(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100338
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】温度管理装置
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F01P7/16 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004271
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅澄
(72)【発明者】
【氏名】黒木 雅太
(72)【発明者】
【氏名】福田 昂生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩和
(72)【発明者】
【氏名】秋山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】竿田 武則
(57)【要約】
【課題】ラジエータを有効に利用しつつ発熱源の温度管理を適正に行える温度管理装置を構成する。
【解決手段】発熱源1からの冷却流体を、ラジエータ2、第1ポンプP1の順序で供給し発熱源1に戻す冷却流路L1と、ラジエータ2の上流側の冷却流体を第1ポンプP1より下流側に合流させるように第2ポンプP2を有するバイパス流路L2とを備えた。第1ポンプP1からの冷却流体の一部を送る細管で成る第1センサ流路4と、第2ポンプP2からの冷却流体の一部を送る細管で成る第2センサ流路5と、これらが合流する合流路6の冷却流体の温度を検知する合流路センサSbとを備えた。第1ポンプP1と第2ポンプP2とを同時に駆動し、合流路センサSbの検知温度に基づき、第1ポンプP1と第2ポンプP2とを各別に制御する制御部とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源から送り出される冷却流体を、ラジエータ、第1ポンプの順序で供給し前記発熱源に戻す冷却流路と、
前記冷却流路の前記ラジエータの上流側の冷却流体を前記第1ポンプより下流側に合流させるように第2ポンプを有するバイパス流路と、
前記第1ポンプが送り出した冷却流体の一部を送り出す細管で成る第1センサ流路と、
前記第2ポンプが送り出した冷却流体の一部を送り出す細管で成る第2センサ流路と、
前記第1センサ流路と前記第2センサ流路とが合流する合流路に流れる冷却流体の温度を検知する合流路センサと、
前記第1ポンプと前記第2ポンプとを同時に駆動し、且つ、前記合流路センサの検知温度に基づき、前記第1ポンプと前記第2ポンプとの駆動力を各別に制御する制御部と、を備えている温度管理装置。
【請求項2】
前記合流路の下流側が、前記バイパス流路のうち前記第2ポンプの吸引側に連通している請求項1に記載の温度管理装置。
【請求項3】
前記第1センサ流路と前記第2センサ流路とが、等しい内径である請求項2に記載の温度管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ラジエータによる冷却流体の放熱を必要としない暖機時において、前記第2ポンプを設定された駆動力で駆動すると共に、前記第2ポンプの吐出圧により前記冷却流路での冷却流体が逆流しない駆動力で前記第1ポンプを駆動する請求項1に記載の温度管理装置。
【請求項5】
前記発熱源の出口の近傍に冷却流体の温度を検知する出口センサを備え、
前記制御部は、前記出口センサの検知結果に基づいて目標温度を設定する制御目標設定部と、前記目標温度と前記合流路センサで検知される検知温度との偏差を小さくするように前記第1ポンプと前記第2ポンプとを制御する温度制御部とを有している請求項1に記載の温度管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却流体の制御により発熱源の温度を管理する温度管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱源として内燃機関を例に挙げると、特許文献1には、内燃機関から送り出された冷却水をラジエータに供給した後に内燃機関に戻す第1循環通路に第1ポンプを備え、内燃機関から送り出された冷却水をヒータコアに供給した後に、第1循環通路に合流させることで内燃機関に戻す第2循環通路に第2ポンプを備えた構成が記載されている。
【0003】
この特許文献1には、内燃機関内の冷却水の温度を検知する温度センサを備え、この温度センサの検知結果に基づき第1ポンプを制御する制御形態が記載されている。
【0004】
特許文献2には、冷却水の水温と目標水温との差に基づきウォータポンプによる流量を制御するフィードバック制御を行い、冷却水の水温と目標水温と差の絶対値が所定値より大きいときに、エンジン回転数、エンジン負荷に応じてウォータポンプの流量を決定するフィードフォワード制御を行う制御形態が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-169237号公報
