(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100332
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】端子金具及び端子金具の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20240719BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01R13/11 A
H01R43/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004265
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 一人
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063GA05
5E063XA02
(57)【要約】
【課題】振動に対する耐性を向上させることができる端子金具及び端子金具の製造方法を提供する。
【解決手段】端子金具1は、底壁11と、第1壁部12と、第2壁部13とを含み、第1壁部の一部と第2壁部の一部とが互いに重なり合うように折り曲げられて天井壁部CEを構成することで筒状に形成された箱部10を備え、天井壁部において、第1壁部は、第2壁部に対して端子挿入空間SP側に位置しており、第1壁部は、係止部LPを有しており、係止部は、第1壁部の側壁部分12sから突出した第1部分12kと、屈曲部12lと、屈曲部を介して第1部分につながっており、屈曲部12lによって、天井壁部における第2壁部13の上面である天井面13tに向けて折り返し可能な第2部分12mと、を有し、第2部分の長さと天井壁部における第2壁部13の厚さとの和は、第1部分の長さよりも大きい。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、前記底壁における幅方向の一端から突出した第1壁部と、前記底壁における前記幅方向の他端から突出した第2壁部とを含み、前記第1壁部の一部と前記第2壁部の一部とが互いに重なり合うように折り曲げられて天井壁部を構成することで筒状に形成され、内部の端子挿入空間に前記幅方向と交差する軸方向に沿って相手端子を挿入可能である箱部を備え、
前記天井壁部において、前記第1壁部は、前記第2壁部に対して前記端子挿入空間側に位置しており、
前記第1壁部は、前記天井壁部において前記第2壁部が前記第1壁部から離れることを規制する係止部を有しており、
前記係止部は、前記第1壁部における前記箱部の側壁を構成する側壁部分から前記底壁側とは反対側に向けて突出した第1部分と、前記第1部分に対して折り曲げ可能な屈曲部と、前記屈曲部を介して前記第1部分につながっており、前記屈曲部によって、前記天井壁部における前記第2壁部の上面である天井面に向けて折り返し可能な第2部分と、を有し、
前記第2部分における前記屈曲部から前記第2部分の先端面までの長さと前記天井壁部における前記第2壁部の厚さとの和は、前記第1部分における前記側壁部分から前記屈曲部までの長さよりも大きい、
ことを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記第2部分が前記屈曲部で折り返されて前記先端面が前記天井面に当接した際に、前記屈曲部は、前記天井面から受ける反発力によって、前記第2部分における前記屈曲部から前記先端面までの長さが短くなるように変形可能である、
請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
平板状の端子基材を折り曲げて、底壁と、前記底壁の幅方向の一端から突出した第1壁部と、前記底壁の前記幅方向の他端から突出した第2壁部と、前記第1壁部の一部の上に前記第2壁部の一部を重ねた天井壁部と、を形成することで、前記幅方向と交差する軸方向に沿って内部の端子挿入空間に相手端子を挿入可能である筒状の箱部を形成しつつ、前記第1壁部の他の一部を折り曲げて、前記天井壁部の前記第2壁部が前記第1壁部から離れることを規制するための係止部を形成する第1折り曲げ工程と、
前記第1折り曲げ工程の後、前記係止部によって前記天井壁部の前記第2壁部を係止させる第2折り曲げ工程と、
を備え、
前記第1折り曲げ工程において、前記係止部は、前記第1壁部の他の一部に、前記第1壁部における前記箱部の側壁を構成する側壁部分から前記底壁側とは反対側に向けて突出した第1部分と、前記第1部分に対して折り曲げ可能な屈曲部と、前記屈曲部を介して前記第1部分につながっており、前記屈曲部によって前記天井壁部における前記第2壁部の上面である天井面に向けて折り返し可能な第2部分と、を形成することで形成され、前記第2部分における前記屈曲部から前記第2部分の先端面までの長さと前記天井壁部における前記第2壁部の厚さとの和は、前記第1部分における前記側壁部分から前記屈曲部までの長さよりも大きくなるように設定され、
