(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100303
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】煙突解体システム及び煙突解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
E04G23/08 J
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004203
(22)【出願日】2023-01-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】戸江 斉也
(72)【発明者】
【氏名】綱島 啓祐
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA13
2E176DD01
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】煙突の解体を簡単に行うことが可能な煙突解体システム及び煙突解体方法を提供する。
【解決手段】煙突解体システム1は、煙突頂部の壁面に設置され、煙突頂部の壁面のうち設置された側に対して径方向に対向する反対側の領域を破砕する作業車2と、煙突頂部を介して、一端が作業車2に接続され、他端が地面に接続され、作業車2を煙突頂部から吊り下げるワイヤーロープ3と、煙突頂部に着脱自在に取り付けられ、ワイヤーロープ3が掛けられた状態で外れないようにガイドする滑車4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙突頂部の壁面に設置され、前記煙突頂部の壁面のうち設置された側に対して径方向に対向する反対側の領域を破砕する破砕機と、
前記煙突頂部を介して、一端が前記破砕機に接続され、他端が地面に接続され、前記破砕機を前記煙突頂部から吊り下げるロープと、
前記煙突頂部に着脱自在に取り付けられ、前記ロープが掛けられた状態で外れないようにガイドするガイド手段と、
を備える煙突解体システム。
【請求項2】
前記破砕機は、本体と、前記本体に旋回可能に支持されるアームと、前記アームの先端部に設けられ、前記煙突頂部を破砕するアタッチメントと、前記本体に支持され、前記ロープが接続された状態で前記ロープを巻き取ることが可能なウインチと、を備える、
請求項1に記載の煙突解体システム。
【請求項3】
前記アタッチメントは、前記ガイド手段を把持可能に構成され、
前記ガイド手段は、前記ロープが掛けられた状態で前記ロープの出し入れをガイドするガイド機構と、前記ガイド機構に接続され、前記煙突頂部に着脱自在に取り付けられる装着機構と、を備える、
請求項2に記載の煙突解体システム。
【請求項4】
前記破砕機は、前記本体に支持され、前記煙突の壁面上を前記煙突の長手方向に走行する走行機構を備える、
請求項2又は3に記載の煙突解体システム。
【請求項5】
前記煙突解体システムは、4つのロープと、前記煙突頂部に着脱自在に取り付けられ、各ロープが掛けられる4つのガイド手段と、を備え、
前記破砕機は、前記走行機構に設けられ、前記走行機構の左右に並べられた2つのウインチを備え、
各ウインチには、4つのロープのうち隣接した2つのロープがそれぞれ着脱自在に接続されている、
請求項4に記載の煙突解体システム。
【請求項6】
煙突を互いに対向する半円状の2つの領域に仮想的に分割し、それぞれの半円状の領域を煙突頂部から底部に向かって交互に解体する煙突解体方法であって、
前記煙突頂部のうち一方の半円状の領域側に破砕機を設置する工程と、
前記破砕機により前記煙突頂部のうち他方の半円状の領域を破砕する第1の破砕工程と、
前記煙突頂部のうち他方の半円状の領域側に前記破砕機を設置する工程と、
前記破砕機により前記煙突頂部のうち一方の半円状の領域を破砕する第2の破砕工程と、
を含む煙突解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突解体システム及び煙突解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
煙突の解体では、破砕工具を所持した作業者が高所に赴き、煙突頂部から少しずつ煙突を破砕する工法が広く用いられている。例えば、特許文献1には、煙突の周囲に仮設足場を設置し、作業者が仮設足場上で煙突の破砕作業を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、解体作業の前後に実施される仮設足場の組立や解体において多くの時間や労力を要する、という問題がある。また、仮設足場から破砕片を降ろすために起重機を準備したり仮設足場上にて破砕片の玉掛け作業を行ったりする必要がある、という問題もある。このため、煙突解体に伴う一連の作業工程を省力化する点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、煙突の解体を簡単に行うことが可能な煙突解体システム及び煙突解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る煙突解体システムは、
