(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100241
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】色調モニタ装置および検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/958 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G01N21/958
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004087
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】江口 誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛久
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
(72)【発明者】
【氏名】細井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 宏之
(72)【発明者】
【氏名】畑山 亮太
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA12
2G051AB20
2G051BA20
2G051BB07
2G051CA04
2G051CB02
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】本開示は、可視光を透過するPETボトル等の被検査物の色調を監視する色調モニタを提供することを目的とする。
【解決手段】可視光を透過する被検査物31の色調モニタ装置1において、前記被検査物31の補色の照明光25を発光する照明装置21と、前記照明装置21から照射されて、拡散板22を経て前記被検査物31を透過した透過光26を撮像するモノクロカメラ41と、前記モノクロカメラ41から送出される信号を受ける演算装置51を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を透過する被測定物の色調モニタ装置において、
前記被測定物の補色の照明光を発光する照明装置と、
前記照明装置から照射されて、拡散板を経て前記被測定物を透過した透過光を撮像するモノクロカメラと、
前記モノクロカメラから送出される電気信号を受ける演算装置を備える、
色調モニタ装置。
【請求項2】
前記照明装置が発光する照明光が紫色であり、前記被測定物は前記照明光の補色である請求項1に記載の色調モニタ装置。
【請求項3】
前記照明装置が発光する照明光の波長が405nmを含む請求項2に記載の色調モニタ装置。
【請求項4】
前記照明装置が発光する照明光が青色であり、前記被測定物は前記照明光の補色である請求項1に記載の色調モニタ装置。
【請求項5】
前記照明装置が発光する照明光の波長が457nmを含む請求項4に記載の色調モニタ装置。
【請求項6】
前記被測定物は、PETボトル用プリフォームである請求項1に記載の色調モニタ装置。
【請求項7】
前記PETボトル用プリフォームは、リサイクルPETプリフォームである請求項6に記載の色調モニタ装置。
【請求項8】
請求項1に記載の色調モニタ装置を備える、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、色調モニタ装置および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品等の内容物を収容する容器として、PETボトルなどの樹脂製の容器が上市されている。樹脂製の容器は、金型内にプリフォームを挿入し、当該プリフォームに対して2軸延伸ブローを施す2軸延伸ブロー成形法や、射出成形法等により製造される。
【0003】
このような樹脂製の容器では、不適合の容器が市場に出回ることを防止することが重要である。このような背景の下、容器を検査するための検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、透光性を有する容器の検査方法であり、透過光による画像をカメラにて撮像することにより、容器の検査を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では環境に配慮する容器として、リサイクル材を使用することが多くなっている。しかしながら、バージン材料と比較して品質にバラつきがあるリサイクル材を原料にして容器を成形した場合、出来上がった容器の色調にバラつきが生じやすい。特に無着色のPETボトルの場合は、黄色に変色(以後、黄変とする。)することがあり、品質上の問題があった。なお、PETボトル以外でも、プリフォーム、プラスチックカップなどの容器関連や、サイトグラスなどの容器に関係しないプラスチック成形品でも、同様の問題があった。さらに、バージン材料を使用した場合でも、成形条件により黄変することがあった。
