(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100222
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】逆打ち支柱の精度管理方法及び逆打ち支柱の精度管理装置
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20240719BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240719BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20240719BHJP
E02D 7/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
E04G21/02 103Z
E04G21/18 B
E02D7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004059
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅▲崎▼ 正吉
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠久
(72)【発明者】
【氏名】矢部 文生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】荒川 真
【テーマコード(参考)】
2D050
2D147
2E172
2E174
【Fターム(参考)】
2D050AA06
2D050EE17
2D050FF05
2D147AB04
2E172DA01
2E172HA03
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA01
2E174DA12
2E174DA41
(57)【要約】
【課題】地中孔を利用して継ぎ足してなる逆打ち支柱の鉛直精度の管理を可能とする。
【解決手段】地中孔を利用して、複数の鋼管柱を順次継ぎ足し逆打ち支柱を構築する際の逆打ち支柱の精度管理方法であって、継ぎ足した前記鋼管柱の上方から当該鋼管柱内に吊り下げた距離センサにより、前記鋼管柱の水平面内における前記距離センサと、前記鋼管柱の内面との距離を計測する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中孔を利用して、複数の鋼管柱を順次継ぎ足し逆打ち支柱を構築する際の逆打ち支柱の精度管理方法であって、
継ぎ足した前記鋼管柱の上方から当該鋼管柱内に吊り下げた距離センサにより、前記鋼管柱の水平面内における前記距離センサと、前記鋼管柱の内面との距離を計測することを特徴とする逆打ち支柱の精度管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の逆打ち支柱の精度管理方法であって、
前記水平距離は、前記鋼管柱の周方向における3箇所以上を計測することを特徴とする逆打ち支柱の精度管理方法。
【請求項3】
地中孔を利用して、複数の鋼管柱を順次継ぎ足し逆打ち支柱を構築する際の逆打ち支柱の精度管理装置であって、
継ぎ足した前記鋼管柱内において、当該鋼管柱の内面との水平距離を計測する距離センサと、
前記距離センサを、前記鋼管柱の上方から鉛直方向に移動可能に吊り下げる吊り下げ部材と、
を備えていることを特徴とする逆打ち支柱の精度管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中孔を利用して継ぎ足してなる逆打ち支柱の鉛直精度を管理する逆打ち支柱の精度管理方法及び逆打ち支柱の精度管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆打ち支柱は、地下躯体を構成するものであるため、逆打ち支柱は、鉛直精度を確保する必要がある。