(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100256
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】両面断熱壁構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240719BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240719BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E04B2/56 645B
E04B1/76 500F
E04B1/80 100P
E04B2/56 604B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004116
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】502171699
【氏名又は名称】小野里工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】前田 優
(72)【発明者】
【氏名】青木 数史
(72)【発明者】
【氏名】石井 利彦
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA03
2E001GA12
2E001GA42
2E001HA04
2E001HF11
2E002FB03
2E002MA33
(57)【要約】
【課題】従来の両面断熱壁構造では、発泡体パネル同士の境界部が開き易く、壁部の通りを実現し難いという課題があった。
【解決手段】
本発明の両面断熱壁構造10は、断熱壁部11は、配筋構造15を内部に含むコンクリート躯体16と、コンクリート躯体16の外壁面側及び内壁面側を被覆する複数の断熱板材12と、断熱板材12同士の高さ方向境界部18を跨ぐように配設される開き防止部材17と、を有する。この構造により、開き防止部材17が、コンクリート打設時のコンクリート圧力による高さ方向境界部18での断熱板材12の開きを防止することで、断熱壁部11の通りが実現される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設空間を有するように対向して配設される断熱壁部と、前記打設空間に配設される鉄筋と、前記打設空間を充填するコンクリート躯体と、を備える両面断熱壁構造であって、
前記断熱壁部の横幅方向及び高さ方向へと連結して配設されることで前記断熱壁部を形成する複数の断熱板材と、
前記高さ方向にて隣り合う前記断熱板材同士の高さ方向境界部に対して配設される開き防止部材と、を備え、
前記開き防止部材は、
前記断熱壁部の厚み方向に前記打設空間を架橋して配設される支持棒部と、
前記支持棒部の両側に固定して配設される開き規制部と、を有し、
前記開き規制部は、前記高さ方向境界部を跨ぐように前記隣り合う前記断熱板材の両方と接触状態となることを特徴とする両面断熱壁構造。
【請求項2】
前記厚み方向にて対向する前記断熱板材は、前記打設空間に配設される連結部材により連結し、
前記連結部材は、前記断熱板材の前記高さ方向の中央部及びその周辺領域に配設され、前記鉄筋の横配筋を固定し、
前記開き防止部材は、前記連結部材の間に配設されることを特徴とする請求項1に記載の両面断熱壁構造。
【請求項3】
前記断熱壁部を支持する土間コンクリートと、
前記土間コンクリートから前記打設空間へと導出する継手配筋と、
前記打設空間に配設され、前記鉄筋の縦配筋の位置規制を行う位置規制配筋と、を備え、
前記縦配筋は、前記打設空間の上端側から前記高さ方向において前記継手配筋と重なる位置まで配置されると共に、少なくとも前記位置規制配筋または前記横配筋のどちらか一方と接触することで前記打設空間内での移動が規制されることを特徴とする請求項2に記載の両面断熱壁構造。
【請求項4】
打設空間を有するように連結部材により連結された一対の断熱板材を複数個準備し、前記断熱板材を連結して断熱壁部を形成する工程と、
前記打設空間に鉄筋を配設する工程と、
前記打設空間にコンクリートを打設する工程と、を備える両面断熱壁構造の施工方法であって、
前記断熱壁部を形成する工程では、
前記断熱壁部の横幅方向にて隣り合う前記断熱板材同士の横幅方向境界部が、前記断熱壁部の高さ方向に連続しないように前記断熱板材を積層することを特徴とする両面断熱壁構造の施工方法。
【請求項5】
前記断熱壁部を形成する工程では、
前記断熱板材の外面に露出する前記連結部材が前記高さ方向へと整列するように前記断熱板材を積層した後、前記外面に露出する前記連結部材と当接するように高さ方向通し部材を配置し、前記高さ方向通し部材を前記連結部材に対してビス固定することを特徴とする請求項4に記載の両面断熱壁構造の施工方法。
【請求項6】
前記断熱壁部を形成する工程では、
前記打設空間を架橋して配設される支持棒部と、前記支持棒部の両側に固定して配設される開き規制部と、を有する開き防止部材を準備し、
