(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100333
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】超音波接合装置及び端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 43/02 20060101AFI20240719BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20240719BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20240719BHJP
H01R 4/62 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
H01R43/02 B
H01R43/048 Z
H01R4/18 A
H01R4/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004266
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 泰徳
【テーマコード(参考)】
5E051
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E051LA04
5E051LA06
5E051LB03
5E063CC05
5E085BB03
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085EE09
5E085FF01
5E085HH11
5E085JJ03
(57)【要約】
【課題】単線化部の角部に位置する素線同士の接合度合いを向上することができる超音波接合装置及び端子付き電線を提供する。
【解決手段】超音波接合装置4は、電線2の芯線露出部12に単線化部13を形成する加工装置100を備える。加工装置100は、芯線露出部12を高さ方向Zに挟持して当該芯線露出部12に超音波振動を加えて芯線同士を接合させる加圧部材112及び加振部材113を備える。加圧部材112は、芯線露出部12を高さ方向Zの加振部材側に加圧する加圧面120を有する。加振部材113は、加圧部材112及び加振部材113が芯線露出部12を高さ方向Zに挟持した挟持状態で芯線露出部12に対して超音波振動を加える加振面130を有する。加振面130は、挟持状態で芯線露出部12側に向けて突出し、かつ軸線方向Xに延在して形成される突起部131を有する。突起部131は、芯線露出部12側に向けて先細り形状を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線の当該芯線露出部に対して、複数の前記素線を固めて単線化部を形成する加工装置を備え、
前記加工装置は、
前記軸線方向と直交する幅方向に対向して配置され、前記芯線露出部を前記幅方向に挟持する一対の保持部材と、
前記軸線方向及び前記幅方向と直交する高さ方向に対向して配置され、前記芯線露出部を前記高さ方向に挟持して当該芯線露出部に超音波振動を加えて前記芯線同士を接合させる加圧部材及び加振部材とを備え、
前記加圧部材は、
当該加圧部材及び前記加振部材が前記芯線露出部を前記高さ方向に挟持した挟持状態で前記芯線露出部を前記高さ方向の前記加振部材側に加圧する加圧面を有し、
前記加振部材は、
前記挟持状態で前記芯線露出部に対して前記超音波振動を加える加振面を有し、
前記加圧面及び前記加振面の少なくとも一方は、
前記挟持状態で前記芯線露出部側に向けて突出し、かつ前記軸線方向に延在して形成される少なくとも1つの突起部を有し、
前記突起部は、
前記芯線露出部側に向けて先細り形状を有する
ことを特徴とする超音波接合装置。
【請求項2】
前記加圧面及び前記加振面の前記一方は、
前記突起部が形成された領域と異なる領域に前記軸線方向に沿って凹凸状に形成された凹凸領域を有し、
前記突起部は、
前記凹凸領域における凸部より相対的に大きい
請求項1に記載の超音波接合装置。
【請求項3】
前記突起部は、
前記軸線方向と直交する方向の断面形状における前記芯線露出部側の頂点の角度が鈍角に形成される
請求項1または2に記載の超音波接合装置。
【請求項4】
軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線と、
前記芯線露出部に対して圧着される芯線圧着部を有する圧着端子と、を備え、
前記芯線露出部は、
複数の前記素線を固めて単線化され、かつ前記軸線方向と直交する方向の断面形状が矩形に形成され、前記芯線圧着部が圧着される単線化部を有し、
前記単線化部は、
前記軸線方向と直交する幅方向の両側に形成される一対の側面と、
前記軸線方向及び前記幅方向と直交する高さ方向の両側に形成される天面及び底面と、を有し、
