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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100220
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】逆打ち支柱の精度管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/05 20060101AFI20240719BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20240719BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
E04G21/18 B
E04G21/02 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004057
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅▲崎▼ 正吉
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠久
(72)【発明者】
【氏名】矢部 文生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】荒川 真
【テーマコード(参考)】
2D147
2E172
2E174
【Fターム(参考)】
2D147AB04
2E172DA01
2E172HA03
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA01
2E174DA12
2E174DA41
(57)【要約】
【課題】地中孔を利用して継ぎ足してなる逆打ち支柱の鉛直精度の管理を可能とする。
【解決手段】地中孔を利用して、複数の鋼管柱を順次継ぎ足し逆打ち支柱を構築する際の逆打ち支柱の精度管理方法であって、前記地中孔に挿入された前記鋼管柱の天端を、外周面に付した軸方向に沿うけがき線が確認できる程度に、前記地中孔より露出させる露出工程と、前記鋼管柱の鉛直性を維持しつつ保持する保持工程と、前記天端に、後行する前記鋼管柱を継ぎ足すとともに、前記けがき線の延長線を付し、地中孔内に吊り下ろすけがき線付与工程と、を備え、前記露出工程、前記保持工程及び前記付与工程を、繰り返す。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中孔を利用して、複数の鋼管柱を順次継ぎ足し逆打ち支柱を構築する際の逆打ち支柱の精度管理方法であって、
前記地中孔に挿入された前記鋼管柱の天端を、外周面に付した軸方向に沿うけがき線が確認できる程度に、前記地中孔より露出させる露出工程と、
前記鋼管柱の鉛直性を維持しつつ保持する保持工程と、
前記天端に、後行する前記鋼管柱を継ぎ足すとともに、鉛直性を維持しつつ継ぎ足した前記鋼管柱に前記けがき線の延長線を付し、地中孔内に吊り下ろすけがき線付与工程と、を備え、
前記露出工程、前記保持工程及び前記付与工程を、繰り返すことを特徴する逆打ち支柱の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の逆打ち支柱の構築方法において、
前記けがき線付与工程で、前記けがき線と地上に設置した測量機器の鉛直線とに基づいて、前記けがき線の延長線を付す位置を設定することを特徴とする逆打ち支柱の構築方法。
【請求項3】
請求項1に記載の逆打ち支柱の構築方法において、