前記開き規制部が前記高さ方向にて隣り合う前記断熱板材の高さ方向境界部を跨ぐように前記隣り合う前記断熱板材の両方と接触状態となるように、前記打設空間に複数の前記開き防止部材を配設することを特徴とする請求項5に記載の両面断熱壁構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面断熱壁構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の両面断熱壁構造として、特許文献1に記載の構造が知られている。従来の両面断熱壁構造では、型枠として発泡体パネルを使用し、発泡体パネルの間にコンクリートを打設することで、断熱性に優れた両面断熱壁構造が実現される。そして、発泡体パネルの内部には、一定幅の連結部が固定されると共に、発泡体パネルの下端部にはライナーが配設される。
【0003】
この構造により、型枠の内部にコンクリートが打設された後においても、コンクリートの圧力から発泡体パネルが変形することが防止され、発泡体パネルの直進性(通り)が向上される。
【0004】
また、両面断熱壁が高い壁となる場合には、複数枚の発泡体パネルが積層して形成される。そして、高さ方向に隣り合う発泡体パネルは、その側面に形成された凸部と凹部とが嵌合することで連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の両面断熱壁構造では、対向する発泡体パネル同士は、その内部側にて複数の連結部により連結される。しかしながら、発泡体パネル同士の境界面では、発泡体パネルの側面の凹凸構造による嵌合のみであり、コンクリートの圧力への対策が成されていない。そのため、発泡体パネルの内部にコンクリートを打設し、コンクリートの圧力を受けることで、発泡体パネルの境界面が外側へと開き、その開いた空間にコンクリートが充填され、硬化することで、発泡体パネルの直進性(通り)が悪化するという課題がある。
【0007】
特に、両面断熱壁構造の高さ方向及び横幅方向へと複数の発泡体パネルを連結させることで、建屋全体の断熱性を向上させる場合には、上記境界面が、両面断熱壁に対して連続して縦横方向へと形成される。その結果、コンクリート打設後の両面断熱壁は、縦横方向へと波打った形状となり、見栄えが悪いという課題がある。更には、外壁面側の発泡体パネルの上記境界面の隙間からコンクリートが風雨に晒されることで、製品品質を維持し難いという課題がある。
【0008】
また、両面断熱壁構造の施工方法では、両面断熱壁が、縦横方向へと波打った形状となることで、製品品質に問題があり、補修工事が必要となる。そのため、コンクリート打設工程後に、上記境界面の補修工事を行うことで、工期に遅れが生じると共に、製造コストが大幅に増大するという課題がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、断熱壁部を構成する複数の断熱板材同士の境界面に対して開き防止対策を施すことで、断熱壁部の通りを向上させる両面断熱壁構造及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の両面断熱壁構造では、打設空間を有するように対向して配設される断熱壁部と、前記打設空間に配設される鉄筋と、前記打設空間を充填するコンクリート躯体と、を備える両面断熱壁構造であって、前記断熱壁部の横幅方向及び高さ方向へと連結して配設されることで前記断熱壁部を形成する複数の断熱板材と、前記高さ方向にて隣り合う前記断熱板材同士の高さ方向境界部に対して配設される開き防止部材と、を備え、前記開き防止部材は、前記断熱壁部の厚み方向に前記打設空間を架橋して配設される支持棒部と、前記支持棒部の両側に固定して配設される開き規制部と、を有し、前記開き規制部は、前記高さ方向境界部を跨ぐように前記隣り合う前記断熱板材の両方と接触状態となることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の両面断熱壁構造では、前記厚み方向にて対向する前記断熱板材は、前記打設空間に配設される連結部材により連結し、前記連結部材は、前記断熱板材の前記高さ方向の中央部及びその周辺領域に配設され、前記鉄筋の横配筋を固定し、前記開き防止部材は、前記連結部材の間に配設されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の両面断熱壁構造では、前記断熱壁部を支持する土間コンクリートと、前記土間コンクリートから前記打設空間へと導出する継手配筋と、前記打設空間に配設され、前記鉄筋の縦配筋の位置規制を行う位置規制配筋と、を備え、前記縦配筋は、前記打設空間の上端側から前記高さ方向において前記継手配筋と重なる位置まで配置されると共に、少なくとも前記位置規制配筋または前記横配筋のどちらか一方と接触することで前記打設空間内での移動が規制されることを特徴とする。
【0013】
本発明の両面断熱壁構造の施工方法では、打設空間を有するように連結部材により連結された一対の断熱板材を複数個準備し、前記断熱板材を連結して断熱壁部を形成する工程と、前記打設空間に鉄筋を配設する工程と、前記打設空間にコンクリートを打設する工程と、を備える両面断熱壁構造の施工方法であって、前記断熱壁部を形成する工程では、前記断熱壁部の横幅方向にて隣り合う前記断熱板材同士の横幅方向境界部が、前記断熱壁部の高さ方向に連続しないように前記断熱板材を積層することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の両面断熱壁構造の施工方法では、前記断熱壁部を形成する工程では、前記断熱板材の外面に露出する前記連結部材が前記高さ方向へと整列するように前記断熱板材を積層した後、前記外面に露出する前記連結部材と当接するように高さ方向通し部材を配置し、前記高さ方向通し部材を前記連結部材に対してビス固定