絶縁層形成工程S5は、図7に示されるように、硬化パターン15b上に絶縁層16bを形成する工程である。絶縁層16bは、絶縁層6bとなる層である。絶縁層16bは、絶縁層16aと同様に形成される。絶縁層16bは、硬化パターン15bを覆う形状を有している。絶縁層16bは、硬化パターン15bのうち、コイル導体5cと接続されるコイル導体5bの他端部となる部分には設けられない。
【0041】
硬化パターン形成工程S6は、図8に示されるように、感光性導電ペースト14b及び絶縁層16b上に感光性導電ペースト14cを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5c及び接続導体8に対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15cを形成する工程である。硬化パターン15cは、コイル導体5c及び接続導体8となるパターンである。感光性導電ペースト14c及び硬化パターン15cは、感光性導電ペースト14a及び硬化パターン15aと同様に形成される。図8(b)に示されるように、硬化パターン15cは、硬化パターン15bのうち、絶縁層16bが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0042】
現像工程S7は、図9に示されるように、露光されなかった感光性導電ペースト14a,14b,14cを現像液により一括で現像する工程である。これにより、ベース層13上には硬化パターン15a,15b,15c及び絶縁層16a,16bが残る。
【0043】
焼成工程S8は、現像後に残ったベース層13、硬化パターン15a,15b,15c、及び、絶縁層16a,16bを基板11及び剥離層12とともに焼成する工程である。これにより、ベース層13はベース層9となる。硬化パターン15a,15b,15cはコイル導体5a,5b,5c及び接続導体7,8となる。絶縁層16a,16bは絶縁層6a,6bとなる。
【0044】
充填工程S9は、図10に示されるように、基板11上に絶縁材17を充填する工程である。絶縁材17は、充填体10となる材料である。絶縁材17は、コイル5、絶縁層6、及び接続導体7,8の周りに隙間なく充填される。絶縁材17は、例えば、充填体10を構成する上記絶縁材の粉末に有機溶剤及び有機バインダ等を加えて混錬することにより作製された絶縁性ペーストである。絶縁材17を形成するための絶縁性ペーストは、ベース層13を形成するための絶縁性ペーストと同じであってよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、絶縁材17は、乾燥により硬化され、充填体10となる。充填工程S9は、真空印刷により行われてもよい。この場合、ボイドの形成が抑制される。
【0045】
研磨工程S10は、充填体10の上面を研磨し、コイル導体5c上の充填体10の厚さ(膜厚)を調整する工程である。
【0046】
切断工程S11は、研磨工程S10で得られた中間体を切断する工程である。図4図10では、一つのコイル部品1に対応する部分のみが示されているが、実際には、複数のコイル部品1に対応する複数の部分が第二方向D2及び第三方向D3に配列された状態で一体的に形成される。切断工程S11は、これらの複数の部分を個片化する工程である。
【0047】
剥離工程S12は、基板11をベース層9から剥離する工程である。基板11は、剥離層12とともにベース層9から剥離される。これにより、図11に示されるように、ベース層9及び充填体10からなる素体2と、素体2内に配置されたコイル5及び絶縁層6とが得られる。端子電極形成工程S13は、素体2の側面2a,2bに端子電極3,4を形成する工程である。端子電極3,4は、例えば、側面2a,2bに導電ペーストを付与し、焼き付けることにより形成される。以上により、コイル部品1が得られる。
【0048】
以上説明したように、コイル部品1の製造方法では、硬化パターン形成工程S2,S4,S6において、感光性導電ペースト14a,14b,14cをそれぞれ露光して硬化パターン15a,15b,15cを形成した後に、現像工程S7において、露光されなかった感光性導電ペースト14a,14b,14cを一括で現像する。よって、絶縁層16a、感光性導電ペースト14b、絶縁層16b、及び感光性導電ペースト14cが形成される形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制することができる。また、露光及び現像を繰り返す従来の製造方法に比べて、工程数を減らすことができる。なお、感光性導電ペースト14b,14cが形成される形成面には、絶縁層16a,16bにより段差が形成されている。しかし、絶縁層16a,16bは薄いので、感光性導電ペースト14b,14cが形成される形成面は略フラットである。
【0049】
仮に硬化パターン形成工程S2後、露光されなかった感光性導電ペースト14aを硬化パターン形成工程S4前に現像すると、硬化パターン15aの存在する位置と、硬化パターン15aの存在しない位置との間に段差が生じる。感光性導電ペースト14bを形成する際の形成面が段差面であると、積層ずれが生じるおそれがある。硬化パターン形成工程S4前に硬化パターン15a上に絶縁材を塗布し、段差を埋める手法も考えられる。しかしながら、段差を確実に埋めて絶縁材の表面を平滑化しようとすると、硬化パターン15a上の絶縁材を薄くすることが困難であり、コイル部品1が大型化し易い。一方、硬化パターン15a上の絶縁材を薄くしようとすると、段差を確実に埋めて絶縁材の表面を平滑化することが困難である。
【0050】
これに対し、コイル部品1の製造方法では、露光されなかった感光性導電ペースト14aが残っているので、感光性導電ペースト14bを形成する際の形成面をフラットに保つことができる。これにより、積層ずれを抑制することができる。絶縁層形成工程S3では、絶縁層16aにより段差を埋める必要がないので、薄い絶縁層16aを硬化パターン15a上に形成することができる。よって、コイル部品1の小型化を図ることができる。
【0051】
従来の製造方法として、基材上に形成した磁性層(もしくは絶縁シート)及びコイル導体を基板上に順次転写し、コイル導体を積層する方法がある。この方法では、積層後に磁性層及びコイル導体をプレスするので、コイル導体が変形してしまう。よって、コイル導体のアスペクト比を高め難い。また、磁性層に生じる残留応力に起因して、磁気特性が低下するおそれがある。
【0052】
これに対し、コイル部品1の製造方法では、コイル導体5a,5b,5cとなる硬化パターン15a,15b,15cをプレスする必要がないので、コイル導体5a,5b,5cが変形し難く、アスペクト比を高め易い。また、磁性層に残留応力が生じることが抑制されるので、磁気特性の低下も抑制される。更に、コイル導体5a,5b,5c間における電気的短絡を抑制しながら、コイル部品1の小型化を図ることができる。
【0053】
コイル部品1の製造方法は、硬化パターン形成工程S2と硬化パターン形成工程S4との間に絶縁層形成工程S3を含み、硬化パターン形成工程S4と硬化パターン形成工程S6との間に絶縁層形成工程S5を含む。このように、硬化パターン15aと硬化パターン15bとの間に絶縁層16aを挟む場合や、硬化パターン15bと硬化パターン15cとの間に絶縁層16bを挟む場合も、形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制することができる。また、露光及び現像を繰り返す従来の製造方法に比べて、工程数を減らすことができる。
【0054】
コイル部品1の製造方法は、現像工程S7と充填工程S9との間に、焼成工程S8を含む。このため、充填する絶縁材17として、Fe粉(純鉄粉)やカルボニル鉄粉、FeNi,FeCo,FeSiなどのFe系合金粉末(もしくは軟磁性金属材料)のように、耐熱性が低い材料を用いることができる。
【0055】
[第二実施形態]
(コイル部品)
図12及び図13を参照して、第二実施形態に係るコイル部品を説明する。図12は、第二実施形態に係るコイル部品の内部構成を示す斜視図である。図13は、図12のコイル部品の内部構成を示す斜視図である。図13では、素体2が破線で示されている。図12及び図13に示されるように、コイル部品1Aは、素体2と、端子電極3A,4Aと、コイル5Aと、絶縁層6Aと、接続導体7A,8Aを備えている。以下では、コイル部品1との共通点を適宜省略して説明する。