前記保持工程で、前記地中孔に挿入された前記鋼管柱の外周面に90度の間隔で設置された2体の傾斜計に基づいて、鉛直性を維持することを特徴とする逆打ち支柱の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中孔を利用して継ぎ足してなる逆打ち支柱の鉛直精度を管理する逆打ち支柱の精度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆打ち支柱は、地下躯体を構成するものであるため、逆打ち支柱は、鉛直精度を確保する必要がある。従来から、複数の鋼管柱を繋ぎ合わせる逆打ち支柱の鉛直精度を確保するために、例えば、特許文献1のように、複数の分割部材(鋼管柱)のそれぞれを、地上において、横向きに寝かせた状態で、互いの中心軸が一致するように保持させて隣り合う分割部材の端部同士を繋ぎ合わせることは知られている。このように、複数の鋼管柱を地上にて繋ぎ合わせる場合には、例えば、繋ぎ合わせた逆打ち支柱の全長にわたってトランシットなどを用いて確認することにより、繋ぎ合わされた逆打ち支柱全体の鉛直精度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-179131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地上にて繋ぎ合わせた逆打ち支柱は、クレーン等を用いて建て起こし、杭孔までの移動して、杭孔内へ建て込む必要がある。しかしながら、空頭制限を有する現場では、繋ぎ合わせた逆打ち支柱をクレーン等で吊り下げることができない。このため、地中孔(杭孔)を利用して継ぎ足しつつ逆打ち支柱を地中孔内に建て込むため、繋ぎ合わせた逆打ち支柱全体の状態を地上にて確認することができず、逆打ち支柱の鉛直精度を管理することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、複数の鋼管柱を、地中孔を利用して継ぎ足してなる逆打ち支柱の鉛直精度の管理を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明の逆打ち支柱の精度管理方法は、
地中孔を利用して、複数の鋼管柱を順次継ぎ足し逆打ち支柱を構築する際の逆打ち支柱の精度管理方法であって、
前記地中孔に挿入された前記鋼管柱の天端を、外周面に付した軸方向に沿うけがき線が確認できる程度に、前記地中孔より露出させる露出工程と、
前記鋼管柱の鉛直性を維持しつつ保持する保持工程と、
前記天端に、後行する前記鋼管柱を継ぎ足すとともに、鉛直性を維持しつつ継ぎ足した前記鋼管柱に前記けがき線の延長線を付し、地中孔内に吊り下ろすけがき線付与工程と、を備え、
前記露出工程、前記保持工程及び前記けがき線付与工程を、繰り返すことを特徴する。
【0007】
本発明の逆打ち支柱の精度管理方法によれば、保持工程において鉛直性を維持しつつ保持された鋼管柱は、天端が地中孔より露出して、外周面に付した軸方向に沿うけがき線が確認できるので、当該天端に、後行する鋼管柱を継ぎ足すとともに、露出しているけがき線の延長線を、継ぎ足した鋼管柱に付すことにより、接合されている鋼管柱全体が鉛直な姿勢のときに鉛直に沿わせるべき位置を、継ぎ足した鋼管柱に付された、けがき線の延長線により確認することが可能となる。
このため、露出工程により、継ぎ足した鋼管柱に付されたけがき線の延長線が確認できる程度に地中孔より露出させ、保持工程により、最初に付したけがき線が視認できない状態であっても、けがき線の延長線に基づいて、接合されている鋼管柱全体の鉛直性を維持しつつ保持することが可能となる。
そして、さらに、けがき線付与工程により、接合されている鋼管柱に、後行する鋼管柱を継ぎ足すとともに、継ぎ足した鋼管柱にけがき線の延長線を付し、地中孔内に吊り下ろすことにより、新たに継ぎ足した鋼管柱をも含み、接合されている鋼管柱全体が鉛直な姿勢のときに鉛直方向に沿わせるべき位置を、さらに継ぎ足した鋼管柱に付された、けがき線の延長線により確認することが可能となる。このように、露出工程、保持工程及びけがき線付与工程を、繰り返すことにより、複数の鋼管柱を継ぎ足し逆打ち支柱の鉛直性を確保することが可能となる。
【0008】
また、本発明の逆打ち支柱の精度管理方法は、前記けがき線付与工程で、前記けがき線と地上に設置した測量機器の鉛直線とに基づいて、前記けがき線の延長線を付す位置を設定することを特徴とする。
