(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100233
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電力変換装置、発電システムおよび風力発電装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240719BHJP
H02P 9/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 C
H02P9/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004076
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】小野 広平
【テーマコード(参考)】
5H590
5H730
【Fターム(参考)】
5H590AB01
5H590CA14
5H590CD01
5H590CE05
5H590FA08
5H590FB01
5H590FB03
5H590FC14
5H590GA02
5H590GA04
5H590HA02
5H590HA04
5H590JA08
5H730AA20
5H730AS05
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB57
5H730CC02
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FG05
5H730XX04
5H730XX12
5H730XX35
5H730XX41
(57)【要約】
【課題】出力側に逆流防止のダイオードが存在しない場合でも電子部品に想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減させた電力変換装置を提供する。
【解決手段】 高圧側電線上に設けられた第1スイッチ素子と、高圧側電線上に設けられ第1スイッチ素子に接続されたインダクタと、入力端子の高圧側端と低圧側端との間に設けられ第1スイッチ素子に接続された第2スイッチ素子とを有する回路部と、両スイッチ素子のオンとオフとを制御する制御部とを備え、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とを互いに反転動作させる同期整流方式であって、不連続モードと連続モードとの境界となる臨界電流の値を算出してモードを判定し、前記モードが前記不連続モードの場合、所定の第1スイッチ素子のオン時間および第2スイッチ素子のオン時間に対して、第1スイッチ素子のオン時間は不変で第2スイッチ素子のオン時間を変化させる電力変換装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力が入力される高圧側端と低圧側端とを含む入力端子と、
出力電力が出力される出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間で、高圧側電線上に設けられた第1スイッチ素子と、前記高圧側電線上に設けられ前記第1スイッチ素子に接続されたインダクタと、前記入力端子の高圧側端と低圧側端との間に設けられ前記第1スイッチ素子に接続された第2スイッチ素子と、を有する回路部と、
前記第1スイッチ素子および前記第2スイッチ素子のオンとオフとを制御する制御部と、
を備え、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とを互いに反転動作させる同期整流方式の電力変換装置であって、
前記インダクタを流れるインダクタ電流が不連続となる不連続モードと前記インダクタ電流が連続となる連続モードとの境界となる臨界電流の値を算出してモードを判定し、前記モードが前記不連続モードの場合、所定の前記第1スイッチ素子のオン時間および前記第2スイッチ素子のオン時間に対して、前記第1スイッチ素子のオン時間は不変で前記第2スイッチ素子のオン時間を変化させる、
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記入力端子における入力電圧に対する臨界電流の波形を線形補間して、前記臨界電流の値を算出する、
電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記入力端子における入力電圧Viに対する前記臨界電流Icの値は、前記出力端子における出力電圧Voを用いた下式を使用して算出される、
電力変換装置。
【数6】
(但し、Lはインダクタンス値、Swはスイッチング周波数、Sfは安全裕度)
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記出力端子は、出力電力が出力される高圧側端と低圧側端とを含み、