前記第2折り曲げ工程において、前記係止部は、前記第2部分が前記屈曲部で折り返されることで前記先端面を前記天井面に当接させ、前記屈曲部は、前記天井面からの反発力によって、前記第2部分における前記屈曲部から前記先端面までの長さが短くなるように変形する、
ことを特徴とする端子金具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具及び端子金具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相手端子である雄端子と電気的に接続する箱部を有する端子金具がある。例えば、特許文献1には、一枚のプレートより折り曲げによって形成された4つの壁面部を有する箱部と、箱部内に配置された撓みバネ部とを備えた端子が開示されている。特許文献1の端子において、折り曲げの一端に位置する壁面部と、壁面部に隣り合う他の壁面部とのいずれか一方には、係止穴が設けられ、他方には、一方の壁面部と面一に折り曲げられて係止穴に入り込む係止片が設けられ、箱部の開き方向の変位を規制する係止穴と係止片の双方の端面のいずれか一方が線形状の端面に、他方が点形状の端面にそれぞれ形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の端子においては、係止穴と係止片とによって箱部の開きが規制されている。しかしながら、製造時に生じる形状のばらつき等により、係止穴と係止片との間に隙間が形成されることがあった。例えば、超音波接合時等の際には、端子に振動が伝わる場合がある。特許文献1のような端子においては、係止穴と係止片との間の隙間に起因して、端子の振動に対する耐性が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、振動に対する耐性を向上させることができる端子金具及び端子金具の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の端子金具は、底壁と、前記底壁における幅方向の一端から突出した第1壁部と、前記底壁における前記幅方向の他端から突出した第2壁部とを含み、前記第1壁部の一部と前記第2壁部の一部とが互いに重なり合うように折り曲げられて天井壁部を構成することで筒状に形成され、内部の端子挿入空間に前記幅方向と交差する軸方向に沿って相手端子を挿入可能である箱部を備え、前記天井壁部において、前記第1壁部は、前記第2壁部に対して前記端子挿入空間側に位置しており、前記第1壁部は、前記天井壁部において前記第2壁部が前記第1壁部から離れることを規制する係止部を有しており、前記係止部は、前記第1壁部における前記箱部の側壁を構成する側壁部分から前記底壁側とは反対側に向けて突出した第1部分と、前記第1部分に対して折り曲げ可能な屈曲部と、前記屈曲部を介して前記第1部分につながっており、前記屈曲部によって、前記天井壁部における前記第2壁部の上面である天井面に向けて折り返し可能な第2部分と、を有し、前記第2部分における前記屈曲部から前記第2部分の先端面までの長さと前記天井壁部における前記第2壁部の厚さとの和は、前記第1部分における前記側壁部分から前記屈曲部までの長さよりも大きい。
【0007】
本発明の端子金具の製造方法は、平板状の端子基材を折り曲げて、底壁と、前記底壁の幅方向の一端から突出した第1壁部と、前記底壁の前記幅方向の他端から突出した第2壁部と、前記第1壁部の一部の上に前記第2壁部の一部を重ねた天井壁部と、を形成することで、前記幅方向と交差する軸方向に沿って内部の端子挿入空間に相手端子を挿入可能である筒状の箱部を形成しつつ、前記第1壁部の他の一部を折り曲げて、前記天井壁部の前記第2壁部が前記第1壁部から離れることを規制するための係止部を形成する第1折り曲げ工程と、前記第1折り曲げ工程の後、前記係止部によって前記天井壁部の前記第2壁部を係止させる第2折り曲げ工程と、を備え、前記第1折り曲げ工程において、前記係止部は、前記第1壁部の他の一部に、前記第1壁部における前記箱部の側壁を構成する側壁部分から前記底壁側とは反対側に向けて突出した第1部分と、前記第1部分に対して折り曲げ可能な屈曲部と、前記屈曲部を介して前記第1部分につながっており、前記屈曲部によって前記天井壁部における前記第2壁部の上面である天井面に向けて折り返し可能な第2部分と、を形成することで形成され、前記第2部分における前記屈曲部から前記第2部分の先端面までの長さと前記天井壁部における前記第2壁部の厚さとの和は、前記第1部分における前記側壁部分から前記屈曲部までの長さよりも大きくなるように設定され、前記第2折り曲げ工程において、前記係止部は