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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100216
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】重合性組成物及び色彩可変部材
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20240719BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240719BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20240719BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20240719BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240719BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20240719BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240719BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20240719BHJP
   A44C 1/00 20060101ALI20240719BHJP
   A44C 7/00 20060101ALI20240719BHJP
   A44C 9/00 20060101ALI20240719BHJP
   A44C 25/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/38 076
C08G18/79 020
C08G18/72 010
C08G18/48
C08G18/16
C08G18/73
C09K9/02 B
A44C1/00
A44C7/00
A44C9/00
A44C25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004045
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 英孝
【テーマコード(参考)】
3B114
4J034
【Fターム(参考)】
3B114AA11
3B114BC01
4J034BA02
4J034BA06
4J034CA13
4J034CA32
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC10
4J034CC12
4J034CC13
4J034CC29
4J034CC35
4J034CC39
4J034CC45
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CD08
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB04
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG09
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HA13
4J034HA14
4J034HA18
4J034HB03
4J034HB05
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC24
4J034HC25
4J034HC33
4J034HC34
4J034HC35
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC53
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC68
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD11
4J034KD12
4J034KD21
4J034KD25
4J034KE02
4J034MA02
4J034MA03
4J034MA04
4J034MA12
4J034MA14
4J034QB08
4J034QB19
4J034RA02
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】硬化後の気泡及びシワの発生が低減可能な重合性組成物及びこの重合性組成物を硬化してなる硬化物を含む色彩可変部材を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び脂肪族ポリイソシアネートの変性体(a2)を含むポリイソシアネート(a)と、2つ以上のチオール基を有するポリチオール(b)と、機能性色素と、を含み、前記変性体(a2)は、前記脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート1核体である重合性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び脂肪族ポリイソシアネートの変性体(a2)を含むポリイソシアネート(a)と、
2つ以上のチオール基を有するポリチオール(b)と、
機能性色素と、を含み、
前記変性体(a2)は、前記脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート1核体である重合性組成物。
【請求項2】
前記機能性色素は、フォトクロミック化合物とポリエーテルポリオールとを含む請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記フォトクロミック化合物は、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物及びナフトピラン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む請求項2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
20℃における粘度は50mPa・s~200mPa・sであり、
50℃における粘度は150mPa・s~300mPa・sであり、
20℃における粘度に対する50℃における粘度の比率である50℃における粘度/20℃における粘度は3.5以下である請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項5】
前記機能性色素は、
