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特開2024-100302プラズマCVD(化学気相成長)装置及び成膜方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100302
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】プラズマCVD(化学気相成長)装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/50 20060101AFI20240719BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C23C16/50
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004201
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】広橋 拓也
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030FA01
4K030KA12
4K030KA30
4K030KA45
5F045AA08
5F045AD01
5F045AE21
5F045BB15
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EF05
5F045EF14
5F045EF18
5F045EH13
5F045EH19
5F045EK07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シャワーヘッドとステージとの間にプラズマを生成して基板上に膜を生成する場合に、寄生プラズマの生成を抑制或いは低減可能なプラズマCVD装置及び成膜方法を提供する。
【解決手段】プラズマCVD装置100は、プロセスチャンバ102と、ステージ104と、シャワーヘッド106と、プラズマ生成回路130と、隔壁108と、を備える。プラズマ生成回路は、シャワーヘッドとステージとをそれぞれ電極として、それらの間でプラズマを生成させる。隔壁は、シャワーヘッドとステージとの間のプロセスチャンバ内の第1の空間とシャワーヘッドのステージ側とは反対側のプロセスチャンバ内の第2の空間とを所定の隙間を残して遮断し、シャワーヘッドからプロセスガスが供給され、第2の空間にプロセスガスとは異なるガスが供給され、かつ第1の空間内が排気される状態で、第2の空間の圧力が第1の空間の圧力よりも高くなるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバ内に配置され、基板を載置するステージと、
前記プロセスチャンバ内で前記ステージと対向する位置に配置され、前記基板にプロセスガスを供給するシャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドと前記ステージとをそれぞれ電極として、前記シャワーヘッドと前記ステージとの間でプラズマを生成させるプラズマ生成回路と、
前記シャワーヘッドと前記ステージとの間の前記プロセスチャンバ内の第1の空間と前記シャワーヘッドの前記ステージ側とは反対側の前記プロセスチャンバ内の第2の空間とを所定の隙間を残して遮断し、前記シャワーヘッドから前記プロセスガスが供給され、前記第2の空間に前記プロセスガスとは異なるガスが供給され、かつ前記第1の空間内が排気される状態で、前記第2の空間の圧力が前記第1の空間の圧力よりも高くなるように構成される隔壁と、
を備えたことを特徴とするプラズマCVD(化学気相成長)装置。
【請求項2】
前記隔壁は第1の隔壁として用いられ、
前記第1の空間と前記ステージの前記シャワーヘッド側とは反対側の前記プロセスチャンバ内の第3の空間とを所定の隙間を残して遮断し、前記シャワーヘッドから前記プロセスガスが供給され、前記第2の空間及び前記第3の空間に前記プロセスガスとは異なるガスが供給され、かつ前記第1の空間内が排気される状態で、前記第3の空間の圧力が前記第1の空間の圧力よりも高くなるように構成される第2の隔壁をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のプラズマCVD(化学気相成長)装置。
【請求項3】
排気口を有するプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバ内に配置され、基板を載置するステージと、
