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特開2024-100249液体処理装置及び層状複水酸化物の交換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100249
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】液体処理装置及び層状複水酸化物の交換方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/06 20060101AFI20240719BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B01J20/06 B
G01N21/27 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004097
(22)【出願日】2023-01-13
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000231198
【氏名又は名称】日本国土開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100136261
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 俊成
(72)【発明者】
【氏名】立脇 征弘
(72)【発明者】
【氏名】劉 兆涛
【テーマコード(参考)】
2G059
4G066
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB09
2G059EE13
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
4G066AA12B
4G066BA05
4G066BA09
4G066BA20
4G066CA11
4G066CA21
4G066CA32
4G066CA46
4G066CA50
4G066EA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハウジング内の層状複水酸化物の交換時期を適切に判断することが可能な液体処理装置を提供する。
【解決手段】ハウジング142に収容され、該ハウジング内の液体に含まれる有害物質を吸着する層状複水酸化物を備え、前記ハウジングには、前記ハウジングの外部から前記層状複水酸化物を視認可能にする窓50を設けた液体処理装置14である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに収容され、該ハウジング内の液体に含まれる有害物質を吸着する層状複水酸化物を備え、
前記ハウジングには、前記ハウジングの外部から前記層状複水酸化物を視認可能にする窓を設けた液体処理装置。
【請求項2】
前記窓を閉塞する閉塞部を備える請求項1記載の液体処理装置。
【請求項3】
前記窓を介して所定の波長の光が前記ハウジング内に入射するのを抑制する抑制部材を備える請求項1記載の液体処理装置。
【請求項4】
前記窓から前記ハウジングに収容された前記層状複水酸化物を撮像する撮像装置を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体処理装置。
【請求項5】
前記撮像装置により撮像された画像から、前記層状複水酸化物の着色及び濃淡の少なくとも一方の変化を検出し、前記層状複水酸化物の交換時期を判断する処理装置を備える請求項4記載の液体処理装置。
【請求項6】
前記撮像装置により撮像された画像から、前記層状複水酸化物の粒径の変化を検出し、前記層状複水酸化物の交換時期を決定する処理装置を備える請求項4記載の液体処理装置。
【請求項7】
前記窓は前記ハウジングに複数設けられ、前記撮像装置を前記複数の窓それぞれに対向する位置間で移動する移動装置を備える請求項4記載の液体処理装置。
【請求項8】
前記層状複水酸化物の使用開始からの期間が経過するほど、前記撮像装置の撮像頻度を高くする制御装置を備えた請求項4に記載の液体処理装置。
【請求項9】
液体に含まれる有害物質を吸着する層状複水酸化物の着色を検出するステップと、
前記層状複水酸化物の着色に基づいて、前記層状複水酸化物の交換時期を判断するステップと、を含む層状複水酸化物の交換方法。
【請求項10】