煙突頂部の壁面に設置され、前記煙突頂部の壁面のうち設置された側に対して径方向に対向する反対側の領域を破砕する破砕機と、
前記煙突頂部を介して、一端が前記破砕機に接続され、他端が地面に接続され、前記破砕機を前記煙突頂部から吊り下げるロープと、
前記煙突頂部に着脱自在に取り付けられ、前記ロープが掛けられた状態で外れないようにガイドするガイド手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば煙突の解体を簡単に行うことが可能な煙突解体システム及び煙突解体方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る煙突解体システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る作業車の構成を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る作業車の構成を示す平面図である。
【
図4】(a)本発明の実施の形態に係る滑車を煙突頂部の縁に取り付けた様子を示す図であり、(b)は、(a)の滑車の構成を示す正面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る煙突解体方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態に係る煙突解体方法においてワイヤーロープ及び滑車を取り付けた様子を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る煙突解体方法において作業車が煙突の壁面を登る様子を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る煙突解体方法において作業車が煙突頂部を破砕した様子を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る煙突解体方法において作業車が煙突頂部に取り付けられた滑車を移動させる様子を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る煙突解体方法において作業車が破砕された側の煙突頂部の到達した様子を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る煙突解体方法において作業車が煙突頂部に取り付けられた滑車を移動させる様子を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る煙突解体方法において作業車が煙突頂部を破砕した様子を示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る煙突解体方法において作業車が煙突頂部に取り付けられた滑車を移動させる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る煙突解体システム及び煙突解体方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面では、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0010】
図1に示すように、煙突解体システム1は、煙突頂部から吊されたワイヤーロープ3に作業車2を吊り下げた状態で、作業車2を用いて煙突頂部の一部を破砕するシステムである。煙突解体システム1は、作業車2と、作業車2に一端が接続され、作業車2を吊り下げるワイヤーロープ3と、煙突頂部に着脱自在に取り付けられ、作業車2から上向きに延びたワイヤーロープ3が掛けられる滑車4と、を備える。ワイヤーロープ3の他端は、煙突内の底部にアンカー(図示せず)を用いて固定されている。すなわち、ワイヤーロープ3は、煙突頂部を介して、一端が作業車2に接続され、他端が煙突底部に接続されている。
【0011】
作業車2は、煙突頂部の壁面側に配置された状態でワイヤーロープ3により吊り下げられ、煙突頂部の一部を破砕する破砕機の一例である。作業車2は、煙突の壁面上を走行すると共に、煙突の壁面上に停止した状態で煙突頂部を破砕する。作業車2は、操作者が操作可能なコントローラに通信可能に接続され、コントローラからの操作信号に基づいて各部が動作するように構成されている。
【0012】
図2及び
