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特開2024-100282電力変換装置及び電力変換装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100282
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004156
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】古井 崇介
(72)【発明者】
【氏名】大元 靖理
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS13
5H730BB27
5H730DD04
5H730EE03
5H730EE08
5H730EE13
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】同期整流時における損失を低減させる。
【解決手段】電力変換装置(10)は、2次側に流れる電流を整流して負荷(51)へ供給する整流部(16)と、負荷に流れる負荷電流を検出する電流センサ(19)と、電流センサによって検出された負荷電流に基づいて整流部を制御する制御部(30)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から入力される入力電圧を所定の出力電圧に変換して負荷に電力を供給する電力変換装置であって、
前記電源から入力される入力電圧を所定の変成比に応じた電圧に変換するトランスと、
前記トランスの1次側において第1方向に電流を流すために用いられる第1スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、
前記トランスの1次側において前記第1方向とは異なる第2方向に電流を流すために用いられる第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子と、
前記第1方向に電流が流れた場合に、前記トランスの2次側において第3方向に流れる電流を整流して負荷へ供給し、前記第2方向に電流が流れた場合に、前記トランスの2次側において前記第3方向とは異なる第4方向に流れる電流を整流して負荷へ供給する整流部と、
前記電力変換装置に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部によって検出された前記電流に基づいて前記整流部を制御する制御部と、を備え、
前記整流部は、前記第3方向に流れる電流の経路に設けられる第5スイッチング素子と、前記第4方向に流れる電流の経路に設けられる第6スイッチング素子と、を少なくとも有し、
前記制御部は、
前記電流検出部によって検出された前記電流が第1閾値以下である場合、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御し、
前記電流検出部によって検出された前記電流が前記第1閾値より大きい場合、少なくとも前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、少なくとも前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電流検出部によって検出された前記電流が第2閾値以上かつ前記第1閾値以下である場合、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御し、
前記電流検出部によって検出された前記電流が前記第2閾値より小さい場合、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子がオフ状態となるように前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子を制御する
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電流検出部によって検出された前記電流が前記第1閾値以下の値から前記第1閾値より大きい値に変化した場合、第1所定時間の間、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子がオフ状態となるように前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子を制御し、
前記第1所定時間が経過した後、少なくとも前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、少なくとも前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御し、
前記電流検出部によって検出された前記電流が前記第1閾値より大きい値から前記第1閾値以下の値に変化した場合、第2所定時間の間、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子がオフ状態となるように前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子を制御し、
前記第2所定時間が経過した後、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記入力電圧、前記出力電圧又は各スイッチング素子のオンオフ状態を切り替えるスイッチング周波数に応じて、前記第1閾値、第2閾値、第1所定時間及び第2所定時間のうち、少なくとも1つを変更する
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記整流部は、前記第3方向に流れる電流の経路に設けられる第8スイッチング素子と、前記第4方向に流れる電流の経路に設けられる第7スイッチング素子と、を更に有し、
前記制御部は、
前記電流検出部によって検出された前記電流が第1閾値以下である場合、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子を制御し、かつ、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子を制御し、
前記電流検出部によって検出された前記電流が前記第1閾値より大きい場合、少なくとも前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子を制御し、かつ、少なくとも前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子を制御する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電流検出部によって検出される前記電流は、前記負荷に流れる負荷電流と相関関係を有する電流であり、
前記制御部は、前記電流検出部によって検出された電流の平均値と相関関係を有する電流値に基づいて前記整流部を制御する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
電源から入力される入力電圧を所定の出力電圧に変換して負荷に電力を供給する電力変換装置の制御方法であって、
前記電力変換装置は、
前記電源から入力される入力電圧を所定の変成比に応じた電圧に変換するトランスと、
前記トランスの1次側において第1方向に電流を流すために用いられる第1スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、
前記トランスの1次側において前記第1方向とは異なる第2方向に電流を流すために用いられる第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子と、
前記第1方向に電流が流れた場合に、前記トランスの2次側において第3方向に流れる電流を整流して負荷へ供給し、前記第2方向に電流が流れた場合に、前記トランスの2次側において前記第3方向とは異なる第4方向に流れる電流を整流して負荷へ供給する整流部と、
