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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010033
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】草刈機
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/063 20060101AFI20240116BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B60K15/063 A
A01D34/64 H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180290
(22)【出願日】2023-10-19
(62)【分割の表示】P 2019231651の分割
【原出願日】2019-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩原 秀二郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、作業許容傾斜角度まで草刈機が傾斜しても、燃料供給が止まらない草刈機を提供すること。
【解決手段】本発明の草刈機は、車体機台と燃料タンク2を備えた草刈機であって、前記燃料タンク2は、前記草刈機の前記車体機台に設けられ、前記燃料タンク底面に、前記車体機台の左右方向いずれか一方側に偏って配置され、かつ、前記車体機台の前後方向のいずれか一方側に偏って配置された突出部23を有し、前記突出部23の下面に、燃料取出口25を有し、前記燃料タンク2の液位が低下し、前記突出部23内にのみ燃料が残った状態で、前記草刈機Aが作業許容傾斜角度に傾斜しても、前記燃料取出口25から燃料の供給が影響されないことを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体機台と燃料タンクを備えた草刈機であって、
前記燃料タンクは、前記草刈機の前記車体機台に設けられ、前記燃料タンク底面に、前記車体機台の左右方向いずれか一方側に偏って配置され、かつ、前記車体機台の前後方向のいずれか一方側に偏って配置された突出部を有し、
前記突出部の下面に、燃料取出口を有し、
前記燃料タンクの液位が低下し、前記突出部内にのみ燃料が残った状態で、前記草刈機が作業許容傾斜角度に傾斜しても、前記燃料取出口から燃料の供給が影響されないことを特徴とする草刈機。
【請求項2】
前記突出部内に、燃料センサを設けた請求項1に記載の草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
草刈機は、公園、ゴルフ場、空き地、河川の堤防、自動車道の法面、山間地など様々な場所で使われている。
山間地や自動車道の法面のように、草刈機を傾斜地で使用するときに、転倒の危険があった。また、公園、河川の堤防、空き地、公園やゴルフ場においても、常に平坦とは限らず、場所によっては傾斜地があり、転倒の危険が無いとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-256555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、従来から特許文献1に開示されているように、草刈機の転倒の危険を減じる開発が様々なされてきたところであるが、より安全に草刈り作業をするために、さらなる転倒の危険を減じる手段が求められている。
【0005】
本発明の課題は、燃料取出口からの燃料供給を傾斜に影響されにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体機台と燃料タンクを備えた草刈機であって、前記燃料タンクは、前記草刈機の前記車体機台に設けられ、前記燃料タンク底面に、前記車体機台の左右方向いずれか一方側に偏って配置され、かつ、前記車体機台の前後方向のいずれか一方側に偏って配置された突出部を有し、前記突出部の下面に、燃料取出口を有し、前記燃料タンクの液位が低下し、前記突出部内にのみ燃料が残った状態で、前記草刈機が作業許容傾斜角度に傾斜しても、前記燃料取出口から燃料の供給が影響されないことを特徴とする草刈機。
【発明の効果】
【0007】
等高線走行をして草刈り作業するに際して、往路と復路で草刈機の左右バランスが異なることで、転倒の危険性があったところ、草刈機の左右バランスが軽くなる側の燃料タンク底面に、前記車体機台に偏って配置された突出部を有する燃料タンクを採用することにより、草刈機の左右バランスを改善し、転倒の危険を減じることができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】草刈機の斜視図