前記天面及び底面の少なくとも一方は、
前記単線化部内側に向けて窪み、かつ前記軸線方向に延在して形成される少なくとも1つの窪み部を有し、
前記窪み部は、
前記単線化部内側に向けて先細り形状を有する
ことを特徴とする端子付き電線。
【請求項5】
前記天面及び前記底面の前記一方は、
前記窪み部が形成された領域と異なる領域に前記軸線方向に沿って凹凸状に形成された凹凸領域を有し、
前記窪み部は、
前記凹凸領域における凹部より相対的に大きい
請求項4に記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記窪み部は、
前記軸線方向と直交する方向の断面形状における前記単線化内側の頂点の角度が鈍角に形成される
請求項4または5に記載の端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波接合装置及び端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
端子付き電線は、例えば、複数の素線で構成される芯線が絶縁被覆で覆われた電線の端末を露出させた芯線露出部に対して、圧着端子の電線圧着部を圧着するものが知られている。例えば、アルミニウム製の素線を束ねた芯線を有する電線に圧着端子を圧着する場合、当該素線の表層に形成された酸化膜を効率的に破壊して素線同士の導通性能を確保すべく、端子の圧着前に芯線を超音波接合して単線化する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電線の芯線露出部において、複数の素線同士を固めて断面が矩形状の単線化部を形成する場合、単線化部の角部に位置する素線同士の接合度合いが不十分となるおそれがあることから、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、単線化部の角部に位置する素線同士の接合度合いを向上することができる超音波接合装置及び端子付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る超音波接合装置は、軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線の当該芯線露出部に対して、複数の前記素線を固めて単線化部を形成する加工装置を備え、前記加工装置は、前記軸線方向と直交する幅方向に対向して配置され、前記芯線露出部を前記幅方向に挟持する一対の保持部材と、前記軸線方向及び前記幅方向と直交する高さ方向に対向して配置され、前記芯線露出部を前記高さ方向に挟持して当該芯線露出部に超音波振動を加えて前記芯線同士を接合させる加圧部材及び加振部材とを備え、前記加圧部材は、当該加圧部材及び前記加振部材が前記芯線露出部を前記高さ方向に挟持した挟持状態で前記芯線露出部を前記高さ方向の前記加振部材側に加圧する加圧面を有し、前記加振部材は、前記挟持状態で前記芯線露出部に対して前記超音波振動を加える加振面を有し、前記加圧面及び前記加振面の少なくとも一方は、前記挟持状態で前記芯線露出部側に向けて突出し、かつ前記軸線方向に延在して形成される少なくとも1つの突起部を有し、前記突起部は、前記芯線露出部側に向けて先細り形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る超音波接合装置及び端子付き電線によれば、単線化部の角部に位置する素線同士の接合度合いを向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る端子付き電線の主要部を模式的に表した図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る端子付き電線を構成する電線を模式的に表した図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す電線の加工装置の主要部を模式的に表した図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す加工装置に加工された状態の芯線を模式的に表した図である。
【
図5】
図5は、単線化部及び加振部材の特徴部分を幅方向から視て模式的に表した図である。
【
図6】
図6は、実施形態の第1変形例における単線化部及び加振部材の特徴部分を軸線方向から視て模式的に表した図である。
【
図7】
図7は、実施形態の第2変形例における単線化部及び加振部材の特徴部分を軸線方向から視て模式的に表した図である。
【
図8】
図8は、実施形態の第3変形例における単線化部及び加振部材の特徴部分を軸線方向から視て模式的に表した図である。
【
図9】
図9は、実施形態の第4変形例における単線化部及び加振部材の特徴部分を幅方向から視て模式的に表した図である。
【