前記電力変換装置に流れる電流を検出する電流検出部と、
を備え、
前記整流部は、前記第3方向に流れる電流の経路に設けられる第5スイッチング素子と、前記第4方向に流れる電流の経路に設けられる第6スイッチング素子と、を少なくとも有し、
前記電流検出部によって検出された前記電流が第1閾値以下である場合、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御し、
前記電流検出部によって検出された前記電流が前記第1閾値より大きい場合、少なくとも前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、少なくとも前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御する、
電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置及び電力変換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルに電流が連続して流れる電流連続モードと、コイルに電流が不連続に流れる電流不連続モードと、を切り替えて同期整流回路を制御するスイッチング電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-158301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スイッチング素子を制御するモードによってはボディーダイオード通電による損失などが発生するおそれがあるが、特許文献1にこの点に関する記載はない。
【0005】
本開示の一態様は、同期整流時における損失を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る電力変換装置は、電源から入力される入力電圧を所定の出力電圧に変換して負荷に電力を供給する電力変換装置であって、前記電源から入力される入力電圧を所定の変成比に応じた電圧に変換するトランスと、前記トランスの1次側において第1方向に電流を流すために用いられる第1スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、前記トランスの1次側において前記第1方向とは異なる第2方向に電流を流すために用いられる第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子と、前記第1方向に電流が流れた場合に、前記トランスの2次側において第3方向に流れる電流を整流して負荷へ供給し、前記第2方向に電流が流れた場合に、前記トランスの2次側において前記第3方向とは異なる第4方向に流れる電流を整流して負荷へ供給する整流部と、前記電力変換装置に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部によって検出された前記電流に基づいて前記整流部を制御する制御部と、を備え、前記整流部は、前記第3方向に流れる電流の経路に設けられる第5スイッチング素子と、前記第4方向に流れる電流の経路に設けられる第6スイッチング素子と、を少なくとも有し、前記制御部は、前記電流検出部によって検出された前記電流が第1閾値以下である場合、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御し、前記電流検出部によって検出された前記電流が前記第1閾値より大きい場合、少なくとも前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、少なくとも前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御する。
【0007】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る電力変換装置の制御方法は、電源から入力される入力電圧を所定の出力電圧に変換して負荷に電力を供給する電力変換装置の制御方法であって、前記電力変換装置は、前記電源から入力される入力電圧を所定の変成比に応じた電圧に変換するトランスと、前記トランスの1次側において第1方向に電流を流すために用いられる第1スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、前記トランスの1次側において前記第1方向とは異なる第2方向に電流を流すために用いられる第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子と、前記第1方向に電流が流れた場合に、前記トランスの2次側において第3方向に流れる電流を整流して負荷へ供給し、前記第2方向に電流が流れた場合に、前記トランスの2次側において前記第3方向とは異なる第4方向に流れる電流を整流して負荷へ供給する整流部と、前記電力変換装置に流れる電流を検出する電流検出部と、を備え、前記整流部は、前記第3方向に流れる電流の経路に設けられる第5スイッチング素子と、前記第4方向に流れる電流の経路に設けられる第6スイッチング素子と、を少なくとも有し、前記電流検出部によって検出された前記電流が第1閾値以下である場合、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御し、前記電流検出部によって検出された前記電流が前記第1閾値より大きい場合、少なくとも前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第5スイッチング素子がオン状態となるように前記第5スイッチング素子を制御し、かつ、少なくとも前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子のどちらか一方がオン状態である期間では、前記第6スイッチング素子がオン状態となるように前記第6スイッチング素子を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、同期整流時における損失を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態1に係る電力変換システムの一例を示す概略構成図である。
図2】第1方式における各スイッチング素子のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。
図3】電流が流れる経路を説明する図である。
図4】電流が流れる経路を説明する図である。
図5】第2方式における各スイッチング素子のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。
図6】電流連続モードを説明する図である。
図7】電流不連続モードを説明する図である。
図8】スイッチング制御方法の流れの一例を説明するフローチャートである。
図9】本開示の実施形態2に係る電力変換システムの一例を示す概略構成図である。
図10】第1方式における各スイッチング素子のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。
図11】第2方式における各スイッチング素子のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。
図12】第3方式における各スイッチング素子のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0011】
<電力変換システム100の構成>
図1は、本開示の実施形態1に係る電力変換システム100の一例を示す概略構成図である。図1に示すように電力変換システム100は、外部の電源50と、電力変換装置10と、外部の負荷51~52とを備えている。電力変換システム100は、電源50から入力される入力電圧を所定の出力電圧に変換し、負荷51~52に電力を供給する。電力変換装置10の用途は特に限定されないが、一例として電力変換装置10は車両に搭載される。電力変換装置10が車両に搭載される場合、電源50は例えば高圧バッテリであり、負荷51は例えば低圧バッテリであり、負荷52は例えばモータ又は電装品などである。なお、低圧バッテリである負荷51が負荷52に電力を供給する構成であってもよい。また、負荷51又は負荷52のどちらか一方が電力変換装置10に接続される構成であってもよい。以下では、電力変換装置10に接続される外部の負荷を単に「外部負荷」と称する場合がある。