前記プロセスチャンバ内で前記ステージと対向する位置に配置され、前記基板にプロセスガスを供給するシャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドと前記ステージとをそれぞれ電極として、前記シャワーヘッドと前記ステージとの間でプラズマを生成させるプラズマ生成回路と、
前記シャワーヘッドと前記ステージとの間の前記プロセスチャンバ内の第1の空間と前記ステージの前記シャワーヘッド側とは反対側の前記プロセスチャンバ内の第2の空間とを所定の隙間を残して遮断し、前記第2の空間に前記プロセスガスとは異なるガスが供給される隔壁であって、上方から見て前記第2の空間の中心から前記排気口へ向かう方向とは変位した方向に前記隙間が局所的に形成された隔壁と、、
を備えたことを特徴とするプラズマCVD(化学気相成長)装置。
【請求項4】
前記隔壁は、絶縁体で形成されることを特徴とする請求項1又は3記載のプラズマCVD(化学気相成長)装置。
【請求項5】
基板を載置するステージと、前記ステージと対向する位置に配置され、前記基板にプロセスガスを供給するシャワーヘッドとの間のプロセスチャンバ内の第1の空間の圧力よりも前記シャワーヘッドの前記ステージ側とは反対側の前記プロセスチャンバ内の第2の空間の圧力が高い状態を形成する工程と、
前記第1の空間の圧力よりも前記第2の空間の圧力が高い状態で、前記シャワーヘッドと前記ステージとをそれぞれ電極として、前記シャワーヘッドと前記ステージとの間でプラズマを生成させ、前記基板上に所定の膜を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマCVD装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平行平板型プラズマCVD(化学気相成長)装置では、成膜チャンバ内で、一方の電極と、対向する位置に配置される他方の電極との間に高周波電圧を印加することで、電極間にプラズマを生成する。その際、一方の電極が基板を載置するステージになる。また、他方の電極が原料ガスを導入するシャワーヘッドになる。そして、プラズマで原料ガスを分解し、基板上で気相成長させることにより、基板上に所望の膜を成膜する。また、シャワーヘッドの裏面側からパージガスを流すことにより基板にダスト等が付着することを抑制している。
【0003】
ここで、シャワーヘッドやステージといった電極とチャンバ壁との間に成膜に寄与しない寄生プラズマが生成されてしまう場合がある。かかる寄生プラズマが生じると、印加された電力のうち、寄生プラズマの生成に寄与した電力分のエネルギーが消費され、シャワーヘッドとステージとの間のプラズマ生成に寄与する電力が低下してしまう。これにより、原料ガスの乖離度が低下し、成膜速度の低下や膜の組成不良を引き起こすといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9,741,575号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、シャワーヘッドとステージとをそれぞれ電極として、シャワーヘッドとステージとの間にプラズマを生成して基板上に膜を生成する場合に、寄生プラズマの生成を抑制或いは低減可能なプラズマCVD装置及び成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のプラズマCVD(化学気相成長)装置は、プロセスチャンバと、ステージと、シャワーヘッドと、プラズマ生成回路と、隔壁と、を備える。ステージは、前記プロセスチャンバ内に配置され、基板を載置する。シャワーヘッドは、前記プロセスチャンバ内で前記ステージと対向する位置に配置され、前記基板にプロセスガスを供給する。プラズマ生成回路は、前記シャワーヘッドと前記ステージとをそれぞれ電極として、前記シャワーヘッドと前記ステージとの間でプラズマを生成させる。隔壁は、前記シャワーヘッドと前記ステージとの間の前記プロセスチャンバ内の第1の空間と前記シャワーヘッドの前記ステージ側とは反対側の前記プロセスチャンバ内の第2の空間とを所定の隙間を残して遮断し、前記シャワーヘッドから前記プロセスガスが供給され、前記第2の空間に前記プロセスガスとは異なるガスが供給され、かつ前記第1の空間内が排気される状態で、前記第2の空間の圧力が前記第1の空間の圧力よりも高くなるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態における半導体製造装置の構成の一例を示す構成図である。
図2】第1の実施形態の比較例における半導体製造装置の構成の一例を示す構成図である。
図3】第1の実施の形態における放電電圧と、圧力とギャップ距離との積との関係を示す図である。