本発明の逆打ち支柱の精度管理方法によれば、けがき線付与工程で付されるけがき線の延長線は、けがき線と地上に設置した測量機器の鉛直線とに基づいて位置が設定されるので、より正確な位置にけがき線の延長線を付すことが可能となる。
また、本発明の逆打ち支柱の精度管理方法は、前記保持工程で、前記地中孔に挿入された前記鋼管柱の外周面に90度の間隔で設置された2体の傾斜計に基づいて、鉛直性を維持することを特徴とする。
本発明の逆打ち支柱の精度管理方法によれば、鋼管柱の外周面に90度の間隔で設置された2体の傾斜計に基づいて、鉛直性を維持するので、水平面内において直交する2方向の傾きを計測することが可能となる。このため、より高い鉛直精度を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の鋼管柱を、地中孔を利用して継ぎ足してなる逆打ち支柱の鉛直精度の管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態における鋼管柱を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における低空頭な環境下にて逆打ち支柱を建て込む作業の状態を示す概略を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における保持機構を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における回転機構を示す図である。
図5】本発明の実施の形態の逆打ち支柱の精度管理方法において用いるトランシットおよび傾斜府修正装置の配置を示す図である。
図6】本発明の実施の形態の逆打ち支柱の精度管理方法を説明する図である(その1)。
図7】本発明の実施の形態の逆打ち支柱の精度管理方法を説明する図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、地中孔を利用し起立姿勢の鋼管柱を継ぎ足して逆打ち支柱を建て込む際に、逆打ち支柱の鉛直精度を確保する為の逆打ち支柱の精度管理方法であり、特に、施工現場が低空頭な環境下にある場合にて実施されるものである。以下に、逆打ち支柱の精度管理方法について、図1図7を参照しつつ詳細を説明する。
【0012】
本実施の形態では、起立姿勢の鋼管柱をネジ継手を介して順に継ぎ足しつつ所望の部材長を有する逆打ち支柱を構築し、これを地中孔に建て込む場合を事例に挙げる。まず、図1を参照しつつ、ネジ継手を備えた鋼管柱について説明する。
【0013】
図1で示すように、鋼管柱1は、鋼管柱本体2と、その両端部に設けられたネジ継手3とを備えている。ネジ継手3は、鋼管柱本体2を起立姿勢にした際の上端側に設けられる雌ネジ継手31と、下端側に設けられる雄ネジ継手32とにより構成されている。
【0014】
雌ネジ継手31は、鋼管柱本体2より拡径に形成され筒体部31aの内周面に雌ネジ部31bが形成されている。雄ネジ継手32は、鋼管柱本体2と同軸上に配置される筒体部32aの外周面に雄ネジ部32bが形成されている。したがって、起立状態の鋼管柱1を継ぎ足す際には、下側の鋼管柱1に設けた雌ネジ継手31に上側の鋼管柱1に設けた雄ネジ継手32を挿入したのち、上側の鋼管柱1を回転させて雌ネジ部31bに雄ネジ部32bを締付け接合する。
【0015】
また、鋼管柱本体2の下部側には、これらネジ継手3を介して接合する際に用いる一対のトルク導入金具21が外周面に設けられており、鋼管柱本体2の上部側には、一対の回転トルク受けせん断キー22が、外周面に設けられている。回転トルク受けせん断キー22は、下側の鋼管柱1に対して上側の鋼管柱1を回転させて両者をネジ継手3により接合する際、下側の鋼管柱1の回転止めとして機能する。
【0016】
次に、上記の構成を有する鋼管柱1を起立姿勢で接合する際に用いる鋼管柱1の接合装置100の概要について説明する。接合装置100は、図2に示すように、地中孔Hの孔口を取り囲むようにして地表面上に据え付けられており、保持機構200と回転機構300とを具備する。
【0017】