前記交換時期は、前記層状複水酸化物を撮影した画像における前記層状複水酸化物の着色度合に基づいて、コンピュータが決定する、請求項9記載の層状複水酸化物の交換方法。
【請求項11】
前記液体は水であり、前記有害物質はヒ素であり、
前記コンピュータは、前記着色度合に基づく前記交換時期の判断基準を、前記水を取得した地域ごとに異ならせる請求項10記載の層状複水酸化物の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体処理装置及び層状複水酸化物の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
層状複水酸化物は、陰イオン交換作用を有していることが知られている。そして、この陰イオン交換作用によって、ヒ素、フッ素、ホウ素、セレン、六価クロム、亜硝酸イオン、その他の陰イオン系の有害物質を固定化すれば、廃棄物の安全性向上技術、無害化環境改善技術において、汚染水の水質改善、有害物質の溶出防止、土壌改良、廃棄物処分場での有害物質の安定化促進等に寄与できるものと期待されている。そして、層状複水酸化物をフィルタに適用する提案もなされている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
層状複水酸化物に藻が生えたり、菌が繁殖しないようにするため、層状複水酸化物は、光を透過しないハウジング内に設けられることがある。従来は、ハウジング内に設けられた層状複水酸化物の交換時期を判断する手法についての具体的な提案はほとんどない。
【0005】
そこで、本発明は、ハウジング内の層状複水酸化物の交換時期を適切に判断することが可能な液体処理装置及び層状複水酸化物の交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明に係る液体処理装置は、ハウジングに収容され、該ハウジング内の液体に含まれる有害物質を吸着する層状複水酸化物を備え、前記ハウジングには、前記ハウジングの外部から前記層状複水酸化物を視認可能にする窓を設けている。
【0007】
本第2発明に係る層状複水酸化物の交換方法は、液体に含まれる有害物質を吸着する層状複水酸化物の着色を検出するステップと、前記層状複水酸化物の着色に基づいて、前記層状複水酸化物の交換時期を判断するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本第1発明及び本第2発明によれば、ハウジング内の層状複水酸化物の交換時期を適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に水処理システムの構成の一例を示す図である。
図2図2(a)は、使用前の層状複水酸化物を示す図であり、図2(b)は、使用済の層状複水酸化物を示す図である。
図3】使用済みの層状複水酸化物の成分分析結果を示す図である。
図4】処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5(a)は、使用を開始してから然程時間が経過していない層状複水酸化物の画像であり、図5(b)は、使用開始からある程度時間が経過した層状複水酸化物の画像である。
図6図6(a)は、色の濃淡と、スケールの厚みの関係を示すデータであり、図6(b)は、色の濃淡と、残り使用可能日数の関係を示すデータである。
図7】変形例1について説明するための図である。
図8図8(a)、図8(b)は、変形例2について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態に係る水処理システム100について、図1図6に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る水処理システム100の構成の一例を示す図である。水処理システム100は、第1濾過装置10と、第2濾過装置12と、液体処理装置としての第3濾過装置14と、第4濾過装置16と、第5濾過装置18と、給水タンク24と、を備える。水処理システム100においては、原水W0が各濾過装置により処理され、処理水W6として給水タンク24に供給されるようになっている。
【0012】
なお、図1の水処理システム100において、複数の濾過装置が上流から下流にかけて直列に設置されているが、これに限らず、上流から下流にかけて並列に設置される部分があってもよい。また、水処理システム100は、第1~第5濾過装置全てを備えていなくてもよいし、第1~第5濾過装置以外の他の濾過装置を備えていてもよい。