前記回路部は、
一端が前記入力端子の高圧側端に繋がりボディダイオードを有する前記第1スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子の他端と前記出力端子の高圧側端との間に設けられた前記インダクタと、
前記第1スイッチ素子の他端と前記入力端子の低圧側端の間に設けられボディダイオードを有する前記第2スイッチ素子と、
を備えた降圧チョッパ回路を含む、
電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記第2スイッチ素子のオン時間は、少なくとも前記入力端子における入力電圧と前記第2スイッチ素子において発生する昇圧された電圧とにより算出された電圧が、少なくとも前記第2スイッチ素子の耐圧を超過しないように設定される、
電力変換装置。
【請求項6】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記不連続モードから前記連続モードに移行させる場合は、前記第2スイッチ素子のオン時間に対するオン時間とオフ時間との和の比であるデューティ比を所定の規定時間で変化させ、前記連続モードから前記不連続モードへ移行させる場合は、微少時間で前記デューティ比を変化させる、
電力変換装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電力変換装置と、前記入力端子に接続されたコンバータと、該コンバータに接続された発電機とを具備した、
発電システム。
【請求項8】
請求項7に記載の発電システムと、所定の構造体に固定された支柱を有する風車とを具備し、
前記発電機は、前記風車によって駆動されて発電する、
風力発電装置。
【請求項9】
請求項8に記載の風力発電装置において、
前記発電システムに接続された太陽光発電装置を具備する、
風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される電力を変換して出力する電力変換装置およびこれを備えた発電システムおよび風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力される電力を変換して出力する電力変換装置では、同期整流方式の昇圧式または降圧式のチョッパ回路が広く利用されている。同期整流方式によれば、ダイオードを使用した整流方式(ダイオード整流方式、または単にダイオード整流と呼ばれている)等に比べ、変換効率を向上させることが可能である。
【0003】
特許文献1に記載の従来技術では、同期整流方式の降圧チョッパ回路を使用した電力変換装置を開示し、ダイオード整流方式で行った場合に電流が不連続となる不連続モードと電流が連続となる連続モードとの境界となる臨界電流値を求め、出力電流値がこの臨界電流値に基づく切替電流値を超える場合に、同期整流とダイオード整流(非同期整流)とを切り替えることで、出力電圧の安定化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術の電力変換装置では、変換効率が同期整流に比べて低いダイオード整流を使用しており、例えば半導体スイッチ素子に代えて使用するダイオードにおいて損失が発生するデメリットがある。ここで、上記従来技術の電力変換装置で使用されているような同期整流方式の降圧チョッパ回路では、負荷が低い状態では上述のような不連続モードとなり、さらに出力側に逆流防止のダイオードが存在しないことから、高圧線と低圧線との間のMOSFET[Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor]がオンするタイミングで負荷側から電力が供給され、電流の逆流が発生する。特に、負荷が蓄電池の場合は、蓄電池から上記電力が供給され、出力側から見た場合に昇圧回路が発生し、入力電圧と該昇圧回路の昇圧電圧とが合算されて、上記MOSFETなどの電子部品において想定を超えた過大な電圧が発生する可能性があり、耐圧を超える可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、以上の従来技術の課題を解決すべく、出力側に逆流防止のダイオードが存在しない場合でも電子部品に想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減させた電力変換装置、発電システムおよび風力発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電力変換装置は、
入力電力が入力される高圧側端と低圧側端とを含む入力端子と、
出力電力が出力される出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間で、高圧側電線上に設けられた第1スイッチ素子と、前記高圧側電線上に設けられ前記第1スイッチ素子に接続されたインダクタと、前記入力端子の高圧側端と低圧側端との間に設けられ前記第1スイッチ素子に接続された第2スイッチ素子と、を有する回路部と、