図10】
図10は、実施形態の第5変形例における単線化部及び加振部材の特徴部分を幅方向から視て模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。すなわち、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0010】
[実施形態]
まず、本実施形態の端子付き電線1について
図1~
図2を参照して説明する。なお、
図1は、電線2に対して、後述する圧着端子3が圧着された状態を示す図であり、当該圧着端子3の一部が省略されている。
図2は、圧着端子3が圧着される前に単線化された電線2の芯線露出部12を示す図である。
【0011】
なお、以下の説明において、
図1~
図10のX方向、Y方向、及び、Z方向のうち、X方向を「軸線方向X」といい、Y方向を「幅方向Y」といい、Z方向を「高さ方向Z」という。軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に直交する。軸線方向Xは、圧着端子3が設けられる電線2の軸線Oに沿う方向、当該電線2が延在する延在方向、圧着端子3と相手端子(不図示)との挿抜方向等に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、軸線方向Xと直交する方向に含まれる。なお、高さ方向Zは、一方を「上側Z1」、他方を「下側Z2」という。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
【0012】
端子付き電線1は、車両に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線2を束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線2を各装置に接続するようにしたものである。
【0013】
端子付き電線1は、
図1に示すように、電線2と、当該電線2の端末に圧着され導通接続される圧着端子3とを備える。
【0014】
電線2は、車両に配索され、各装置を電気的に接続するものである。電線2は、
図2に示すように、導電性を有する線状の芯線10と、当該芯線10の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆20とを含んで構成される。電線2は、絶縁被覆20によって芯線10を被覆した絶縁電線である。
【0015】
芯線10は、導電性を有する金属製の素線11を複数束ねた芯線である。芯線10は、導電性の金属、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の素線11を複数束ねたものであるが、当該複数の素線11を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆20は、芯線10の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆20は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)、架橋PE(ポリエチレン)等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0016】
電線2は、軸線Oに沿って線状に延在し、延在方向(軸線方向X)に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。電線2は、全体として略円形状の断面形状に形成される。電線2は、芯線10の断面形状(軸線方向Xと交差する方向の断面形状)が略円形状となり、絶縁被覆20の断面形状が周方向に沿った略円環形状となっている。電線2は、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆20が剥ぎ取られており、芯線10が絶縁被覆20の端末から露出して芯線露出部12が形成されている。電線2は、絶縁被覆20の端末の近傍、及び、絶縁被覆20の端末から露出している芯線露出部12に圧着端子3が設けられる。
【0017】
芯線露出部12は、
図2に示すように、複数の素線11を固めて単線化された単線化部13を有する。
【0018】
単線化部13は、例えば、後述する電線2の加工装置100により芯線露出部12の軸線方向Xの先端側を機械的に変形させた部分である。単線化部13は、後述する圧着端子3の芯線圧着部30が圧着される。単線化部13は、当該単線化部13の軸線方向Xの先端側に形成された端面14と、単線化部13の軸線方向X周りに沿う周方向に形成された外周面を構成する天面15、底面16、一対の側面17,17とを有する。
【0019】
端面14は、軸線方向Xと直交する方向に略平坦に形成され、かつ軸線方向Xから視た形状が矩形に形成されている。
