(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010029
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 1/44 20060101AFI20240116BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20240116BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20240116BHJP
F25B 41/325 20210101ALI20240116BHJP
【FI】
F16K1/44 D
F16K31/04 Z
F25B41/35
F25B41/325
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180154
(22)【出願日】2023-10-19
(62)【分割の表示】P 2020134532の分割
【原出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮司
(57)【要約】
【課題】小流量制御域での流量制御と主弁体で主弁ポートを全開状態として流体を主弁ポートへ流す大流量域の制御とを行う二段式の電動弁において、大流量域の制御時に、主弁体と主弁ポートに対する流体の流れを安定させて電動弁自体の騒音や振動の発生を抑制する。
【解決手段】主弁室1R内に設けられて主弁ポート13aを開閉する主弁体3を備える。主弁体3に形成された副弁ポート3aの軸線L方向に移動して副弁ポート3aの開度を制御する副弁体4を備える。副弁体4は副弁ポート3a対して軸線L方向に挿通されるニードル弁42を備える。主弁体3に、主弁室1Rと副弁室3Rとを連通する連通孔3bを設ける。主弁体3の全開時において、連通孔3bのうち少なくとも入口ポート11a側に位置する連通孔3b入口ポート11aに直接対向しない位置となるようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体の主弁室内に設けられて該主弁室に開口する主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁室内で該主弁体に形成された副弁ポートの軸線方向に移動して該副弁ポートの開度を制御する副弁体と、を備え、前記主弁体で前記主弁ポートを閉として前記副弁体で前記副弁ポートの開度を制御して流体を絞る小流量制御域と、前記主弁体で前記主弁ポートを全開として、前記主弁体の側部にて前記主弁室に開口する入口ポートから流入する流体を前記主弁ポートに流す大流量域と、を有する二段式の電動弁において、
前記主弁体に、前記主弁室から前記副弁室に連通する連通孔が設けられ、
前記連通孔は、前記主弁体の全開時において、前記連通孔のうち少なくとも前記入口ポート側に位置する連通孔が前記入口ポートの開口と直接対向しない位置に設けられ、
前記主弁体の全開時において、前記連通孔のうち少なくとも前記入口ポート側に位置する連通孔は、下端面が前記入口ポートの前記開口における上端面よりも上側に離れた位置にあることで、前記入口ポートの前記開口の前方から外れた位置にあることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記主弁体の全開時において、前記連通孔のうち少なくとも前記入口ポート側に位置する連通孔が、前記主弁体をガイドするガイド部材の下部ガイド部内に位置することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記主弁体の全開時において、前記連通孔のうち少なくとも前記入口ポート側に位置する連通孔の中心軸線と、前記入口ポートの中心軸線とが、前記主弁ポートの軸線Lに対し垂直な平面に投影したときに交差することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の冷凍サイクルに設けられる電動弁として、小流量制御域と大流量域とで流量制御する電動弁がある。このような電動弁は、室内機に搭載される用途(例えば除湿弁)があり、例えば特開2017-211034号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
この特許文献1の電動弁は、主弁体(弁体32)と副弁体(弁軸20)とを備え、副弁体の連通路(29w)から副弁体内部を介して主弁体の副弁口(弁口36)へと冷媒を通過させる小流量制御を行うものである。また、主弁体の全開時において、流体(冷媒)の大部分は主弁体と主弁座との隙間である主弁口(弁口16)に流れるものの、流体の一部が副弁体の連通路(29w)から主弁体の副弁口に流れる(特許文献1の段落[0050])。
【0004】
また、この種の電動弁として、例えば