、前記第2部分が前記屈曲部で折り返されることで前記先端面を前記天井面に当接させ、前記屈曲部は、前記天井面からの反発力によって、前記第2部分における前記屈曲部から前記先端面までの長さが短くなるように変形する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る端子金具及び端子金具の製造方法は、振動に対する耐性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る端子金具を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る端子金具を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る端子金具を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る端子金具を示す側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る端子金具を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る端子金具を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る端子金具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る端子金具及び端子金具の製造方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1から
図7を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、端子金具及び端子金具の製造方法に関する。
図1は、実施形態に係る端子金具を示す斜視図、
図2は、実施形態に係る端子金具を示す斜視図、
図3は、実施形態に係る端子金具を示す斜視図、
図4は、実施形態に係る端子金具を示す側面図、
図5は、実施形態に係る端子金具を示す断面図、
図6は、実施形態に係る端子金具を示す断面図、
図7は、実施形態に係る端子金具を示す斜視図である。なお、
図2、
図3は、端子金具の箱部が形成される途中の状態を図示したものである。
【0012】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。実施形態において、軸方向Xは、典型的には、端子金具と相手方端子との挿抜方向に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、軸方向Xと交差する交差方向に相当する。高さ方向Zは、典型的には、端子金具の底壁の板厚方向に相当する。
【0013】
実施形態に係る端子金具1は、電線の末端に圧着される圧着端子である。例えば、端子金具1は、電線の末端に圧着された状態で車両等に使用されるワイヤハーネス等に適用される。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続するものであって、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線を束にして集合部品としたものである。ワイヤハーネスは、コネクタ等で複数の電線を各装置に接続するように構成される。
【0014】
図1に示すように、実施形態に係る端子金具1は、導電性を有する雌型の端子金具である。端子金具1は、雄型の相手端子と電気的に接続可能に形成されている。相手端子は、中心軸線が軸方向Xに沿う略矩形柱状に形成されている。
【0015】
端子金具1は、箱部10、電線接続部20、及び、連結部30を含む。箱部10、電線接続部20、及び、連結部30は、全体が一体として形成されている。端子金具1は、導電性を有する金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等によって構成される。端子金具1は、例えば、箱部10、電線接続部20、連結部30等の各部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金をプレス加工、及び、折り曲げ成形することにより各部が立体的に一体で形成される。端子金具1は、軸方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、箱部10、連結部30、電線接続部20の順で並んで相互に連結されている。
【0016】
箱部10は、相手端子と電気的に接続される部分である。箱部10は、上述したように雌型の端子形状に形成され、雄型の端子形状に形成された相手端子と電気的に接続される。実施形態の箱部10は、筒状に形成され、内部の端子挿入空間SPに軸方向Xに沿って相手端子を挿入可能な部分を構成する。
【0017】
