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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100243
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/12 20120101AFI20240719BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20240719BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240719BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240719BHJP
   B60W 10/184 20120101ALI20240719BHJP
   B60K 28/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60W50/12
B60W30/16
B60T7/12 F
B60W10/06
B60W10/184
B60K28/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004089
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 史哲
【テーマコード(参考)】
3D037
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D037FA24
3D037FB01
3D241BA02
3D241BA08
3D241BC01
3D241CC01
3D241CC08
3D241CD07
3D241CD11
3D241CD12
3D241DA14B
3D241DA14Z
3D241DA40B
3D241DA40Z
3D241DB02B
3D241DB02Z
3D241DB05B
3D241DB05Z
3D241DC02B
3D241DC02Z
3D246DA01
3D246EA02
3D246GB33
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA42A
3D246HA64A
3D246HA86A
3D246HB08A
3D246JB11
3D246JB33
(57)【要約】
【課題】追従制駆動力を用いたACCの作動中に加速操作が生じた場合であっても、当該加速操作に起因して自車が先行車に急接近する事態を未然に回避する。
【解決手段】車両制御装置11は、自車OC及び先行車LC間の現在車間距離Dnwに係る情報、及び運転者による加速操作に係る情報をそれぞれ取得する情報取得部51と、加速操作に係る情報に基づく要求加速度RAが所定の第1加速度閾値RAth1 を超えるか否かを判定する判定部53と、判定部53による判定の結果、要求加速度RAが第1加速度閾値RAth1 を超える旨の判定が下された場合、当該要求加速度RAに基づく要求駆動力が制限された制限駆動力を出力する出力部55と、を備える。ACC制御部57は、追従制駆動力及び制限駆動力のうち、自車OCの進行を抑制する方を実制駆動力として用いて制駆動制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車及び先行車間の現在車間距離に係る情報、及び運転者による加減速操作に係る情報をそれぞれ取得する情報取得部と、
前記加減速操作に基づく制駆動力を用いて制駆動制御を行う一方、予め設定される目標車速を超えない範囲で、予め設定される目標車間距離に前記現在車間距離を近づけるように、先行車に対して自車を追従させる追従制駆動力を用いて巡航制御を行う制駆動制御部と、を備えて構成される車両制御装置であって、
前記加減速操作のうち加速操作に基づく要求加速量が所定の第1加速量閾値を超えるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えた旨の判定が下された場合、当該要求加速量に基づく要求駆動力が制限された制限駆動力を出力する出力部と、をさらに備え、
前記制駆動制御部は、巡航制御の作動中に、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えた旨の判定が下された場合、前記追従制駆動力及び前記制限駆動力のうち、自車の進行をより抑制する方を実駆動力として用いて駆動制御を行う
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
巡航制御の作動中に、前記判定部による判定の結果、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えない旨の判定が下された場合、前記制駆動制御部は、前記追従制駆動力、及び前記要求加速量に基づく要求駆動力のうち、自車の進行をより抑制する方を実駆動力として用いて駆動制御を行う
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記制駆動制御部は、追従駆動力を用いて先行車に対して自車を追従させる加速シーンでの巡航制御の作動中に、前記判定部による判定の結果、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えた旨の判定が下された場合であって、当該追従駆動力と比べて前記制限駆動力の方が小さい場合、当該制限駆動力を実駆動力として用いて駆動制御を行う
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記制駆動制御部は、巡航制御の作動中に、前記判定部による判定の結果、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えた旨の判定が下された場合であって、前記制限駆動力と比べて前記追従制駆動力の方が小さい場合、当該追従制駆動力を用いて制駆動制御を行い、
前記判定部は、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えた後、前記第1加速量閾値と比べて低い第2加速量閾値を下回ったか否かをさらに判定し、
前記制駆動制御部による前記追従制駆動力を用いた制駆動制御の実行中に、前記判定部による判定の結果、前記要求加速量が前記第2加速量閾値を下回った旨の判定が下された場合、当該制駆動制御部は、当該追従制駆動力が自車を減速する制動力である場合、当該制動力を用いた制動制御を継続する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記制駆動制御部は、巡航制御の作動中に、前記判定部による判定の結果、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えた旨の判定が下された場合であって、前記制限駆動力と比べて前記追従制駆動力の方が小さい場合、当該追従制駆動力を用いて制駆動制御を行い、