【0056】
本実施形態では、側面2eが実装面である。端子電極3A,4Aは、第二方向D2において互いに離間して側面2eに配置されている。端子電極3Aは、側面2b寄りに配置されている。端子電極4Aは、側面2a寄りに配置されている。端子電極3A,4Aは、側面2eの外縁から離間して配置されている。端子電極3A,4Aは、側面2eに設けられた凹部内に配置されている。端子電極3A,4Aは、側面2eに露出するように素体2に埋設されている。端子電極3A,4Aの表面は、側面2eと略面一である。端子電極3A,4Aは、第三方向D3から見て、互いに同形状を呈している。端子電極3A,4Aは、第三方向D3から見て、第一方向D1を長辺方向とする矩形状を呈している。
【0057】
端子電極3A,4Aは、第一方向D1において積層された複数の端子電極層を含んでいる。複数の端子電極層は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。端子電極3A,4Aは、例えば、コイル5Aと同じ材料により構成されている。
【0058】
コイル5Aは、素体2内に配置されている。コイル5Aは、素体2の各側面2a,2b,2c,2d,2e,2fから離間し、素体2から露出していない。コイル5Aのコイル軸は、第一方向D1に沿っている。コイル5Aは、互いに電気的に接続された複数のコイル導体5Aa,5Ab,5Acを含んでいる。複数のコイル導体5Aa,5Ab,5Acは、ベース層9上において、この順で第一方向D1に積層されている。複数のコイル導体5Aa,5Ab,5Acのうち、積層方向(第一方向D1)において隣り合う一対のコイル導体は、互いに異なる形状を有している。複数のコイル導体5Aa,5Ab,5Acのうち積層方向で隣り合う一対のコイル導体は、少なくとも一部が互いに重なるように積層されている。コイル導体5Aaは、コイル5Aの一端を含む。コイル導体5Acは、コイル5Aの他端を含む。
【0059】
コイル導体5Aaは、ベース層9と接するように、ベース層9上に配置されている。コイル5Aの一端を構成するコイル導体5Aaの一端は、接続導体7Aにより端子電極4Aに接続されている。コイル導体5Abは、絶縁層6Aを介してコイル導体5Aa上に配置されている。コイル導体5Abの一端部は、コイル導体5Abの他端部と接続されている。コイル導体5Acは、絶縁層6Aを介してコイル導体5Ab上に配置されている。コイル導体5Acの一端部は、コイル導体5Abの他端部と接続されている。コイル5Aの他端を構成するコイル導体5Acの他端は、接続導体8Aにより端子電極3Aに接続されている。
【0060】
絶縁層6Aは、複数の絶縁層6Aa,6Abを含む。各絶縁層6Aa,6Abは、複数のコイル導体5Aa,5Ab,5Acのうち、積層方向(第一方向D1)において隣り合うコイル導体間に配置されている。絶縁層6Aaは、コイル導体5Aa,5Ab間に配置されている。絶縁層6Abは、コイル導体5Ab,5Ac間に配置されている。各絶縁層6Aa,6Abは、対応するコイル導体の幅と同じか、それ以上の幅で形成されている。各絶縁層6Aa,6Abは、積層方向において隣り合うコイル導体の端部同士が直接接続されるように、当該端部間には配置されていない。
【0061】
各絶縁層6Aは、素体2と同じ絶縁材により構成されてもよいし、素体2と異なる絶縁材により構成されてもよい。各絶縁層6Aは、磁性材料により構成されてもよいし、非磁性材料により構成されてもよい。各絶縁層6Aは、単層構造を有していてもよいし、多層構造を有していてもよい。各絶縁層6Aは、磁性層と非磁性層とが積層されてなる多層構造を有していてもよい。
【0062】
接続導体7Aは、第三方向D3において延在し、端子電極4Aとコイル5Aの一端とに接続されている。接続導体8Aは、第三方向D3において延在し、端子電極3Aとコイル5Aの他端とに接続されている。接続導体7A,8Aは、例えば、複数のコイル導体5Aa,5Ab,5Acと同じ材料により構成されている。
【0063】
(コイル部品の製造方法)
続いて、コイル部品1Aの製造方法の一例について、図14図21を参照して説明する。図14は、図12のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。図15図21において、(a)は、製造工程における斜視図を示し、(b)は、(a)のb-b線断面図を示し、(c)は、(a)のc-c線断面図を示し、(d)は、(a)のd-d線断面図を示す。以下では、コイル部品1の製造方法との共通点を適宜省略して説明する。
【0064】
図14に示されるように、コイル部品1Aの製造方法は、ベース層形成工程S21と、硬化パターン形成工程S22と、絶縁層形成工程S23と、硬化パターン形成工程S24と、絶縁層形成工程S25と、硬化パターン形成工程S26と、現像工程S27と、充填工程S28と、研磨工程S29と、切断工程S30と、剥離工程S31と、焼成工程S32と、を含む。工程S21~工程S32は、この順で行われる。
【0065】
ベース層形成工程S21は、ベース層形成工程S1と同じである。本実施形態においても、物理的な力によりベース層13を基板11から剥離可能であれば、剥離層12を設けなくてもよい。
【0066】
硬化パターン形成工程S22は、図15に示されるように、基板11上に、感光性導電ペースト14aを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Aa、接続導体7A及び端子電極3A,4Aに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Aaを形成する工程である。感光性導電ペースト14aは、具体的には、ベース層13上に付与される。硬化パターン15Aaは、コイル導体5Aa、接続導体7A及び端子電極3A,4Aとなるパターンである。
【0067】
絶縁層形成工程S23は、図16に示されるように、硬化パターン15Aa上に絶縁層16Aaを形成する工程である。絶縁層16Aaは、絶縁層6Aaとなる層である。絶縁層16Aaは、絶縁層16aと同様に形成される。絶縁層16Aaは、硬化パターン15Abを覆う形状を有している。絶縁層16Aaは、硬化パターン15Aaのうち、コイル導体5Abと接続されるコイル導体5Aaの他端部となる部分、及び、端子電極3A,4Aとなる部分には設けられない。
【0068】
硬化パターン形成工程S24は、図17に示されるように、感光性導電ペースト14a及び絶縁層16Aa上に感光性導電ペースト14bを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Ab及び端子電極3A,4Aに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Abを形成する工程である。硬化パターン15Abは、コイル導体5Ab及び端子電極3A,4Aとなるパターンである。感光性導電ペースト14b及び硬化パターン15Abは、感光性導電ペースト14a及び硬化パターン15Aaと同様に形成される。図17(b)に示されるように、硬化パターン15Abは、硬化パターン15Aaのうち、絶縁層16Aaが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0069】
絶縁層形成工程S25は、図18に示されるように、硬化パターン15Ab上に絶縁層16Abを形成する工程である。絶縁層16Abは、絶縁層6Abとなる層である。絶縁層16Abは、絶縁層16bと同様に形成される。絶縁層16Abは、硬化パターン15Abを覆う形状を有している。絶縁層16Abは、硬化パターン15Abのうち、コイル導体5Acと接続されるコイル導体5Abの他端部となる部分、及び、端子電極3A,4Aとなる部分には設けられない。
【0070】
