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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100215
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】キャップ及びコネクタセット
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/71 20110101AFI20240719BHJP
【FI】
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004041
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】山口 脩太
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB16
5E223AC27
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB39
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB25
5E223EB04
5E223EB12
5E223EB32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】保持するコネクタに備えられたシェルの変形を防止できるキャップ及びコネクタセットを提供する。
【解決手段】キャップ2は、基板4に実装されるリセプタクルコネクタ3に取付けられる。リセプタクルコネクタ3は、絶縁性のハウジング10と、基板4の実装面4aと接続する導電性の端子11と、ハウジングの少なくとも一部を覆うシェル本体部12a及びシェル本体部から仮想平面に沿って延出して実装面と接続するシェル延出部12bを有する導電性のシェル12とを備える。キャップ2は、ハウジング又はシェル本体部を基準とする仮想平面Sの反対面に配置され、ハウジング又はシェル本体部における反対面の少なくとも一部を覆うとともにハウジング又はシェル本体部を保持する保持部20と、保持部から延出してシェル延出部における反対面の少なくとも一部を覆うキャップ延出部21とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装されるコネクタに取付けられるキャップであって、
前記コネクタは、
絶縁性のハウジングと、
前記基板の実装面と接続する基板接続部を有し、それぞれの前記基板接続部が前記実装面に沿う仮想平面上に配列されるように前記ハウジングに保持された複数の導電性の端子と、
前記ハウジングの少なくとも一部を覆うシェル本体部及び前記シェル本体部から前記仮想平面に沿って延出して前記実装面と接続するシェル延出部を有する導電性のシェルと、を備え、
前記キャップは、
前記ハウジング又は前記シェル本体部を基準とする前記仮想平面の反対面に配置され、前記ハウジング又は前記シェル本体部における前記反対面の少なくとも一部を覆うとともに前記ハウジング又は前記シェル本体部を保持する保持部と、
前記保持部から延出して前記シェル延出部における前記反対面の少なくとも一部を覆うキャップ延出部と、を備える、
キャップ。
【請求項2】
前記キャップの少なくとも一部は、
前記コネクタの長手方向と前記仮想平面の法線方向とに直交する直交方向に関して、前記コネクタの両端よりも外方に張り出すように形成されている、
請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記キャップは、
前記法線方向に見て、前記コネクタの一部を前記キャップ越しに視認可能に形成されている、
請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記保持部は、
前記コネクタの長手方向に関する中央の第1位置で、前記長手方向と前記仮想平面の法線方向とに直交する直交方向に沿って前記ハウジング又は前記シェル本体部を挟持する、
請求項1に記載のキャップ。
【請求項5】
前記保持部は、
前記コネクタの長手方向に関する中央の第1位置と、前記コネクタの長手方向に関する両端の第2位置及び第3位置とで、前記長手方向と前記仮想平面の法線方向とに直交する直交方向に沿って前記ハウジング又は前記シェル本体部を挟持する、
請求項1に記載のキャップ。
【請求項6】
前記キャップには、
前記キャップ延出部における前記シェル延出部と対向する部分が前記仮想平面の法線方向に沿って一部切り欠かれることにより、切り欠き部が形成されている、