前記第1スイッチ素子および前記第2スイッチ素子のオンとオフとを制御する制御部と、
を備え、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とを互いに反転動作させる同期整流方式の電力変換装置であって、
前記インダクタを流れるインダクタ電流が不連続となる不連続モードと前記インダクタ電流が連続となる連続モードとの境界となる臨界電流の値を算出してモードを判定し、前記モードが前記不連続モードの場合、所定の前記第1スイッチ素子のオン時間および前記第2スイッチ素子のオン時間に対して、前記第1スイッチ素子のオン時間は不変で前記第2スイッチ素子のオン時間を変化させる。
本発明に係る電力変換装置は、例えば昇圧式の変換装置、降圧式の変換装置のいずれかを構成でき、前記第1スイッチ素子、前記第2スイッチ素子には、各々、Pチャンネル型のMOSFET、Nチャンネル型のMOSFETなどが使用しうる。
【0008】
上記構成によると、本発明に係る電力変換装置は、出力側に逆流防止のダイオードが存在していない場合に、前記不連続モードと前記連続モードとの境界となる臨界電流の値を算出してモードを判定し、前記モードが前記不連続モードの場合、所定の前記第1スイッチ素子のオン時間および前記第2スイッチ素子のオン時間に対して、前記第1スイッチ素子のオン時間は不変で前記第2スイッチ素子のオン時間を変化させるため、出力側から見たときに昇圧回路となった場合にその昇圧率を小さくできるので、上記の負荷側からの逆流電流により電子部品において想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減できる。なお、特開2014-138441号公報の電力変換装置は、不連続モードによる電流逆流などの不具合を抑えることを課題とするが、入力電力をモニタリングして、上記高圧線と低圧線との間のMOSFETの所謂デューティ比を増加させるので、これらの点で本発明に係る電力変換装置とは大きく異なる。
【0009】
上記構成において、前記入力端子における入力電圧に対する臨界電流の波形を線形補間して、前記臨界電流の値を算出してもよい。また、前記入力端子における入力電圧Viに対する前記臨界電流Icの値は、前記出力端子における出力電圧Voを用いた下式を使用して算出されてもよい。
【数1】
(但し、Lはインダクタンス値、Swはスイッチング周波数、Sfは安全裕度)
これらの構成により、容易に、一定の精度の臨界電流の値を算出できる。
【0010】
前記出力端子は、出力電力が出力される高圧側端と低圧側端とを含み、
前記回路部は、
一端が前記入力端子の高圧側端に繋がりボディダイオードを有する前記第1スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子の他端と前記出力端子の高圧側端との間に設けられた前記インダクタと、
前記第1スイッチ素子の他端と前記入力端子の低圧側端の間に設けられボディダイオードを有する前記第2スイッチ素子と、
を備えた降圧チョッパ回路を含んでもよい。
これにより、本発明に降圧チョッパ回路を適用し得る。
【0011】
前記第2スイッチ素子のオン時間は、少なくとも前記入力端子における入力電圧と前記第2スイッチ素子において発生する昇圧された電圧とにより算出された電圧が、少なくとも前記第2スイッチ素子の耐圧を超過しないように設定されてもよい。この構成により、上記電子部品において想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減できる。具体的には、前記第2スイッチ素子のオン時間は、前記入力端子における入力電圧と前記第2スイッチ素子において発生する昇圧された電圧とにより算出された(典型的には加算された)電圧が、少なくとも前記第2スイッチ素子の耐圧を超過しないように設定でき、可能な範囲で、上記想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減するのに許容される最大限の範囲まで減少させることができる。なお、この許容される最大限の減少量は、シミュレーションや実験、実測等で決定することができる。
【0012】
上記構成において、前記第1スイッチ素子が、Nチャンネル型のMOSFETであってもよい。この場合に、前記第1スイッチ素子を駆動するブートストラップ回路を備えてもよい。これにより、Nチャンネル型のMOSFETを前記第1スイッチ素子に使用でき、またNチャンネル型のMOSFETである前記第1スイッチ素子の駆動をすることができる。
また、前記ブートストラップ回路は、前記第1スイッチ素子を駆動するためのブートストラップコンデンサを有し、
