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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010030
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】LIDARデータ収集及び制御
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/10 20200101AFI20240116BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01S17/10
G01S7/481 A
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180230
(22)【出願日】2023-10-19
(62)【分割の表示】P 2019561836の分割
【原出願日】2018-05-08
(31)【優先権主張番号】62/503,237
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/974,527
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518183103
【氏名又は名称】ベロダイン ライダー ユーエスエー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ホール、デイヴィッド エス
(72)【発明者】
【氏名】リウ、レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ミルグローム、オーレン
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラン、アナンド
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカテサン、プラヴィン クマール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】統合LIDAR測定装置を用いて3次元LIDAR測定を実行するための方法及びシステムについて記載する。
【解決手段】1つの態様では、戻り信号受信機は、照明光のパルスの生成及び戻り信号のデータ取得を開始させるパルストリガー信号を生成し、また時間・デジタル変換による飛行時間計算を開始させる。加えて、戻り信号受信機は、各戻りパルスの幅とピーク振幅も推定し、各戻りパルス波形のピーク振幅を含むサンプリング窓全体にわたって各戻りパルス波形を個別にサンプリングする。さらなる態様において、各戻りパルスに関連する飛行時間は、粗いタイミング推定値及び精密なタイミング推定値に基づいて推定される。別の態様において、飛行時間は、内部光学クロストークと有効な戻りパルスによる測定パルスから測定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板に取り付けられた照明源と、
前記プリント回路基板に取り付けられた照明ドライバ集積回路(IC)であって、前記照明ドライバICは、パルストリガー信号に応答して前記照明源を選択的に電源に接続し、前記照明源に照明光の測定パルスを放射させるよう構成されていることを特徴とする照明ドライバICと、
前記プリント回路基板に取り付けられた光検出器であって、前記光検出器は、前記照明光の測定パルスに応答して前記光検出器が受け取る戻り光を検出し、前記検出された戻り光を示す出力信号を生成するように構成され、前記光検出器は、前記照明光と前記検出された戻り光とが光路を共有するように構成されていることを特徴とする光検出器と、
前記プリント回路基板に取り付けられた戻り信号受信機ICであって、前記戻り信号受信機ICと前記照明ドライバICとは別々の構成要素であり、前記戻り信号受信機ICは、
測定窓の持続時間中に前記出力信号を受信し、
前記検出された戻り光の1つ以上の戻りパルスを識別し、
識別された前記戻りパルスの各々と関連付けられた飛行時間を決定し、
識別された前記戻りパルスの各々のセグメントの1つ以上の特性を決定するよう構成されていることを特徴とする戻り信号受信機ICと、
を具備する統合LIDAR測定装置。
【請求項2】
前記戻り信号受信機ICは、前記戻り信号受信機ICが受信したパルスコマンド信号に応答して前記パルストリガー信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項3】
前記戻り信号受信機ICには戻り信号分析モジュールが含まれ、前記戻り信号分析モジュールは、
第1の入力ノード、第2の入力ノード、及び出力ノードを有するコンスタントフラクション弁別器モジュールであって、前記第1の入力ノードは、前記出力信号を受信するように接続されており、前記出力信号が前記第2の入力ノードでの閾値電圧値を超えると、前記戻り信号分析モジュールは、前記出力ノードでのヒット信号を異なる値に切り替えるよう構成されていることを特徴とする、コンスタントフラクション弁別器モジュールを具備することを特徴とする請求項1に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項4】
前記戻り信号分析モジュールは、
前記コンスタントフラクション弁別器の前記出力ノードに接続された第1の入力ノード、第2の入力ノード、及び出力ノードを有する粗いタイミングモジュールであって、前記第2の入力ノードは、前記パルストリガー信号を受信するように接続されており、前記粗いタイミングモジュールは、前記パルストリガー信号のトランジッションと前記ヒット信号のトランジッションとの間で費やされた時間を示すデジタル値を前記出力ノードに生成するよう構成されていることを特徴とする粗いタイミングモジュールをさらに具備することを特徴とする請求項3に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項5】
前記デジタル値は、前記パルストリガー信号の前記トランジッションと前記ヒット信号の前記トランジッションとの間に生じるデジタルクロック信号のトランジッションの数の総計であることを特徴とする請求項4に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項6】
前記戻り信号分析モジュールは、
第1の入力ノード、第1の出力ノード、及び第2の出力ノードを有する精密なタイミングモジュールであって、前記第1の入力ノードは、前記ヒット信号を受信するように接続されており、前記精密なタイミングモジュールは、前記ヒット信号の前記トランジッションとそれに続く前記デジタルクロック信号のトランジッションとの間の時間差を示す第1の電気信号を前記第1の出力ノードに生成し、前記ヒット信号の前記トランジッションとそれに続く反転させた前記デジタルクロック信号のトランジッションとの間の時間差を示す第2の電気信号を前記第2の出力ノードに生成するよう構成されていることを特徴とする精密なタイミングモジュールをさらに具備することを特徴とする請求項5に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項7】
前記粗いタイミングモジュールは準安定信号を生成するよう構成されており、前記準安定信号は、前記デジタルクロック信号の周期の半分だけ時間移動させたデジタルクロック信号であることを特徴とする請求項5に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項8】
前記パルストリガー信号の前記トランジッションと前記ヒット信号の前記トランジッションとの間で費やされた時間、前記ヒット信号の前記トランジッションとそれに続く前記デジタルクロック信号のトランジッションとの間の時間差、前記ヒット信号の前記トランジッションとそれに続く前記反転させた前記デジタルクロック信号のトランジッションとの間の時間差、及び前記準安定信号を示すデジタル値に少なくとも部分的に基づいて前記照明光の測定パルスの飛行時間の値を推定するよう構成された飛行時間モジュールをさらに具備することを特徴とする請求項7に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項9】
前記戻り信号分析モジュールは、
前記ヒット信号を受信するように接続されている第1の入力ノードと、
イネーブル信号を受信するように接続されている第2の入力ノードと、
出力ノードと、
を有するパルス幅検出モジュールをさらに具備し、