【0012】
<電力変換装置10>
図1に示すように、電力変換装置10は、第1端子11、第2端子12と、正母線L1と、負母線L2と、第1コンデンサ13と、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4と、トランス15と、整流部16と、コイル17と、第2コンデンサ18と、電流センサ19と、第3端子21、第4端子22と、制御部30と、を備えている。電力変換装置10は、例えばDCDCコンバータである。
【0013】
第1端子11は、電源50の正端子に接続されている。第2端子12は、電源50の負端子に接続されている。第1コンデンサ13の一端は正母線L1に接続されており、第1コンデンサ13の他端は負母線L2に接続されている。第1コンデンサ13は、平滑コンデンサとして機能する。なお、本実施形態では、電力変換装置10が第1コンデンサ13を備えるものとして説明するが、これに限定されず、第1コンデンサ13は電力変換装置10の外部に設けられる構成であってもよい。
【0014】
第1~第4スイッチング素子Q1~Q4は、電源50から供給される直流電圧を交流電圧に変換するために用いられる。以下では第1~第4スイッチング素子Q1~Q4を電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)として説明するが、これに限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが用いられてもよい。
【0015】
本実施形態では、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4によってフルブリッジ型の回路が形成されている。第1~第4スイッチング素子Q1~Q4の接続関係について説明する。
【0016】
第1スイッチング素子Q1は、正母線L1と第1ノードN1とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第1ノードN1を正母線L1に接続する。第1スイッチング素子Q1のドレインは正母線L1に接続されており、ソースは第1ノードN1に接続されている。また、第1スイッチング素子Q1のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0017】
第2スイッチング素子Q2は、負母線L2と第1ノードN1とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第1ノードN1を負母線L2に接続する。第2スイッチング素子Q2のドレインは第1ノードN1に接続されており、ソースは負母線L2に接続されている。また、第2スイッチング素子Q2のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0018】
第1ノードN1は、第1スイッチング素子Q1のソースと第2スイッチング素子Q2のドレインとの接続点である。
【0019】
第3スイッチング素子Q3は、正母線L1と第2ノードN2とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第2ノードN2を正母線L1に接続する。第3スイッチング素子Q3のドレインは正母線L1に接続されており、ソースは第2ノードN2に接続されている。また、第3スイッチング素子Q3のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0020】
第4スイッチング素子Q4は、負母線L2と第2ノードN2とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第2ノードN2を負母線L2に接続する。第4スイッチング素子Q4のドレインは第2ノードN2に接続されており、ソースは負母線L2に接続されている。また、第4スイッチング素子Q4のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0021】
第2ノードN2は、第3スイッチング素子Q3のソースと第4スイッチング素子Q4のドレインとの接続点である。
【0022】
また、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4は、それぞれボディーダイオードを備えている。例えば第1スイッチング素子Q1を取り上げて説明すると、ボディーダイオードのアノードは第1スイッチング素子Q1のソースに接続されており、カソードは第1スイッチング素子Q1のドレインに接続されている。第2~第4スイッチング素子Q2~Q4のボディーダイオードについても同様である。なお、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4の各々に形成されたボディーダイオードの代わりとして、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4とは別体のダイオードを用意し、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のそれぞれに、当該別体のダイオードをそれぞれ第1~第4スイッチング素子Q1~Q4に外付けした場合にも本開示は適用可能である。ボディーダイオードの代わりとしては、例えば、逆回復特性に優れるファストリカバリーダイオードを挙げることができる。
【0023】
トランス15は、1次側回路と2次側回路とを直流的に絶縁するとともに交流的に接続する。より詳しくは、トランス15は、1次側回路から供給された交流電圧を所定の変成比で変換し、変換された交流電圧を2次側回路に供給する。トランス15は、1次側巻線15Aと、2次側巻線15B及び15Cを備える。1次側巻線15Aの一端は第1ノードN1に接続されており、他端は第2ノードN2に接続されている。2次側巻線15B及び15Cの一端は第3ノードN3に接続されており、他端は第4端子22に接続されている。
【0024】
整流部16は、2次側巻線15B及び15Cから出力された交流電圧を整流する。整流部16は、センタタップ型の回路であり、第5~第6スイッチング素子Q5~Q6を備えている。図1ではセンタタップは、グランドに接続されているがこれに限定されない。センタタップが出力電圧の正側に接続されてもよい。この場合、第5スイッチング素子Q5の位置と、第6スイッチング素子Q6の位置を入れ替え、更に第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6のドレイン端子及びソース端子の位置を左右反転させればよい。
【0025】
第5~第6スイッチング素子Q5~Q6は、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4と同様に電界効果トランジスタとして説明するが、これに限定されない。
【0026】
第5スイッチング素子Q5は、2次側巻線15Bと第3ノードN3とを結ぶ経路に設けられる。第5スイッチング素子Q5のドレインは第3ノードN3に接続されており、ソースは2次側巻線15Bに接続されている。また、第5スイッチング素子Q5のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0027】
第6スイッチング素子Q6は、2次側巻線15Cと第3ノードN3とを結ぶ経路に設けられる。第6スイッチング素子Q6のドレインは第3ノードN3に接続されており、ソースは2次側巻線15Cに接続されている。また、第6スイッチング素子Q6のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0028】