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の両面断熱壁構造の施工方法では、前記断熱壁部を形成する工程では、前記打設空間を架橋して配設される支持棒部と、前記支持棒部の両側に固定して配設される開き規制部と、を有する開き防止部材を準備し、前記開き規制部が前記高さ方向にて隣り合う前記断熱板材の高さ方向境界部を跨ぐように前記隣り合う前記断熱板材の両方と接触状態となるように、前記打設空間に複数の前記開き防止部材を配設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の両面断熱壁構造では、断熱壁部は、鉄筋を内部に含むコンクリート躯体と、コンクリート躯体の外壁面側及び内壁面側を被覆する複数の断熱板材と、断熱板材同士の高さ方向境界部を跨ぐように配設される開き防止部材と、を有する。この構造により、開き防止部材が、コンクリート打設時のコンクリート圧力による高さ方向境界部での断熱板材の開きを防止することで、断熱壁部の通りが実現される。
【0017】
また、本発明の両面断熱壁構造では、一対の断熱板材は、連結部材により連結された状態となる。連結部材は、断熱板材の中央部及びその周辺に配設される。そして、開き防止部材は、断熱壁部の高さ方向において連結部材間であり、断熱板材同士の高さ方向境界部を跨ぐように配設される。この構造により、開き防止部材が、上記連結部材の非配置領域に対して適宜配設されることで、断熱壁部全体としての強度の均一化が実現される。断熱壁部には、大型車の通行時の振動や地震等による振動が加わるが、断熱壁部の上記高さ方向境界部等に局所的に応力が集中することが防止される。更には、断熱壁部が、コンクリート打設時のコンクリート圧力により外側へと膨れることを防止すると共に、断熱壁部の通りが実現される。
【0018】
また、本発明の両面断熱壁構造では、断熱板材の打設空間内に縦配筋の建て込み位置を規制する位置規制配筋が配設される。この構造により、断熱壁部は、鉄筋コンクリートの建造物として所望の鉄筋強度を満たすと共に、断熱壁部の外壁面側及び内壁面側に断熱板材が配設されることで、断熱性及び防音性に優れた壁構造となる。
【0019】
本発明の両面断熱壁構造の施工方法では、断熱壁部を形成する際に、断熱壁部の横幅方向にて隣り合う断熱板材同士の横幅方向境界部が、断熱壁部の高さ方向に連続しないように積層する。この施工方法により、上記横幅方向境界部は、その上面に積層された断熱板材により固定されることで、コンクリート打設時のコンクリート圧力により外側へと開き難くなる。そして、断熱壁部の通りが実現される。
【0020】
また、本発明の両面断熱壁構造の施工方法では、断熱板材の外面に露出する連結部材が断熱壁部の高さ方向へと整列するように断熱板材を積層する。そして、高さ方向通し部材は、上記連結部材に対してビス固定する。この施工方法により、上記高さ方向境界部は、高さ方向通し部材により押さえられ、コンクリート打設時のコンクリート圧力により外側へと開き難くなる。そして、断熱壁部の通りが実現される。
【0021】
また、本発明の両面断熱壁構造の施工方法では、打設空間内には断熱板材同士の高さ方向境界部を跨ぐように開き防止部材を配設する。そして、断熱壁部は、打設空間側から開き防止部材により押圧され、外側から高さ方向通し部材により押圧される。この施工方法により、上記高さ方向境界部は、コンクリート打設時のコンクリート圧力により外側へと開き難くなる。そして、断熱壁部の通りが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造を説明する側面図である。
【
図1B】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造を説明する断面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造に用いる断熱板材を説明する側面図である。
【
図2B】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造に用いる断熱板材を説明する上面図である。
【
図2C】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造に用いる断熱板材を説明する側面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造の配筋構造を説明する断面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造の配筋構造を説明する断面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造の配筋構造を説明する断面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造の配筋構造を説明する断面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造の配筋構造を説明する平面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態である両面断熱壁構造の配筋構造を説明する断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態である両面断熱壁構造の施工方法を説明する側面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態である両面断熱壁構造の施工方法を説明する側面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態である両面断熱壁構造の施工方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る両面断熱壁構造10を図面に基づき詳細に説明する。尚、以下の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、上下方向は両面断熱壁構造10の断熱壁部11の高さ方向を示し、左右方向は断熱壁部11を屋外側から見た場合の横幅方向を示し、前後方向は断熱壁部11の厚み方向であり、断熱壁部11の奥行方向を示す。