前記パルス幅検出モジュールは、前記イネーブル信号のトランジッションと前記ヒット信号の振幅が閾値を下回った時との間の時間差を示す電気信号を前記出力ノードに生じさせるよう構成されていることを特徴とする請求項3に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項10】
前記戻り信号分析モジュールは、
前記ヒット信号のトランジッションの後に前記出力信号のピーク振幅を示す出力信号を生成するよう構成された戻りパルスサンプリング・ホールドモジュールをさらに具備することを特徴とする請求項3に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項11】
前記戻りパルスサンプリング・ホールドモジュールはさらに、各々が前記ピーク振幅の前後の出力信号の振幅を示す複数の出力信号値を生成するよう構成されていることを特徴とする請求項10に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項12】
前記ピーク振幅の前後の出力信号サンプルの数はプログラム可能であることを特徴とする請求項11に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項13】
前記検出された戻り光の前記1つ以上の戻りパルスうちの最初の戻りパルスは、前記照明源と前記光検出器との間の光学クロストークに起因するものであり、前記1つ以上の戻りパルスのうちのそれに続く各戻りパルスに関連する飛行時間は、前記最初の戻りパルスに準拠して決定されることを特徴とする請求項1に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項14】
前記測定窓の持続時間は、概ね前記統合LIDAR測定装置から前記LIDAR測定装置の最大範囲まで行きそして前記LIDAR測定装置に戻るまでの光の飛行時間となることを特徴とする請求項1に記載の統合LIDAR測定装置。
【請求項15】
プリント回路基板に取り付けられた戻り信号受信機ICが受信したパルスコマンド信号に応答してパルストリガー信号を生成するステップと、
前記パルストリガー信号に応答して、照明ドライバICにより照明源を選択的に電源に接続し、前記照明源に照明光の測定パルスを放出させるステップであって、前記照明源及び前記照明ドライバICは、前記プリント回路基板に取り付けられていることを特徴とするステップと、
測定窓の持続時間中に前記戻り信号受信機ICにより、前記プリント回路基板に取り付けられた光検出器から、前記照明光の測定パルスに応答して光検出器が受信した戻り光の検出を示す出力信号を受信するステップであって、前記光検出器は、前記照明光と検出された前記戻り光とが光路を共有するように構成されていることを特徴とするステップと、
検出した前記戻り光の1つ以上の戻りパルスを前記戻り信号受信機ICにより識別するステップと、
検出した前記戻り光の各々に関連付けられた飛行時間を前記戻り信号受信機ICにより決定するステップと、
識別した前記戻りパルスの各々のセグメントの1つ以上の特性を前記戻り信号受信機ICにより決定するステップと、
を具備する方法。
【請求項16】
前記出力信号が電圧閾値を越えたとき、別の値に切り替えるヒット信号を生成するステップと、
前記パルストリガー信号のトランジッションと前記ヒット信号のトランジッションとの間に費やされた時間を示すデジタル値を生成するステップであって、前記デジタル値は、前記パルストリガー信号の前記トランジッションと前記ヒット信号の前記トランジッションとの間に生じたデジタルクロック信号のトランジッションの総数であることを特徴とするステップと、
をさらに具備することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒット信号の前記トランジッションとそれに続く前記デジタルクロック信号のトランジッションとの時間差を示す第1の電気信号及び前記ヒット信号とそれに続く反転させた前記デジタルクロック信号のトランジッションとの時間差を示す第2の電気信号を生成するステップと、
準安定信号を生成するステップであって、前記準安定信号は前記デジタルクロック信号の周期の半分だけ時間移動させたデジタルクロック信号であることを特徴とするステップと、
をさらに具備することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記パルストリガー信号の前記トランジッションと前記ヒット信号の前記トランジッションとの間に費やされた時間を示す前記デジタル値、前記ヒット信号の前記トランジッションとそれに続く前記デジタルクロック信号のトランジッションとの間の前記時間差、前記ヒット信号の前記トランジッションとそれに続く前記反転させた前記デジタルクロック信号のトランジッションとの間の前記時間差、及び前記準安定信号の、少なくとも一部に基づいて照明光の前記測定パルスの飛行時間の値を推定するステップをさらに具備することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
イネーブル信号のトランジッションと前記ヒット信号が閾値を下回る瞬間との間の時間差を示す電気信号を生成するステップをさらに具備することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒット信号の前記トランジッションの後の前記出力信号のピーク振幅を示す出力信号を生成するステップをさらに具備することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ピーク振幅の前後の前記出力信号の前記振幅をそれぞれ示す複数の出力信号を生成するステップをさらに具備し、前記ピーク振幅の前後の出力信号サンプルの数はプログラム可能であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
統合LIDAR測定システムであって、前記統合LIDAR測定装置は、
プリント回路基板に取り付けられた照明源と、
前記プリント回路基板に取り付けられた照明ドライバ集積回路ICであって、前記照明ドライバICは、パルストリガー信号に応答して前記照明源を選択的に電源に接続し、前記照明源に照明光の測定パルスを放射させるよう構成されていることを特徴とする照明ドライバICと、
前記プリント回路基板に取り付けられた光検出器であって、前記光検出器は、前記照明源と前記光検出器との間のクロストークに起因する第1の照明光の測定パルス及び、第2の測定パルスにより照射された周囲環境の位置から反射された光の有効な戻りパルスを検出するよう構成され、前記光検出器は、前記照明光と前記光検出器により検出された反射された光とが光路を共有するように構成されていることを特徴とする光検出器と、
前記プリント回路基板に取り付けられた戻り信号受信機ICであって、前記戻り信号受信機ICは、
クロストークに起因して前記第1の照明光の測定パルスを検出した時と、前記光の有効な戻りパルスを検出した時との間の時間を推定するよう構成されていることを特徴とする戻り信号受信機ICと、
を具備することを特徴とする統合LIDAR測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2017年5月8日に出願された「LIDARデータ収集及び制御」というタイトルの米国特許仮出願第62/503,237号に基づき優先権を主張して2018年5月8日に出願された「LIDARデータ収集及び制御」というタイトルの米国特許出願第15/974,527に基づく優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
開示した実施形態は、LIDARベースの3Dポイントクラウド測定システムに関する。
【背景技術】
【0003】
LIDARシステムは、光のパルスを使用して、各光パルスの飛行時間(TOF)に基づいて物体までの距離を測定する。LIDARシステムの光源から発せられる光パルスは、遠方の物体と互いに影響し合う。光の一部は物体から反射し、LIDARシステムの検出器に戻る。光パルスの放射と戻り光パルスの検出との間の経過時間に基づいて、距離を推定する。いくつかの例では、レーザーエミッターによって光のパルスが生成される。光パルスは、レンズ又はレンズアセンブリを介して集光される。レーザー光のパルスがエミッターの近くに取り付けられた検出器に戻るのにかかる時間を測定する。距離は、時間測定により高精度で導出される。
【0004】
一部のLIDARシステムは単一のレーザーエミッター/検出器の組み合わせを使用し、回転ミラーを組み合わせて、平面を効果的にスキャンする。このようなシステムによって実行される距離測定は、事実上2次元(つまり平面)であり、捕捉した距離ポイントは2次元(つまり単一平面)のポイントクラウドとされる。いくつかの例では、回転ミラーは非常に高速度で回転する(例えば:毎分数千回転)。