【0013】
以下、水処理システム100における水処理の概要について説明する。
【0014】
原水W0は、例えば地下水(井戸水等)であり、原水ラインL0を流通する。なお、本実施形態においてラインとは、流体の流通が可能である流路、経路、管路等である。原水ラインL0には、上流側から順に原水ポンプ22、原水バルブV1が設けられている。原水バルブV1は、原水ラインL0を開閉する。
【0015】
(第1濾過装置10)
第1濾過装置10は、塔式濾過装置であり、本実施形態では、除鉄・除マンガン濾過装置である。第1濾過装置10は、原水ラインL0の下流側の端部に設けられる。第1濾過装置10は、原水W0から第1濾過処理水W1を製造する。
【0016】
第1濾過装置10は、第1濾過塔102と、第1コントロールバルブ104と、を備える。
【0017】
第1濾過塔102には、濾材が充填されている。第1濾過装置10は、第1濾過塔102に充填された濾材により、原水W0に含まれる微粒子等の懸濁物質と共に、溶存鉄及び溶存マンガンを除去する。ここで濾材とは、一例として、粒子状のマンガンシャモットやマンガンゼオライトである。また、第1濾過装置10は、原水W0に含まれる溶存鉄及び溶存マンガンを酸化してから除去する。第1濾過装置10には、第1濾過塔102の上流側に配置された不図示の薬剤添加装置から、酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)が添加される。
【0018】
原水W0に含まれる溶存鉄は、薬剤添加装置によって添加される酸化剤の作用により酸化される。酸化された溶存鉄は、不溶性の水酸化第一鉄を経て水酸化第二鉄へと変化(すなわち、懸濁物質化)し、第1濾過塔102に充填された濾材によって濾過される。原水W0に含まれる溶存マンガンは、薬剤添加装置によって添加される酸化剤の作用により、第1濾過塔102に充填された濾材と接触したときに、酸化が進行し、濾材によって吸着され除去される。
【0019】
第1コントロールバルブ104は、第1濾過塔102に対して流入又は流出する水の流路を制御するためのものである。第1濾過装置10の下流側には、第1処理水ラインL1が接続されている。
【0020】
(第2濾過装置12)
第2濾過装置12は、塔式濾過装置であり、本実施形態では、砂濾過装置である。第2濾過装置12は、第1処理水ラインL1の下流側の端部に設けられる。第2濾過装置12は、第1濾過処理水W1から第2濾過処理水W2を製造する。
【0021】
第2濾過装置12は、第2濾過塔122と、第2コントロールバルブ124と、を備える。
【0022】
第2濾過塔122には、濾材が充填されている。第2濾過装置12は、第2濾過塔122に充填された砂状の濾材(アンスラサイト、マンガンコーティング濾材等の除鉄マンガン濾材であってもよい)によって第1濾過処理水W1中の比較的粒径が大きい懸濁物質を除去する。
【0023】
第2コントロールバルブ124は、第2濾過塔122に対して流入又は流出する水の流路を制御するためのものである。第2濾過装置12の下流側には、第2処理水ラインL2が接続されている。
【0024】
(第3濾過装置14)
第3濾過装置14は、塔式濾過装置であり、本実施形態では、層状複水酸化物を内部に有する濾過装置である。第3濾過装置14は、第2処理水ラインL2の下流側の端部に設けられる。第3濾過装置14は、第2濾過処理水W2から第3濾過処理水W3を製造する。
【0025】
第3濾過装置14は、ハウジングとしての第3濾過塔142と、第3コントロールバルブ144と、を備える。
【0026】
第3濾過塔142の内部には、濾材が充填されている。第3濾過装置14は、第3濾過塔142に充填された陰イオン交換作用を有する層状複水酸化物によって、第2濾過処理水W2から有害物質としてのヒ素を吸着する。なお、層状複水酸化物は、ヒ素以外にも、フッ素、ホウ素、セレン、六価クロム、シリカなども吸着できる。
【0027】
層状複水酸化物の製造方法は、本願出願人が先に出願した国際出願番号PCT/JP2017/046943(WO2018/124,190)などに開示されている。したがって、詳細な説明は省略するが、2価の金属イオンと3価の金属イオンを含む酸性溶液とアルカリ性溶液とを混合し、層状複水酸化物を合成し、洗浄、フィルタプレス、乾燥などの各工程を経て顆粒状の層状複水酸化物を製造することができる。顆粒状の層状複水酸化物の粒径は、本実施形態において0.4mm~1.5mmより好ましくは0.5~1.2mmになるように製造管理をしている。
