(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100336
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004269
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 悟己
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義直
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE07
5E087FF02
5E087FF12
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM05
5E087MM09
5E087QQ04
5E087RR12
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】接続対象物との接続を円滑に行うことができるコネクタを提供する。
【解決手段】
コネクタ1は、接続対象物90に接続される端子4を保持し、接続対象物90との接続方向Xへ向けて突出し接続対象物90に形成される嵌合孔91に対し挿入される嵌合部21を有するハウジング2と、嵌合部21の外周に取り付けられ嵌合孔91の内面91Aと接触しハウジング2と接続対象物90との間の止水を行うシール部材3と、を備え、ハウジング2は、嵌合部21の基部側から延びシール部材3の端部30Cと当接する当接部22を形成し、当接部22は、嵌合部21の外周から離間して形成され嵌合部21の外周との対向面22Bと先端面22Aとの角部分が面取り形状とされ、シール部材3は、外周から突出する第三リップ33を有し、第三リップ33と端部30Cとの間に接続方向Xに沿って平坦に延びる平坦部35が形成されるように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物に接続される端子を保持し、前記接続対象物との接続方向へ向けて突出し前記接続対象物に形成される嵌合孔に対し挿入される嵌合部を有するハウジングと、
前記嵌合部の外周に取り付けられ、前記嵌合孔の内面と接触し、前記ハウジングと前記接続対象物との間の止水を行うシール部材と、を備え、
前記ハウジングは、前記嵌合部の基部側から延び前記シール部材の端部と当接する当接部を形成し、
前記当接部は、前記嵌合部の外周から離間して形成され、前記嵌合部の外周との対向面と先端面との角部分が面取り形状とされ、
前記シール部材は、外周から突出するリップを有し、前記リップと前記端部との間の外周面において前記接続方向に沿って平坦に延びる平坦部が形成されている、
コネクタ。
【請求項2】
前記嵌合孔の前記内面は、防錆のための表面処理が行われている、
請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタとして、例えば、特許文献1に記載されるように、ハウジングに対し環状のシール部材(止水部材)が取り付けられ、シール部材によってハウジングと接続対象物(相手方機器)の間の止水を行うものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなコネクタでは、接続対象物との接続が困難となる場合があるという点で改善の余地がある。例えば、コネクタの接続対象物への接続は、シール部材を接続対象物の嵌合部分に対し接触させ移動させながら行われる。このとき、シール部材と嵌合部分の間の摩擦係数が高い場合など、コネクタの接続において大きな挿入力が必要となり、コネクタと接続対象物の接続が円滑に行えない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、接続対象物との接続が円滑に行えるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係るコネクタは、接続対象物に接続される端子を保持し、前記接続対象物との接続方向へ向けて突出し前記接続対象物に形成される嵌合孔に対し挿入される嵌合部を有するハウジングと、前記嵌合部の外周に取り付けられ、前記嵌合孔の内面と接触し、前記ハウジングと前記接続対象物との間の止水を行うシール部材と、を備え、前記ハウジングは、前記嵌合部の基部側から延び前記シール部材の端部と当接する当接部を形成し、前記当接部は、前記嵌合部の外周から離間して形成され、前記嵌合部の外周との対向面と先端面との角部分が面取り形状とされ、前記シール部材は、外周から突出するリップを有し、前記リップと前記端部との間の前記外周面において前記接続方向に沿って平坦に延びる平坦部が形成されるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタによれば、接続対象物との接続を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るコネクタを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-IIIにおけるコネクタのシール部材の断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るコネクタの接続時の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るコネクタの接続時の説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るコネクタにおける接続時の挿入位置に対する挿入力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