従来から、複数の鋼管柱を繋ぎ合わせる逆打ち支柱の鉛直精度を確保するために、例えば、特許文献1のように、複数の分割部材(鋼管柱)のそれぞれを、地上において、横向きに寝かせた状態で、互いの中心軸が一致するように保持させて隣り合う分割部材の端部同士を繋ぎ合わせることは知られている。このように、複数の鋼管柱を地上にて繋ぎ合わせる場合には、例えば、繋ぎ合わせた逆打ち支柱の全長にわたってトランシットなどを用いて確認することにより、繋ぎ合わされた逆打ち支柱全体の鉛直精度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地上にて繋ぎ合わせた逆打ち支柱は、クレーン等を用いて建て起こし、杭孔までの移動して、杭孔内へ建て込む必要がある。しかしながら、空頭制限を有する現場では、繋ぎ合わせた逆打ち支柱をクレーン等で吊り下げることができない。このため、地中孔(杭孔)を利用して継ぎ足しつつ逆打ち支柱を地中孔内に建て込むため、繋ぎ合わせた逆打ち支柱全体の状態を地上にて確認することができず、逆打ち支柱の鉛直精度を管理することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、複数の鋼管柱を、地中孔を利用して継ぎ足してなる逆打ち支柱の鉛直精度の管理を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明の逆打ち支柱の精度管理方法は、
地中孔を利用して、複数の鋼管柱を順次継ぎ足し逆打ち支柱を構築する際の逆打ち支柱の精度管理方法であって、
継ぎ足した前記鋼管柱の上方から当該鋼管柱内に吊り下げた距離センサにより、前記鋼管柱の水平面内における前記距離センサと、前記鋼管柱の内面との距離を計測することを特徴とする。
【0007】
本発明の逆打ち支柱の精度管理方法によれば、継ぎ足した鋼管柱の上方から当該鋼管柱内に吊り下げた距離センサにより、水平面内における距離センサと、鋼管柱の内面との距離を計測するので、水平面内における距離センサの位置に対する鋼管柱の位置を把握することが可能となる。
【0008】
そして、距離センサは、鉛直に吊り下げられているので、鋼管柱内において鉛直方向の所定の位置における水平面内において、鉛直方向の複数箇所において距離センサの位置に対する鋼管柱の位置を計測することにより、または、水平面内における距離センサの吊り下げ位置を予め設定しておくことにより、鋼管柱の傾きを把握することが可能となる。このため、複数の鋼管柱を、地中孔を利用して継ぎ足してなる逆打ち支柱の鉛直精度の管理が可能となる。
【0009】
また、本発明の逆打ち支柱の精度管理方法は、
前記水平距離は、前記鋼管柱の周方向における3箇所以上を計測することを特徴とする。
【0010】
本発明の逆打ち支柱の精度管理方法によれば、距離センサにより、鋼管柱の周方向における3箇所以上において、距離センサの位置と、鋼管柱の内面との水平距離を計測するので、鋼管柱の中心軸の位置をより正確に把握することが可能となる。このため、鋼管柱の鉛直方向における1箇所を計測するだけで、継ぎ足された鋼管柱の傾きを把握することが可能となる。
【0011】
また、本発明の逆打ち支柱の精度管理装置は、
地中孔を利用して、複数の鋼管柱を順次継ぎ足し逆打ち支柱を構築する際の逆打ち支柱の精度管理装置であって、
継ぎ足した前記鋼管柱内において、当該鋼管柱の内面との水平距離を計測する距離センサと、
前記距離センサを、前記鋼管柱の上方から鉛直方向に移動可能に吊り下げる吊り下げ部材と、
を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の逆打ち支柱の精度管理装置によれば、距離センサは、吊り下げ部材により鋼管柱の上方から鉛直方向に移動可能に吊り下げられるので、継ぎ足した鋼管柱の鉛直方向における所望に位置にて、鋼管柱の内面との水平距離を計測することが可能となる。また、距離センサは、継ぎ足された鋼管柱の上方のから吊り下げられているので、水平面内における所定の位置を通る鉛直軸を計測の基準とすることが可能となる。