図2】草刈機の(A)平面図(B)側面図
図3】燃料タンクの正面図
図4】燃料タンクのバリエーションを示す説明図(A)車体機台の左右方向いずれか一方側に偏って配置された突出部を有した燃料タンク(B)車体機台の左右方向いずれか一方側に偏って配置され、かつ、車体機台の前後方向のいずれか一方にも偏って配置された突出部を有した燃料タンク
図5】燃料タンクの傾斜地における説明図(A) 図3の燃料タンクの傾斜地における油面位置を示す説明図(B) 図4(B)の燃料タンクが、傾斜地で左に上がるように傾いた場合の油面位置を示す説明図(C) 図4(B)の燃料タンクが、傾斜地で右に上がるように傾いた場合の油面位置を示す説明図
図6】エンジンの支持構造を示す説明図(A) エンジンの側面図(B) エンジンが常に水平を保たれることを示す説明図(C) エンジンが傾斜に合わせて水平に保たれる状態を示す説明図
図7】草刈機の側面図であって(A) 作業時に草刈ユニットを持ち上げた状態を示す説明図(B) 姿勢検知センサが許容範囲を超える傾斜を検知した場合に、草刈ユニットを接地させた状態を示す説明図
図8】緊急時草刈ユニット昇降制御フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例)
図1は、草刈機Aの斜視図である。また、図2は草刈機Aの(A)平面図および(B)側面図である。実施例は、詳述しないが無線誘導タイプの草刈機Aである。
エンジン4はバッテリー1、燃料タンク2、油圧タンク3の前に配置されており、エンジン4と燃料タンク2の間にはHST8が配置されている。
草刈ユニット7は、草刈機Aの前方に配置されており、草刈ユニット昇降アクチュエータ71により昇降できるように構成されている。
接地体6は、実施例ではクローラーである。
さらに、車体機台5の姿勢(傾斜状態など)を検出する角度センサやジャイロなどの姿勢検知センサ51(図2(A)参照)が設けられ、特に草刈機Aが危険な傾斜状態になっているかを監視している。
【0010】
(バッテリー・燃料タンク・油圧タンクの配置)
バッテリー1、燃料タンク2、油圧タンク3が草刈機Aの車体機台5上の左右方向に並んで配置されている。車体機台5は、図2(B)に示されているように上部ある様々な部材を支えている。
【0011】
実施例では、前方に重量物である草刈ユニット7が配置されており、前後バランスを良好にするため、一番後方にバッテリー1、燃料タンク2、油圧タンク3が並んで配置されているが、重量物であるエンジン4を一番後方に配置し、その前にバッテリー1、燃料タンク2、油圧タンク3を並べてもよい。
バッテリー1、燃料タンク2、油圧タンク3は車体機台5の上に左右方向に並んで配置されていればよく、車体機台5の前後方向の位置は問わない。
【0012】
図3は、燃料タンク2の正面図であり、燃料の油面を検出すべくフロート式の燃料センサ21が内部に設けられており、下面には燃料取出口25が設けられている。図3に示されているように、燃料が消費されて少なくなることで燃料タンク2の重量が著しく減少する。
草刈機Aが傾斜地で草刈りを行う場合、通例等高線に沿って走行する等高線走行により草刈作業が行われるため、左右バランスが非常に重要なところ、バッテリー1、燃料タンク2、油圧タンク3は車体機台5の上に左右方向に並んで配置されているので、燃料タンク2の燃料が消費されて軽くなったとしても、左右バランスに大きな影響を与えることはない。
【0013】
(燃料タンク)
燃料タンク2は、車体機台5の上に設けられており、図4は、燃料タンク2のバリエーションを示す説明図である。図4(A)の燃料タンク2は、燃料タンク底面22に、車体機台5の左右方向いずれか一方側に偏って配置された突出部23を有している。図4(B)の燃料タンク2は、燃料タンク底面22に、車体機台5の左右方向いずれか一方側に偏って配置され、かつ、車体機台5の前後方向のいずれか一方にも偏って配置された突出部23を有している。
等高線走行をして草刈り作業するに際して、往路と復路で草刈機Aの左右バランスが異なることで、転倒の危険性があったところ、草刈機Aの左右バランスが軽くなる側の燃料タンク底面22に、前記車体機台5に偏って配置された突出部23を有する燃料タンク2を採用することにより、草刈機Aの左右バランスを改善できるようになる。
例えば、バッテリー1と油圧タンク3を比較すると、バッテリー1の方が軽い場合がある。そこで、バッテリー1側が重くなるように、燃料タンク2を図4(A)や図4(B)のような形状とし、バッテリー1側に偏って配置された突出部23を備えることで、左右バランスの改善を図っている。