本実施形態は、コネクタに関する。
図1は、実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
図2は、実施形態に係るコネクタを示す分解斜視図である。
図3は、
図1のIII-IIIにおけるコネクタのシール部材の断面図である。
図4は、実施形態に係るコネクタの接続時の説明図である。
図5は、実施形態に係るコネクタの接続時の説明図である。
図6は、比較例の説明図である。
図7は、実施形態に係るコネクタにおける接続時の挿入位置に対する挿入力を示すグラフである。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「接続方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、接続方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に直交する。接続方向Xは、コネクタと接続対象物の接続方向及び接続対象物に対するコネクタの嵌合部の挿入方向に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、接続方向Xと交差する交差方向に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。なお、ここでいう直交は、ほぼ直交を含む。
【0012】
図1に示すように、コネクタ1は、接続対象物90との接続に用いられるするため接続部品であり、ハウジング2及びシール部材3を備えている。コネクタ1は、例えば、車両に搭載されて用いられる。
【0013】
ハウジング2は、接続対象物90に接続するための端子4を保持する部材であり、接続対象物90に形成される嵌合孔91に対し挿入される嵌合部21を有している。ハウジング2は、例えば、幅方向Yに並べられた二つの端子4を保持しており、嵌合部21の先端面21Aから接続方向Xへ向けて端子4を延出させている。端子4は、ハウジング2内で電線Wに取り付けられている。嵌合部21は、接続方向Xに沿って接続対象物90側へ延び出た部位であり、嵌合孔91の形状に合わせて形成され、例えば、幅方向Yに長い断面形状であって、楕円又は長円の断面形状とされる。
【0014】
接続対象物90は、コネクタ1に接続される機器であり、例えば、電気機器及び電源装置などが該当する。また、接続対象物90は、電気機器及び電源装置などに取り付けられる相手方コネクタであってもよい。なお、
図1は、説明の便宜上、接続対象物90の外壁の一部を直方体として示している。嵌合孔91は、端子4及び嵌合部21を挿入させるための孔であり、例えば、接続方向Xに交差する方向の断面を楕円又は長円の形状とされる。
【0015】
例えば、嵌合孔91の内面91Aは、防錆のための表面処理が行われていてもよい。具体的には、接続対象物90において、嵌合孔91を形成する部分がアルミニウムを主成分とする金属により形成される場合、嵌合孔91の内面91Aは、アルマイト処理が行われていてもよい。アルマイト処理は、内面91Aに酸化被膜を形成する処理である。この場合、嵌合孔91が錆びにくくなり、コネクタ1の接続状態は、良好に維持される。しかしながら、アルマイト処理によって内面91Aの表面粗さが大きくなり、内面91Aの表面が粗くなる。これにより、嵌合孔91とシール部材3との摺動性が悪化し、コネクタ1の接続時の挿入力が増大化することが懸念される。
【0016】
嵌合部21の外周には、シール部材3が取り付けられている。シール部材3は、ハウジング2と接続対象物90との間の止水を行う止水部材又はパッキンであり、環状に形成されている。シール部材3は、弾性変形可能な弾性部材により形成される。シール部材3の詳細については、後述する。
【0017】
図2に示すように、コネクタ1は、フロントホルダ5、シールドシェル6及びリアホルダ7を備えている。フロントホルダ5は、シール部材3を保持する保持部材であって、端子4を挿通させる挿通孔51を形成している。挿通孔51は、端子4の設置数に応じて形成され、例えば、二つ形成される。フロントホルダ5は、嵌合部21の先端位置に取り付けられ、シール部材3が嵌合部21から抜け外れることを防止している。シールドシェル6は、ハウジング2を覆うカバー部材又はケース部材であり、嵌合部21以外のハウジング2の外周部分を覆っている。シールドシェル6は、例えば、金属により形成され、電磁シールドとして機能する。シールドシェル6は、フランジ部61を形成している。フランジ部61は、接続方向Xと交差する方向に延びる板状の部位であり、接続対象物90との締結に用いられる締結孔61Aを形成している。リアホルダ7は、ハウジング2の後部に取り付けられる部材であって、電線Wに取り付けられるパッキン(図示なし)を保持している。
【0018】
図3に示すように、シール部材3は、嵌合部21の外周に取り付けられている。
図3のシール部材3は、嵌合部21が接続対象物90に挿入される前の状態である。シール部材3は、外周から突出するリップを形成している。例えば、接続方向Xに沿って第一リップ31、第二リップ32及び第三リップ33の三つのリップが形成されている。第一リップ31、第二リップ32及び第三リップ33は、嵌合部21の先端側から第一リップ31、第二リップ32、第三リップ33の順で形成され、コネクタ1の接続対象物90への接続時において接続対象物90に対してこの順番で接触していく。第一リップ31、第二リップ32及び第三リップ33は、シール部材3の外周に沿って並んで形成され、例えば、それぞれ接続方向Xに沿った断面において断面山型に形成される。