前記判定部は、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えた後、前記第1加速量閾値と比べて低い第2加速量閾値を下回ったか否かをさらに判定し、
前記制駆動制御部による当該追従制駆動力を用いた制駆動制御の実行中に、前記判定部による判定の結果、前記要求加速量が前記第2加速量閾値を下回った旨の判定が下された場合、当該制駆動制御部は、当該追従制駆動力が自車を加速する駆動力である場合、当該駆動力を用いた駆動制御をキャンセルする
ことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の安全性を高める機能を有する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のいわゆる自動運転を具現化するためのアプローチのひとつとして、特許文献1には、適応巡航制御(ACC)と呼ばれる技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に係る車両制御装置は、運転者の制動操作に関わらず自動的に制動力を発生させる自動制動制御を行う。自動制動制御中にアクセルペダルの操作量が所定量を超えると、自動制動制御を解除させるための解除信号を出力する。ただし、自動制動制御中に運転者が誤操作によりアクセルペダルを所定量を超えて踏み込んでしまった場合であっても、アクセルペダルによる加速操作が誤操作であると判定された場合、解除信号を出力せずに、自動制動制御を継続させる。
【0004】
特許文献1に係る車両制御装置によれば、運転者の意図に反して自動制動制御の作動が解除されてしまうことを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-111263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る車両制御装置では、加速操作の誤操作を判定する際に適用されるアルゴリズムの設定内容によっては、加速操作をトリガとして自動制動制御(ACC:巡航制御)の作動が解除されるおそれがある。仮に、予め設定される目標車速の範囲内で先行車に対して自車を追従させるための追従制駆動力を用いた巡航制御の作動中に、加速操作をトリガとして巡航制御の作動が解除されると、当該加速操作に起因して自車が先行車に急接近する懸念が生じる。
【0007】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、追従制駆動力を用いた巡航制御の作動中に加速操作が生じた場合であっても、当該加速操作に起因して自車が先行車に急接近する事態を未然に回避可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、車両交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、自車及び先行車間の現在車間距離に係る情報、及び運転者による加減速操作に係る情報をそれぞれ取得する情報取得部と、前記加減速操作に基づく制駆動力を用いて制駆動制御を行う一方、予め設定される目標車速を超えない範囲で、予め設定される目標車間距離に前記現在車間距離を近づけるように、先行車に対して自車を追従させる追従制駆動力を用いて巡航制御を行う制駆動制御部と、を備えて構成される車両制御装置であって、前記加減速操作のうち加速操作に基づく要求加速量が所定の第1加速量閾値を超えるか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定の結果、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えた旨の判定が下された場合、当該要求加速量に基づく要求駆動力が制限された制限駆動力を出力する出力部と、をさらに備え、
前記制駆動制御部は、巡航制御の作動中に、前記要求加速量が前記第1加速量閾値を超えた旨の判定が下された場合、前記追従制駆動力及び前記制限駆動力のうち、自車の進行をより抑制する方を実駆動力として用いて駆動制御を行うことを最も主要な特徴とする。
【0010】
本発明に係る車両制御装置によれば、追従制駆動力を用いた巡航制御の作動中に加速操作が生じた場合であっても、当該加速操作に起因して自車が先行車に急接近する事態を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置の概要を表すブロック構成図である。
図2A】ステアリングホィールに設けられる適応巡航制御(ACC)に係る操作スイッチの外観図である。
図2B】ACCに係る操作スイッチを拡大して表す外観図である。
図3】ACC作動中の実施形態に係る車両制御装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図4A】本発明の第1実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
図4B】本発明の第1実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
図5A】本発明の第2実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
図5B】本発明の第2実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
図6A】本発明の第3実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
図6B】本発明の第3実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
図7A】本発明の第4実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
図7B】本発明の第4実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
図8A】本発明の第5実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
図8B】本発明の第5実施例に係る車両制御装置の動作説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る車両制御装置について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す図において、共通の機能を有する部材間、又は、相互に対応する機能を有する部材間には、原則として共通の参照符号を付するものとする。また、説明の便宜のため、部材のサイズ及び形状は、変形又は誇張して模式的に表す場合がある。
【0013】
〔本発明の実施形態に係る車両制御装置11の要旨〕
