(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100319
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/10 20060101AFI20240719BHJP
F16H 57/021 20120101ALI20240719BHJP
【FI】
F16F15/10 B
F16H57/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004233
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟田 裕介
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA02
3J063AB04
3J063AC03
3J063BB23
3J063BB25
3J063CB41
3J063CD02
3J063CD63
(57)【要約】
【課題】ドライブピニオンシャフトの1次固有モードによる振動を抑制する。
【解決手段】ドライブピニオンシャフトの第1の端部側を回転自在に軸支する第1の軸受と、ドライブピニオンシャフトの第2の端部側を回転自在に軸支する第2の軸受と、を備えた動力伝達装置において、ドライブシャフトは、軸方向に少なくとも3つに分割された複数の構成部分を含むとともに、隣り合う上記構成部分同士を結合する複数の結合部を有し、複数の結合部のうち、軸方向の所定の基準位置よりも第1の端部側に存在する一つ又は複数の結合部の剛性の和を、所定の基準位置よりも第2の端部側に存在する一つ又は複数の結合部の剛性の和よりも小さくした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の両端部のうちの第1の端部にドライブピニオンギヤが設けられたドライブシャフトを有するドライブピニオンシャフトと、
前記ドライブシャフトの前記第1の端部側を回転自在に軸支する第1の軸受と、
前記ドライブシャフトの前記第1の端部とは反対側の第2の端部側を回転自在に軸支する第2の軸受と、
を備えた動力伝達装置において、
前記ドライブシャフトは、前記軸方向に少なくとも3つに分割された複数の構成部分を含むとともに、隣り合う前記構成部分同士を結合する複数の結合部を有し、
前記複数の結合部のうち、前記軸方向の所定の基準位置よりも前記第1の端部側に存在する一つ又は複数の前記結合部の剛性の和が、前記所定の基準位置よりも前記第2の端部側に存在する一つ又は複数の前記結合部の剛性の和よりも小さい、
動力伝達装置。
【請求項2】
前記所定の基準位置は、前記ドライブシャフトを同一の径の一本の軸とみなしたときに1次固有モードによる振動の大きさが所定値以上となる位置である、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記結合部の直径が異なることにより、前記所定の基準位置よりも前記第1の端部側に存在する一つ又は複数の前記結合部の剛性の和が、前記所定の基準位置よりも前記第2の端部側に存在する一つ又は複数の前記結合部の剛性の和よりも小さい、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第1の軸受の剛性と前記所定の基準位置よりも前記第1の端部側に存在する一つ又は複数の前記結合部の剛性との和と、前記第2の軸受の剛性と前記所定の基準位置よりも前記第2の端部側に存在する一つ又は複数の前記結合部の剛性との和と、の差が所定の基準範囲内である、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、エンジン等の動力源から出力される動力を駆動輪と接続された左右一対の駆動軸に分配して伝達するデファレンシャル装置と、デファレンシャル装置へ動力源からの動力を伝達するドライブピニオンシャフトとを有する動力伝達装置が設けられている。デファレンシャル装置はリングギヤを有し、当該リングギヤには、ドライブピニオンシャフトの一端に設けられたハイポイドギヤからなるドライブピニオンギヤが噛合される。
【0003】