そして、継ぎ足した鋼管柱の上方から当該鋼管柱内に吊り下げた距離センサにより計測するので、鉛直軸に対する鋼管柱の位置を把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の鋼管柱を、地中孔を利用して継ぎ足してなる逆打ち支柱の鉛直精度の管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における鋼管柱を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態における低空頭な環境下にて逆打ち支柱を建て込む作業の状態を示す概略を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における保持機構を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における回転機構を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態の逆打ち支柱の精度管理装置を設置した状態を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態の逆打ち支柱の精度管理装置を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態の逆打ち支柱の精度管理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、地中孔を利用し起立姿勢の鋼管柱を継ぎ足して逆打ち支柱を建て込む際に、逆打ち支柱の鉛直精度を確保する為の逆打ち支柱の精度管理方法、及び、この逆打ち支柱の精度管理方法に用いる逆打ち支柱の精度管理装置であり、特に、施工現場が低空頭な環境下にある場合にて実施されるものである。以下に、逆打ち支柱の精度管理方法、及び、逆打ち支柱の精度管理装置について、
図1~
図8を参照しつつ詳細を説明する。
【0016】
本実施の形態では、起立姿勢の鋼管柱をネジ継手を介して順に継ぎ足しつつ所望の部材長を有する逆打ち支柱を構築し、これを地中孔に建て込む場合を事例に挙げる。まず、
図1を参照しつつ、ネジ継手を備えた鋼管柱について説明する。
【0017】
図1で示すように、鋼管柱1は、鋼管柱本体2と、その両端部に設けられたネジ継手3とを備えている。ネジ継手3は、鋼管柱本体2を起立姿勢にした際の上端側に設けられる雌ネジ継手31と、下端側に設けられる雄ネジ継手32とにより構成されている。
【0018】
雌ネジ継手31は、鋼管柱本体2より拡径に形成され筒体部31aの内面に雌ネジ部31bが形成されている。雄ネジ継手32は、鋼管柱本体2と同軸上に配置される筒体部32aの外周面に雄ネジ部32bが形成されている。したがって、起立状態の鋼管柱1を継ぎ足す際には、下側の鋼管柱1に設けた雌ネジ継手31に上側の鋼管柱1に設けた雄ネジ継手32を挿入したのち、上側の鋼管柱1を回転させて雌ネジ部31bに雄ネジ部32bを締付け接合する。
【0019】
また、鋼管柱本体2の下部側には、これらネジ継手3を介して接合する際に用いる一対のトルク導入金具21が外周面に設けられており、鋼管柱本体2の上部側には、一対の回転トルク受けせん断キー22が、外周面に設けられている。回転トルク受けせん断キー22は、下側の鋼管柱1に対して上側の鋼管柱1を回転させて両者をネジ継手3により接合する際、下側の鋼管柱1の回転止めとして機能する。
【0020】
次に、上記の構成を有する鋼管柱1を起立姿勢で接合する際に用いる鋼管柱1の接合装置100の概要について説明する。接合装置100は、
図2に示すように、地中孔Hの孔口を取り囲むようにして地表面上に据え付けられており、保持機構200と回転機構300とを具備する。
【0021】
保持機構200は、起立姿勢の鋼管柱1を地中孔Hに垂下させた状態で保持する機能を有する。また、回転機構300は、保持機構200に保持されて垂下する鋼管柱1に対して継ぎ足す鋼管柱1を回転させる機能を有する。
【0022】
保持機構200は、地中孔Hの孔口を保護するように設けられた基礎コンクリートB上に載置されたベース架台210と、ベース架台210上に設けられた開閉式支持架台220とを備える。ベース架台210には、略中央に鋼管柱1を挿通可能な挿通孔211が形成されている。