2種以上のフォトクロミック化合物と、
蛍光色素、可視光吸収色素、染料及び顔料からなる群より選択される少なくとも1種の色素とを含む請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項6】
前記変性体(a2)の含有率は、重合性組成物に対して1質量%以上60質量%以下である請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項7】
前記脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び前記変性体(a2)を構成する前記脂肪族ポリイソシアネートの少なくとも一方は、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート,ダイマー酸ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、及びデカメチレンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項8】
前記ポリチオール(b)は、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン
からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項9】
触媒をさらに含み、
前記触媒は、ピリジン系化合物及びイミダゾール系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項10】
光照射下で色彩が変化する色彩可変部材に用いるための請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の重合性組成物の硬化物と、
表面の少なくとも一部に前記硬化物が設けられた部材と、
を含む色彩可変部材。
【請求項12】
前記部材の表面又は内部にラメ糸、金属片、鉱石粉体、ビーズ、蛍光材及び畜光材からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項11に記載の色彩可変部材。
【請求項13】
指輪、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、髪飾り、ボタン、ブローチ、鞄用持ち手、カフス、バングル、アンクレット、アームレット、シャンデリア又は傘用部材である請求項11に記載の色彩可変部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、重合性組成物及び色彩可変部材に関する。
【背景技術】
【0002】
イヤリング、ブローチなどの装飾品は、その多くが貴金属など光沢を生じさせやすい素材から形成されており、多様な色彩、形状等に容易に加工できることから樹脂製の装飾品も採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂(A成分)100質量部に対して、紫外線発光蛍光体(B成分)を0.001~1質量部含有してなり、該組成物を用いて成形された厚さ3mmの成形板について、JIS-K7136に従って測定したヘイズが2%以下であることを特徴とする蛍光発光性透明ポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載のポリカーボネート樹脂製の装身具は、表面が平滑でなく触感に改善の余地がある。さらに、ポリカーボネート樹脂製の装身具は硬度が高いものの、その表面が平滑でないために傷が付き易く、長期間使用することにより美的外観が低下する等の問題もある。そこで、特許文献2では、美観に優れるとともに、触感に優れた樹脂製の装身具として、表面の少なくとも一部がポリ(チオ)ウレタン樹脂からなる装身具及びイソシアネート化合物と活性水素化合物とを含む装身具用重合性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-159356号公報
【特許文献2】国際公開第2019/022181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されているような装身具用重合性組成物を硬化させてポリ(チオ)ウレタン樹脂を表面に有する装飾具を作製する場合、重合性組成物を硬化する際に気泡が発生したり、硬化物の表面にシワが発生したりすることがある。審美性に優れる硬化物を得る点では、気泡の発生及びシワの発生を低減することが望ましい。
【0007】
本開示は、硬化後の気泡及びシワの発生が低減可能な重合性組成物及びこの重合性組成物を硬化してなる硬化物を含む色彩可変部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び脂肪族ポリイソシアネートの変性体(a2)を含むポリイソシアネート(a)と、
2つ以上のチオール基を有するポリチオール(b)と、
機能性色素と、を含み、
前記変性体(a2)は、前記脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート1核体である重合性組成物。
<2> 前記機能性色素は、フォトクロミック化合物とポリエーテルポリオールとを含む<1>に記載の重合性組成物。

<3> 前記フォトクロミック化合物は、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物及びナフトピラン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む<2>に記載の重合性組成物。
<4> 20℃における粘度は50mPa・s~200mPa・sであり、
50℃における粘度は150mPa・s~300mPa・sであり、
20℃における粘度に対する50℃における粘度の比率である50℃における粘度/20℃における粘度は3.5以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<5> 前記機能性色素は、
2種以上のフォトクロミック化合物と、
蛍光色素、可視光吸収色素、染料及び顔料からなる群より選択される少なくとも1種の色素とを含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<6> 前記変性体(a2)の含有率は、重合性組成物に対して1質量%以上60質量%以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<7> 前記脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び前記変性体(a2)を構成する前記脂肪族ポリイソシアネートの少なくとも一方は、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート,ダイマー酸ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、及びデカメチレンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<8> 前記ポリチオール(b)は、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン
からなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>~<7>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<9> 触媒をさらに含み、
前記触媒は、ピリジン系化合物及びイミダゾール系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>~<8>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<10> 光照射下で色彩が変化する色彩可変部材に用いるための<1>~<9>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の重合性組成物の硬化物と、
表面の少なくとも一部に前記硬化物が設けられた部材と、
を含む色彩可変部材。
<12> 前記部材の表面又は内部にラメ糸、金属片、鉱石粉体、ビーズ、蛍光材及び畜光材からなる群より選択される少なくとも1種を含む<11>に記載の色彩可変部材。
<13> 指輪、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、髪飾り、ボタン、ブローチ、鞄用持ち手、カフス、バングル、アンクレット、アームレット、シャンデリア又は傘用部材である<11>又は<12>に記載の色彩可変部材。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、硬化後の気泡及びシワの発生が低減可能な重合性組成物及びこの重合性組成物を硬化してなる硬化物を含む色彩可変部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0011】
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上
限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において、置換又は無置換を明記していない化合物については、本開示における効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい。
本開示において、組成物の各成分の量は、各成分に該当する物質が層中に複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
なお、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0013】
≪重合性組成物≫
本開示の重合性組成物は、脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び脂肪族ポリイソシアネートの変性体(a2)を含むポリイソシアネート(a)と、2つ以上のチオール基を有するポリチオール(b)と、機能性色素と、を含み、前記変性体(a2)は、前記脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート1核体(すなわち、脂肪族ポリイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート)である。
本開示の重合性組成物に含まれるポリイソシアネート(a)及びポリチオール(b)を反応させることで硬化物とする際に気泡及びシワが発生しにくい。そのため、審美性に優れる硬化物が得られる。
【0014】
本開示の重合性組成物は、例えば、光照射下で色彩が変化する色彩可変部材に用いられる。より具体的には、部材の表面の少なくとも一部に本開示の重合性組成物の硬化物を形成することで色彩可変部材を作製してもよい。本開示の重合性組成物が適用される部材は、表面の少なくとも一部に硬化物を形成可能であれば特に限定されない。
【0015】
<ポリイソシアネート(a)>
本開示の重合性組成物は、ポリイソシアネート(a)を含む。ポリイソシアネート(a)は、脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び脂肪族ポリイソシアネートの変性体(a2)を含む。
本開示の重合性組成物がポリイソシアネート(a)及び後述のポリチオール(b)を含むことで、これらを反応させて硬化物とする際に気泡及びシワが発生しにくくなる。
【0016】
(脂肪族ポリイソシアネート(a1))
脂肪族ポリイソシアネート(a1)としては、非環式の脂肪族ポリイソシアネート、環式の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
非環式の脂肪族ポリイソシアネートは、環構造を有しておらず、かつイソシアネート基を2つ以上有する直鎖又は分岐のポリイソシアネート化合物である。非環式の脂肪族ポリイソシアネートは、直鎖又は分岐上にて酸素原子(イソシアネート基を構成しない酸素原子)、窒素原子(イソシアネート基を構成しない窒素原子)、硫黄原子等の炭素原子以外の原子を含んでいてもよい。
環式の脂肪族ポリイソシアネートは、環構造を有し、かつイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物である。環式の脂肪族ポリイソシアネートは、環構造以外の部分に酸素原子(イソシアネート基を構成しない酸素原子)、窒素原子(イソシアネート基を構成しない窒素原子)、硫黄原子等の炭素原子以外の原子を含んでいてもよい。
脂肪族ポリイソシアネート(a1)は、1種の脂肪族ポリイソシアネートであってもよく、2種以上の脂肪族ポリイソシアネートであってもよい。
【0017】
非環式の脂肪族ポリイソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等が挙げられる。
【0018】
環式の脂肪族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、3,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
脂肪族ポリイソシアネート(a1)の含有率は、重合性組成物に対し、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