一般に、変速機では、動力が入力される入力部と動力を出力する出力部とが離れた位置に設けられるため、動力伝達装置が変速機に組み込まれる場合、ドライブピニオンシャフトが長軸化する傾向がある。例えばドライブピニオンシャフトの軸方向が車両の前後方向に沿って配置される縦置き型変速機の場合、フロントデファレンシャル装置の最適な配置位置は前輪駆動軸と同軸上の位置となる。したがって、フロントデファレンシャル装置を駆動するドライブピニオンシャフトが必然的に長くなる傾向がある。ドライブピニオンシャフトの軸方向が車両の左右方向に沿って配置される横置型変速機についても同様であり、変速機構の全長にほぼ相当するドライブピニオンシャフトが用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ドライブピニオンシャフトは、軸方向の両端側でそれぞれ軸受により回転自在に軸支されている。ドライブピニオンシャフトの軸方向の長さが長くなると、低周波数の回転帯域において1次固有モードによる振動が発生しやすくなる。このため、1次固有モードによる振動が軸受からハウジングへと伝達され、最終的に車室内で聞こえる騒音が大きくなるおそれがある。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、ドライブピニオンシャフトの1次固有モードによる振動を抑制可能な動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、
軸方向の両端部のうちの第1の端部にドライブピニオンギヤが設けられたドライブシャフトを有するドライブピニオンシャフトと、
上記ドライブシャフトの上記第1の端部側を回転自在に軸支する第1の軸受と、
上記ドライブシャフトの上記第1の端部とは反対側の第2の端部側を回転自在に軸支する第2の軸受と、
を備えた動力伝達装置において、
上記ドライブシャフトは、上記軸方向に少なくとも3つに分割された複数の構成部分を含むとともに、隣り合う上記構成部分同士を結合する複数の結合部を有し、
上記複数の結合部のうち、上記軸方向の所定の基準位置よりも上記第1の端部側に存在する一つ又は複数の上記結合部の剛性の和が、上記所定の基準位置よりも上記第2の端部側に存在する一つ又は複数の上記結合部の剛性の和よりも小さい、
動力伝達装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本開示によれば、動力伝達装置のドライブピニオンシャフトの1次固有モードによる振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る動力伝達装置を示す説明図である。
【
図2】本実施形態に係る動力伝達装置のドライブピニオンシャフトを軸心に沿って切断した断面図である。
【
図3】第1の比較例のドライブシャフトを示す図である。
【
図4】第2の比較例のドライブシャフトを示す図である。
【
図5】第1の比較例及び第2の比較例による振動を説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係る動力伝達装置による振動を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<基本構成>
まず、本開示の実施の形態に係る動力伝達装置の基本構成を説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る動力伝達装置1を示す説明図である。
図1において、構成要素の一部は断面により示されている。なお、各図面において、動力伝達装置1が搭載される車両の前後左右の方向をそれぞれ前方向、後方向、左方向及び右方向とし、車体高さ方向の上下の方向をそれぞれ上方向及び下方向として示されている。
【0013】
本実施形態に係る動力伝達装置1は、例えば車両に搭載される縦置き型変速機に一体化して備えられ、エンジン等の車両の動力源から出力される動力を、駆動輪としての前輪に接続された左右一対の駆動軸に分配して伝達するフロントデファレンシャル装置5を有する。なお、本開示の動力伝達装置1は、動力を、駆動輪としての後輪に接続された左右一対の駆動軸に分配して伝達するリヤデファレンシャル装置を有する動力伝達装置等、他の動力伝達装置にも適用され得る。
【0014】