図4】第1の実施の形態における電離レート係数と電子温度との関係の一例を示す図である。
図5】第1の実施の形態における電子温度と圧力との関係の一例を示す図である。
図6】第1の実施形態の変形例1におけるシャワーヘッドと隔壁との配置構成の一例を示す図である。
図7】第1の実施形態の変形例2におけるシャワーヘッドと隔壁との配置構成の一例を示す図である。
図8】第2の実施形態における半導体製造装置の構成の一例を示す構成図である。
図9】第2の実施形態における隔壁の一例の上面図である。
図10】第2の実施形態の変形例1における隔壁の配置構成の一例を示す図である。
図11】第3の実施形態における半導体製造装置の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における半導体製造装置の構成の一例を示す構成図である。図1の例では、半導体製造装置として、平行平板型プラズマCVD(化学気相成長)装置100を示している。図1の例では、例えば、1つの成膜チャンバを配置したシングルチャンバ方式のプラズマCVD装置100が示されている。プラズマCVD装置100は、プロセスチャンバ102、ステージ104、シャワーヘッド106、隔壁108、及びプラズマ生成回路130を備えている。
【0009】
プロセスチャンバ102内には、一方の電極となるステージ104と、他方の電極となるシャワーヘッド106が配置される。そして、ステージ104上には、成膜対象となる基板101が載置される。
【0010】
シャワーヘッド106は、プロセスチャンバ102内でステージ104と対向する位置に配置される。言い換えれば、シャワーヘッド106は、基板101と対向する位置に配置される。
【0011】
そして、所望の温度に制御されるプロセスチャンバ102内を図示しない真空ポンプにより排気口116から真空引きを行う。真空引きされたプロセスチャンバ102内に原料ガスを供給する。原料ガスが供給された状態で、プロセスチャンバ102内は所望の圧力に制御される。原料ガス(プロセスガス)は、シャワーヘッド106によって基板101に供給される。具体的には、原料ガスは、シャワーヘッド106の導入口112から導入され、シャワーヘッド106下面の複数の孔から基板101に供給される。
【0012】
プラズマ生成回路130は、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間でプラズマを生成させる。図1の例では、ステージ104を高周波電極として用い、シャワーヘッド106をグランド(GND)電極として用いる場合を示している。また、プロセスチャンバ102は接地される。具体的には、シャワーヘッド106をグランド電極として接地(グランド電位を印加)した状態で、プラズマ生成回路130は、ステージ104に高周波(RF)電圧を印加する。これにより、シャワーヘッド106とステージ104との間でプラズマを生成させる。
【0013】
なお、上述した例では、ステージ104を高周波電極として用い、シャワーヘッド106をグランド電極として用いる場合を示したが、これに限るものではない。シャワーヘッド106を高周波電極として用い、ステージ104をグランド電極として用いる場合であっても構わない。
【0014】
プロセスチャンバ102内では、原料ガスの化学反応により所望の膜が基板101上に形成される。例えば、シラン(SiH)系のガスを主原料ガスとして導入して、シリコン酸化膜(SiO膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)を成膜する。その他、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)ガス等を主原料ガスとして導入して、シリコン酸化膜(SiO膜)を成膜する。また、原料ガスと共に、アルゴン(Ar)或いは/及びヘリウム(He)等のキャリアガスが併せて供給されても構わない。
【0015】
その際、シャワーヘッド106の裏面側となるプロセスチャンバ102内の上部に形成される導入口114からパージガス(プロセスガスとは異なるガス)がプロセスチャンバ102内に導入される。そして、パージガスは、シャワーヘッド106の側面を伝って、排気口116が形成されたプロセスチャンバ102内の底面側に向かって流れる。そして、排気口116から排気される。よって、プロセスチャンバ102の側壁よりも内側であって基板101外周よりも外側に、パージガスによるエアカーテンを生成し、プロセスチャンバ102の壁面に付着した、或いは浮遊するダスト等を排気口116側へと押し流す。これにより、ダスト等が基板101上に降り積もることを低減或いは抑制する。パージガスとして、例えば、Ar、或いは/及びHe等の希ガスやN等の不活性ガスが用いられると好適である。