(脂肪族ポリイソシアネートの変性体(a2))
脂肪族ポリイソシアネートの変性体(a2)は、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート1核体である。変性体(a2)を構成する脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、前述の脂肪族ポリイソシアネート(a1)と同様である。
本開示の重合性組成物において、脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び変性体(a2)を構成する脂肪族ポリイソシアネートは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
変性体(a2)は、1種の変性体であってもよく、2種以上の変性体であってもよい。
【0021】
脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び変性体(a2)を構成する脂肪族ポリイソシアネートの少なくとも一方は、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート,ダイマー酸ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、及びデカメチレンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0022】
変性体(a2)の含有率は、硬化物の気泡及びシワを好適に抑制する観点から、重合性組成物に対し、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
脂肪族ポリイソシアネート(a1)に対する変性体(a2)の質量比(変性体(a2)/脂肪族ポリイソシアネート(a1))は、例えば、0.2以上5.0以下であってもよく、0.4以上2.5以下であってもよく、0.5以上2以下であってもよく、1.0以上1.5以下であってもよい。
【0024】
ポリイソシアネート(a)は、脂肪族ポリイソシアネート(a1)及び変性体(a2)を、ポリイソシアネート(a)全体の主成分として含むことが好ましい。
【0025】
本開示において、「主成分」とは、含有量が50質量%以上である成分を意味する。
本開示において「主成分」の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。「主成分」の含有量の上限は、100質量%以下であれば特に限定されない。
【0026】
(その他のポリイソシアネート及びその変性体)
本開示の重合性組成物は、脂肪族ポリイソシアネート(a1)以外のポリイソシアネート(その他のポリイソシアネート)を含んでいてもよく、その他のポリイソシアネートの変性体を含んでいてもよい。
【0027】
その他のポリイソシアネートとしては、
m-キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、メシチレントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2′-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4′-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4′-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;
2,5-ジイソシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5-ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物
等が挙げられる。
【0028】
その他のポリイソシアネートの変性体としては、例えば、その他のポリイソシアネートにおける、多量体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、オキサジアジントリオン変性体、ポリオール変性体などが挙げられる。
【0029】
その他のポリイソシアネート及びその変性体の合計含有率は、重合性組成物に対し、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0030】
<ポリチオール(b)>
本開示の重合性組成物は、2つ以上のチオール基を有するポリチオール(b)を含む。
ポリチオール(b)は、1種のポリチオールであってもよく、2種以上のポリチオールであってもよい。本開示の重合性組成物に含まれるポリチオール(b)は、2種以上のポリチオール化合物を含むポリチオール組成物であってもよい。
【0031】
ポリチオール(b)としては、
メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物
等が挙げられる。
【0032】
ポリチオール(b)は、
ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群より選択される少なくとも1種のポリチオール(b1)を含んでいてもよい。
【0033】
ポリチオール(b)は、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、
4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、
4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び
5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン
からなる群より選択される少なくとも1種のポリチオール(b2)を含んでいてもよい。
【0034】
ポリチオール(b)は、ポリチオール(b1)及びポリチオール(b2)を含んでいてもよい。
【0035】
ポリチオール(b)、ポリチオール(b1)又はポリチオール(b2)は、植物由来原料から得られたポリチオールであってもよく、ポリチオール(b1)は、植物由来原料から得られたポリチオールであってもよい。
【0036】
ポリチオール(b)の含有率は、重合性組成物に対し、1質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
ポリチオール(b)に含まれるチオール基に対するポリイソシアネート(a)に含まれるイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/チオール基)は、0.5~2であってもよく、0.8~1.2であってもよい。