該ブートストラップコンデンサは、前記第2スイッチ素子のオンにより充電され、
前記第2スイッチ素子のオン時間は、該ブートストラップコンデンサの充電量に依存した値に設定されてもよい。
この場合に、前記第2スイッチ素子のオンにより、ブートストラップ回路中のブートストラップコンデンサに、Nチャンネル型のMOSFETである前記第1スイッチ素子を駆動するための電荷が蓄えられる。よって、ブートストラップコンデンサには該駆動が可能となる十分な電荷が供給される必要がある。そこで、前記第2スイッチ素子のオン時間は、該ブートストラップコンデンサの充電量に依存した値に設定される必要があり、具体的には、ある限度までしか減少しえない。
【0013】
前記不連続モードから前記連続モードに移行させる場合は、前記第2スイッチ素子のオン時間に対するオン時間とオフ時間との和の比であるデューティ比を所定の規定時間で変化させ、前記連続モードから前記不連続モードへ移行させる場合は、微少時間で前記デューティ比を変化させてもよい。この構成により、不連続モードから連続モードに移行させる場合に、急な入力側の電力変動や蓄電池等の負荷の変動に対応し得る。なお、前記所定の規定時間は、シミュレーションや実験、実測等で振動などの電気的ふるまいを考慮して選定することができる。また、連続モードから不連続モードへの移行は、時間をおいて移行させるとスイッチ素子等の電子部品の故障に繋がる可能性があるので、臨界電流を境に、当該故障が発生しない程度の微少時間で切り替える(好ましくは、いわゆる瞬間的に切り替える)。
【0014】
本発明にかかる発電システムは、
上記の電力変換装置と、前記入力端子に接続されたコンバータと、該コンバータに接続された発電機とを具備している。
【0015】
上記構成によると、本発明にかかる発電システムは、上に記載の各機能を有する電力変換装置を搭載する。よって、上述の各効果を奏することができる。
【0016】
本発明にかかる風力発電装置は、
上記の発電システムと、所定の構造体に固定された支柱を有する風車とを具備し、
前記発電機は、前記風車によって駆動されて発電する。
なお、該風力発電装置は、前記発電システムに接続された太陽光発電装置を具備してもよい。
【0017】
上記構成によると、本発明にかかる風力発電装置は、上に記載の各機能を有する電力変換装置を搭載する。よって、上述の各効果を奏することができる。発明者らは、、このような前記発電機を駆動する前記風車がコンテナ等の構造体に固定されるタイプの風力発電装置では、外界の風力の有無に依存して発電機GEの駆動の有無が頻繁となるため、前記回路部に大きい負荷がかかることを見出した。発明者らは、特に、風力発電装置が小型の場合、大型の風力発電装置と比べて、風の速度の変化が激しく、それに伴って発電量の変化が激しくなり、前記回路部に大きい負荷がかかることを見出した。さらに、上記風力発電装置に加えて太陽光発電装置等を具備するハイブリッド発電の場合、風力による発電に加えて太陽光による発電も加わることから、前記回路部の負荷は大きくなる。これにより、例えば出力側に逆流防止のダイオードが存在しない場合、前記第2スイッチ素子等の電子部品に想定を超えた過大な電圧がより発生しうる。しかし、上記の各風力発電装置では、前記電力変換装置を備えた前記発電システムを使用しているため、上述のような出力側に逆流防止のダイオードが存在しない場合であっても、電子部品に想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる電力変換装置、発電システムおよび風力発電装置は、出力側に逆流防止のダイオードが存在しない場合でも電子部品に想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】出力側にダイオードを有する電力変換装置を備えた発電システムの構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電力変換装置を備えた発電システムの構成を示す概略図である。
【
図3】同発電システムにおける入力電圧と臨界電流との特性図である。
【
図4】同発電システムにおけるモードを判定するフロー図である。
【
図5】同発電システムにおける同期整流の各スイッチ素子のオン動作を説明する波形図である。
【
図6】同発電システムにおいて使用されるブートストラップを示す概略図である。
【
図7】同発電システムにおいて前記不連続モードと前記連続モードとの間でモード移行させる場合に第2スイッチ素子のデューティ比を変化させる方法を説明する波形図である。
【
図8】同発電システムを使用した風力発電装置を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る電力変換装置、発電システムおよび風力発電装置について、図面を参照しつつ説明する。