【0024】
図1Aは、本実施形態の両面断熱壁構造10の断熱壁部11を説明する側面図である。
図1Bは、本実施形態の両面断熱壁構造10の断熱壁部11を説明する断面図であり、
図1Aに示す断熱壁部11のA-A線方向の断面である。
図2A及び
図2Cは、本実施形態の両面断熱壁構造10に用いる断熱板材12を説明する側面図である。
図2Bは、本実施形態の両面断熱壁構造10に用いる断熱板材12を説明する上面図である。
【0025】
本実施形態の両面断熱壁構造10は、例えば、鉄筋コンクリートの建造物の断熱壁部11に用いられ、複数の断熱板材12が、その内部に配筋構造15を有するコンクリート躯体16の外壁面側及び内壁面側の両側面に配設される構造である。言い換えると、コンクリート躯体16が、対向配置される断熱板材12間の打設空間14内に形成され、断熱板材12とコンクリート躯体16とが一体化することで、断熱性及び防音性に優れた両面断熱壁構造10となる。
【0026】
図1Aに示すように、断熱壁部11は、主に、その外壁面側及び内壁面側に配設される複数枚の断熱板材12と、対向する断熱板材12を連結させる連結部材13(
図2B参照)と、対向する断熱板材12間の打設空間14(
図2B参照)に配筋される配筋構造15(
図1B参照)と、その内部に配筋構造15を包含し、打設空間14を充填するコンクリート躯体16(
図1B参照)と、打設空間14に配設され、コンクリート躯体16の内部に埋設される開き防止部材17(
図1B参照)と、を備える。尚、断熱板材12の外面12Aには、適宜、意匠面としての外壁タイルが貼付けられるが、以下の説明では、説明の都合上、上記外壁タイルを省略して図示する。
【0027】
断熱壁部11は、土間コンクリート21の上面に、連結部材13により一体化した一対の断熱板材12を組み立てることで形成される。複数の断熱板材12は、断熱壁部11の横幅方向及び高さ方向へと嵌め込んで組み立てられる。この構造により、断熱壁部11には、一点鎖線にて示す断熱板材12同士の高さ方向境界部18及び点線にて示す断熱板材12同士の横幅方向境界部19が形成される。
【0028】
尚、本実施形態の鉄筋コンクリートの建造物では、例えば、その1階部分の断熱壁部11として、断熱板材12が高さ方向へと7個積層されるが、
図1A及び
図1Bでは、断熱壁部11を部分的に図示する。また、以下の説明では、断熱壁部11として、断熱板材12を7層積層する場合について説明するが、この場合に限定するものではない。建造物等の設計条件に応じて、例えば、断熱壁部11として、断熱板材12を7.5層積層する場合でも良い。その他、断熱壁部11の高さとしては、任意の設計変更が可能である。
【0029】
図1Bに示すように、断熱板材12の横幅方向の端面及び高さ方向の端面には、予め、嵌合用の凹凸形状12Dが形成される。そして、作業者は、隣り合う断熱板材12同士を、上記凹凸形状12Dを利用して嵌め込むことで、断熱板材12同士が連結される。
【0030】
また、開き防止部材17は、断熱板材12間の打設空間14を架橋して配設され、断熱ジョイナ17Bは、断熱板材12の内面12Bと接触する。そして、断熱ジョイナ17Bは、高さ方向に隣り合う断熱板材12の高さ方向境界部18を跨ぐように配設され、高さ方向の両方の断熱板材12の内面12Bと接触する。
【0031】
ここで、開き防止部材17は、例えば、丸井産業株式会社のKPコン17Aと断熱ジョイナ17Bを用いて形成される。開き防止部材17は、KPコン17Aの左右両端側を一対の断熱ジョイナ17Bへとねじ込み、固定して形成される。そして、断熱ジョイナ17Bは、プラスチック製であり、平面視直径50mmの円形状の部材である。上述したように、開き防止部材17の全長L1は、断熱板材12の離間幅W1に合わせて180mmに設定される。尚、本実施形態では、KPコン17Aが本願発明の支持棒部に対応し、断熱ジョイナ17Bが本願発明の開き規制部に対応する。
【0032】
開き防止部材17は、コンクリート打設時における断熱壁部11の通り対策として利用されると共に、構造物として完成した後は、断熱壁部11全体としての強度の均一化として寄与する。一対の断熱板材12は、連結部材13により一体化された状態にて使用される。そのため、連結部材13の非配置領域、特に、断熱板材12同士の高さ方向境界部18では、適宜、開き防止部材17が配設されることで、連結部材13と同様に壁部の強度向上に寄与する。そして、断熱壁部11には、完成後長年に渡り大型車の通行時の振動や地震等による振動が加わるが、断熱壁部11の上記高さ方向境界部等に局所的に応力が集中することが防止され、クラックが発生し難い構造となる。
【0033】