はじめに、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の要旨について説明する。
本発明の実施形態に係る車両制御装置11は、自車OC及び先行車LC(例えば図4A図4B等を参照)間の現在車間距離Dnwに係る情報、及び運転者による加減速操作に係る情報をそれぞれ取得する情報取得部51(図1参照)と、加減速操作に基づく制駆動力を用いて制駆動制御を行う一方、予め設定される目標車間距離Dtgに現在車間距離Dnwを近づけるように、予め設定される目標車速Vtgの範囲内で先行車LCに対して自車OCを追従させるための追従制駆動力を用いて巡航制御を行うACC制御部(制駆動制御部)57と、を備えて構成されている。
車両制御装置11は、加減速操作のうち加速操作に係る情報に基づく要求加速度RA(要求加速量)が所定の第1加速度閾値RAth1 (第1加速量閾値)を超えるか否かを判定する判定部53と、判定部53による判定の結果、要求加速度RA(要求加速量)が第1加速度閾値RAth1 (第1加速量閾値)を超える旨の判定が下された場合、当該要求加速度RAに基づく要求駆動力(の一部)が制限された制限駆動力を出力する出力部55と、をさらに備える。ACC制御部57は、巡航制御(ACC)の作動中に、要求加速度RA(要求加速量)が第1加速度閾値RAth1 (第1加速量閾値)を超えた旨の判定が下された場合、追従制駆動力及び制限駆動力のうち、自車OCの進行をより抑制する方を実制駆動力として用いて制駆動制御を行う。
これにより、追従制駆動力を用いたACC(巡航制御)の作動中に加速操作が生じた場合であっても、当該加速操作に起因して自車OCが先行車LCに急接近する事態を未然に回避することができる。
以下、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の詳細について、順次説明する。
【0014】
〔本発明の実施形態に係る車両制御装置11の概略構成〕
次に、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の概略構成について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の概略構成図である。
【0015】
車両制御装置11は、図1に示すように、入力系要素13及び出力系要素15の間を、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信媒体17を介して相互にデータ通信可能に接続して構成されている。
【0016】
入力系要素13は、図1に示すように、レーダ21、カメラ23、車速センサ25、車輪速センサ27、ブレーキペダルセンサ29、アクセルペダルセンサ31、傾斜角センサ33、制動液圧センサ35、及び、HMI(Human-Machine Interface)37を含んで構成されている。
【0017】
一方、出力系要素15は、図1に示すように、ACC-ECU41、BRK-ECU43、ENG-ECU45、及び、MID(Multi Information Display:マルチインフォメーションディスプレイ)-ECU47を含んで構成されている。
【0018】
レーダ21は、自車OCの前方を走行する先行車LCを含む物標にレーダ波を照射する一方、物標で反射されたレーダ波を受信することにより、物標までの距離や物標の方位を含む物標の分布情報を取得する機能を有する。ただし、物標の分布情報を、レーダ21に代えて又は加えて、カメラ23により撮像された自車OCの進行方向画像情報に基づいて取得しても構わない。
【0019】
レーダ21としては、例えば、レーザレーダ、マイクロ波レーダ、ミリ波レーダ、超音波レーダなどを適宜用いることができる。レーダ21は、自車OCのフロントグリル裏側部などに設けられる。レーダ21による物標の分布情報は、通信媒体17を介してACC-ECU41へ送られる。
【0020】
カメラ23は、自車OC前方の斜め下方に傾斜した光軸を有し、自車OCの進行方向の画像を撮像する機能を有する。カメラ23としては、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラやCCD(Charge Coupled Device)カメラなどを適宜用いることができる。カメラ23は、自車OCのウインドシールド(不図示)中央上部などに設けられる。
カメラ23により撮像された自車OCの進行方向画像情報は、例えばNTSC(National Television Standards Committee)などのインターレース方式により生成される画像信号として、通信媒体17を介してACC-ECU41へ送られる。
【0021】
車速センサ25は、車両の走行速度(車速)Vを検出する機能を有する。車速センサ25で検出された現在車速Vnwに係る情報は、通信媒体17を介してBRK-ECU43等へ送られる。
【0022】
車輪速センサ27は、自車OCに設けられた各車輪(不図示)毎の回転速度(車輪速)をそれぞれ検出する機能を有する。車輪速センサ27でそれぞれ検出される各車輪毎の車輪速に係る情報は、通信媒体17を介してBRK-ECU43等へ送られる。
【0023】
ブレーキペダルセンサ29は、運転者によるブレーキペダル(不図示)の操作量及び踏込みトルクを検出する機能を有する。ブレーキペダルセンサ29で検出されたブレーキペダルの操作量及び踏込みトルクに係る制動操作情報は、通信媒体17を介してBRK-ECU43等へ送られる。
【0024】
アクセルペダルセンサ31は、運転者によるアクセルペダル(不図示)の操作量を検出する機能を有する。アクセルペダルセンサ31で検出されたアクセルペダルの操作量に係る加減速操作の時系列情報は、通信媒体17を介してENG-ECU45等へ送られる。
【0025】
傾斜角センサ33は、自車OCの傾斜角に係る情報を取得する機能を有する。傾斜角センサ33で取得された自車OCの傾斜角に係る情報は、通信媒体17を介してACC-ECU41等へ送られる。
【0026】
制動液圧センサ35は、制動液圧系統のうちVSA装置(車両挙動安定化装置;不図示:ただし、「VSA」は本願出願人の登録商標)の給液経路における制動液圧を検出する機能を有する。制動液圧センサ35で検出されたVSA装置の給液経路における液圧情報は、通信媒体17を介してBRK-ECU43等へ送られる。
【0027】
HMI(Human-Machine Interface)37は、適応巡航制御(ACC)の操作スイッチ(以下、「ACC操作スイッチ」と呼ぶ。)38を含む。ACC操作スイッチ38は、ACCに係る設定情報を操作入力する際に用いられる。ACC操作スイッチ38によって操作入力されたACCに係る設定情報は、通信媒体17を介してACC-ECU41等へ送られる。
【0028】
ここで、ACC操作スイッチ38の周辺構成について、図2A図2Bを参照して説明する。図2Aは、ステアリングホィール39に設けられる適応巡航制御(ACC)に係るACC操作スイッチ38の外観図である。図2Bは、ACC操作スイッチ38を拡大して表す外観図である。