【0020】
天面15は、単線化部13の高さ方向Zの上側Z1に形成され、高さ方向Zから視た形状が矩形に形成されている。天面15と一対の側面17,17との間には、単線化部13に形成される4つの角部19のうち角部19Bがそれぞれ形成される。天面15は、軸線方向Xに沿って凹凸状に形成された凹凸領域15aを有する。凹凸領域15aにおける凹凸は、後述する加工装置100の加圧部材112により形成される。
【0021】
底面16は、単線化部13の高さ方向Zの下側Z2に形成され、高さ方向Zから視た形状が矩形に形成されている。底面16と一対の側面17,17との間には、単線化部13に形成される4つの角部19のうち角部19Aがそれぞれ形成される。底面16は、軸線方向Xに延在しかつ幅方向Yの略中央に形成された第1領域16aと、第1領域16aと異なる領域に形成され、軸線方向Xに沿って凹凸状に形成された第2領域16bとを有する。第2領域16bに形成される凹凸は、高さ(深さ)及び間隔において、略均等に形成されている。
【0022】
第1領域16aは、単線化部13内側に向けて窪み、かつ軸線方向Xに延在して形成される窪み部41を有する。
【0023】
本実施形態の窪み部41は、軸線方向Xから視た断面形状が矩形状ではなく、単線化部13内側に向けて先細り形状となっている。窪み部41は、凹凸状に形成された第2領域16bにおける凹部16cより相対的に大きい。具体的には、窪み部41は、軸線方向Xと直交する方向の断面形状における単線化部13内側の頂点42が、最も単線化部13内側に位置する場合において、凹部16cの単線化部13内側の頂点より深く形成されている。窪み部41は、当該窪み部41の軸線方向Xと直交する方向の断面形状が、頂点42を通って高さ方向Zに沿う仮想線(不図示)を中心に幅方向Yに対称に形成される。また、窪み部41は、頂点42を挟んで幅方向Yの両側に形成された一対の傾斜面43が、凹部16cの傾斜面より幅方向Yに幅広に形成されている。第1領域16aに形成される窪み部41は、後述する加工装置100の加振部材113により形成される。
【0024】
圧着端子3は、電線2が電気的に接続され、導電性を有する相手端子が接続される端子金具である。圧着端子3は、
図1に示すように、芯線圧着部30と、電気接続部33と、被覆圧着部34とを備える。芯線圧着部30と電気接続部33と被覆圧着部34とは、全体が一体で導電性を有する金属部材によって構成される。例えば、圧着端子3は、一枚の板金を、芯線圧着部30、電気接続部33、被覆圧着部34等の各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで各部が立体的に一体で形成される。圧着端子3は、軸線方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、電気接続部33、芯線圧着部30、被覆圧着部34の順で並んで相互に連結される。
【0025】
芯線圧着部30は、芯線露出部12における単線化部13に圧着されることで、電線2と圧着端子3とを電気的に接続する部分である。芯線圧着部30は、基部31と、一対のバレル片32,32とを有する。基部31は、芯線圧着部30が、単線化部13に圧着された圧着状態において、軸線方向Xに沿って延在する部分である。一対のバレル片32,32は、基部31から周方向の両側にそれぞれ延在し、かつ上記圧着状態で、軸線方向Xと直交する方向に沿って単線化部13を挟んで基部31に対向して位置する部分である。一対のバレル片32,32は、幅方向Yに対向して設けられる。芯線圧着部30は、基部31と一対のバレル片32,32とによって電線2の芯線10に対して加締められ圧着される。
【0026】
電気接続部33は、相手端子と電気的に接続される部分である。なお、
図1の電気接続部33は、一部が省略されている。電気接続部33は、雌型の端子形状であるが、雄型の端子形状であってもよい。電気接続部33は、雌型の端子形状である場合、雄型の端子形状の相手端子と電気的に接続される。なお、電気接続部33は、相手端子に限らず、アース部材等の種々の導電性の部材と電気的に接続される構成であってもよい。この場合、電気接続部33は、例えばアース部材等に締結されるいわゆる丸形端子(LA端子)形状であってもよい。
【0027】
被覆圧着部34は、絶縁被覆20の端部に圧着されることで、電線2に対して圧着端子3を固定する部分である。被覆圧着部34は、基部31の一部、及び、一対のバレル片32,32によって構成される。
【0028】
次に、上記のように構成される電線2を製造する超音波接合装置4について
図3~
図5を参照しつつ、適宜他図を参照して説明する。
【0029】
本実施形態の超音波接合装置4は、電線2の芯線露出部12に対して加工処理を行う加工装置100を備える。なお、
