(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100228
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】工業用マグネトロンの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 23/033 20060101AFI20240719BHJP
H01J 23/00 20060101ALI20240719BHJP
H01J 25/50 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01J23/033
H01J23/00 A
H01J25/50
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004066
(22)【出願日】2023-01-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】虎井 礼司
(57)【要約】
【課題】陽極円筒体の発熱量が大きくなっても十分に冷却して性能低下や陽極円筒体の故障を抑制できる工業用マグネトロンおよび工業用マグネトロンの製造方法を提供する。
【解決手段】工業用マグネトロン100は、陽極円筒体3と、陽極円筒体3の外周に柱状に配設される冷却ブロック200と、を備える工業用マグネトロン100であって、冷却ブロック200は、陽極円筒体3の周囲を周回して陽極円筒体3を直接冷却するように液状冷媒を流通させる冷媒流路210を配設し、冷媒流路210は、内壁面にらせん溝220を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極円筒体と、前記陽極円筒体の外周に柱状に配設される冷却ブロックと、を備える工業用マグネトロンであって、
前記冷却ブロックは、
前記陽極円筒体の周囲を周回して前記陽極円筒体を直接冷却するように液状冷媒を流通させる冷媒流路を配設し、
前記冷媒流路は、
内壁面にらせん溝を有する
ことを特徴とする工業用マグネトロン。
【請求項2】
前記冷却ブロックは、
前記陽極円筒体を少なくとも一回周回する前記冷媒流路を有し、
前記冷媒流路が周回する位置によって前記陽極円筒体に対する冷却能力を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用マグネトロン。
【請求項3】
前記冷却ブロックは、
内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の前記冷媒流路を有し、
前記冷媒流路の配設する位置、および/または、前記冷媒流路の周回数により前記陽極円筒体に対する冷却能力を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用マグネトロン。
【請求項4】
前記冷却ブロックは、
内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の前記冷媒流路を有し、
二つ以上の前記冷媒流路同士は、内壁面にらせん溝を有する接続流路によって接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用マグネトロン。
【請求項5】
前記冷却ブロックは、
内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の前記冷媒流路を有し、
二つ以上の前記冷媒流路のうち、鉛直方向の最も上部に位置するものを上段流路と呼び、鉛直方向の最も下部に位置するものを下段流路と呼ぶ場合に、
前記上段流路および前記下段流路のそれぞれの一方の端部には、接続口が設けられ、
前記上段流路の前記接続口から前記冷媒を導入し、前記下段流路の前記接続口から前記冷媒を排出する構成、または、前記下段流路の前記接続口から前記冷媒を導入し、前記上段流路の前記接続口から前記冷媒を排出する構成を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の工業用マグネトロン。
【請求項6】
前記冷却ブロックは、
前記上段流路と前記下段流路の鉛直方向の中間の位置に配される中間流路を備え、
前記中間流路の配設する位置、および/または、前記中間流路の配置数により前記陽極円筒体に対する冷却能力を調整する
ことを特徴とする請求項5に記載の工業用マグネトロン。
【請求項7】
前記中間流路は、鉛直方向の上部に位置するものを上段中間流路と呼び、鉛直方向の下部に位置するものを下段中間流路と呼ぶ場合に、
前記上段中間流路と前記下段中間流路とは、直接接続しないように位置をずらして配設し、前記陽極円筒体の周回後に前記接続流路によって接続される
ことを特徴とする請求項6に記載の工業用マグネトロン。
【請求項8】
前記中間流路は、前記上段流路と前記下段流路との間を、らせんを描くように陽極円筒体を周回して接続される斜めの流路である
ことを特徴とする請求項6に記載の工業用マグネトロン。
【請求項9】
前記冷却ブロックの前記柱状は、四角柱であって、前記上段流路と、前記下段流路と、前記中間流路とは、前記四角柱の所定面からコの字型に形成されて前記陽極円筒体を周回し、
前記上段流路と、前記下段流路とは、前記接続口と異なる端部が閉止され、
前記中間流路の両端部は、それぞれ閉止される
ことを特徴とする請求項6に記載の工業用マグネトロン。
【請求項10】
請求項1記載の工業用マグネトロンを本生産する前段階のサンプル品製造段階において、前記工業用マグネトロンを試験動作させて、前記陽極円筒体の発熱位置の特定と発熱量の計測を行い、前記発熱位置と前記発熱量に応じて、前記らせん溝のピッチと内径および呼び径の大きさと、前記冷媒流路の配設位置と、前記冷媒流路の周回数と、を設定する
ことを特徴とする工業用マグネトロンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高出力型の工業用マグネトロンおよび工業用マグネトロンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に工業用マグネトロンは、高周波出力を効率良く発生できることから、レーダ装置、医療機器、電子レンジ等の調理器、半導体製造装置またはその他のマイクロ波応用機器等の分野で広く用いられている。半導体装置用や産業加熱用としては、高出力のマイクロ波が要求される。
【0003】
マグネトロンは、カソード(陰極)とアノード(陽極)間に印加する高電圧を発生させる高電圧直流電源、電子を放出させるためのフィラメントを規定温度に加熱する電源、それらの制御回路およびマイクロ波エネルギーを取り出すための導波管およびそれらを収容する筐体などを含んで構成される。
【0004】
マグネトロンは、陽極円筒体(アノード)の中央に配された陰極(カソード)と、磁石を含んで構成し、陰極にはヒータが巻かれており、そこに所定電流を印加することにより、陰極から熱電子が放出される。熱電子は、陽極円筒体側に引き寄せられるが、磁石により形成される磁場によって陰極のまわりを回転運動しながら周回し、この振動を陽極側に設けた空洞で共振させ、出力部(アンテナ)からそのエネルギーを電波(マイクロ波)として取り出す。
【0005】
しかしながら、熱電子の一部は陽極円筒体に衝突し、そのエネルギーが熱に変換されて発熱する。発熱が継続することで、磁石の性能低下を招き、さらに陽極円筒体を破損することとなる。
【0006】
家庭用の電子レンジなどに使用される出力の小さなマグネトロンにおいては発熱量も小さいので、空冷により冷却することで対応することが可能である。ところが、出力の大きな工業用マグネトロンにおいては、空冷では対応できず、水冷等液状媒体を使用して冷却することが必要となる。