動力伝達装置1は、自動変速機の出力側に設けられたドライブピニオンシャフト10と、ドライブピニオンシャフト10と接続されたフロントデファレンシャル装置5とを有する。ドライブピニオンシャフト10は、ドライブシャフト11とドライブピニオンギヤ13とを有する。ドライブピニオンギヤ13は、ドライブシャフト11の軸方向の両端部のうちの前方向の第1の端部に同軸上に設けられたスパイラルベベルギヤである。ドライブピニオンギヤ13は、フロントデファレンシャル装置5のハイポイドリングギヤ15と噛合している。
【0015】
フロントデファレンシャル装置5は、ハイポイドリングギヤ15と、図示しない一対のピニオンギヤ及び一対のサイドギヤとを備えている。ハイポイドリングギヤ15の歯面には、ドライブピニオンシャフト10に一体的に設けられたドライブピニオンギヤ13が噛合している。ハイポイドリングギヤ15及びドライブピニオンギヤ13は、ともにスパイラルベベルギヤであり、ハイポイドギヤを構成する。
【0016】
ドライブシャフト11の軸方向の両端部のうちの後方向の第2の端部には、ヘリカルギヤであるリダクションドリブンギヤ17が設けられている。リダクションドリブンギヤ17は、内周に形成された内歯18によって、ドライブシャフト11の第2の端部側に形成された外歯19とスプライン結合されている。
【0017】
動力源から自動変速機に入力され、図示しない主変速機構により変速された動力は、図示しないリダクションドライブギヤと噛合したリダクションドリブンギヤ17を介してドライブピニオンシャフト10に伝達される。ドライブピニオンシャフト10に伝達された動力は、さらにドライブピニオンギヤ13と噛合したハイポイドリングギヤ15を介して駆動輪としての前輪に伝達される。
【0018】
図示した動力伝達装置1では、ドライブピニオンシャフト10の全長は、ドライブピニオンシャフト10の上方向に位置する図示しない多板クラッチ、多板ブレーキ及びプラネタリ等により構成された主変速機構の全長よりも長い。
【0019】
ドライブピニオンシャフト10は、第1の端部側を回転自在に軸支する第1の軸受31と、第1の端部とは反対側の第2の端部側を回転自在に軸支する第2の軸受33とにより支持されている。
【0020】
第2の軸受33は、リダクションドリブンギヤ17の前方向及び後方向のそれぞれの外周に配置された一対のボール軸受33a,33bからなる。それぞれのボール軸受33a,33bは、ハウジングに固定された外輪と、リダクションドリブンギヤ17の外周に固定された内輪と、当該外輪及び内輪に挟持された転動体とを有する。ボール軸受33a,33bは、いわゆる深溝玉軸受であり、ドライブシャフト11の軸方向に平行なスラスト荷重を負荷するスラスト軸受として機能する。
【0021】
一方、第1の軸受31は、ドライブピニオンギヤ13に近接して配置された複列テーパローラ軸受からなる。複列テーパローラ軸受からなる第1の軸受31は、ドライブシャフト11に固定された内輪と、図示しないボルト等によって図示しないハウジングに固定された外輪と、当該内輪及び外輪の間に設けられた複数の円錐ころとを有する。ドライブピニオンギヤ13とハイポイドリングギヤ15とがハイポイドギヤを構成しているため、ドライブピニオンシャフト10の第1の端部側は比較的大きなギヤ反力を受ける。このため、第1の軸受31は、第2の軸受33よりも剛性の高い軸受が用いられている。
【0022】
<ドライブピニオンシャフトの構成>
続いて、ドライブピニオンシャフトの構成を詳しく説明する。
【0023】
図2は、
図1に示した動力伝達装置1のドライブピニオンシャフト10を軸心に沿って切断した断面図を示す。
ドライブピニオンシャフト10のドライブシャフト11は、軸方向に分割された3つの構成部分21,23,25を含む。第1の構成部分21は、軸方向の両端部のうちの第1の端部側に位置する。第1の構成部分21にはドライブピニオンギヤ13が設けられている。第3の構成部分25は、軸方向の両端部のうちの第2の端部側に位置する。第3の構成部分25の後方向の端部にはリダクションドリブンギヤ17が設けられている。第2の構成部分23は、軸方向の中央部に位置する。
【0024】
第1の構成部分21と第2の構成部分23とは第1の結合部27で結合されている。第2の構成部分23と第3の構成部分25とは第2の結合部29で結合されている。第1の結合部27は、ドライブピニオンシャフト10の所定の基準位置Cよりも前方向の第1の端部側に位置する。また、第2の結合部29は、ドライブピニオンシャフト10の所定の基準位置Cよりも後方向の第2の端部側に位置する。