図1から
図3に示すように、箱部10は、底壁11と、底壁11における幅方向Yの一端から突出した第1壁部12と、底壁11における幅方向Yの他端から突出した第2壁部13とを含み、第1壁部12の一部と第2壁部13の一部とが互いに重なり合うように折り曲げられて天井壁部CEを構成することで筒状に形成されている。箱部10は、軸方向Xの両端が開口しており、筒形状に形成された中空の電気接続部を構成している。箱部10において、底壁11、第1壁部12、及び、第2壁部13で囲まれた空間は、軸方向Xに沿って相手端子を挿入可能な端子挿入空間SPとなっている。つまり、箱部10の内部には、端子挿入空間SPが形成されている。
【0018】
天井壁部CEにおいて、第1壁部12は、第2壁部13に対して端子挿入空間SP側に位置している。つまり、天井壁部CEは、第1壁部12の一部の上に第2壁部13の一部が重ねられることで形成されている。
図2及び
図3に示すように、第1壁部12及び第2壁部13は、天井壁部CEを構成する第1壁部12の上面である天井面12tが、天井壁部CEを構成する第2壁部13の下面に接するように折り曲げられている。
【0019】
箱部10は、端子挿入空間SPに位置するバネ部14を有している。バネ部14は、天井壁部CEにおける第1壁部12に片持ち状に支持されている。バネ部14は、箱部10と一体的に形成されており、軸方向Xに延在する略矩形板状に形成されている。バネ部14は、軸方向Xにおいて、天井壁部CEの第1壁部12における連結部30側とは反対側の端部とつながっている。バネ部14は、固定端(天井壁部CEにおける第1壁部12とつながっている部分)と自由端との間に、端子収容空間SPに挿入された相手端子との接点となる接点部を有しており、弾性変形可能に形成されている。バネ部14の接点部を含む部分は、相手端子との接触によって変形し、その変形の復元力によって、相手端子を底壁11に押圧し、かつ、接点部を相手端子に押圧する。この結果、端子金具1は、バネ部14の接点部と相手端子とを所要の接触圧で接触させることができ、端子金具1と相手端子とが電気的接続される。
【0020】
箱部10は、天井壁部CEにおいて、第2壁部13が第1壁部12から離れることを規制する係止部LPを有している。係止部LPは、箱部10と一体的に形成されている。実施形態に係る端子金具1において、第1壁部12における箱部10の側壁を構成する側壁部分12sよりも先端側の一部分を折り曲げることで天井壁部CEの一部が形成されており、第1壁部12の側壁部分12sよりも先端側の他の一部分を折り曲げることで係止部LPが形成されている。
【0021】
図1及び
図4に示すように、係止部LPは、第1壁部12における天井壁部CEを構成する部分よりも連結部30側に位置している。また、
図2及び
図3に示すように、天井壁部CEを構成する第2壁部13は、軸方向Xにおいて、第1壁部12における天井壁部CEを構成する部分よりも連結部30側に延出しており、高さ方向Zにおいて第1壁部12と重なる重畳部分と、高さ方向Zにおいて第2壁部13と重ならない非重畳部分とを有している。第2壁部13の非重畳部分は、少なくとも一部が幅方向Yにおいて、係止部LPと並んでいる。
【0022】
係止部LPは、第1部分12k、屈曲部12l、及び、第2部分12mを含む。第1部分12kは、側壁部分12sから底壁11側とは反対側に向けて突出した部分である。第1部分12kは、高さ方向Zに沿って伸びる板状の部分として形成されている。屈曲部12lは、第1部分12kに対して折り曲げ可能に形成された部分であり、第1部分12kにおける側壁部分12s側の端部とは反対側の端部とつながっている。第2部分12mは、屈曲部12lを介して第1部分12kにつながっており、屈曲部12lによって、天井壁部CEにおける第2壁部13の上面である天井面13tに向けて折り返し可能な板状の部分として形成されている。
【0023】
図1、
図4、及び、
図5は、非係止状態の端子金具1を示したものである。ここで、「非係止状態」とは、端子金具1において、箱部10が筒状に形成された状態であって、係止部LPによって、第2壁部13が第1壁部12から離れることが規制される状態の前の状態をいう。ここで、
図5は、
図4に示すA-A断面図である。また、
図6は、後述する係止状態の端子金具1を示す断面図であり、
図4に示すA-A断面図に対応する。
図5及び
図6に示すように、係止部LPは、屈曲部12lで折り曲げられることで、第2部分12mが天井壁部CEの天井面13tに向けて折り返され、非係止状態から係止状態となる。ここで、「係止状態」とは、係止部LPによって、第2壁部13が第1壁部12から離れることが規制された状態をいう。
【0024】