その方法としては、冷却ブロックの周囲に冷媒管を配設し、液状冷媒を供給する方法があり、さらに冷却能力を高めることが必要なときは、陽極円筒体の周囲に配設された冷却ブロックにより陽極円筒体を強制的に冷却し発熱を抑制するものがある。具体的には、冷却ブロック内に陽極円筒体を周回するように冷媒流路を設けて液状冷媒を冷却ブロック内に流通し、陽極円筒体を直接冷却する。
【0007】
特許文献1には、陽極円筒体を周回するように円筒形状の冷媒流路を冷却ブロック内に設け、当該冷媒流路に液状冷媒を流通させて陽極円筒体を直接冷却する工業用マグネトロンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の工業用マグネトロンにあっては、陽極円筒体の発熱量がそれほど大きくない場合には十分に冷却することができる。しかしながら、さらに陽極円筒体の発熱量が大きくなると冷却能力の範囲を超えてしまい、十分に冷却することは困難であることが分かった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、陽極円筒体の発熱量が大きくなっても十分に冷却して性能低下や陽極円筒体の故障を抑制できる工業用マグネトロンおよび工業用マグネトロンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の工業用マグネトロンは、陽極円筒体と、前記陽極円筒体の外周に柱状に配設される冷却ブロックと、を備える工業用マグネトロンであって、前記冷却ブロックは、前記陽極円筒体の周囲を周回して前記陽極円筒体を直接冷却するように液状冷媒を流通させる冷媒流路を配設し、前記冷媒流路は、内壁面にらせん溝を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、陽極円筒体の発熱量が大きくなっても十分に冷却して性能低下や陽極円筒体の故障を抑制できる工業用マグネトロンおよび工業用マグネトロンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの構成を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの陽極円筒体を1回周回する一段の冷媒流路を有する冷却ブロックの構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの内壁面にらせん溝を有する冷媒流路の構造を説明する図である。
【
図4A】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの冷媒流路の液状媒体の流通を説明する図である。
【
図4B】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの冷媒流路の液状媒体の流通を説明する図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの冷媒流路を用いて陽極円筒体を冷却したときの冷却特性と、従来型冷媒流路を用いて陽極円筒体を冷却したときの冷却能力を比較して示す図である。
【
図6A】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【
図6B】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【
図6C】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【
図6D】本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの構成を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの陽極円筒体を複数回周回する冷媒流路を有する冷却ブロックの構成を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの冷媒流路の加工形成を示す図である。
【
図10】
図8の三段流路構成を有する冷却ブロックにおける冷媒の流れを示す斜視図である。
【
図11A】本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの複数回周回する冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【
図11B】本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの複数回周回する冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【
図11C】本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの複数回周回する冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【
図11D】本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの複数回周回する冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【
図11E】本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの複数回周回する冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【
図11F】本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの複数回周回する冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る工業用マグネトロンの構成を示す縦断面図である。
図1Bは、
図1Aの要部拡大図である。本実施形態は、陽極円筒体を一回だけ周回する冷媒流路を備える工業用マグネトロンに適用した例である。
【0015】
[全体構成]
図1Aに示すように、工業用マグネトロン100は、概ね出力が2kWの低出力タイプから15kW程度の高出力タイプのものである。低出力タイプのものであれば、冷媒が、冷媒流路を1回周回する構成でも十分に冷却することができる。
工業用マグネトロン100は、熱放出源として螺旋状に形成された陰極フィラメント1と、陰極フィラメント1の周囲に配置された複数枚の陽極ベイン2と、陽極ベイン2を支持する陽極円筒体3(陽極円筒)と、陽極円筒3の上下端に配置された円環状の一対の永久磁石4a、4bと、を含む。陽極ベイン2および陽極円筒3は、蝋付け等による固着または押出し成形法により一体化され、陽極部の一部を構成している。
なお、「周回」とは、「そのまわりをまわること。そこを巡ること。また、そのまわり。周囲」などの意であるが、本明細書では、
図1Aのように、冷媒流路210が陽極円筒体3の周囲を360度回るものでなくとも、冷媒流路210が陽極円筒体3の周りを巡っているので、
図1Aのような態様も周回(陽極円筒体の周囲を周回)という。ちなみに、
図1Aの例では周回の数は1回であり、後記する
図8の例では2箇所で折り返しているので周回の数は3回である。
【0016】
複数枚の陽極ベイン2は、陰極フィラメント1を中心として放射状に配置されている。陰極フィラメント1と陽極ベイン2との間には、作用空間が形成されている。隣り合う2枚の陽極ベイン2と陽極円筒3とで囲まれた領域は、共振空洞となっている。
【0017】
陽極円筒体3と永久磁石4a,4bとの間にはそれぞれ、軟鉄などの強磁性体からなる一対の磁極5a,5bが配置されている。
【0018】
陽極ベイン2には、アンテナリード7が電気的に接続されている。アンテナリード7の他端は、排気管8と共に封止切りされている。アンテナリード7と排気管8とは、電気的に接続されている。また、排気管8は、チョーク部9、アンテナカバー10および排気管サポート12とともに、マグネトロンアンテナ13を構成している。マグネトロンアンテナ13は、円筒絶縁体11に支持されている。