【0025】
ドライブピニオンシャフト10の所定の基準位置Cは、ドライブシャフト11を同一の径の1本の軸とみなしたときに1次固有モードによる振動の大きさが所定値以上となる位置又は領域としてあらかじめ特定された位置である。
【0026】
第1の構成部分21は、後方向の端部に設けられたスプライン部21aと、スプライン部21aから連なりスプライン部21aに向けて縮径するテーパ部21bとを有する。スプライン部21aの外周には、外歯22が設けられている。
【0027】
第2の構成部分23は、前方向の端部に設けられた第1のスプライン部23aを有する。第1のスプライン部23aの内周には、内歯24aが設けられている。また、第1のスプライン部23aは、前方向側の端部に向けて縮径するテーパ部を形成する。また、第2の構成部分23は、後方向の端部に設けられた第2のスプライン部23bと、第2のスプライン部23bから連なり第2のスプライン部23bに向けて拡径するテーパ部23cとを有する。第2のスプライン部23bの内周には、内歯24bが設けられている。
【0028】
第3の構成部分25は、前方向の端部に設けられたスプライン部25aと、スプライン部25aから連なりスプライン部25aに向けて拡径するテーパ部25bとを有する。スプライン部25aの外周には、外歯26が設けられている。
【0029】
第1の構成部分21のスプライン部21aの外歯22と、第2の構成部分23の第1のスプライン部23aの内歯24aとはスプライン結合されており、第1の構成部分21と第2の構成部分23とを結合する第1の結合部27を構成している。第3の構成部分25のスプライン部25aの外歯26と、第2の構成部分23の第2のスプライン部23bの内歯24bとはスプライン結合されており、第2の構成部分23と第3の構成部分25とを結合する第2の結合部29を構成している。
【0030】
第2の構成部分23の第1のスプライン部23aとテーパ部23cとの間の領域の直径Dを基準にすると、第1の結合部27は、第1の構成部分21のテーパ部21b及び第2の構成部分23の第1のスプライン部23aにより縮径される一方、第2の結合部29は、第2の構成部分23のテーパ部23c及び第3の構成部分25のテーパ部25bにより拡径されている。このため、第1の結合部27の直径D1は、第2の結合部29の直径D2よりも小さい。したがって、第1の結合部27の剛性は、第2の結合部29の剛性よりも小さくなっている。
【0031】
また、ドライブピニオンシャフト10の第1の端部側を軸支する第1の軸受31の剛性と第1の結合部27の剛性との和と、ドライブピニオンシャフト10の第2の端部側を軸支する第2の軸受33の剛性と第2の結合部29の剛性との和との差が、所定の基準範囲内にされている。当該差は、好ましくは同等であるとよい。所定の基準範囲は、動力伝達装置1に動力を入力したときに発生する振動が許容範囲となるようにあらかじめシミュレーション等に基づいて決定される任意の値であってよい。
【0032】
<作用>
続いて、本実施形態に係る動力伝達装置1の作用を説明する。
【0033】
図3及び
図4は、本実施形態に係る動力伝達装置1の比較例をそれぞれ示す図である。
図3に示す第1の比較例では、ドライブシャフト41が、直径が同一の一本の軸により構成されている。
図4に示す第2の比較例では、ドライブシャフト43が、軸方向に分割された3つの構成部分44,45,46を含み、それぞれ隣り合う構成部分同士が第1の結合部47及び第2の結合部49でスプライン結合されている。
【0034】
図5は、第1の比較例及び第2の比較例の動力伝達装置に対して動力を入力したときに第1の軸受31あるいは第2の軸受33に発生する振動の周波数[Hz]及び大きさ[dB]を示す。ドライブシャフト41が一本の軸により構成された第1の比較例では、375Hz付近から460Hz付近の周波数域の1次固有モードによる振動が大きく現れている。また、ドライブシャフト43が3つの構成部分44,45,46に分割されて連結された第2の比較例では、第1の比較例で大きな振動として現れていた1次固有モードによる振動は低減されている。しかしながら、相対的に剛性が小さい第2の軸受33側の第2の結合部49に回転による変位が集中し、270Hz未満の低周波数の帯域の振動が大きく現れるようになった。
【0035】
図6は、