【0038】
ポリチオール(b)がポリチオール(b1)及びポリチオール(b2)を含む場合、ポリチオール(b1)及びポリチオール(b2)の合計含有率は、ポリチオール(b)全量に対して50質量%以上100質量%以下であってもよく、70質量%以上100質量%以下であってもよく、90質量%以上100質量%以下であってもよい。
【0039】
ポリチオール(b1)に対するポリチオール(b2)の質量比(ポリチオール(b2)/ポリチオール(b1))は、0.1~10であってもよく、0.5~8であってもよく、1~6であってもよく、1.5~4であってもよい。
【0040】
<機能性色素>
本開示の重合性組成物は、機能性色素を含む。
機能性色素は、1種の機能性色素であってもよく、2種以上の機能性色素であってもよい。機能性色素は、色素、フォトクロミック化合物等を樹脂成分、溶剤等に分散又は溶解させたものであってもよい。
【0041】
機能性色素は、フォトクロミック化合物とポリエーテルポリオールとを含むことが好ましい。ポリエーテルポリオールを用いることで、比較的硬いチオウレタン樹脂中で構成される硬化物中にてフォトクロミック化合物の分子構造が変化しやすくなり、フォトクロ応答性に優れる傾向にある。
【0042】
ポリエーテルポリオールとしては、エーテル構造を複数有するポリオール化合物が挙げられ、例えば、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖等のアルキレンオキサイド鎖を複数有するポリオール化合物が挙げられ、好ましくはエチレンオキサイド鎖及びプロピレンオキサイド鎖をそれぞれ複数有するポリオール化合物が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、2価のアルコール化合物にプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドの少なくとも一方を付加重合させた化合物が挙げられる。
【0043】
ポリエーテルポリオールとしては、プルロニック(登録商標)L64等の市販のポリエチレンポリプロピレングリコールを用いてもよい。
【0044】
フォトクロミック化合物としては、特に制限はなく、従来公知の化合物の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、フルギド系化合物、ナフトピラン系化合物、ビスイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0045】
フォトクロミック化合物は、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物及びナフトピラン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。フォトクロ応答性の観点から、フォトクロミック化合物は、ナフトピラン系化合物を含むことが好ましい。
【0046】
機能性色素は、2種以上のフォトクロミック化合物を含んでいてもよく、例えば、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物及びナフトピラン系化合物からなる群より選択される2種以上の化合物であってもよい。
【0047】
機能性色素は、蛍光色素、可視光吸収色素、染料及び顔料からなる群より選択される少なくとも1種の色素を含んでいてもよく、前述の2種以上のフォトクロミック化合物と、蛍光色素、可視光吸収色素、染料及び顔料からなる群より選択される少なくとも1種の色素(前述のフォトクロミック化合物を除く)と、を含んでいてもよい。染料としては、水、有機溶媒等の液体に溶解可能な着色粉末等が挙げられ、顔料としては、水、有機溶媒等の液体に不溶な着色粉末等が挙げられる。
【0048】
機能性色素がフォトクロミック化合物を含むことで、本開示の重合性組成物から得られる硬化物は、太陽光下で変色する。さらにもう1種類の色素を併用することで色彩変化に富んだ審美的効果が得られる。
【0049】
<触媒>
本開示の重合性組成物は、ポリイソシアネート(a)及びポリチオール(b)の反応を促進する観点から、触媒を含んでいてもよい。触媒としては、チオウレタン化反応を促進するものであれば特に限定されず、ピリジン系化合物、イミダゾール系化合物、スズ系化合物等が挙げられる。環境規制等の観点から、触媒は、ピリジン系化合物及びイミダゾール系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、重合性組成物の粘度を調整しやすく、硬化物の気泡を抑制しやすい観点から、触媒は、ピリジン系化合物及びスズ系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0050】
ピリジン系化合物としては、例えば、2,6-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-トリメチルピリジン、3-クロルピリジン等が挙げられる。
スズ系化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウレート、ジメチル錫ジクロリド、ジブチル錫ジクロリド等が挙げられる。
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、N-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-イミダゾール等が挙げられる。
【0051】
<紫外線吸収剤>
本開示の重合性組成物は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、フェノール系化合物、マロン酸エステル系化合物、オキサニリド系化合物等が挙げられる。
【0052】
<その他の成分>
本開示の重合性組成物は、内部離型剤、樹脂改質剤、光安定剤、酸化防止剤、ポリイソシアネート(a)又はポリチオール(b)以外の重合性化合物等のその他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0053】
本開示の重合性組成物では、20℃における粘度は、50mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以上150mPa・s以下であることがより好ましく、60mPa・s以上120mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0054】