請求項1に記載のキャップ。
【請求項7】
前記切り欠き部は、
前記コネクタの長手方向に沿って複数設けられている、
請求項6に記載のキャップ。
【請求項8】
基板に実装されるコネクタと、前記コネクタに取付けられるキャップと、を備えるコネクタセットであって、
前記コネクタは、
絶縁性のハウジングと、
前記基板の実装面と接続する基板接続部を有し、それぞれの前記基板接続部が前記実装面に沿う仮想平面上に配列されるように前記ハウジングに保持された複数の導電性の端子と、
前記ハウジングの少なくとも一部を覆うシェル本体部及び前記ハウジングから前記仮想平面に沿って延出して前記実装面と接続するシェル延出部を有する導電性のシェルと、を備え、
前記キャップは、
前記ハウジング又は前記シェル本体部を基準とする前記仮想平面の反対面に配置され、前記ハウジング又は前記シェル本体部における前記反対面の少なくとも一部を覆うとともに前記ハウジング又は前記シェル本体部を保持する保持部と、
前記保持部から延出して前記シェル延出部における前記反対面の少なくとも一部を覆うキャップ延出部と、を備える、
コネクタセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ及びコネクタセットに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタにキャップを装着したコネクタセットを形成し、キャップの吸着面を吸着ノズルで保持してコネクタを基板上へ実装する技術が採用されている(特許文献1)。一方、ハウジングに配列された端子をEMC(ElectroMagnetic Compatibility)特性向上のため金属製のシェルで囲んだ構造が知られており、近年では、シェルの一部分がハウジングよりも突出(露出)したコネクタも存在する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-022793号公報
【特許文献2】特開2020-109730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2に開示されたコネクタでは、例えば、基板実装時に発生する衝撃によってシェルの一部(突出した部分)が変形することを防止する必要がある。しかし、特許文献1に開示されたキャップでは、シェルの変形を防止する仕組みが設けられていない。
【0005】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、保持するコネクタに備えられたシェルの変形を防止できるキャップ及びコネクタセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るキャップは、
基板に実装されるコネクタに取付けられるキャップであって、
前記コネクタは、
絶縁性のハウジングと、
前記基板の実装面と接続する基板接続部を有し、それぞれの前記基板接続部が前記実装面に沿う仮想平面上に配列されるように前記ハウジングに保持された複数の導電性の端子と、
前記ハウジングの少なくとも一部を覆うシェル本体部及び前記シェル本体部から前記仮想平面に沿って延出して前記実装面と接続するシェル延出部を有する導電性のシェルと、を備え、
前記キャップは、
前記ハウジング又は前記シェル本体部を基準とする前記仮想平面の反対面に配置され、前記ハウジング又は前記シェル本体部における前記反対面の少なくとも一部を覆うとともに前記ハウジング又は前記シェル本体部を保持する保持部と、
前記保持部から延出して前記シェル延出部における前記反対面の少なくとも一部を覆うキャップ延出部と、を備える。
【0007】
この場合、前記キャップの少なくとも一部は、
前記コネクタの長手方向と前記仮想平面の法線方向とに直交する直交方向に関して、前記コネクタの両端よりも外方に張り出すように形成されている、
こととしてもよい。
【0008】
前記キャップは、
前記法線方向に見て、前記コネクタの一部を前記キャップ越しに視認可能に形成されている、
こととしてもよい。
【0009】
前記保持部は、
前記コネクタの長手方向に関する中央の第1位置で、前記長手方向と前記仮想平面の法線方向とに直交する直交方向に沿って前記ハウジング又は前記シェル本体部を挟持する、
こととしてもよい。
【0010】
前記保持部は、
前記コネクタの長手方向に関する中央の第1位置と、前記コネクタの長手方向に関する両端の第2位置及び第3位置とで、前記長手方向と前記仮想平面の法線方向とに直交する直交方向に沿って前記ハウジング又は前記シェル本体部を挟持する、