【0023】
開閉式支持架台220は、
図3(a)で示すように、一対の分割支持架台220aを油圧ジャッキ等の伸縮装置222を介して離間可能に連結した略平板状部材により形成されている。一対の分割支持架台220aは、互いに近接した状態で平面視における略中央に開口を有している。開口は、一対の分割支持架台220aの対向する内面221が、鋼管柱1の外周面に沿う形状をなし、内面221には、開閉式支持架台220の開口に挿通された鋼管柱1を保持する際に当該鋼管柱に当接される複数の支持ピース230が設けられている。
【0024】
この内面221により形成された開口は、
図3(a)、
図3(b)で示すように、一対の分割支持架台220aが伸縮装置222の伸縮動作により近接したり離間することで、互いの間隔が拡縮し、一対の分割支持架台220aが開閉するように構成されている。開口を縮径し、鋼管柱1を開閉式支持架台220で支持したのちには、
図4(a)に示すように、一対の分割支持架台220aに連結プレート253をかけ渡して固定する。
【0025】
また、開閉式支持架台220には、前述した鋼管柱1に設けられている回転トルク受けせん断キー22が嵌合する回転トルク受け金具260が、一対の分割支持架台220a各々の内面221に設けられている。鋼管柱1に設けた回転トルク受けせん断キー22が嵌合されることにより、鋼管柱1に中心軸O1周りの回転力が作用した場合にも、当該鋼管柱1が回転する挙動が抑制される。
【0026】
回転機構300は、
図4(a)、
図4(b)に示すように、前述のベース架台210の上面に設けられており、一対の支柱301と、支柱301各々に設けられたトルク導入装置302とを備えている。支柱301は、一対の半割架台210aの上面に、鋼管柱1を挟んで対向するように配置され、支柱301の側面に、トルク導入装置302の基端が設置されている。
【0027】
トルク導入装置302には、油圧ジャッキ等の伸縮装置が採用されており、その伸縮方向は
図4(a)で示すように、鋼管柱1の接線方向であって、保持機構200に設けた伸縮装置222と直交する方向に設定されている。トルク導入装置302は、伸縮装置が収縮した状態で、繋ぎ足す鋼管柱のトルク導入金具21をトルク導入把持金具303で把持し、伸縮装置を伸長することにより、当該鋼管柱1に回転力を付与し、雄ネジ継手32を保持機構200に保持された鋼管柱1の雌ネジ継手31に締付け両者を接合することができる。
【0028】
上述した鋼管柱の接合装置100を利用して、起立姿勢の鋼管柱1をネジ継手3を介して継ぎ足しつつ地中孔Hに建て込む際の、逆打ち支柱の精度管理方法の一例を以下に示す。逆打ち支柱の精度管理方法では、鋼管柱1の接合装置100の他に、逆打ち支柱の精度管理装置(以下、単に精度管理装置という)5と、地中孔H内にクレーン等の揚重装置Lにより地中孔Hの上方に吊り下げられて地中孔Hに配置された鋼管柱1の傾斜を修正する傾斜修正装置6a、6b(
図2)と、を用いる。
【0029】
精度管理装置5は、
図5、
図6に示すように、継ぎ足して接合される複数の鋼管柱1の最も上に位置する鋼管柱1の上に配置される吊り下げ部材50と、吊り下げ部材50により鋼管柱1内に吊り下げられて鋼管柱1の内面1aまでの距離を計測する距離センサ57を備えた距離センサユニット56と、を有している。
【0030】
吊り下げ部材50は、4本の棒状部材51aを井桁状に配置して接合したフレーム51と、4本の棒状部材51aのうちの平行に配置されてい一対の棒状部材51aの上に各々設けられた軸受け部52と、軸受け部52の間に架け渡されて回動自在に支持された回転軸53と、回転軸53に固定された2つのプーリ54と、各プーリ54にそれぞれ巻回されて鋼管柱1内に垂下されるワイヤ55と、を有している。
フレーム51は、矩形状をなす井桁の中心が、鋼管柱1の中心軸O1に位置するように、鋼管柱1の上に載置された状態で、保持されるように構成されている。
【0031】