図7に示すものが考えられている。この電動弁は、弁本体aの主弁室aR内に主弁ポートbを開閉する主弁体cと、主弁体cに形成された副弁室cR内で副弁ポートdの開度を制御する副弁体eとを備えた電動弁である。そして、主弁体cで主弁ポートbを全閉として、副弁体eで副弁ポートdの開度を制御して流体を絞る小流量制御域と、主弁体cで主弁ポートbを全開として第1継手管fの入口ポートgから流入する流体を主弁ポートbに流す大流量域とを有する二段式の電動弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の電動弁では、主弁体の全開時(大流量域)において、流体の一部が副弁体の連通路(29w)から主弁体の副弁口に流れるため、弁室内の流速や圧力に乱れが生じて流体の流れが不安定になり、騒音や振動の原因となる可能性がある。また、
図7に示す電動弁では、主弁体cの全開状態(大流量域)においては、流体は主弁室aRから主に主弁体cと主弁ポートbとの間を通過するが、主弁体cに設けられた連通孔hから主弁体cの内部の副弁室cRを通過し、副弁体eと副弁ポートdとの間を通過する流れも生じる。このため、この副弁ポートdを通過して絞られる流れにより、主弁ポートbに流れる流体の速度や圧力の挙動が安定しなくなり、主弁体cの振動や冷媒通過音が発生する恐れがある。
【0007】
本発明は、主弁体で主弁ポートを全閉状態とし、この主弁体に形成された副弁ポートと副弁体との間の絞り部により冷媒の小流量制御域での流量制御を行うとともに、主弁体で主弁ポートを全開状態として流体を主弁ポートへ流す大流量域の制御を行う二段式の電動弁において、大流量域の制御時に、主弁体と主弁ポートに対する流体の流れを安定させて電動弁自体の騒音や振動の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動弁は、弁本体の主弁室内に設けられて該主弁室に開口する主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁室内で該主弁体に形成された副弁ポートの軸線方向に移動して該副弁ポートの開度を制御する副弁体と、を備え、前記主弁体で前記主弁ポートを閉として前記副弁体で前記副弁ポートの開度を制御して流体を絞る小流量制御域と、前記主弁体で前記主弁ポートを全開として、前記主弁体の側部にて前記主弁室に開口する入口ポートから流入する流体を前記主弁ポートに流す大流量域と、を有する二段式の電動弁において、前記主弁体に、前記主弁室から前記副弁室に連通する連通孔が設けられ、前記連通孔は、前記主弁体の全開時において、前記連通孔のうち少なくとも前記入口ポート側に位置する連通孔が前記入口ポートの開口と直接対向しない位置に設けられ、前記主弁体の全開時において、前記連通孔のうち少なくとも前記入口ポート側に位置する連通孔は、下端面が前記入口ポートの前記開口における上端面よりも上側に離れた位置にあることで、前記入口ポートの前記開口の前方から外れた位置にあることを特徴とする。
【0009】
この際、前記主弁体の全開時において、前記連通孔のうち少なくとも前記入口ポート側に位置する連通孔が、前記主弁体をガイドするガイド部材の下部ガイド部内に位置することを特徴とする電動弁が好ましい。
【0010】
また、前記主弁体の全開時において、前記連通孔のうち少なくとも前記入口ポート側に位置する連通孔の中心軸線と、前記入口ポートの中心軸線とが、前記主弁ポートの軸線Lに対し垂直な平面に投影したときに交差することを特徴とする電動弁が好ましい。
【0011】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、前記電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、主弁体の全開時において、入口ポートから主弁室に流入する流体が連通孔に対して直接噴射されることがないので、連通孔から副弁室への流体の流入を低減することができる。したがって、主弁体と主弁ポートに対する流体の流れを安定させることができ、電動弁自体の騒音や振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図である。
【
図2】第1実施形態の電動弁の大流量域状態の縦断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の電動弁の大流量域状態の要部拡大縦断面図(A)及び主弁ポートの軸線Lに対し垂直な平面に投影した要部拡大横断面図(B)である。
【
図4】本発明の第3実施形態の電動弁の大流量域状態の要部拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の第4実施形態の電動弁の大流量域状態の連通孔と入口ポートを主弁ポートの軸線Lに対し垂直な平面に投影した要部拡大横断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【