図2に、本発明の一実施形態に係る電力変換装置1を備えた発電システムSYSの概略図を示す。なお
図1は、
図2の出力側においてダイオード700を備えた発電システムであり、出力側からの逆流防止対策が施されている。逆に言うと、
図2の本実施形態に係る電力変換装置1を備えた発電システムSYSでは、ハードウエア的には出力側からの逆流防止対策が施されていない。しかしこれにより、本実施形態の発電システムSYSは、
図1に示す発電システムのようなダイオード700における出力電流に依存した損失が発生しない利点を有する。
【0021】
本実施形態に係る発電システムSYS(
図2)は、電力変換装置1と、後述の入力端子TIに接続されたコンバータCVと、コンバータCVに接続された(交流)発電機GEとを具備している。本実施形態に係る電力変換装置1は、入力電力が入力される入力端子TI(更に詳しくは、入力端子TIは高圧側端TIHおよび低圧側端TILを有している)と、出力電力が出力される出力端子TO(更に詳しくは、出力端子TOは高圧側端TOHおよび低圧側端TOLを有している)と、回路部100と、制御部300とを備えている。入力端子TIの高圧側端TIHと出力端子TOの高圧側端TOHとの間が高圧線(高圧側電線)であり、入力端子TIの低圧側端TILと出力端子TOの低圧側端TOLとの間が低圧線(低圧側電線)である。出力端子TOには、蓄電池等の負荷500が接続されている。発電システムSYSは、例えば風力発電システムである。なお、入力端子TIには、上記コンバータCVと発電機GEが接続される代わりに、太陽電池等の直流発電機が接続されてもよい。
【0022】
回路部100は、入力端子TIと出力端子TOとの間で、上記高圧側電線上に設けられた第1スイッチ素子131と、上記高圧側電線上に設けられ第1スイッチ素子131に接続されたインダクタ150と、入力端子TIの高圧側端TIHと低圧側端TILとの間に設けられ第1スイッチ素子131に接続された第2スイッチ素子132と、を有する。制御部300は、第1スイッチ素子131および第2スイッチ素子132のオンとオフとを各々制御する。具体的には、本実施形態の制御部300は、少なくともゲート信号s1およびs2を出力して、第1スイッチ素子131および第2スイッチ素子132のゲート電圧を各々制御している。本実施形態の電力変換装置1は、第1スイッチ素子131と第2スイッチ素子132とを互いに反転動作させる同期整流方式の動作を行う。
【0023】
本実施形態の回路部100(
図2)は、具体的には、一端が入力端子TIの高圧側端TIHに繋がりボディダイオードを有する第1スイッチ素子131と、第1スイッチ素子131の他端と出力端子TOの高圧側端TOHとの間に設けられたインダクタ150と、第1スイッチ素子131の他端と入力端子TIの低圧側端TILの間に設けられボディダイオードを有する第2スイッチ素子132と、を備えた降圧チョッパ回路を含んでいる。すなわち、第2スイッチ素子132は、負荷(蓄電池)500およびコンバータCVに対して並列接続となっている。なお回路部100は、他に負荷(蓄電池)500およびコンバータCVに対して並列接続の入力側電圧計V1、出力側電圧計V2、入力側コンデンサ111、出力側コンデンサ112や、インダクタ150と直列に(出力側)電流計A1等も有している。本実施形態では、第1スイッチ素子131および第2スイッチ素子132は、Nチャンネル型のMOSFETであるが、Pチャンネル型のMOSFETや他の半導体スイッチ素子等であってもよく、第1スイッチ素子131と第2スイッチ素子132とが異なる型のMOSFETであったり異種の半導体スイッチ素子等であってもよい。なお、回路部100は、上述の様に降圧チョッパ回路を含んでいるが、これに代えて昇圧チョッパ回路を含んでいてもよい。なお、回路部100が昇圧チョッパ回路を含んでいる場合の説明は、上記降圧回路において入出力が反転されれば昇圧回路となることから、当業者であれば本実施形態の降圧チョッパ回路を含んでいる場合の説明から容易に想到できる。よって、その説明は割愛する。
【0024】
回路部100が降圧動作の場合は、入力側からの電圧(入力電圧)Viに対して下式(2)のように第1スイッチ素子131の導通(オン状態)に応じて出力側の電圧(出力電圧)Voが決定する。
【数2】
(但し、FET1onは第1スイッチ素子131がオンする時間、FET1offは第1スイッチ素子131がオフする時間)
【0025】