図2に示した本実施形態の動力伝達装置1の実施例に対して動力を入力したときに第1の軸受31あるいは第2の軸受33に発生する振動の周波数[Hz]及び大きさ[dB]を示す。上述のとおり、本実施例では、ドライブシャフト11が3つの構成部分21,23,25に分割されて連結されるだけでなく、所定の基準位置Cよりも第1の端部側の第1の結合部27の剛性が、所定の基準位置よりも第2の端部側の第2の結合部29の剛性よりも小さくなっている。また、ドライブピニオンシャフト10の第1の端部側を軸支する第1の軸受31の剛性と第1の結合部27の剛性との和と、ドライブピニオンシャフト10の第2の端部側を軸支する第2の軸受33の剛性と第2の結合部29の剛性との和とが同等(所定の基準範囲内)にされている。
【0036】
このため、第1の端部側の第1の結合部27及び第2の端部側の第2の結合部29に回転による変位が分散され、第1の軸受31及び第2の軸受33にそれぞれ発生する振動が低減する。これにより、第2の比較例で大きな振動とした現れた低周波数の帯域の振動を抑制しつつ、1次固有モードによる振動が低減されている。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る動力伝達装置1によれば、ドライブシャフト11が、軸方向に分割された3つの構成部分21,23,25を含むとともに、隣り合う構成部分同士を結合する第1の結合部27及び第2の結合部29を有する。そして、第1の結合部27及び第2の結合部29のうち、軸方向の所定の基準位置Cよりも前方向の第1の端部側に存在する第1の結合部27の剛性が、所定の基準位置Cよりも後方向の第2の端部側に存在する第2の結合部29の剛性よりも小さい。このため、第1の軸受31及び第2の軸受33の剛性の差による、ドライブピニオンシャフト10の第1の端部側と第2の端部側との剛性の差が緩和される。これにより、動力伝達装置1に動力を入力したときに、低周波数帯域の振動の増大を抑制しつつ、1次固有モードによる振動を低減することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る動力伝達装置1では、第1の軸受31の剛性と所定の基準位置Cよりも第1の端部側に存在する第1の結合部27の剛性との和と、第2の軸受33の剛性と所定の基準位置Cよりも第2の端部側に存在する第2の結合部29の剛性との和との差が所定の基準範囲内とされる。このため、動力伝達装置1に動力を入力したときに発生する回転による変動が、第1の結合部27及び第2の結合部29に分散される。したがって、1次固有モードによる振動だけでなく、低周波数帯域の振動の増大を抑制することができる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0040】
例えば上記実施形態では、ドライブシャフトが3つの構成部分に分割されて結合されていたが、ドライブシャフトの構成部分の数は4つ以上であってもよい。この場合、それぞれ隣り合う構成部分を結合する複数の結合部のうち、軸方向の所定の基準位置Cよりも前方向の第1の端部側に存在する複数の結合部の剛性の和が、所定の基準位置Cよりも後方向の第2の端部側に存在する複数の結合部の剛性の和よりも小さく構成される。また、第1の軸受の剛性と所定の基準位置よりも第1の端部側に存在する複数の結合部の剛性との和と、第2の軸受の剛性と所定の基準位置よりも第2の端部側に存在する複数の結合部の剛性との和と、の差が所定の基準範囲内とされる。これにより、ドライブピニオンシャフト10の第1の端部側と第2の端部側との剛性のバランスが図られ、動力伝達装置に動力を入力したときに、低周波数帯域の振動の増大を抑制しつつ、1次固有モードによる振動を低減することができる。
【符号の説明】
【0041】
1:動力伝達装置、5:フロントデファレンシャル装置、10:ドライブピニオンシャフト、11:ドライブシャフト、13:ドライブピニオンギヤ、15:ハイポイドリングギヤ、21:第1の構成部分、21a:スプライン部、21b:テーパ部、23:第2の構成部分、23a:第1のスプライン部、23b:第2のスプライン部、23c:テーパ部、25:第3の構成部分、25a:スプライン部、25b:テーパ部、27:第1の結合部、29:第2の結合部、31:第1の軸受、33:第2の軸受、33a・33b:ボール軸受、C:基準位置