保持機構200は、起立姿勢の鋼管柱1を地中孔Hに垂下させた状態で保持する機能を有する。また、回転機構300は、保持機構200に保持されて垂下する鋼管柱1に対して継ぎ足す鋼管柱1を回転させる機能を有する。
【0018】
保持機構200は、地中孔Hの孔口を保護するように設けられた基礎コンクリートB上に載置されたベース架台210と、ベース架台210上に設けられた開閉式支持架台220とを備える。ベース架台210には、略中央に鋼管柱1を挿通可能な挿通孔211が形成されている。
【0019】
開閉式支持架台220は、図3(a)で示すように、一対の分割支持架台220aを油圧ジャッキ等の伸縮装置222を介して離間可能に連結した略平板状部材により形成されている。一対の分割支持架台220aは、互いに近接した状態で平面視における略中央に開口を有している。開口は、一対の分割支持架台220aの対向する内周面221が、鋼管柱1の外周面に沿う形状をなし、内周面221には、開閉式支持架台220の開口に挿通された鋼管柱1を保持する際に当該鋼管柱に当接される複数の支持ピース230が設けられている。
【0020】
この内周面221により形成された開口は、図3(a)、図3(b)で示すように、一対の分割支持架台220aが伸縮装置222の伸縮動作により近接したり離間することで、互いの間隔が拡縮し、一対の分割支持架台220aが開閉するように構成されている。開口を縮径し、鋼管柱1を開閉式支持架台220で支持したのちには、図4(a)に示すように、一対の分割支持架台220aに連結プレート253をかけ渡して固定する。
【0021】
また、開閉式支持架台220には、前述した鋼管柱1に設けられている回転トルク受けせん断キー22が嵌合する回転トルク受け金具260が、一対の分割支持架台220a各々の内周面221に設けられている。鋼管柱1に設けた回転トルク受けせん断キー22が嵌合されることにより、鋼管柱1に中心軸周りの回転力が作用した場合にも、当該鋼管柱1が回転する挙動が抑制される。
【0022】
回転機構300は、図4(a)、図4(b)に示すように、前述のベース架台210の上面に設けられており、一対の支柱301と、支柱301各々に設けられたトルク導入装置302とを備えている。支柱301は、一対の半割架台210aの上面に、鋼管柱1を挟んで対向するように配置され、支柱301の側面に、トルク導入装置302の基端が設置されている。
トルク導入装置302には、油圧ジャッキ等の伸縮装置が採用されており、その伸縮方向は図4(a)で示すように、鋼管柱1の接線方向であって、保持機構200に設けた伸縮装置222と直交する方向に設定されている。トルク導入装置302は、伸縮装置が収縮した状態で、繋ぎ足す鋼管柱のトルク導入金具21をトルク導入把持金具303で把持し、伸縮装置を伸長することにより、当該鋼管柱1に回転力を付与し、雄ネジ継手32を保持機構200に保持された鋼管柱1の雌ネジ継手31に締付け両者を接合することができる。
【0023】
上述した鋼管柱の接合装置100を利用して、起立姿勢の鋼管柱1をネジ継手3を介して継ぎ足しつつ地中孔Hに建て込む際の、逆打ち支柱の精度管理方法の一例を以下に示す。逆打ち支柱の精度管理方法では、鋼管柱の接合装置100の他に、クレーン等の揚重装置Lにより地中孔Hの上方に吊り下げられる鋼管柱1に向けた2台のトランシット5(図2)等の測量機器と、地中孔Hに配置され接合された鋼管柱1の傾斜を修正する傾斜修正装置6a、6b(図2)とを用いる。
【0024】
2台のトランシット5は、図5に示すように、一対の分割支持架台220aの開口の上方に吊り下げられた鋼管柱1に対し、平面視において当該鋼管柱1の中心を通り直交する線上に位置するように配置される。また、各トランシット5は、図6(c)に示すように、吊り下げられた鋼管柱1の上端から、保持機構200により保持される鋼管柱1の上部までが、視野内に収まるよう設置する。
【0025】
傾斜修正装置6a、6bは、ベース架台210上と、地中孔H内とにそれぞれ設置される。尚、傾斜修正装置6bは、地中孔内に設置する場合のほかに、鋼管柱自体に取り付けても構わない。ベース架台210上に設置される傾斜修正装置(以下、上傾斜修正装置という)6aは、回転機構300より上方に配置され、水平方向に伸縮する油圧ジャッキであり、地中孔H内に設置される傾斜修正装置(以下、下傾斜修正装置という)6bは、パンタグラフ型の油圧ジャッキである。