本実施形態の回路部100では、負荷500の負荷が低くいわゆる不連続モードとなっている場合、第2スイッチ素子132がオンするタイミングで負荷500側から電流が供給されて逆流が発生する。特に負荷500が蓄電池の場合は、蓄電池より電力が供給され、出力側から見て昇圧回路が構成され、入力端子TIにおける入力電圧と第2スイッチ素子132において発生する昇圧された電圧とにより算出された(典型的には加算された)電圧が第2スイッチ素子132などの電子部品に印加される可能性がある。この結果、入力電圧と負荷500側からの昇圧電圧とが合算された電圧により、第2スイッチ素子132などの電子部品に想定しない過大な電圧が発生する可能性があり、耐圧を超える可能性がある。逆流時には、負荷500側で発生する電圧Voによって、第2スイッチ素子132の導通に応じて入力側において下式(3)で表される昇圧電圧Vi’が発生する。
【数3】
(但し、FET2onは第2スイッチ素子132がオンする時間、FET2offは第2スイッチ素子132がオフする時間)
よって、第2スイッチ素子132などの電子部品に発生し得る上記過大電圧は、Vi+Vi’である。ここで、上記の不連続モードでは、(典型的にはダイオード整流方式で行った場合に)インダクタ150を流れるインダクタ電流が不連続となっており、これに対する連続モードでは、上記インダクタ電流が連続となっている。
【0026】
また、第2スイッチ素子132のオフ時では、第2スイッチ素子132に出力側から昇圧された電圧Vi’と入力から供給される入力電圧Viと合算される可能性がある。上式(3)の出力側からの昇圧により、第2スイッチ素子132のデューティ比(第2スイッチ素子132のオン時間に対するオン時間とオフ時間との和の比)に応じて昇圧比が上昇することから、逆流時に第2スイッチ素子132のオン時間の導通が多いと、スイッチ素子等の電子部品の耐圧を超えるような電圧が発生する可能性がある。
【0027】
以上のことから、不連続領域では、第2スイッチ素子132のデューティ比に制限をかける(すなわちオン時間を抑える)ことによって、上記の逆流により生じる昇圧動作による影響を低減または防止すること(以下、昇圧対策とも呼ぶ)が必要である。そこで、昇圧対策をするために、本実施形態では、以下のようなステップを実行する。
(1) 不連続モード(逆流が発生)と連続モードの臨界点の特定(モード判定)。
(2) 不連続モードでの第2スイッチ素子132のデューティ比(オン時間)の決定。
(3) 連続モードから不連続モードへ移行する際および不連続モードから連続モードへ移行する際の第2スイッチ素子132のデューティ比と移行時間の調整。
【0028】
(1)不連続モードと連続モードの臨界点の特定は、不連続モードと連続モードとの境界となる臨界電流の値を算出してモード(不連続モードまたは連続モード)を判定することによって行う。臨界電流の値は、後述の線形補間による方法を採用する。一般的に不連続モードと連続モードの切り替え領域は、インダクタ150に流れる上記インダクタ電流の臨界電流で分別される。臨界電流Icは、おおよそ次の式で示される。
【数4】
上式を変形させると既出の下式(1)が得られる。
【数5】
(但し、Lはインダクタンス値、Swはスイッチング周波数、Sfは安全裕度)
実際には測定の誤差等があるため、安全裕度Sfを考慮し、臨界電流を大きくとっておいた方が逆流の観点から安全側になるため、上式のように表される。降圧コンバータを使用する場合、出力電圧Voは固定値であるケースが多いので、Vo、Sw、Lは定数になり、臨界電流Icは入力電流Viの関数とみなせる。
【0029】
以上のことから、入力電圧Viと臨界電流Icの関係を示したものが
図3のグラフ(入力電圧と臨界電流との特性図)である。臨界電流は上式(1)を使用して都度算出することも可能だが、より簡素化するため、入力端子TIにおける入力電圧Viに対する臨界電流Icの波形(
図3)を線形補間して、前記臨界電流の値を算出する。当該線形補間では、
図3に示す直線l1やl2と比べて上記特性図のグラフとの誤差が比較的少ないため、2点ほど用いて補間計算を行なえばよく、なお同グラフがやや上に凸の形状であるため臨界電流が実際より大きく補間され、安全側に寄与することとなる。コンバータにより、上記L、Sw、Voなどの定数が異なる場合は、補正して再度線形補間の値を算出すればよい。ただし、これらの定数は固有のもので大きく変わることはないので、一度線形補間を計算すれば、ほとんど同様に扱うことができる。なお、線形補間の範囲は、入力される電圧Viの範囲内のみでよいので、上述のように線形補間の計算値における誤差は小さくできる。
【0030】
入力電圧Viに対して、線形補間することで臨界電流Icを求めた後は、
図4のフロー図に従い、求められた臨界電流値に対して実測電流値(電流計A1の実測値)との比較によりモード判定を行う。実測電流値が臨界電流値未満の場合は、不連続モードであり、後述の様に第2スイッチ素子132のデューティ比に制限をかける(オン時間を変化させる、典型的には減少させる)。実測電流値が臨界電流値以上の場合は、連続モードであり、第2スイッチ素子132のデューティ比に制限はかけない(オン時間は所定の値のまま不変)。
【0031】
(2)不連続モードでの第2スイッチ素子132のデューティ比(オン時間)の決定では、