【0005】
多くの操作シナリオでは、3Dポイントクラウドが必要である。周囲の環境を3次元で調査するために、多くのスキームが採用されている。いくつかの例では、2D機器は上下に、及び/又は前後に、多くの場合ジンバル上で動作する。これは、センサーの「ウィンク」又は「うなずき」として当業者に一般的に知られている。したがって、単一のビームLIDARユニットを使用して、一度に1点ではあるが、距離点の3Dアレイ全体をキャプチャできる。関連する例では、プリズムを使用してレーザーパルスを、それぞれがわずかに異なる垂直角を持つ複数の層に「分割」する。これは、上記のうなずき効果をシミュレートするが、センサー自体は作動しない。
【0006】
上記のすべての例で、単一のレーザーのエミッター/検出器の組み合わせの光路は、単一のセンサーよりも広い視野を得るために何らかの形で変更されている。このような装置が単位時間あたりに生成できるピクセル数は、本質的に、単一のレーザーのパルス繰り返し速度の制限により制限される。ミラー、プリズム、又は、カバレッジエリアを拡大する装置の作動により、ビーム経路を変更することで、ポイントクラウド密度が低下することとなる。
【0007】
上記のように、3Dポイントクラウドシステムにはいくつかの構成がある。しかしながら、多くのアプリケーションでは、広い視野で見る必要がある。例えば、自律走行車の用途では、車両の前の地面を見るために、垂直方向の視野をできるだけ下方に拡大する必要がある。さらに、車が道路の窪みに入った場合に備えて、垂直方向の視野は地平線の上方に拡大する必要がある。さらに、現実の世界で生じる動きとその動きの画像化との間の遅延を最小限にする必要がある。いくつかの例では、完結した画像更新を毎秒少なくとも5回行うことが望ましい。これらの要件に対処するために、複数のレーザーエミッターと検出器のアレイを含む3D-LIDARシステムが開発された。このシステムは、2011年6月28日に発行された米国特許番号7,969,558に記載されており、その内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0008】
多くの用途において、一連のパルスが放出される。各パルスの方向は、連続的に急速に変化する。これらの例では、個々のパルスに関連付けられた距離測定ではピクセルを考慮し、高速で連続的に放出及び捕捉されたピクセルの集合(つまり「ポイントクラウド」)を画像として得たり、他の理由(障害物の検出など)のために分析したりできる。いくつかの例では、結果的に得られたポイントクラウドをユーザーに3次元で表示される画像として得るために表示ソフトウェアを使用する。実写カメラで撮影されたかのように見える3D画像として測定距離を表現するためにさまざまなスキームを使用することができる。
【0009】
いくつかの既存のLIDARシステムは、共通の基板(例えば、電気実装ボード)上で統合されていない照明源と検出器を採用している。さらに、照明ビーム経路と収集ビーム経路は、LIDAR装置内で分離されている。これにより、オプトメカニクスの設計が複雑になり、調整が困難になる。
【0010】
加えて、異なる方向に照明ビームをスキャンさせるために使用される機械装置は、機械的振動、慣性力、及び一般的な環境条件に敏感である。設計が適切でない場合、これらの機械装置は劣化して、性能の低下や故障につながる可能性がある。
【0011】
高解像度及び高スループットで3D環境を測定するには、測定パルスは非常に短くなければならない。現在のシステムは、持続時間が短いパルスを生成し、持続時間が短い戻りパルスを解像する能力が限られているため、解像度が低いという問題がある。
【0012】
現実的な動作環境ではターゲットの反射率と接近度が大きく変化するため、検出器の飽和により測定能力が制限される。加えて、電力消費によりLIDARシステムが過熱する場合がある。
【0013】
照明具、ターゲット、回路、及び温度は、実際のシステムによって異なる。これらすべての要素の変動は、各LIDAR装置で検出した信号を適切に較正しなければシステムのパフォーマンスを制限することとなる。
【0014】
画像解像度及び画像範囲を改善するために、LIDARシステムの照明ドライブ電子機器及び受信電子機器の改善が望まれる。
【発明の概要】
【0015】
ここでは、統合LIDAR測定装置を用いて3次元LIDAR測定を実行するための方法及びシステムについて説明する。
【0016】
1つの態様では、LIDAR測定装置の戻り信号受信機は、照明ドライバに、電力を照明源へ供給させるパルストリガー信号を生成し、照明光源に照明光のパルスを生成させる。加えて、パルストリガー信号により、戻り信号のデータ収集と関連する飛行時間計算のデータ取得が開始される。このようにして、パルスの生成と戻りパルスデータの取得の両方を開始させるために、パルストリガー信号が使用される。これにより、パルスの生成と戻りパルスの取得の正確な同期が保証され、時間・デジタル変換による正確な飛行時間計算が可能になる。
【0017】
別の態様では、戻り信号受信機は、照明光のパルスに応じて周囲環境の1つ以上の物体から反射される光の1つ以上の戻りパルスを識別し、戻りパルスの各々に関連する飛行時間を決定する。戻り信号受信機は、各戻りパルスの幅、各戻りパルスのピーク振幅も推定し、各戻りパルス波形のピーク振幅を含むサンプリング窓で個別に各戻りパルス波形をサンプリングする。これらの信号の特性とタイミングの情報は、統合LIDAR測定装置から主制御装置に伝達される。
【0018】
さらなる態様では、各戻りパルスに関連付けられた飛行時間は、粗いタイミングモジュール及び精密なタイミングモジュールに基づいて戻り信号受信機によって推定される。さらなる態様では、ヒット信号がクロックトランジションに到達したとき、準安定ビットを使用して、粗いタイミングモジュールの正しいカウントを決定する。準安定ビットの値は、ヒット信号がカウンタ信号の高から低へのトランジションに到達したのか又はカウンタ信号の低から高へのトランジションに到達したのか、つまり、正しいカウント値になったかの決定を行う。
【0019】
別のさらなる態様では、戻りパルス受信機ICは、照明源と統合LIDAR測定装置の光検出器との間の内部的なクロストークに起因するパルスの検出と、有効な戻りパルスとの間で費やされた時間に基づき飛行時間を測定する。このようにして、システムに起因する遅延は飛行時間の推定から排除される。
【0020】
別の態様では、主制御装置は、別々の統合LIDAR測定装置にそれぞれ伝達される複数のパルスコマンド信号を生成するように構成される。各戻りパルス受信機ICは、受信したパルスコマンド信号に基づいて、対応するパルストリガー信号を生成する。
【0021】
上述の記載は要約であり、したがって、必然的に、簡素化、一般化及び詳細の省略が含まれ、したがって、当業者であればこの要約は単なる例示であり、決して限定のためのものではないことを理解するであろう。他の態様、創作的特徴、及びここに記載した装置及び/又はプロセスの利点は、ここに記載した非限定的な詳細な説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】少なくとも1つの新規な態様における少なくとも1つの統合LIDAR測定装置を含むLIDAR測定システムの1つの実施形態を示す簡略図である。
【0023】
図2】統合LIDAR測定装置130からの測定パルスの放射、及び戻り測定パルスの捕捉に関連するタイミングを図示する。
【0024】
図3】1つの実施形態における戻り信号分析モジュール160を含む戻り信号受信機ICの一部を示す1つの実施形態を示す簡略図を示す。
【0025】
図4】1つの実施形態におけるコンスタントフラクション弁別器モジュール170を含む戻り信号受信機ICの一部の1つの実施形態を示す簡略図を示す。
【0026】
図5】1つの実施形態における粗いタイミングモジュールを含む戻り信号受信機ICの一部の1つの実施形態を示す簡略図を示す。
【0027】
図6】1つの実施形態における精密なタイミングモジュールを含む戻り信号受信機ICの一部の1つの実施形態を示す簡略図を示す。
【0028】
図7】1つの実施形態におけるパルス幅検出モジュールを含む戻り信号受信機ICの一部の1つの実施形態を示す簡略図を示す。
【0029】
図8】1つの例示的な操作シナリオにおける3D-LIDARシステム100の実施形態を示す図である。
【0030】
図9】1つの例示的な操作シナリオにおける3D-LIDARシステム10の別の実施形態を示す図である。
【0031】
図10】1つの例示的な実施形態における3D-LIDARシステム100の分解図を示す。