【0016】
また、第1の実施形態では、隔壁108(第1の隔壁)がシャワーヘッド106とステージ104との間のプロセスチャンバ102内の空間A(第1の空間)とシャワーヘッド106のステージ104側とは反対側のプロセスチャンバ102内の空間B(第2の空間の一例)とを所定の隙間Gを残して遮断する。隔壁108は、プロセスチャンバ102の側壁に固定される。隔壁108とプロセスチャンバ102の側壁との間は隙間無く接触して配置されると好適である。隔壁108は、絶縁体で形成される。例えば、酸化アルミニウム(Al)等で形成されると好適である。或いは、隔壁108は、導電体に絶縁体でコーティングしたものであっても構わない。
【0017】
図1の例では、隔壁108がシャワーヘッド106と実質的に同じ高さ位置に配置される。例えば、隔壁108の下面とシャワーヘッド106の下面とが実質的に同じ高さ位置に配置される。よって、隙間Gは、シャワーヘッド106の側面と隔壁108の側壁との間に形成される。パージガスは、かかる隙間Gを通って、空間A側に流れる。
【0018】
図2は、第1の実施形態の比較例における半導体製造装置の構成の一例を示す構成図である。図2に示す比較例では、隔壁108が配置されていない点以外は、図1と同様である。かかる構成において、シャワーヘッド106とステージ104との間でプラズマを生成させると、シャワーヘッド106とプロセスチャンバ102の側壁との間に成膜に寄与しない寄生プラズマが生成されてしまう場合がある。同様に、ステージ104とプロセスチャンバ102の側壁との間に成膜に寄与しない寄生プラズマが生成されてしまう場合がある。かかる寄生プラズマが生じると、印加された電力のうち、寄生プラズマの生成に寄与した電力分のエネルギーが消費され、シャワーヘッド106とステージ104との間のプラズマ生成に寄与する電力が低下してしまう。これにより、原料ガスの乖離度が低下し、成膜速度の低下や膜の組成不良を引き起こすといった問題があった。
【0019】
これに対して、第1の実施形態では、図1に示すように、隔壁108によって、空間Aと空間Bとを隙間Gを残して遮断する。隔壁108は、シャワーヘッド106から原料ガスが供給され、空間Bにパージガスが供給され、かつ空間A内が排気される状態で、空間Bの圧力P2が空間Aの圧力P1よりも高くなるように構成される。
【0020】
図3は、第1の実施の形態における放電電圧と、圧力とギャップ距離との積との関係を示す図である。図3において、縦軸に放電電圧[V]を示し、横軸に圧力と(電極間)ギャップ距離との積[Torr・cm]を示している。また、図3では、Ar、He、ネオン(Ne)、窒素(N)、及び水素(H)についての関係を一例として示している。圧力とギャップ距離との積の所定の帯域では、各ガス共に放電電圧が低くなり、寄生プラズマが生じる場合があることがわかる。なお、これらのガスの中でも、パージガスとして使用する例えばArは、図3に示すように、特に、その他のガスに比べて放電し易い。また、パージガスとして使用し得るその他の希ガス(He、Ne)についても、N及びHに比べて放電し易い。このように、第1の実施形態において、使用するパージガスが放電し易い希ガスであると、特に上述した寄生プラズマが生じ易い。
【0021】
図4は、第1の実施の形態における電離レート係数と電子温度との関係の一例を示す図である。図4において、縦軸に電離レート[m/s]を示し、横軸に電子温度[eV]を示す。図4では、例えば、Ar原子の電子衝突による電離レート係数を示す。図4に示すように、プラズマCVDで使用されるプラズマの電子温度帯では、電子温度を下げると電離レートを大幅に小さくできる。例えば、電子温度が1eV下がると、電離レートは1/2以下にできる。よって、寄生プラズマが生じる空間の電子温度を成膜する空間の電子温度よりも小さくすれば、寄生プラズマの発生を低減できる。
【0022】
図5は、第1の実施の形態における電子温度と圧力との関係の一例を示す図である。図5において、縦軸に電子温度を示し、横軸に圧力を示す。1000Pa程度以下の圧力下では、電子温度は、圧力を高めることにより小さくできる。プラズマCVDで成膜する際の圧力は、一般に1000Paよりも低い圧力、例えば、500Pa程度なので、寄生プラズマが生じる空間Bの圧力を成膜する空間Aの圧力よりも高くすれば、寄生プラズマの発生を低減或いは抑制できる。シャワーヘッド106とステージ104との間の空間Aの成膜時の圧力が、例えば、500Paで、電子温度が5eVである場合に、空間Bの電子温度を4eVにするための空間Bの圧力は、電子温度と圧力との関係をフィッティングした近似式から1530Pa程度と近似できる。