【0006】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、可視光を透過するPETボトル等の被測定物の色調を監視する色調モニタを提供することを目的とする。また、前記色調モニタを搭載し、被測定物の検査を行い、不良品の排除を行う検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題点を解決するためになされたものであり、本開示の色調モニタ装置1は、
可視光を透過する被測定物31の色調モニタ装置1は、前記被測定物31の補色の照明光421を発光する照明装置21と、前記照明装置21から照射されて、拡散板22を経て前記被測定物31を透過した透過光422を撮像するモノクロカメラ41と、前記モノクロカメラ41から送出される電気信号を受ける演算装置51を備えている。
【0008】
また、本開示の一実施の形態による色調モニタ装置1において、
前記照明装置21が発光する照明光421が紫色であり、前記被測定物31は前記照明光421の補色であってもよい。
【0009】
また、本開示の一実施の形態による色調モニタ装置1において、
前記照明装置21が発光する照明光421の波長が405nmを含んでいてもよい。
【0010】
また、本開示の一実施の形態による色調モニタ装置1において、
前記照明装置21が発光する照明光421が青色であり、前記被測定物31は前記照明光421の補色であってもよい。
【0011】
また、本開示の一実施の形態による色調モニタ装置1において、
前記照明装置21が発光する照明光421の波長が457nmを含んでいてもよい。
【0012】
また、本開示の一実施の形態による色調モニタ装置1において、
前記被測定物31は、PETボトル用プリフォーム32であってもよい。
【0013】
また、本開示の一実施の形態による色調モニタ装置1において、
前記PETボトル用プリフォーム32は、リサイクルPETプリフォームであってもよい。
【0014】
また、本開示の一実施の形態による検査装置61は、
前記色調モニタ装置1を備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、可視光を透過するPETボトル等の被測定物の色調を監視する色調モニタを提供することができる。また、前記色調モニタを搭載し、被測定物の検査を行い、不良品の排除を行う検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】PETボトル用プリフォームの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。
図1は、本開示の色調モニタ装置1の構成図である。
本開示の色調モニタ装置1は、照明装置21、拡散板22、集光レンズ23、モノクロカメラ41及び演算装置51を備える。さらに照明装置21、拡散板22、集光レンズ23、モノクロカメラ41は適切な位置で固定されるために、ベース11に固定されている。
【0018】
ここで、
図1の左側にある照明装置21から光42が発光されて、その光42が右側にあるモノクロカメラ41に到達する。今後説明する際に、光42の流れに合わせて照明装置21側を上流側、モノクロカメラ41側を下流側とする。
【0019】
照明装置21は特定の波長の光42を発光する機能を有しており、所望の波長の光を発光できる。特定の波長の発光させる手段としては、ナトリウム灯、レーザなどの単色性を有する光源を使用する方法、白色光をプリズムや回折格子で分光して使用する方法などがある。またLEDを用いる方法は、波長の選択性があり、省エネルギで発熱が低いなどの利点があり、好適である。
【0020】
照明装置21から発光される光42は、上流側拡散板221に入射される。入射した光42は、撮像に適した均一な面状の光42に変換される。また拡散板22として本実施形態では、上流側拡散板221と下流側拡散板222とが設けられている。なお観察条件によっては、上流側拡散板221と下流側拡散板222とのいずれか一方でもよく、その場合はコストとスペースが削減される。
【0021】