図3は、芯線露出部12を加工装置100に投入し、当該芯線露出部12を単線化する前の状態を、電線2の軸線方向Xの先端側から視た図である。
図4は、加工装置100により単線化されつつある芯線露出部12を、軸線方向Xから視た断面として模式的に表した図である。
図5は、単線化部13及び加振部材113の特徴部分を幅方向Yから視て模式的に表した図である。
【0030】
加工装置100は、電線2に対して圧着端子3を圧着する前に、当該電線2の芯線露出部12を構成する複数の素線11を固めて単線化部13を形成するものである。本実施形態の加工装置100は、一対の保持部材110,110、加圧部材112、加振部材113を有し、これらによって単線化部13が形成される。一対の保持部材110,110、加圧部材112、及び加振部材113は、軸線方向Xと直交し、かつ互いに直交する2方向それぞれに対向して配置されている。具体的には、一対の保持部材110,110は、幅方向Yに対向して配置され、加圧部材112と加振部材113は、高さ方向Zに対向して配置される。加工装置100は、一対の保持部材110,110、加圧部材112、及び加振部材113が
図3に示すように配置されることで、内側に芯線露出部12を収容するための芯線収容空間114を形成する。
【0031】
一対の保持部材110,110は、芯線露出部12を幅方向Yに挟持するものである。一対の保持部材110は、幅方向Yにおいて芯線露出部12の外径に応じて一定の間隔を開けて配置され、
図4に示すように、単線化部13の形成時において当該単線化部13の側面17,17を形成する。
【0032】
加圧部材112及び加振部材113は、芯線露出部12を高さ方向Zに挟持して当該芯線露出部12に超音波振動を加えて芯線同士を接合させるものである。
【0033】
加圧部材112は、当該加圧部材112及び加振部材113が芯線露出部12を高さ方向Zに挟持した挟持状態で芯線露出部12を高さ方向Zの加振部材側に加圧する加圧面120を有する。加圧面120は、単線化部13の天面15に形成される凹凸領域15aの凹凸に対応する凹凸領域120aを有する。
【0034】
加振部材113は、
図5に示すように、上記挟持状態で芯線露出部12に対して超音波振動を加える加振面130を有する。加振面130は、上記挟持状態で芯線露出部12側に向けて突出し、かつ軸線方向Xに延在して形成される突起部131と、突起部131が形成された第1領域130aと異なる領域に軸線方向Xに沿って凹凸状に形成された第2領域130bとを有する。
【0035】
突起部131は、単線化部13の底面16に形成される第1領域16aの窪み部41に対応するものである。突起部131は、軸線方向Xから視た断面形状が矩形状ではなく、芯線露出部12側に向けて先細り形状を有する。突起部131は、凹凸状に形成された第2領域130bにおける凸部130cより相対的に大きい。具体的には、突起部131は、軸線方向Xと直交する方向の断面形状における芯線露出部12側の頂点132が、最も芯線露出部12側に位置する場合において、凸部130cの芯線露出部12側の頂点より高く形成されている。突起部131は、当該突起部131の軸線方向Xと直交する方向の断面形状が、頂点132を通って高さ方向Zに沿う仮想線(不図示)を中心に幅方向Yに対称に形成される。また、突起部131は、頂点132を挟んで幅方向Yの両側に形成された一対の傾斜面133が、凸部130cの傾斜面より幅広に形成されている。
【0036】
加圧部材112及び加振部材113は、芯線露出部12の素線11同士を超音波接合して単線化する超音波接合治具を構成する。ここで、超音波接合とは、上記挟持状態において、超音波接合装置4の振動子を構成するホーンとしての加振部材113によって接続対象に対して超音波振動を付加し、当該付加された超音波振動を用いて行われる金属間接合である。この場合、接続対象である芯線露出部12の複数の素線11は、当該芯線露出部12が、受け治具を構成するアンビルとしての加圧部材112と加振部材113によって挟持され、かつ一対の保持部材110,110によって挟持される。
【0037】
本実施形態の端子付き電線1の製造方法は、例えば、加工工程と、圧着工程とを含むものである。
【0038】
まず、加工工程では、加工装置100により、芯線露出部12において複数の素線11を固めて単線化部13を形成する。なお、電線2は、この加工工程の前に、不図示の皮剥き装置により電線2の一端において、絶縁被覆20が剥ぎ取られ、芯線10の外周面が露出され、芯線露出部12が形成されているものとする。具体的に、加工工程では、加工装置100は、
図3に示すように、芯線収容空間114に収容された芯線露出部12に対して、加圧部材112を加振部材113側に向けて移動させながら加圧する。加工装置は、芯線露出部12の断面形状が円形から矩形に加圧変形された状態で、加圧部材112及び加振部材113を用いて超音波接合を行う。加工装置100は、芯線露出部12に対して加振部材113により超音波振動が付加される。この結果、電線2は、芯線露出部12を構成する素線11同士が超音波振動によって互いに擦れ合うことで塑性変形が生じ、固相状態で接合され、単線化部13が形成される。