図5に示すように、非係止状態の端子金具1において、第2部分12mにおける屈曲部12lから第2部分12mの先端面12msまでの長さL2と天井壁部CEにおける第2壁部13の厚さh1との和は、第1部分12kにおける側壁部分12sから屈曲部12lまでの長さL1よりも大きい。箱部10が形成された状態において、天井壁部CEを構成する第2壁部13の天井面13tは、高さ方向Zにおいて、第1壁部12における箱部10の側壁を構成する側壁部分12sよりも上側に位置している。つまり、天井面13tは、高さ方向Zにおいて、第1壁部12における箱部10の側壁を構成する側壁部分12sに対して、底壁11側とは反対側に位置している。また、第1壁部12における箱部10の側壁を構成する側壁部分12sの上端(側壁部分12sにおける底壁11側とは反対側の端部)は、高さ方向Zにおいて、第1壁部12の天井面12tと実質的に同じ位置に位置している。実施形態の端子金具1では、第2壁部13の重畳部分において、天井壁部CEの第2壁部13の先端は、側壁部分12sの上端の上に位置している。
【0025】
図6に示すように、端子金具1は、第2部分12mが、屈曲部12lで折り返されて先端面12msが天井面13tに当接することで、非係止状態から係止状態とされる。このとき、第2部分12mの長さL2と第2壁部13の厚さh1との和が、第1部分12kの長さL1よりも大きいため、第2部分12mは、屈曲部12lと天井面13tとの間に押し込まれるように折り返される。屈曲部12lと天井面13tとの間に押し込まれるように折り返された第2部分12mは、天井面13tから反発力を受け、この反発力により、屈曲部12lが変形する。具体的には、屈曲部12lは、天井面13tから受ける反発力によって、第2部分12mにおける屈曲部12lから先端面12msまでの長さL3が短くなるように変形する。より具体的には、屈曲部12lの変形の際に第2部分12mにおける屈曲部12l側の端部も変形し、屈曲部12lの一部となることで、長さL3は、
図5に示す長さL2よりも短くなる。この構成により、先端面12msが天井面13tに密着し、屈曲部12lで折り曲げられた係止部LPの形状が固定される。例えば、先端面12msが天井面13tと密着することで、スプリングバックによる屈曲部12lの復元を抑制することができる。また、この構成により、係止部LPは、天井壁部CEにおける第2壁部13と第1壁部12(第1壁部12の天井面12t及び側壁部分12sの上端)とを密着させることができ、箱部10が開くことを規制することができる。
【0026】
電線接続部20は、電線に対して圧着されて電線と電気的に接続される部分である。電線は、導電性を有する線状の導体部である芯線と、芯線を被覆した絶縁性を有する被覆部とを含む。芯線は、導電性を有する金属素線を複数束ねられたものである。被覆部は、芯線の外周を覆う電線被覆である。被覆部は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。電線の末端部では、被覆部が剥ぎ取られ、芯線の一部が露出している。
【0027】
実施形態に係る端子金具1の電線接続部20は、芯線圧着部21、被覆圧着部22、及び中間部23を含んでいる。芯線圧着部21は、連結部30と被覆圧着部22との間に設けられており、中間部23は、芯線圧着部21と被覆圧着部22との間に設けられている。芯線圧着部21は、連結部30を介して箱部10と連結されている。また、芯線圧着部21は、軸方向Xに沿って、箱部10側から電線接続部20側に向かって、芯線圧着部21、中間部23、被覆圧着部22の順で並んで相互に連結されている。
【0028】
芯線圧着部21は、電線の末端部において露出する芯線に対して圧着される部分である。芯線圧着部21は、底部、第1バレル片、及び第2バレル片を含む。底部は、芯線圧着部21の底壁である。
図1から
図3に示すように、加締め圧着前の端子金具1において、第1バレル片は、幅方向Yにおける底部の一端から突出している側壁として形成されている。また、第2バレル片は、幅方向Yにおける底部の他端から突出している側壁として形成されている。加締め圧着前の端子金具1において、第1バレル片、及び、第1バレル片は、互いの内壁面同士を向かい合わせにして配置されている。つまり、加締め圧着前において、芯線圧着部21は、底部及び幅方向Yにおける底部の両端のそれぞれに立設された側壁(第1バレル片及び第2バレル片)を含んでおり、U字形状に形成されている。
【0029】
第1バレル片及び第2バレル片は、底部、第1バレル片及び、第2バレル片によって囲まれる空間に配置された芯線に対して、それぞれ巻き付けられて加締め圧着されることで、軸方向Xの断面がB字形状に形成される。つまり、加締め圧着後の芯線圧着部21は、所謂Bクリンプと称する加締め圧着が芯線に対して為されたものとなる。第1バレル片及び第2バレル片は、加締め圧着後において、それぞれの自由端を底部の内壁面に向けて、それぞれの自由端側の外壁面同士を突き合せた湾曲形状に折り曲げられた状態とされる。加締め圧着後の端子金具1において、第1バレル片及び第2バレル片は、芯線圧着部21の側壁及び上壁を構成する。このとき、第1バレル片及び第2バレル片における各自由端は芯線に食い込んでいる。