詳細は後述するが、配筋構造15は、横配筋15Aと、縦配筋15Bと、継手配筋15Cと、を有し、それぞれ鉄筋コンクリート構造物として所望の設計強度を満たす鉄筋量が使用される。また、2段目の断熱板材12の上端部近傍には、縦配筋15Bの位置規制を行う位置規制配筋22が配設される。
【0034】
ここで、
図2Aから
図2Cに示すように、断熱板材12及び連結部材13としては、販売元がトータルサービス株式会社の図示する製品を使用する。断熱板材12は、例えば、EPS(ポリエチレンフォーム)材により形成され、その板厚T1が55mm、縦幅L2が425.3mm、横幅L3が1221mmである。また、連結部材13としては、例えば、特殊プラスチック材により形成される。そして、一対の断熱板材12が、例えば、断熱壁部11の厚み方向(紙面前後方向)に略平行な状態に離間した状態にて、連結部材13により連結状態となる。上述したように、一対の断熱板材12の離間幅W1は180mmであり、一対の断熱板材12間の空間は、打設空間14として用いられる。尚、断熱板材12の上記寸法は一例であり、使用箇所等に応じて任意の設計変更が可能である。
【0035】
また、図示したように、連結部材13は、断熱板材12の厚み方向(紙面前後方向)に貫通して配設されると共に、断熱板材12間の打設空間14を架橋して形成される。連結部材13は、断熱板材12の高さ方向(紙面上下方向)において、その中心線12Cに対して略線対称となるように配設される。そして、連結部材13は、打設空間14内では断熱板材12の上端側及び下端側まで掛からないように、断熱板材12の中心部側に配設される。つまり、連結部材13は、断熱板材12の補強部材として用いられ、コンクリート打設時のコンクリート圧力に対抗し、離間幅W1を維持する。その結果、断熱壁部11の仕上がり状態において、複数の断熱板材12から構成される断熱壁部11の直進性(以下、「通り」と呼ぶ。)が実現される。
【0036】
一方、
図2Aに示すように、連結部材13の一部が断熱板材12の外面12Aに露出するように、連結部材13は、断熱板材12と一体化して形成される。連結部材13は、外面12Aに対して高さ方向に延在して露出すると共に、例えば、203.5mmピッチにて、断熱板材12の横幅方向(紙面左右方向)に配置される。そして、断熱壁部11の高さは、建造物により異なるが、例えば、断熱板材12が高さ方向に7段積層されて形成される。このとき、本実施形態では、
図1に示すように、断熱板材12の外面12Aに露出する連結部材13は、断熱壁部11の高さ方向に整列するように配設される。
【0037】
次に、
図3Aから
図5Bを用いて、本実施形態の両面断熱壁構造10の配筋構造15について説明する。
図3A及び
図3Bは、本実施形態の両面断熱壁構造10の配筋構造15の横配筋15Aを説明する断面図である。
図4Aは、本実施形態の両面断熱壁構造10の配筋構造15の縦配筋15Bを説明する断面図である。
図4Bは、本実施形態の両面断熱壁構造10の配筋構造15の縦配筋15B及び継手配筋15Cを説明する断面図である。
図5Aは、本実施形態の両面断熱壁構造10の断熱壁部11の位置規制配筋22を説明する平面図である。
図5Bは、本実施形態の両面断熱壁構造10の断熱壁部11の位置規制配筋22を説明する断面図である。
【0038】
図3A及び
図3Bに示すように、横配筋15Aは、各段の断熱板材12の連結部材13に対して結束して固定される。具体的には、上面視略コの字形状の横配筋15Aを複数準備し、連結部材13の上面側及び下面側へと配設する。そして、連結部材13の上面側の横配筋15Aは、断熱壁部11の外壁面側に配設され、連結部材13の下面側の横配筋15Aは、断熱壁部11の内壁面側に配設される。つまり、横配筋15Aは、断熱壁部11の高さ方向において、外壁面側と内壁面側へと交互に位置するように配設される。
【0039】
尚、横配筋15Aとしては、例えば、D13(直径13mm)またはD10(直径10mm)の鉄筋が用いられ、断熱板材12の内面12Bに対して所望のかぶりが確保されるように固定されると共に、所望の設計強度を満たす鉄筋量が使用される。
【0040】
図4Aに示すように、縦配筋15Bは、7層に積層された断熱板材12の上端面であるスラブ24側から打設空間14内へと略垂直方向に挿入される。上述したように、一対の断熱板材12は、その内部に打設空間14を有するように、予め、連結部材13により一体化した状態である。そのため、本実施形態の両面断熱壁構造10では、縦配筋15Bが横配筋15Aに対して結束して固定出来ない構造となる。
【0041】
そこで、本実施形態では、日本建築学会著、壁式構造配筋指針・同解説に示されている「あき重ね継手」方式を採用し、鉄筋コンクリートの建造物として所望の強度を満たす配筋構造15を実現する。「あき重ね継手」方式では、一方向に延在する2本の鉄筋同士の重なり長さL4(
図1B参照)に対して、その離間幅W2(
図1B参照)が、0.2×L1mm以下、且つ、150mm以下の条件を満たす必要がある。
【0042】
具体的には、
図5Aに示すように、格子形状の位置規制配筋22を準備する。位置規制配筋22は、例えば、2段目の断熱板材12の連結部材13の上面であり、打設空間14内に配設されるため、その奥行幅W3は、175mmとなる。そして、位置規制配筋22としては、D5(直径5mm)の鉄筋が使用され、奥行方向に3本の横鉄筋22Aが等間隔に配列されると共に、横幅方向には、203mmピッチにて複数の縦鉄筋22Bが配設される。尚、位置規制配筋22は、配筋構造15として強度維持のために必須の配筋ではなく、横鉄筋22Aと縦鉄筋22Bは溶接接合されると共に、打設空間14内にて断熱板材12の内面12Bに対してかぶりの条件は不要となる。