こととしてもよい。
【0011】
前記キャップには、
前記キャップ延出部における前記シェル延出部と対向する部分が前記仮想平面の法線方向に沿って一部切り欠かれることにより、切り欠き部が形成されている、
こととしてもよい。
【0012】
前記切り欠き部は、
前記コネクタの長手方向に沿って複数設けられている、
こととしてもよい。
【0013】
本発明の第2の観点に係るコネクタセットは、
基板に実装されるコネクタと、前記コネクタに取付けられるキャップと、を備えるコネクタセットであって、
前記コネクタは、
絶縁性のハウジングと、
前記基板の実装面と接続する基板接続部を有し、それぞれの前記基板接続部が前記実装面に沿う仮想平面上に配列されるように前記ハウジングに保持された複数の導電性の端子と、
前記ハウジングの少なくとも一部を覆うシェル本体部及び前記ハウジングから前記仮想平面に沿って延出して前記実装面と接続するシェル延出部を有する導電性のシェルと、を備え、
前記キャップは、
前記ハウジング又は前記シェル本体部を基準とする前記仮想平面の反対面に配置され、前記ハウジング又は前記シェル本体部における前記反対面の少なくとも一部を覆うとともに前記ハウジング又は前記シェル本体部を保持する保持部と、
前記保持部から延出して前記シェル延出部における前記反対面の少なくとも一部を覆うキャップ延出部と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保持するコネクタのシェルの変形を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るコネクタセットの構成を示す分解斜視図である。
図2】コネクタセットの斜視図である。
図3】基板に実装されたリセプタクルコネクタの分解斜視図である。
図4】リセプタクルコネクタの構成を示す斜視図である。
図5】(A)は、キャップを上面より視た斜視図及び(B)は、キャップを底面より視た斜視図である。
図6】(A)は、コネクタセットの上面図である。(B)は、コネクタセットの底面図である。(C)は、コネクタセットの側面図である。(D)は、コネクタセットの正面図である。
図7図6(A)に示すVII-VII線断面図である。
図8】キャップを用いてリセプタクルコネクタを基板に実装する工程を示すフローチャートである。
図9】(A)及び(B)は、エンボステープにコネクタセットを収容した状態を示す模式図である。(C)は、シェル延出部にかかる力と変位量とを示す図である。(D)は、シェル延出部にかかる力と変位量との関係を示すグラフである。
図10】キャップの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。本実施形態では、適宜、図面に表されたXYZ3軸直交座標系にしたがって説明を行う。
【0017】
[コネクタセットの構成]
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るコネクタセット1は、キャップ2と、リセプタクルコネクタ3と、を備える。キャップ2は、リセプタクルコネクタ3に取り付けられる。リセプタクルコネクタ3は、図2に示すように、キャップ2に取り付けられた状態で、基板4に実装される。
【0018】
本実施の形態では、基板4に実装面(主面)4aがXY面に沿っているものとし、リセプタクルコネクタ3の長手方向をX軸方向とし、実装面4a内で長手方向(X軸方向)に直交する直交方向をY軸方向とし、実装面4aの法線方向をZ軸方向とする。本実施の形態では、適宜、+Z方向を「上」とし、-Z方向を「下」として説明を行う。
【0019】
図3に示すように、リセプタクルコネクタ3が基板4に実装された後、キャップ2は、リセプタクルコネクタ3から取り外される。このように、キャップ2は、基板4に実装されるリセプタクルコネクタ3に取り付けられる。
【0020】
[コネクタの構成]
図4に示すように、リセプタクルコネクタ3は、絶縁性のハウジング10と、導電性の複数の端子11と、導電性のシェル12と、を備える。
【0021】
[ハウジング]
ハウジング10は、リセプタクルコネクタ3の母体を形成する。ハウジング10は、矩形状の外形を有する。ハウジング10は、例えば樹脂を含んだ絶縁材料で成形され、構成される。ハウジング10は、端子11とシェル12との間に介在し、両者を絶縁する。なお、ハウジング10における端子11が並ぶ方向であるX軸方向を長手方向とする。
【0022】