【0023】
そこで、第1の実施形態では、隔壁108の隙間Gの面積Sと長さLとを調整することにより、所望の圧力差が生じるように隔壁108を配置する。例えば、円筒導管を流れるガスをモデルとした以下の式(1)を用いて、隙間Gの面積Sと長さLを近似できる。
(1) Q=(πd/128ηL)Pave(Pu-Pd)
【0024】
ここで、各パラメータは以下のように定義される。
Q:ガス流量[Pa・m/s]
d:円筒導管の半径[m]
L:円筒導管の長さ[m]
Pu:上流側の圧力[Pa]
Pd:下流側の圧力[Pa]
Pave:上流と下流側の圧力の平均値[Pa](Pave=(Pu+Pd)/2)
η:ガスの粘性係数[Pa・sec](例えば、η=2.22E-5
【0025】
式(1)を用いて、空間Bの圧力に応じた円筒導管の半径dと円筒導管の長さLとの関係が得られる。よって、隔壁108の厚さを所望の隙間Gの長さLとし、隔壁108の厚さに対する隙間Gの面積S(=πd)を近似できる。例えば、パージガスの流量Qを340Pa・m/s(約200slm)、下流側の圧力Pd(プロセス圧力)=500Pa、上流側の圧力Pu=1530Pa、円筒導管の長さL=0.1mとすると、円筒導管の半径d=0.065m程度となる。よって、隙間Gの面積Sは、1.3E-4と近似できる。シャワーヘッド106の外径を0.4mとすると、隙間Gの幅は約0.1mmにすればよいことがわかる。
【0026】
第1の実施形態では、以上のように、隔壁108により、空間Bの圧力P2が空間Aの圧力P1よりも高い状態を形成する。
【0027】
そして、空間Aの圧力P1よりも空間Bの圧力P2が高い状態で、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間でプラズマを生成させ、基板101上に所定の膜を形成する。具体的には、隔壁108により、空間Bの圧力P2が空間Aの圧力P1よりも高い状態で、プラズマ生成回路130は、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間でプラズマを生成させる。シャワーヘッド106の側面および裏面側の圧力P2が、シャワーヘッド106とステージ104との間の圧力P1よりも高いため、シャワーヘッド106の側面および裏面側においてパージガスの電離レートを低くできる。これにより、シャワーヘッド106の側面および裏面での寄生プラズマの生成を抑制或いは低減できる。
【0028】
図6は、第1の実施形態の変形例1におけるシャワーヘッドと隔壁との配置構成の一例を示す図である。図1の例では、プロセスチャンバ102内に1つのシャワーヘッド106と1枚の基板101とが配置される構成を示したが、これに限るものではない。1つのプロセスチャンバ102内に複数の基板101を配置できるよう、それぞれの基板用のシャワーヘッド106を配置したマルチステージ処理方式であっても好適である。図6の例では、4つのシャワーヘッド106a~106dが縦横2×2の配列で配置された場合を示している。かかる場合には、1枚の隔壁108に4つの開口部が形成され、それぞれの開口部に、4つのシャワーヘッド106a~106dの1つが隙間Gを開けて配置される。また、4つの排気口116がプロセスチャンバ102の底面に配置される。プロセスチャンバ102の底面の4つの外周辺の中央付近にそれぞれ1つずつ排気口116が配置されると好適である。
【0029】
図7は、第1の実施形態の変形例2におけるシャワーヘッドと隔壁との配置構成の一例を示す図である。上述した例では、隔壁108とシャワーヘッド106側面との間に隙間Gが形成される場合を示したが、隙間の位置は、これに限るものではない。隔壁108とシャワーヘッド106側面は隙間なく配置され、別の位置に隙間を形成しても良い。図7の例では、例えば、シャワーヘッド106を取り囲むように、複数の開口部を形成する場合を示している。例えば、円形或いは矩形の複数の開口部が円周上に配列するように形成され、かかる複数の開口部が圧力調整用の隙間Gとして機能する。
【0030】
以上のように、第1の実施形態によれば、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間にプラズマを生成して基板101上に膜を形成する場合に、シャワーヘッド106の側面および裏面側に生じ得る寄生プラズマの生成を抑制或いは低減できる。よって、シャワーヘッド106の側面および裏面側に生じる寄生プラズマによる電力消費を抑制できる。その結果、シャワーヘッド106とステージ104との間のプラズマ生成に寄与する電力の低下を抑制できる。これにより、原料ガスの乖離度の低下、成膜速度の低下や膜の組成不良を抑制或いは低減できる。