図5(A)に示すように、連続モードの場合は、第1スイッチ素子131のオン時間および第2スイッチ素子132のオン時間は所定の値のまま不変である。
図5(B)に示すように、不連続モードの場合は、第1スイッチ素子131のオン時間は所定の値のまま不変であるが、第2スイッチ素子132のオン時間を変化させ、典型的には
図5(B)中のΔt2だけ減少させる(この時の第2スイッチ素子132のオン時間を、オン時間制限値と呼ぶ)。
【0032】
本実施形態では、第2スイッチ素子132のオン時間制限値は、少なくとも入力端子TIにおける入力電圧Viと第2スイッチ素子132において発生する昇圧された電圧とにより算出された電圧が、少なくとも第2スイッチ素子132の耐圧を超過しないように設定される。この構成により、上記電子部品において想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減できる。具体的には、第2スイッチ素子132のオン時間制限値は、入力端子TIにおける入力電圧Viと第2スイッチ素子132において発生する昇圧された電圧Vi’とにより算出された(典型的には加算された)電圧が、少なくとも第2スイッチ素子132の耐圧を超過しないように設定でき、可能な範囲で、上記想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減するのに許容される最大限の範囲まで減少させることができる。なお、この許容される最大限の減少量は、シミュレーションや実験、実測等で決定することができる。
【0033】
なお、上記の臨界電流未満の場合(不連続モード)で第2スイッチ素子132のデューティ比の制限を行う場合、次のような点に留意する必要がある場合がある。高圧線上に存在するNチャンネル型のMOSFETである第1スイッチ素子131の駆動のため、
図6に示すような効率がよく安価なブートストラップ回路が使用されることが多く、ブートストラップ型のゲートドライバーが用いられることが多い。第2スイッチ素子132のオンにより、ブートストラップコンデンサBC(
図6)に電荷をためて入力電圧Viよりも高電圧を発生させ、Nチャンネル型MOSFETの第1スイッチ素子131の駆動に充てる。よって、ブートストラップコンデンサには該駆動が可能となる十分電荷を供給する必要がある。そこで、第2スイッチ素子132のオン時間制限値は、該ブートストラップコンデンサの充電量に依存した値に設定される必要があり、具体的には、ある限度までしか減少しえない。すなわち、第2スイッチ素子132のオン時間制限値は上記のように許容される最大限の範囲まで減少させることができるとする一方で、ブートストラップ回路を使用する場合には、
図5中のΔt2には上限が存在し、ブートストラップコンデンサの充電量が不十分とならないための最低時間が存在する。
【0034】
また、ブートストラップ回路を使用する場合、第2スイッチ素子132のオン時間には余裕代を考慮する必要がある。すなわち、出力側から見た昇圧回路構成において、少なくとも第2スイッチ素子132の耐圧に対して十分に余裕代がある値を設定する必要がある。よって、第2スイッチ素子132による昇圧動作が多少発生しても、ブートストラップ回路を駆動する第2スイッチ素子132のオン時間は第2スイッチ素子132等の電子部品を壊さないような値に設定される必要がある。
【0035】
(3)次に、連続モードから不連続モードへ移行する際および不連続モードから連続モードへ移行する際の第2スイッチ素子132のデューティ比と移行時間の調整について説明する。不連続モードから連続モードへ移行する場合、第2スイッチ素子132のデューティ比を制限がある状態から制限がない元の状態に急に戻すと、回路中の電流においてリンギングが生じるなど急な動きになり、振動などの原因になり得る。このため、ある程度の時間をかけて第2スイッチ素子132のデューティ比を変化させる必要がある。一方で、連続モードから不連続モードへ移行する場合では、第2スイッチ素子132のデューティを時間をかけて変化させない必要がある。
【0036】
図7に示すように、不連続モードから連続モードに移行させる場合は、急な入力側の電力変動や蓄電池等の負荷500の変動を考慮し、連続モードにおける第2スイッチ素子132のデューティ比の目標値(=1-FET1on[第1スイッチ素子131のオン時間])と、不連続モードにおける上記オン時間制限値に依存した第2スイッチ素子132のデューティ比の制限値(固定値)との間を、所定の規定時間t1により線形補間した値で変化させる。なお、上記目標値は、第2スイッチ素子132のデューティ比の最大値となる。この規定時間t1は、シミュレーションや実験、実測等で振動などの電気的ふるまいを考慮して選定することのが好ましい。逆に、連続モードから不連続モードに移行させる場合は、時間をかけて移行させると第2スイッチ素子132等の電子部品の故障に繋がる可能性がある。そこで、いわゆる微少時間で、典型的には瞬時に、第2スイッチ素子132のデューティ比を変化させる。