【0028】
第3コントロールバルブ144は、第3濾過塔142に対して流入又は流出する水の流路を制御するためのものである。第3濾過装置14の下流側には、第3処理水ラインL3が接続されている。
【0029】
なお、第3濾過装置14の詳細な構成や、層状複水酸化物の交換については、後述する。
【0030】
(第4濾過装置16)
第4濾過装置16は、塔式濾過装置であり、第3処理水ラインL3の下流側の端部に接続される。第4濾過装置16は、一例として、活性炭濾過装置である。第4濾過装置16は、第3濾過処理水W3から第4濾過処理水W4を製造する。
【0031】
第4濾過装置16は、第4濾過塔106と、第4コントロールバルブ164とを備える。
【0032】
第4濾過塔162には、濾材が充填されている。第4濾過装置16は、第4濾過塔162に充填された濾材により、第3濾過処理水W3に含まれる懸濁物質と共に、有機物、色度成分及び臭気成分等の不純物を除去する。ここで、濾材は、一例として粒子状又は繊維状の活性炭を用いた吸着材であるものとする。
【0033】
第4濾過装置16の下流側には、第4処理水ラインL4が接続されている。
【0034】
(第5濾過装置18)
第5濾過装置18は、膜濾過装置であり、第4処理水ラインL4の下流側の端部に接続される。第5濾過装置18は、MF膜濾過装置やUF膜濾過装置等であり、第4濾過処理水W4から微生物等を除去し、第5濾過処理水W5を製造する。第5濾過装置18の下流側には、第5処理水ラインL5が接続されている。
【0035】
(給水タンク24)
給水タンク24には、第5濾過処理水W5が処理水W6として供給される。給水タンク24には、UV照射装置26が設けられている。UV照射装置26は、給水タンク24内の処理水W6に紫外線を照射し、処理水W6内の菌類を死滅させたり、藻類の増殖を抑制したりする。
【0036】
給水タンク24には、給水ライン28と、逆洗ライン30が接続されている。給水ライン28にはバルブV2が設けられ、逆洗ライン30には、バルブV3が設けられている。バルブV3が閉状態で、バルブV2が開状態である場合には、給水ライン28を介して処理水W6が利用者に対して供給される。一方、バルブV2が閉状態で、バルブV3が開状態である場合には、処理水W6は、逆洗ライン30に供給される。逆洗ライン30に供給された処理水W6は、不図示のラインを介して各濾過装置に適宜供給され、濾過装置内の濾材の逆洗に用いられるようになっている。
【0037】
(第3濾過装置14の詳細説明)
次に、第3濾過装置14の詳細な構成や層状複水酸化物の交換に関し、詳細に説明する。
【0038】
前述のように、第3濾過装置14は、ハウジングとしての第3濾過塔142と、第3濾過塔142内に充填された濾材としての層状複水酸化物と、を備える。
【0039】
第3濾過塔142は、例えば、ステンレス(SUS316)や鋳鉄や樹脂やFRP(Fiber Reinforced Plastics)等を材料としており、外部の光を内部へ通さないようになっている。この第3濾過塔142の一部には、窓50が設けられている。窓50には、ガラスやポリカーボネートなどの樹脂が嵌め込まれた状態となっており、外部から内部を視認できるようになっている。窓50には、窓50を開状態にしたり閉状態にしたりする閉塞部としての閉塞部材52が設けられている。閉塞部材52には、閉塞部材52を開閉する開閉装置54が設けられており、開閉装置54は、処理装置70によって駆動制御される。なお、閉塞部材52が窓50を閉塞した状態では、外部の光は第3濾過塔142内には一切入射しないようになっている。
【0040】
第3濾過塔142の外部であって、窓50に対向する位置には、撮像装置60と、照明装置58と、が設けられている。撮像装置60は、CCD等の撮像素子や、レンズ等を有している。撮像装置60は、WiFiやBluetooth、有線ケーブル或いは通信回線等により処理装置70と接続されており、撮像装置60は、処理装置70により制御される。また、撮像装置60によって撮像された画像は処理装置70に送信される。処理装置70は、窓50が開状態のときに、撮像装置60を用いて第3濾過塔142の内部(内部の層状複水酸化物)を撮像する。また、照明装置58は、LED等であり、窓50を介して、第3濾過塔142内を照明する。照明装置58により、撮像装置60による撮像条件(明るさ等)を一定にすることができる。なお、照明装置58についても、処理装置70により制御される。