【0032】
図11】光学素子116の詳細を示す図である。
【0033】
図12】集光した光118の各ビームの整形を示す光学系116の断面図である。
【0034】
図13】少なくとも1つの新しい態様における、統合LIDAR測定装置により、LIDAR測定を実行する方法300を例示するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の背景例及びいくつかの実施形態を詳細に参照するが、それらの例は添付図面に示されている。
【0036】
図1は、1つの実施形態におけるLIDAR測定システム120を示す。LIDAR測定システム120には、主制御装置190と1つ以上の統合LIDAR測定装置130とが含まれる。統合LIDAR測定装置130には、戻り信号受信機集積回路(IC)150、窒化ガリウムベースの照明ドライバ集積回路(IC)140、照明源132、光検出器138、及びトランスインピーダンス増幅器(TIA)141が含まれる。これらの素子の各々は、素子間の機械的支持及び電気的接続性を提供する共通基板144(例えば、プリント回路基板)に取り付けられている。
【0037】
加えて、いくつかの実施形態では、統合LIDAR測定装置には、基板144に取り付けられた電子素子に電力を供給し、照明装置132に電力を供給する1つ以上の電源が含まれる。電源は、適切な電圧又は電流を供給するように構成することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の電源が基板144に取り付けられている。しかしながら、一般に、ここに記載の電源のいずれかは、別々の基板に取り付けられ、適切な方法で基板144に取り付けられた様々な素子に電気的に接続することができる。
【0038】
主制御装置190は、統合LIDAR測定装置130の受信機IC150に伝達されるパルスコマンド信号191を生成するように構成される。一般に、LIDAR測定システムには、いくつかの異なる統合LIDAR測定装置130が含まれる。これらの実施形態では、主制御装置190は、パルスコマンド信号191を、異なる統合LIDAR測定装置の各々に伝達する。このようにして、主制御装置190は、任意の数の統合LIDAR測定装置によって実行されるLIDAR測定のタイミングを調整する。
【0039】
パルスコマンド信号191は、主制御装置190によって生成されたデジタル信号である。かくて、パルスコマンド信号191のタイミングは、主制御装置190に関連するクロックによって決定される。いくつかの実施形態では、パルスコマンド信号191は、照明ドライバIC140によるパルス生成及び受信機IC150によるデータ取得を開始させるために直接使用される。しかしながら、照明ドライバIC140及び受信機IC150は、主制御装置190と同じクロックを共有しない。このため、パルスコマンド信号191を直接使用してパルス生成とデータ収集を開始させる場合、飛行時間の正確な推定は、はるかに計算が面倒になる。
【0040】
1つの態様では、受信機IC150は、パルスコマンド信号191を受信し、パルスコマンド信号191に応答して、パルストリガー信号VTRG143を生成する。パルストリガー信号143は、照明ドライバIC140に伝達され、照明源132に照明光134のパルスを生成させる電気パルス131を、照明源132に供給するために照明ドライバIC140を直接的に動作させる。加えて、パルストリガー信号143は、戻り信号142及び関連する飛行時間計算のデータ取得を直接的に開始させる。このようにして、受信機IC150の内部クロックに基づいて生成されたパルストリガー信号143を、パルス生成と戻りパルスデータ取得の両方を開始させるために使用する。これにより、時間からデジタルへの変換により正確な飛行時間の計算を可能にする、パルス生成と戻りパルス取得との同期を確実なものとする。
【0041】
照明源132は、電気エネルギー131のパルスに応答して照明光134の測定パルスを放射する。照明光134は、LIDARシステムの1つ以上の光学素子により、周囲環境の特定の場所に焦点を合わせて投射される。
【0042】
いくつかの実施形態では、照明源132はレーザーベースのもの(例えば、レーザーダイオード)である。いくつかの実施形態では、照明源は、1つ以上の発光ダイオードをベースにしている。一般に、任意の適切なパルス照明源を考えることができる。
【0043】
図1に示されるように、統合LIDAR測定装置130から放射された照明光134と、統合LIDAR測定装置130に向かって反射する対応する戻り測定光135は、光路を共有する。統合LIDAR測定装置130には、アクティブセンサー領域137を有する光検出器138が含まれる。図1に示すように、照明源132は、光検出器の活性領域137の視野の外側に位置する。図1に示すように、オーバーモールドレンズ136は、光検出器138に取り付けられている。オーバーモールドレンズ136には、戻り光135の光線受け入れ円錐に対応する円錐形空洞が含まれる。照明源132からの照明光134は、ファイバ導波路によって検出器受信円錐に入射される。光カプラーは、照明源132をファイバ導波路と光学的に接続する。ファイバ導波路の端部で、ミラー要素133は、照明光134を戻り光135の円錐に入射させるために、導波路に対してある角度(例えば、45度)に傾けられている。1つの実施形態では、ファイバ導波路の端面は45度の角度で切断され、端面は高反射誘電体コーティングでコーティングされて鏡面を提供する。いくつかの実施形態では、導波管には、長方形のガラスコアと、より低い屈折率のポリマークラッドとが含まれる。いくつかの実施形態では、光学アセンブリ全体が、ポリマークラッディングの屈折率に厳密に一致する屈折率を有する材料でカプセル化されている。このようにして、導波路は、照明光134を最小のオクルージョンで戻り光135の受け入れ円錐に入射させる。
【0044】
検出器138のアクティブ検知領域137に投射される戻り光135の受け入れ円錐内の導波路の配置は、照明スポットと検出器の視野とが遠視野で確実に最大の重なりを有するように選定する。
【0045】
図1に示すように、周囲環境から反射された戻り光135は、光検出器138によって検出される。いくつかの実施形態では、光検出器138はアバランシェフォトダイオードである。光検出器138は出力信号139を生成し、これは戻り信号受信機IC150に伝達される。
【0046】
出力信号139は、TIA141によって受信され増幅される。増幅された信号142は、戻り信号分析モジュール160に伝達される。一般に、出力信号139の増幅には、複数の増幅器段を含むことができる。この意味で、本特許文書の範囲内で他の多くのアナログ信号増幅方式を考えることができるため、アナログトランスインピーダンス増幅器を非限定的な例として提示する。図1に示すように、TIA141は戻り信号受信機IC150と統合されるが、一般に、TIA141は、受信機IC150とは別の個別的なデバイスとして実装することができる。いくつかの実施形態では、TIA141を受信機IC150と統合して、スペースを節約し、信号の混入を削減することが好ましい。
【0047】
戻り信号受信機IC150はいくつかの機能を実行する。1つの態様では、受信機IC150は、照明光134のパルスに応答して周囲環境の1つ以上のオブジェクトから反射された1つ以上の光の戻りパルスを識別し、これらの各戻りパルスに関連付けられた飛行時間を決定する。一般に、出力信号139は、LIDAR測定装置130から装置130の最大範囲に等しい距離まで行き装置130に戻るまでの光の飛行時間に対応する期間、戻り信号受信機IC150によって処理される。この期間中、照明パルス134は、統合LIDAR測定装置130から異なる距離にあるいくつかのオブジェクトに遭遇することがある。したがって、出力信号139は、デバイス130から異なる距離に位置する異なる反射面から反射される照明ビーム134の一部にそれぞれ対応するいくつかのパルスを含むことができる。別の態様では、受信機IC150は、各戻りパルスの様々な特性を決定する。図1に示すように、受信機IC150は、各戻りパルスの幅の表示を決定し、各戻りパルスのピーク振幅を決定し、各戻りパルス波形のピーク振幅を含むサンプリング窓全体にわたって各戻りパルス波形を個別にサンプリングする。これらの信号特性とタイミング情報は、統合LIDAR測定装置130から主制御装置190に伝達される。主制御装置190は、このデータをさらに処理するか、又は、このデータをさらなる画像処理のために(例えば、LIDAR測定システム120のユーザーにより)外部のコンピュータ装置に直接伝達することができる。
【0048】