硬化パターン形成工程S26は、図19に示されるように、感光性導電ペースト14b及び絶縁層16Ab上に感光性導電ペースト14cを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Ac、接続導体8A及び端子電極3A,4Aに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Acを形成する工程である。硬化パターン15Acは、コイル導体5Ac、接続導体8A及び端子電極3A,4Aとなるパターンである。感光性導電ペースト14c及び硬化パターン15Acは、感光性導電ペースト14a及び硬化パターン15Aaと同様に形成される。図19(b)に示されるように、硬化パターン15Acは、硬化パターン15Abのうち、絶縁層16Abが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0071】
現像工程S27は、図20に示されるように、露光されなかった感光性導電ペースト14a,14b,14cを現像液により現像する工程である。これにより、ベース層13上には硬化パターン15Aa,15Ab,15Ac及び絶縁層16Aa,16Abが残る。
【0072】
充填工程S28は、図21に示されるように、基板11上に絶縁材17を充填する工程である。絶縁材17は、硬化パターン15Aa,15Ab,15Ac及び絶縁層16Aa,16Abの周りに隙間なく充填される。本実施形態では、絶縁材17は、乾燥により硬化される。
【0073】
研磨工程S29は、絶縁材17の上面を研磨し、硬化パターン15Ac上の絶縁材17の厚さ(膜厚)を調整する工程である。
【0074】
切断工程S30は、研磨工程S29で得られた中間体を切断する工程である。図15図21では、一つのコイル部品1Aに対応する部分のみが示されているが、実際には、複数のコイル部品1Aに対応する複数の部分が第二方向D2及び第三方向D3に配列された状態で一体的に形成される。切断工程S30は、これらの複数の部分を個片化する工程である。
【0075】
剥離工程S31は、基板11をベース層13から剥離する工程である。基板11は、剥離層12とともにベース層13から剥離される。
【0076】
焼成工程S32は、ベース層13、硬化パターン15Aa,15Ab,15Ac、絶縁層16Aa,16Ab、及び、絶縁材17を焼成する工程である。これにより、ベース層13はベース層9となる。硬化パターン15Aa,15Ab,15Acはコイル導体5Aa,5Ab,5Ac、接続導体7A,8A及び端子電極3A,4Aとなる。絶縁層16Aa,16Abは絶縁層6Aa,6Abとなる。絶縁材17は、充填体10となる。以上により、コイル部品1Aが得られる。
【0077】
以上説明したように、コイル部品1Aの製造方法においても、硬化パターン形成工程S22,S24,S26において、感光性導電ペースト14a,14b,14cをそれぞれ露光して硬化パターン15Aa,15Ab,15Acを形成した後に、現像工程S27において、露光されなかった感光性導電ペースト14a,14b,14cを一括で現像する。よって、形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制することができる。また、露光及び現像を繰り返す従来の製造方法に比べて、工程数を減らすことができる。
【0078】
コイル部品1Aの製造方法では、充填工程S28後に焼成工程S32が行われる。このため、充填する絶縁材17として、フェライトのように焼成により磁性が発現する材料を用いることができる。
【0079】
コイル部品1Aの製造方法は、現像工程S27前に、コイル5Aに接続される端子電極3A,4Aとなる感光性導電ペースト14a,14b,14cを基板11上に形成する硬化パターン形成工程S22,S24,S26を含む。このため、端子電極3A,4Aをコイル5Aと共に形成することができる。コイル5Aの形成後に端子電極3A,4Aを形成する必要がないので、工程数を更に減らすことができる。
[第三実施形態]
(コイル部品)
図22及び図23を参照して、第三実施形態に係るコイル部品を説明する。図22は、第三実施形態に係るコイル部品の斜視図である。図23(a)は、図22のa-a線断面図を示す。図23(b)は、図22のb-b線断面図を示す。図22及び図23に示されるように、コイル部品1Bは、素体2と、端子電極3B,4Bと、コイル5Bと、絶縁層6Bと、接続導体7B,8Bを備えている。以下では、コイル部品1Aとの共通点を適宜省略して説明する。
【0080】
本実施形態では、側面2dが実装面である。端子電極3B,4Bは、第二方向D2において互いに離間して側面2dに配置されている。端子電極3Bは、側面2b寄りに配置されている。端子電極4Bは、側面2a寄りに配置されている。端子電極3B,4Bは、側面2dの外縁から離間して配置されている。端子電極3B,4Bは、側面2dに設けられた凹部内に配置されている。端子電極3B,4Bは、側面2dに露出するように素体2に埋設されている。端子電極3B,4Bの表面は、側面2dと略面一である。端子電極3B,4Bは、第一方向D1から見て、第三方向D3を長辺方向とする略矩形状を呈している。端子電極3B,4Bは、導電性材料(例えば、Ag又はPd)を含んでいる。
【0081】
コイル5Bは、コイル5Aと同じ構成を有し、コイル5Aと同様に素体2内に配置されている。コイル5Bは、互いに電気的に接続された複数のコイル導体5Ba,5Bb,5Bcを含んでいる。複数のコイル導体5Ba,5Bb,5Bcは、複数のコイル導体5Aa,5Ab,5Acとそれぞれ同じ形状を有し、複数のコイル導体5Aa,5Ab,5Acと同様に互いに接続されている。
【0082】
コイル導体5Baは、端子電極3B,4Bから離間してベース層9上に配置されている。コイル5Bの一端を構成するコイル導体5Baの一端は、接続導体8Bにより端子電極4Bに接続されている。コイル導体5Bbは、絶縁層6Bを介してコイル導体5Ba上に配置されている。コイル導体5Bbの一端部は、コイル導体5Bbの他端部と接続されている。コイル導体5Bcは、絶縁層6Bを介してコイル導体5Bb上に配置されている。コイル導体5Bcの一端部は、コイル導体5Bbの他端部と接続されている。コイル5Bの他端を構成するコイル導体5Bcの他端は、接続導体7Bにより端子電極3Bに接続されている。
【0083】
絶縁層6Bは、絶縁層6Aと同じ構成を有している。絶縁層6Bは、複数の絶縁層6Ba,6Bbを含んでいる。複数の絶縁層6Ba,6Bbは、複数の絶縁層6Aa,6Abと同様に、複数のコイル導体5Ba,5Bb,5Bcのうち、積層方向(第一方向D1)において隣り合うコイル導体間に配置されている。
【0084】
接続導体8Bは、第一方向D1において延在し、端子電極4Bとコイル5Bの一端とに接続されている。接続導体7Bは、第一方向D1において延在し、端子電極3Bとコイル5Bの他端とに接続されている。接続導体7Bは、第一方向D1において積層された複数の接続導体層(不図示)を含んでいる。複数の接続導体層は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。接続導体7B,8Bは、コイル5と側面2eとの間に配置されている。接続導体7B,8Bは、例えば、複数のコイル導体5Ba,5Bb,5Bcと同じ材料により構成されている。
【0085】
端子電極3A,4Aは、例えば、コイル5Aと同じ材料により構成されている。
【0086】
(コイル部品の製造方法)
続いて、コイル部品1Bの製造方法の一例について、図24図32を参照して説明する。図24は、図22のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。図25において、(a)は、製造工程における斜視図を示し、(b)は、(a)のb-b線断面図を示し、(c)は、製造工程における斜視図を示し、(d)は、(c)のd-d線断面図を示す。図26図32において、(a)は、製造工程における斜視図を示し、(b)は、(a)のb-b線断面図を示し、(c)は、(a)のc-c線断面図を示し、(d)は、(a)のd-d線断面図を示す。以下では、コイル部品1Aの製造方法との共通点を適宜省略して説明する。
【0087】
図24に示されるように、コイル部品1Bの製造方法は、導電ペースト形成工程S40と、ベース層形成工程S41と、硬化パターン形成工程S42と、絶縁層形成工程S43と、硬化パターン形成工程S44と、絶縁層形成工程S45と、硬化パターン形成工程S46と、現像工程S47と、充填工程S48と、研磨工程S49と、切断工程S50と、剥離工程S51と、焼成工程S52と、を含む。工程S40~工程S52は、この順で行われる。