【0030】
被覆圧着部22は、電線の被覆部に対して圧着される部分である。
図1から
図3に示すように、被覆圧着部22は、芯線圧着部21と同じように、底部、第3バレル片及び第4バレル片を含む。被覆圧着部22は、底部を底壁とするU字形状に形成されている。第3バレル片及び第4バレル片は、底部、第3バレル片、及び、第4バレル片で囲まれる空間部に配置された被覆部に対して、それぞれ巻き付けられて加締め圧着されることで、長さ方向の断面が楕円形状に形成される。つまり、加締め圧着後の芯線圧着部21は、所謂オーバーラップクリンプと称する加締め圧着が被覆部に対して為されたものとなる。
【0031】
被覆圧着部22は、中間部23によって芯線圧着部21と連結されている。端子金具1は、中間部23を介して、第1、第2バレル片と第3、第4バレル片とが分断された所謂別体バレル型の端子金具として形成されている。つまり、中間部23は、軸方向Xにおける断面がU字形状に形成されており、芯線圧着部21における底部及び側壁の一部と被覆圧着部22における底部及び側壁の一部とを連結している。
【0032】
連結部30は、端子金具1において、箱部10と芯線圧着部21とを連結する部分である。連結部30は、底部と、端子金具1の幅方向Yにおける底部の両端のそれぞれに立設された側壁とを有している。側壁は、端子金具1の幅方向Yにおいて互いに対向している。連結部30の底部は、箱部10の底壁11と芯線接続部21の底部とを連結している。また、連結部30の側壁の一方は、箱部10の側壁部分12sと芯線圧着部21の側壁の一方を連結しており、連結部30の側壁の他方は、箱部10の側壁部分13sと芯線圧着部21の側壁の他方を連結している。
【0033】
次に、実施形態に係る端子金具1の製造方法について説明する。
【0034】
実施形態に係る端子金具1は、金属性の平板状の母材から形成される。実施形態に係る端子金具1の製造方法は、打ち抜き工程と、第1折り曲げ工程と、第2折り曲げ工程とを含む。
【0035】
打ち抜き工程では、金属性の平板状の母材から平板状の端子基材が打ち抜かれる。端子基材の形状は、端子金具1が平板状に展開された形状に対応している。実施形態の打ち抜き工程では、母材から、平板状に展開された端子金具1を残すように残余の部分が取り除かれ、端子基材を形成する。打ち抜き工程が完了した時点では、箱部10、電線接続部20、及び、連結部30は、一体の平板状の構成部となっている。
【0036】
なお、打ち抜き工程において、端子基材は、複数の端子金具1が連鎖した平板状の端子連鎖体として形成されてもよい。この場合、端子基材において、複数の端子金具1は、繋ぎ部及び連結片を介してそれぞれが連結された状態で形成される。繋ぎ部は、被覆圧着部22の端部から軸方向Xに沿って延出する部分として形成され、連結片は、幅方向Yに延在し、それぞれの端子金具1における被覆圧着部22の端部から延出する繋ぎ部とつながる部分として形成される。例えば、連結片は、幅方向Yに延在する細長い板状に形成される。
【0037】
第1折り曲げ工程は、端子基材を折り曲げて、平板状の端子金具1から非係止状態の端子金具1を形成する工程である。第1折り曲げ工程では、平板状の端子基材を折り曲げて、底壁11と、底壁11の幅方向Yの一端から突出した第1壁部12と、底壁11の幅方向Yの他端から突出した第2壁部13と、第1壁部12の一部の上に第2壁部13の一部を重ねた天井壁部CEと、を形成しつつ、第1壁部12の他の一部を折り曲げて、係止部LPを形成する(
図2及び
図3参照)。実施形態に係る端子金具1の製造方法においては、この工程を経て、軸方向Xに沿って内部の端子挿入空間SPに相手端子を挿入可能である筒状の箱部10が形成される。
【0038】
第1折り曲げ工程において、係止部LPは、第1壁部12の他の一部に、第1壁部12の側壁部分12sから底壁11側とは反対側に向けて突出した第1部分12kと、第1部分12kに対して折り曲げ可能な屈曲部12lと、屈曲部12lを介して第1部分12kにつながっており、屈曲部12lによって天井壁部CEにおける第2壁部13の天井面13tに向けて折り返し可能な第2部分12mと、を形成することで形成される。実施形態に係る端子金具1の製造方法においては、第1折り曲げ工程が完了した時点で、第2部分12mにおける屈曲部12lから第2部分12mの先端面12msまでの長さL2と天井壁部CEにおける第2壁部13の厚さh1との和が、第1部分12kにおける側壁部分12sから屈曲部12lまでの長さL1よりも大きくなるように形成される。ここで、第2部分12mの長さL2の上限は、後述する第2折り曲げ工程が可能な長さの範囲内である。すなわち、第2部分12mの長さL2の上限は、第2部分12mを第1部分12kに対して屈曲部12lで折り返し、第1部分12kに向けて押し込むことで、屈曲部12lを変形させつつ、第2部分12mの先端面12msを天井面に当接させることができる長さの範囲内とされる。