図2は、統合LIDAR測定装置130からの測定パルスの放射及び戻り測定パルスの捕捉に関連するタイミングを図示する。図2に示すように、受信機IC150によって生成されるパルストリガー信号143の立ち上がりエッジによって測定を開始する。図1及び図2に示すように、増幅された戻り信号142は、TIA141により生成される。前述のように、測定窓(つまり、収集された戻り信号データが特定の測定パルスと関連付けられている期間)は、パルストリガー信号143の立ち上がりエッジでデータ取得を有効にすることによって開始される。受信機IC150は、測定パルスシーケンスの放射に応答して、戻り信号が予想される時間の窓に対応するように、測定窓の持続時間Tmeasurementを制御する。いくつかの例では、パルストリガー信号143の立ち上がりエッジで測定窓が有効になり、LIDARシステムの範囲の約2倍の距離にわたる光の飛行時間に対応する時刻で無効になる。このように、測定窓は、LIDARシステムに隣接するオブジェクト(つまり、無視できる飛行時間)からLIDARシステムの最大範囲までにあるオブジェクトの戻り光を収集するために開いている。このようにして、有用なリターン信号に貢献できない可能性のある他のすべての光が排除される。
【0049】
図2に示すように、戻り信号142には、放出された測定パルスに対応する3つの戻り測定パルスが含まれる。一般に、信号検出は、検出されたすべての測定パルスに対して実行される。さらに、最も近い有効信号142B(すなわち、戻り測定パルスの最初の有効な事象)、最も強い信号、及び最も遠い有効信号142C(すなわち、測定窓における戻り測定パルスの最後の有効な事象)を識別するために信号分析を実行することができる。
これらの事象はいずれも、潜在的に有効な距離測定としてLIDARシステムから報告することができる。
【0050】
LIDARシステムからの光の放出に関連する内部システム遅延(例えば、スイッチング要素、エネルギー貯蔵要素、及びパルス発光装置に関連する信号通信遅延及び待ち時間)、及び光の収集と収集された光を示す信号の生成(例えば、増幅器の待ち時間、アナログデジタル変換遅延など)に関連する遅延は、光の測定パルスの飛行時間の推定における誤差の原因となる。したがって、パルストリガー信号143の立ち上がりエッジと各有効戻りパルス(すなわち、142B及び142C)との間の経過時間に基づく飛行時間の測定には、望ましくない測定誤差が入り込んでいる。いくつかの実施形態では、修正した実際の光の飛行時間の推定値を得るため、電子的な遅延を補正するために、較正済みの所定の遅延時間が採用されている。ただし、動的に変化する電子遅延に対して静的な補正を行うことには、精度に限界が生じる。頻繁に再キャリブレーションを行うこともできるが、これには計算の複雑さが伴い、システムの動作可能時間に悪影響を及ぼす。
【0051】
別の態様では、受信機IC150は、照明源132と光検出器138との間の内部クロストークによる検出パルス142Aの検出と、有効な戻りパルス(例えば、142B及び142C)との間の経過時間に基づいて飛行時間を測定する。このようにして、システムに起因する遅延は飛行時間の推定から排除される。パルス142Aは、光の伝播距離が事実上存在しない内部クロストークによって生成される。したがって、パルストリガー信号の立ち上がりエッジからパルス142Aの検出の事象までの時間遅れは、照明及び信号検出に関連するシステムに起因する遅延のすべてを捕捉する。有効な戻りパルス(例えば、戻りパルス142B及び142C)の飛行時間を、検出されたパルス142Aを基準にして測定することにより、内部クロストークによる照明及び信号検出に関連するすべての、システムに起因する遅延が除去される。図2に示すように、受信機IC150は、戻りパルス142Bに関連する飛行時間TOFと、戻りパルス142Aを基準とした戻りパルス142Cに関連する飛行時間TOFとを推定する。
【0052】
いくつかの実施形態では、信号分析は、受信機IC150によって完全に実行される。
これらの実施形態では、統合LIDAR測定装置130から伝達される飛行時間の信号192には、受信機IC150によって決定された各戻りパルスの飛行時間の表示が含まれる。いくつかの実施形態では、信号155~157には、受信機IC150によって生成された戻りパルスに関連付けられた波形情報が含まれる。この波形情報は、3D-LIDARシステムに搭載された、又は3D-LIDARシステムの外部にある1つ以上のプロセッサによってさらに処理され、距離の別の推定値、検出されたオブジェクトの1つ以上の物理的特性の推定値、又はそれらの組み合わせを取得する。
【0053】
戻り信号受信機IC150は、アナログ/デジタル混合信号処理ICである。図1に示す実施形態では、戻り信号受信機IC150には、TIA141、戻り信号分析モジュール160、飛行時間計算モジュール159、及びアナログデジタル変換モジュール158が含まれる。
【0054】
図3は、1つの実施形態における戻り信号分析モジュール160を示す。図3に示す実施形態において、戻り信号分析モジュール160には、コンスタントフラクション弁別器(CFD)回路170、粗いタイミングモジュール180、精密なタイミングモジュール190、パルス幅検出モジュール200、及び戻りパルスサンプリング・ホールドモジュール210が含まれる。
【0055】
増幅された戻り信号、VTIA142、及び閾値信号、VTHLD145は、CFD170によって受信される。戻り信号142が閾値(すなわち、閾値信号145の値)を超えると、CFD170は有効な戻りパルスを識別する。加えて、CFD170は、有効な戻りパルスがいつ検出されたかを繰り返し判断し、検出時に急激に変化するヒット信号VHIT178を生成する。ヒット信号178は、有効な戻りパルスの検出を示し、戻り信号分析モジュール160のタイミング及び波形取得及び分析機能のそれぞれを開始させる。
【0056】
例えば、粗いタイミングモジュール180は、照明パルス134を開始させるパルストリガー信号143のトランジション及び特定の有効な戻りパルスに関連付けられたヒット信号178のトランジションから経過したデジタルクロックサイクルの数を示すデジタル信号(すなわち、RANGE151)を決定する。粗いタイミングモジュール180は、デジタルクロック信号の周期の半分だけ時間移動させたデジタルクロック信号であるデジタル信号(すなわち、MS152)を生成する。
【0057】
加えて、精密なタイミングモジュール190は、特定の有効な戻りパルスに関連するヒット信号178のトランジションとデジタルクロック信号CLKの次のトランジションとの間の経過時間を示す電圧値を有するアナログ信号(すなわち、VCLK153)を決定する。同様に、精密なタイミングモジュール190は、特定の有効な戻りパルスに関連するヒット信号178のトランジションと反転させたデジタルクロック信号CLKBの次のトランジションとの間の経過時間を示す電圧値を有するアナログ信号(すなわちVCLKB154)を決定する。飛行時間モジュール159は、RANGE151、MS152、VCLK153、及びVCLKB154を使用して、検出された各戻りパルスに関連する飛行時間を決定する。
【0058】
戻りパルスサンプリング・ホールドモジュール210は、各有効戻りパルスのピーク振幅を示す信号値(例えば、電圧)を有するアナログ信号(すなわち、VPEAK156)を生成する。加えて、戻りパルスサンプリング・ホールドモジュール210は、それぞれが各有効な戻りパルス波形のサンプリングポイントに関連付けられた振幅を示す信号値(例えば、電圧)を有するアナログ信号のセット(すなわち、VWIND155)を生成する。いくつかの実施形態では、波形のピーク振幅の前後のサンプリングポイントの数はプログラム可能である。
【0059】
パルス幅検出モジュール200は、各有効戻りパルス波形の幅を示す信号値(例えば、電圧)を有するアナログ信号(すなわち、VWIDTH157)を生成する。図示の実施形態では、VWIDTH157の値は、戻りパルス信号142がVTHLD145の値を超える時点と特定の有効な戻りパルスに関連するヒット信号178のトランジション時点との間の経過時間を示す。VWIND155、VPEAK156、及びVWIDTH157はそれぞれ、戻り信号受信機ICから主制御装置190への伝達する前に、戻り信号受信機IC150のアナログ・デジタルコンバータ(ADC)158によってデジタル信号に変換される。
【0060】