コイル17及び第2コンデンサ18は、整流部16の出力電圧を平滑化するために用いられる。コイル17の一端は第3ノードN3に接続されており、他端は第3端子21に接続されている。第2コンデンサ18の一端は第3端子21に接続されており、他端は第4端子22に接続されている。
【0029】
電流センサ19は、外部負荷に流れる負荷電流を検出するセンサである。電流センサ19は、コイル17と第3端子21との間に接続されている。電流センサ19は、検出した負荷電流を制御部30に送信する。
【0030】
制御部30は、各種プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)、各種プログラムを実行する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)などを備える。制御部30は、入力電圧、出力電圧及び負荷電流などに基づいて、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6の動作を制御することにより、電力変換装置10の動作を制御する。具体的には、制御部30は、入力電圧、出力電圧及び負荷電流などに基づいて各スイッチング素子に出力するゲート信号を生成する。制御部30は、これらのゲート信号を用いてPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより、各スイッチング素子を制御する。なお、入力電圧及び出力電圧については図示しない電圧センサによって取得される。
【0031】
第3端子21は、負荷51の正端子に接続されている。第4端子22は、負荷51の負端子に接続されている。
【0032】
<同期整流の方式>
本実施形態では、同期整流を用いて出力電圧を制御する。同期整流の方式として2つの方式が用いられる。
【0033】
1つ目の方式は、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4が共にオン状態となる期間のみ、又は第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3が共にオン状態となる期間のみ、同期整流を行う方式である。この方式を以下では「第1方式」と称する。
【0034】
2つ目の方式は、少なくとも第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4のどちらか一方がオン状態となる期間、又は少なくとも第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3のどちらか一方がオン状態となる期間において同期整流を行う方式である。この方式を以下では「第2方式」と称する。第2方式では、整流部16のボディーダイオードに電流が流れる時間が第1方式より短くなる。「整流部16のボディーダイオード」とは、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6のボディーダイオードを指す。また、以下では「ボディーダイオードに電流が流れる時間」を単に「ボディーダイオード通電時間」と称する場合がある。
【0035】
本実施形態では、制御部30は、負荷電流の平均値を用いて同期整流の方式を切り替える。具体的には、制御部30は、電流センサ19から取得した負荷電流を用いて、負荷電流の平均値を算出する。制御部30は、算出した負荷電流の平均値と第1閾値とを比較する。この第1閾値は、予め実験又はシミュレーションを通じて求めることができる。負荷電流の平均値が第1閾値より大きい値から第1閾値以下の値に変化した場合、制御部30は、第2方式から第1方式に切り替える。一方で、負荷電流の平均値が第1閾値以下の値から第1閾値より大きい値に変化した場合、制御部30は、第1方式から第2方式に切り替える。なお、負荷電流の平均値が第1閾値以下である場合、制御部30は第1方式を用いる、と言い換えられてもよい。また、負荷電流の平均値が第1閾値より大きい値である場合、制御部30は第2方式を用いる、と言い換えられてもよい。「負荷電流の平均値」とは、例えば、所定時間に流れた負荷電流の平均値である。
【0036】
<第1方式及び第2方式のスイッチング制御方法>
次に、第1方式及び第2方式のスイッチング制御方法について説明する。最初に図2を参照して第1方式のスイッチング制御方法について説明する。
【0037】
図2は、第1方式における第1~第6スイッチング素子Q1~Q6のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。図2において、第1~第3,第5~第6スイッチング素子Q1~Q3,Q5~Q6の初期状態はオフ状態であり、第4スイッチング素子Q4の初期状態はオン状態である。
【0038】
タイミングT1において、制御部30は、第1スイッチング素子Q1をオフ状態からオン状態に切り替える。これにより、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4が共にオン状態となる。これにより、1次側において、第1スイッチング素子Q1、第1ノードN1、1次側巻線15A、第2ノードN2、及び第4スイッチング素子Q4を通って電流が流れる。このように電流が流れる方向を第1方向と称する。
【0039】
また、タイミングT1において、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4が共にオン状態となるため、制御部30は、第5スイッチング素子Q5をオフ状態からオン状態に切り替えて同期整流を開始する。これにより、2次側において、2次側巻線15B、第5スイッチング素子Q5、第3ノードN3、及びコイル17を通って電流が流れる。このように電流が流れる方向を第3方向と称する。
【0040】
タイミングT2において、制御部30は、第4スイッチング素子Q4をオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4が共にオン状態ではなくなるため、制御部30は、第5スイッチング素子Q5をオン状態からオフ状態に切り替えて、同期整流を停止させる。
【0041】
タイミングT3において、制御部30は、第3スイッチング素子Q3をオフ状態からオン状態に切り替える。タイミングT4において、制御部30は、第1スイッチング素子Q1をオン状態からオフ状態に切り替える。
【0042】
タイミングT5において、制御部30は、第2スイッチング素子Q2をオフ状態からオン状態に切り替える。これにより、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3が共にオン状態となる。これにより、1次側において、第3スイッチング素子Q3、第2ノードN2、1次側巻線15A、第1ノードN1、及び第2スイッチング素子Q2を通って電流が流れる。このように電流が流れる方向を第2方向と称する。
【0043】
また、タイミングT5において、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3が共にオン状態となるため、制御部30は、第6スイッチング素子Q6をオフ状態からオン状態に切り替えて同期整流を開始する。これにより、2次側において、2次側巻線15C、第6スイッチング素子Q6、第3ノードN3、及びコイル17を通って電流が流れる。このように電流が流れる方向を第4方向と称する。
【0044】
タイミングT6において、制御部30は、第3スイッチング素子Q3をオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3が共にオン状態ではなくなるため、制御部30は、第6スイッチング素子Q6をオン状態からオフ状態に切り替えて、同期整流を停止させる。
【0045】
タイミングT7において、制御部30は、第4スイッチング素子Q4をオフ状態からオン状態に切り替える。タイミングT8において、制御部30は、第2スイッチング素子Q2をオン状態からオフ状態に切り替える。タイミングT9におけるスイッチング制御は、タイミングT1におけるスイッチング制御と同じため、説明を省略する。