2つのプーリ54は、回転軸53の軸方向に互いに間隔を空けて設けられており、回転軸53が架け渡されている2本の棒状部材51aの中央から振り分けた位置に配置されている。ワイヤ55は、ウインチ(不図示)に繋がれており、プーリ54に巻回されて垂下され、距離センサユニット56が連結可能に構成されている。
【0032】
距離センサユニット56は、
図6、
図7に示すように、4つの距離センサ57と、4つの距離センサ57が固定され垂下されるワイヤ55の端が連結されるセンサ固定部材58と、を有している。
【0033】
4つの距離センサ57は、水平面内において直交する2方向において、それぞれ互いに相反する方向に向かう距離を測定可能に配置される。すなわち、各距離センサ57は、鋼管柱1内において測定部57a側が鋼管柱1の内面1aと対向するように配置され、測定部57aと反対側の部位が鋼管柱1の中心軸O1側に位置するように配置され、周方向において互いに隣り合う距離センサ57の測定方向が90度の間隔になるように配置されてセンサ固定部材58に固定される。
【0034】
センサ固定部材58は、例えば、矩形状の板状をなし下面側に4つの距離センサ57が、上述した配置に固定される。センサ固定部材58の上面には、ワイヤ55の連結部58aが2箇所に設けられている。連結部58aは、センサ固定部材58の中央から振り分け、互いに間隔を空けた位置に設けられている。2箇所の連結部58aの間隔は、2本のワイヤ55の間隔と同一に設定されている。
【0035】
また、距離センサユニット56は、センサ固定部材58がワイヤ55に連結されて吊り下げられた状態で、4つの距離センサ57が水平面内における鋼管柱1の内面1aとの距離を計測できるように、バランスが調整されている。そして、吊り下げられた距離センサユニット56は、当該距離センサユニット56の中心O2に位置するセンサ固定部材58の中心、すなわち、4つの距離センサ57が配置されている2方向の軸の交点が、鋼管柱1の中心軸O1に配置されるように、回転軸53の位置が、鋼管柱1の中心軸O1から偏った位置に配置されている。尚、距離センサユニット56をより安定した状態で吊り下げる為に、距離センサユニット56の上または下側に錘を備えても構わない。
【0036】
傾斜修正装置6a、6bは、ベース架台210上と、地中孔H内とにそれぞれ設置される。尚、傾斜修正装置6bは、地中孔内に設置する場合のほかに、鋼管柱自体に取り付けても構わない。ベース架台210上に設置される傾斜修正装置(以下、上傾斜修正装置という)6aは、回転機構300より上方に配置され、水平方向に伸縮する油圧ジャッキであり、地中孔H内に設置される傾斜修正装置(以下、下傾斜修正装置という)6bは、パンタグラフ型の油圧ジャッキである。
【0037】
上傾斜修正装置6a及び下傾斜修正装置6bは、それぞれ4台ずつ設けられ、
図5に示すように、吊り下げられる鋼管柱1を囲み、互いに直交する四方から中心軸O1に向けて押圧するように配置する。尚、
図5においては、上傾斜修正装置6aの配置を示しているが、下傾斜修正装置6bの配置も同様である。これらの傾斜修正装置6a、6bは、吊り下げられた鋼管柱1が傾いている場合に、4台の傾斜修正装置6a、6bの伸縮量のバランスにより、鋼管柱1の傾斜を修正する。各傾斜修正装置6a、6bは、いずれも遠隔操作により地上から伸縮可能に設定されている。
【0038】
本実施形態の逆打ち支柱の精度管理方法は、地中孔Hを利用し起立姿勢の鋼管柱1を継ぎ足して逆打ち支柱を建て込む際に、接合装置100が基礎コンクリートBの上で地中孔Hを囲うように据え付けられた状態で行われる。このとき、ベース架台210の挿通孔211の中心軸と、地中孔Hの中心軸Oとは同軸に合わせられている。また、傾斜修正装置6a、6bをベース架台210上と、地中孔H内とにそれぞれ4台ずつ設置されている。
【0039】
逆打ち支柱は、まず、最初の鋼管柱1を揚重装置Lにより揚重し、離間された状態の一対の分割支持架台220aの間を通して、地中孔H内に降下させ、伸縮装置222により一対の分割支持架台220aを近接させることにより、鋼管柱1の上端部側を、一対の分割支持架台220aにより保持して揚重装置Lから切り離す。