【0039】
次に、圧着工程では、単線化部13に芯線圧着部30を圧着させると共に、絶縁被覆20の端末の近傍に被覆圧着部34を圧着させる。この圧着工程では、電線2が配置された芯線圧着部30及び被覆圧着部34を、高さ方向Zに対向する一対の加工治具(不図示)を用いて加工する。一対の加工治具が、芯線圧着部30及び被覆圧着部34を高さ方向Zの両側から挟み込むように加圧することで、電線2に対して圧着端子3が圧着される。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る超音波接合装置4は、電線2の芯線露出部12に単線化部13を形成する加工装置100を備える。加工装置100は、芯線露出部12を高さ方向Zに挟持して当該芯線露出部12に超音波振動を加えて芯線同士を接合させる加圧部材112及び加振部材113を備える。加圧部材112は、芯線露出部12を高さ方向Zの加振部材側に加圧する加圧面120を有する。加振部材113は、加圧部材112及び加振部材113が芯線露出部12を高さ方向Zに挟持した挟持状態で芯線露出部12に対して超音波振動を加える加振面130を有する。加振面130は、挟持状態で芯線露出部12側に向けて突出し、かつ軸線方向Xに延在して形成される突起部131を有する。突起部131は、芯線露出部12側に向けて先細り形状を有する。
【0041】
従来の電線2の加工装置では、芯線露出部12を単線化した場合、芯線10の断面形状が円形から矩形に変形する。この場合、単線化部の断面において、例えば、幅方向Yにおける中央と、その両側の角部とでは、素線同士の密着度合いが異なる。従来の単線化部における素線同士の密着度合いは、中央側に位置する部分に対して角部側に位置する部分が相対的に粗状態になる。
【0042】
そこで、本実施形態に係る加工装置100は、上記構成により、突起部131により単線化部13の中央側に位置する部分が加圧されることで、素線11が各角部側に流れ込み、角部側に位置する部分が相対的に粗状態から密状態に遷移する。また、単線化部13の中央側に位置する部分は、突起部131により加圧されることで、角部側に位置する部分が密状態に遷移しても、密状態が維持される。この結果、加工装置100は、単線化部の角部に位置する素線同士の接合度合いを向上することができると共に、単線化部13全体の素線同士の接合度合いを略均一にすることができる。
【0043】
また、加工装置100は、突起部131が、第2領域130bにおける凸部130cより相対的に大きい。これにより、加工装置100は、突起部131により単線化部13の中央側に位置する部分が加圧されることで、素線11が各角部側に流れ込む度合いを、凸部130cにより制限させないようにすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る端子付き電線1は、単線化部13における底面16が、単線化部13内側に向けて窪み、かつ軸線方向Xに延在して形成される窪み部41を有する。この窪み部41は、単線化部13内側に向けて先細り形状を有する。
【0045】
端子付き電線1は、上記構成により、窪み部41が形成されていない従来の単線化部と比較して、単線化部13の各角部19Aに位置する素線同士の接合度合いを向上することができる。また、窪み部41は、単線化部13内側に向けて先細り形状を有するので、例えば、断面形状が矩形状のものと比較して、単線化部13の中央側に位置する部分から各角部側への素線11の流れを緩やかにすることができる。
【0046】
また、端子付き電線1は、窪み部41が、第2領域16bにおける凹部16cより相対的に大きい。これにより、端子付き電線1は、単線化部13に窪み部41が形成されることで、単線化部13の中央側に位置する部分から各角部側への素線11の流れを、凹部16cにより制限させないようにすることができる。
【0047】
次に、上記実施形態の変形例について
図6~
図10を参照して説明する。
【0048】
図6に示す実施形態の第1変形例に係る加工装置100は、突起部131Aが、軸線方向Xと直交する方向の断面形状における芯線露出部12側の頂点132の角度が鈍角に形成される。これにより、加工装置100は、突起部131Aの頂点132の角度が鋭角に形成されるものとの相対的な比較において、素線11を中央部分から離間している角部側に流れやすくすることが可能となる。
【0049】
また、実施形態の第1変形例に係る端子付き電線1は、窪み部41Aが、軸線方向Xと直交する方向の断面形状における単線化内側の頂点42の角度が鈍角に形成されていてもよい。これにより、端子付き電線1は、窪み部41Aの頂点42の角度が鋭角に形成されるものとの相対的な比較において、素線11が中央部分から離間している角部側に流れやすくなる。