図4は、1つの実施形態におけるコンスタントフラクション弁別器170を示す。図4に示すように、コンスタントフラクション弁別器170には、信号遅延モジュール171、信号分割モジュール172、イネーブルモジュール173、及びコンパレータモジュール174が含まれる。TIA141によって生成されるアナログ出力信号142は、信号遅延モジュール171、信号分割モジュール172、及びイネーブルモジュール173に伝達される。信号遅延モジュール171は、信号142に固定遅延を導入し、VDELAY175を生成する。同時に、信号分割モジュール172には、VTIA142を一定の割合(例えば、2で割る)で分割してVFRACT176を生成する電圧分割回路を含む。VDELAY175とVFRACT176の値は、コンパレータ174によって比較される。1つの例では、ヒット信号VHIT178は、VDELAY175がVFRACT176よりも大きいとき高状態になり、VDELAY175がVFRACT176よりも小さいとき、VHIT178は低状態になる。このようにして、VHIT178は、戻りパルスがいつ到着し、いつ整合が取れた状態で通過したかを示す。戻りパルスの到着を判断するために任意の閾値が採用された場合、異なる戻りパルスが同様に整形されないため、到着のタイミングは一貫しない。ただし、コンスタントフラクション弁別器を使用することにより、戻りパルスの到着と通過のタイミングが複数の戻りパルス間で一貫して識別される。イネーブルモジュール173は、電圧閾値VTHLD145を受け取り、戻り信号VTIA142の値がVTHLD145を超えると、イネーブル信号VENABLE177を生成する。このようにして、コンパレータモジュール174は、戻り信号142が閾値を超えたときにのみ有効となる。これにより、戻り信号142のスプリアススパイクが無視され、有効な戻りパルスがコンパレータモジュール174によって処理される。一般に、CFD170は、測定窓の期間に到着する各有効な戻りパルスに関連するヒット信号178を生成するように構成される。したがって、VHIT178には、それぞれが別々の戻りパルスに関連付けられた複数のヒット信号が含まれる。
【0061】
図5は、粗いタイミングモジュール180の1つの実施形態を示す。図5に示すように、粗いタイミングモジュール180には、バイナリカウンタモジュール181、バイナリコードからグレイコードへのコンバータ182、準安定ビットジェネレータ183、及び1つ以上のラッチモジュール184A~Nが含まれる。図5に示すように、デジタルクロック信号CLK、及び反転させたデジタルクロック信号CLKBは、粗いタイミングモジュール180のモジュールによって受信される。1つの実施形態では、デジタルクロック信号は、ボード戻り信号受信機IC150に取り付けられた位相ロックループ(PLL)によって生成される。1つの実施形態では、デジタルクロック信号は、1ギガヘルツの周波数を有する。したがって、この特定の実施形態では、粗いタイミングモジュール180は、最も近い1ナノ秒までの特定の戻りパルスに関連する飛行時間を決定することができる。
【0062】
バイナリカウンタモジュール181は、パルストリガー信号143を受信し、パルストリガーに応答してカウントを開始する。ランニングカウントを示すデジタル信号BIN[0:10]186は、バイナリからグレイコードへのコンバータ182に伝達される。バイナリからグレイコードへのコンバータ182は、バイナリカウント信号BIN[0:10]186をグレイコードに相当するデジタル信号COUNT[0:10]に変換する。
COUNT[0:10]は、ラッチモジュール184A~Nの各々に伝達される。加えて、実行中のバイナリカウントBIN[0]の最初のビットは、準安定ビットジェネレータ183に伝達される。準安定ビットジェネレータ183は、半周期シフトをBIN[0]に導入することにより準安定ビットMS188を生成する。MS188は、ラッチモジュール184A~Nの各々にも通信される。
【0063】
加えて、別々の戻りパルスに関連する各ヒット信号178は、別々のラッチモジュール(すなわち、ラッチモジュール184A~Nの内の1つ)に伝達される。ラッチモジュール184A~Nの各々は、戻りパルスの識別を示す対応するヒット信号のトランジションにおいて、COUNT[0:10]及びMSの最後の既知の値をラッチする。結果として得られたラッチされた値、RANGE[0:10]151及びMS152は、それぞれ、図1に示された飛行時間モジュール159に伝達される。
【0064】
図6は、1つの実施形態における精密なタイミングモジュール190を示す。精密なタイミングモジュール190には、2つのパルス幅発生器191及び193と、2つの時間・電圧変換器192及び194とが含まれる。パルス幅発生器191は、各ヒット信号178及びクロック信号CLKを受信する。同様に、パルス幅発生器193は、各ヒット信号178及びクロック信号CLKBを受信する。パルス幅発生器191は、ヒット信号178の立ち上がりエッジとクロック信号CLKの次の立ち上がりエッジとの間の時間に一致する持続時間を有するパルスを生成する。このパルス信号VPULSE195は、時間・電圧変換器192に伝達される。VPULSE195に応答して、時間・電圧変換器192は、パルスの持続時間にわたってコンデンサを通じて電流ランプを生成する。コンデンサ両端の電圧は、パルスの持続時間を示す。この電圧信号VCLK153は、デジタル信号への変換のためにADC158に伝達されて、飛行時間モジュール159に伝達される。同様に、パルス幅発生器193は、ヒット信号178の立ち上がりエッジとクロック信号CLKBの次の立ち上がりエッジとの間の時間に一致する持続時間を有するパルスを生成する。このパルス信号VPULSE-B196は、時間・電圧変換器194に伝達される。VPULSE-B196に応答して、時間・電圧変換器194は、パルスの持続時間にわたってコンデンサを通じて電流ランプを生成する。コンデンサ両端の電圧は、パルスの持続時間を示す。この電圧信号VCLKB154は、デジタル信号への変換のためにADC1パルス幅発生器191及び193と時間・電圧変換器192及び194はアナログモジュールであるため、ヒット信号の立ち上がりエッジから次のクロック信号までの経過時間の推定に関連する不確かさは10ピコ秒未満です。したがって、精密なタイミングモジュールにより、特定の戻りパルスに関連する飛行時間の高精度の推定を可能となる。
【0065】
別の態様では、各戻りパルスに関連する飛行時間の決定は、粗いタイミングモジュールと精密なタイミングモジュールの両方の出力に基づいて行われる。図1に示す実施形態では、飛行時間モジュール159はデジタル的に実装される。飛行時間モジュール159は、特定の戻りパルスに関連付けられた飛行時間を、戻りパルスに関連付けられた粗い時間推定値RANGE[0:10]及び精密時間推定値に基づいて決定する。飛行時間モジュール159は、ヒット信号がCLK信号又はCLKB信号のトランジションの近くに来たかどうかに基づいて、VCLK又はVCLKBを細かい時間推定として使用するかどうかを決定する。例えば、ヒット信号がCLK信号の遷移の近くに来た場合、CLKB信号はその時点で安定していたため、VCLKBが精密な時間推定のベースとして使用される。
同様に、ヒット信号がCLKB信号のトランジションの近くに来た場合、CLK信号はその時点で安定していたため、VCLKが精密な時間推定のベースとして使用される。1つの例では、推定飛行時間は、粗い時間推定値と選択した精密時間推定値の合計となる。
【0066】
さらなる態様では、ヒット信号がクロックトランジションの近くに来たとき、つまり、カウンタモジュール181のトランジションの近くに来たとき、準安定ビットMS[0]をRANGE[0:10]の正しいカウントを決定するために採用する。例えば、ヒット信号178がカウンタ181のトランジションの近くで遷移する場合、どのカウントがそのヒット信号に関連するかは不明である。1ギガヘルツ時計の場合、誤差は1カウント、又は1ナノ秒となる。このような状況では、準安定ビットの値を使用して、どのカウントを特定のヒットに関連付けるのかを決定する。準安定性ビットの値により、ヒット信号がカウンタ信号の高から低へのトランジションの近くに来たのか、又はカウンタ信号の低から高へのトランジションに近くに来たのかの決定、すなわち、正しいカウント値の決定がなされる。
【0067】
図7は、1つの実施形態におけるパルス幅検出モジュール200を示す。パルス幅検出モジュール200には、パルス幅発生器201及び時間・電圧変換器202が含まれる。
パルス幅発生器201は、図4に示されるイネーブル信号VENABLE177とヒット信号178の立ち下がりエッジとの間の時間と立ち上がりエッジに一致する持続時間を有するパルスを生成する。このパルス信号VPULSE203は、時間・電圧変換器202に伝達される。VPULSE203に応答して、時間・電圧変換器202は、パルスの持続時間にわたってコンデンサを通じて電流ランプを生成する。コンデンサ両端の電圧は、パルスの持続時間を示す。この電圧信号VWIDTH155はデジタル信号へ変換させるためにADC158に伝達される。