ハウジング10の+Z方向を向いた上面には、リセプタクルコネクタ3と嵌合するプラグコネクタの凸部(不図示)を収容する凹部10aが設けられている。凹部10aの開口は、ハウジング10のX軸方向に延びている。また、ハウジング10には、端子11がそれぞれ挿入される貫通孔10bが設けられている。貫通孔10bは、凹部10aの開口部近傍において、X軸方向に沿って所定ピッチで配列されている。貫通孔10bの列は、凹部10aのY軸方向両側にそれぞれ設けられている。すなわち、ハウジング10には、X軸方向に沿った貫通孔10bの列が2列形成されている。一方の貫通孔10bの列と、他方の貫通孔10bの列とは、X軸方向に沿って配列周期の半分だけずれて交互に形成されている。
【0023】
また、ハウジング10の凹部10aのX軸方向に沿った2つの内壁面には、Z軸方向に延びる溝部10cの配列が形成されている。一方の内壁面に設けられた溝部10cは、他方の内壁面寄りに設けられた貫通孔10bとX軸方向に関して同じ位置に設けられている。
【0024】
[端子]
複数の端子11は、例えば弾性力を有する金属の板状部材が打ち抜き加工されて形成される。図4に示すように、端子11には、係止部11aと、接触部11bと、基板接続部11cと、が設けられている。端子11は、全体がY軸方向に沿った向きとなった状態で、係止部11aが貫通孔10bに下から上へ挿入される。これにより、端子11がハウジング10に固定されて保持される。
【0025】
端子11がハウジング10に固定されると、接触部11bは、ハウジング10の凹部10aに張り出した状態となり、凹部10aにプラグコネクタの凸部が嵌合すると、凸部に押されて内壁面に形成された溝部10c内に変位する。また、端子11がハウジング10に固定されると、基板接続部11cは、図4に示すように、実装面4aに沿う仮想平面S上に配列される状態となる。仮想平面Sの法線方向は、実装面4aと同様にZ軸方向となる。
【0026】
このように、ハウジング10に端子11を挿入することにより、X軸方向に配列される端子11の列が2列形成される。一方の端子列と他方の端子列とでは、端子11は、Y軸方向に沿って逆向きとなる。これにより、一方の貫通孔10bの列に係止部11aが挿入されハウジング10に固定された端子11の基板接続部11cと、他方の貫通孔10bの列に挿入された端子11の基板接続部11cとは、互いに逆向きに延びるように配置される。
【0027】
また、それぞれの端子列の端子11の接触部11bは互いに対向して、凹部10a内に突出するように配置される。凹部10aにプラグコネクタの凸部が嵌合すると、接触部11bは、プラグコネクタの凸部に設けられた導電性の端子の接触部と接触する。これにより、リセプタクルコネクタ3とプラグコネクタとが電気的に接続される。基板接続部11cが実装面4aの信号電極(不図示)に接続され、プラグコネクタの端子がケーブルに接続されていれば、ケーブルと基板4との電気的な接続が実現される。なお、プラグコネクタの端子が基板4とは異なる他の基板(不図示)に直接接続されていれば、基板4と他の基板との電気的な接続が実現される。
【0028】
[シェル]
シェル12は、例えば弾性力を有する金属の板状部材がプレス加工されることによって形成される。図4に示すように、シェル12は、ハウジング10の少なくとも一部を覆うシェル本体部12aと、ハウジング10から仮想平面Sに沿って延出して実装面4aと接続するシェル延出部12bと、を備える。
【0029】
図3に示すように、シェル本体部12aは、凹部10aの部分を除いて、ハウジング10を覆っている。シェル本体部12aは、基板4の実装面4aに形成された接地電極(不図示)に接続される。図3に示すように、ハウジング10及びこれに保持される端子11の列は、シェル本体部12aで全体的に覆われる。なお、端子列2列のうち、-Y方向に延びる基板接続部11cについては、シェル本体部12aに覆われず、外部に露出している。
【0030】
図3及び図4に示すように、シェル延出部12bは、シェル12のシェル本体部12aから外方(ハウジング10から離れる方向、すなわち-Y方向)に突出するように設けられている。シェル延出部12bは、シェル本体部12aのX軸方向に関する両端において-Y方向に延び基板4(実装面4a)に対面することとなる一対の延出部分と、同じくシェル本体部12aのX軸方向に関する中央において-Y方向に延び基板4(実装面4a)に対面することとなる延出部分とからなる3つの突出部12cを備える。また、シェル延出部12bは、3つの突出部12cを連結するようにX軸方向に延びる連結部12dを備える。3つの突出部12c及び連結部12dは、それぞれ基板4の実装面4aとほぼ同じZ位置で、XY面内に延びる。突出部12cとシェル延出部12bとは、基板4の実装面4aにおける任意の位置に形成された接地電極に接続される。