【0026】
上傾斜修正装置6a及び下傾斜修正装置6bは、それぞれ4台ずつ設けられ、図5に示すように、吊り下げられる鋼管柱1を囲み、互いに直交する四方から中心軸Oに向けて押圧するように配置する。このとき、上傾斜修正装置6a及び下傾斜修正装置6bはいずれも、平面視において、傾斜計8と中心軸Oとを結ぶ直線に沿って伸縮するように配置することが望ましい。尚、図5においては、上傾斜修正装置6aの配置を示しているが、下傾斜修正装置6bの配置も同様である。これらの傾斜修正装置6a、6bは、吊り下げられた鋼管柱1が傾いている場合に、4台の傾斜修正装置6a、6bの伸縮量のバランスにより、鋼管柱1の傾斜を修正する。各傾斜修正装置6a、6bは、いずれも遠隔操作により地上から伸縮可能に設定されている。
【0027】
接合装置100は、基礎コンクリートB上で地中孔Hを囲うようにして据え付けておく。このとき、ベース架台210の挿通孔211の中心軸と、地中孔Hの中心軸Oを同軸に合わせておく。また、2台のトランシット5を地上に、傾斜修正装置6a、6bをベース架台210上と、地中孔H内とにそれぞれ4台ずつ設置しておく。
【0028】
まず、最下に配置される鋼管柱(以下、第1鋼管柱という)1には、揚重する前に、図6(a)に示すように、予め外周面に、第1鋼管柱1の軸に沿うけがき線7を第1鋼管柱1の略全長にわたるように付しておく。このけがき線7により、吊り下げた第1鋼管柱1の起立姿勢において鉛直に沿わせるべき方向が示される。このとき、第1鋼管柱1の周方向に、互いに90度の間隔を空けて2本のけがき線7を付しておく。以下の説明では、2本のけがき線7のうちの一方のけがき線7について説明するが、他方のけがき線7についても同様である。
【0029】
次に、第1鋼管柱1に図2図6(b)に示すように、2体の傾斜計8を設置する。傾斜計8は、第1鋼管柱1に付したけがき線7に沿うように、各けがき線7に沿ってそれぞれ外周に設置する。傾斜計8は、測定値を地上で確認するために、出力ケーブルが地中孔Hの外に設置された出力装置(不図示)に接続されている。また、傾斜計8と下傾斜修正装置6bの鉛直方向の取付位置は、後に構築する地下構造物の必要躯体精度の優先度の高い箇所として、図2図6(b)では、最下部の第1鋼管柱に取り付けた例を示しているが、それに限るものではない。(例えば第2構真柱、第3構真柱などであっても構わない。)
【0030】
また、傾斜計8は、逆打ち支柱を建て込んだ後に、傾斜計8を回収できるように、第1鋼管柱1に直接固定せず、例えばけがき線7に沿う方向に貫通するパイプを第1鋼管柱1の外周面に固定し、このパイプ内に取り外し可能に保持しておく。尚、傾斜計8は、パイプ内においてけがき線7に沿う姿勢が維持されるように保持されている。
【0031】
次に、図6(c)に示すように、第1鋼管柱1を揚重装置Lにより、地中孔H及び開閉式支持架台220の上方に吊り下げる。このとき、地中孔Hの中心軸Oと第1鋼管柱の中心軸とが略重なる位置であって、第1鋼管柱1の下端が、各トランシット5の視野内にて視認可能な位置に第1鋼管柱1を吊り下げる。また、第1鋼管柱1に付した2本のけがき線7が各々、地上に設置した2台のトランシット5と対向する方向に位置するように第1鋼管柱1の周方向の位置を調整する。
【0032】
次に、吊り下げた第1鋼管柱1に付したけがき線7とトランシット5の鉛直線5aとが重なる状態に、上傾斜修正装置6aを用いて第1鋼管柱1の姿勢を調整し、この状態で、傾斜計8の測定値が「0」となるように、傾斜計8を初期設定(0セット)する。図6図7においては、けがき線7を黒色の太線で示し、トランシット5の鉛直線5aをグレーの極太線で示している。
【0033】