上流側拡散板221を通過した光42は、その下流側にある集光レンズ23に入射する。集光レンズ23に入射した光42はほぼ平行光になり、その下流側にある下流側拡散板222に入射する。下流側拡散板222にて、さらに面状に均一化された光42は下流側に出射されて、被測定物31を透過して、モノクロカメラ41に到達する。モノクロカメラ41で撮像された画像は、下流側拡散板222を背景として被測定物31を撮像した画像となる。ここで被測定物31の上流側の光42を照明光421とし、下流側の光42を透過光422とする。
【0022】
本実施形態の画像撮影装置としては、モノクロカメラ41を使用している。モノクロカメラ41の特徴について説明する。カラーカメラと比較して安価である。また1つの画素の大きさが大きくなることから受光量が多くなるので、光源の光量を抑えることができて、光源を安価にできて、さらに省エネルギとなる。さらに画像処理の速度が速くなり、被測定物31の検査能力が向上する。
【0023】
モノクロカメラ41にて色調をモニタする方法について説明する。本実施形態の被測定物31は可視光を透過する性質を持っているが、無色透明ではなく若干の色彩を帯びている。その色彩の補色となる光42を発光する照明装置21を準備する。なお、補色の決定方法としては、被測定物31の色彩を人間による色覚により判断して、色相環により補色を求めてもよい。色相環としては、マンセル色相環、オストワルド色相環、PCCS(日本色研配色体系)などがある。色相環の対向位置である補色のみならず、その補色に隣接した色彩(左右に3色程度)であっても効果が得られる。あるいは分光器により被測定物31の色彩を測定して補色を求めてもよい。なお補色は、必ずしも補色に一致した波長の光42を発光する照明装置21ではなくてもよく、上記に述べた補色の近傍の波長を発光する照明装置21でもよい。
【0024】
被測定物31の同一色彩の濃さの変化に対しては、その補色の光42を透過させることで、モノクロカメラ41でもより正確に観察ができる。同一色彩の濃さの変化とは、例えば黄色の場合は、薄い黄色と濃い黄色の場合を示す。被測定物31の色彩の補色の光を透過させることで、透過される光は吸収されやすくなり、その結果、透過される光42の光量が大きく減る。そのため被測定物31の色調の濃さの変化を、大きな光量の変化にできるので、モノクロカメラ41で計測しやすくなる。
【0025】
被測定物31が黄色の場合は、照明装置21から発光する光42は紫色が望ましい。紫色は黄色の補色であり、そのため被測定物31の色彩の濃さの変化をより正確に把握することができる。また紫色の光42の波長としては405nm、もしくはその近傍が望ましい。この波長の光42はLEDで容易に発光させることができる。あるいは、照明装置21から発光する光42は青色が望ましい。青色は黄色の補色に隣接する色であり、そのため被測定物31の色彩の濃さの変化をより正確に把握することができる。また青色の光42の波長としては457nm、もしくはその近傍が望ましい。この波長の光42はLEDで容易に発光させることができる。
【0026】
モノクロカメラ41で撮像された画像データは電気信号にて、演算装置51に送出されモニタリングされて数値化される。この数値にて被測定物31の色調を把握でき、必要に応じて良否判定の閾値を設定すれば、被測定物31の色調の良否判定ができる。なお上記の色調モニタ装置1は、1つのベースに固定されている装置として例示したが、それぞれの各要素の位置関係が固定されればよく、各要素は別のベースに固定されてもよい。
【0027】
図2は本開示の色調モニタ装置1を搭載した検査装置61である。被測定物31は左側から供給されて、右側に排出されていく。なお被測定物31の流れを基準として、左側を上流側、右側を下流側とする。
【0028】
被測定物31は、検査装置61の被測定物搬入部71から被測定物受入部62に搬入される。被測定物受入部62において、被測定物31は被測定物輸送手段72に搭載されて、検査装置61の内部を搬送される。次に被測定物31は色調モニタ装置1に移送され、色調をモニタリングされる。色調モニタ装置1において被測定物31の良否判定の閾値が設けられているため、検査装置61では被測定物31の不良品の排除が可能である。
【0029】
次に被測定物31は不良品排出ユニット63に搬送されて、被測定物31の不良品は不良品排出部74から検査装置61の機外へ排出される。被測定物31の良品は良品排出ユニット64に搬送されて、良品排出ユニット64にて被測定物輸送手段72から解放される。そして良品排出部73から下流の機器に被測定物31が受け渡される。
【実施例0030】
以下に、実施例を挙げて本開示の実施形態を更に具体的に説明する。
【0031】
<実施例>