【0041】
ここで、層状複水酸化物は、水からヒ素を吸着したとしても、見た目上はほとんど変化しないことが知られている。一方、本発明者は、層状複水酸化物を濾材として実際に現場(バングラデシュ)で使用したところ、層状複水酸化物がヒ素を吸着しなくなると予想されていた時期(寿命と考えられていた時期)よりも前に、ヒ素を吸着しなくなる傾向があることに気づいた。また、本発明者は、濾材として使用する前の層状複水酸化物は、図2(a)に示すように白色であるが、使用済みの層状複水酸化物は、図2(b)に示すように、茶色になることに気づいた。また、本発明者は、時間の経過とともに、層状複水酸化物の色が濃くなることに気づいた。そこで、本発明者は、これらの原因について特定するため、使用済みの(着色済みの)層状複水酸化物の表面を覆っている成分を調査した。
【0042】
この調査においては、乾燥させた使用済みの層状複水酸化物1gを硫酸10mlに溶かし、100mlまでメスアップし、スタラーで1時間攪拌して、イオン分析計やICP-AES(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)を用いて成分分析を行った。図3には、この調査の結果が示されている。
【0043】
図3の調査結果からは、スケール(水垢の一種)の成分であるシリカ(ケイ素)、カルシウムが多く見つかったが、そのほかに鉄、マンガン、塩素などが含まれており、このうちの鉄が着色に影響を与えていると考えられる。すなわち、層状複水酸化物を濾材として用いると、ケイ素やカルシウムによってスケールが生じるため、層状複水酸化物のヒ素吸着機能が低下し、さらに、スケールが生じる際に鉄も付着することから、スケールが多くなる(厚くなる)ほど色が濃くなるという結論に至った。なお、鉄は、第1濾過装置10において除去しきれなかった鉄であると考えられる。
【0044】
そこで、本実施形態において、処理装置70は、図4のフローチャートに沿った処理を実行する。なお、処理装置70は、水処理システム100の近傍(例えばバングラデシュ)に設置されてもよいし、遠隔(例えば日本)に設置されてもよい。
【0045】
図4の処理は、水処理システム100を稼働した段階(層状複水酸化物が未使用の状態)から開始されるものとする。また、図4の処理の開始の段階において、窓50は、閉塞部材52により閉塞された状態となっており、撮像装置60や照明装置58は電源オフ状態(又は待機状態)となっているものとする。
【0046】
図4の処理が開始されると、ステップS10において、処理装置70は、所定の撮像タイミングになるまで待機する。撮像タイミングは、初期段階では、例えば1週間に1度であるものとする。撮像タイミングになると、処理装置70は、ステップS12に移行する。
【0047】
ステップS12に移行すると、処理装置70は、開閉装置54を制御して、閉塞部材52を移動させ、窓50を開状態にする。
【0048】
次いで、ステップS14において、処理装置70は、照明装置58による照明を行うとともに、撮像装置60による層状複水酸化物の撮像を行う。この結果、層状複水酸化物の使用を開始してから然程時間が経過していない場合には、白色の層状複水酸化物が撮像され、ある程度時間が経過すると茶色の層状複水酸化物が撮像される。なお、第3濾過塔142から取り出した白色の層状複水酸化物をマクロ撮影すると図5(a)に示すような画像が撮像され、第3濾過塔142から取り出した茶色の層状複水酸化物をマクロ撮影すると図5(b)に示すような画像が撮像される。
【0049】
次いで、ステップS16において、処理装置70は、開閉装置54を制御して、閉塞部材52を移動させ、窓50を閉状態にする。このように、本実施形態では、撮像装置60による撮像の間以外は、窓50を閉状態にしている。これにより、第3濾過塔142内に光が入り、藻が光合成して繁殖するような事態が生じないようにすることができる。
【0050】
次いで、ステップS18において、処理装置70は、画像解析を行う。処理装置70は、画素ごとに色の濃淡を検出し、検出した画素ごとの濃淡の値を平均することで、画像全体の濃淡を算出する。なお、濃淡は、層状複水酸化物の着色度合いを意味する。
【0051】