【0040】
次に、一対の分割支持架台220aに保持した鋼管柱1の上に継ぎ足す鋼管柱1の雄ネジ継手32が保持された鋼管柱1の雌ネジ継手31に挿入されるまで吊り下ろす。この状態で、回転機構300のトルク導入装置302により鋼管柱1を回転させ、保持されている鋼管柱1の雌ネジ継手31と継ぎ足した鋼管柱1の雄ネジ継手32が螺合して両者を接合する。
【0041】
次に、一対の分割支持架台220aを離間方向にスライドさせて、鋼管柱1の保持を解除し、接合されている2つの鋼管柱1を揚重して降下し、上側の鋼管柱1の上端部側を、一対の分割支持架台220aにより保持して揚重装置Lから切り離す。
【0042】
次に、一対の分割支持架台220aに保持した鋼管柱1の上に、新たに継ぎ足す鋼管柱1の雄ネジ継手32が保持された鋼管柱1の雌ネジ継手31に挿入されるまで吊り下ろして回転させ、保持されている鋼管柱1の雌ネジ継手31と継ぎ足した鋼管柱1の雄ネジ継手32が螺合して両者を接合する。
【0043】
このように、接合された複数の鋼管柱1の長さが、所望の長さの逆打ち支柱となるまで鋼管柱1を継ぎ足す工程を繰り返し行う。そして、例えば、
図8に示すように。8本の鋼管柱1を継ぎ足す際には、8本の鋼管柱1を継ぎ足すまでの間に所望の位置において、距離センサユニット56を配置して鋼管柱1の傾きを計測し修正しつつ鋼管柱1を継ぎ足す。
【0044】
逆打ち支柱の精度管理方法は、上述した鋼管柱1を継ぎ足す工程の間にて、例えば、新たな鋼管柱1を継ぎ足す度、または、所定の数の鋼管柱1を継ぎ足す度など、所望のタイミングにて、精度管理装置5により鋼管柱1の傾きを測定し、測定された傾きに基づいて、傾斜修正装置6a、6bにより鋼管柱1の傾斜を修正する。
【0045】
例えば、一対の分割支持架台220aに保持した鋼管柱1の上に鋼管柱1を継ぎ足して両者を接合し、鋼管柱1の保持を解除する前に、最も上に位置する鋼管柱1の上に、精度管理装置5を設置する。このとき、鋼管柱1の中心軸O1と、距離センサユニット56の中心O2とが、一致するように位置決めして、フレーム51を鋼管柱1に載置する。尚、フレーム51には、フレーム51を鋼管柱1の上に載置する際に、鋼管柱1の中心軸O1と、距離センサユニット56の中心O2とが、一致するように配置するための位置決め手段が設けられていてもよい。
【0046】
鋼管柱1の中心軸O1と、距離センサユニット56の中心O2とが一致するように配置することにより、接合された鋼管柱1が鉛直に配置されている場合には、距離センサユニット56が備える各距離センサ57の測定値が同一の値となり、傾きが生じている場合には、各距離センサ57の測定値が互いに相違した値となる。
【0047】
精度管理装置5を鋼管柱1に設置した後に、鋼管柱1の保持を解除する。そして、接合されている鋼管柱1が吊り下げられている状態で、ウインチからワイヤ55を繰り出し、例えば、地中孔H内に設置した傾斜修正装置6bの位置まで、距離センサユニット56を降下させる。距離センサ57を降下させた位置にて、各距離センサ57により鋼管柱1の内面1aまでの距離を計測する。
【0048】
このとき、各距離センサ57の測定値が互いに相違している場合には、ベース架台210上と、地中孔H内とにそれぞれ4台ずつ設置されている傾斜修正装置6a、6bにより各距離センサ57の測定値が同一になるように、接合されている鋼管柱1の傾きを修正する。このような、距離センサ57による計測と、傾斜修正装置6a、6bによる傾きの修正とを、適宜なタイミングにて行いつつ、鋼管柱1を継ぎ足す。尚、距離センサ57により計測する鉛直方向の位置は、傾斜修正装置6bを設置した位置に限るものではないが、傾斜修正装置6bを設置した位置で計測すると、計測値と傾きによるズレ量とが一致するため、修正が容易となる。このため、距離センサ57により計測したい位置、或いは、傾斜修正装置6bにて傾きを修正したい位置に、予め傾斜修正装置6bを設置しておくことが望ましい。
【0049】