【0088】
導電ペースト形成工程S40は、図25(a)及び図25(b)に示されるように、基板11上に端子電極3Bとなる導電ペースト18と、端子電極4Bとなる導電ペースト19とを形成する工程である。基板11上には、予め剥離層12が形成されている。導電ペースト18,19は、例えば、スクリーン印刷により導電ペーストを剥離層12上に付与することで形成される。
【0089】
ベース層形成工程S41は、図25(c)及び図25(d)に示されるように、基板11上にベース層13を形成する工程である。ベース層13は、剥離層12及び導電ペースト18,19を覆うように形成される。ベース層13は、各導電ペースト18,19の一部を露出させるように形成される。本実施形態においても、物理的な力によりベース層13を基板11から剥離可能であれば、剥離層12を設けなくてもよい。
【0090】
硬化パターン形成工程S42は、図26に示されるように、基板11上に、感光性導電ペースト14aを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Ba及び接続導体7B,8Bに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Baを形成する工程である。硬化パターン15Baは、コイル導体5Ba及び接続導体7B,8Bとなるパターンである。図26(b)に示されるように、硬化パターン15Baは、導電ペースト18,19のうち、ベース層13が設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0091】
絶縁層形成工程S43は、図27に示されるように、硬化パターン15Ba上に絶縁層16Baを形成する工程である。絶縁層16Baは、絶縁層6Baとなる層である。絶縁層16Baは、硬化パターン15Bbを覆う形状を有している。絶縁層16Baは、硬化パターン15Baのうち、コイル導体5Bbと接続されるコイル導体5Baの他端部となる部分、及び、接続導体7Bとなる部分には設けられない。
【0092】
硬化パターン形成工程S44は、図28に示されるように、感光性導電ペースト14a及び絶縁層16Ba上に感光性導電ペースト14bを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Bb及び接続導体7Bに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Bbを形成する工程である。硬化パターン15Bbは、コイル導体5Bb及び接続導体7Bとなるパターンである。図28(b)及び図28(c)に示されるように、硬化パターン15Bbは、硬化パターン15Baのうち、絶縁層16Baが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0093】
絶縁層形成工程S45は、図29に示されるように、硬化パターン15Bb上に絶縁層16Bbを形成する工程である。絶縁層16Bbは、絶縁層6Bbとなる層である。絶縁層16Bbは、硬化パターン15Bbを覆う形状を有している。絶縁層16Bbは、硬化パターン15Bbのうち、コイル導体5Bcと接続されるコイル導体5Bbの他端部となる部分、及び、接続導体7Bとなる部分には設けられない。
【0094】
硬化パターン形成工程S46は、図30に示されるように、感光性導電ペースト14b及び絶縁層16Bb上に感光性導電ペースト14cを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Bc及び接続導体7Bに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Bcを形成する工程である。硬化パターン15Bcは、コイル導体5Bc及び接続導体7Bとなるパターンである。図30(b)及び図30(c)に示されるように、硬化パターン15Bcは、硬化パターン15Bbのうち、絶縁層16Bbが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0095】
現像工程S47は、図31に示されるように、露光されなかった感光性導電ペースト14a,14b,14cを現像液により現像する工程である。これにより、ベース層13上には硬化パターン15Ba,15Bb,15Bc及び絶縁層16Ba,16Bbが残る。
【0096】
充填工程S48は、図32に示されるように、基板11上に絶縁材17を充填する工程である。絶縁材17は、硬化パターン15Ba,15Bb,15Bc及び絶縁層16Ba,16Bbの周りに隙間なく充填される。本実施形態では、絶縁材17は、乾燥により硬化される。
【0097】
研磨工程S49は、絶縁材17の上面を研磨し、硬化パターン15Bc上の絶縁材17の厚さ(膜厚)を調整する工程である。
【0098】
切断工程S50は、研磨工程S49で得られた中間体を切断する工程である。図25図32では、一つのコイル部品1Bに対応する部分のみが示されているが、実際には、複数のコイル部品1Bに対応する複数の部分が第二方向D2及び第三方向D3に配列された状態で一体的に形成される。切断工程S50は、これらの複数の部分を個片化する工程である。
【0099】
剥離工程S51は、基板11をベース層13から剥離する工程である。基板11は、剥離層12とともにベース層13から剥離される。
【0100】
焼成工程S52は、導電ペースト18,19、ベース層13、硬化パターン15Ba,15Bb,15Bc、絶縁層16Ba,16Bb、及び、絶縁材17を焼成する工程である。これにより、導電ペースト18,19は、端子電極3B,4Bとなる。ベース層13はベース層9となる。硬化パターン15Ba,15Bb,15Bcはコイル導体5Ba,5Bb,5Bc及び接続導体7B,8Bとなる。絶縁層16Ba,16Bbは絶縁層6Ba,6Bbとなる。絶縁材17は、充填体10となる。以上により、コイル部品1Bが得られる。
【0101】
以上説明したように、コイル部品1Bの製造方法においても、硬化パターン形成工程S42,S44,S46において、感光性導電ペースト14a,14b,14cをそれぞれ露光して硬化パターン15Ba,15Bb,15Bcを形成した後に、現像工程S47において、露光されなかった感光性導電ペースト14a,14b,14cを一括で現像する。よって、形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制することができる。また、露光及び現像を繰り返す従来の製造方法に比べて、工程数を減らすことができる。
【0102】
コイル部品1Bの製造方法では、充填工程S48後に焼成工程S52が行われる。このため、充填する絶縁材17として、フェライトのように焼成により磁性が発現する材料を用いることができる。
【0103】
コイル部品1Bの製造方法は、現像工程S47前に、コイル5Bに接続される端子電極3B,4Bとなる導電ペースト18,19を基板11上に形成する導電ペースト形成工程S40を含む。このため、端子電極3B,4Bをコイル5Bと共に形成することができる。コイル5Bの形成後に端子電極3B,4Bを形成する必要がないので、工程数を更に減らすことができる。
【0104】
[第四実施形態]
(コイル部品)
図33及び図34を参照して、第三実施形態に係るコイル部品を説明する。図33は、第三実施形態に係るコイル部品の斜視図である。図34は、図33に示すコイル部品の断面構成を示す図である。図33及び図34に示されるように、コイル部品1Cは、素体2と、端子電極3C,4Cと、コイル5Cと、絶縁層6Cと、接続導体7C,8Cを備えている。以下では、コイル部品1との共通点を適宜省略して説明する。
【0105】
本実施形態では、側面2fが実装面である。素体2の第一方向D1における長さは、素体2の第二方向D2における長さ及び素体2の第三方向D3における長さよりも長い。素体2の第二方向D2における長さと素体2の第三方向D3における長さとは、たとえば互いに同等である。すなわち、本実施形態では、側面2c,2dは正方形状を呈し、側面2a,2b,2e,2fは、長方形状を呈している。素体2の第一方向D1における長さは、素体2の第三方向D3における長さ、及び素体2の第一方向D1における長さと同等であってもよいし、これらの長さよりも短くてもよい。素体2の第二方向D2における長さ及び素体2の第三方向D3における長さは、互いに異なっていてもよい。