本開示の重合性組成物では、50℃における粘度は、150mPa・s以上300mPa・s以下であることが好ましく、160mPa・s以上280mPa・s以下であることがより好ましく、180mPa・s以上280mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0055】
20℃における粘度に対する50℃における粘度の比率である50℃における粘度/20℃における粘度は、硬化物の気泡及びシワ抑制の観点から、3.5以下であることが好ましく、1.5以上3.0以下であることがより好ましく、2.0以上3.0以下であることがさらに好ましい。
【0056】
20℃における粘度と50℃における粘度の差の絶対値が、硬化物の気泡及びシワ抑制の観点から、50mPa・s以上250mPa・s以下であることが好ましく、80mPa・s以上200mPa・s以下であることがより好ましく、100mPa・s以上180mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0057】
≪色彩可変部材≫
本開示の色彩可変部材は、重合性組成物の硬化物と、表面の少なくとも一部に前記硬化物が設けられた部材と、を含む。
【0058】
本開示の色彩可変部材は、反射率を向上させて色彩の変化を促進する観点から、部材の表面又は内部にラメ糸、金属片、鉱石粉体、ビーズ、蛍光材及び畜光材からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
金属片に含まれる成分としては、例えば、アルミニウム、銅、シリカ、酸化鉄等が挙げられる。
【0059】
本開示の色彩可変部材は、部材内部の形状によって、部材に入射した光の一部が必ず別の方向へ反射する構造を有することが好ましい。
本開示の色彩可変部材は、反射率を向上させて色彩の変化を促進する観点から、立体形状であり、かつ、表面に多面体形状を含むことが好ましい。
多面体形状としては特に制限はなく、例えばダイヤモンド形状が挙げられる。
多面体形状は、ファセット面を有することも好ましい。
【0060】
本開示の色彩可変部材は、例えば、指輪、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、髪飾り、ボタン、ブローチ、鞄用持ち手、カフス、バングル、アンクレット、アームレット、シャンデリア又は傘用部材(例えば、持ち手、石突き、露先)に用いることができる。
また、本開示の色彩可変部材は、衣類用生地等の織布又は不織布に用いることもできる。これらの織布又は不織布は、本開示の色彩可変部材を含んでもよい。
【0061】
本開示の色彩可変部材は、照明環境を変更することで色彩が変化する。例えば、色彩可変部材に対して光を照射することでその色彩を変更させてもよい。
光は単独で用いてもよく複数種類用いてもよい。
光の種類としては特に制限はない。例えば、LED、蛍光灯、白熱灯等が挙げられる。
【実施例0062】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(表1中のイソシアネート1)23.5gにフォトクロミック色素としてSunsensors-New-Blue-Dye 0.1g、紫外線吸収剤としてホスタビンPR-25 0.15g、その他色素としてPLASTRed 8305 0.01gを混合し、室温で1時間攪拌し溶解させた。その後、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート変性体組成物(ヌレート体、表1中の変性体1)28.2gをさらに加え、攪拌しながら泡が消えるまで0.5時間真空ポンプで減圧脱気操作を実施した。脱気後の混合物にポリエーテルポリオールとしてプルロニック(登録商標)L64 2.0gを添加し、室温で0.5時間攪拌した。次いで、撹拌後の混合物に別途用意したペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(表1中のポリチオール1)14.7g、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを主成分とするポリチオール(表1中のポリチオール2)33.1g並びに3,5-ルチジン0.01gからなる混合物を加え、攪拌しながら泡が消えるまで1時間真空ポンプで減圧脱気操作を実施した。これにより、実施例1の重合性組成物を調製した。
次に、重合性組成物を容量約40mlのシリコン製ダイヤ型(6面体のダイヤ型であり、ダイヤ一辺あたりの長さが1.5cm)に注入した。オーブンで室温から120度まで昇温し、重合性組成物を硬化させて成形体を得た。
【0064】
実施例1にて得られた成形体の色は、通常時はビビッドレッドであり、紫外線を照射するとクリアパープルに変色した。紫外線の照射を停止すると、成形体はクリアパープルに着色し、時間経過とともにビビッドレッドに戻った。成形体を観察したところ、泡の混入もなく、表面にしわ状の跡もなく良好な形状であった。
【0065】
[実施例2]
実験例1に記載のフォトクロミック色素であるSunsensors-New-Blue-Dye 0.1gをSunsensors-New-Red-Dye 0.1gに変更し、その他色素であるPLASTRed 8305 0.01gをPLASTYellow 8070 0.01gと変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の重合性組成物を調製し、成形体を作製した。
【0066】
実施例2にて得られた成形体の色は、通常時はクリアイエローであり、紫外線を照射するとブラッドオレンジに変色した。紫外線の照射を停止すると、成形体はブラッドオレンジに着色し、時間経過とともにクリアイエローに戻った。成形体を観察したところ、泡の混入もなく、表面にしわ状の跡もなく良好な形状であった。
【0067】
[実施例3]
実験例1に記載のフォトクロミック色素であるSunsensors-New-Blue-Dye 0.1gをSunsensors-New-Green-Dye 0.1gに変更し、その他色素であるPLAST Red 8305 0.01gをPLASTBlue 8510 0.01gに変更した以外は実施例1と同様にして実施例3の重合性組成物を調製し、成形体を作製した。
【0068】
実施例3にて得られた成形体の色は、通常時はクリアブルーであり、紫外線を照射するとアッシュグレイに変色した。紫外線の照射を停止すると、成形体はアッシュグレイに着色し、時間経過とともにクリアブルーに戻った。成形体を観察したところ、泡の混入もなく、表面にしわ状の跡もなく良好な形状であった。
【0069】
[実施例4]