【0068】
パルス幅検出モジュール200は、非限定的な例として示されている。一般に、パルス幅検出モジュール200は、異なる入力信号で動作してVPULSE203及びVWIDTH155を生成するように構成することができる。1つの例では、パルス幅発生器201は、ヒット信号178の立ち上がりエッジとVTIA142がVTHLD145を下回る瞬間との間の時間に一致する持続時間を有するパルスを生成する。VTIA142がTHLD145を下回る瞬間は、別のコンパレータによって決定するか、又はVHITのように出力をラッチせずにコンパレータモジュール174の出力によって決定することができる。別の例では、パルス幅発生器201は、VTIA142がVTHLD145を上回ってからVTIA142がVTHLD145を下回るまでの時間に一致する持続時間を有するパルスを生成する。1つの例では、パルス幅発生器201の代わりにVENABLE177が使用され、VENABLE177が時間・電圧変換器202への入力として供給される。時間・電圧変換器202は、パルスの持続時間にわたってコンデンサを通じて電流ランプを生成する。コンデンサ両端の電圧は、VENABLEパルスの持続時間を示している。
【0069】
別の態様では、主制御装置は、各々が別々の統合LIDAR測定装置に伝達される複数のパルスコマンド信号を生成するように構成される。各戻りパルス受信機ICは、受信したパルスコマンド信号に基づいて、対応するパルス制御信号を生成する。
【0070】
図8図10は、複数の統合LIDAR測定装置を有する3D-LIDARシステムを示す。いくつかの実施形態では、各統合LIDAR測定装置の起動同士の間に遅延時間が設定される。いくつかの例では、遅延時間は、LIDAR装置の最大範囲にあるオブジェクトとの間の測定パルスシーケンスの飛行時間よりも長くなる。このようにして、統合LIDAR測定装置のいずれにもクロストークをなくす。いくつかの他の例では、別の統合LIDAR測定装置から放射された測定パルスがLIDAR装置に戻る前に、1つの統合LIDAR測定装置から測定パルスが放射される。これらの実施形態では、クロストークを回避するために、各ビームによって調査される周囲環境の領域同士の十分な空間的分離を確保するように注意が払われる。
【0071】
図8は、1つの例示的な操作シナリオにおける3D-LIDARシステム100の実施形態を示す図である。3D-LIDARシステム100には、下部ハウジング101と、赤外線(例えば、700から1,700ナノメートルのスペクトル範囲内の波長を有する光)に対して透明な材料から構築されたドーム型シェル要素103を有する上部ハウジング102とが含まれる。1つの例では、ドーム型シェル要素103は、905ナノメートルを中心とする波長を有する光に対して透明である。
【0072】
図8に示すように、複数の光ビーム105は、中心軸104から測定した角度範囲αにわたって、3D-LIDARシステム100からドーム型シェル要素103を通って放射される。図8に示す実施形態では、各光ビームは、互いに離間した複数の異なる位置でx軸及びy軸によって規定される平面に投射される。例えば、ビーム106は位置107でxy平面に投射される。
【0073】
図8に示す実施形態では、3D-LIDARシステム100は、中心軸104の周りに複数の光ビーム105のそれぞれをスキャンするように構成される。xy平面に投射される各光ビームは、中心軸104とxy平面の交点を中心とする円形パターンをたどる。例えば、時間の経過とともに、xy平面に投射されたビーム106は、中心軸104を中心とする円形軌道108をたどる。
【0074】
図9は、1つの例示的な操作シナリオにおける3D-LIDARシステム10の別の実施形態を示す図である。3D-LIDARシステム10には、下部ハウジング11と、赤外線(例えば、700から1,700ナノメートルのスペクトル範囲内の波長を持つ光)を透過する材料で構成されている円筒シェル要素13を有する上部ハウジング12とが含まれる。1つの例では、円筒シェル要素13は、905ナノメートルを中心とする波長を有する光に対して透明である。
【0075】
図9に示すように、3D-LIDARシステム10から複数の光ビーム15が、角度範囲βにわたって円筒シェル要素13を通って放射される。図9に示す実施形態では各光ビームの主光線が示されている。各光ビームは、複数の異なる方向で周囲の環境へと外向きに投射される。例えば、ビーム16は、周囲環境の位置17へと投射される。いくつかの実施形態では、システム10から放射された光の各ビームはわずかに発散する。1つの例では、システム10から放射された光ビームは、システム10から100メートルの距離で直径20センチメートルのスポットサイズを照射する。このように、照明光の各ビームは、システム10から放射される円錐状の照明光となる。
【0076】
図9に示す実施形態では、3D-LIDARシステム10は、中心軸14の周りの複数の光ビーム15のそれぞれでスキャンするように構成されている。例示の目的で、光ビーム15は、3D-LIDARシステム10の非回転座標フレームに対してある角度方向で示され、光線15’は、この非回転座標フレームに対して別の角度方向で示されている。
光ビーム15が中心軸14を中心に回転すると、周囲の環境に投影される各光ビーム(例えば、各ビームに関連付けられた各円錐状の照明光)は照明ビームが中心軸14の周りをスイープするときに、対応する環境を照射する。
【0077】
図10は、例示的な1つの実施形態における3D-LIDARシステム100の分解図を示している。3D-LIDARシステム100には、中心軸104を中心として回転する光放射/収集エンジン112がさらに含まれる。図10に示す実施形態では、光放射/収集エンジン112の中心光軸117は、中心軸104に対して角度θで傾斜している。
図10に示すように、3D-LIDARシステム100には、下部ハウジング101に固定された位置に取り付けられた静止電子基板110が含まれる。回転電子基板111は静止電子基板110の上に配置され、静止電子基板110に対して所定の回転速度(例えば、毎分200回転以上)で回転するように構成される。電力信号と電子信号は、1つ以上の変圧器、コンデンサ素子、又は光学素子を通って電子基板110と回転電子基板111との間で伝達され、これらの信号の非接触伝送が行われることになる。光放射/収集エンジン112は、回転する電子基板111に固定して設置され、したがって、所定の角速度ωで中心軸104の周りを回転する。
【0078】
図10に示すように、光放射/収集エンジン112には、統合LIDAR測定装置113のアレイが含まれる。1つの態様では、各統合LIDAR測定装置には、光放射素子、光検出素子、及び共通基板(例えば、プリント回路基板又は他の電気回路基板)上に統合された関連する制御用及び信号調整用電子機器が含まれる。
【0079】
各統合LIDAR測定装置から放射された光は一連の光学素子116を通過し、放射された光をコリメートして3D-LIDARシステムから環境に投射する照明光のビームを生成する。このようにして、別々のLIDAR測定装置から放出される光ビーム105のアレイは、図11に示すように3D-LIDARシステム100から放射される。一般に、3D-LIDARシステム100から任意の数の光線を同時に放射するために、任意の数のLIDAR測定装置を配置できる。特定のLIDAR測定装置による照明により環境内のオブジェクトから反射された光は、光学素子116によって収集される。収集された光は光学素子116を通過し、そこで同じ特定のLIDAR測定装置の検出素子に焦点が合わせられる。このようにして、異なるLIDAR測定装置によって生成された照明による、環境の異なる部分の照明に関連する収集光は、対応する各LIDAR測定装置の検出器に別々に焦点を合わせられる。
【0080】
図11は、光学素子116の詳細を示す。図11に示すように、光学素子116には、統合LIDAR測定装置113のアレイの各検出器上に収集光118を集束させるように配置された4つのレンズ素子116A~Dが含まれる。図11に示す実施形態では、光学系116を通過する光は、ミラー124で反射され、統合LIDAR測定装置113のアレイの各検出器に向けられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の光学要素116は、所定の波長範囲外の光を吸収する1つ以上の材料で構成される。所定の波長範囲には、統合LIDAR測定装置113のアレイによって放射される光の波長が含まれる。1つの例では、レンズ要素の1つ以上は、統合LIDAR測定装置113のアレイの各々によって生成される赤外線よりも短い波長を有する光を吸収する着色剤添加物を含むプラスチック材料で構成される。1つの例では、着色剤はAako BV(オランダ)から入手可能なEpolight7276Aである。一般に、任意の数の異なる着色剤を光学系116のプラスチックレンズ要素のいずれかに加えて、望ましくないスペクトルを除去することができる。