【0106】
端子電極3C,4Cは、第一方向D1において互いに離間して側面2fに配置されている。端子電極3Cは、側面2cにも配置されている。端子電極4Cは、側面2dにも配置されている。端子電極3C,4Cは、側面2a,2b,2eから離間して配置されている。端子電極3C,4Cは、側面2fに設けられた凹部内に配置されている。端子電極3Cが設けられる凹部は、側面2fと側面2cとの間の稜線部まで至っている。端子電極3Cは、側面2f,2cに露出するように素体2に埋設されている。端子電極3Cの表面は、側面2f,2cと略面一である。端子電極4Cが設けられる凹部は、側面2fと側面2dとの間の稜線部まで至っている。端子電極4Cの表面は、側面2f,2dと略面一である。端子電極3C,4Cは、第三方向D3から見て、第二方向D2を長辺方向とする略矩形状を呈している。
【0107】
端子電極3C,4Cは、第一方向D1において積層された複数の端子電極層(不図示)を含んでいる。複数の端子電極層は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。端子電極3C,4Cは、例えば、コイル5Cと同じ材料により構成されている。
【0108】
コイル5Cは、素体2内に配置されている。コイル5Cは、素体2の各側面2a,2b,2c,2d,2e,2fから離間し、素体2から露出していない。コイル5Cのコイル軸は、第一方向D1に沿っている。コイル5Cは、互いに電気的に接続された複数のコイル導体5Ca,5Cb,5Cc,5Cd,5Ce,5Cf,5Cg,5Ch,5Ci,5Cj,5Ck,5Cl,5Cm(以下、コイル5Cの複数のコイル導体)を含んでいる。コイル5Cの複数のコイル導体は、ベース層9上において、この順で第一方向D1において積層されている。
【0109】
コイル5Cの複数のコイル導体のうち、積層方向(第一方向D1)において隣り合う一対のコイル導体は、互いに異なる形状を有している。コイル5Cの複数のコイル導体のうち、積層方向において隣り合う一対のコイル導体は、少なくとも一部が互いに重なるように積層されている。コイル導体5Caは、コイル5Cの一端を含む。コイル導体5Cmは、コイル5Cの他端を含む。
【0110】
コイル導体5Caは、ベース層9と接するように、ベース層9上に配置されている。コイル5Cの一端を構成するコイル導体5Caの一端は、接続導体7Cにより端子電極4Cに接続されている。コイル5Cの複数のコイル導体のうち、積層方向において隣り合う一対のコイル導体は、端部同士が接続されている。コイル5Cの他端を構成するコイル導体5Cmの他端は、接続導体8Cにより端子電極3Cに接続されている。コイル5Cの複数のコイル導体は、絶縁層6Cを介して積層されている。
【0111】
コイル導体5Ca,5Cb,5Cc,5Cd,5Ceの形状は、コイル導体5Cf,5Cg,5Ch,5Ci,5Cjの形状とそれぞれ同じである。コイル導体5Ca,5Cbの形状は、コイル導体5Ck,5Clともそれぞれ同じである。
【0112】
絶縁層6Cは、複数の絶縁層6Ca,6Cb,6Cc,6Cd,6Ce,6Cf,6Cg,6Ch,6Ci,6Cj,6Ck,6Clを含む。絶縁層6Cは、コイル5の複数のコイル導体のうち、積層方向(第一方向D1)において隣り合うコイル導体間に配置されている。絶縁層6Caは、コイル導体5Ca,5Cb間に配置されている。絶縁層6Cbは、コイル導体5Cb,5Cc間に配置されている。絶縁層6Ccは、コイル導体5Cc,5Cd間に配置されている。絶縁層6Ceは、コイル導体5Ce,5Cf間に配置されている。絶縁層6Cfは、コイル導体5Cf,5Cg間に配置されている。絶縁層6Cgは、コイル導体5Cg,5Ch間に配置されている。絶縁層6Ciは、コイル導体5Ci,5Cj間に配置されている。絶縁層6Cjは、コイル導体5Cj,5Ck間に配置されている。絶縁層6Ckは、コイル導体5Ck,5Cl間に配置されている。絶縁層6Clは、コイル導体5Cl,5Cm間に配置されている。絶縁層6Cは、対応するコイル導体の幅と同じか、それ以上の幅で形成されている。絶縁層6Cは、積層方向において隣り合うコイル導体の端部同士が直接接続されるように、当該端部間には配置されていない。
【0113】
各絶縁層6Cは、素体2と同じ絶縁材により構成されていてもよいし、素体2と異なる絶縁材により構成されてもよい。各絶縁層6Cは、磁性材料により構成されてもよいし、非磁性材料により構成されてもよい。各絶縁層6Cは、単層構造を有していてもよいし、多層構造を有していてもよい。各絶縁層6Cは、磁性層と非磁性層とが積層されてなる多層構造を有していてもよい。
【0114】
接続導体7Cは、第三方向D3において延在し、端子電極4Cとコイル5Cの一端とに接続されている。接続導体8Cは、第三方向D3において延在し、端子電極3Cとコイル5Cの他端とに接続されている。接続導体7C,8Cは、例えば、コイル5Cの複数のコイル導体と同じ材料により構成されている。
【0115】
(コイル部品の製造方法)
続いて、コイル部品1Cの製造方法の一例について、図35図47を参照して説明する。図35は、図33のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。図36及び図37において、(a)は、製造工程における斜視図を示し、(b)は、(a)のb-b線断面図を示す。図38図47は、製造工程における斜視図を示す。コイル部品1Cは、フォトリソグラフィ法を用いて製造される。以下では、コイル部品1の製造方法との共通点を適宜省略して説明する。本実施形態では、二つのコイル部品1Cが実装面(側面2f)同士を対向させた状態で同時に製造される。
【0116】
図35に示されるように、コイル部品1Cの製造方法は、導電ペースト形成工程S60と、ベース層形成工程S61と、硬化パターン形成工程S62と、絶縁層形成工程S63と、硬化パターン形成工程S64と、絶縁層形成工程S65と、硬化パターン形成工程S66と、絶縁層形成工程S67と、硬化パターン形成工程S68と、絶縁層形成工程S69と、硬化パターン形成工程S70と、絶縁層形成工程S71と、硬化パターン形成工程S72と、絶縁層形成工程S73と、硬化パターン形成工程S74と、絶縁層形成工程S75と、硬化パターン形成工程S76と、絶縁層形成工程S77と、硬化パターン形成工程S78と、絶縁層形成工程S79と、硬化パターン形成工程S80と、絶縁層形成工程S81と、硬化パターン形成工程S82と、絶縁層形成工程S83と、硬化パターン形成工程S84と、絶縁層形成工程S85と、硬化パターン形成工程S86、硬化パターン形成工程S87、現像工程S88と、充填工程S89と、研磨工程S90と、切断工程S91と、剥離工程S92と、焼成工程S93と、を含む。工程S60~工程S93は、この順で行われる。
【0117】
導電ペースト形成工程S60は、図36(a)及び図36(b)に示されるように、基板11上に端子電極4Cの端子電極層となる導電ペースト20を形成する工程である。基板11上には、予め剥離層12が形成されている。導電ペースト20は、例えば、スクリーン印刷により剥離層12上に付与される。本実施形態においても、物理的な力によりベース層13(図37(a)参照)を基板11から剥離可能であれば、剥離層12を設けなくてもよい。
【0118】
ベース層形成工程S61は、図37(a)及び図37(b)に示されるように、基板11上にベース層13を形成する工程である。ベース層13は、剥離層12を覆うように、導電ペースト20の周りに形成される。ベース層13は、導電ペースト20と略面一となるように形成される。
【0119】
硬化パターン形成工程S62は、図38(a)に示されるように、基板11上に、感光性導電ペースト14aを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Ca、接続導体7C、及び端子電極4Cに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Caを形成する工程である。硬化パターン15Caは、コイル導体5Ca、接続導体7C、及び端子電極4Cとなるパターンである。硬化パターン15Caのうち端子電極4Cに対応するパターンは、導電ペースト20上に直接形成される。