【0031】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、シャワーヘッド106側に生じ得る寄生プラズマを抑制或いは低減する構成を説明した。しかし、寄生プラズマは、ステージ104側にも生じ得る。第2の実施形態では、さらに、ステージ104側に生じ得る寄生プラズマを抑制或いは低減する構成を加えた構成について説明する。以下、特に説明する点以外の内容は第1の実施形態と同様である。
【0032】
図8は、第2の実施形態における半導体製造装置の構成の一例を示す構成図である。図8の例では、ステージ104の裏面側にステージ104の裏面からプロセスチャンバ102の底面まで続く隔壁109(第2の隔壁)を追加した点、及び、プロセスチャンバ102の底面にパージガスを導入する導入口118を形成した点、以外は図1と同様である。
【0033】
第2の実施形態では、隔壁109が、ステージ104とシャワーヘッド106との間の空間Aとステージ104のシャワーヘッド106側とは反対側のプロセスチャンバ102内の空間C(第2の空間の他の一例、第3の空間の一例)とを所定の隙間Gを残して遮断する。隔壁109は、絶縁体で形成される。例えば、Al等で形成されると好適である。或いは、隔壁109は、導電体に絶縁体でコーティングしたものであっても構わない。
【0034】
隔壁109は、ステージ104の外径寸法と同程度の外形寸法を有する筒状に形成される。そして、隔壁109の外周がステージ104の外周に沿うように配置される。また、隔壁109はステージ104を支持する軸を取り囲むように配置される。また、隔壁109は、その環状の上面がステージ104の裏面の外周部と接触するように配置される。その際、上面の一部に切り欠きを形成して高さを低くして、隔壁109とステージ104裏面との間に隙間Gを形成する。また、隔壁109は、プロセスチャンバ102の底面と隙間無く接触して配置される。隔壁109の内径寸法は、例えば、円筒導管を流れるガスをモデルとして導かれる隙間Gの長さに応じて適宜設定すればよい。
【0035】
プロセスチャンバ102の底面のうち、筒状の隔壁109の内側であって、ステージ104を支持する軸の周囲に、パージガス(プロセスガスとは異なるガス)を導入する導入口118が形成される。パージガスとして、Ar或いはHe等の希ガスやN等の不活性ガスを用いると好適である。パージガスは、隔壁109とステージ104との間に形成された隙間Gを通って、空間Cから空間A側に流れる。そして、排気口116から排気される。
【0036】
隔壁109は、シャワーヘッド106から原料ガスが供給され、空間B及び空間Cにパージガスが供給され、かつ空間A内が排気される状態で、空間Cの圧力P3が空間Aの圧力P1よりも高くなるように構成される。
【0037】
図9は、第2の実施形態における隔壁の一例の上面図である。隔壁109に形成する隙間Gは、上方から見て空間Cの中心から排気口116に向かう方向とは変位した方向の位置に形成される。例えば、図9に示すように、プロセスチャンバ102底面の排気口116からできるだけ遠い位置に形成すると好適である。例えば、上方から見て隔壁109の中心から排気口116に向かう方向を180度回転させた方向の外周部に隙間Gを形成すると良い。排気口116から遠い位置に局所的に隙間Gを形成することで、排気口116近傍の圧力の影響をさほど受けずに、空間Aと空間Cとの圧力差を精度良く制御しながら空間C内から排気口116に向けて効率良くパージガスを流すことができる。
【0038】
図10は、第2の実施形態の変形例1における隔壁の配置構成の一例を示す図である。図8の例では、プロセスチャンバ102内に1つのステージ104と1枚の基板101とが配置される場合を示したが、これに限るものではない。プロセスチャンバ102内に複数の基板101を配置できるよう、それぞれの基板用のステージ104を配置したマルチステージ処理方式であっても好適である。図10の例では、1つのプロセスチャンバ102内の4つのステージ104下にそれぞれ隔壁109a~109dが配置された場合を示している。4つのステージ104の配列位置に合わせて、4つの隔壁109a~109dが縦横2×2の配列で配置された場合を示している。
【0039】