【0039】
第1折り曲げ工程が完了した時点では、係止部LPは、第2部分12mの先端面12msが天井面13tに接触しない程度に屈曲部12lで折り曲げられた状態で形成される(
図1及び
図5参照)。
【0040】
また、実施形態の第1折り曲げ工程では、電線接続部20及び連結部30も併行して形成される。第1折り曲げ工程が完了した時点で電線接続部20の芯線圧着部21及び被覆圧着部22はU字形状に形成される。
【0041】
第2折り曲げ工程は、第1折り曲げ工程の後に行われる工程であり、
図5に示す非係止状態の端子金具1を
図6に示す係止状態の端子金具1とする工程である。第2折り曲げ工程を行うことで、天井壁部CEにおいて第2壁部13が第1壁部12から離れることが係止部LPにより規制される。実施形態の第2折り曲げ工程は、先端面12msが天井面13tに接触しない程度に屈曲部12lで折り曲げられた状態の第2部分12mを、第1部分に向けて押し込んで係止部LPの形状を変形させる構成である。
【0042】
第2折り曲げ工程では、第2部分12mが屈曲部12lで折り返されることで先端面12msが天井面13tに当接し、天井面13tからの反発力によって、屈曲部12lが、第2部分12mにおける屈曲部12lから先端面12msまでの長さL3が短くなるように変形する。この構成により、先端面12msが天井面13tに密着し、屈曲部12lで折り曲げられた係止部LPの形状が固定される。例えば、先端面12msが天井面13tと密着することで、スプリングバックによる屈曲部12lの復元を抑制することができる。
【0043】
以上の工程を経て、
図6及び
図7に示す係止状態の端子金具1が形成される。実施形態に係る端子金具1は、その後、電線接続部20を電線に対して圧着させる圧着工程を経て、端子付き電線に加工される。なお、端子金具1が端子連鎖体の状態で形成されているときは、圧着工程の後の端子切断工程において、繋ぎ部が切断されることで、連結片から端子金具1が切り離される。
【0044】
以上、説明したように、実施形態に係る端子金具1は、底壁11と、底壁11における幅方向(Y)の一端から突出した第1壁部12と、底壁11における幅方向Yの他端から突出した第2壁部13とを含み、第1壁部12の一部と第2壁部13の一部とが互いに重なり合うように折り曲げられて天井壁部CEを構成することで筒状に形成され、内部の端子挿入空間SPに幅方向Yと交差する軸方向Xに沿って相手端子を挿入可能である箱部10を備え、天井壁部CEにおいて、第1壁部12は、第2壁部13に対して端子挿入空間SP側に位置しており、第1壁部12は、天井壁部CEにおいて第2壁部13が第1壁部12から離れることを規制する係止部LPを有しており、係止部LPは、第1壁部12における箱部10の側壁を構成する側壁部分12sから底壁11側とは反対側に向けて突出した第1部分12kと、第1部分12kに対して折り曲げ可能な屈曲部12lと、屈曲部12lを介して第1部分12kにつながっており、屈曲部12lによって、天井壁部CEにおける第2壁部13の上面である天井面13tに向けて折り返し可能な第2部分12mと、を有し、第2部分12mにおける屈曲部12lから第2部分12mの先端面12msまでの長さL2と天井壁部CEにおける第2壁部13の厚さh1との和は、第1部分12kにおける側壁部分12sから屈曲部12lまでの長さL1よりも大きい。
【0045】
実施形態に係る端子金具1において、第2部分12mの長さL2と天井壁部CEにおける第2壁部13の厚さh1との和は、第1部分12kの長さL1よりも大きく設定されている。この構成により、実施形態に係る端子金具1は、箱部10の開きを規制するために、係止部LPの第2部分12mを折り返して先端面12msを天井面13tに当接させた際に、天井面13tから受ける反発力によって、屈曲部12lを第2部分12mの長さL3が短くなるように変形させることができ、先端面12msを天井面13tに密着させることができる。また、屈曲部12lが変形しつつ、先端面12msが天井面13tと密着することで、実施形態に係る端子金具1は、スプリングバックによる屈曲部12lの復元を抑制することができ、端子金具1の振動に対する耐性を向上させることができる。また、係止部LPは、相手端子に係止部LPの形状に対応した案内溝を形成することで、相手端子との誤結合を防止するための誤結合防止突起としても利用できる。
【0046】