図3に示すように、作業車2は、煙突頂部を破砕する作業機構21と、作業機構21の下側に設けられ、煙突の壁面上を走行する走行機構22と、作業機構21及び走行機構22にそれぞれ接続され、走行機構22に対する作業機構21の傾きを調整する傾斜調整機構23と、を備える。作業車2の各部は、作業機構21に設置された油圧ポンプから供給される油圧により動作し、油圧ポンプは、エンジンから得られる動力により動作する。
【0013】
作業機構21は、本体21aと、本体21aに対して旋回可能に支持されたアーム21bと、アーム21bの先端部に着脱自在に取り付けられ、煙突頂部を破砕可能であるアタッチメント21cと、を備える。本体21aは、フレーム上に油圧ポンプ及びエンジンが設置された作業車本体の一例であり、例えば、操作者が作業車2の各部を操縦可能な操縦席を備えてもよい。
【0014】
アタッチメント21cは、例えば、煙突頂部を破砕可能であると共に、滑車を把持可能な一対の把持部材を備える。このようなアタッチメント21cの一例が大割である。大割は、煙突頂部の破砕のみならず、煙突頂部に対する滑車4の取り付け及び取り外しに用いてもよい。大割に設けられた一対の破砕アームの少なくとも一方を弾性部材で形成すれば、操作者が破砕アームの変形状態を目視することにより把持対象物に対する力のかかり具合を把握できる。
【0015】
走行機構22は、本体フレーム22aと、本体フレーム22aの両側面に配置された一対のクローラー22bと、本体フレーム22aの左右にそれぞれ設けられた一対のウインチ22cと、を備える。クローラー22bは、無限軌道とも呼ばれ、走行面に接触する変形可能な環状ベルトと、環状ベルトの内側に配置され、環状ベルトを回転させる複数の車輪と、を備える。ウインチ22cは、本体フレーム22aの後方に設置され、ワイヤーロープ3を接続した状態で巻き上げたり送り出したりするよう構成されている。
【0016】
傾斜調整機構23は、作業車2の左右方向に延び、本体21aが前方側に倒れるように本体21aの前端と本体フレーム22aとを回転可能に支持する回転支持ピン23aと、本体21aと本体フレーム22aとに回転可能に接続され、本体フレーム22aから離れる方向に本体21aを押し上げることが可能な油圧シリンダ23bと、を備える。
【0017】
作業車2は、上記の構成を備えるため、クローラー22bを前進方向に回転させると共に各ウインチ22cで各ワイヤーロープ3を巻き取ることで、煙突の壁面上を走行しながら煙突頂部に向かって上昇できる。他方、クローラー22bを後退方向に回転させると共に各ウインチ22cで各ワイヤーロープ3を送り出すことで、煙突の壁面上を走行しながら煙突底部に向かって降下できる。
【0018】
また、作業車2は、上記の構成を備えるため、煙突壁面にクローラー22bが接触した状態で、油圧シリンダ23bを動作させて走行機構22に対して作業機構21を前方側に倒すことで、作業機構21の本体21aが略水平面上に配置されるように姿勢を調整できる。このため、作業車2は、煙突頂部付近に停止した状態でアーム21bを略水平方向に延ばし、煙突頂部のうち作業車2が配置された側と反対側にアタッチメント21cを到達させることができる。
【0019】
図1に戻り、ワイヤーロープ3は、鋼線を撚り合わせたロープであり、重量物の吊り下げに好適である。ワイヤーロープ3は、滑車4に掛けられたとき滑車4のローラーの円周面に沿って変形可能に形成されている。
【0020】
滑車4は、煙突頂部に着脱自在に取り付けられ、ワイヤーロープ3が掛けられた状態で外れないようにガイドするガイド手段の一例である。各滑車4は、煙突頂部の縁に並べて取り付けられ、各滑車4のそれぞれにはワイヤーロープ3が掛けられている。作業車2の吊り下げには、2つのワイヤーロープ3のペア及び2つの滑車4のペアを用いる。以下、2つの滑車4のペアのそれぞれを区別する必要がある場合には、滑車4のそれぞれを滑車4A及び滑車4Bのように表現することがある。また、滑車4Aに掛けられたワイヤーロープ3をワイヤーロープ3A、滑車4Bに掛けられたワイヤーロープ3をワイヤーロープ3Bのように表現することがある。
【0021】
一例として
図4(a)では、2つの滑車4Aには、作業車2を吊り下げる各ワイヤーロープ3Aがそれぞれ掛けられ、煙突頂部の壁面のうち作業車2が配置される側(手前側)に並べて配置されている。2つの滑車4Aは、それぞれ水平方向に延びるローラーの回転軸が略同一方向に延びるように配置することが好ましい。他方、2つの滑車4Bには、作業車2を吊り下げていない各ワイヤーロープ3Bがそれぞれ掛けられ、作業車2の吊り下げの妨げとならないように2つの滑車4Aから離して配置される。なお、各滑車4Bの位置や姿勢は、破砕対象の領域に重ならなければ任意である。破砕対象の領域は、4つの滑車4A、4Bが取り付けられていない煙突頂部の半円状の領域である。
【0022】
なお、