次いで、ステップS20において、処理装置70は、算出した画像全体の濃淡に基づいて、スケールの厚みや、層状複水酸化物の残りの使用可能日数を特定する。この場合、処理装置70は、図6(a)に示すような色の濃淡と、スケールの厚みの関係を示すデータや、図6(b)に示すような色の濃淡と、残り使用可能日数の関係を示すデータを用いることとする。なお、図6(a)、図6(b)において、色の濃淡は、色が薄いほど値が小さく、色が濃いほど値が大きいものとする。また、図6(a)、図6(b)は、色が濃ければ濃いほどスケールが厚く、残り使用日数が短いことを示している。
【0052】
なお、図6(a)、図6(b)のグラフは、実際に水処理システム100を稼働する地域の原水を用いた通水実験を行い、取得することが好ましい。なお、図6(a)、図6(b)のグラフは、直線にならず曲線になる場合もある。
【0053】
なお、ステップS18の画像解析においては、画素ごとに色の濃淡を検出し、検出した画素ごとの濃淡の値を平均することで、画像全体の濃淡を算出する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、画像を所定数の画素ごとにブロックに分け、ブロックごとの濃淡の値を平均することで、画像全体の濃淡を算出することとしてもよい。また、画像内の代表的な画素やブロックの濃淡を検出し、その濃淡の値を画像全体の濃淡とみなしてもよい。また、その他の統計的手法により、画像全体の濃淡を算出することとしてもよい。
【0054】
なお、ステップS18の画像解析においては、画素全体の濃淡を算出する場合について説明したが、これに限らず、画素全体の色(色彩)を数値化してもよい。
【0055】
次いで、ステップS22において、処理装置70は、ステップS20で特定したスケールの厚みや残り使用可能日数を処理装置70が有する表示部に表示したり、作業者が携帯する端末に送信したりする。これにより、作業者は、層状複水酸化物の状態がどのようになっているのかや、層状複水酸化物の交換タイミングがいつ頃であるかを確認することができる。
【0056】
次いで、ステップS24において、処理装置70は、交換タイミングが到来したか否かを判断する。このステップS24の判断が肯定された場合には、図4の全処理が終了する。一方、ステップS24の判断が否定された場合には、処理装置70はステップS26に移行する。
【0057】
ステップS26に移行すると、処理装置70は、残り使用可能日数に基づいて、撮像タイミングの調整を行う。例えば、処理装置70は、残り使用可能日数が短くなるほど、撮像間隔が短くなるように調整する。その後は、ステップS10に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。なお、処理装置70は、ステップS26の処理を省略してもよい。すなわち、撮像間隔は一定であってもよい。
【0058】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、第3濾過装置14は、第3濾過塔142と、第3濾過塔142に収容され、水に含まれるヒ素などの有害物質を吸着する層状複水酸化物と、を備えている。そして、第3濾過塔142には、外部から層状複水酸化物を視認可能にする窓50が設けられている。これにより、窓50から層状複水酸化物を撮像装置60を用いて撮像し、色や濃淡を確認することができるため、色や濃淡に基づいて、残り使用可能日数を予測することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、適切なタイミングで、第3濾過装置14における層状複水酸化物の交換を行うことが可能となる。例えば、使用中の層状複水酸化物を取り出して分析すると長時間かかるため、分析している間に層状複水酸化物の交換タイミングが到来してしまう可能性があるが、本実施形態の場合、層状複水酸化物の分析を行う必要がないのでこのような問題は生じない。なお、第3濾過装置14の層状複水酸化物の交換の際には、第3濾過塔142から使用済みの層状複水酸化物を取り出して、代わりに、新たな層状複水酸化物を入れるようにしてもよい。あるいは、交換用の第3濾過装置14を予め準備しておき、使用済みの第3濾過装置14と交換するようにしてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、処理装置70が、撮像装置により撮像された画像から、層状複水酸化物の着色や濃淡を検出し、層状複水酸化物の残り使用可能日数(すなわち交換時期)を判断する。これにより、作業者が層状複水酸化物の着色や濃淡から残り使用可能日数を推測する場合よりも精度よく残り使用可能日数を推定することができる。