【0019】
陰極フィラメント1は、陰極リードであるセンターリード23およびサイドリード24に接続されている。このほか、陰極フィラメント1の周囲には、上側エンドシールド21、下側エンドシールド22、入力側セラミック25、陰極端子26およびスペーサ27が配置されている。スペーサ27は、陰極フィラメント1の断線を防止する機能を有している。スペーサ27は、スリーブ28により所定位置に固定されている。これらの部品により陰極部が構成されている。陰極部の周囲には、ベイン2が配置されている。
【0020】
チョークコイル31は、貫通コンデンサ32の一端と接続されている。貫通コンデンサ32は、入力部のフィルタケース33に取り付けられている。貫通コンデンサ32の他端には、陰極加熱用導線35が設けられ、これを介して電源に接続される。
【0021】
フィルタケース33は、その底部を蓋体34により高周波的に塞がれている。帽子状の上下端封止金属41,42および金属ガスケット43は、上側ヨーク44と電気的に接続されている。
【0022】
工業用マグネトロン100は、陽極円筒体(アノード)の中央に配された陰極(カソード)と、磁石を含んで構成し、陰極にはヒータが巻かれており、そこに所定電流を印加することにより、陰極から熱電子が放出される。熱電子は、陽極円筒体側に引き寄せられるが、磁石により形成される磁場によって陰極のまわりを回転運動しながら周回し、この振動を陽極側に設けた空洞で共振させ、出力部(アンテナ)からそのエネルギーを電波(マイクロ波)として取り出す。
【0023】
工業用マグネトロン100は、陽極円筒体3と、陽極円筒体3の上下に配設されて磁場を供給する環状の永久磁石4a,4bと、陽極円筒体3の外周に柱状に配設される冷却ブロック200と、を備える。
【0024】
本実施形態は、冷却ブロック200内に冷媒流路210を設け、陽極円筒体を直接冷却する構造をさらに改善するものである。本明細書において、直接冷却するとは、陽極円筒体の周囲に所定距離離間して冷媒を流通して冷却することをいう。
【0025】
[冷却ブロック200]
冷却ブロック200は、冷却ブロック本体の外壁部200aと、冷却ブロック中心部分において陽極円筒体3の側壁面3aに密着する内壁面200bと、を有する。
【0026】
詳細には、
図1Bに示すように、冷却ブロック200は、冷却ブロック本体の外壁部200aと、冷却ブロック200の陽極円筒体接触部である内壁面200bと、を有する。冷却ブロック200の内壁面200bは、陽極円筒体3の側壁面3aに密着する円筒形状部分である。
【0027】
冷却ブロック200は、陽極円筒体3の周囲を周回して陽極円筒体3を直接冷却するように液状冷媒を流通させる冷媒流路210を配設する。
冷却ブロック200は、陽極円筒体3を少なくとも一回周回する冷媒流路210を有し、冷媒流路210が周回する位置によって陽極円筒体3に対する冷却能力を調整する。
【0028】
陽極円筒体3の側壁面3aには、冷却ブロック200の内壁面200bが密着した状態で配置されている。
冷却ブロック200は、工業用マグネトロン100の陽極円筒体3の外周部に配置され、柱状に形成される。なお、製造加工上、冷却ブロック200は四角柱を採用している。
【0029】
冷却ブロック200は、熱伝導率が高くかつ加工性が高いアルミニウム材(Al)で形成されている。また、冷却ブロック200の内部には、冷却媒体(冷媒)が流通する冷媒流路210が設けられている。冷媒流路210は、内壁面にらせん溝220(後記
図2)を有する円筒状の流路である。ちなみに、らせんとは、巻貝のからのようにぐるぐると巻いているものや旋回した筋をいう。
冷却ブロック200は、ヨーク6に複数の取り付けネジ46により固定されている。なお、冷却ブロック200は、アルミニウム材に代えて、銅材(Cu)で形成してもよい。
【0030】
また、冷媒は、通常、水、特に純水またはイオン交換水が好適に用いられる。また、冷媒は、クーラント(エチレングリコールを含む水溶液)等であってもよい。
【0031】
図2は、陽極円筒体を1回周回する一段の冷媒流路210を有する冷却ブロック200の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、冷却ブロック200は、四角柱状のアルミニウム材であり、陽極円筒体挿入部201(空間または貫通孔)およびスリット202(隙間)を有する。
スリット202の両側に設けた凸部203は、陽極円筒体3の外周壁3aと冷却ブロック200とを密着させるため、ボルトを貫通させて締め付けるためのものである。なお、スリット202および凸部203を設けずに製作してもよい。
【0032】
なお、冷却ブロック200は、他の断面形状(例えば、円形)を有する柱状体であってもよいが、穴あけ等の加工を含む製造が容易であることから、四角柱状のものが望ましい。
【0033】
また、以下の説明においては、便宜上、柱状体の中心軸、すなわち陽極円筒体挿入部201の中心軸の方向を「鉛直方向」と呼ぶことにする。ただし、これはあくまでも便宜的な表現であり、冷却ブロック200の設置の仕方によっては、当該中心軸が重力の方向を基準として水平方向、または鉛直方向に対して斜め方向であってもよい。
【0034】
<冷媒流路210>
・冷媒流路210の配置
冷媒流路210は、陽極円筒体3の周囲を周回して陽極円筒体3を直接冷却するように液状冷媒を流通させる。
冷媒流路210は、四角柱状の冷却ブロック200の内部で、陽極円筒体3の外周面を周回するように、コの字型に配置されている。
【0035】
冷媒流路210の一方端部は、開口部であり、外部に配置された冷媒貯蔵タンク(図示省略)に接続するための接続口210aとして使用し、冷媒流路210の他方端部は、接続口210bであり、冷媒貯蔵タンクに接続するための接続口210bとして使用する。接続口210aおよび接続口210bは、四角柱状の冷却ブロック200の同一の側面に設けられている。運用においては、導入口(接続口210a)には液状冷媒を供給するための冷媒貯蔵タンク等から液状冷媒を供給する供給路(図示省略)を接続し、排出口(接続口210b)には液状冷媒を冷媒貯蔵タンク等に回収する回収路(図示省略)を接続することになる。
【0036】
・冷媒流路210の構造
冷媒流路210は、内壁面にらせん溝220を有する円筒状の流路である。具体的には、冷媒流路210は、内壁面にらせん溝220を有する冷媒流路210c,210d,210e、および接続口210a,接続口210bを備える。
工業用マグネトロン100は、出力が大きく陽極円筒体からの発熱量も大きくなるため、冷却ブロック200による冷却効果を高める必要がある。冷却効果を高めるために、冷媒流路210の内壁面にらせん溝220を設ける。
なお、冷媒流路210c,210d,210eのうち、冷媒流路210dの作り方は後記する。
【0037】
らせん溝220を有する冷媒流路210は、らせん溝を有しない冷媒流路に対して、冷媒供給路としての冷媒接触面積が大きくなること(冷媒流路210の内周の表面積(伝熱面積)が大きくなる)、さらに、冷媒の滞留時間が長くなることの2つが利点となる。また、らせん溝220が冷媒の流れを乱すことで、伝熱効率が高まることも利点となる。このため、らせん溝220を有する冷媒流路210は、単位時間当たりの冷媒の供給量が同じであっても、冷却能力を大きくすることが可能となる。
なお、以降は、内壁面にらせん溝220を有する冷媒流路210を単に冷媒流路といい、内壁面にらせん溝を有しない冷媒流路を従来型冷媒流路という。
【0038】
図3は、内壁面にらせん溝220を有する冷媒流路210の構造を説明する図である。
図3に示すように、らせん溝220は、所定のピッチと、内径と、呼び径と、から構成される。らせん溝のピッチ、内径、呼び径の大きさについては、工業用マグネトロン100を生産する前段階のサンプル品製造段階において、工業用マグネトロン100を試験動作させて、陽極円筒体3の発熱位置の特定と発熱量の計測を行い、発熱位置と発熱量に応じて設定する。