初期設定後に、図6(d)に示すように、離間された状態の一対の分割支持架台220aの間を通して、第1鋼管柱1を地中孔H内に降下させる。このとき、地中孔Hに挿入された第1鋼管1の天端を、外周面に付したけがき線7の上端側が確認できる程度に、第1鋼管柱1を地中孔Hより露出する位置まで降下させる(露出工程)。
【0034】
降下させた第1鋼管柱1は、伸縮装置222により一対の分割支持架台220aを近接させることにより、第1鋼管柱1の鉛直性を維持した状態で、第1鋼管柱1の上端部側を、一対の分割支持架台220aの内周面221に設けられた複数の支持ピース230により保持して揚重装置Lから切り離す(保持工程)。
【0035】
このとき、第1鋼管柱1に設けられている回転トルク受けせん断キー22を、開閉式支持架台220の回転トルク受け金具260に嵌合しておく。また、この状態で、第1鋼管柱1の天端に付されているけがき線7の上端部側の部位は、トランシット5にて確認できるように地上に露出している。
【0036】
そして、第1鋼管柱1の上に継ぎ足す鋼管柱(以下、第2鋼管柱という)1を、揚重装置Lにより揚重し、雄ネジ継手32が第1鋼管柱1の雌ネジ継手31に挿入されるまで吊り下ろす。この状態で、図4で示すように、回転機構300に設けたトルク導入装置302のトルク導入把持金具303を、第2鋼管柱1のトルク導入金具21に装着したのち、トルク導入装置302を伸長させて第2鋼管柱1を回転させる。これにより、図7(a)に示すように、第1鋼管柱1の雌ネジ継手31と第2鋼管柱1の雄ネジ継手32が螺合し締付けられて、両者は接合される。
【0037】
そして、伸縮装置222により一対の分割支持架台220aを離間方向にスライドさせて、第1鋼管柱1の保持を解除し、接合されている第1鋼管柱1と第2鋼管柱1を、揚重装置Lにて吊り下げた状態とする。この状態で2体の傾斜計8の測定値が「0」になるように、上傾斜修正装置6aを用いて調整し、接合されている第1鋼管柱1と第2鋼管柱1の傾斜を修正し、鉛直性を確保する。
【0038】
接合されている第1鋼管柱1と第2鋼管柱1の鉛直性を確保した状態で、図7(b)に示すように、第1鋼管柱1の上端に付されているけがき線7とトランシット5の鉛直線5aとが重なるように、接合されている第1鋼管柱1と第2鋼管柱1を配置し、この状態で、第2鋼管柱1の天端にて、トランシット5の鉛直線5aが位置する箇所にけがき線7の延長線7aを付す(けがき線付与工程)。
【0039】
第2鋼管柱1の天端にけがき線7の延長線7aを付した後に、離間された状態の一対の分割支持架台220aの間を通して、接合されている第1鋼管柱1と第2鋼管柱1を地中孔H内に降下させる。このとき、地中孔Hに挿入された第2鋼管柱1の天端を、外周面に付したけがき線7の延長線7aが確認できる程度に、第2鋼管柱1を地中孔Hより露出する位置まで降下させる(露出工程)。
【0040】
降下させた第1鋼管柱1及び第2鋼管柱1は、伸縮装置222により一対の分割支持架台220aを近接させることにより、鉛直性を維持した状態で、第2鋼管柱1の上端部側を、一対の分割支持架台220aの内周面221に設けられた複数の支持ピース230により保持して揚重装置Lから切り離す(保持工程)。
【0041】
その後、第2鋼管柱1の上に継ぎ足す新たな鋼管柱(以下、第3鋼管柱という)1を、揚重装置Lにより揚重し、トルク導入装置302により回転させて、第2鋼管柱1の雌ネジ継手31と第3鋼管柱1の雄ネジ継手32を螺合し締付けて、図7(c)に示すように接合する。
そして、第2鋼管柱1の保持を解除し、接合されている第1~第3鋼管柱1を、揚重装置Lにて吊り下げた状態とする。この状態で2体の傾斜計8の測定値が「0」になるように、上傾斜修正装置6a及び下傾斜修正装置6bを用いて調整し、接合されている第1~第3鋼管柱1の傾斜を修正し、鉛直性を確保する。
【0042】
その後、接合されている接合されている第1~第3鋼管柱1の鉛直性を確保した状態で、図7(d)に示すように、第3鋼管柱1の天端に付されているけがき線7の延長線7aとトランシット5の鉛直線5aとが重なるように、接合されている第1~第3鋼管柱1を配置し、この状態で、第3鋼管柱1の天端にて、トランシット5の鉛直線5aが位置する箇所にけがき線7の延長線7aを付す(けがき線付与工程)。