図4(a)の各滑車4A、4Bの配置を変更することで、各滑車4A、4Bの役割を変更してもよい。具体的には、2つの滑車4Bのペアをそれぞれ水平方向に延びるローラーの回転軸が略同一方向に延びるように配置することで、2つのワイヤーロープ3Bのペアを作業車2の吊り下げに用いてもよい。このとき、2つのワイヤーロープ3Aのペアは作業車2の吊り下げに用いないため、各滑車4Aは、破砕対象の領域に重ならないように配置される。
【0023】
図4(b)に示すように、滑車4は、1本のワイヤーロープ3が掛けられた状態でワイヤーロープ3をガイドするガイド機構41と、ガイド機構41の底面側に接続され、煙突頂部に着脱自在に取り付けられる装着機構42と、を備える。
【0024】
ガイド機構41は、C字状のフレーム41aと、フレーム41aに回転可能に支持され、井桁状に組み合わされた4つのローラー41bと、を備える。4つのローラー41bにより囲まれた空間には、1本のワイヤーロープ3が挿通される。装着機構42は、コの字状のフレーム42aと、フレーム42aとの間で対象物を挟み込み、フレーム42aに対して対象物を押し付ける方向に移動可能に支持されたストッパ42bと、を備える。フレーム41aとフレーム42aとは、両者が並べられた方向に延びる回転軸Lの周りに回転可能に接続されている。
【0025】
滑車4は、上記の構成を備えるため、作業車2を吊り下げている最中にワイヤーロープ3が脱落するおそれがない。また、作業車2に設けられたアタッチメント21cを用いて滑車4を掴むだけでワイヤーロープ3も一緒に移動させることができる。そして、煙突頂部に装着機構42を固定した状態で、装着機構42に対してガイド機構41を回転軸Lの周りに回転させることで、煙突頂部に対してローラー41bの向きを適宜調整できる。
以上が、煙突解体システム1の構成である。
【0026】
(煙突解体方法)
次に、
図5のフローチャートを参照して、実施の形態に係る煙突解体システム1を用いて実施する煙突解体方法の流れを説明する。この煙突解体方法では、煙突を互いに径方向に対向している半円状の2つの領域に仮想的に分割し、それぞれの半円状の領域を煙突頂部から底部に向かって交互に少しずつ解体する。なお、一対の半円状の領域は、必ずしも各領域が同一の形状である場合に限られず、各領域が異なる円弧状の形状である場合を含むものとする。
【0027】
まず、煙突解体の準備工程を実施する(ステップS1)。以下、準備工程の流れを説明する。
【0028】
(準備工程)
まず、4つの滑車4と補助ロープとを煙突頂部まで運搬する。具体的には、作業員が人手により4つの滑車4と補助ロープとを煙突頂部まで運搬する。補助ロープは、4本のワイヤーロープ3を煙突頂部に引き上げるためのロープである。
【0029】
次に、4つの滑車4を煙突頂部の縁にそれぞれ取り付ける。各滑車4は、
図4(a)に示すように煙突頂部の破砕に影響がない位置に取り付けられる。具体的には、4つの滑車4のうち次の破砕工程で作業車2を吊り下げるのに用いる2つの滑車4Aは、水平方向に延びるローラーの回転軸が略同一方向に延びるように並べて配置される。また、次の破砕工程で作業車2を吊り下げに用いない2つの滑車4Bは、破砕対象の半円状の領域と重ならないように2つの滑車4Aから離して配置される。
【0030】
次に、煙突内の底部に4つのアンカーを打設し、4本のワイヤーロープ3の一端をそれぞれ各アンカーに接続する。次に、煙突頂部に運搬した補助ロープの一端に4本のワイヤーロープ3の他端を接続し、補助ロープを引き上げることで4本のワイヤーロープ3を煙突頂部まで引き上げる。
【0031】
次に、煙突頂部の縁に取り付けた各滑車4にそれぞれ別個のワイヤーロープ3を掛け、それぞれのワイヤーロープ3を煙突の外側から地上に向けて降ろす。これにより
図6に示すように煙突頂部に対する4本のワイヤーロープ3A、3B及び4つの滑車4A、4Bのセッティングが終了する。なお、
図6では、理解を容易にするために、2本のワイヤーロープ3Bの図示を省略している。また、
図6の符号5はワイヤーロープ3を地面に接続するアンカーである。
以上が、準備工程の流れである。
【0032】
次に、煙突頂部の互いに対向する一対の半円状の領域のうち一方の側を破砕対象とする第1の破砕工程を実施する(ステップS2)。以下、第1の破砕工程の流れを説明する。
【0033】
(第1の破砕工程)
まず、
図6に示すように作業車2を、煙突頂部を破砕する側と反対側に移動させ、各滑車4Aに掛けられた2本のワイヤーロープ3Aを作業車2の左右に設けられたウインチ22cに接続する。
【0034】
次に、
図7に示すように作業車2を煙突頂部付近に移動させる。この工程では、クローラー22bを前進方向に回転させ、作業車2の左右に設けられたウインチ22cで各ワイヤーロープ3Aを巻き取ることで、煙突壁面上において作業車2を煙突頂部に向かって上向きに走行させればよい。
【0035】