【0031】
シェル本体部12aとシェル延出部12bとにより、シェル12には2つの開口12eが形成される。シェル延出部12bの連結部12dには、開口12eの中央に向けて突出する接触突部12fが設けられる。接触突部12fは、開口12eそれぞれに2つずつ突出するように設けられている。接触突部12fは、連結部12dから開口12eの中心に向かうにつれて上方向(+Z方向)に向かうように傾斜している。接触突部12fは、嵌合相手となるプラグコネクタのシェルとの電気的な接続を強固とするために設けられている。
【0032】
図3及び図4に示すように、シェル12のX軸方向の両端におけるY軸方向に沿った側面には、プラグコネクタと係止する係止部12gが設けられている。この係止部12gによる係止により、接触突部12fの弾性力がプラグコネクタに作用しても、リセプタクルコネクタ3とプラグコネクタとの嵌合が維持される。
【0033】
また、図4に示すように、リセプタクルコネクタ3のX軸方向の中央部分において、ハウジング10には、中央凹部10dが設けられ、後述するキャップ2の保持部20によって保持される被保持片12hが設けられている。被保持片12hは、図3に示すように、上から下に向かって中央凹部10dに入り込んでいる。被保持片12hは、中央凹部10dの中で、その先端が、中央凹部10dのさらに奥方向に入り込むように折れ曲がっている。
【0034】
[キャップの構成]
図1に戻り、キャップ2は、絶縁性を有する素材、例えば樹脂で構成されており、例えば樹脂を成型加工することにより形成される。後述するように、キャップ2は、リフロー半田付けを行う不図示のリフロー装置に搬入されるため、キャップ2の素材には、融点がリフロー温度を超えるものが用いられる。キャップ2の厚みは、コネクタの厚さ方向、すなわちコネクタの上下方向(Z方向)に関して、リセプタクルコネクタ3を同じ位置、高さで保持するようにほぼ均一となっており、リフロー工程において受ける熱による応力変形が無視できる程度の厚みとなっている。
【0035】
図5(A)及び図5(B)に示すように、キャップ2は、保持部20と、キャップ延出部21と、を備える。キャップ2は、保持部20と、キャップ延出部21とで、全体として矩形平板状の物体を形成する。
【0036】
[保持部]
図5(B)に示すように、保持部20は、矩形平板状の本体部20aと、本体部20aの+Y端の縁から、-Z方向に折れ曲がって形成された背面部20bと、を備える。図6(A)、図6(B)、図6(C)及び図6(D)に示すように、本体部20aは、リセプタクルコネクタ3を保持したときに、ハウジング10及びシェル本体部12aの少なくとも一部を上から覆うように配置される。
【0037】
図5(B)に示すように、保持部20は、指部30と、当接部31と、を備える。指部30は、キャップ2の下面のほぼ中央に設けられており、その下面から-Z方向に突出している。具体的には、指部30は、キャップ2がリセプタクルコネクタ3を保持したときに、ハウジング10の中央凹部10d及び被保持片12h(図3図4参照)に対応する位置に設けられている。キャップ2がリセプタクルコネクタ3を保持する際、指部30が上から下に中央凹部10dに入り込む。
【0038】
指部30の先端部分には、+Y方向に突出する凸部30aが設けられている。指部30が、中央凹部10dに入り込むと、凸部30aが、被保持片12hの先端部分に沿って中央凹部10dの奥まで入り込み、凸部30aと被保持片12hとがZ軸方向に軽く引っかかるようになる。これにより、キャップ2がリセプタクルコネクタ3を保持する保持力を大きくして、リセプタクルコネクタ3が落下するのを防止することができる。
【0039】
当接部31は、指部30に対してY軸方向に対向する位置であって、指部30を基準として+Y方向の位置に設けられており、背面部20bから-Y方向に突出している。キャップ2は、指部30と当接部31とでリセプタクルコネクタ3のシェル本体部12aを挟持する。すなわち、本実施の形態では、指部30と当接部31とは、図6(B)に示すように、リセプタクルコネクタ3の長手方向に関する中央の第1位置X1で、X軸方向と仮想平面Sの法線方向(Z軸方向)とに直交する方向に沿って、すなわちY軸方向に沿って、シェル本体部12aを挟持する(図7参照)。この状態で、例えば真空吸着によりキャップ2を吸着し、持ち上げればキャップ2とともにリセプタクルコネクタ3を持ち上げることができるようになり、リセプタクルコネクタ3を搬送することができる。
【0040】