冷却ブロック200(
図1Aおよび
図2)内には、
図3に示すらせん溝220を有する冷媒流路210が配設される。
【0039】
らせん溝220は、製造加工上、冷媒流路210をドリルで切削して円筒状の孔を形成し、さらに、タッピングドリル(らせん溝加工用ドリル)を用いて、らせん溝加工を施す。または、タッピングドリルで直接、らせん溝を開孔してもよい。
【0040】
図4Aおよび
図4Bは、冷媒流路の液状媒体の流通を説明する図である。
図4Aは、冷媒流路210の液状媒体の流通を示し、
図4Bは、従来型冷媒流路の液状媒体の流通を示す。
図4Aに示すように、冷媒流路210の場合、液状媒体が直線状に流通するとともに(
図4Aの矢印a)、らせん状に回転(旋回)しながら流通する(
図4Aの矢印b)。
【0041】
一方、
図4Bに示すように、従来型冷媒流路の場合、液状媒体が直線状に流通する(
図4Bの矢印a)。
【0042】
このように、本実施形態の冷媒流路210では、液状媒体がらせん溝220に沿って旋回しながら流通する動きが加わる。液状媒体が、らせん溝220に沿って旋回しながら流れることで、冷媒の滞留時間が長くなり、単位時間当たりの冷媒の供給量が同じであっても、冷却能力を大きくすることが可能となる。
【0043】
・冷媒流路210と従来型冷媒流路との比較
従来型冷媒流路では、ドリル切削した場合、冷媒流路の断面が円形状であり、伝熱面積の観点からは効果が小さい。
これに対し、冷媒流路210は、従来型冷媒流路のように断面が円形状でありながら、らせん溝220によって冷媒接触面積を大きくすることができる。換言すれば、冷媒流路の断面積を大きくすることなく冷媒接触面積を大きくすることができる。また、供給された冷媒が、らせん溝220に沿って旋回しながら流れることで、冷媒の滞留時間が長くなる。これらのことにより、冷媒流路210は、単位時間当たりの冷媒の供給量が同じであっても、冷却能力を大きくすることが可能となる。
【0044】
冷却ブロック200による冷却効果を高める他の方法として、冷媒流路の断面積を、さらに大きくして単位時間当たりの冷媒流量を大きくすること、同じ断面積の流路で冷媒流路の本数を増やして伝熱面積を大きくすることが考えられる。
上述したように、本実施形態では、らせん溝220によって冷媒接触面積を大きくすることができるので、従来型冷媒流路と同じ断面積であっても、単位時間当たりの冷媒流量をより大きくすることができる。つまり、冷媒流路の断面積を大きくしなくても冷媒流路の断面積を大きくしたのと同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、冷媒接触面を大きくして、伝熱面積を大きくすることができるので、冷媒流路の本数を増やすことなく、あるいはより少ない冷媒流路の本数で構成することができる。
【0046】
なお、冷媒流路の本数を増やした場合は、一流路当たりの単位時間当たりの冷媒流量は変化しないが、伝熱面積が流路本数に比例して増える。また、陽極円筒体3に対して近い位置を流れる冷媒の直接対向する面積が大きくなるため、冷却効果を高めることができる。
【0047】
・冷却ブロック200の冷媒能力の調整
冷却ブロック200の冷媒能力は、
(1)冷媒流路の断面積、
(2)らせん溝のピッチと内径および呼び径の大きさ、
(3)冷媒流路の配設位置、
(4)冷媒流路の周回数、のいずれか、またはこれらの組合せにより調整することができる。
上記、(1)冷媒流路の断面積と(2)らせん溝のピッチと内径および呼び径の大きさは、ドリル切削の際のタッピングドリルにより決定される。
【0048】
タッピングドリルの条件を変えない場合、冷媒能力は、(3)冷媒流路の配設位置と(4)冷媒流路の周回数により調整可能である。(3)冷媒流路の配設位置については、
図6A-
図6Dで後記する。(4)冷媒流路の周回数については、
図7-
図10により後記する。
【0049】
・冷却ブロック200の冷媒能力の比較
工業用マグネトロン100(
図1A)は、陽極円筒体3をコの字型に1回だけ、陽極円筒体3の中央部を周回するように冷媒流路210を配設する冷却ブロック200を用いて、陽極円筒体3を冷却するマグネトロンである。
【0050】
図5は、陽極円筒体をコの字型に1回だけ、陽極円筒体の中央部を周回するように冷媒流路を適用した工業用マグネトロンにおいて、冷媒流路210(
図1Aおよび
図2)を用いて陽極円筒体3を冷却したときの冷却特性と、従来型冷媒流路を用いて陽極円筒体を冷却したときの冷却能力を比較して示す図である。
図5の横軸に陽極損失Pp(W)、縦軸に陽極上昇温度ΔTp(℃°)をとる。
P1:らせん溝を有しない冷媒流路による冷却結果(3L/分で液状冷媒を供給)
P2:らせん溝を有する冷媒流路による冷却結果(3L/分で液状冷媒を供給)
P3:らせん溝を有しない冷媒流路による冷却結果(5L/分で液状冷媒を供給)
P4:らせん溝を有する冷媒流路による冷却結果(5L/分で液状冷媒を供給)
【0051】
冷媒流路210と来型冷媒流路の何れの流路も、陽極円筒体の中央部を1回だけ周回させている。サンプルとして使用した工業用マグネトロンは、グラフ上の温度の低いポイントP4,P3,P2,P1から順に、約3kW、約4kW、約5kW、約6kWである。
図5の冷却特性に示すように、冷媒流路210(
図1Aおよび
図2)は、従来型冷媒流路より冷却能力が大きいことがわかる。
【0052】
・一回だけ周回する冷媒流路の配置位置
陽極円筒体3の最も発熱量の大きい部分を周回するように冷媒流路210を配設することで、冷媒流路210の陽極円筒体3に対する相対的な冷却能力を最大化できることを示す。
図6A-
図6Dは、一回だけ周回する冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
図6Aは、最大発熱部が陽極円筒体3の上部に分布しており、冷媒流路210を陽極円筒体3の上部を周回させている。
図6Bは、最大発熱部が陽極円筒体3の中央部に分布しており、冷媒流路210を陽極円筒体3の中央部を周回させている。
図6Cは、最大発熱部が陽極円筒体3の下部に分布しており、冷媒流路210を陽極円筒体3の下部を周回させている。
図6Dは、最大発熱部が陽極円筒体3の斜めに分布しており、冷媒流路210を陽極円筒体3に対して斜めに周回させている。
【0053】
このように、陽極円筒体3を周回する冷媒流路210の位置によって、陽極円筒体3に対して冷却能力を調整することができる。
【0054】
[第1の実施形態の効果]
以上説明したように、第1の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図1A、
図2)は、陽極円筒体3と、陽極円筒体3の外周に柱状に配設される冷却ブロック200と、を備える工業用マグネトロン100であって、冷却ブロック200は、陽極円筒体3の周囲を周回して陽極円筒体3を直接冷却するように液状冷媒を流通させる冷媒流路210を配設し、冷媒流路210は、内壁面にらせん溝220を有する。
【0055】
この構成により、らせん溝220を有する冷媒流路210は、らせん溝を有しない従来型冷媒流路に対して、冷媒供給路としての冷媒接触面積が大きくなること、さらに、冷媒の滞留時間が長くなることが利点となる。このため、単位時間当たりの冷媒の供給量が同じであっても、冷却能力を大きくすることが可能となる。
図5から明らかに、冷媒流路210は従来型冷媒流路より冷却能力が大きいことが分かる。したがって、陽極円筒体3の発熱量が大きくなっても十分に冷却して性能低下や陽極円筒体の故障を抑制できる。その結果、2kWから15kWの高出力の範囲で運用しても発熱による影響を抑制した工業用マグネトロンを提供することができる。
【0056】