【0029】
ACC操作スイッチ38は、図2Aに示すように、例えばステアリングホィール39に設けられる。運転者の進行方向前方への視線の延長線上近傍には、車速Vやシフト位置のほか、ACCに係る設定情報(ACC_STATUS49;図1参照)を表示するためのマルチインフォメーションディスプレイ(MID)47が設けられている。
【0030】
ここで、適応巡航制御(ACC)について説明する。ACCとは、予め設定される目標車速Vtgを超えない範囲で、予め設定される目標車間距離Dtgに現在車間距離Dnwを近づけるように、先行車LCに対して自車OCを追従させる機能である。自車OCの走行車線前方に先行車LCが存しないケースでは、ACC制御の働きによって、目標車速Vtgに現在車速Vnwを近づけるように定速走行が行われる。
【0031】
ACCに係る設定情報を操作入力するために、ACC操作スイッチ38は、図2Bに示すように、メイン(MAIN)スイッチ91、及びサークルメニュースイッチ93を備える。メインスイッチ91は、ACCを起動する際に操作されるスイッチである。また、サークルメニュースイッチ93は、ACCに係る設定情報の操作入力を行う際に操作されるスイッチである。
【0032】
サークルメニュースイッチ93は、図2Bに示すように、セット(-SET)スイッチ95、リジューム(RES+)スイッチ97、キャンセル(CANCEL)スイッチ98、及びディスタンススイッチ99を備える。
【0033】
セット(-SET)スイッチ95は、ACCに係る設定情報のうち、ACCのセット、及び目標車速を下降調整する際に操作されるスイッチである。
【0034】
リジューム(RES+)スイッチ97は、ACCに係る設定情報のうち、ACCの再セット、及び目標車速を上昇調整する際に操作されるスイッチである。
【0035】
キャンセル(CANCEL)スイッチ98は、ACCの作動を解除する際に操作されるスイッチである。なお、メインスイッチ91を押下操作することによっても、ACCの作動を解除することができる。
【0036】
ディスタンススイッチ99は、自車OC及び先行車LC間の目標車間距離Dtgを設定する際に操作されるスイッチである。目標車間距離Dtgの設定情報は、ディスタンススイッチ99を押下操作する毎に、例えば、(最長→長→中→短)の4段階で順次切り換えられる。なお、目標車間距離Dtgの設定値は、自車OCの現在車速Vnwの高低に応じて、現在車速Vnwが低くなるほど目標車間距離Dtgの設定値が短くなるように変動する構成を採用している。
【0037】
ここで、図1に戻って車両制御装置11の説明を続ける。
出力系要素15に属するACC-ECU41は、図1に示すように、情報取得部51、判定部53、出力部55、及びACC制御部57を備える。
ACC-ECU41は、予め設定された目標車速Vtgに基づいて自車OCを定速走行させる定速走行制御、及び、予め設定される目標車間距離Dtgに現在車間距離Dnwを近づけるように、先行車LCに対して自車OCを追従させる追従走行制御を含む適応巡航制御(ACC)を行う。
【0038】
詳しく述べると、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存しないケースでは、ACC-ECU41は、目標車速Vtgに現在車速Vnwを近づけるように、定速制駆動力を用いてACCに係る制駆動制御(巡航制御)を行う。
一方、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存するケースでは、ACC-ECU41は、現在車速Vnwが目標車速Vtgを超えない範囲で、目標車間距離Dtgに現在車間距離Dnwを近づけるように、運転者による加減速操作(アクセルペダルやブレーキペダルの操作)を要することなしに、追従制駆動力を用いてACCに係る制駆動制御(巡航制御)を行う。
【0039】
ただし、ACC-ECU41は、ACCの作動中に、目標車間距離Dtg及び現在車間距離Dnwに基づく追従制御モードから、現在車速Vnw及び目標車速Vtgに基づく定速制御モードへと遷移するような走行シーンでは、ACCの作動を解除する。これについて、詳しくは後記する。
ここで、ACCの作動中とは、目標車速Vtgに現在車速Vnwを近づける定速制御、及び、現在車速Vnwが目標車速Vtgを超えない範囲で目標車間距離Dtgに現在車間距離Dnwを近づける追従制御を含む適応巡航制御を実行している状態をいう。
【0040】
ACC-ECU41は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ACC-ECU41が有する、各種情報の取得機能、次述の判定機能、次述の出力機能、及び、ACC制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0041】
情報取得部51は、レーダ21による物標の分布情報、カメラ23により撮像された自車OCの進行方向画像情報、車速センサ25で検出された現在車速Vnwに係る情報、傾斜角センサ33で検出された傾斜角に係る情報、制動液圧センサ35で検出された制動液圧に係る情報、及びHMI(Human-Machine Interface)37に属するACC操作スイッチ38を介して入力されたACCに係る設定情報を含む各種情報をそれぞれ取得する機能を有する。
【0042】
判定部53は、情報取得部51により取得した加速操作に係る情報に基づく要求加速度RAが所定の第1加速度閾値RAth1 を超えたか否かを判定する機能を有する。第1加速度閾値RAth1 は、運転者によるアクセルペダルの操作(加速操作)に関し、急加速操作が行われたか否かを判定する際の基準値である。具体的には、例えば、運転者によるアクセルペダルの操作(加速操作)に関し、加速操作量が所定の操作量閾値を超えるか、アクセルペダルの踏込み操作速度が所定の操作速度閾値を超えた場合に、要求加速度RAが第1加速度閾値RAth1 を超えた旨の判定を下す。
【0043】
出力部55は、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存しないケースでは、目標車速Vtg及び現在車速Vnwに基づいて、目標車速Vtgに現在車速Vnwを近づけるための定速制駆動力を出力する。
一方、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存するケースでは、出力部55は、目標車間距離Dtg及び現在車間距離Dnwに基づいて、現在車速Vnwが目標車速Vtgを超えない範囲で、目標車間距離Dtgに現在車間距離Dnwを近づけるための追従制駆動力を出力する。
【0044】
そして、出力部55は、判定部53による判定の結果、要求加速度RAが第1加速度閾値RAth1 を超えた(急加速操作が行われた)旨の判定が下された場合、要求加速度RAに基づく要求駆動力(の一部)が制限された制限駆動力を出力する機能を有する。具体的には、急加速操作が行われた旨の判定が下された場合、出力部55は、要求加速度RAに基づく要求駆動力として、例えば、自車OCを徐行速度で走行させる程度に制限した制限駆動力を出力する。