【0043】
一方、
図4Bに示すように、断熱壁部11の打設空間14には、土間コンクリート21に一体化した複数の継手配筋15Cが、土間コンクリート21の上面から上方へと、例えば、断熱板材12と略同一高さ分の425mm導出する。また、
図5Bに示すように、継手配筋15Cは、連結部材13の横幅方向への略同一ピッチにて形成されると共に、打設空間14の外壁面側と内壁面側へと交互に位置するように形成される。
【0044】
ここで、
図5Bに示すように、位置規制配筋22の縦鉄筋22Bは、打設空間14の横幅方向(紙面左右方向)において、各連結部材13の間の略中心にそれぞれ位置する。そして、打設空間14では、その上面視の横幅方向において、連結部材13と縦鉄筋22Bとが、略101.5mmピッチにて交互に配設される。つまり、打設空間14には、その上面視において、位置規制配筋22と連結部材13とにより、複数の小さいブロック23が形成される。
【0045】
また、継手配筋15Cは、連結部材13近傍であり、横配筋15Aの内側に配置される。そして、継手配筋15Cは、上記ブロック23内に位置する。上述したように、縦配筋15Bは、横配筋15Aより打設空間14の中央側であり、7層に積層された断熱板材12の上端面から打設空間14内へと略垂直方向に挿入される。
【0046】
この構造により、作業者は、継手配筋15Cが配置されるブロック23内へと縦配筋15Bを立て込むことで、縦配筋15Bは、少なくとも位置規制配筋22または横配筋15Aのどちらか一方と接触することで、ブロック23の内側に直立状態となる。そして、縦配筋15Bは、継手配筋15Cに対して、上記「あき重ね継手」方式の条件を満たすことで、鉄筋コンクリート構造物として所望の鉄筋強度が実現される。その結果、本実施形態の両面断熱壁構造10では、コンクリート躯体16の両面を断熱板材12により覆うことで断熱性や防音性が向上される断熱壁部11が実現される。
【0047】
次に、本発明の他の実施形態に係る両面断熱壁構造10の施工方法を図面に基づき詳細に説明する。尚、以下の説明の際には、
図1Aから
図5Bを用いて説明した両面断熱壁構造10と同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。そして、両面断熱壁構造10の施工方法の説明に際し、適宜、
図1Aから
図5Bを用いて説明を行う。
【0048】
図6及び
図7は、本実施形態の両面断熱壁構造10の施工方法を説明する側面図であり、型枠としての断熱板材12を固定する方法を説明する。
図8は、本実施形態の両面断熱壁構造10の施工方法を説明する断面図であり、型枠としての断熱板材12を固定する方法を説明する。
【0049】
両面断熱壁構造10の施工方法では、主に、土間コンクリート21を形成する工程と、断熱壁部11の断熱板材12及び配筋構造15を形成する工程と、断熱壁部11の打設空間14にコンクリートを打設する工程と、を備える。
【0050】
土間コンクリート21を形成する工程では、基礎コンクリート(図示せず)を形成した後、基礎コンクリート上に、構造体の設計に合わせて、鉄筋構造(図示せず)及び型枠(図示せず)を組み立てる。そして、型枠内へとコンクリートを打設することで、基礎コンクリート上に土間コンクリート21を形成する。
【0051】
図4Bに示すように、土間コンクリート21の上面からは、断熱壁部11の形成領域に合わせて、複数の継手配筋15Cが導出した状態となる。本実施形態では、継手配筋15Cは、例えば、断熱板材12と略同一高さ分の425mm導出すると共に、断熱壁部11の横幅方向に対して203mmピッチにて形成される。
【0052】
図1A及び
図1Bに示すように、断熱壁部11の形成工程では、作業者は、土間コンクリート21の上面に、断熱壁部11の形成領域に合わせて墨出しを行った後、連結部材13により一体化した一対の断熱板材12を複数セット準備する。そして、作業者は、土間コンクリート21の上面に上記墨出し位置に合わせて断熱板材12を組み立てる。断熱板材12の横幅方向の端面及び高さ方向の端面には、予め、嵌合用の凹凸形状12Dが形成されているので、作業者は、上記凹凸形状12Dを利用して隣り合う断熱板材12同士を嵌め込むことで、
図1Aに示すように、断熱壁部11の構造に合わせて、断熱板材12が組み立てられる。
【0053】
ここで、
図3A及び
図3Bを用いて上述したように、配筋構造15の横配筋15Aは、連結部材13の上面及び下面に対して結束して固定される。そして、打設空間14の厚み方向の離間幅W1は180mmであり、作業者は、打設空間14内に入り込んで、横配筋15Aを結束する作業を行うことが出来ない。
【0054】
そこで、本実施形態では、断熱板材12の組み立て時に、同時に、打設空間14内に横配筋15Aを固定する。作業者は、先ずは、上記墨出し位置に合わせて、断熱板材12を断熱壁部11の横幅方向へと組み立てる。そして、作業者は、断熱板材12を1段組み立てる毎に、打設空間14の上方開口部を利用して、打設空間14内に横配筋15Aを挿入し、横配筋15Aを連結部材13に対して固定する。つまり、作業者は、断熱板材12を1段積層する毎に、横配筋15Aも打設空間14内へと配筋する。
【0055】
また、