【0046】
図3及び図4は、電流が流れる方向である第1~第4方向を示す図である。第1方向は、図3において、符号C1で示される方向である。第3方向は、図3において、符号C3で示される方向である。第2方向は、図4において、符号C2で示される方向である。第4方向は、図4において、符号C4で示される方向である。
【0047】
次に図5を参照して第2方式のスイッチング制御方法について説明する。
【0048】
図5は、第2方式における第1~第6スイッチング素子Q1~Q6のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。図5において、第1~第3,第6スイッチング素子Q1~Q3,Q6の初期状態はオフ状態であり、第4~第5スイッチング素子Q4~Q5の初期状態はオン状態である。初期状態において、第1スイッチング素子Q1はオフ状態である一方で、第4スイッチング素子Q4はオン状態である。したがって、同期整流を行うために第5スイッチング素子Q5はオン状態となっている。
【0049】
タイミングT1において、制御部30は、第1スイッチング素子Q1をオフ状態からオン状態に切り替える。タイミングT2において、制御部30は、第4スイッチング素子Q4をオン状態からオフ状態に切り替える。このとき、第1スイッチング素子Q1はオン状態であるため、制御部30は第5スイッチング素子Q5のオン状態を維持し、引き続き同期整流を行う。
【0050】
タイミングT3において、制御部30は、第3スイッチング素子Q3をオフ状態からオン状態に切り替える。このとき、第2スイッチング素子Q2はオフ状態であるが、制御部30は、第6スイッチング素子Q6をオフ状態からオン状態に切り替えて同期整流を開始する。
【0051】
タイミングT4において、制御部30は、第1スイッチング素子Q1をオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4が共にオン状態ではなくなるため、制御部30は、第5スイッチング素子Q5をオン状態からオフ状態に切り替えて、同期整流を停止させる。
【0052】
タイミングT5において、制御部30は、第2スイッチング素子Q2をオフ状態からオン状態に切り替える。タイミングT6において、制御部30は、第3スイッチング素子Q3をオン状態からオフ状態に切り替える。このとき、第2スイッチング素子Q2はオン状態であるため、制御部30は第6スイッチング素子Q6のオン状態を維持し、引き続き同期整流を行う。
【0053】
タイミングT7において、制御部30は、第4スイッチング素子Q4をオフ状態からオン状態に切り替える。このとき、第1スイッチング素子Q1はオフ状態であるが、制御部30は、第5スイッチング素子Q5をオフ状態からオン状態に切り替えて同期整流を開始する。
【0054】
タイミングT8において、制御部30は、第2スイッチング素子Q2をオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3が共にオン状態ではなくなるため、制御部30は、第6スイッチング素子Q6をオン状態からオフ状態に切り替えて、同期整流を停止させる。タイミングT9におけるスイッチング制御は、タイミングT1におけるスイッチング制御と同じため、説明を省略する。
【0055】
<第1方式と第2方式との比較>
次に、第1方式と第2方式との比較について説明する。第1方式では第2方式と比べて、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6のボディーダイオード通電時間が長い。第5スイッチング素子Q5に着目すると、第1方式では、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4が共にオン状態となる期間のみ、また第6スイッチング素子Q6に着目すると、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3が共にオン状態となる期間のみ、同期整流が行われる。
【0056】
したがって、図2のタイミングT1~T2の期間では第5スイッチング素子Q5のボディーダイオードに電流が流れず、またタイミングT5~T6の期間では第6スイッチング素子Q6のボディーダイオードに電流は流れないが、タイミングT2~T5,T6~T9の期間では第5スイッチング素子Q5又は第6スイッチング素子Q6のボディーダイオードに、もしくは第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6の両方のボディーダイオードに電流が流れる。なお図2において、タイミングT2~T5,T6~T9の期間は、コイル17の放電期間である。
【0057】
これに対し、第2方式では図5のタイミングT4~T5の期間では第5スイッチング素子Q5のボディーダイオードに電流が流れ、タイミングT8~T9の期間では第6スイッチング素子Q6のボディーダイオードに電流が流れるものの、タイミングT1~T4の期間及びタイミングT5~T8の期間では、第5スイッチング素子Q5又は第6スイッチング素子Q6のボディーダイオードに電流は流れない。
【0058】
<電流連続モード及び電流不連続モード>
ボディーダイオード通電時間が短いほうが通電損失は少ない。したがって、ボディーダイオードの通電損失のみに着目した場合、第2方式のほうが第1方式より有利である。しかし、同期整流では電流不連続モードにおける逆電流による損失を考慮する必要がある。
【0059】
ここで、電流連続モード及び電流不連続モードについて説明する。最初に図6を参照して電流連続モードについて説明する。電流連続モードとは、図6に示すように、図1に示したコイル17に電流が連続して流れるモードである。電流連続モードは、CCM(Continuous Conduction Mode)と呼ばれることもある。電流連続モードは、例えば、重負荷のように大きい負荷電流が流れる場合のモードである。
【0060】
次に図7を参照して電流不連続モードについて説明する。電流不連続モードとは、図7に示すように、コイル17に流れる電流が不連続となるモードである。電流不連続モードでは、1周期毎に0Aになる期間が存在する。図7ではタイミングT2~T5の間、及びタイミングT6~T9の間でコイル17に流れる電流が0Aになる期間が存在する。電流不連続モードは、DCM(Discontinuous Conduction Mode)と呼ばれることもある。電流不連続モードは、例えば、軽負荷のように小さい負荷電流が流れる場合のモードである。
【0061】
第2方式において、外部負荷が軽負荷である場合、コイル17に流れる電流が0Aになる期間では、負荷側からスイッチング素子側に向けて電流が逆流して損失が発生するおそれがある。これに対し、第1方式であれば外部負荷が軽負荷であっても逆電流は発生しない。したがって、第1方式であれば外部負荷の種類に関わらず、逆電流による損失が低減される。ただし、上述したように、第1方式では第2方式と比較して、ボディーダイオード通電時間が長いため、ボディーダイオードの通電損失は第2方式より大きい。
【0062】
そこで、本実施形態では、負荷電流の平均値に応じて同期整流の方式を切り替える構成とした。具体的には、負荷電流の平均値が第1閾値より大きい値から第1閾値以下の値に変化した場合、制御部30は、第2方式から第1方式に切り替える。一方で、負荷電流の平均値が第1閾値以下の値から第1閾値より大きい値に変化した場合、制御部30は、第1方式から第2方式に切り替える。これにより、外部負荷が軽負荷である場合は第1方式によって同期整流が行われるため、逆電流による損失が低減される。また、外部負荷が重負荷である場合は第2方式によって同期整流が行われるため、ボディーダイオードの通電損失が低減される。
【0063】
<スイッチング制御方法の流れ>
次に、図8のフローチャートを参照して、制御部30によるスイッチング制御方法の流れの一例を説明する。
【0064】