1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(表1中のイソシアネート1)23.5gにフォトクロミック色素としてSunsensors-New-Blue-Dye 0.1g、紫外線吸収剤としてホスタビンPR-25 0.15gを混合し、室温で1時間攪拌し溶解させた。その後、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート変性体組成物(ヌレート体、表1中の変性体1)28.2gをさらに加え、攪拌しながら泡が消えるまで0.5時間真空ポンプで減圧脱気操作を実施した。脱気後の混合物にポリエーテルポリオールとしてプルロニック(登録商標)L64 2.0gを添加し、室温で0.5時間攪拌した。次いで、撹拌後の混合物に別途用意したペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(表1中のポリチオール1)14.7g、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを主成分とするポリチオール(表1中のポリチオール2)33.1g並びに3,5-ルチジン0.01gからなる混合物を加え、攪拌しながら泡が消えるまで1時間真空ポンプで減圧脱気操作を実施した。これにより、実施例4の重合性組成物を調製した。
次に、脱気した重合性組成物をメガネレンズ用ガラス型に注入した。オーブンで室温から120度まで昇温し、直径78mm、厚さ2mmの円盤状の硬化物である成形体を作製した。
【0070】
実施例4にて得られた成形体の色は、通常時は無色透明であり、紫外線を照射するとクリアブルーに変色した。紫外線の照射を停止すると、成形体はクリアブルーに着色し、時間経過とともに無色透明に戻った。成形体を観察したところ、泡の混入もなく、表面にしわ状の跡もなく良好な形状であった。
【0071】
[実施例5]
3,5-ルチジン0.01gをジメチル錫ジクロリド0.04gに変更した以外は実施例4と同様にして実施例5の重合性組成物を調製し、成形体を作製した。
【0072】
実施例5にて得られた成形体の色は、通常時は無色透明であり、紫外線を照射するとクリアブルーに変色した。紫外線の照射を停止すると、成形体はクリアブルーに着色し、時間経過とともに無色透明に戻った。成形体を観察したところ、泡の混入もなく、表面にしわ状の跡もなく良好な形状であった。
【0073】
[比較例1]
2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、及び2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物(表1中のイソシアネート2)40.0gにフォトクロミック色素としてSunsensors-New-Blue-Dye0.1g、紫外線吸収剤としてホスタビンPR25 0.15gを混合し、室温で1時間攪拌し溶解させた。その後、ブロックコポリマーとしてプルロニック(登録商標)PE4300 2.0gを添加し、室温で0.5時間攪拌した。得られた混合物にペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(表1中のポリチオール1)23.4g、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン(表1中のポリチオール3)25.1gを加え、さらに2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、及び2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物(表1中のイソシアネート2)10.3gにジメチル錫ジクロリド0.04gを溶解したものを加え攪拌しながら泡が消えるまで1時間真空ポンプで減圧脱気操作を実施した。これにより、比較例1の重合性組成物を調製した。
次に、重合性組成物を容量約40mlのシリコン製ダイヤ型(6面体のダイヤ型であり、ダイヤ一辺あたりの長さが1.5cm)に注入した。オーブンで室温から120度まで昇温し、重合性組成物を硬化させて成形体を得た。
【0074】
比較例1にて得られた成形体の色は、通常時は無色透明であり、紫外線を照射すると青色に変色した。紫外線の照射を停止すると、成形体は青色に着色し、時間経過とともに無色透明に戻った。しかし、気泡が混入し、測定したところ気泡数が6、表面積に対する割合が12%となったため、後述の気泡評価は2であった。また成形体の表面に重合収縮に起因するしわ状の痕跡跡があり、測定したところ3本見られた。結果として良好とは言い難い形状であった。
【0075】
<粘度>
実施例1~5及び比較例1の重合性組成物の粘度は、B型粘度計を用いて測定した。各成分を20℃にて24時間保管後、所定の順番で各実施例及び比較例に示す質量比で混合し、総量が100mlになるように調整した。得られた重合性組成物を20℃又は50℃の水浴中で5分間混合した後に実施例1~5及び比較例1の重合性組成物の粘度を測定した。
【0076】
<気泡評価>
実施例1~5及び比較例1の重合性組成物を硬化した後に、目視により硬化物の表面に発生した気泡の数を測定した。硬化物の気泡の大きさをノギスにより測定し、硬化物の表面積に対してどの程度の割合で気泡が発生したかを計算した。そして、以下の評価基準に基づいて気泡の程度を評価した。
-評価基準-
5:気泡は無かった。
4:気泡数1~2もしくは硬化物の表面積に対する気泡の割合が5%未満であった。
3:気泡数3~5もしくは硬化物の表面積に対する気泡の割合が5%以上10%未満であった。
2:気泡数6~8もしくは硬化物の表面積に対する気泡の割合が10%以上15%未満であった。
1:気泡数9以上もしくは硬化物の表面積に対する気泡の割合が15%以上であった。
【0077】
<シワ評価>
実施例1~5及び比較例1の重合性組成物を硬化した後に、目視により硬化物の表面に発生したシワの数を測定した。
-評価基準-
5:シワは全くなかった。
4:シワの数が1~2本であった。
3:シワの数が3~5本であった。
2:シワの数が6~8本であった。
1:シワの数が9本以上であった。
【0078】
<色変化確認試験>
実施例1~5及び比較例1の重合性組成物を硬化して得られた硬化物をそれぞれ用いて色の変化を確認した。まず、窓のない室内にて、硬化物の初期の色味を目視で確認した(表1中の初期)。さらに室内から太陽光下に硬化物を移動させ、太陽光下にて10分静置した後、硬化物の色味を目視で確認した(表1中の太陽光下)。その後窓のない室内に硬化物を戻し、室内にて10分静置した後、硬化物の色味を目視確認した(表1中の遮蔽時)。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、実施例1~5の重合性組成物では、比較例1の重合性組成物と比較して硬化後の気泡及びシワの発生が抑制されていた。