図10において、4つの隔壁109a~109dにはそれぞれ隙間Gが形成される。各隙間Gは、4つの隔壁109a~109dのそれぞれにおいて、排気口116に向かう方向とは変位した方向の位置に形成される。例えば、プロセスチャンバ102底面の排気口116からできるだけ遠い位置に形成すると好適である。図10の例では、プロセスチャンバ102の底面の4つの外周辺の中央付近にそれぞれ1つずつ排気口116が配置される場合を示している。各隔壁109では、例えば、上方から見て各隔壁109が取り囲む空間Cの中心から排気口116に向かう方向から最も離れた方向の外周部に隙間Gを形成すると良い。図10の例では、例えば、上方から見て隔壁109の中心から最も近い2つの排気口116に向かう方向の中間の方位(空間Cの中心から最も近い2つの排気口116に向かう方向をそれぞれ90度回転させた方向)に隙間Gを形成すると良い。よって、図10の例では、排気口116に向かう方向から最も離れた方向が2つずつ存在するので、各隔壁109にそれぞれ2つの隙間Gを形成すると好適である。なお、各隔壁109に形成される隙間は、1つずつであっても構わない。
【0040】
排気口116から遠い位置に局所的に隙間Gを形成することで、排気口116近傍の圧力の影響をさほど受けず、空間Aと空間Cとの圧力差を精度良く制御しながら空間C内から排気口116に向けて効率良くパージガスを流すことができる。
【0041】
第2の実施形態では、以上のように、隔壁109により、空間Cの圧力P3が空間Aの圧力P1よりも高い状態を形成する。
【0042】
そして、空間Aの圧力P1よりも空間Cの圧力P3が高い状態で、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間でプラズマを生成させ、基板101上に所定の膜を形成する。具体的には、隔壁109により、空間Cの圧力P3が空間Aの圧力P1よりも高い状態で、プラズマ生成回路130は、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間でプラズマを生成させる。ステージ104の裏面側の圧力P3が、シャワーヘッド106とステージ104との間の圧力P1よりも高いため、ステージ104の裏面側においてパージガスの電離レートを低くできる。これにより、ステージ104の裏面での寄生プラズマの生成を抑制或いは低減できる。
【0043】
以上のように第2の実施形態によれば、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間にプラズマを生成して基板101上に膜を形成する場合に、ステージ104の裏面側に生じ得る寄生プラズマの生成を抑制或いは低減できる。よって、ステージ104の裏面側に生じる寄生プラズマによる電力消費を抑制できる。その結果、シャワーヘッド106とステージ104との間のプラズマ生成に寄与する電力の低下を抑制できる。これにより、原料ガスの乖離度の低下、成膜速度の低下や膜の組成不良を抑制或いは低減できる。
【0044】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、ステージ104の裏面側に生じ得る寄生プラズマを抑制或いは低減する構成を説明した。しかし、寄生プラズマは、ステージ104の側面側にも生じ得る。第3の実施形態では、ステージ104の裏面側及び側面側に生じ得る寄生プラズマを抑制或いは低減する構成を加えた構成について説明する。以下、特に説明する点以外の内容は第2の実施形態と同様である。
【0045】
図11は、第3の実施形態における半導体製造装置の構成の一例を示す構成図である。図11の例では、隔壁109の代わりに、ステージ104の側面側にステージ104の上面からプロセスチャンバ102の底面まで続く隔壁110(第2の隔壁の他の一例)を追加した点以外は図8と同様である。
【0046】
隔壁110は、ステージ104の外径寸法よりも大きい内径寸法を持った筒状の本体と、ステージ104の外径寸法と同程度の内径寸法を持った円環状板との組み合わせにより形成される。筒状の本体の外径寸法は、例えば、円筒導管を流れるガスをモデルとして導かれる隙間Gの長さLに応じて適宜設定すればよい。円環状板の外径寸法は、筒状の本体の外径寸法と一致させると好適である。円環状板は、筒状の本体の上に配置される。筒状の本体上面の高さ位置は、ステージ104上面の高さ位置より低くステージ104の裏面の高さ位置よりも高い位置になるように構成される。筒状の本体の上に円環状板が配置された状態で、円環状板の上面の高さ位置がステージ104の上面高さ位置と同程度になると好適である。そして、隔壁110の筒状の本体の内周面がステージ104の側面の下部を、隙間を開けて取り囲むように配置される。また、隔壁110の円環状板の内周面がステージ104の側面の上部に隙間無く接触するように配置される。その際、隔壁110の筒状の本体の中央付近の高さ位置に開口部を形成して、隔壁110で覆われたステージ104裏面側の空間Cに隙間Gを形成する。また、隔壁110は、プロセスチャンバ102の底面と隙間無く接触して配置される。