ステップS101において、制御部30は、電流センサ19から外部負荷に流れる負荷電流を取得する。制御部30は、取得した負荷電流を用いて、負荷電流の平均値を算出する。
【0065】
処理はステップS102に進み、制御部30は、算出した負荷電流の平均値と第1閾値とを比較する。負荷電流の平均値が第1閾値以下である場合(ステップS102でYES)、処理はステップS103に進み、制御部30は第1方式を用いて同期整流を行う。一方、負荷電流の平均値が第1閾値より大きい場合(ステップS102でNO)、処理はステップS104に進み、制御部30は第2方式を用いて同期整流を行う。
【0066】
PWM制御が終了するまで、ステップS101~S104の処理は繰り返し実行される(ステップS105)。
【0067】
<作用効果>
以上説明したように、実施形態1に係る電力変換装置10によれば、以下の作用効果が得られる。
【0068】
電力変換装置10は、電源50から入力される入力電圧を所定の出力電圧に変換して外部負荷に電力を供給する装置である。電力変換装置10は、電源50から入力される入力電圧を所定の変成比に応じた電圧に変換するトランス15と、トランス15の1次側において第1方向に電流を流すために用いられる第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4と、トランス15の1次側において第1方向とは異なる第2方向に電流を流すために用いられる第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3と、を備える。
【0069】
また、電力変換装置10は、第1方向に電流が流れた場合に、トランス15の2次側において第3方向に流れる電流を整流して外部負荷へ供給し、第2方向に電流が流れた場合に、トランスの2次側において第3方向とは異なる第4方向に流れる電流を整流して外部負荷へ供給する整流部16と、外部負荷に流れる電流を検出する電流検出部と、電流検出部によって検出された負荷電流に基づいて整流部16を制御する制御部30と、を備える。なお、「電流検出部」の一例は電流センサ19である。
【0070】
整流部16は、第3方向に流れる電流の経路に設けられる第5スイッチング素子Q5と、第4方向に流れる電流の経路に設けられる第6スイッチング素子Q6と、を少なくとも有する。
【0071】
制御部30は、電流検出部によって検出された負荷電流の平均値が第1閾値以下である場合、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4がオン状態である期間では、第5スイッチング素子Q5がオン状態となるように第5スイッチング素子Q5を制御し、かつ、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3がオン状態である期間では、第6スイッチング素子Q6がオン状態となるように第6スイッチング素子Q6を制御する。また、制御部30は、電流検出部によって検出された負荷電流の平均値が第1閾値より大きい場合、少なくとも第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4のどちらか一方がオン状態である期間では、第5スイッチング素子Q5がオン状態となるように第5スイッチング素子Q5を制御し、かつ、少なくとも第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3のどちらか一方がオン状態である期間では、第6スイッチング素子Q6がオン状態となるように第6スイッチング素子Q6を制御する。
【0072】
上記構成によれば、外部負荷が軽負荷である場合は第1方式によって同期整流が行われるため、逆電流による損失が低減される。また、外部負荷が重負荷である場合は第2方式によって同期整流が行われるため、ボディーダイオードの通電損失が低減される。これにより電力変換装置10の変換効率が向上する。
【0073】
また、負荷電流の大きさに応じて第1方式と第2方式を切り替えることにより、同期整流を行う期間を広げることができる。これにより、例えば、電力変換装置10が車両に搭載される場合、車両の実用負荷の領域で変換効率が向上する。
【0074】
また、電流不連続モードにおいて、コイル17における0Aを検出するために高価なコントローラ及び追加の回路が必要である。しかしながら、本実施形態ではコイル17における0Aを検出することなく、第1方式と第2方式を切り替えることができるため、高価なコントローラ及び追加の回路が不要となり、コスト面で有利である。
【0075】
また、同期整流を「行う」、「行わない」の二択のみを用いた場合、変換効率要件を満たすための設計自由度が制約されるところ、本実施形態では第1方式と第2方式を切り替える方式を採用するため、設計自由度が向上し、様々な仕様の製品に展開することが可能となる。
【0076】
また、制御部30は、入力電圧、出力電圧又は各スイッチング素子のオンオフ状態を切り替えるためのPWM信号のスイッチング周波数に応じて、第1閾値、第2閾値、第1所定時間及び第2所定時間のうち、少なくとも1つを変更してもよい。これにより、損失を低減しつつ多様な負荷に対応することが可能となる。
【0077】
〔実施形態1の変形例1〕
実施形態1では、負荷電流の大きさに応じて第1方式と第2方式を切り替えることを説明した。第1方式と第2方式はどちらも同期整流を行う方式である。変形例1では、同期整流を停止する方式を新たに追加し、これら3つの方式を切り替える。3つの方式を切り替えるために、実施形態1で用いた第1閾値の他に、もう1つの閾値である第2閾値を用いる。第2閾値<第1閾値である。第2閾値も第1閾値と同様に予め実験又はシミュレーションを通じて求めることができる。第1閾値及び第2閾値を用いた切り替え方法について、具体的に説明する。
【0078】
負荷電流の平均値が第2閾値以上かつ第1閾値以下である場合、制御部30は、第1方式を用いて同期整流を行う。負荷電流の平均値が第2閾値より小さい場合、制御部30は、同期整流を停止する。すなわち、制御部30は、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のオンオフ状態に依らず、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6がオフ状態となるように第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6を制御する。なお、同期整流を停止する場合の負荷は、無負荷から軽負荷までの間の負荷である。
【0079】
上記構成によれば、負荷電流の大きさに応じて、「同期整流停止方式」、「第1方式」、及び「第2方式」の3方式で切り替わることになる。これにより、実施形態1で説明した効果に加え、同期整流に係るスイッチング損失がさらに低減される。
【0080】
〔実施形態1の変形例2〕
負荷電流の大きさに応じて第1方式と第2方式を切り替える際に、デッドタイムを設けてもよい。例えば、負荷電流の平均値が第1閾値以下の値から第1閾値より大きい値に変化した場合、即座に第1方式から第2方式に切り替えるのではなく、第1所定時間の間、一時的に同期整流を停止する期間が設けられてもよい。制御部30は、第1所定時間が経過した後に第2方式に切り替えてもよい。
【0081】
また、負荷電流の平均値が第1閾値より大きい値から第1閾値以下の値に変化した場合、即座に第2方式から第1方式に切り替えるのではなく、第2所定時間の間、一時的に同期整流を停止する期間が設けられてもよい。制御部30は、第2所定時間が経過した後に第1方式に切り替えてもよい。第1所定時間と第2所定時間は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0082】
マイコンのPWM機能の制約により第1方式と第2方式をスムーズに切り替えることが難しい場合がある。しかし、上記構成によれば、第1方式と第2方式を切り替える際に一時的に同期整流を停止する期間が設けられるため、そのような制約があったとしても第1方式と第2方式をスムーズに切り替えることが可能となる。