第1の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図1A、
図2)において、冷却ブロック200は、陽極円筒体3を少なくとも一回周回する冷媒流路210を有し、冷媒流路210が周回する位置によって陽極円筒体3に対する冷却能力を調整する。
また、工業用マグネトロン100を本生産する前段階のサンプル品製造段階において、工業用マグネトロン100を試験動作させて、陽極円筒体3の発熱位置の特定と発熱量の計測を行い、発熱位置と発熱量に応じて、らせん溝220のピッチと内径および呼び径の大きさと、冷媒流路210の配設位置と、冷媒流路210の周回数と、を設定する。
【0057】
このようにすることにより、陽極円筒体3を周回する冷媒流路の配設位置と、冷媒流路210の周回数とによって、陽極円筒体3に対して冷却能力を調整することができる。すなわち、どのような出力の工業用マグネトロンであっても、工業用マグネトロン100を本生産する前段階のサンプル品製造段階において、工業用マグネトロン100を試験動作させて、陽極円筒体3の発熱位置の特定と発熱量の計測を行い、発熱位置と発熱量に応じて、らせん溝220のピッチと内径および呼び径の大きさと、冷媒流路210の配設位置を設定するので、将来的な出力変更や適用条件の変更、取り替え(置換)があっても対応することができ、汎用性を格段に向上させることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
1回の周回では冷却能力が不足する場合に対応する冷媒流路の構成について述べる。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る工業用マグネトロンの構成を示す縦断面図である。本実施形態は、陽極円筒体を複数回周回する冷媒流路を備える工業用マグネトロンに適用した例である。
図1Aと同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図7に示す工業用マグネトロン100の冷却ブロック200Aは、陽極円筒体3を複数回周回する冷媒流路210を備える。冷媒流路210は、内壁面にらせん溝220を有する円筒状の流路である。
【0059】
図8は、陽極円筒体を複数回周回する冷媒流路210を有する冷却ブロック200Aの構成を示す斜視図である。
図2と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図8に示すように、冷却ブロック200Aは、内部に、鉛直方向の異なる位置に冷媒を流通させる二つ以上の流路を有している。鉛直方向の異なる位置というのは、上下の位置関係であって、最も上の位置を上段とし、最も下の位置を下段とし、その中間の位置を中段とする。
【0060】
冷却ブロック200Aは、内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の冷媒流路210を有し、冷媒流路210の配設する位置、および/または、冷媒流路210の周回数により陽極円筒体3に対する冷却能力を調整する。
【0061】
冷却ブロック200Aは、冷媒流路210(内壁面にらせん溝220を有する上段流路210c,210d,210e、内壁面にらせん溝220を有する中間流路(以下「中段流路」ともいう。)210g,210h,210i、内壁面にらせん溝220を有する下段流路210k,210l,210mおよび内壁面にらせん溝220を有する接続流路210f,210j)を備え、上段流路210c,210d,210eと、中段流路210g,210h,210iと、下段流路210k,210l,210mとの三段流路配置である。
【0062】
冷却ブロック200Aは、内部に、鉛直方向の異なる位置(高さ)に上段流路210c,210d,210e、中段流路210g,210h,210iおよび下段流路210k,210l,210mが設けられている。
【0063】
上段流路210c,210d,210eと中段流路210g,210h,210iとは、接続流路210fを設けて接続し、中段流路210g,210h,210iと下段流路210k,210l,210mとは接続流路210jを設けて接続する。接続流路210fは、上段流路210eと中段流路210gとが最も短い距離で接続する、すなわち接続流路210fが上段流路と中段流路に共に直交するように、鉛直方向に配置されることが望ましい。同様に、接続流路210jは、中段流路210iと下段流路210kとが最も短い距離、すなわち中段流路と下段流路に共に直交するように、鉛直方向に配置されることが望ましい。ただし、接続流路210f,210jの向きは、これに限定されるものではなく、鉛直方向に対して斜めに配置されていてもよい。
【0064】
よって、冷却ブロック200Aは、上段流路210c,210d,210e、中段流路210g,210h,210i、および下段流路210k,210l,210mは、接続流路210f,210jにより直列に接続され、一本の流路を構成している。
【0065】
上段流路210c,210d,210e、中段流路210g,210h,210i、および下段流路210k,210l,210mは、それぞれの流路の中心軸が同一の水平面に位置するようにコの字形状に形成されている。すなわち、上段流路210c,210d,210e、中段流路210g,210h,210i、および下段流路210k,210l,210mは、陽極円筒体3(
図7)の外周面を周回するようにコの字型に配置され、鉛直方向にそれぞれの流路が所定の間隔を保って配置されている。上段流路210c,210d,210e、中段流路210g,210h,210i、および下段流路210k,210l,210mは、冷却ブロック200Aを上方から見たとき、コの字形状が重なるように配置されていることが望ましい。
【0066】
上段流路210cは端部(開口部)である接続口210aを有し、下段流路210mは端部(開口部)である接続口210bを有する。上段流路210cの接続口210aと下段流路210mの接続口210bとは、冷却ブロック200Aの同一側面側に配置されている。上段流路210cの接続口210aと下段流路210mの接続口210bとは、外部に配置された冷媒貯蔵タンク(図示省略)に接続するための接続口として使用される。
【0067】
このように、複数回周回する冷媒流路210の構成では、最上段冷媒流路(上段流路210c,210d,210e)と最下段冷媒流路(下段流路210k,210l,210m)と中間冷媒流路(中段流路210g,210h,210i)と配設位置、または、中間冷媒流路(中段流路210g,210h,210i)の周回数、によって陽極円筒体3に対する冷却能力を調整することが可能である。
【0068】
・冷媒流路210の加工形成
図9は、冷媒流路210の加工形成を示す図である。
図9は、
図8の上段流路210c,210d,210e、中段流路210g,210h,210i、下段流路210k,210l,210mおよび接続流路210f,210jのうち、下段流路210k,210l,210mの加工形成を例にとる。
【0069】
必要な冷却能力を確保するために必要な冷媒流路のピッチ、内径および呼び径(
図3)に対応するタッピングドリル(らせん溝加工用ドリル)を準備する。
【0070】
下段流路210k,210l,210mの形成においては、まず、冷却ブロック200Aの一つの側面からタッピングドリルによる切削加工を行う(下段流路210m)。この際、タッピングドリルの先端が該当側面に対向する側面を貫通しないように切削加工を行う。なお、下段流路210k,210l,210mの間隔は、設計段階において陽極円筒体3の発熱量等を考慮して適宜設定する。
【0071】
次に、該当側面に隣接する側面(直交する側面)の所定の位置(鉛直方向の同じ高さ)に同様に切削加工を行う(下段流路210l)。この場合、切削加工は、下段流路210lが下段流路210mの最奥部に接続するように行う。この時点で、下段流路210mと入口付近から下段流路210lが接続される。