図7】二段式の電動弁の一例とその課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図、
図2は第1実施形態の電動弁の大流量域状態の縦断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念
は
図1及び
図2の図面における上下に対応する。この電動弁100は、弁ハウジング1と、ガイド部材2と、主弁体3と、副弁体4と、駆動部5と、を備えている。
【0015】
弁ハウジング1は例えば、黄銅、ステンレス等で略円筒形状に形成されており、その内側に主弁室1Rを有している。弁ハウジング1の外周片側には主弁室1Rに導通される第1継手管11が接続されるとともに、下端から下方に延びる筒状部に第2継手管12が接続されている。また、弁ハウジング1の第2継手管12の主弁室1R側には主弁座13が形成され、この主弁座13の内側は主弁ポート13aとなっている。主弁ポート13aは軸線Lを中心とする円柱形状の透孔(貫通した孔)であり、第2継手管12は主弁ポート13aを介して主弁室1Rに導通される。そして、第1継手管11の主弁室1R側の内側端部は入口ポート11aとなっている。
【0016】
弁ハウジング1の上端の開口部には、ガイド部材2が取り付けられている。ガイド部材2は、弁ハウジング1の内周面内に圧入される圧入部21と、圧入部21から上方に位置する略円柱状の上部ガイド部22と、上部ガイド部22の上部に延設されたホルダ部23と、圧入部21の外周に設けられたリング状のフランジ部24と、圧入部21から下方に位置する略円柱状の下部ガイド部25とを有している。圧入部21、上部ガイド部22、下部ガイド部25、ホルダ部23は樹脂製の一体品として構成されている。また、フランジ部24は、例えば、黄銅、ステンレス等の金属板であり、このフランジ部24は、インサート成形により樹脂製の圧入部21と共に一体に設けられている。
【0017】
ガイド部材2は、圧入部21により弁ハウジング1に組み付けられ、フランジ部24を介して弁ハウジング1の上端部に溶接により固定されている。また、ガイド部材2において、圧入部21及び上部ガイド部22、下部ガイド部25の内側には軸線Lと同軸の円筒形状のガイド孔2Aが形成されるとともに、ホルダ部23の中心には、ガイド孔2Aと同軸の雌ねじ部23aとそのねじ孔が形成されている。そして、ガイド孔2A内には主弁体3が配設されている。
【0018】
主弁体3は、主弁座13に対して着座及び離座する主弁部31と、副弁体4を保持する保持部32とで構成されている。主弁部31の内側には円柱状の膨張孔3Aが形成されるとともに、保持部32の内側には円柱状の副弁室3Rが形成され、この副弁室3Rの内周面は副弁ガイド孔3Bとなっている。そして、主弁部31と保持部32との間には、軸線Lを中心として副弁室3Rから膨張孔3A側に開口する円柱状の副弁ポート3aが形成されている。
【0019】
また、主弁体3の保持部32の側面には、軸線Lと交差する方向で主弁室1Rから副弁室3Rに連通する連通路3bが形成されている。この実施形態では、連通路3bは、軸線L周りに回転対象な位置に放射状に複数本(例えば4本)形成されている。そして、4本の連通路3bは、軸線L方向で、第1継手管11の開口である入口ポート11aに直接対向しない位置に形成されている。なお、ここでは連通路3bを4本としたものを例示したが、入口ポート11aに直接対向しない位置であれば何本でもよい。
【0020】
主弁体3は、保持部32の上端部にリテーナ34を有するとともに、リテーナ34とガイド部材2のガイド孔2Aの上端部との間に主弁ばね35を有しており、この主弁ばね35により主弁体3は主弁座13の方向(閉方向)に付勢されている。副弁体4は、ロータ軸51の下端部にこのロータ軸51と一体に形成されており、この副弁体4はガイド用ボス部41とニードル弁42とで構成されている。また、副弁体4のニードル弁42は、その先端が副弁ポート3a対して軸線L方向に挿通されるものであり、ニードル弁42と副弁ポート3aとの隙間を小流量の冷媒が流れることにより小流量制御が行われる。なお、ガイド用ボス部41の上端には、潤滑性樹脂からなる円環状のワッシャ43が配設され、
ガイド用ボス部41は、副弁ガイド孔3B内に摺動可能に挿通されている。
【0021】
弁ハウジング1の上端にはケース14が溶接等によって気密に固定され、このケース14の内外に駆動部5が構成されている。駆動部5は、ステッピングモータ5Aと、ステッピングモータ5Aの回転により副弁体4を進退させるねじ送り機構5Bと、ステッピングモータ5Aの回転を規制するストッパ機構5Cと、を備えている。
【0022】