【0045】
ACC制御部57は、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存しないケースでは、出力部55により出力された、目標車速Vtgに現在車速Vnwを近づけるための定速制駆動力を実制駆動力として用いて制駆動制御を行う。
一方、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存するケースでは、ACC制御部57は、出力部55により出力された、現在車速Vnwが目標車速Vtgを超えない範囲で、目標車間距離Dtgに現在車間距離Dnwを近づけるための追従制駆動力を実制駆動力として用いて制駆動制御を行う。
【0046】
そして、ACC制御部57は、ACC(巡航制御)の作動中に、要求加速度RAが第1加速度閾値RAth1 を超えた(急加速操作が行われた)旨の判定が下された場合、前記追従制駆動力及び前記制限駆動力のうち、自車OCの進行を抑制する方を実制駆動力として用いて制駆動制御を行う。
ACC制御部57は、本発明の「制駆動制御部」の一部に相当する。
【0047】
BRK-ECU43は、ACC-ECU41と同様に、出力系要素15に属する。BRK-ECU43は、図1に示すように、情報取得部61及び制動制御部63を備える。
【0048】
BRK-ECU43は、運転者の制動操作によってマスタシリンダ(不図示)で発生した制動液圧(一次液圧)の高低に応じて、制動モータ67の駆動によってモータシリンダ装置(例えば、特開2015-110378号公報参照:不図示)を作動させることにより、自車OCに制動力を付与するための制動液圧(二次液圧)を発生させる機能を有する。
【0049】
また、BRK-ECU43は、例えば、ACC制御部57から送られてきた減速制御指令を受けて、ポンプモータ69を用いて加圧ポンプ(不図示)を駆動することにより、四輪の制動力を各車輪の目標液圧に応じた制動力に制御する機能を有する。
【0050】
BRK-ECU43は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、BRK-ECU43が有する、各種情報の取得機能、制動操作又はACCの作動に基づく制動制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0051】
情報取得部61は、車速センサ25で検出された現在車速Vnwに係る情報、車輪速センサ27で検出された各車輪毎の車輪速に係る情報、ブレーキペダルセンサ29で検出されたブレーキペダルの操作量及び踏込みトルクに係る制動操作(減速操作)情報、制動液圧センサ35で検出されたVSA装置の給液経路における液圧情報、ACC-ECU41のACC制御部57から送られてきた制動制御情報を含む各種情報を取得する機能を有する。
【0052】
制動制御部63は、ブレーキペダルセンサ29を介して取得した運転者の制動操作に係る情報、又は、ACC-ECU41のACC制御部57から送られてきた制動制御情報に基づいて、制動モータ67の駆動によってモータシリンダ装置を作動させることにより、自車OCの制動制御を行うと共に、必要に応じてポンプモータ69を用いて加圧ポンプを駆動することにより、四輪の制動力を各車輪毎の目標液圧に応じた制動力に制御する。
制動制御部63は、本発明の「制駆動制御部」の一部に相当する。
【0053】
ENG-ECU45は、ACC-ECU41、BRK-ECU43と同様に、出力系要素15に属する。ENG-ECU45は、図1に示すように、情報取得部71、及び駆動制御部73を備える。
【0054】
ENG-ECU45は、アクセルペダルセンサ31を介して取得した運転者の加速操作(アクセルペダルの踏込量)に係る情報、又は、ACC-ECU41のACC制御部57から送られてきた駆動制御情報に基づいて、内燃機関エンジン75の駆動制御を行う機能を有する。
【0055】
詳しく述べると、ENG-ECU45は、内燃機関エンジン75の吸気量を調整するスロットルバルブ(不図示)、燃料ガスを噴射するインジェクタ(不図示)、燃料の着火を行う点火プラグ(不図示)等を制御することにより、内燃機関エンジン75の駆動制御を行う。
【0056】
ENG-ECU45は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ENG-ECU45が有する、各種情報の取得機能、内燃機関エンジン75の駆動制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0057】
情報取得部71は、アクセルペダルセンサ31で検出されたアクセルペダルの操作量に係る加減速操作情報、ACC-ECU41のACC制御部57から送られてきた駆動制御情報を含む各種情報を取得する機能を有する。
【0058】
駆動制御部73は、アクセルペダルセンサ31を介して取得した運転者の加速操作(アクセルペダルの踏込量)に係る情報、又は、ACC-ECU41のACC制御部57から送られてきた駆動制御情報に基づいて、内燃機関エンジン75の駆動制御を行う。
駆動制御部73は、本発明の「制駆動制御部」の一部に相当する。
【0059】
〔本明細書において用いる用語の定義〕
ここで、車両制御装置11を説明する際に本明細書において用いる用語を定義する。
「制駆動制御」とは、自車OCに係る制動制御及び駆動制御の両者を含む概念である。
「制動制御」とは、進行方向とは反対側の方向に自車OCを制御することを意味する。「制動制御」と「減速制御」とは同義である。「制動力」とは、進行方向とは反対側に向かって自車OCに作用する力である。
「駆動制御」とは、進行方向と同じ方向に自車OCを制御することを意味する。「駆動制御」と「加速制御」とは同義である。「駆動力」とは、進行方向と同じ方向に向かって自車OCに作用する力である。
「制駆動制御部」とは、ACC制御部57、制動制御部63、及び駆動制御部73を包括して含む概念である。「制駆動制御部」は、ACC制御部57、制動制御部63、及び駆動制御部73の三者で連携して本発明に係る動作を行う。
【0060】
「追従制駆動力」とは、先行車LCに追従する目的で自車OCに作用する、追従制動力及び追従駆動力の両者を含む概念である。
「追従制動力」とは、先行車LCに追従する目的で自車OCに作用する、進行方向とは反対側に自車OCを向かわせる力である。
「追従駆動力」とは、先行車LCに追従する目的で自車OCに作用する、進行方向と同じ方向に自車OCを向かわせる力である。
「実制駆動力」とは、実際に自車OCに作用する制動力及び駆動力の両者を含む概念である。
【0061】
「加速操作に基づく要求加速量」とは、要求加速度それ自体、要求加速度の時間積分値を包括的に含む概念である。
「第1加速量閾値」とは、例えば、所定の要求加速度の値、要求加速度の時間積分値等であって、自車の急加速操作が行われたか否かを判定する際に用いられる指標である。