【0072】
次に、下段流路210kは、入口付近から下段流路210lの最奥部に接続するように切削加工を行う。この時点で、下段流路210lと入口付近から下段流路210kが接続される。
【0073】
上記の加工により、下段流路210k,210l,210mが連通し、コの字形の流路が形成される。
【0074】
次に、冷却ブロック200Aの下底面からタッピングドリルによる切削加工により、接続流路210j(
図8)を形成する。これにより、中段流路210g,210h,210iと下段流路210k,210l,210mとが連通する。
【0075】
ここで、上段流路210c,210d,210eと、中段流路210g,210h,210iについても、同様のタッピングドリルによる切削加工で、既にらせん溝加工が完了している。例えば、上段流路210eの形成においては、まず、冷却ブロック200Aの一つの側面(背面)からタッピングドリルによる切削加工を行う(上段流路210e)。該当側面に隣接する側面(直交する側面)の所定の位置(鉛直方向の同じ高さ)に同様に切削加工を行う(上段流路210d)。また、冷却ブロック200Aの上面からタッピングドリルによる切削加工により、上段流路210eの最奥部に連通する接続流路210fを形成する。上段流路210e、上段流路210および接続流路210fを開孔した際のタッピングドリルによる切削加工の開口部は、図示しない閉止部材により閉止する。
【0076】
なお、上段流路210c,210d,210e、中段流路210g,210h,210i、下段流路210k,210l,210mの間隔は、設計段階において陽極円筒体3の発熱量等を考慮して適宜設定する。
【0077】
最後に、冷媒を導入する接続口210bおよび冷媒を回収する接続口(図示していない)以外の開口部を、閉止部材211、212により閉止する終端処理を行う。なお、閉止部材211、212は、適切な位置まで埋め込むためのネジ部材を使用することが望ましい。具体的には、閉止部材211、212は、沈みプラグを用いることが望ましく、シールテープを巻いたものを用いることにより、冷媒の圧力が高い場合でも液漏れを防止することができ、信頼性の高い製品とすることができる。沈みプラグを用いることにより、冷却ブロック200Aの流路内に異物等が滞留し、流路抵抗が増加した場合等に、沈みプラグを取り外して流路内を清掃することが容易となる。ただし、閉止部材211、212を溶接して固定することも考えられる。溶接によれば、更に確実に液漏れを防止することができるからである。
【0078】
上述の加工および組み立ての方法は、三段流路構成の場合について説明したが、一段流路、二段流路構成の場合も、四段以上の流路構成の場合も同様である。
【0079】
・冷媒の流れ
図10は、
図8の三段流路構成を有する冷却ブロックにおける冷媒の流れを示す斜視図である。
図10の太矢印は、冷媒の流れを表わす。
【0080】
図10に示すように、冷媒貯蔵タンク(図示省略)から冷媒供給路(図示省略)および上段流路210cの接続口210a(導入口)を介して導入した冷媒を、上段流路210c,210d,210eによりマグネトロン本体内部の陽極円筒体3(
図7)を冷却した後に、接続流路210fにより中段流路210g,210h,210iに移送し、中段流路210g,210h,210iにより陽極円筒体3を冷却した後に、接続流路210jにより下段流路210k,210l,210mに移送し、下段流路210k,210l,210mにより陽極円筒体3を冷却した後に、下段流路210mの接続口210b(排出口)および冷媒回収流路を介して、冷媒貯蔵タンクに回収する処理を行う。これを1回の冷却処理とし、この冷却処理を繰り返す。
【0081】
冷媒は、上段流路210cの接続口210aから導入され、コの字形状の上段流路210c,210d,210eを通過し、接続流路210fを介して中段流路210gに流入し、コの字形状の中段流路210g,210h,210iを通過し、更に接続流路210jを介して下段流路210kに流入し、コの字形状の下段流路210k,210l,210mを通過し、下段流路210mの接続口210bから流出する。
【0082】
図10では、まず上段流路210c,210d,210eにより陽極円筒体3を周回して冷却し、この時点において陽極円筒体3の熱影響を受けた冷媒を中段流路210g,210h,210iに移送し、中段流路210g,210h,210iにより陽極円筒体3を周回して冷却し、この時点においてさらに陽極円筒体3の熱影響を受けた冷媒を下段流路210k,210l,210mより陽極円筒体3を周回して冷却することになるので、所定の吐出圧により各冷却流路を周回させることができる。
【0083】
・複数回周回する冷媒流路を備える冷却ブロック200Aの冷媒能力の調整
基本的には、陽極円筒体3の最も発熱量の大きい部分を周回するように冷媒流路210を配設することで、冷媒流路210の陽極円筒体3に対する相対的な冷却能力を最大化できるように調整する。
【0084】
上述したように、冷却ブロック200Aの冷媒能力は、
図2の冷却ブロック200と同様に、
(1)冷媒流路の断面積、
(2)らせん溝のピッチと内径および呼び径の大きさ、
(3)冷媒流路の配設位置、
(4)冷媒流路の周回数、のいずれか、またはこれらの組合せにより調整することができる。
【0085】
タッピングドリルの条件を変えない場合、冷媒能力は、(3)冷媒流路の配設位置と(4)冷媒流路の周回数により調整可能である。以下、順に説明する。
【0086】
図11A-
図11Fは、複数回周回する冷媒流路の配置位置を模式的に示す図である。
図11Aは、最大発熱部が陽極円筒体3の上部および下部に分布しており、最上段冷媒流路(例えば、
図8の上段流路210c,210d,210e)および最下段冷媒流路(例えば、
図8の下段流路210k,210l,210m)を陽極円筒体3の上部および下部を周回させている。この場合、二段流路構成である。
【0087】
図11Bは、最大発熱部が陽極円筒体3の中央部に分布しており、最上段冷媒流路(例えば、
図8の上段流路210c,210d,210e)および最下段冷媒流路(例えば、
図8の下段流路210k,210l,210m)を陽極円筒体3の中央部を周回させている。この場合、二段流路構成である。
【0088】
図11Cは、最大発熱部が陽極円筒体3の中央部に分布しており、しかも高出力タイプである。高出力タイプの発熱量に対応した三段流路構成とし、最上段冷媒流路(例えば、
図8の上段流路210c,210d,210e)、中間冷媒流路(例えば、
図8の中段流路210g,210h,210i)、および最下段冷媒流路(例えば、
図8の下段流路210k,210l,210m)を陽極円筒体3の中央部を周回させている。
【0089】
図11Dは、最大発熱部が陽極円筒体3の上部に分布しており、しかも高出力タイプである。高出力タイプの発熱量に対応した三段流路構成とし、中間冷媒流路(例えば、
図8の中段流路210g,210h,210i)を、最上段冷媒流路(例えば、
図8の上段流路210c,210d,210e)に近づけて配置し、最上段冷媒流路(例えば、
図8の上段流路210c,210d,210e)、中間冷媒流路(例えば、
図8の中段流路210g,210h,210i)、および最下段冷媒流路(例えば、
図8の下段流路210k,210l,210m)を陽極円筒体3に周回させている。
【0090】
図11Eは、高出力タイプの発熱量に対応した三段流路構成である。
図11Cと異なる点は、
図11Eの中段流路210g,210h,210iは、陽極円筒体3の中央部を斜めに周回させている。
図11Eの中段流路210g,210h,210iの形成において、冷却ブロック200Aの一つの側面から斜め方向にタッピングドリルによる切削加工を行う。したがって、
図11Eの中段流路210g,210h,210iは、最上段冷媒流路(例えば、