このように、キャップ2がリセプタクルコネクタ3を保持するのは、X軸方向に関する中心位置である第1位置X1(図6(B)参照)だけである。これにより、仮に、リセプタクルコネクタ3がリフロー時の熱等によりX軸方向に膨張しても、その膨張をキャップ2が阻害してリセプタクルコネクタ3が歪み変形するのを防止することが可能となる。
【0041】
図6(C)及び図6(D)に示すように、保持部20は、ハウジング10及びシェル本体部12aを基準とする仮想平面Sの反対面(上面)の少なくとも一部を上面から覆った状態で、リセプタクルコネクタ3を保持する。また、このとき、端子11の基板接続部11cにおける仮想平面Sに沿った面(-Z方向を向いた面)は、外部に露出している。
【0042】
[キャップ延出部]
図6(A)、図6(B)、図6(C)及び図6(D)に示すように、キャップ延出部21は、保持部20から+Y方向に延出して保持部20とともにリセプタクルコネクタ3を覆う矩形状平板を形成している。キャップ延出部21は、シェル延出部12bを基準とする仮想平面Sの反対面の少なくとも一部を覆っている。
【0043】
図5(B)に示すように、キャップ延出部21は、本体部21aと、補強部21bと、を備える。本体部21aは、シェル延出部12bの上方を覆う平板状の部材である。補強部21bは、本体部21aの下面において、X軸方向の両端及び中央部分に計3つ設けられている。補強部21bは、図4に示すシェル延出部12bの突出部12cに対向して設けられている。図7に示すように、補強部21bと突出部12cとの最短距離、すなわちクリアランスは、Δdとなるように規定されている。
【0044】
また、図6(A)に示すように、キャップ2の少なくとも一部は、リセプタクルコネクタ3において、Y軸方向に関して、リセプタクルコネクタ3の両端よりも外方に張り出すように形成されている。このようにすれば、例えば、エンボステープにコネクタセットを収容し搬送する場合においても、キャップ2がリセプタクルコネクタ3をY軸方向に保護することができる(図9(A)参照)。これにより、仮に、シェル延出部12bが変形し、補強部21bに当接した場合であっても、シェル延出部12bの-Y端の変位量をΔd以内に抑えることが可能となる。Δdは、シェル延出部12bの弾性変形の範囲内であることが望ましく、その場合、シェル延出部12bの塑性変形を防止することができる。
【0045】
上述のように、キャップ2では、本体部21aの下面に、3つの補強部21bがX軸方向に間隔を空けて設けられている。この構成により、キャップ2では、図6(D)に示すように、キャップ延出部21におけるシェル延出部12bと対向する部分がZ軸方向に沿って一部切り欠かれることにより、切り欠き部21cが形成されている。
【0046】
切り欠き部21cは、リセプタクルコネクタ3のX軸方向に沿って2つ設けられている。切り欠き部21cの位置は、シェル延出部12bの接触突部12fの位置に対応する。切り欠き部21cにより、接触突部12fの上方に空隙が形成されているので、接触突部12fがキャップ2に接触しないようにして、接触突部12fが変形するのが防止されている。
【0047】
また、図6(A)に示すように、リセプタクルコネクタ3におけるX軸方向の全長は、キャップ2における同方向の全長よりも長く形成されており、両端部分(四隅)については、キャップ2越しにZ軸方向に視認可能である。ここで、「キャップ2越しに視認する」とは、視点の位置とリセプタクルコネクタ3との間にキャップ2を挟んだ状態でその視点からリセプタクルコネクタ3を見ることをいう。このようにすれば、キャップ2を手前にしてリセプタクルコネクタ3の位置の確認を行うことが可能となる。上述したようにリセプタクルコネクタ3のX軸方向における両端部分は、キャップ2越しに視認可能であり、同部分は露出しているが、X軸方向における剛性が高いので、接触時に変形する可能性は低い。
【0048】
また、図6(A)に示すように、キャップ2には、2つの貫通孔2aが設けられている。この貫通孔2a越しに、リセプタクルコネクタ3の端子11の基板接続部11cの状態を視認することができる。
【0049】
[基板への実装]
次に、キャップ2を用いたリセプタクルコネクタ3の基板4への実装方法について説明する。
【0050】
図8に示すように、まず、キャップ2とリセプタクルコネクタ3とを嵌合させる(ステップS1)。具体的には、組立を終えたリセプタクルコネクタ3の上部にキャップ2を移動させる。そして、キャップ2の保持部20の指部30を図7に示すように、リセプタクルコネクタ3のハウジング10の中央凹部10dに嵌めこませ、指部30と当接部31とで、リセプタクルコネクタ3を挟持して保持させる。これにより、キャップ2及びリセプタクルコネクタ3が、図2図6(A)~図6(D)、および図7に示す状態となる。