【0120】
絶縁層形成工程S63は、図38(b)に示されるように、硬化パターン15Ca上に絶縁層16Caを形成する工程である。絶縁層16Caは、絶縁層6Caとなる層である。絶縁層16Cは、絶縁層16と同様に形成される。絶縁層16Caは、硬化パターン15Caを覆う形状を有している。絶縁層16Caは、硬化パターン15Caのうち、コイル導体5Cbと接続されるコイル導体5Caの端部となる部分、及び、端子電極4Cとなる部分には設けられない。
【0121】
硬化パターン形成工程S64は、図39(a)に示されるように、感光性導電ペースト14a及び絶縁層16Ca上に感光性導電ペースト14bを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Cb、及び端子電極4Cに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Cbを形成する工程である。硬化パターン15Cbは、コイル導体5Cb及び端子電極4Cとなるパターンである。硬化パターン15Cbは、硬化パターン15Caのうち、絶縁層16Caが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0122】
絶縁層形成工程S65は、図39(b)に示されるように、硬化パターン15Cb上に絶縁層16Cbを形成する工程である。絶縁層16Cbは、絶縁層6Cbとなる層である。絶縁層16Cbは、硬化パターン15Cbを覆う形状を有している。絶縁層16Cbは、硬化パターン15Cbのうち、コイル導体5Ccと接続されるコイル導体5Cbの他端部となる部分、及び、端子電極4Cとなる部分には設けられない。
【0123】
硬化パターン形成工程S66は、図40(a)に示されるように、感光性導電ペースト14b及び絶縁層16Cb上に感光性導電ペースト14cを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Cc、及び端子電極4Cに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Ccを形成する工程である。硬化パターン15Ccは、コイル導体5Cc及び端子電極4Cとなるパターンである。硬化パターン15Ccは、硬化パターン15Cbのうち、絶縁層16Cbが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0124】
絶縁層形成工程S67は、図40(b)に示されるように、硬化パターン15Cc上に絶縁層16Ccを形成する工程である。絶縁層16Ccは、絶縁層6Ccとなる層である。絶縁層16Ccは、硬化パターン15Ccを覆う形状を有している。絶縁層16Ccは、硬化パターン15Ccのうち、コイル導体5Cdと接続されるコイル導体5Ccの他端部となる部分、及び、端子電極4Cとなる部分には設けられない。
【0125】
硬化パターン形成工程S68は、図41(a)に示されるように、感光性導電ペースト14c及び絶縁層16Cc上に感光性導電ペースト14dを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Cdに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Cdを形成する工程である。硬化パターン15Cdは、コイル導体5Cdとなるパターンである。硬化パターン15Cdは、硬化パターン15Ccのうち、絶縁層16Ccが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0126】
絶縁層形成工程S69は、図41(b)に示されるように、硬化パターン15Cd上に絶縁層16Cdを形成する工程である。絶縁層16Cdは、絶縁層6Cdとなる層である。絶縁層16Cdは、硬化パターン15Cdを覆う形状を有している。絶縁層16Cdは、硬化パターン15Cdのうち、コイル導体5Ceと接続されるコイル導体5Cdの他端部となる部分には設けられない。
【0127】
硬化パターン形成工程S70は、図42(a)に示されるように、感光性導電ペースト14d及び絶縁層16Cd上に感光性導電ペースト14eを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Ceに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Ceを形成する工程である。硬化パターン15Ceは、コイル導体5Ceとなるパターンである。硬化パターン15Ceは、硬化パターン15Cdのうち、絶縁層16Cdが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0128】
絶縁層形成工程S71は、図42(b)に示されるように、硬化パターン15Ce上に絶縁層16Ceを形成する工程である。絶縁層16Ceは、絶縁層6Ceとなる層である。絶縁層16Ceは、硬化パターン15Ceを覆う形状を有している。絶縁層16Ceは、硬化パターン15Ceのうち、コイル導体5Cfと接続されるコイル導体5Ceの他端部となる部分には設けられない。
【0129】
硬化パターン形成工程S72は、コイル導体5Cfとなる硬化パターンを形成する工程である。絶縁層形成工程S73は、絶縁層6Cfとなる絶縁層を形成する工程である。硬化パターン形成工程S74は、コイル導体5Cgとなる硬化パターンを形成する工程である。絶縁層形成工程S75は、絶縁層6Cgとなる絶縁層を形成する工程である。硬化パターン形成工程S76は、コイル導体5Chとなる硬化パターンを形成する工程である。絶縁層形成工程S77は、絶縁層6Chとなる絶縁層を形成する工程である。硬化パターン形成工程S78は、コイル導体5Ciとなる硬化パターンを形成する工程である。絶縁層形成工程S79は、絶縁層6Ciとなる絶縁層を形成する工程である。硬化パターン形成工程S80は、コイル導体5Cjとなる硬化パターンを形成する工程である。絶縁層形成工程S81は、絶縁層6Cjとなる絶縁層を形成する工程である。
【0130】
上述のように、コイル導体5Ca,5Cb,5Cc,5Cd,5Ceの形状は、コイル導体5Cf,5Cg,5Ch,5Ci,5Cjの形状とそれぞれ同じである。このため、コイル導体5Cf,5Cg,5Ch,5Ci,5Cjとなる硬化パターン15Cf,15Cg,15Ch,15Ci,15Cj(図46参照)、及び、絶縁層6Cf,6Cg,6Ch,6Ci,6Cjとなる絶縁層16Cf,16Cg,16Ch,16Ci,16Cj(図46参照)を形成する工程S72~工程S81について、図示及び説明を省略する。
【0131】
硬化パターン形成工程S82は、図43(a)に示されるように、感光性導電ペースト14j及び絶縁層16Cj上に感光性導電ペースト14kを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Ck及び端子電極3Cに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Ckを形成する工程である。硬化パターン15Ckは、コイル導体5Ck及び端子電極3Cとなるパターンである。硬化パターン15Ckは、硬化パターン15Cjのうち、絶縁層16Cjが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0132】
絶縁層形成工程S83は、図43(b)に示されるように、硬化パターン15Ck上に絶縁層16Ckを形成する工程である。絶縁層16Ckは、絶縁層6Ckとなる層である。絶縁層16Ckは、硬化パターン15Ckを覆う形状を有している。絶縁層16Ckは、硬化パターン15Ckのうち、コイル導体5Clと接続されるコイル導体5Ckの他端部となる部分、及び、端子電極3Cとなる部分には設けられない。
【0133】