作業車2が地面から離れる際には、地面に接触していたクローラー22bの前端部が徐々に地面から離れて煙突壁面に接触し、その後、クローラー22bの後端部も地面から離れて煙突壁面に接触する。このとき、作業機構21の本体21aを水平に保つために傾斜調整機構23の油圧シリンダ23bを動作させ、走行機構22の本体フレーム22aに対して徐々に前方側に倒れるように作業機構21を傾斜させる。このような動作により、作業機構21の本体21aは、最終的に走行機構22の本体フレーム22aに対して略垂直方向に傾けられる。
【0036】
次に、
図8に示すように作業車2のアーム21bを作業車2が配置された壁面と反対側に延ばし、アタッチメント21cを用いて作業車2が配置された壁面の反対側にある煙突頂部の半円状の領域を破砕する。このとき、2つの滑車4A及び2つの滑車4Bは、いずれも破砕に影響のない位置にあるため、煙突頂部の半円状の領域の破砕を妨げない。
【0037】
次に、アタッチメント21cを用いて破砕に影響のない位置に取り付けていた2つの滑車4Bを取り外し、
図9に示すように破砕した側の新たな煙突頂部の縁に取り付ける。このとき、各ワイヤーロープ3Bも各滑車4Bと一緒に移動する。2つの滑車4Bは、次の破砕工程で作業車2を吊り下げるのに用いるため、水平方向に延びるローラーの回転軸が略同一方向に延びるように並べて配置される。
【0038】
次に、作業車2を地上に戻し、各ウインチ22cに取り付けたワイヤーロープ3Aを取り外す。作業車2を地上に戻す工程では、作業車2を地上に降ろす際には、クローラー22bを後退方向に回転させ、作業車2の左右に設けられたウインチ22cからワイヤーロープ3Aを送り出せばよい。
以上が、第1の破砕工程の流れである。
【0039】
図5に戻り、煙突頂部の互いに対向する一対の半円状の領域のうち他方の側を破砕対象とする第2の破砕工程を実施する(ステップS3)。以下、第2の破砕工程の流れを説明する。
【0040】
(第2の破砕工程)
まず、作業車2を第1の破砕工程で破砕した側に移動させ、滑車4Bに掛けられた2本のワイヤーロープ3Bを作業車2の左右に設けられたウインチ22cに接続する。
【0041】
次に、
図10に示すように作業車2を煙突頂部付近に移動させる。この工程では、クローラー22bを前進方向に回転させ、作業車2の各ウインチ22cでワイヤーロープ3Bを巻き取ることで、煙突壁面上において作業車2を上向きに走行させる。
【0042】
次に、作業車2のアーム21bを作業車2が配置された壁面と反対側に延ばし、アタッチメント21cを用いて破砕対象部分に取り付けられた2つの滑車4Aを取り外す。そして、
図11に示すように破砕に影響のない第1の破砕工程で破砕して得られた新たな煙突頂部の縁に取り付ける。このとき、各ワイヤーロープ3Aも各滑車4Aと一緒に移動する。2つの滑車4Aは、次の破砕工程で作業車2を吊り下げに用いないため、破砕対象の半円状の領域と重ならないように2つの滑車4Bから離して配置される。
【0043】
次に、
図12に示すようにアタッチメント21cを用いて作業車2が配置された壁面の反対側にある煙突頂部の半円状の領域を破砕する。このとき、2つの滑車4A及び2つの滑車4Bは、いずれも破砕に影響のない位置にあるため、煙突頂部の半円状の領域の破砕を妨げない。この工程が終了すると、煙突頂部の残された半円状の領域も破砕され、煙突頂部の縁全周の高さが低くなる。
【0044】
次に、アタッチメント21cを用いて破砕に影響のないに位置に取り付けていた2つの滑車4Aを取り外し、
図13に示すように取り外した2つの滑車4Aを破砕した側の新たな煙突頂部の縁に取り付ける。このとき、各ワイヤーロープ3Aも各滑車4Aと一緒に移動する。2つの滑車4Aは、次の破砕工程で作業車2を吊り下げるのに用いるため、水平方向に延びるローラーの回転軸が略同一方向に延びるように並べて配置される。
【0045】
次に、作業車2を地上に降ろし、ウインチ22cに取り付けたワイヤーロープ3Bを取り外す。
以上が、第2の破砕工程の流れである。
【0046】
図5に戻り、ステップS3の工程の実施後に煙突頂部が地上で破砕可能な高さになったかどうかを判断する(ステップS4)。煙突頂部が地上で破砕可能な高さになったと判断できる場合(ステップS4;Yes)、地上で煙突の残りの部分を破砕する地上破砕工程を実施し(ステップS5)、全ての工程が終了する。他方、煙突頂部が地上で破砕可能な高さになっていないと判断できる場合(ステップS4;No)、ステップS2の工程に戻り、煙突の高さをさらに低くする。
以上が、煙突解体方法の流れである。
【0047】
以上説明したように、実施の形態に係る煙突解体システム1は、煙突頂部の壁面に設置され、煙突頂部の壁面のうち設置された側に対して径方向に対向する反対側の領域を破砕する作業車2と、作業車2と煙突内側の地面とに接続され、作業車2を煙突頂部から吊り下げるワイヤーロープ3と、煙突頂部に着脱自在に取り付けられ、ワイヤーロープ3が掛けられる滑車4と、を備える。このため、仮設足場の組立や解体といった時間や労力を要する作業を省略でき、煙突の解体を簡単に行うことができる。