ステッピングモータ5Aは、ロータ軸51と、ケース14の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ52と、ケース14の外周においてマグネットロータ52に対して対向配置されたステータコイル53と、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。ロータ軸51はブッシュを介してマグネットロータ52の中心に取り付けられ、このロータ軸51のガイド部材2側の外周には雄ねじ部51aが形成されている。この雄ねじ部51aはガイド部材2の雌ねじ部24aに螺合されており、これにより、ガイド部材2はロータ軸51を軸線L上に支持している。そして、ガイド部材2の雌ねじ部24aとロータ軸51の雄ねじ部51aはねじ送り機構5Bを構成している。なお、ケース14の内側天井部には回転ストッパ機構5Cを保持する円筒部14aが設けられ、この円筒部14a内には、ロータ軸51の上端をガイドするガイド部材54が配設されている。
【0023】
以上の構成により、ステッピングモータ5Aが駆動されるとマグネットロータ52及びロータ軸51が回転し、ロータ軸51の雄ねじ部51aとガイド部材2の雌ねじ部24aとのねじ送り機構5Bにより、マグネットロータ52と共にロータ軸51が軸線L方向に移動する。そして、副弁体4が軸線L方向に進退移動してニードル弁42が副弁ポート3aに対して近接又は離間する。また、ニードル弁42が上昇するとき、ワッシャ43が主弁体3のリテーナ34に係合し、主弁体3は副弁体4と共に移動して、主弁座13から離座する。なお、マグネットロータ52には突起部52aが形成されており、マグネットロータ52の回転に伴って突起部52aが回転ストッパ機構5Cを作動させ、ロータ軸51(及びマグネットロータ52)の最下端位置及び最上端位置が規制される。
【0024】
図1の小流量制御域状態では、主弁体3は主弁座13に着座した状態で主弁ポート13aが弁閉となり、副弁体4のニードル弁42により副弁ポート3aの開度が制御され、小流量の制御が行われる。このとき、連通路3bはガイド部材2の下部ガイド部25の下端よりも下方に位置し、主弁室1R内の冷媒は連通路3bを通って副弁室3Rに流れる。
【0025】
図2の大流量域状態では、冷媒は主弁室1Rから主に主弁体3の主弁部31と主弁ポート13aとの間を通過するが、この主弁体3の全開状態では、連通路3bは入口ポート11aから下部ガイド部25によって遮られている。これにより、入口ポート11aから主弁室1Rに流入する流体が連通孔3bに対して直接噴射されることがないので、連通孔3bから副弁室3Rへの流体の流入を低減することができる。したがって、主弁体3と主弁ポート13aに対する流体の流れを安定させることができ、主弁体3の振動が抑制され、この電動弁100の騒音や振動の発生を抑制することができる。
【0026】
図3は、本発明の第2実施形態の電動弁の大流量域状態の図であり、
図3(A)は要部拡大縦断面図、
図3(B)は、
図3(A)の連通孔と入口ポートを主弁ポートの軸線Lに対し垂直な平面に投影した要部拡大横断面図である。第1実施形態との相違点は、入口ポート11aと反対側のガイド部材2′の下部ガイド25の長さが短くなっているのに対し、入口ポート11a側の下部ガイド25が所定の幅において長くなっていることと、図示しないが、主弁体3が上下方向に移動しても回転しないように回転ストッパが設けられている点である。回転ストッパは例えば、ガイド部材2′の内周に軸線方向縦長凸状のキー部が形成され、これが、主弁体3の外周に形成された縦長凹溝と嵌合することで主弁体3の回転を防止するものとしても良い。当初の弁組立時に、
図3(A)及び
図3(B)に示
すように大流量域状態において、入口ポート11a側の連通孔3bが入口ポート11a側の下部ガイド部によって遮られるように、主弁体3の回転ストッパの位置を設定しておけばよい。これにより、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に大流量域状態で、入口ポート11a側の連通孔3bは、下部ガイド25により遮られる。よって、入口ポート11aから主弁室1Rに流入する流体が連通孔3bに対して直接噴射されることがないので、連通孔3bから副弁室3Rへの流体の流入を低減することができる。したがって、主弁体3と主弁ポート13aに対する流体の流れを安定させることができ、主弁体3の振動が抑制され、この電動弁100の騒音や振動の発生を抑制することができる。
【0027】
なお、
図3においては、
図3(B)に示すように入口ポート11a側の連通孔3bの軸線は入口ポート11aの軸線と同じ方向(平行)としたが、これに限らず、入口ポート11a側の連通孔3bが入口ポート11a側の下部ガイド25の所定幅内に入っていれば遮られるので、入口ポート11a側の連通孔3bの軸線を入口ポートの軸線と所定の角度を成す方向としても良い(不図示)。
【0028】
図4は本発明の第3実施形態の大流量域状態の要部拡大断面図であり、第1実施形態との相違点は、ガイド部材2″の圧入部21″の下方にガイド部が無く、