なお、草刈機Aの左右バランスは、他部材の配置などによっても変わるので、必ずしもバッテリー1側に、突出部23が来るものではないことは言うまでもない。車体機台5上の全体の左右方向のバランスを考慮して、突出部23の位置を車体機台5の左右方向いずれの方向にするか決めることができる。
【0014】
(傾斜地における燃料タンクの油面位置)
図3に記載の燃料タンク2は、燃料センサ21が設けられ、燃料の量を常に監視している。草刈機Aが、傾斜地で燃料切れを起こすと、危険な傾斜地を、燃料を持って歩いて安定しない傾斜地の足場で燃料を補給しなければならない。燃料切れになる前に草刈機Aを平坦地まで走行させ燃料を補給するには、正確な燃料の残量を把握することが重要である。また、図3に記載のような燃料タンク2は、底面の中央に燃料取出口25が設けられており、急な傾斜地では、燃料の残量が減ってくると安定して燃料が供給できないこともあり得る。
【0015】
図5は、燃料タンク2の傾斜地における説明図であり、図5(A)は、図3の燃料タンク2の傾斜地における油面位置を示す説明図、図5(B)は、図4(B)の燃料タンク2が、傾斜地で左に上がるように傾いた場合の油面位置を示す説明図、図5(C)は、図4(B)の燃料タンク2が、傾斜地で右に上がるように傾いた場合の油面位置を示す説明図である。
図4(A)および図4(B)のいずれの燃料タンク2においても、燃料取出口25からの燃料供給が傾斜に影響されにくくなっている。
【0016】
図5(A)に示す図3に記載の形状の燃料タンク2は、傾斜地では燃料が傾斜地の低地側に偏り、燃料センサ21による油面の測定に誤差が出る。これに対して、図4(B)の燃料タンク2は、突出部23を有する。草刈機Aが、等高線走行を行いながら、往復作業をすると、燃料タンク2は、図5(B)、図5(C)に示すように右、左に交互に傾く。そして、燃料が減少して行くと、次第に突出部23のみに燃料が溜まることとなる。この状態で、図5(B)のように燃料タンク2が左に上がるように傾いても、図5(C)のように右に上がるように傾いても、図3の突出部23がない燃料タンク2と比べて、突出部23の容積が小さいため油面が上下に変化しにくくなっており、燃料センサ21が油面を検知しやすくなっている。また、図3の突出部23がない燃料タンク2と比べて、突出部23に設けられた燃料センサ21は、誤差が出にくい。
【0017】
また、草刈機Aは等高線走行を行うものの、実際の傾斜地は避けにくい凹凸があることがあり、車体機台5の前後方向にも傾斜する。このような場合、図4(B)の燃料タンク2は、燃料タンク底面22に、車体機台5の左右方向いずれか一方側に偏って配置され、かつ、車体機台5の前後方向のいずれか一方にも偏って配置された突出部23を有しており、車体機台5の前後方向の傾き対しても、燃料センサ21が油面を検知しやすくなっている。
【0018】
(エンジン)
図6は、エンジン4の支持構造を示す説明図である。図6(A)は、エンジン4の側面図である。図6(A)に示されるように、エンジン4は、図示されていない車体機台5に設置された前側エンジン支持部46と後側エンジン支持部47とで、動力軸42を軸として揺動できるようにエンジン機台41上に設けられている。
図6(B)はエンジン4が常に水平を保たれることを示す説明図であり、傾斜地の傾斜角度が変化しても、常にエンジン4は、水平を保つ。図6(C)は、エンジン4が傾斜に合わせて水平に保たれる状態を示す説明図であり、どちらの方向に傾斜していてもエンジン4は水平を保つ。
エンジン機台41の制御は、図2(A)に図示されている姿勢検知センサ51の出力により、エンジン機台傾斜アクチュエータ45が常にエンジン機台41を水平に保つように制御することで達成される。
【0019】
なお、エンジン機台41が動力軸42を軸として水平を保つように、エンジン機台41上にバランスウエイト(図示しておらず)を配置し、エンジン機台傾斜アクチュエータ45の力を借りずにエンジン機台41を水平に保つこともできる。この場合であっても、エンジン4の駆動によりエンジン機台41が振動するため、エンジン機台傾斜アクチュエータ45により振動を抑えることが好ましい。
【0020】
エンジン4が常に水平を保つと、車体機台5に対して、傾斜地の山側にエンジン4が寄ることになり、重心が山側に移動する。このため、より安定に等高線走行することが走行できる。山側に重心を移動させるため、水平を超えて山側に傾けるようにエンジン機台傾斜アクチュエータ45を制御することもできる。