【0019】
第一リップ31、第二リップ32及び第三リップ33は、シール部材3の本体部30に形成され、本体部30の外周面30Aに突設されている。本体部30は、シール部材3の本体部分であり、断面矩形とした筒状を呈している。本体部30の内周面30Bには内周リップ34が形成され、嵌合部21の外周面21Bに接触している。内周リップ34は、第一リップ31、第二リップ32及び第三リップ33に対応する内側の位置に形成され、例えば三つ形成される。
【0020】
本体部30の外周面30Aには、平坦部35が形成されている。平坦部35は、第三リップ33と本体部30の端部30Cの間に形成されている。平坦部35は、外周面30Aにおいて接続方向Xに沿って平坦に延びる領域であり、第三リップ33が接続対象物90に接触して変形する際に第三リップ33の逃げるための空間を形成するための部位である。平坦部35は、例えば、接続方向Xに沿った断面において表面を直線状として形成される。また、平坦部35は、表面をほぼ平坦とした領域であってもよく、例えば、第三リップ33の変形及びコネクタ1の挿入力に大きく影響しない程度の凹凸があってもよい。平坦部35の接続方向Xの形成長は、例えば、隣接する第三リップ33の半分の長さとされる。コネクタ1は、第三リップ33と端部30Cの間に平坦部35が形成されることによって、第三リップ33が端部30Cと離間され、接続対象物90への接続時において第三リップ33の端部30C側への変形が許容され、コネクタ1の挿入力の低減が図られる。また、平坦部35の接続方向Xの形成長を隣接する第三リップ33の半分の長さ程度とすることにより、コネクタ1は、第三リップ33の変形を許容しつつ、シール部材3が接続方向Xにおいて長くなりすぎることを抑制することができる。なお、ここでいう半分の長さには、ほぼ半分の長さを含む。
【0021】
本体部30の端部30Cは、当接部22と当接している。当接部22は、ハウジング2に形成される部位であり、嵌合部21の基部21C側から先端面21A側へ延びており、本体部30の端部30Cに当接している。当接部22は、嵌合部21の径方向(
図3では、高さ方向Z)において、嵌合部21から離間して形成され、例えば、嵌合部21の外周を囲うように筒状に形成される。当接部22の先端面22Aは、本体部30の基端側の端部30Cと当接しており、接続対象物90の接触時にシール部材3が接続方向Xへ移動することを規制する。
【0022】
当接部22と嵌合部21の間には、逃げ空間23が形成されている。すなわち、当接部22における嵌合部21と対向する対向面22Bと嵌合部21の外周面21Bの間は、空隙となっており、シール部材3の変形時の逃げ空間23として機能する。つまり、シール部材3が接続対象物90と接触して押圧される場合、本体部30又は第三リップ33などの変形部分が逃げ空間23へ入り込み、シール部材3が強く圧縮されることが抑制される。
【0023】
当接部22の対向面22Bと先端面22Aとの角部分が面取り形状とされ、その角部分にテーパ面22Cが形成されている。テーパ面22Cは、接続方向Xに対し傾斜した面とされ、シール部材3の変形部分を逃げ空間23へ導くための面となっている。すなわち、シール部材3が接続対象物90と接触して押圧される場合、テーパ面22Cが形成されることにより、本体部30又は第三リップ33などの変形部分が逃げ空間23へ入り込みやすくなる。
【0024】
シール部材3には、第一延出部37及び第二延出部38が形成されている。第一延出部37及び第二延出部38は、本体部30から接続方向Xへ延び出ており、シール部材3を支持するための部位として機能する。例えば、第一延出部37は、本体部30から接続対象物90と反対側へ延びており、逃げ空間23内に挿入されて設けられる。このため、第一延出部37が形成されることにより、シール部材3の基端部分が捲れ上がることが抑制される。第二延出部38は、本体部30から接続対象物90側へ延びており、嵌合部21の外周面21Bとフロントホルダ5の間に挿入されて設けられる。このため、第二延出部38が形成されることにより、シール部材3の先端部分が捲れ上がることが抑制される。
【0025】
次に、本実施形態に係るコネクタ1の接続について説明する。
【0026】
図1に示すように、コネクタ1において接続対象物90への接続として、まず、コネクタ1が接続対象物90に対峙して配置される。すなわち、コネクタ1は、接続対象物90の嵌合孔91に対し端子4及び嵌合部21が向けられて配置される。そして、コネクタ1が接続対象物90へ近づけられ、端子4が嵌合孔91へ挿入され、次いで、
図3のように、嵌合部21が嵌合孔91へ挿入される。
【0027】
図4に示すように、嵌合部21が嵌合孔91へ挿入されると、シール部材3が嵌合孔91の内面91Aに接触しながら接続方向Xへ移動していく。具体的には、まず、シール部材3において、第一リップ31が内面91Aに接触する。第一リップ31は、内面91Aに押圧されて山型が潰され第二リップ32側に変形して、内面91Aに密着する。更に、嵌合部21が嵌合孔91へ挿入されていくと、第二リップ32が内面91Aに接触する。第二リップ32は、内面91Aに押圧されて山型が潰され第三リップ33側に変形して、内面91Aに密着する。
【0028】
そして、
図5に示すように、更に、嵌合部21が嵌合孔91の奥へ挿入されていくと、第三リップ33が内面91Aに接触する。第三リップ33は、内面91Aに押圧されて当接部22側へ変形しようとする。このとき、第三リップ33の当接部22側には平坦部35が形成されている。このため、第三リップ33は、当接部22側への変形が許容される。つまり、第三リップは、大きく圧縮されることなく平坦部35側へ変形する。