本実施形態の逆打ち支柱の精度管理方法によれば、継ぎ足した鋼管柱1の上方から当該鋼管柱1内に吊り下げた距離センサ57により、水平面内における距離センサ57と、鋼管柱1の内面1aとの水平距離を計測するので、水平面内における距離センサ57の位置に対する鋼管柱1の位置を把握することが可能となる。
【0050】
また、距離センサユニット56を、当該距離センサユニット56の中心O2と鋼管柱1の中心軸O1とが一致する位置から吊り下げているので、四方に向けられた距離センサ57の測定値が互いに相違することにより、鉛直に吊り下げられた距離センサユニット56の位置が鋼管柱1の中心軸O1からずれている、すなわち接続されている鋼管柱1が傾斜していることを把握することが可能である。
【0051】
また、鉛直に吊り下げられた距離センサユニット56が鋼管柱1の中心軸O1から吊り下げられていない場合であっても、水平面内において距離センサユニット56が吊り下げられている位置を予め基準として認識しておき、認識した位置と測定値ととの差に基づいて、鋼管柱1の傾きを把握することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態においては、4つの距離センサ57を用いて、4方向の水平距離を計測する例について説明したが、これに限らず、例えば、周方向における3方向以上の方向に向けた距離センサ57を配置して、3方向以上の距離を計測することにより、鋼管柱1の中心軸O1とのズレをより正確に把握し、鋼管柱1の傾きを把握することが可能となる。
また、距離センサは、鋼管柱1の内面1aを周方向に連続して距離を測定(スキャン)する、例えば周方向に270度の範囲において距離を測定可能な側域センサなどの距離センサであれば、1つの距離センサにより鋼管柱1の傾きを計測することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の逆打ち支柱の精度管理装置5によれば、距離センサユニット56は、吊り下げ部材50により鋼管柱1の上方から鉛直方向に移動可能に吊り下げられるので、継ぎ足した鋼管柱1の鉛直方向における所望に位置にて、鋼管柱1の内面1aとの水平距離を計測することが可能となる。また、距離センサユニット56は、継ぎ足された鋼管柱1の上方から吊り下げられているので、水平面内における所定の位置を通る鉛直軸を計測の基準とすることが可能となる。
【0054】
そして、継ぎ足した鋼管柱1の上方から当該鋼管柱1内に吊り下げた距離センサユニット56の距離センサ57により、鋼管柱1の水平面内における距離センサ57が吊り下げられている位置と、鋼管柱1の内面1aとの水平距離を計測するので、鉛直軸に対する鋼管柱1の位置を把握することが可能となる。
【0055】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0056】
例えば、本実施の形態では、鋼管柱同士がねじ継手により接合される例について説明したが、これに限るものではなく、たとえば溶接により接合される形態であっても構わない。
【符号の説明】
【0057】
1 鋼管柱
1a 鋼管柱の内面
2 鋼管柱本体
3 ネジ継手
5 精度管理装置
6a 上傾斜修正装置
6b 下傾斜修正装置
21 トルク導入金具
22 回転トルク受けせん断キー
31 雌ネジ継手
31a 筒体部
31b 雌ネジ部
32 雄ネジ継手
32a 筒体部
32b 雄ネジ部
50 吊り下げ部材
51 フレーム
51a 棒状部材
52 軸受け部
53 回転軸
54 プーリ
55 ワイヤ
56 距離センサユニット
57 距離センサ
57a 測定部
58 センサ固定部材
58a 連結部
100 接合装置
200 保持機構
210 ベース架台
210a 半割架台
211 挿通孔
220 開閉式支持架台
220a 分割支持架台
221 内面
222 伸縮装置
230 支持ピース
253 連結プレート
260 回転トルク受け金具
300 回転機構
301 支柱
302 トルク導入装置
303 トルク導入把持金具
H 地中孔
B 基礎コンクリート
L 揚重装置
O 地中孔の中心軸
O1 鋼管柱の中心軸
O2 距離センサユニットの中心