図4Bに示すように、作業者は、2段目の横配筋15Aを連結部材13に対して固定した後、位置規制配筋22を横配筋15Aの上方であり、連結部材13の上面へと配置する。尚、位置規制配筋22は、横配筋15A等に対して結束して固定する場合でも、固定しない場合でも良い。また、位置規制配筋22の配置箇所は、1段目の断熱板材12の連結部材13の上面でも、3段目の断熱板材12の連結部材13の上面でも良く、特に、2段目の断熱板材12の連結部材13の上面に限定するものではない。
【0056】
更には、
図1Aの丸印20にて示すように、作業者は、1段目の断熱板材12の横幅方向境界部19が2段目の断熱板材12の横幅方向境界部19と連続しないように、断熱板材12を積み上げていく。本実施形態では、例えば、横幅方向境界部19が、1段目と2段目にて断熱板材12の略半分程度ずれるように、断熱板材12は積層される。この構造により、断熱板材12同士の横幅方向境界部19の上端側及び下端側が、1枚の断熱板材12により固定されることで、コンクリート打設時のコンクリート圧力により開き難くなる。尚、本実施形態の鉄筋コンクリートの建造物では、1階部分として断熱板材12を7段積み上げることで、断熱壁部11は、1階と2階の間のスラブ24と連続する。
【0057】
次に、
図4Aに示すように、作業者は、縦配筋15Bを7層に積層された断熱板材12の上端面から打設空間14内へと略垂直方向に挿入する。このとき、
図4B及び
図5Bに示すように、継手配筋15Cは、連結部材13の近傍に位置するように配置されると共に、位置規制配筋22により区画されたブロック23は、上面視において、横配筋15Aの内側の連結部材13間の打設空間14を区画する。そして、作業者は、設計図面を確認しながら、7段目の連結部材13の位置を確認しながら、縦配筋15Bを継手配筋15Cが配置されたブロック23内へと挿入する。
【0058】
また、作業者は、縦配筋15Bの先端が土間コンクリート21の上面に接触するまで、縦配筋15Bを打設空間14内へと挿入する。縦配筋15Bは、各段の横配筋15Aや位置規制配筋22と接触することで、打設空間14内にて直立状態となる。そして、コンクリートの打設時においても、縦配筋15Bは、その移動が規制され、継手配筋15Cと所望の重なり長さL4(
図1B参照)及び離間幅W2を有した状態にて、継手配筋15Cの周辺に位置することで、縦配筋15Bと継手配筋15Cとは、上記「あき重ね継手」方式の条件を満たす。
【0059】
次に、断熱壁部11の外壁面側及び内壁面側に、コンクリート打設時の断熱壁部11の通りを出すための高さ方向通し部材31及び横幅方向通し部材32を配設する。
【0060】
先ず、
図6及び
図8に示すように、高さ方向通し部材31としては、例えば、50mm角の鋼材のL字アングルを使用する。高さ方向通し部材31は、7層に積層された断熱板材12と同等の長さのものを準備する。高さ方向通し部材31には、その延在方向(紙面上下方向)に複数のビス止め孔31Aが形成される。そして、ビス止め孔31Aが形成された高さ方向通し部材31の面が、断熱板材12の外面12Aと接触すると共に、ビス止め孔31Aが、断熱板材12の外面12Aに露出する連結部材13上に位置するように、作業者は、高さ方向通し部材31を断熱板材12の外面12Aへと仮固定する。
【0061】
その後、作業者は、ビス止め孔31Aを用いて、高さ方向通し部材31側から連結部材13に対してビスを打ち込むことで、高さ方向通し部材31を断熱板材12の外面12Aへと固定する。本実施形態では、作業者は、高さ方向通し部材31を断熱壁部11の横幅方向へと、例えば、450mmピッチにてビス固定する。尚、作業者は、同様に、断熱壁部11の内壁面側においても、高さ方向通し部材31を断熱板材12の外面12Aへと固定する。
【0062】
次に、
図7及び
図8に示すように、横幅方向通し部材32として、複数の単管パイプ33を準備する。2本の単管パイプ33が、2段目と3段目の断熱板材12の高さ方向境界部18に沿って、高さ方向通し部材31の上端と接触するように配設される。そして、作業者は、ホームタイ(登録商標)34を準備し、ホームタイ(登録商標)34の先端側を断熱ジョイナ17Bへとネジ込み、固定する。この構造により、単管パイプ33は、その長さにもよるが、複数の高さ方向通し部材31を架橋するように、高さ方向通し部材31の外側に固定される。更に、横幅方向通し部材32としての2本の単管パイプ33は、4段目と5段目の断熱板材12の高さ方向境界部18に沿って配設される。尚、作業者は、同様に、断熱壁部11の内壁面側においても、高さ方向通し部材31の外側に横幅方向通し部材32を配設する。
【0063】
この構造により、断熱壁部11の断熱板材12の高さ方向境界部18は、複数の高さ方向通し部材31により打設空間14側へと押圧されると共に、開き防止部材17により打設空間14側から外側へと押圧された状態となる。そして、高さ方向通し部材31は、断熱板材12の中にて最も硬度を有する連結部材13に対してビス固定されることで、コンクリートの圧力を受けた場合でも、ビスが外れ難くなる。その結果、コンクリート打設時に、断熱板材12の高さ方向境界部18が外側へと開くことが防止され、断熱壁部11の通しが実現される。そして、コンクリート打設後の断熱板材12の開き箇所の補修作業や断熱壁部11の通しの補修作業が無くなり、あるいは大幅に低減され、工期の延長や補修作業によるコスト増大が防止される。
【0064】
次に、コンクリートの打設工程を説明する。上述したように、本実施形態の断熱壁部11は、7段の断熱板材12を積層して形成される。そして、作業者が、打設空間14に対して上記7段の高さまで一度にコンクリートを打設した場合には、断熱板材12に加わるコンクリートの圧力が大きくなり、断熱板材12の高さ方向境界部18や横幅方向境界部19が外側へと開き、断熱壁部11の通しが乱れる恐れがある。