「第2加速量閾値」とは、例えば、所定の要求加速度の値、要求加速度の時間積分値等であって、自車が徐行速度程度で走行しているか否かを判定する際に用いられる指標である。
【0062】
〔ACC(巡航制御)作動中の実施形態に係る車両制御装置11の動作〕
次に、ACC(巡航制御)作動中の実施形態に係る車両制御装置11の動作について、図3を参照して説明する。図3は、ACC(巡航制御)作動中の実施形態に係る車両制御装置11の動作説明に供するフローチャート図である。
【0063】
図3に示すステップS11において、ACC-ECU41の情報取得部51は、ACCの作動中において、レーダ21による物標の分布情報、カメラ23により撮像された自車OCの進行方向画像情報、車速センサ25で検出された現在車速Vnwに係る情報、傾斜角センサ33で検出された傾斜角に係る情報、制動液圧センサ35で検出された制動液圧に係る情報、及びHMI37に属するACC操作スイッチ38を介して入力されたACCに係る設定情報を含む各種情報をそれぞれ取得する。
さらに、ACC-ECU41の情報取得部51は、先行車との現在車間距離Dnwの情報を、レーダ21を介して取得すると共に、目標車間距離Dtgの情報を取得する。また、情報取得部51は、目標車間距離Dtg及び現在車間距離Dnwの差ΔDに係る情報を取得する。
そして、ACC-ECU41の情報取得部51は、ブレーキペダルセンサ29を介して取得した運転者の制動操作(減速操作)に係る情報、及び、アクセルペダルセンサ31で検出されたアクセルペダルの操作量に係る加減速操作情報をそれぞれ取得する。
【0064】
ステップS12において、ACC-ECU41の判定部53は、情報取得部51により取得したアクセルペダルの操作量に係る加減速操作情報に基づいて、加速操作があったか否かを判定する。
【0065】
ステップS12の判定の結果、加速操作がない旨の判定が下された場合(ステップS12のNo)、ACC-ECU41は、処理の流れをステップS11に戻し、以降の処理を行わせる。
一方、ステップS12の判定の結果、加速操作があった旨の判定が下された場合(ステップS12のYes)、ACC-ECU41は、処理の流れを次のステップS13へと進ませる。
【0066】
ステップS13において、ACC-ECU41の判定部53は、情報取得部51により取得した加速操作に係る情報に基づく要求加速度RAが第1加速度閾値RAth1 を超えたか否か(急加速操作が行われたか否か)を判定する。
【0067】
ステップS13の判定の結果、要求加速度RAが第1加速度閾値RAth1 を超えた(急加速操作が行われた)旨の判定が下された場合(ステップS13のYes)、ACC-ECU41は、処理の流れを次のステップS14へ進ませる。
一方、ステップS13の判定の結果、要求加速度RAが第1加速度閾値RAth1 を超えていない(急加速操作が行われていない)旨の判定が下された場合(ステップS13のNo)、ACC-ECU41は、処理の流れを次のステップS15へとジャンプさせる。
【0068】
ステップS14において、ACC-ECU41の出力部55は、加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力について、該要求駆動力(の一部)が制限された制限駆動力(例えば、自車OCを徐行速度で走行させる程度に制限した駆動力)を出力する。
【0069】
ステップS15において、ACC-ECU41の出力部55は、加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力(加速操作に応じた駆動力)を出力する。
【0070】
ステップS16において、ACC-ECU41のACC制御部57は、先行車LCに追従する目的で自車OCに作用する追従制駆動力、及び、ステップS14で出力された制限駆動力のうち、自車OCの進行を抑制する方(両者共に自車OCの進行を促進する駆動力である場合、小さい方;以下同じ)を実制駆動力として設定する。
【0071】
ステップS17において、ACC-ECU41のACC制御部57は、先行車LCに追従する目的で自車OCに作用する追従制駆動力、及び、ステップS15で出力された要求駆動力のうち、自車OCの進行を抑制する方を実制駆動力として設定する。
【0072】
ステップS18において、ACC-ECU41のACC制御部57は、ステップS16又はS17で設定された実制駆動力を用いて制駆動制御を行う。
その後、ACC-ECU41は、一連の処理の流れを終了させる。
【0073】
〔ACC作動中の第1実施例に係る車両制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中の第1実施例に係る車両制御装置11の動作について、図4A図4Bを参照して説明する。図4A図4Bは、ACC作動中の第1実施例に係る車両制御装置11の動作説明に供する図である。
【0074】
図4A図4Bに示す第1実施例では、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存するケースにおいて、ACCに基づく減速制御中に第1加速度閾値RAth1 を超える加速操作が自車OCで生じた場合(図4A参照)の、車両制御装置11の動作推移を表している。ACCに基づく減速制御中の自車OCには、図4Aに示すように、進行方向に対して反対側に向かう追従制動力が作用している。
【0075】
第1実施例では、ACCに基づく追従制動力と、第1加速度閾値RAth1 を超える加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力(の一部)が制限された制限駆動力とのうち、自車OCの進行を抑制する方の力としてACCに基づく追従制動力が、実制駆動力に設定されている。
要するに、第1実施例では、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じたが、この加速操作は自車OCの制駆動制御には関与することなく、ACCに基づく追従制動力を用いた制駆動制御が続行されている。
【0076】
第1実施例に係る車両制御装置11によれば、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じたが、この加速操作は自車OCの制駆動制御には関与することなく、ACCに基づく追従制動力を用いた制駆動制御が続行されるため、追従制駆動力を用いたACCの作動中に急な加速操作が生じた場合であっても、当該加速操作に起因して自車OCが先行車LCに急接近する事態を未然に回避することができる。
また、車両交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与可能な車両制御装置を提供することができる。
なお、第1実施例は、本発明の請求項1に対応している。
【0077】