図8の上段流路210c,210d,210e)と最下段冷媒流路(例えば、
図8の下段流路210k,210l,210m)との間を、らせんを描くように陽極円筒体3を周回して接続される。
中段流路210g,210h,210iを斜めに周回させる構成を採ることで、冷媒流路の段数を増やすことなく、高出力タイプの発熱量に対応させることができる。
【0091】
図11Fは、高出力タイプの発熱量に対応した四段流路構成である。中間冷媒流路を二段、すなわち上段の中間冷媒流路210oおよび下段の中間冷媒流路210pを備える。最上段冷媒流路(例えば、
図8の上段流路210c,210d,210e)、上段の中間冷媒流路210o、下段の中間冷媒流路210p、および最下段冷媒流路(例えば、
図8の下段流路210k,210l,210m)を陽極円筒体3に周回させている。
【0092】
[第2の実施形態の効果]
第2の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図7~
図10)は、冷却ブロック200A(
図8)が、内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の冷媒流路210を有し、冷媒流路210の配設する位置、および/または、冷媒流路210の周回数により陽極円筒体3に対する冷却能力を調整する。
また、第1の実施形態と同様に、工業用マグネトロン100を本生産する前段階のサンプル品製造段階において、工業用マグネトロン100を試験動作させて、陽極円筒体3の発熱位置の特定と発熱量の計測を行い、発熱位置と発熱量に応じて、らせん溝220のピッチと内径および呼び径の大きさと、冷媒流路210の配設位置と、冷媒流路210の周回数と、を設定する。
【0093】
このように、冷媒流路210は、らせん溝220を有することで、単位時間当たりの冷媒の供給量が同じであっても、冷却能力を大きくすることが可能となる。冷却ブロック200Aは、このような冷却能力に優れた冷媒流路210を二つ以上備えることで、陽極円筒体3の発熱量が大きくなっても十分に冷却して性能低下や陽極円筒体3の故障を抑制できる。その結果、2kWから15kWの高出力の範囲で運用しても発熱による影響を抑制した工業用マグネトロンを提供することができる。
【0094】
他の観点から、らせん溝220を有する冷媒流路210は、冷却能力自体が優れているので、工業用マグネトロンの出力によっては、高出力であっても冷媒流路210が1回の周回の構成(第1の実施形態;
図1A、
図2)で提供できる可能性が拡がる。例えば、従来型冷媒流路では、高出力の関係で冷媒流路を二つ以上備える必要があったものが、1回の周回の構成で済む、あるいは、冷媒流路の段数がより少ない段数で済む利点がある。また、付随的な効果として、らせん溝220を有する冷媒流路210は、冷却能力自体が優れているので、冷媒流路の配置位置の工夫によって、冷媒流路の段数を抑制しつつ、発熱量に対処することができる。冷媒流路の段数が少ない場合、冷却ブロックの構成が簡略化され、製造コスト、メンテナンスの削減が期待できる。
【0095】
また、どのような出力の工業用マグネトロンであっても、工業用マグネトロン100を本生産する前段階のサンプル品製造段階において、工業用マグネトロン100を試験動作させて、陽極円筒体3の発熱位置の特定と発熱量の計測を行い、発熱位置と発熱量に応じて、らせん溝220のピッチと内径および呼び径の大きさと、冷媒流路210の配設位置と、冷媒流路210の周回数と、を設定するので、将来的な出力変更や適用条件の変更、取り替え(置換)があっても対応することができ、汎用性を格段に向上させることができる。
【0096】
第2の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図7~
図10)において、冷却ブロック200Aは、内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の冷媒流路210を有し、二つ以上の冷媒流路210同士は、内壁面にらせん溝220を有する接続流路210f,210jによって接続される。
【0097】
このようにすることにより、二つ以上の冷媒流路210および接続流路210f,210jは、いずれもタッピングドリルによる切削加工により形成される。二つ以上の冷媒流路210は、接続流路210f,210jにより直列に接続され、一本の流路を構成することができる。なお、製造上の観点から、冷媒流路と接続流路とは直交していることが望ましい。
【0098】
第2の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図7~
図10)において、冷却ブロック200Aは、内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の冷媒流路210を有し、二つ以上の冷媒流路210のうち、鉛直方向の最も上部に位置するものを上段流路と呼び、鉛直方向の最も下部に位置するものを下段流路と呼ぶ場合に、上段流路および下段流路のそれぞれの一方の端部には、接続口210a,210bが設けられ、上段流路の接続口210aから冷媒を導入し、下段流路の接続口210bから冷媒を排出する構成、または、下段流路の接続口210bから冷媒を導入し、上段流路の接続口210aから冷媒を排出する構成を有する。
【0099】
このようにすることにより、接続口210a,210bに、冷媒供給路(図示省略)および冷媒貯蔵タンク(図示省略)を接続することができる。例えば、冷媒貯蔵タンク(図示省略)から冷媒供給路(図示省略)を経由して供給された冷媒を接続口210a(導入口)に導入することができる。また、接続口210b(排出口)および冷媒回収流路を介して、冷媒貯蔵タンクに回収することができる。
【0100】
第2の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図7~
図10)において、冷却ブロック200Aは、上段流路と下段流路の鉛直方向の中間の位置に配される中間流路(例えば、
図8の中段流路210g,210h,210i)を備え、中間流路の配設する位置、および/または、中間流路の配置数により陽極円筒体3に対する冷却能力を調整する。
【0101】
このようにすることにより、中間流路を備えることで、三段以上の冷媒流路による一本の流路を構成することができる(例えば、
図11C参照)。また、中間流路を備えることで、例えば、
図11C-
図11Fに示すように、発熱部に対して中間流路の配置位置による自由度が拡がる。中間流路を発熱部に対応させることで、冷媒流路の段数を抑制しつつ、発熱量に対処することができる。その結果、陽極円筒体3の発熱量がより大きくなっても十分に冷却して性能低下や陽極円筒体の故障を抑制できる。
【0102】
第2の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図7~
図10)において、中間流路は、鉛直方向の上部に位置するものを上段中間流路と呼び、鉛直方向の下部に位置するものを下段中間流路と呼ぶ場合に、上段中間流路と下段中間流路とは、直接接続しないように位置をずらして配設し、陽極円筒体3の周回後に接続流路210f,210jによって接続される。
【0103】
このようにすることにより、上段中間流路と下段中間流路とは、直接接続しないように位置をずらして配設することで、陽極円筒体3の熱影響を受けた冷媒を中間流路に移送する際、陽極円筒体をくまなく周回して冷却させることができ、冷却効果を高めるこができる。
【0104】
第2の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図7~
図10)において、中間流路は、上段流路と下段流路との間を、らせんを描くように陽極円筒体3を周回して接続される斜めの流路である。
【0105】
このようにすることにより、例えば、