【0043】
以降、保持機構200に保持されている鋼管柱1の上に、新たな鋼管柱1を継ぎ足す度に、露出工程、保持工程及びけがき線付与工程を繰り返す。露出工程、保持工程及びけがき線付与工程は、接合された鋼管柱群10の長さが、所望の長さの逆打ち支柱となるまで繰り返し行う。なお、逆打ち支柱を構成し最上に配置する鋼管柱1をつぎ足した際には、継ぎ足した鋼管柱にけがき線の延長線を付さなくとも構わない。
【0044】
本実施形態の逆打ち支柱の精度管理方法によれば、逆打ち支柱の下端に配置する第1鋼管柱1には、当該第1鋼管柱1の外周面に、軸方向に沿って付したけがき線7に沿わせて傾斜計8を取り付けるので、第1鋼管柱1の軸方向に対する傾斜を傾斜計8により計測することが可能となる。
【0045】
また、揚重した第1鋼管柱1に付したけがき線7とトランシット5の鉛直線5aとが重なる位置で傾斜計8の測定値が0になるように設定するので、傾斜計8の測定値が0になる状態のときに、鋼管柱1の中心軸が鉛直に向いていることを認識することが可能となる。
【0046】
また、第1鋼管柱1の上に第2鋼管柱1を接合して揚重した状態で、傾斜計8の測定値が0になるように、接合されている第1鋼管柱1と第2鋼管柱1の傾きを修正するので、接合されている第1鋼管柱1と第2鋼管柱1を、軸方向が鉛直に沿う姿勢に配置することが可能となる。このとき、第2鋼管柱1の下側に接合されている第1鋼管柱1が地中孔H内に位置して視認することができない状態であっても、接合された第1鋼管柱1と第2鋼管柱1の鉛直精度を確保することが可能となる。
【0047】
また、第1鋼管柱1において地上に露出している部位に付されているけがき線7が、トランシット5の鉛直線5aの下端側と重なる状態で、第2鋼管柱1の上部においてトランシット5の鉛直線5aが位置する部位にけがき線7の延長線7aを付すので、第1鋼管柱1の軸方向に沿うけがき線7の延長上の位置を第2鋼管柱1の上部にて視認することが可能となる。
【0048】
さらに、第2鋼管柱1の上に、新たな鋼管柱1を順次継ぎ足す度に、継ぎ足されている複数の鋼管柱1を、傾斜計8の測定値が0になるように傾きを修正し、地上に露出しているけがき線7の延長線7aが、トランシット5の鉛直線5aと重なる状態で、新たな鋼管柱1の上部において鉛直線5aが位置する部位にけがき線7の延長線7aを付すことを繰り返すので、継ぎ足して複数の鋼管柱1が接合された逆打ち支柱であっても、逆打ち支柱の全長にわたって、高い鉛直精度を確保することが可能となる。このため、所望の数の鋼管柱1を繋ぎ合わせた逆打ち支柱の高い鉛直精度を確保することが可能となる。
【0049】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0050】
例えば、本実施の形態では、鋼管柱同士がねじ継手により接合される例について説明したが、これに限るものではなく、たとえば溶接により接合される形態であっても構わない。
【符号の説明】
【0051】
1 鋼管柱(第1鋼管柱、第2鋼管柱、第3鋼管柱)
2 鋼管柱本体
3 ネジ継手
5 トランシット
5a トランシットの鉛直線
6a 上傾斜修正装置(傾斜修正装置)
6b 下傾斜修正装置(傾斜修正装置)
7 けがき線
7a けがき線の延長線
8 傾斜計
10 鋼管柱群
21 トルク導入金具
22 回転トルク受けせん断キー
31 雌ネジ継手
31a 筒体部
31b 雌ネジ部
32 雄ネジ継手
32a 筒体部
32b 雄ネジ部
100 接合装置
200 保持機構
210 ベース架台
210a 半割架台
211 挿通孔
220 開閉式支持架台
220a 分割支持架台
221 内周面
222 伸縮装置
230 支持ピース
253 連結プレート
260 回転トルク受け金具
300 回転機構
301 支柱
302 トルク導入装置
303 トルク導入把持金具
H 地中孔
B 基礎コンクリート
L 揚重装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7