【0047】
第3の実施形態では、隔壁110が、ステージ104とシャワーヘッド106との間の空間Aとステージ104のシャワーヘッド106側とは反対側のプロセスチャンバ102内の空間C(第2の空間の他の一例、第3の空間の他の一例)とを所定の隙間Gを残して遮断する。第3の実施形態では、ステージ104の側面側の空間を空間Cに含めることができる。隔壁110は、絶縁体で形成される。例えば、Al等で形成されると好適である。或いは、隔壁110は、導電体に絶縁体でコーティングしたものであっても構わない。
【0048】
プロセスチャンバ102の底面のうち、隔壁110の内側であって、ステージ104を支持する軸の周囲に、パージガス(プロセスガスとは異なるガス)を導入する導入口118が形成される。パージガスとして、Ar或いはHe等の希ガスやN等の不活性ガスを用いると好適である。パージガスは、隔壁110の側面に形成された隙間Gを通って、空間Cから空間A側に流れる。そして、排気口116から排気される。
【0049】
隔壁110に形成する隙間Gは、図11に示すように、プロセスチャンバ102底面の排気口116からできるだけ遠い位置に局所的に形成すると好適である点は、第2の実施形態と同様である。例えば、上方から見て隔壁110の中心から排気口116に向かう方向を180度回転させた方向の外周部に隙間Gを形成すると良い。
【0050】
隔壁110は、シャワーヘッド106から原料ガスが供給され、空間B及び空間Cにパージガスが供給され、かつ空間A内が排気される状態で、空間Cの圧力P3が空間Aの圧力P1よりも高くなるように構成される。
【0051】
第3の実施形態では、以上のように、隔壁110により、ステージ104の側面側の空間を含む空間Cの圧力P3が空間Aの圧力P1よりも高い状態を形成する。
【0052】
そして、空間Aの圧力P1よりも空間Cの圧力P3が高い状態で、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間でプラズマを生成させ、基板101上に所定の膜を形成する。具体的には、隔壁110により、空間Cの圧力P3が空間Aの圧力P1よりも高い状態で、プラズマ生成回路130は、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間でプラズマを生成させる。ステージ104の裏面側および側面側の圧力P3が、シャワーヘッド106とステージ104との間の圧力P1よりも高いため、ステージ104の裏面側および側面側においてパージガスの電離レートを低くできる。これにより、ステージ104の裏面および側面での寄生プラズマの生成を抑制或いは低減できる。
【0053】
以上のように第3の実施形態によれば、シャワーヘッド106とステージ104とをそれぞれ電極として、シャワーヘッド106とステージ104との間にプラズマを生成して基板101上に膜を形成する場合に、ステージ104の裏面側及び側面側に生じ得る寄生プラズマの生成を抑制或いは低減できる。よって、ステージ104の裏面側及び側面側に生じる寄生プラズマによる電力消費を抑制できる。その結果、シャワーヘッド106とステージ104との間のプラズマ生成に寄与する電力の低下をさらに抑制できる。これにより、さらに、原料ガスの乖離度の低下、成膜速度の低下や膜の組成不良を抑制或いは低減できる。
【0054】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、上述した第2の実施形態或いは第3の実施形態において、シャワーヘッド106側の隔壁108は配置せずに、ステージ104側の隔壁109(或いは110)を配置する構成であっても構わない。これにより、シャワーヘッド106の側面側および裏面側に寄生プラズマは生じ得るが、ステージ104の裏面側(及び側面側)の寄生プラズマの生成は抑制或いは低減できる。
【0055】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのプラズマCVD装置および成膜方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
100 プラズマCVD装置、102 プロセスチャンバ、104 ステージ、106 シャワーヘッド、108,109,110 隔壁、130 プラズマ生成回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11