図11Eに示すように、中間流路を発熱部に対応させることができ、冷媒流路の段数を抑制しつつ、発熱量に対処することができる。
【0106】
第2の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図7~
図10)において、冷却ブロック200Aの柱状は、四角柱であって、上段流路と、下段流路と、中間流路とは、四角柱の所定面からコの字型に形成されて陽極円筒体3を周回し、上段流路と、下段流路とは、接続口210a,210bと異なる端部が閉止され、中間流路の両端部は、それぞれ閉止される。
【0107】
このようにすることにより、冷却ブロックの柱状は、四角柱とすることで、穴あけ等の加工を含む製造が容易である。また、四角柱は、冷媒流路をコの字型に形成する場合の親和性が高い。さらに、コの字型の冷媒流路は、タッピングドリルによる切削加工で、らせん溝加工することも容易である。これらのことから、製造コストの低減を図ることができる。
【0108】
なお、本発明は、上記各実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜その構成を変更することができる。
【0109】
例えば、冷媒流路の配置位置、段数、形状、接続口の位置などは一例であってどのようなものを適用してもよい。
【0110】
上記した各実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 陰極フィラメント
2 陽極ベイン
3 陽極円筒体
3a 陽極円筒体の側壁面
4a,4b 永久磁石
5a,5b 磁極
6 ヨーク
7 アンテナリード
8 排気管
9 チョーク部
10 アンテナカバー
100 工業用マグネトロン
200,200A 冷却ブロック
200a 冷却ブロックの外壁部
200b 冷却ブロックの内壁面
201 陽極円筒体挿入部
202 スリット
210 冷媒流路
210c,210d,210e 上段流路
210g,210h,210i,210o,210p 中段流路
210c,210d,210e 下段流路
210f,210j 接続流路
210a,210b 接続口
211,212 閉止部材
【手続補正書】
【提出日】2023-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極円筒体と、前記陽極円筒体の外周に柱状に配設される冷却ブロックと、を備える工業用マグネトロンであって、前記冷却ブロックは、前記陽極円筒体の周囲を周回して前記陽極円筒体を直接冷却するように液状冷媒を流通させる冷媒流路を配設し、前記冷媒流路は、内壁面にらせん溝を有する前記工業用マグネトロンを本生産する前段階のサンプル品製造段階において、前記工業用マグネトロンを試験動作させて、前記陽極円筒体の発熱位置の特定と発熱量の計測を行い、前記発熱位置と前記発熱量に応じて、前記らせん溝のピッチと内径および呼び径の大きさと、前記冷媒流路の配設位置と、前記冷媒流路の周回数と、を設定する
ことを特徴とする工業用マグネトロンの製造方法。
【請求項2】
前記冷却ブロックは、
前記陽極円筒体を少なくとも一回周回する前記冷媒流路を有し、
前記冷媒流路が周回する位置によって前記陽極円筒体に対する冷却能力を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用マグネトロンの製造方法。
【請求項3】
前記冷却ブロックは、
内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の前記冷媒流路を有し、
前記冷媒流路の配設する位置、および/または、前記冷媒流路の周回数により前記陽極円筒体に対する冷却能力を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用マグネトロンの製造方法。
【請求項4】
前記冷却ブロックは、
内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の前記冷媒流路を有し、
二つ以上の前記冷媒流路同士は、内壁面にらせん溝を有する接続流路によって接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の工業用マグネトロンの製造方法。
【請求項5】
前記冷却ブロックは、
内部に鉛直方向の異なる位置に、冷媒を流通させる二つ以上の前記冷媒流路を有し、
二つ以上の前記冷媒流路のうち、鉛直方向の最も上部に位置するものを上段流路と呼び、鉛直方向の最も下部に位置するものを下段流路と呼ぶ場合に、
前記上段流路および前記下段流路のそれぞれの一方の端部には、接続口が設けられ、
前記上段流路の前記接続口から前記冷媒を導入し、前記下段流路の前記接続口から前記冷媒を排出する構成、または、前記下段流路の前記接続口から前記冷媒を導入し、前記上段流路の前記接続口から前記冷媒を排出する構成を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の工業用マグネトロンの製造方法。
【請求項6】
前記冷却ブロックは、
前記上段流路と前記下段流路の鉛直方向の中間の位置に配される中間流路を備え、
前記中間流路の配設する位置、および/または、前記中間流路の配置数により前記陽極円筒体に対する冷却能力を調整する
ことを特徴とする請求項5に記載の工業用マグネトロンの製造方法。
【請求項7】
前記中間流路は、鉛直方向の上部に位置するものを上段中間流路と呼び、鉛直方向の下部に位置するものを下段中間流路と呼ぶ場合に、
前記上段中間流路と前記下段中間流路とは、直接接続しないように位置をずらして配設し、前記陽極円筒体の周回後に前記接続流路によって接続される
ことを特徴とする請求項6に記載の工業用マグネトロン。
【請求項8】
前記中間流路は、前記上段流路と前記下段流路との間を、らせんを描くように陽極円筒体を周回して接続される斜めの流路である
ことを特徴とする請求項6に記載の工業用マグネトロンの製造方法。
【請求項9】
前記冷却ブロックの前記柱状は、四角柱であって、前記上段流路と、前記下段流路と、前記中間流路とは、前記四角柱の所定面からコの字型に形成されて前記陽極円筒体を周回し、
前記上段流路と、前記下段流路とは、前記接続口と異なる端部が閉止され、
前記中間流路の両端部は、それぞれ閉止される
ことを特徴とする請求項6に記載の工業用マグネトロンの製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、高出力型の工業用マグネトロンの製造方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、陽極円筒体の発熱量が大きくなっても十分に冷却して性能低下や陽極円筒体の故障を抑制できる工業用マグネトロンの製造方法を提供することを課題とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の工業用マグネトロンの製造方法は、陽極円筒体と、前記陽極円筒体の外周に柱状に配設される冷却ブロックと、を備える工業用マグネトロンであって、前記冷却ブロックは、前記陽極円筒体の周囲を周回して前記陽極円筒体を直接冷却するように液状冷媒を流通させる冷媒流路を配設し、前記冷媒流路は、内壁面にらせん溝を有する前記工業用マグネトロンを本生産する前段階のサンプル品製造段階において、前記工業用マグネトロンを試験動作させて、前記陽極円筒体の発熱位置の特定と発熱量の計測を行い、前記発熱位置と前記発熱量に応じて、前記らせん溝のピッチと内径および呼び径の大きさと、前記冷媒流路の配設位置と、前記冷媒流路の周回数と、を設定することを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明によれば、陽極円筒体の発熱量が大きくなっても十分に冷却して性能低下や陽極円筒体の故障を抑制できる工業用マグネトロンの製造方法を提供することができる。