硬化パターン形成工程S84は、図44(a)に示されるように、感光性導電ペースト14k及び絶縁層16Ck上に感光性導電ペースト14lを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Cl及び端子電極3Cに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Clを形成する工程である。硬化パターン15Clは、コイル導体5Cl及び端子電極3Cとなるパターンである。硬化パターン15Clは、硬化パターン15Ckのうち、絶縁層16Ckが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0134】
絶縁層形成工程S85は、図44(b)に示されるように、硬化パターン15Cl上に絶縁層16Clを形成する工程である。絶縁層16Clは、絶縁層6Clとなる層である。絶縁層16Clは、硬化パターン15Clを覆う形状を有している。絶縁層16Clは、硬化パターン15Clのうち、コイル導体5Cmと接続されるコイル導体5Clの他端部となる部分、及び、端子電極3Cとなる部分には設けられない。
【0135】
硬化パターン形成工程S86は、図45(a)に示されるように、感光性導電ペースト14l及び絶縁層16Cl上に感光性導電ペースト14mを付与(例えば、塗布)し、コイル導体5Cm、接続導体8B及び端子電極3Cに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Cmを形成する工程である。硬化パターン15Cmは、コイル導体5Cm、接続導体8B及び端子電極3Cとなるパターンである。硬化パターン15Cmは、硬化パターン15Clのうち、絶縁層16Clが設けられていない部分と直接接続されるように形成される。
【0136】
硬化パターン形成工程S87は、図45(b)に示されるように、感光性導電ペースト14m上に感光性導電ペースト14nを付与(例えば、塗布)し、端子電極3Cに対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15Cnを形成する工程である。硬化パターン15Cnは、端子電極3Cとなるパターンである。硬化パターン15Cnは、硬化パターン15Clのうち、端子電極3Cとなる部分と直接接続されるように形成される。
【0137】
現像工程S88は、図46に示されるように、露光されなかった感光性導電ペースト14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h,14i,14j,14k,14l,14m,14nを現像液により現像する工程である。これにより、ベース層13上には硬化パターン15Ca,15Cb,15Cc,15Cd,15Ce,15Cf,15Cg,15Ch,15Ci,15Cj,15Ck,15Cl,15Cm,15Cn(以下、複数の硬化パターン15C)及び絶縁層16Ca,16Cb,16Cc,16Cd,16Ce,16Cf,16Cg,16Ch,16Ci,16Cj,16Ck,16Cl(以下、複数の絶縁層16C)が残る。
【0138】
充填工程S89は、基板11上に絶縁材17(図47(a)参照)を充填する工程である。絶縁材17は、複数の硬化パターン15C及び複数の絶縁層16Cの周りに隙間なく充填される。本実施形態では、絶縁材17は、乾燥により硬化される。
【0139】
研磨工程S90は、図47(a)に示されるように、絶縁材17の上面を研磨し、硬化パターン15Cnの上面を露出させる工程である。
【0140】
切断工程S91は、図47(b)に示されるように、研磨工程S90で得られた中間体を第三方向D3の中央部で切断する工程である。図36図47(b)では、二つのコイル部品1Cに対応する部分のみが示されているが、更に多くの偶数個のコイル部品1Cに対応する複数の部分が第二方向D2及び第三方向D3に配列された状態で一体的に形成されてもよい。切断工程S91は、これらの複数の部分を個片化する工程である。
【0141】
剥離工程S92は、基板11をベース層13から剥離する工程である。基板11は、剥離層12とともにベース層13から剥離される。
【0142】
焼成工程S93は、導電ペースト20、ベース層13、複数の硬化パターン15C、複数の絶縁層16C、及び、絶縁材17を焼成する工程である。これにより、導電ペースト20は、端子電極4Cの一部となる。ベース層13はベース層9となる。複数の硬化パターン15Cは、端子電極4Cの残りの部分、端子電極3C、コイル5Cの複数のコイル導体、及び接続導体7C,8Cとなる。複数の絶縁層16Cは、複数の絶縁層6となる。絶縁材17は、充填体10となる。以上により、コイル部品1Cが得られる。
【0143】
以上説明したように、コイル部品1Cの製造方法においても、各硬化パターン形成工程において、複数の硬化パターン15Cを形成した後に、現像工程S88において、露光されなかった感光性導電ペースト14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h,14i,14j,14k,14l,14m,14nを一括で現像する。よって、形成面をフラットに保ちながら、工程数の増加を抑制することができる。また、露光及び現像を繰り返す従来の製造方法に比べて、工程数を減らすことができる。
【0144】
コイル部品1Cの製造方法は、現像工程S88前に、コイル5Cに接続される端子電極3C,4Cの一部となる導電ペースト20を基板11上に形成する導電ペースト形成工程S60と、端子電極3C,4Cの残りの部分となる感光性導電ペースト14a,14b,14c,14k,14l,14m,14nを基板11上に形成する硬化パターン形成工程S62,S64,S66,S84,S86,S87とを含む。このため、端子電極3C,4Cをコイル5Cと共に形成することができる。コイル5Cの形成後に端子電極3C,4Cを形成する必要がないので、工程数を更に減らすことができる。
【0145】
[第一変形例]
図48を参照して、第一実施形態の第一変形例に係るコイル部品の製造方法を説明する。図48は、第一実施形態の第一変形例に係るコイル部品の製造工程を示す図である。本変形例では、硬化パターン形成工程S2(図3参照)において、感光性導電ペースト14aの付与(例えば、塗布)及び露光を繰り返し、一つの硬化パターン15aを形成する点で、第一実施形態に係るコイル部品1の製造方法と相違している。具体的には、硬化パターン形成工程S2では、まず、図48(a)に示されるように、ベース層13上に、感光性導電ペースト14a1を付与し、コイル導体5a及び接続導体7に対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15a1を形成する。次に、図48(b)に示されるように、現像を行うことなく感光性導電ペースト14a1上に、感光性導電ペースト14a2を付与し、コイル導体5a及び接続導体7に対応するパターンで露光することにより、硬化パターン15a2を形成する。硬化パターン15a1,15a2は互いに同じ形状である。
【0146】
一つの硬化パターン15aは、複数の硬化パターン15a1,15a2により構成される。この例では、感光性導電ペースト14aの付与及び露光を二回繰り返し、硬化パターン15aを二層構造としたが、三層以上であってもよい。図示を省略するが、硬化パターン15b,15cについても同様に感光性導電ペースト14b,14cの付与及び露光を繰り返す。本変形例では、形成面をフラットに保ちながら、工程数を減らしつつ、コイル導体5a,5b,5cを高アスペクト比で形成することができる。
【0147】
[第二変形例]
図49を参照して、第一実施形態の第二変形例に係るコイル部品を説明する。図49は、第一実施形態の第二変形例に係るコイル部品の断面構成を示す図である。図49に示されるように、本変形例に係るコイル部品1Dは、コイル5を覆う絶縁膜21を更に備える点で、コイル部品1と相違している。絶縁膜21は、素体2内に設けられている。絶縁膜21は、電気的絶縁性を有している。絶縁膜21は、例えば、ガラス、フェライト、または、SiO、Al、ZrO等の非磁性材料を含んでいる。絶縁膜21は、少なくともコイル5の一部を覆っている。絶縁膜21は、端子電極3,4と接続されるコイル5の両端以外の部分を全て覆っていてもよい。絶縁層6に加えて絶縁膜21を設けることにより、コイル5及び接続導体7,8の絶縁性を更に向上させることができる。
【0148】