【0081】
図12は、収集された光118の各ビームの整形を表現する光学系116の断面図を示している。
【0082】
このように、図9に示された3D-LIDARシステム10などのLIDARシステム及び図8に示されたシステム100には、それぞれがLIDAR装置から周囲環境に照明光のパルスビームを放射し、周囲環境内のオブジェクトから反射された戻り光を測定する複数の統合LIDAR測定装置が含まれる。
【0083】
図8及び図9を参照しながら説明する実施形態のような、いくつかの実施形態では、統合LIDAR測定装置のアレイは、LIDAR装置の回転フレームに取り付けられている。この回転フレームは、LIDAR装置のベースフレームに対して回転する。しかし、一般に、統合LIDAR測定装置のアレイは、任意の適切な方法(例えば、ジンバル、パン/チルトなど)で移動可能にすることも又はLIDAR装置のベースフレームに固定することもできる。
【0084】
他のいくつかの実施形態では、各統合LIDAR測定装置には、統合LIDAR測定装置によって生成された照明ビームをスキャンするビーム指向要素(例えば、スキャニングミラー、MEMSミラーなど)が含まれる。
【0085】
いくつかの他の実施形態では、2つ以上の統合LIDAR測定装置の各々は、照明光のビームを周囲の環境のさまざまな方向に反射するスキャニングミラー装置(例えば、MEMSミラー)に向かって、照明光のビームを放射する。
【0086】
さらなる態様において、1つ以上の統合LIDAR測定装置は、これらの1つ以上の統合LIDAR測定装置によって生成された照明ビームを異なる方向に向ける光位相変調装置と光学的に通信を行う。光位相変調装置は、光位相変調装置の状態を変化させ、それにより光位相変調装置から回折される光の方向を変化させるための制御信号を受信する能動装置である。このようにして、1つ以上の統合LIDAR装置によって生成された照明ビームは、さまざまな向きでスキャンされ、測定中の周囲の3D環境を効果的に調べる。周囲環境に投射された回折ビームはその環境と相互に影響しあう。それぞれの統合LIDAR測定装置は、オブジェクトから収集された戻り光に基づいて、LIDAR測定システムと検出されたオブジェクトとの間の距離を測定する。光位相変調装置は、統合LIDAR測定装置と周囲環境の測定対象オブジェクトとの間の光路に配置される。したがって、照明光と対応する戻り光は、両方とも光位相変調デバイスを通過する。
【0087】
図13は、ここに記載の統合LIDAR測定装置による実施に適した、方法300のフローチャートを示す。いくつかの実施形態では、統合LIDAR測定装置130は、図13に示した方法300に従って動作可能である。しかしながら、一般に、方法300の実行は、図1を参照して説明した統合LIDAR測定装置130の実施形態に対するものに限定されない。これらの例示及びこれらに対応する説明は、多くの他の実施形態及び動作例を考えることができるため、例として示すものである。
【0088】
ブロック301において、プリント回路基板に取り付けられた戻り信号受信機ICで受け取られたパルスコマンド信号に応答してパルストリガー信号が生成される。
【0089】
ブロック302において、照明源は、パルストリガー信号に応答して選択的に電源に電気的に接続され、照明源から照明光の測定パルスを放出させる。
【0090】
ブロック303において、照明光の測定パルスに応答して、光検出器によって受け取られた戻り光が検出される。照明源と光検出器はプリント回路基板に取り付けられている。
【0091】
ブロック304において、検出された戻り光を示す出力信号が生成される。
【0092】
ブロック305において、出力信号は、測定窓の持続時間中に戻り信号受信機ICで受け取られる。
【0093】
ブロック306において、検出された戻り光の1つ以上の戻りパルスが識別される。
【0094】
ブロック307において、識別された戻りパルスの各々に関連付けられた飛行時間を決定する。
【0095】
ブロック308において、識別された戻りパルスの各々のセグメントの1つ以上の特性を決定する。
【0096】
ここで説明したコンピューティングシステムには、パーソナルコンピュータシステム、メインフレーム、コンピューターシステム、ワークステーション、画像コンピュータ、パラレルプロセッサ、又は、当該技術分野で知られている他のデバイスを含めることができるが、これらに限定されない。一般に、「コンピューティングシステム」という用語は、記憶媒体からの命令を実行する1つ以上のプロセッサを有する装置を包含するように広く定義することができる。
【0097】
ここで説明したような方法を実行するプログラム命令は、有線、ケーブル、又は無線伝送リンクなどの伝送媒体を介して伝送することができる。プログラム命令は、コンピュータ読み取り可能媒体に保存される。例示的なコンピュータ読み取り可能媒体として、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク又は光ディスク、又は磁気テープが含まれる。
【0098】
一般に、ここで説明した電源は、電圧又は電流として定めた電力を供給するように構成することができる。したがって、ここで電圧源又は電流源として記載した電源は、それぞれ等価な電流源又は電圧源と考えることもできる。同様に、ここで説明した電気信号は、電圧信号又は電流信号と規定することもできる。したがって、電圧信号又は電流信号として本明細書で説明される電気信号は、それぞれ等価な電流信号又は電圧信号と考えることもできる。
【0099】
1つ以上の例示的な実施形態では、説明した機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実施することができる。ソフトウェアで実施される場合、機能は、コンピュータ読み取り可能媒体上の1つ以上の命令又はコードとして格納又は送信することができる。コンピュータで読み取り可能媒体には、コンピュータの記憶媒体と、ある場所から他の場所へのコンピュータプログラムの転送を容易にする任意の媒体を含む通信媒体の両方が含まれる。記憶媒体は、汎用コンピュータ又は専用コンピュータがアクセスできる利用可能な任意の媒体とすることができる。限定するためではなく例示として、そのようなコンピュータ読み取り可能媒体には、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、又は、所望のプログラムコードを命令又はデータ構造の形式で持ち運び又は格納のために使用することができ、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ、又は汎用プロセッサ又は専用プロセッサからアクセスすることができる他の媒体を含むことができる。また、すべての接続は、コンピュータ読み取り可能媒体と適切に称される。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、又は赤外線、ラジオ波、マイクロ波のような無線技術を使用して、Webサイト、サーバ、又はその他のリモートソースから送信される場合、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア、DSL、又は赤外線、ラジオ波、マイクロ波のような無線技術が媒体の定義に含まれる。ここで使用されるディスク及び磁気ディスクには、コンパクトディスク(CD)、レーザーディスク(登録商標)、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピーデイスク、及びブルーレイディスクが含まれ、ここで、通常、磁気ディスクは磁気的にデータを再生するものであり、ディスクはレーザーで光学的にデータを再生するものである。これらの組み合わせもコンピュータ読み取り可能媒体の範囲内に含まれる。
【0100】
特定の実施形態を説明目的のために上述の通り説明したが、この特許文書の教示は一般的な利用可能性を示し、上記の特定の実施形態に限定することを意味しない。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、説明した実施形態の様々な特徴の様々な修正、改変、及び組み合わせを実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13