【0051】
この状態で、キャップ2と、リセプタクルコネクタ3とを備えるコネクタセット1が、図9(A)に示すように、エンボステープ40の凹状のセット収容部41内に収容され、トップテープ42を貼着して蓋がされた後、リフロー装置まで搬送される(ステップS2)。コネクタセット1は、キャップ2がリセプタクルコネクタ3の上面を覆っているため、上面からリセプタクルコネクタ3に力が加わることはなく、そのような力からリセプタクルコネクタ3を保護することができる。
【0052】
また、キャップ2は、Y軸方向に関してリセプタクルコネクタ3よりも外方に張り出している。このため、エンボステープ40による搬送時にセット収容部41内でリセプタクルコネクタ3がY軸方向に移動しても、セット収容部41の内壁にはキャップ2が当たり、リセプタクルコネクタ3がその内壁に当たるのが防止される。これにより、リセプタクルコネクタ3の変形を防止することができる。
【0053】
なお、このとき、コネクタセット1が、図9(B)に示すように、セット収容部41に傾斜して収容されると、図9(C)に示すように、シェル延出部12bがエンボステープ40の底面から力Fを受け変位量ΔLで変形してしまう場合がある。しかしながら、補強部21bにより、シェル延出部12bの変位量ΔLは、図9(D)に示すように、弾性変形の範囲内である変位量Δdに抑えられているため、エンボステープ40から取り出されたシェル延出部12bは、塑性変形せず、元の水平な位置に戻る。
【0054】
その後、トップテープ42が除去されてエンボステープ40が開封される。不図示の治具にて、治具がキャップ2を吸着保持するなどして、エンボステープ40からコネクタセット1が取り出され(ステップS3)、コネクタセット1が、基板4に実装される(ステップS4)。続いて、コネクタセット1がリフロー装置に搬入され(ステップS5)、リフロー工程が行われる(ステップS6)。具体的には、基板4の信号電極、電源電極及び接地電極上に半田ペーストが印刷され、その上に、コネクタセット1のリセプタクルコネクタ3の基板接続部11c及びシェル12(シェル本体部12a及びシェル延出部12b)が搭載された状態でリフロー半田付けが行われる。リフロー工程後、コネクタセット1は、リフロー装置から搬出される(ステップS7)。
【0055】
搬出後、半田付けの確認が行われる(ステップS8)。このとき、リセプタクルコネクタ3が正確に位置合わせされているか否かをキャップ2越しに確認することができるうえ、キャップ2の貫通孔2aを介して、基板接続部11cの半田付けが良好に行われているか否かを確認することができる。
【0056】
その後、キャップ2がリセプタクルコネクタ3から取り外される(ステップS9)。ステップS9完了後、基板4への実装処理が終了する。
【0057】
基板4への全ての部品の実装が完了した後、基板4は、リセプタクルコネクタ3を介して対象となるコネクタに接続される。リセプタクルコネクタ3は、例えばケーブルが接続されたプラグコネクタと嵌合して、ケーブルと基板4とを電気的に接続する。他の基板が接続されたプラグコネクタと嵌合する場合には、他の基板と基板4とを電気的に接続する。このように嵌合する相手コネクタであるプラグコネクタの態様については、特に限定されない。
【0058】
なお、基板4の種類に特に限定はない。基板4は、シリコン基板であってもよいし、フレキシブルプリント基板であってもよい。
【0059】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るキャップ2によれば、リセプタクルコネクタ3のシェル延出部12bを保護するキャップ延出部21を備えているので、保持するリセプタクルコネクタ3のシェル12の変形を防止できる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、キャップ2の少なくとも一部は、Y軸方向に関して、リセプタクルコネクタ3の両端よりも外方に張り出すように形成されている。このようにすれば、Y軸方向に関して、キャップ2がリセプタクルコネクタ3を保護することができる。
【0061】
なお、リセプタクルコネクタ3は、キャップ2からX軸方向に張り出している。リセプタクルコネクタ3は、X軸方向が長手方向となっており、この方向に変形し難い構造となっている。
【0062】