【0060】
また、本実施形態においては、第3濾過塔142に、窓を閉塞する閉塞部材が設けられている。これにより、第3濾過塔142内に光が入るのを極力抑制することができるので、第3濾過塔142内における藻の繁殖を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態においては、処理装置70は、ステップS26において、層状複水酸化物の使用開始からの期間が経過するほど(すなわち、残り使用可能日数が少なくなるほど)、撮像装置60の撮像頻度を高くする(撮像間隔を短くする)。これにより、効率的に精度よく残り使用可能日数を推定することができる。
【0062】
また、本実施形態では、原水を取得する地域(すなわち、水処理システム100が稼働する地域)ごとに、図6(a)、図6(b)のグラフ(濃淡に基づくスケールの厚さや残り使用可能日数の判断基準)を異ならせる。水に含まれる成分は地域によって異なるため、地域ごとに図6(a)、図6(b)のグラフを異ならせることで、地域ごとに精度よくスケールの厚さや残り使用可能日数を判断することが可能となる。また、原水を取得する地域が雨季(バングラデッシュでは5月から10月上旬)か乾季(バングラデッシュでは10月下旬から3月)によって図6(a)、図6(b)のグラフを異ならせたり、補正したりしてもよい。雨季は乾季に比べて有害物質の濃度が低くなるため、残り使用可能日数が伸びる傾向がある。これとは逆に乾季は雨季に比べて有害物質の濃度が高くなるため、残り使用可能日数が伸びる傾向がある。
【0063】
(変形例1)
なお、上記実施形態では、第3濾過塔142の窓50を閉塞部材52によって開閉する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、窓50に所定の波長の光が第3濾過塔142内に入射するのを抑制するフィルタ(抑制部材)を設けることとしてもよい。フィルタは、第3濾過塔142内に藻が繁殖するのを防ぐために設けることから、所定の波長は、藻が光合成にあまり用いない波長であることが好ましい。光合成を行う色素は複数あり、図7に示すように色素ごとに光合成に用いる(吸収する)波長が異なっている。その中でも比較的光合成に用いられない波長(例えば、範囲Mで示す530nm付近の波長帯域(緑)や、範囲Nで示す700nmより大きい波長帯域(赤))があるため、これらの波長帯域のみを透過させるようなフィルタを用いることが好ましい。
【0064】
なお、上記フィルタで窓50を多い、さらに閉塞部材52を併用することとしてもよい。
【0065】
なお、上記実施形態で説明した照明装置58についても、上記範囲Mや範囲Nの波長の光を照射することとしてもよい。
【0066】
(変形例2)
なお、上記実施形態では、第3濾過塔142に窓を1つ設ける場合について説明したが、これに限らず、図8(a)に示すように、2つの窓50A,50Bを設けてもよい。この場合、窓50A、50Bに対応して、2つの閉塞部材52A,52B及び開閉装置54A,54Bを設けることが好ましい。一方、撮像装置60及び照明装置58については、図8(a)に示すように1つずつ設けることとしてもよい。この場合、各窓を用いた撮像タイミングに応じて、処理装置70が、移動装置61を介して撮像装置60及び照明装置58を移動するようにすればよい。例えば、窓50Aを介した撮影を行う場合には、窓50Aに対向する位置に撮像装置60及び照明装置58を位置決めする。また、窓50Bを介した撮影を行う場合には、窓50Bに対向する位置に撮像装置60及び照明装置58を位置決めする。このようにすることで、異なる2か所において層状複水酸化物の色や濃淡を確認することができるようになる。なお、窓は、3つ以上設けてもよい。
【0067】
この場合、処理装置70は、複数個所で得られた層状複水酸化物の色や濃淡に基づいて、スケールの厚さや残り使用可能日数を推定することができる。例えば、処理装置70は、複数個所で得られた層状複水酸化物の色や濃淡の値を平均した値を用いて、上記実施形態と同様、図6(a)や図6(b)のデータから、スケールの厚さや残り使用可能日数を推定することができる。このようにすることで、層状複水酸化物の着色度合いの、場所ごとのばらつきによる推定精度への影響を抑制することができる。また、第3濾過塔142の上部にある層状複水酸化物は、第3濾過塔142の下部にある層状複水酸化物に比べて茶色になりやすい傾向がある。このため、処理装置70は、窓50Aから撮像した層状複水酸化物の色または濃淡と、窓50Bから撮像した層状複水酸化物の色または濃淡とに所定の差異がある場合に第3濾過塔142の逆洗をするようにしてもよい。