【0083】
〔実施形態2〕
次に、図9~11を参照して、本開示の実施形態2を説明する。実施形態2が実施形態1と異なるのは、2次側の整流部16がセンタタップ型ではなくフルブリッジ型として構成される点である。実施形態1と重複する構成については符号を引用してその説明は省略する。以下、相違点を中心に説明する。
【0084】
図9は、実施形態2に係る電力変換システム200の一例を示す概略構成図である。図9に示すように、整流部16は、第5~第6スイッチング素子Q5~Q6の他に、第7~第8スイッチング素子Q7~Q8を有する。これら第5~第8スイッチング素子Q5~Q8によってフルブリッジ型の回路が形成される。第7~第8スイッチング素子Q7~Q8は、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6と同様に電界効果トランジスタとして説明するが、これに限定されない。
【0085】
第5スイッチング素子Q5は、正母線L3と第4ノードN4とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第4ノードN4を正母線L3に接続する。第5スイッチング素子Q5のドレインは正母線L3に接続されており、ソースは第4ノードN4に接続されている。また、第5スイッチング素子Q5のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0086】
第6スイッチング素子Q6は、負母線L4と第4ノードN4とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第4ノードN4を負母線L4に接続する。第6スイッチング素子Q6のドレインは第4ノードN4に接続されており、ソースは負母線L4に接続されている。また、第6スイッチング素子Q6のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0087】
第4ノードN4は、第5スイッチング素子Q5のソースと第6スイッチング素子Q6のドレインとの接続点である。
【0088】
第7スイッチング素子Q7は、正母線L3と第5ノードN5とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第5ノードN5を正母線L3に接続する。第7スイッチング素子Q7のドレインは正母線L3に接続されており、ソースは第5ノードN5に接続されている。また、第7スイッチング素子Q7のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0089】
第8スイッチング素子Q8は、負母線L4と第5ノードN5とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第5ノードN5を負母線L4に接続する。第8スイッチング素子Q8のドレインは第5ノードN5に接続されており、ソースは負母線L4に接続されている。また、第8スイッチング素子Q8のゲートには制御部30からゲート信号が供給される。
【0090】
第5ノードN5は、第7スイッチング素子Q7のソースと第8スイッチング素子Q8のドレインとの接続点である。
【0091】
次に図10~11を参照して、実施形態2における第1方式及び第2方式のスイッチング制御方法について説明する。最初に図10を参照して第1方式のスイッチング制御方法について説明する。
【0092】
図10は、第1方式における第1~第8スイッチング素子Q1~Q8のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。図10において、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6の初期状態は、図2と同じである。図10に示すように、第8スイッチング素子Q8について、制御部30は、第5スイッチング素子Q5と同期するように制御すればよい。また、第7スイッチング素子Q7について、制御部30は、第6スイッチング素子Q6と同期するように制御すればよい。これにより、整流部16がフルブリッジ型で構成されてもセンタタップ型で構成された場合と同様に第1方式による同期整流が実現する。
【0093】
第5スイッチング素子Q5及び第8スイッチング素子Q8がオフ状態からオン状態に切り替わると、2次側において、第8スイッチング素子Q8、第5ノードN5、2次側巻線15D、第4ノードN4、及び第5スイッチング素子Q5を通って電流が流れる。電流が流れる方向は、実施形態1における第3方向と同様である。すなわち、第8スイッチング素子Q8は、第3方向に流れる電流の経路に設けられるといえる。
【0094】
第6スイッチング素子Q6及び第7スイッチング素子Q7がオフ状態からオン状態に切り替わると、2次側において、第6スイッチング素子Q6、第4ノードN4、2次側巻線15D、第5ノードN5、及び第7スイッチング素子Q7を通って電流が流れる。電流が流れる方向は、実施形態1における第4方向と同様である。すなわち、第7スイッチング素子Q7は、第4方向に流れる電流の経路に設けられるといえる。
【0095】
次に図11を参照して第2方式のスイッチング制御方法について説明する。図11は、第2方式における第1~第8スイッチング素子Q1~Q8のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。図11において、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6の初期状態は、図5と同じである。図11に示すように、第8スイッチング素子Q8について、制御部30は、第5スイッチング素子Q5と同期するように制御すればよい。また、第7スイッチング素子Q7について、制御部30は、第6スイッチング素子Q6と同期するように制御すればよい。これにより、整流部16がフルブリッジ型で構成されてもセンタタップ型で構成された場合と同様に第2方式による同期整流が実現する。
【0096】
<作用効果>
実施形態2に係る電力変換装置10によれば、以下の作用効果が得られる。
【0097】
整流部16は、第3方向に流れる電流の経路に設けられる第8スイッチング素子Q8と、第4方向に流れる電流の経路に設けられる第7スイッチング素子Q7と、を更に有する。
【0098】
制御部30は、負荷電流の平均値が第1閾値以下である場合、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4がオン状態である期間では、第5スイッチング素子Q5及び第8スイッチング素子Q8がオン状態となるように第5スイッチング素子Q5及び第8スイッチング素子Q8を制御し、かつ、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3がオン状態である期間では、第6スイッチング素子Q6及び第7スイッチング素子Q7がオン状態となるように第6スイッチング素子Q6及び第7スイッチング素子Q7を制御する。
【0099】
制御部30は、負荷電流の平均値が第1閾値より大きい場合、少なくとも第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4のどちらか一方がオン状態である期間では、第5スイッチング素子Q5及び第8スイッチング素子Q8がオン状態となるように第5スイッチング素子Q5及び第8スイッチング素子Q8を制御し、かつ、少なくとも第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3のどちらか一方がオン状態である期間では、第6スイッチング素子Q6及び第7スイッチング素子Q7がオン状態となるように第6スイッチング素子Q6及び第7スイッチング素子Q7を制御する。
【0100】
上記構成によれば、外部負荷が軽負荷である場合は第1方式によって同期整流が行われるため、逆電流による損失が低減される。また、外部負荷が重負荷である場合は第2方式によって同期整流が行われるため、ボディーダイオードの通電損失が低減される。すなわち、2次側の整流部16がフルブリッジ型の回路として構成された場合であっても、センタタップ型の回路として構成された場合と同様の効果を得ることができる。