図50及び図51を参照して、絶縁膜21が単独で焼結する材料を含む場合におけるコイル部品1Dの製造方法を説明する。単独で焼結する材料として、具体的には、ガラス、フェライト等が挙げられる。図50は、図49のコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。図51は、図49のコイル部品の製造工程を示す図である。図50に示されるように、コイル部品1Dの製造方法は、絶縁膜形成工程S14を含む点で、コイル部品1の製造方法と相違している。絶縁膜形成工程S14は、現像工程S7と焼成工程S8との間で行われる。
【0149】
この場合の絶縁膜形成工程S14は、図51に示されるように、現像後に残ったベース層13、硬化パターン15a,15b,15c、及び、絶縁層16a,16bを覆うように、絶縁膜21となる絶縁膜22を形成する工程である。絶縁膜22は、例えば、スプレーコーターにより、ガラス又はフェライトを含む塗料として塗布される。絶縁膜22は、焼成工程S8により焼成されて絶縁膜21となる。
【0150】
図52を参照して、絶縁膜21が単独では焼結しない材料を含む場合におけるコイル部品1Dの製造方法を説明する。単独では焼結しない材料として、具体的には、SiO、Al、ZrO等の非磁性材料が挙げられる。図52は、図49のコイル部品の他の製造方法を示すフローチャートである。図52に示されるように、コイル部品1Dの他の製造方法は、絶縁膜形成工程S14が現像工程S7と焼成工程S8との間で行われる点で、上述の製造方法と異なっている。
【0151】
図示を省略するが、この場合の絶縁膜形成工程S14は、焼成により得られたベース層9、コイル5、絶縁層6a,6b、及び、接続導体7,8を覆うように、絶縁膜21を形成する工程である。絶縁膜21は、例えば、スプレーコーターにより、SiO、Al、ZrO等の非磁性材料を含む塗料として塗布される。絶縁膜21がSiO膜である場合、絶縁膜21は、例えば、スパッタにより形成されてもよい。
【0152】
[第三変形例]
図53を参照して、第一実施形態の第三変形例に係るコイル部品の製造方法を説明する。図53は、第一実施形態の第三変形例に係るコイル部品の製造方法を示すフローチャートである。本変形例と第一実施形態との主な相違点は、基板11及び剥離層12(図4参照)を用いることなく、予め形成されたベース層9(図2参照)を基板として用いる点である。図53に示されるように、本変形例に係るコイル部品の製造方法は、ベース層形成工程S1(図3参照)の代わりにベース層準備工程S15を含み、剥離工程S12(図3参照)を含まない。
【0153】
ベース層準備工程S15では、予め形成されたベース層9が準備される。ベース層準備工程S15において準備されるベース層9は、例えば、複数のコイル部品1に含まれる複数のベース層9が一体的に形成されてなり、切断工程S11において複数のベース層9に個片化される。硬化パターン形成工程S2では、ベース層準備工程S15において準備されたベース層9上に感光性導電ペースト14aが直接付与される。本変形例では、研磨工程S10において、側面2cとなる充填体10の上面だけでなく、側面2dとなるベース層9の下面が研磨されてもよい。
【0154】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わされてもよい。
【0155】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
素体と、前記素体内に配置され、互いに異なる形状を有している第一コイル導体及び第二コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、
基板上に第一感光性導電ペーストを付与し、前記第一コイル導体に対応するパターンで露光することにより、第一硬化パターンを形成する工程と、
前記第一硬化パターンを形成する工程後に、前記第一感光性導電ペースト上に第二感光性導電ペーストを付与し、前記第二コイル導体に対応するパターンで露光することにより、第二硬化パターンを形成する工程と、
前記第二硬化パターンを形成する工程後に、露光されなかった前記第一感光性導電ペースト及び前記第二感光性導電ペーストを現像する工程と、
前記現像する工程後に、前記基板上に絶縁材を充填する工程と、を含む、
コイル部品の製造方法。
(付記2)
前記第一硬化パターンを形成する工程では、前記第一感光性導電ペーストの付与及び露光を繰り返して前記第一硬化パターンを形成し、
前記現像する工程では、露光されなかった複数の前記第一感光性導電ペースト及び前記第二感光性導電ペーストを現像する、
付記1に記載のコイル部品の製造方法。
(付記3)
前記第一硬化パターンを形成する工程と前記第二硬化パターンを形成する工程との間に、前記第一硬化パターン上に絶縁層を形成する工程を更に含む、
付記1又は2に記載のコイル部品の製造方法。
(付記4)
前記現像する工程と前記充填する工程との間に、前記第一硬化パターン及び前記第二硬化パターンを焼成する工程を更に含む、
付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品の製造方法。
(付記5)
前記充填する工程後に、前記第一硬化パターン、前記第二硬化パターン、及び前記絶縁材を焼成する工程を更に含む、
付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品の製造方法。
(付記6)
前記現像する工程前に、前記コイルに接続される端子電極となる導電ペーストを前記基板上に形成する工程を更に含む、
付記1~5のいずれか一つに記載のコイル部品の製造方法。
(付記7)
素体と、前記素体内に配置され、コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、
基板上に感光性導電ペーストを付与し、前記コイル導体に対応するパターンで露光することにより、硬化パターンを形成する工程と、
前記硬化パターンを形成する工程後に、露光されなかった前記感光性導電ペーストを現像する工程と、
前記現像する工程後に、前記基板上に絶縁材を充填する工程と、を含み、
前記硬化パターンを形成する工程では、前記感光性導電ペーストの付与及び露光を繰り返して前記硬化パターンを形成し、
前記現像する工程では、露光されなかった複数の前記感光性導電ペーストを現像する、
コイル部品の製造方法。
(付記8)
素体と、前記素体内に配置され、コイル導体を含むコイルと、を備えるコイル部品の製造方法であって、
基板上に感光性導電ペーストを付与し、前記コイル導体に対応するパターンで露光することにより、硬化パターンを形成する工程と、
前記硬化パターンを形成する工程後に、前記硬化パターン上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を形成する工程後に、露光されなかった前記感光性導電ペーストを現像する工程と、
前記現像する工程後に、前記基板上に絶縁材を充填する工程と、を含む、
コイル部品の製造方法。
【符号の説明】
【0156】
1,1A,1B,1C…コイル部品、2…素体、3,3A,3B,3C,4,4A,4B,4C…端子電極、5,5A,5B,5C…コイル、5a,5b,5c,5Aa,5Ab,5Ac,5Ba,5Bb,5Bc,5Ca,5Cb,5Cc,5Cd,5Ce,5Cf,5Cg,5Ch,5Ci,5Cj,5Ck,5Cl,5Cm…コイル導体、11…基板、14a,14a1,14a2,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h,14i,14j,14k,14l,14m,14n…感光性導電ペースト、15a,15a1,15a2,15b,15c,15Aa,15Ab,15Ac,15Ba,15Bb,15Bc,15C,15Ca,15Cb,15Cc,15Cd,15Ce,15Cf,15Cg,15Ch,15Ci,15Cj,15Ck,15Cl,15Cm,15Cn…硬化パターン、16a,16b,16Aa,16Ab,16Ba,16Bb,16C,16Ca,16Cb,16Cc,16Cd,16Ce,16Cf,16Cg,16Ch,16Ci,16Cj,16Ck,16Cl…絶縁層、17…絶縁材、18,19,20…導電ペースト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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