【0048】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0049】
(変形例)
上記実施の形態では、2本のワイヤーロープ3で作業車2を吊り下げていたが、本発明はこれに限られない。例えば、3本以上のワイヤーロープ3で作業車2を吊り下げてもよい。このとき作業車2の本体フレーム22aには、ワイヤーロープ3の数に対応する複数のウインチ22cを設置すればよい。
【0050】
上記実施の形態では、アタッチメント21cとして大割を用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、大割をブレーカーに交換し、コンクリートに対して振動を加えて破砕してもよい。
【0051】
上記実施の形態では、アタッチメント21cがアーム21bに着脱自在に取り付けられていたが、本発明はこれに限られない。アタッチメント21cは、アーム21bから取り外しできないように取り付けられてもよい。
【0052】
上記実施の形態では、煙突頂部からワイヤーロープ3により作業車2を吊り下げていたが、本発明はこれに限られない。例えば、煙突強度が低い場合には、煙突の壁面に抱き付く機構を作業車2に設けてもよい。煙突の壁面に抱き付く機構としては、煙突壁面の湾曲に合わせて形成され、開閉可能な一対の把持アームを走行機構22に対して旋回可能に設け、一対の把持アームが煙突壁面を両側から把持するように構成してもよい。
【0053】
上記実施の形態では、破砕機として作業車2を用いていたが、本発明はこれに限られない。作業車2以外の破砕機、例えば、走行性能を有しない破砕機を煙突頂部から吊り下げて破砕作業を実施してもよい。
【0054】
上記実施の形態では、作業車2の走行機構22に対して一対のウインチ22cを左右に並べて設けていたが、本発明はこれに限られない。例えば、作業機構21の本体フレーム22aに対して一対のウインチを左右に並べて設けてもよい。
【0055】
上記実施の形態では、作業車2にウインチ22cが設けられていたが、本発明はこれに限られない。例えば、煙突内側の地面にウインチを固定し、ワイヤーロープ3をこの地面に固定されたウインチにより巻き取るようにしてもよい。
【0056】
上記実施の形態では、走行機構22に対して作業機構21の傾きを調整可能であったが、本発明はこれに限られない。走行機構22の本体フレーム22aに対して作業機構21の本体21aの底面部が略垂直方向に延びるように両者が固定されていてもよい。
【0057】
上記実施の形態では、ロープとしてワイヤーロープ3を用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、天然繊維及び合成繊維の少なくとも1つを撚り合わせたファイバーロープを用いてもよい。
【0058】
上記実施の形態では、ガイド手段として滑車4を用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、滑車4のガイド機構41を断面U字状に形成され、内部にワイヤーロープ3を移動可能に収容するU字状部材で置き換えたガイド手段を用いてもよい。
【0059】
上記実施の形態では、滑車4は井桁状に組まれた4本のローラーを備えていたが、本発明はこれに限られない。例えば、1つのローラーがU字状の支持部材により回転可能に支持され、ローラーとU字状の支持部材との間にワイヤーロープ3が挿通されるように構成された滑車を用いてもよい。
【0060】
上記実施の形態では、煙突頂部を半円状の領域に仮想的に分割し、各領域を交互に破砕していたが、本発明はこれに限られない。必ずしも煙突頂部を半円状の領域に仮想的に分割する必要はなく、例えば、煙突頂部を3つ又は4つの円弧状の領域に仮想的に分割してもよい。このとき、煙突頂部を仮想的に分割する数に応じてワイヤーロープ3及び滑車4の数を増減させればよい。
【0061】
上記実施の形態では、作業車2が煙突外側に配置され、アンカー5が煙突内側の底部に打設されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、煙突のサイズによっては、作業車2が煙突内側に配置され、アンカー5が煙突外側の底部に打設されてもよい。また、滑車4によりワイヤーロープ3を安定的に掛けることができれば、作業車2が煙突外側に配置され、アンカー5が煙突外側の底部に打設されてもよく、作業車2が煙突内側に配置され、アンカー5が煙突内側の底部に打設されもよい。
【0062】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 煙突解体システム
2 作業車
21a 本体
21b アーム
21c アタッチメント
22 走行機構
22c ウインチ
23 傾斜調整機構
3,3A,3B ワイヤーロープ
4,4A,4B 滑車
41 ガイド機構
42 装着機構
5 アンカー