【0101】
上記の各実施形態において、制御部30は、電流センサ19によって検出された負荷電流に基づいて、各スイッチング素子を制御したが、これに限定されない。制御部30が用いる電流は、負荷電流と相関関係を有する電流であれば足りる。負荷電流と相関関係を有する電流とは、例えば入力電流である。
【0102】
また、上記の各実施形態において、制御部30は負荷電流の平均値を用いて各方式の切り替えを行うと説明したが、必ずしも平均値でなくてもよく、平均値と相関関係を有する電流値を用いて各方式の切り替えを行ってもよい。これにより、例えばマイコンでAD変換する際のサンプリングタイミングによって取得した電流が平均値とずれるといったケースにも適用可能となる。また、制御部30は、任意のタイミングで検出された電流値を用いて各方式の切り替えを行ってもよい。
【0103】
〔ソフトウェアによる実現例〕
電力変換装置(以下、「装置」と称する)としての機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0104】
この場合、上記装置は、プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。コンピュータがプログラムを実行することにより、各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0105】
プログラムは、一時的ではなく、コンピュータが読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0106】
また、各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0107】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【0108】
上述において、同期整流の方式として2つの方式を説明したが、更に3つ目の同期整流方式を加え、3つの同期整流方式を切り替える構成としてもよい。なお、ここで説明する「3つ目の同期整流方式」とは、上述の「同期整流停止方式」とは異なるものである。3つ目の同期整流方式について説明する。3つ目の同期整流方式は、第1スイッチング素子Q1がオン状態となる期間、又は第2スイッチング素子Q2がオン状態となる期間において同期整流を行う方式である。この方式を以下では「第3方式」と称する。
【0109】
<第3方式のスイッチング制御方法>
次に図12を参照して第3方式のスイッチング制御方法について説明する。
【0110】
図12は、第3方式における第1~第6スイッチング素子Q1~Q6のオンオフタイミングを示すタイミングチャートである。図12において、第1~第3,第5~第6スイッチング素子Q1~Q3,Q5~Q6の初期状態はオフ状態であり、第4スイッチング素子Q4の初期状態はオン状態である。
【0111】
タイミングT1において、制御部30は、第1スイッチング素子Q1をオフ状態からオン状態に切り替える。これにより、第1スイッチング素子Q1がオン状態となるため、制御部30は、第5スイッチング素子Q5をオフ状態からオン状態に切り替えて同期整流を開始する。
【0112】
タイミングT2において、制御部30は、第4スイッチング素子Q4をオン状態からオフ状態に切り替える。タイミングT3において、制御部30は、第3スイッチング素子Q3をオフ状態からオン状態に切り替える。
【0113】
タイミングT4において、制御部30は、第1スイッチング素子Q1をオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、第1スイッチング素子Q1がオン状態ではなくなるため、制御部30は、第5スイッチング素子Q5をオン状態からオフ状態に切り替えて、同期整流を停止させる。
【0114】
タイミングT5において、制御部30は、第2スイッチング素子Q2をオフ状態からオン状態に切り替える。これにより、第2スイッチング素子Q2がオン状態となるため、制御部30は、第6スイッチング素子Q6をオフ状態からオン状態に切り替えて同期整流を開始する。
【0115】
タイミングT6において、制御部30は、第3スイッチング素子Q3をオン状態からオフ状態に切り替える。タイミングT7において、制御部30は、第4スイッチング素子Q4をオフ状態からオン状態に切り替える。
【0116】
タイミングT8において、制御部30は、第2スイッチング素子Q2をオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、第2スイッチング素子Q2がオン状態ではなくなるため、制御部30は、第6スイッチング素子Q6をオン状態からオフ状態に切り替えて、同期整流を停止させる。タイミングT9におけるスイッチング制御は、タイミングT1におけるスイッチング制御と同じため、説明を省略する。
【0117】
<第1方式と第2方式と第3方式との比較>
次に、第1方式と第2方式と第3方式との比較について説明する。第3方式では第1方式と比べて、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6のボディーダイオード通電時間が短い。一方で、第3方式では第2方式と比べて、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6のボディーダイオード通電時間が長い。
【0118】
第3方式において、図12のタイミングT4~T5の期間及びタイミングT7~T9の期間では第5スイッチング素子Q5のボディーダイオードに電流が流れ、タイミングT3~T5の期間及びタイミングT8~T9の期間では第6スイッチング素子Q6のボディーダイオードに電流が流れる。一方で、タイミングT1~T4の期間及びタイミングT5~T7の期間では第5スイッチング素子Q5のボディーダイオードに電流は流れず、タイミングT1~T3の期間及びタイミングT5~T8の期間では第6スイッチング素子Q6のボディーダイオードに電流は流れない。
【0119】
第3方式においても第2方式と同様に逆電流損失が発生するおそれがあるものの、ボディーダイオードの通電損失は第1方式より小さい。ただし、第3方式において、ボディーダイオードの通電損失は第2方式より大きい。そこで、第1方式と第2方式との間に第3方式を挟み、制御部30は、負荷電流の平均値に応じてこれら3つの方式を切り替えてもよい。この切り替えには、上述の第1閾値及び第2閾値とは異なる、第3閾値及び第4閾値を用いることができる。第3閾値<第4閾値である。第3閾値及び第4閾値は予め実験又はシミュレーションを通じて求めることができる。
【0120】
制御部30は、負荷電流の平均値が第4閾値より大きい値から第4閾値以下の値に変化した場合、第2方式から第3方式に切り替えてもよい。また、制御部30は、負荷電流の平均値が第3閾値より大きくかつ第4閾値以下の値から、第3閾値以下の値に変化した場合、第3方式から第1方式に切り替えてもよい。このように負荷電流の大きさに応じて「第1方式」、「第3方式」、及び「第2方式」の3方式での切り替えを行うことにより、逆電流による損失低減、又はボディーダイオードの通電損失低減が実現する。
【0121】
また、第1方式と第3方式とを切り替える際、又は第2方式と第3方式とを切り替える際にデッドタイムを設けてもよい。マイコンのPWM機能の制約により、第1方式と第3方式との切り替え、又は第2方式と第3方式との切り替えをスムーズに行うことが難しい場合であっても、このようなデッドタイムを設けることによりスムーズな切り替えを行うことができる。
【符号の説明】
【0122】
10 電力変換装置
15 トランス
16 整流部
19 電流センサ
30 制御部
50 電源
51、52 負荷
Q1~Q8 第1~第8スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12