【0065】
そこで、作業者は、1度のコンクリートの打設時には、断熱板材12の2段半程度の高さを目安として、打設空間14へとコンクリートを打設する。つまり、本実施形態の断熱壁部11は上記7段構造であり、作業者は、断熱壁部11の高さ方向において、3段階に分けてコンクリートの打設を行う。そして、作業者は、例えば、2段半目及び5段目の断熱板材12に予め複数のモルタル穴(図示せず)を形成し、モルタル穴からのモルタルの漏れを確認することで、コンクリートの充填位置を目視確認できる。このコンクリートの打設方法を用いることで、コンクリートの圧力が大きくなり過ぎることを防止し、断熱板材12の外側への開きを防止する。
【0066】
最後に、一定期間のコンクリートの養生後に、断熱壁部11等を支える支保工(図示せず)、高さ方向通し部材31及び横幅方向通し部材32を解体する。そして、作業者は、上記解体作業後に、ビス止め箇所やモルタル穴等の補修作業を行い、本実施形態の断熱壁部11が完成する。
【0067】
上述したように、本実施形態では、断熱板材12は、コンクリート打設時に型枠として用いられる。そのため、連結部材13の非配設箇所である高さ方向境界部18及びその周辺領域では、コンクリートの圧力が集中し、断熱板材12が外側へと開き易くなる。そこで、本実施形態では、開き防止部材17が、断熱壁部11の高さ方向境界部18に対して、適宜、配設されることで、高さ方向通し部材31及び横幅方向通し部材32と協働して、断熱板材12の開き易い箇所を抑えている。
【0068】
具体的には、コンクリートの打設時には、断熱板材12の内面12Bは、断熱ジョイナ17Bにより外側へと押圧されると共に、断熱板材12の外面12Aは、高さ方向通し部材31及び横幅方向通し部材32により内側へと押される。その結果、断熱壁部11は、略全体を通してコンクリートの圧力に対抗し、その横幅方向や高さ方向における通りが維持される。
【0069】
更には、断熱板材12は、連結部材13と一体化した製品であり、打設時のコンクリートの圧力に対抗し、断熱板材12が膨れ上がることが防止される。そして、断熱板材12の連結部材13の配設箇所では、主に、連結部材13の剛性により打設空間14の離間幅W1(
図2C参照)は維持される。
【0070】
断熱板材12は、コンクリートの打設時には型枠として用いられるが、コンクリートの養生後には断熱壁部11の一部として用いられる。この施工方法により、断熱板材12の外面12A側の通りが実現されると共に、断熱板材12は、コンクリート躯体16の両側面を覆うように一体となり断熱壁部11を構成する。その結果、断熱性及び防音性に優れた両面断熱壁構造10を備えた断熱壁部11が実現される。
【0071】
また、上記施工方法では、開き防止部材17の断熱ジョイナ17Bは、断熱板材12の内側の打設空間14に収納された構造となり、断熱壁部11の外周面に露出しない。そして、断熱ジョイナ17Bは、プラスチック製であり、熱伝導率が低く、コンクリートの内部へと外気温を伝達し難くなる。この構造により、断熱ジョイナ17Bと連結するKPコン17Aに断熱ジョイナ17Bを介して外気温が伝達し難く、コンクリート内部との温度差による結露がKPコン17A表面に発生し難くなる。
【0072】
また、コンクリート打設時にホームタイ(登録商標)34が断熱ジョイナ17Bと連結することで、高さ方向境界部18の断熱板材12に断面欠損が生じる場合もあるが、その欠損箇所の内側には、熱伝導率の低い断熱ジョイナ17Bが配設されることで、断熱壁部11の断熱性能が損なわれることが防止される。
【0073】
尚、本実施形態の両面断熱壁構造10では、開き防止部材17が、2段目と3段目の間の断熱板材12の高さ方向境界部18及び4段目と5段目の間の断熱板材12の高さ方向境界部18に対して、適宜、配設される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、開き防止部材17が、断熱壁部11の全ての高さ方向境界部18に対して配設されると共に、横幅方向通し部材32も断熱壁部11の全ての高さ方向境界部18に対して配設される場合でも良い。
【0074】
また、本実施形態の両面断熱壁構造10の施工方法では、高さ方向通し部材31は、7層または7.5層に積層された断熱板材12と同等の長さのものを準備する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。高さ方向通し部材31は、断熱板材12同士の高さ方向境界部18を跨いで配設されていれば良く、例えば、断熱壁部11の高さに応じて、複数本の高さ方向通し部材31を配設する場合でも良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 両面断熱壁構造
11 断熱壁部
12 断熱板材
12A 外面
12B 内面
13 連結部材
14 打設空間
15 配筋構造
15A 横配筋
15B 縦配筋
15C 継手配筋
16 コンクリート躯体
17 開き防止部材
17A KPコン
17B 断熱ジョイナ
18 高さ方向境界部
19 横幅方向境界部
21 土間コンクリート
22 位置規制配筋
22A 横鉄筋
22B 縦鉄筋
23 ブロック
24 スラブ
31 高さ方向通し部材
31A ビス止め孔
32 横幅方向通し部材
33 単管パイプ
34 ホームタイ(登録商標)