【0050】
図7に示す実施形態の第2変形例に係る加工装置100は、突起部131Bが、加振面130において幅方向Yに2つ形成されている。各突起部131Bは、上述した突起部131と同一である。これにより、加工装置100は、突起部131が1つ形成されたものと比較して、素線11を中央部分から離間している角部側に流れやすくすることが可能となる。
【0051】
図7に示す実施形態の第2変形例に係る端子付き電線1は、窪み部41Bが、底面16において幅方向Yに2つ形成されている。各窪み部41Bは、上述した窪み部41と同一である。これにより、端子付き電線1は、窪み部41が1つ形成されたものと比較して、素線11を中央部分から離間している角部側に流れやすくすることが可能となる。
【0052】
図8に示す実際形態の第3変形例に係る加工装置100は、突起部131Cが、加振面130において幅方向Yに2つ形成され、かつ各突起部131Cの軸線方向Xと直交する方向の断面形状が、頂点132を通って高さ方向Zに沿う仮想線Pを中心に幅方向Yに非対称に形成される。各突起部131Cは、頂点132を挟んで幅方向Yの両側に形成された一対の傾斜面133C,133Cを有する。一対の傾斜面133C,133Cのうち、一方が他方より幅方向Yにおいて相対的に長く形成されている。具体的には、各突起部131Cは、外側の傾斜面133Cが、中央側の傾斜面133Cより幅方向Yにおいて相対的に長く、かつ傾斜度合いが緩やかに形成されている。これにより、加工装置100は、
図7に示す突起部131Bが仮想線を中心に幅方向Yに対称に形成されたものと比較して、単線化部13が突起部131Cにより加圧されたときに、素線11を中央部分から角部側に徐々に流れやすくすることが可能となる。
【0053】
図8に示す実際形態の第3変形例に係る端子付き電線1は、窪み部41Cが、底面16において幅方向Yに2つ形成され、かつ各窪み部41Cの軸線方向Xと直交する方向の断面形状が、頂点42を通って高さ方向Zに沿う仮想線Pを中心に幅方向Yに非対称に形成される。各窪み部41Cは、頂点42を挟んで幅方向Yの両側に形成された一対の傾斜面43C,43Cを有する。一対の傾斜面43C,43Cのうち、一方が他方より幅方向Yにおいて相対的に長く形成されている。具体的には、各窪み部41Cは、角部19B側の傾斜面43Cが、中央側の傾斜面43Cより幅方向Yにおいて相対的に長く、かつ傾斜度合いが緩やかに形成されている。これにより、端子付き電線1は、
図7に示す窪み部41Bが仮想線を中心に幅方向Yに対称に形成されたものと比較して、単線化部13が突起部131Cにより加圧されたときに、素線11を中央部分から角部側に徐々に流れやすくすることが可能となる。
【0054】
また、
図8に示す実際形態に係る加工装置100は、突起部131が、第1領域130aの軸線方向Xの全面に形成されるが、これに限定されるものではない。例えば、実施形態の第4変形例として、
図9に示すように、突起部131Dが第1領域130aの軸線方向Xの一部に形成されていてもよい。図示の突起部131Dは、
図5に示す突起部131に対して相対的に短く、軸線方向Xの略中央に形成されている。また、実施形態の第5変形例として、
図10の示すように、突起部131Eは、第1領域130aの軸線方向Xにおいて2つ形成されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態及び変形例では、加工装置100は、突起部131が加振部材113に形成されているが、これに限定されず、突起部131が加圧部材112に形成されていてもよい。または、突起部131が、加圧部材112及び加振部材113の両方に形成されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態及び変形例では、端子付き電線1は、窪み部41が単線化部13の底面16に形成されているが、これに限定されず、窪み部41が天面15に形成されていてもよい。または、窪み部41が、天面15及び底面16の両方に形成されていてもよい。
【0057】
上記実施形態及び変形例では、素線11は、アルミニウム、アルミニウム合金等で構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、銅、銅合金等で構成されていてもよい。芯線10は、複数の素線11の撚線であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 端子付き電線
2 電線
3 圧着端子
4 超音波接合装置
100 加工装置
110 保持部材
112 加圧部材
113 加振部材
130 加振面
131 突起部
132 頂点
133 傾斜面