本実施例において、LEDの多色光源となる照明装置21(マルチスペクトル照明CA-DRM5X キーエンス)を使用した。照明装置21から照射された光は上流側拡散板221を経て、集光レンズ(ドームアタッチメント CA-DRM5DA キーエンス)を経て、下流側拡散板222に入射した。上流側拡散板221と下流側拡散板222を含む拡散板22は、照明拡張ユニット(CA-DC60E キーエンス)を使用した。
下流側拡散板222から下流側に照射された照明光421は、被測定物31を透過し、透過光422はモノクロカメラ41(47万画素モノクロカメラ CA-H048MX キーエンス)に入射する。そしてモノクロカメラ41には、透過光422による被測定物31の画像が撮像される。モノクロカメラ41から演算装置51(コントローラ XG-X2000 キーエンス)にデータが送信されて、演算装置51にて被測定物31の色調の状況が観察される。色調の状況は数値化されており、必要に応じて閾値を設けると、被測定物31の良否判定ができる。
【0032】
本実施例では、被測定物31にPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル用プリフォームを使用した。以下、PETボトル用プリフォームをプリフォームと略すが、500mlボトル用の18gのプリフォームであった。プリフォームの色調のサンプルとして4種類が用意された。
準備したサンプルは4種類でサンプルS1~S4であり、その特徴を表1に示す。サンプルS1からS4に向かって黄変の強いサンプルであった。ここでは黄変と標記しているが、実際の色彩は赤味を含んでおり、橙色に近いプリフォームであった。
【0033】
【0034】
サンプルS1はバージン材料のPETレジンを、適切な射出成形条件にて成形したプリフォームであった。サンプルS2からS4は、リサイクルプリフォームであった。リサイクルプリフォームとは、射出成形されたプリフォームを回収して粉砕してペレット化した材料を、再びプリフォームに射出成形したものである。あるいは成形されたPETボトルを回収して粉砕してペレット化した材料を、再びプリフォームに射出成形したものである。それらのリサイクルの方法や、ペレット化の方法、射出成形条件等により、プリフォームの黄変の状況は異なる。またバージン材料を用いても、射出成形条件によっては黄変することがある。
【0035】
サンプルS1は良品であり、サンプルS2からS4は不良品である。この場合は良否判定の閾値がサンプルS1とサンプルS2の間に設定される。しかしながら用途によっては、サンプルS2は良品としてもよく、その際は良否判定の閾値がサンプルS2とサンプルS3の間に設定される。
【0036】
図3に、各サンプルを検査したデータに基づくグラフを示す。横軸はサンプルの種別を示し、縦軸は光の吸収率を示す。グラフ中に線が6本示されており、それぞれの線は、照明装置から発射される光の波長(AからF)のより、吸収率が異なることを示す。光の波長については、表2にて説明する。
【0037】
【0038】
横軸の数値について説明する。横軸の数値は吸光率である。基準となるサンプルS1の吸光率を0(ゼロ)として、黄変サンプルであるサンプルS2からS4との差を示す。吸光率が大きくなるとサンプルの色味が濃いことを示す。
【0039】
吸光率の定義について説明する。遮光されたときの数値を0とする。また被測定物がなく、下流側拡散板222から出射された照明光421が直接にモノクロカメラ41に入射された際の数値を100としている。
例えば
図3の横軸の数値の10は、サンプルS1より上記に定義した数値の10%ほど多く吸光している、すなわち色味が濃いことを示す。
【0040】
本実施例では、照明装置から照射される照明光421を、表2に記載の照明光A(紫色)と照明光B(青色)とを用いた。
図3より、紫色と青色は吸光率が大きいため、良品であるサンプルS1と不良品であるサンプルS2からS4との区別がしやすくなっていた。
【0041】
<比較例>
照明装置から照射される照明光421を、表2に記載の照明光C(白色)、照明光D(緑色)、照明光E(橙色)、照明光F(赤色)を用いた。白色光と緑色は、黄変サンプルの吸光率が大きくないため、サンプルS1とサンプルS2からS4との区別がしにくくなっていた。さらに橙色と赤色は、良否の区別において白色よりも劣っていた。
【0042】
このように、照明装置21に補色を用いた色調モニタ装置1では、色調の良品の数値と不良品の数値に大きな差を得ることができる。そのため、色調の微細な変化を捉えることができ、そのデータに基づき品質管理等が可能となる。
さらに本開示の色調モニタ装置を備えた検査装置を用いれば、より正確に被測定物31の色調の良否判定を行うことができ、不良品の排除ができる。