さらに、姿勢検知センサ51が草刈機Aの作業許容傾斜角度を超えるような傾斜を検知した場合に、横転の危険を避けるためにエンジン機台41を山側に極端に傾けるようにエンジン機台傾斜アクチュエータ45を制御することもできる。
【0021】
(草刈ユニット)
草刈ユニット7を、草刈り作業時、地表面から若干持ち上げて草刈が行われることもあるし、草刈りユニット7を、地面に接して作業する場合もある。図7は、草刈機Aの側面図であって、図7(A)は作業時に草刈ユニット7を持ち上げた状態を示す説明図である。地表面から距離S(なお、説明のため距離Sは大きく強調して描かれている。)だけ草刈ユニット7が持ち上げられた状態が示されている。
【0022】
実際に作業する傾斜地は、凹みが有ったり、こぶが有ったりすることがあり、必ずしも均一な傾斜角度の傾斜地ばかりではない。急激に傾斜地の傾斜角度が変化することもある。姿勢検知センサ51が、草刈機Aの許容値(許容傾斜角度)を超える危険な傾斜を感知した場合、直ちに作業者に報知するが、対応が遅れることもあり得る。
図7(B)は、姿勢検知センサ51が許容範囲を超える傾斜を検知した場合に、草刈ユニット7を接地させた状態を示す説明図である。等高線走行をしながら草刈り作業を行っている最中に、姿勢検知センサ51が、許容傾斜角度を超える危険な傾斜を検知すると、前記したように作業者に報知すると同時に、草刈ユニット7を持ち上げた状態から接地する状態に草刈ユニット昇降アクチュエータ71を制御する。
【0023】
図8は、図示されていない制御部によりなされる緊急時草刈ユニット昇降制御フローチャートである。姿勢検知センサ51が許容範囲内の傾斜を検出している場合には、草を刈るのに適した草刈ユニット7の昇降制御がなされるべく、草刈ユニット昇降アクチュエータ71が制御される。
他方、s1で姿勢検知センサ51が、許容値を超える傾斜を検出(すなわち、横転の危険のある状態を検出)すると、制御部は、s2で草刈ユニット7の動力をOFFにするよう指令を出す。そして、制御部は、s3で草刈ユニット7を下降接地させるべく草刈ユニット昇降アクチュエータ71を作動させる指令を出す。草刈作業時には、草刈ユニット7が持ち上げられて作業が行われることは前記したとおりである。その場合、草刈ユニット7の重量がすべて草刈機Aの前側にかかることなる。作業時に地表面から持ち上げられるわずかな距離S(図7(A)参照)だけ草刈ユニット7下げて接地させるだけで、草刈機Aの重心が下がるとともに、接地面積が増え横転を防ぐことができる。また、接地面積が増えることで傾斜地の低地側に草刈機Aが、ずり下がりにくくなる。
また、燃料補給のため傾斜面を上り下りするなど、草刈り作業時以外の場合であっても、上記制御がなされるようにしてもよい。なお、等高線走行をする時の許容値と傾斜面を上り下りする時の許容値が異なってよいことは言うまでもない。
【0024】
(実施例の変形例)
草刈ユニット7は、実施例では草刈機Aの前方に配置されているが、車体機台5の中央でもよいし、後方でもよく、草刈ユニット7の位置は任意である。
実施例では、無線誘導タイプの草刈機Aであるが、AIや作業マップに従い走行する自律走行タイプでもよいし、人が搭乗するタイプの乗用型の草刈機Aでもよい。
接地体6は、実施例ではクローラーであるが、車輪でもよく、草刈機Aを動かすことができるものであればどのようなものであってもかまわない。
実施例では、フロート式の燃料センサ21を用いたが、油面を検出することができるならどのような形式の燃料センサ21であってもよい。
実施例では、姿勢検知センサ51を油圧タンク3の上に配置したが、姿勢検知センサ51の位置は車体機台5の姿勢を検知できればどこでもよいし、ジャイロや角度センサ等どのような形式のものであってもよい。
【0025】
以上、本発明に係る実施例を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0026】
また、前述の実施例は、(バッテリー・燃料タンク・油圧タンクの配置)、(エンジン)、(燃料タンク)等のように部材毎に説明をしてきたが、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
A 草刈機
1 バッテリー
2 燃料タンク
21 燃料センサ
22 燃料タンク底面
23 突出部
25 燃料取出口
3 油圧タンク
4 エンジン
41 エンジン機台
42 動力軸
45 エンジン機台傾斜アクチュエータ
46 前側エンジン支持部
47 後側エンジン支持部
5 車体機台
51 姿勢検知センサ
6 接地体
7 草刈ユニット
71 草刈ユニット昇降アクチュエータ
8 HST
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8