【0037】
次に、電力変換装置1を備えた発電システムSYSを使用した風力発電装置について説明する。風力発電装置5は例えば、
図8に示すような風車12と、風車12によって駆動されて発電する発電機GE(
図2)を含む発電システムSYSとを具備している。風車12は垂直軸式風車として構成されている。具体的には、風車12は、複数(
図8の例では2枚)の翼12aと、これら翼12aを支持する翼支持体12bとを有する。各翼12aは上下方向に延び、翼支持体12bは、図示しない軸受を介して支柱14の上端に垂直軸心回りに回転自在に支持されている。前記2枚の翼12aは、支柱14の軸心を中心として180度位相の異なる位置に設けられている。また支柱14は、構造体9の1つの周壁(側壁)9cの上部中央に固定されている。
【0038】
構造体9は、搬送可能であり、電動車両2を搬入・搬出可能な観音開き式の開閉扉を有する箱状で且つ堅牢性を備えている。開閉扉は、例えば顧客等の権限を有する者により施錠可能に構成されている。構造体9は、略矩形の天壁9aおよび底壁9bと、これら天壁9aおよび底壁9bの間に設けられた4つの周壁9cとを有し、全体が略直方体形状に形成されている。具体的には、この構造体9は例えば堅牢性を有する輸送用コンテナや搬送可能な簡易建築物である。構造体9内は、備蓄品等に加えて、発電システムSYSのコンバータCV等の回路や蓄電池等が搭載し得て、事務所やワークスペース等にも使用し得る。
【0039】
風力発電装置5の発電機GEは、支柱14の上部に取り付けられた発電機ケーシング13aの内部に設けられている。発電機ケーシング13aに前記軸受の固定輪が取り付けられ、翼支持体12bに前記軸受の回転輪が連結されている。風車12の回転に伴って、前記回転輪と共に発電機ケーシング13aの内部において発電機GEの回転子が回転することにより、発電機GEが発電する。発電機GEとしては、例えば誘導発電機または同期発電機を用いることができる。
【0040】
垂直軸式の風車は、比較的小型であっても風を受けて発電可能であるため、搬送可能な構造体9に設ける風力発電装置5用の風車12として適している。もっとも、風車は水平軸式風車であってもよい。
【0041】
図2に示すような蓄電池(負荷)500は、
図8の風力発電装置5で発電された電力を蓄え、さらに発電システムSYSに接続された水素発電装置(不図示)や構造体9の天壁(天板)9aに設置された太陽光パネル6aを含む太陽光発電装置6等で発電された電力も蓄えうる。風力発電装置5等の自然エネルギー発電装置で発電される電力と蓄電池500に充電できる電力量とは、前記自然エネルギー発電機の発電性能と法規とにより運用上で制限され、蓄電池500の容量が制限される。このため、制御部300は、蓄電池500の容量および寿命を低下させることなく充電制御を行っている。なお、制御部300、風力発電装置5、太陽光発電装置6、蓄電池500等を搭載する輸送用コンテナである構造体9は、系統電源が無い場所等におけるコンテナ収納移動型の独立電源ともなり得、非常用電源としても使用しうる。
【0042】
発明者らは、このような発電機を駆動する風車がコンテナ等の構造体9に取り付けられるタイプの風力発電装置5では、外界の風力の有無に依存して発電機GEの駆動の有無が頻繁となるため、回路部100に大きい負荷がかかることを見出した。発明者らは、特に、風力発電装置が小型の場合、大型の風力発電装置と比べて、風の速度の変化が激しく、それに伴って発電量の変化が激しくなり、回路部100に大きい負荷がかかることを見出した。さらに、風力発電装置5に加えて
図8に示すような太陽光発電装置6等を具備するハイブリッド発電の場合、風力による発電に加えて太陽光による発電も加わることから、回路部100の負荷は大きくなる。これにより、
図2に示すように出力側に逆流防止のダイオードが存在しない場合、前記第2スイッチ素子等の電子部品に想定を超えた過大な電圧がより発生しうる。しかし、上記の各風力発電装置5では、電力変換装置1を備えた発電システムSYSを使用しているため、
図2に示すような出力側に逆流防止のダイオードが存在しない場合であっても、電子部品に想定を超えた過大な電圧が発生する影響を低減できる。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1 電力変換装置
5 風力発電装置
6 太陽光発電装置
12 風車
100 回路部
131 第1スイッチ素子
132 第2スイッチ素子
150 インダクタ
300 制御部
CV コンバータ
GE 発電機
SYS 発電システム
TI 入力端子
TIH (入力端子の)高圧側端
TIL (入力端子の)低圧側端
TO 出力端子