【0068】
なお、図8(a)の構成に代えて、図8(b)に示すように、窓50A,50Bに対向する位置に設けられた複数の撮像装置60A,60B及び複数の照明装置58A,58Bを用いることとしてもよい。この場合、図8(a)の移動装置61が不要となる。
【0069】
(変形例3)
なお、上記実施形態では、層状複水酸化物の色や濃淡に基づいて、層状複水酸化物の残り使用可能日数を推定する場合について説明したが、層状複水酸化物の色や濃淡に基づいて、その他の濾過装置(第1、第2、第4、第5の濾過装置)の残り使用可能日数を推定してもよい。処理装置70が、層状複水酸化物の寿命とその他の濾過装置の濾材や濾布の寿命との相対関係を予め取得している場合、層状複水酸化物の残り使用可能日数に基づいて、他の濾過装置の濾材や濾布の残り使用日数を推定することができる。この場合、処理装置70は、各濾過装置のメンテナンスのタイミングを作業者に報知することができる。なお、処理装置70は、メンテナンスのタイミングが所定以上近い濾過装置がある場合には、メンテナンス時期が同時期である旨を報知してもよい。これにより、複数の濾過装置のメンテナンスを同一タイミングで行うことができるため、別々にメンテナンスを行うよりも、水処理システム100の稼働停止期間を短くすることができる。
【0070】
(変形例4)
なお、上記実施形態では、層状複水酸化物の色や濃淡に基づいて、層状複水酸化物の残り使用可能日数を推定する場合について説明したが、これに加えて、層状複水酸化物の粒径をさらに考慮して層状複水酸化物の残り使用可能日数を推定することとしてもよい。
【0071】
撮像装置60から第3濾過塔142までの距離や、撮像倍率を一定にしておけば、撮像装置60によって撮像される画像から、層状複水酸化物の粒径を求めることができる。また、層状複水酸化物は、使用期間が長くなると、粒径が小さくなる。
【0072】
したがって、処理装置70は、例えば、層状複水酸化物の色や濃淡から推定される残り使用可能日数を、層状複水酸化物の粒径を用いて補正し、補正後の残り使用可能日数を出力してもよい。また、第3濾過塔142の上部にある層状複水酸化物は、第3濾過塔142の下部にある層状複水酸化物に比べて粒径が小さくなりやすい傾向がある。このため、処理装置70は、窓50Aから撮像した層状複水酸化物の粒径と、窓50Bから撮像した層状複水酸化物の粒径とに所定の差異がある場合に第3濾過塔142の逆洗をするようにしてもよい。
【0073】
(変形例5)
なお、処理装置70は、撮像装置60が撮像した画像を、処理装置70が有する表示部や、作業者が利用する端末等に出力(表示)してもよい。この場合、作業者は、画像に映っている層状複水酸化物の色や濃淡から、スケールの厚さや残り使用可能日数を予測することができる。
【0074】
(変形例6)
また、上記実施形態では、撮像装置60を用いて層状複水酸化物を撮像する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、作業者が窓50から第3濾過塔142内の層状複水酸化物の色や濃淡を直接確認することとしてもよい。この場合、作業者が色や濃淡から残り使用可能日数を予測しやすくするため、色見本(色と残り使用可能日数の関係を示す表)を第3濾過塔142に貼り付けたり、第3濾過塔142の近傍に設けるようにしてもよい。
【0075】
なお、上記実施形態及び変形例では、層状複水酸化物の色や濃淡から、残り使用可能日数を推定する場合について説明したが、これに限らず、層状複水酸化物の色や濃淡から、第3濾過装置14において逆洗を行うべきタイミングを推定してもよい。また、上記変形例3と同様、層状複水酸化物の色や濃淡から、第3濾過装置14以外の濾過装置における逆洗のタイミングを推定してもよい。
【0076】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0077】
14 第3濾過装置(液体処理装置)
50 窓
50A,50B 窓
52 閉塞部材(閉塞部)
60 撮像装置
61 移動装置
70 処理装置(制御装置)
142 第3濾過塔(ハウジング)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8