また、本実施の形態によれば、キャップ2は、Z軸方向に見て、リセプタクルコネクタ3の一部をキャップ2越しに視認可能に形成されている。このようにすれば、基板4に対してリセプタクルコネクタ3が正確に位置決めできているか否かをキャップ2越しに確認することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、キャップ2の保持部20は、リセプタクルコネクタ3の長手方向に関する中央の第1位置X1で、Y軸方向に沿ってハウジング10又はシェル本体部12aを挟持する。このようにすれば、リセプタクルコネクタ3が熱により膨張した場合でも、その熱によりリセプタクルコネクタ3が歪むのを防止することができる。
【0064】
なお、コネクタセット1は、キャップ2の代わりに、図10に示すキャップ2’を備えるようにしてもよい。図10は、キャップ2の下面を示している。図10に示すように、キャップ2’は、保持部20と、キャップ延出部21と、を備える点は、キャップ2と同じである。
【0065】
キャップ2’では、保持部20は、当接部31の代わりに、当接部32、33が設けられている。当接部32は、リセプタクルコネクタ3のX軸方向に関する両端の第2位置X2に設けられ、当接部33は、リセプタクルコネクタ3のX軸方向に関する両端の第3位置X3に設けられている。キャップ2’は、X軸方向に関する中央の第1位置X1と、リセプタクルコネクタ3のX軸方向に関する両端の第2位置X2及び第3位置X3とで、Y軸方向に沿ってシェル本体部12aを挟持する。このようにすれば、指部30と当接部32と当接部33との3点支持により、キャップ2がリセプタクルコネクタ3をしっかりと保持することが可能となる。
【0066】
また、キャップ2の本体部20aは、指部30及び当接部31等でハウジング10を挟持するようにしてもよい。すなわち、キャップ2は、ハウジング10でリセプタクルコネクタ3を保持するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施の形態によれば、キャップ2は、Z軸方向に見たときのキャップ延出部21の外縁が法線方向に沿って一部切り欠かれることにより、切り欠き部21cが形成されている。このようにすれば、キャップ2を軽量化することが可能となる。また、接触突部12fが、キャップ2と接触するのを防止することができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、切り欠き部21cは、リセプタクルコネクタ3の長手方向に沿って複数設けられている。このようにすれば、リセプタクルコネクタ3の芯数が増加し、リセプタクルコネクタ3が長手方向に長くなった場合であってもキャップ2の軽量化が可能である。キャップ2では、切り欠き部21cの数は、2つである。しかし、これには限られず、切り欠き部21cの数は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【0069】
上記実施の形態では、1つのリセプタクルコネクタ3を備えるコネクタセット1について説明したが、2つ以上のリセプタクルコネクタ3を備えるコネクタセットであってもよい。この場合、キャップ2の保持部20は、2つ以上のリセプタクルコネクタ3を同時に保持する。
【0070】
なお、リセプタクルコネクタ3だけでなく、ケーブルに接続されるプラグコネクタにも、プラグコネクタのシェルが延出する部分を有する場合には、キャップ2のように、キャップ延出部21を有するものを、シェルが延出する部分を有するプラグコネクタに用いることができる。
【0071】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、コネクタの基板への実装に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 コネクタセット、2,2’ キャップ、2a 貫通孔、3 リセプタクルコネクタ(コネクタ)、4 基板、4a 実装面、10 ハウジング、10a 凹部、10b 貫通孔、10c 溝部、10d 中央凹部、11 端子、11a 係止部、11b 接触部、11c 基板接続部、12 シェル、12a シェル本体部、12b シェル延出部、12c 突出部、12d 連結部、12e 開口、12f 接触突部、12g 係止部、12h 被保持片、20 保持部、20a 本体部、20b 背面部、21 キャップ延出部、21a 本体部、21b 補強部、21c 切り欠き部、30 指部、30a 凸部、31,32,33 当接部、40 エンボステープ、41 セット収容部、42 トップテープ、S 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10