〔ACC作動中の第2実施例に係る車両制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中の第2実施例に係る車両制御装置11の動作について、図5A図5Bを参照して説明する。図5A図5Bは、ACC作動中の第2実施例に係る車両制御装置11の動作説明に供する図である。
【0078】
図5A図5Bに示す第2実施例では、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存するケースにおいて、ACCに基づく減速制御中に第1加速度閾値RAth1 を超えない加速操作が自車OCで生じた場合(図5A参照)の、車両制御装置11の動作推移を表している。ACCに基づく減速制御中の自車OCには、図5Aに示すように、第1実施例と同様の、進行方向に対して反対側に向かう追従制動力が作用している。
【0079】
第2実施例では、第1実施例と同様に、ACCに基づく追従制動力と、第1加速度閾値RAth1 を超えない加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力とのうち、自車OCの進行を抑制する方の力としてACCに基づく追従制動力が、実制駆動力に設定されている。
要するに、第2実施例では、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超えない緩やかな加速操作が生じたが、この加速操作は自車OCの制駆動制御には関与することなく、ACCに基づく追従制動力を用いた制駆動制御が続行されている。
【0080】
第2実施例に係る車両制御装置11によれば、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超えない緩やかな加速操作が生じたが、この加速操作は自車OCの制駆動制御には関与することなく、ACCに基づく追従制動力を用いた制駆動制御が続行されるため、追従制駆動力を用いたACCの作動中に緩やかな加速操作が生じた場合であっても、当該加速操作に起因して自車OCが先行車LCに急接近する事態を未然に回避することができる。
なお、第2実施例は、本発明の請求項2に対応している。
【0081】
〔ACC作動中の第3実施例に係る車両制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中の第3実施例に係る車両制御装置11の動作について、図6A図6Bを参照して説明する。図6A図6Bは、ACC作動中の第3実施例に係る車両制御装置11の動作説明に供する図である。
【0082】
図6A図6Bに示す第3実施例では、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存するケースにおいて、ACCに基づく加速制御中に第1加速度閾値RAth1 を超える加速操作が自車OCで生じた場合(図6A参照)の、車両制御装置11の動作推移を表している。ACCに基づく加速制御中の自車OCには、図6Aに示すように、進行方向と同じ側に向かう追従駆動力が作用している。
【0083】
第3実施例では、ACCに基づく追従駆動力と、第1加速度閾値RAth1 を超える加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力(の一部)が制限された制限駆動力とのうち、自車OCの進行を抑制する方の力としてACCに基づく追従駆動力が、実制駆動力に設定されている。
要するに、第3実施例では、ACCに基づく加速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じたが、この加速操作は自車OCの制駆動制御には関与することなく、ACCに基づく追従駆動力を用いた制駆動制御が続行されている。
【0084】
第3実施例に係る車両制御装置11によれば、ACCに基づく加速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じたが、この加速操作は自車OCの制駆動制御には関与することなく、ACCに基づく追従駆動力を用いた制駆動制御が続行されるため、追従制駆動力を用いたACCの作動中に急な加速操作が生じた場合であっても、当該加速操作に起因して自車OCが先行車LCに急接近する事態を未然に回避することができる。
なお、第3実施例は、本発明の請求項1に係る技術的範囲に含まれる。
【0085】
ところで、第3実施例の変形例では、ACCに基づく追従駆動力と、第1加速度閾値RAth1 を超える加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力(の一部)が制限された制限駆動力とのうち、自車OCの進行を抑制する方の力として、追従制駆動力に代えて、制限駆動力を実制駆動力に設定する構成を採用しても構わない。
要するに、第3実施例の変形例では、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じたが、この加速操作は自車OCの制駆動制御には直接的に関与することなく、追従制駆動力に代えて、実制駆動力として制限駆動力が適用される。
【0086】
第3実施例の変形例に係る車両制御装置11によれば、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じたが、この加速操作は自車OCの制駆動制御には直接的に関与することなく、追従制駆動力に代えて、実制駆動力として制限駆動力が適用されるため、追従制駆動力を用いたACCの作動中に急な加速操作が生じた場合であっても、当該加速操作に起因して自車OCが先行車LCに急接近する事態を未然に回避することができる。
なお、第3実施例は、本発明の請求項3に対応している。
【0087】
〔ACC作動中の第4実施例に係る車両制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中の第4実施例に係る車両制御装置11の動作について、図7A図7Bを参照して説明する。図7A図7Bは、ACC作動中の第4実施例に係る車両制御装置11の動作説明に供する図である。
【0088】
図7A図7Bに示す第4実施例では、自車OCの走行車線前方に先行車LCが存するケースにおいて、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える加速操作が自車OCで生じた後、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作(RAth1 >RAth2 )が自車OCで生じた場合(図7A参照)の、車両制御装置11の動作推移を表している。ACCに基づく減速制御中の自車OCには、図7Aに示すように、進行方向に対して反対側に向かう追従制動力が作用している。
【0089】
第4実施例では、ACCに基づく追従制動力と、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力とのうち、自車OCの進行を抑制する方の力としてACCに基づく追従制動力が、実制駆動力に設定されている。