図4に示すように大流量域状態では、連通路3bが軸線L方向で第1継手管11の開口である入口ポート11aに直接対向しない位置、すなわち、軸線L方向で入口ポート11aより上方に離れた位置に移動する点である。これにより、この第3実施形態においても大流量域状態では、冷媒は主弁室1Rから主に主弁体3の主弁部31と主弁ポート13aとの間を通過するが、この主弁体3の全開状態では、入口ポート11aから主弁室1Rに流入する流体が連通孔3bに対して直接噴射されることがないので、連通孔3bから副弁室3Rへの流体の流入を低減することができる。したがって、主弁体3と主弁ポート13aに対する流体の流れを安定させることができ、主弁体3の振動が抑制され、この電動100の騒音や振動の発生を抑制することができる。
【0029】
尚、
図4において連通孔3bの軸線と入口ポート11aの軸線を同じ方向としたが、異なる方向としても良い。
【0030】
図5は本発明の第4実施形態の大流量域状態の連通路3bと入口ポート11aを軸線Lに対し垂直な平面に投影した要部拡大横断面図であり、第3実施形態との相違点は、入口ポート11a側の連通孔3bが軸線L方向で入口ポート11aの開口の内径の範囲に位置する点、連通孔3bの軸線の方向が入口ポート11aの軸線の方向と同じ方向(平行)ではなく、
図5のように交差している点、さらに図示しないが、主弁体3が上下方向に移動しても回転しないように回転ストッパが設けられている点である。回転ストッパについては、第2実施形態と同様であり、主弁体3がL軸方向に移動しても連通孔3bの軸線と入口ポート11aの軸線が成す角度は変わらない。これにより、連通孔3bが軸線L方向で入口ポート11aの開口の内径の範囲に位置していても、
図5に示すように、入口ポート11aから主弁室1Rに流入する流体が連通孔3bに対して直接噴射されることがないので、連通孔3bから副弁室3Rへの流体の流入を低減することができる。したがって、主弁体3と主弁ポート13aに対する流体の流れを安定させることができ、主弁体3の振動が抑制され、この電動弁100の騒音や振動の発生を抑制することができる。
【0031】
第4実施形態において、
図5の入口ポート11a側の連通孔3bの中心軸線が入口ポート11aの中心軸線となす角度αは45°以上90°以下が好ましい。
【0032】
図6は本発明の実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図であり、同図に基づいて実施形態の冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステムは、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前記実施形態の電動弁100は、空気調和機の
第1室内側熱交換器91(除湿時冷却器として作動)と第2室内側熱交換器92(除湿時加熱器として作動)との間に設けられており、圧縮機95、四方弁96、室外側熱交換器94および電子膨張弁93とともに、ヒ-トポンプ式冷凍サイクルを構成している。第1室内側熱交換器91と第2室内側熱交換器92及び電動弁100は室内に設置され、圧縮機95、四方弁96、室外側熱交換器94および電子膨張弁93は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0033】
除湿弁としての実施形態の電動弁100は、除湿時以外の冷房時または暖房時には主弁体が全開状態とされて、第1室内熱交換器91と第2室内熱交換器92は一つの室内熱交換器とされる。そして、この一体の室内熱交換器と室外熱交換器94は、「蒸発器」及び「凝縮器」として択一的に機能する。すなわち、電子膨張弁としての電動弁93は、蒸発器と凝縮器の間に設けられている。
【0034】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁100を例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述し、その他の実施形態についても詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 弁ハウジング
1R 主弁室
11 第1継手管
11a 入口ポート
12 第2継手管
13 主弁座
13a 主弁ポート
L 軸線
2,2′,2″ ガイド部材
2A ガイド孔
22 上部ガイド部
25 下部ガイド部
23 ホルダ部
23a 雌ねじ部
3 主弁体
31 主弁部
32 保持部
3a 副弁ポート
3b 連通孔
3A 副弁室
4 副弁体
41 ガイド用ボス部
42 ニードル弁
5 駆動部
5A ステッピングモータ
5B ねじ送り機構
5C ストッパ機構
51 ロータ軸
51a 雄ねじ部
52 マグネットロータ
53 ステータコイル
91 第1室内側熱交換器
92 第2室内側熱交換器
93 電子膨張弁
94 室外側熱交換器
95 圧縮機
96 四方弁
100 電動弁