また、実施形態に係る端子金具1において、第2部分12mが屈曲部12lで折り返されて先端面12msが天井面13tに当接した際に、屈曲部12lは、天井面13tから受ける反発力によって、第2部分12mにおける屈曲部12lから先端面12msまでの長さ(L3)が短くなるように変形可能である。
【0047】
上記の構成により、係止部LPによって、天井壁部CEの第2壁部を係止した際に、スプリングバックによる屈曲部12lの復元を抑制することができ、端子金具1の振動に対する耐性を向上させることができる。また、この構成により、天井壁部CEにおいて、第2壁部13と第1壁部12とを密着させることができ、係止部LPによって、箱部10が開くことを規制することができる。
【0048】
また、実施形態に係る端子金具1の製造方法は、平板状の端子基材を折り曲げて、底壁11と、底壁11の幅方向Yの一端から突出した第1壁部12と、底壁11の幅方向Yの他端から突出した第2壁部13と、第1壁部12の一部の上に第2壁部13の一部を重ねた天井壁部CEと、を形成することで、幅方向Yと交差する軸方向Xに沿って内部の端子挿入空間SPに相手端子を挿入可能である筒状の箱部10を形成しつつ、第1壁部12の他の一部を折り曲げて、天井壁部CEの第2壁部13が第1壁部12から離れることを規制するための係止部LPを形成する第1折り曲げ工程と、第1折り曲げ工程の後、係止部LPによって天井壁部CEの第2壁部13を係止させる第2折り曲げ工程と、を備え、第1折り曲げ工程において、係止部LPは、第1壁部12の他の一部に、第1壁部12における箱部10の側壁を構成する側壁部分12sから底壁11側とは反対側に向けて突出した第1部分12kと、第1部分12kに対して折り曲げ可能な屈曲部12lと、屈曲部12lを介して第1部分12kにつながっており、屈曲部12lによって天井壁部CEにおける第2壁部13の上面である天井面13tに向けて折り返し可能な第2部分12mと、を形成することで形成され、第2部分12mにおける屈曲部12lから第2部分12mの先端面12msまでの長さL2と天井壁部CEにおける第2壁部13の厚さh1との和は、第1部分12kにおける側壁部分12sから屈曲部12lまでの長さL1よりも大きくなるように設定され、第2折り曲げ工程において、係止部LPは、第2部分12mが屈曲部12lで折り返されることで先端面12msを天井面13tに当接させ、屈曲部12lは、天井面13tからの反発力によって、第2部分12mにおける屈曲部12lから先端面12msまでの長さL3が短くなるように変形する。
【0049】
実施形態に係る端子金具1の製造方法では、第2部分12mの長さL2と天井壁部CEにおける第2壁部13の厚さh1との和は、第1部分12kの長さL1よりも大きく設定され、係止部LPの第2部分12mを折り返して先端面12msを天井面13tに当接させた際に、天井面13tから受ける反発力によって、屈曲部12lは、第2部分12mの長さL3が短くなるように変形する。この製造方法によって製造された端子金具1は、天井壁部CEにおいて、第2壁部13と第1壁部12とが密着することで、係止部LPによって、箱部10が開くことを規制することができる。また、端子金具1は、先端面12msが天井面13tと密着していることで、スプリングバックによる屈曲部12lの復元を抑制することができ、端子金具1の振動に対する耐性を向上させることができる。例えば、端子金具1につながる電線等を超音波接合する際に端子金具1に振動が伝わったとしても、スプリングバック等による屈曲部12lの変形が抑制され、箱部10の開きを抑制することができる。更に、係止部LPは、相手端子に係止部LPの形状に対応した案内溝を形成することで、相手端子との誤結合を防止するための誤結合防止突起としても利用できる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、芯線圧着部21が所謂Bクリンプによって芯線に対して圧着される例を用いて説明したがこれに限定されない。例えば、芯線圧着部21は、所謂オーバーラップクリンプによって芯線に対して圧着されてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、被覆圧着部22が所謂オーバーラップクリンプによって被覆部に対して圧着される例を用いて説明したがこれに限定されない。例えば、被覆圧着部22は、所謂Bクリンプによって被覆部に対して圧着されてもよい。
【0052】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0053】
10:箱部、11:底壁、12:第1壁部、12k:第1部分、12l:屈曲部
12m:第2部分、12ms:先端面、12s、13s:側壁部分
12t、13t:天井面、13:第2壁部、20:電線接続部、
21:芯線圧着部、22:被覆圧着部、23:中間部、30:連結部
CE:天井壁部、LP:係止部、SP:端子挿入空間