要するに、第4実施例では、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じた後、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作(RAth1 >RAth2 :第2加速度閾値RAth2は、例えば、徐行速度を具現化する程度の大きさの駆動力に設定される。)が自車OCで生じたが、この加速操作は自車OCの制駆動制御には関与することなく、ACCに基づく追従制動力を用いた制駆動制御が続行されている。
【0090】
第4実施例に係る車両制御装置11によれば、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じた後、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作(RAth1 >RAth2 )が自車OCで生じたが、この緩やかな加速操作は自車OCの制駆動制御には関与することなく、ACCに基づく追従制動力を用いた制駆動制御が続行されるため、追従制駆動力を用いたACCの作動中に緩やかな加速操作が生じた場合であっても、当該加速操作に起因して自車OCが先行車LCに急接近する事態を未然に回避することができる。
なお、第4実施例は、本発明の請求項4に対応している。
【0091】
〔ACC作動中の第5実施例に係る車両制御装置11の動作〕
次に、ACC作動中の第5実施例に係る車両制御装置11の動作について、図8A図8Bを参照して説明する。図8A図8Bは、ACC作動中の第5実施例に係る車両制御装置11の動作説明に供する図である。
【0092】
図8A図8Bに示す第5実施例では、自車OCの走行車線前方に先行車LCが一時的に存し、その後、先行車LCが急加速して自車OCから離れてゆくケースにおいて、ACCに基づく加速制御中に第1加速度閾値RAth1 を超える加速操作が自車OCで生じた後、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作(RAth1 >RAth2 )が自車OCで生じた場合(図8A参照)の、車両制御装置11の動作推移を表している。
【0093】
自車OCの走行車線前方に先行車LCが存している図8Aに示す時点では、ACCに基づく加速制御中の自車OCには、進行方向と同じ側に向かう追従駆動力が作用している。
その後、先行車LCが急加速して自車OCから離れてゆくと(図8B参照)、急加速して自車OCから離れてゆく先行車LCに追従した場合、運転者が加速操作を緩めたのに自車OCが加速するのは運転者に違和感を抱かせるとの観点から、ACCに基づく追従駆動力を用いた制駆動制御はキャンセルされている(ACCの作動停止)。
【0094】
要するに、第5実施例では、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じた後、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作(RAth1 >RAth2 )が自車OCで生じたケースにおいて、本来であれば、ACCに基づく追従駆動力と、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力とのうち、自車OCの進行を抑制する方の力としてACCに基づく追従駆動力が、実制駆動力に設定されるはずであった。ところが、急加速して自車OCから離れてゆく先行車LCに追従した場合、運転者が加速操作を緩めたのに自車OCが加速するのは運転者に違和感を抱かせるとの観点から、ACCに基づく追従駆動力を用いた制駆動制御はキャンセルされている。その結果、かかるケースでは、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力を用いた制駆動制御が実行される。
【0095】
第5実施例に係る車両制御装置11によれば、ACCに基づく減速制御中に、第1加速度閾値RAth1 を超える急な加速操作が生じた後、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作(RAth1 >RAth2 )が自車OCで生じたケースにおいて、ACCに基づく追従駆動力を用いた制駆動制御はキャンセルされて、第2加速度閾値RAth2 を下回る加速操作に従う要求加速度RAに基づく要求駆動力を用いた制駆動制御が実行されるため、当該加速操作に起因して自車OCが先行車LCに急接近する事態を未然に回避すると共に、加速操作を緩めたのに意図に反して加速してゆくとの違和感を運転者に抱かせることもない。
【0096】
なお、第5実施例に係る車両制御装置11は、目標車間距離Dtg及び現在車間距離Dnwに基づく追従制御モードから、現在車速Vnw及び目標車速Vtgに基づく定速制御モードへと、ACCに係る制御モードが遷移するケースにおいても、好適に適用可能である。
第5実施例は、本発明の請求項5に対応している。
【0097】
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0098】
例えば、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の説明において、急加速操作が行われたか否かを判定する手段の一例として、加速操作に係る情報に基づく要求加速度RAが第1加速度閾値RAth1 を超えたか否かを判定する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明は、加速操作に係る情報に基づく要求加速度RAに係る時間積分値である要求加速量が、所定の加速量閾値を超えたか否かを判定することにより、急加速操作が行われたか否かを判定する構成を採用しても構わない。
【0099】
また、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の説明において、駆動手段として内燃機関エンジン75を搭載した車両の例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明は、駆動手段として圧縮自着火機関(ディーゼルエンジン)を搭載した車両、HEV(Hybrid Electric Vehicle)等のハイブリッド車両を含む電気自動車EV(Electric Vehicle)にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0100】
11 車両制御装置
51 情報取得部
53 判定部
55 出力部
57 ACC制御部(制駆動制御部)
63 制動制御部(制駆動制御部)
73 駆動制御部(制駆動制御部)
LC 先行車
OC 自車
Dtg 目標車間距離
Dnw 現在車間距離
RA 要求加速度(要求加速量)
RAth1 第1加速度閾値(第1加速量閾値)
RAth2 第2加速度閾値(第1加速量閾値)
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B