【0029】
更に、嵌合部21が嵌合孔91の奥へ挿入されると、第三リップ33は、山型が潰されて、当接部22側及び嵌合部21の外周面21B側へ変形する。このとき、当接部22にはテーパ面22Cが形成されている。このため、第三リップ33は、当接部22へ当接しテーパ面22C側へ導かれて変形し、加わる圧力を分散し、大きく圧縮されることが抑制される。従って、本実施形態に係るコネクタ1は、接続対象物90との接続時における挿入力が大きくなることが抑制され、接続対象物90との接続を円滑に行うことができる。そして、嵌合部21の嵌合孔91への挿入を完了したら、コネクタ1の接続対象物90への接続が完了する。
【0030】
図6は、比較例となるコネクタ100を示している。このコネクタ100は、平坦部35を形成していないシール部材103を備えている点で、本実施形態に係るコネクタ1と異なっている。すなわち、シール部材103は、第一リップ31、第二リップ32及び第三リップ33を形成しているが、平坦部35を形成しておらず、第三リップ33が当接部22に当接されている。
【0031】
このコネクタ100は、本実施形態に係るコネクタ1と比べて、接続対象物90への接続における挿入力が大きいものとなる。すなわち、第三リップ33が接続対象物90に接触した際、第三リップ33の変形が規制され、このときの挿入力が大きくなってしまう。
【0032】
図7に、本実施形態に係るコネクタ1と比較例のコネクタ100における接続対象物90への接続時における挿入力を示す。
図7の横軸はコネクタの挿入位置Pであり、縦軸は挿入位置Pにおける挿入力Fである。
図7のF1は本実施形態に係るコネクタ1の挿入力を表し、F100は比較例のコネクタ100の挿入力を表す。
【0033】
図7において、本実施形態に係るコネクタ1、比較例のコネクタ100がそれぞれ接続対象物90へ接続されると、まず、第一リップ31が嵌合孔91の内面91Aに接触する。このときのコネクタ1の挿入力のピーク値FP1とコネクタ100の挿入力のピーク値FP101は、ほぼ同じ大きさとなる。そして、接続対象物90への接続が進み、第二リップ32が内面91Aに接触すると、コネクタ100の挿入力のピーク値FP102は、コネクタ1の挿入力のピーク値FP2よりやや大きくなる。これは、コネクタ100に平坦部35が形成されていないことによって第二リップ32が当接部22側へ変形しにくくなっているためと推測される。
【0034】
そして、更に接続対象物90への接続が進み、第三リップ33が内面91Aに接触すると、コネクタ100の挿入力のピーク値FP103は、コネクタ1の挿入力のピーク値FP3より大きくなる。これは、コネクタ100に平坦部35が形成されていないことによって第三リップ33が当接部22に押し付けられ変形が規制されるためである。ここでは、コネクタ100の挿入力のピーク値FP103は、コネクタ1の挿入力のピーク値FP3の約1.4倍となった。このように、本実施形態に係るコネクタ1は、シール部材3に平坦部35が形成されることにより、比較例のコネクタ100に対し接続対象物90への接続時の挿入力が低減できることを確認することができた。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係るコネクタ1は、当接部22に角部分が面取り形状とされ、シール部材3に平坦部35が形成されることにより、接続対象物90への接続時において、第三リップ33の変形を許容することができる。従って、本実施形態に係るコネクタ1は、接続対象物90への接続時における挿入力が大きくなることが抑制され、接続対象物90との接続を円滑に行うことができる。
【0036】
また、本実施形態に係るコネクタ1は、接続対象物90における嵌合孔91の内面91Aにおいて防錆のための表面処理が行われている場合であっても、接続対象物90に対する挿入力を低減できるため、接続対象物90との接続を円滑に行うことができる。
【0037】
なお、本発明に係るコネクタは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係るコネクタ1は、以上で説明した各実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【0038】
例えば、上述した実施形態に係るコネクタ1では、シール部材3が第一リップ31、第二リップ32及び第三リップ33の三つのリップを有する場合について説明したが、リップ数は一つ又は二つであってもよいし、四つ以上有していてもよい。このようなコネクタであっても、上述した実施形態に係るコネクタ1と同様な作用効果を得ることができる。すなわち、コネクタは、当接部22に角部分が面取り形状とされ、シール部材3に平坦部35が形成されることにより、接続対象物90への接続時における挿入力が大きくなることを抑制でき、接続対象物90との接続を円滑に行うことができる。
【0039】
また、上述した実施形態に係るコネクタ1は、車両に搭載される場合について説明したが、車両に搭載せずに用いられてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1:コネクタ
2:ハウジング
3:シール部材
4:端子
21:嵌合部
21B:外周面
22:当接部
22A:先端面
22B:対向面
30A:外周面
30C:端部
31:第一リップ
32:第二リップ
33:第三リップ(リップ)
35:平坦部
90:接続対象物
91:嵌合孔
91A:内面
X:接続方向