【特許文献2】特開2012-102639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、第1循環通路に第1ポンプを備え、第2循環通路に第2ポンプを備えており、冷却水の水温が所定値より低い場合に第1ポンプの回転数を下げてラジエータに流れる水量を低減し、冷却水の水温が所定値より高い場合に第1ポンプの回転数を上げてラジエータに供給する水量を増大するフィードバック制御が行われる。
【0007】
この特許文献1では、低負荷時に第2ポンプの駆動により冷却水を第2循環通路のヒータコアに供給する際に、第1ポンプを僅かに回転させることにより、第2循環通路からの冷却水がラジエータに流れる不都合を解消している。
【0008】
尚、この特許文献1では、エンジン負荷が高い状態で車内暖房を行わない場合には、第1ポンプの駆動によって冷却水をラジエータに供給する際に、第2ポンプの駆動により、ヒータコアに冷却水を逆流させない制御を可能にしている。これにより、特許文献1では、第1ポンプと第2ポンプとの駆動形態により、サーモスタットを用いることなく冷却水の流れの制御を可能にしている。
【0009】
特許文献1はエンジン内部の冷却水の温度を検出する温度センサを備え、特許文献2は、シリンダヘッド側の機関内冷却水路を流通する冷却水の温度を出力する水温センサを備えている。これらの文献に記載されるセンサは、ラジエータの位置から離れた位置関係にあるためエンジンの温度を制御する際の応答性の低下が懸念される。
【0010】
特に、特許文献1、特許文献2に記載されたセンサは、多量の冷却水が接触することで温度を検出する構造であるためエンジンに流れる冷却水の水量が少ない場合には、水温の温度変化の反映が不正確になることも懸念される。更に、特許文献2では、フィードバック制御とフィードフォワード制御との切換のために必要な水温の取得が不正確になることや、不適正になることも考えられた。
【0011】
このような理由から、冷却流体の熱を奪うラジエータを有効に利用しつつ発熱源の温度管理を適正に行える温度管理装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る温度管理装置の特徴構成は、発熱源から送り出される冷却流体を、ラジエータ、第1ポンプの順序で供給し前記発熱源に戻す冷却流路と、前記冷却流路の前記ラジエータの上流側の冷却流体を前記第1ポンプより下流側に合流させるように第2ポンプを有するバイパス流路と、前記第1ポンプが送り出した冷却流体の一部を送り出す細管で成る第1センサ流路と、前記第2ポンプが送り出した冷却流体の一部を送り出す細管で成る第2センサ流路と、前記第1センサ流路と前記第2センサ流路とが合流する合流路に流れる冷却流体の温度を検知する合流路センサと、前記第1ポンプと前記第2ポンプとを同時に駆動し、且つ、前記合流路センサの検知温度に基づき、前記第1ポンプと前記第2ポンプとの駆動力を各別に制御する制御部と、を備えている点にある。
【0013】
この本構成によると、第1ポンプの駆動により冷却流路に流れる冷却流体の一部が第1センサ流路に流れ、第2ポンプの駆動によりバイパス流路に流れる冷却流体の一部が第2センサ流路に流れる。このように第1センサ流路に流れた冷却流体と、第2センサ流路に流れた冷却流体とが合流位置で合流し、合流により混合した冷却流体の温度が合流路センサによって検知される。
【0014】
合流路センサで検知される冷却媒体の温度は、冷却流路を流れる冷却媒体の温度と、バイパス流路に流れた冷却媒体の温度とを反映するものであり、しかも、細管により流速を高められた冷却媒体であるため、合流路センサは僅かな温度変化も検知可能となる。このように合流路センサは、例えば、発熱源の内部や、発熱源から送り出された直後の冷却流体の温度を検知するものと異なり、冷却流体の温度変化を短いタイムラグで検知し、応答性の良い制御を可能にする。制御部は、合流路センサの検知温度に基づいて第1ポンプと第2ポンプとの駆動力を各別に制御するため、例えば、発熱源の温度上昇を図る場合に第1ポンプと第2ポンプとの駆動力を低く設定することで迅速な温度上昇を実現する。また、例えば、発熱源の温度低下を必要とする場合に第1ポンプの駆動力を高くする制御により迅速な温度低下を実現する。従って、冷却流体の熱を奪うラジエータを有効に利用しつつ発熱源の温度管理を適正に行える温度管理装置が構成される。
【0015】
他の構成として、前記合流路の下流側が、前記バイパス流路のうち前記第2ポンプの吸引側に連通しても良い。
【0016】
これによると、合流路の下流側に対し、第2ポンプの吸引力が作用するため、第1ポンプの吐出圧と、第2ポンプの吐出圧に拘わらず、第1センサ流路と第2センサ流路とに対して確実に冷却流体を流し、合流により混合した冷却媒体を合流路センサに確実に接触させることが可能となる。
【0017】
他の構成として、前記第1センサ流路と前記第2センサ流路とが、等しい内径であっても良い。
【0018】
この構成では、第2ポンプの吸引力によって第1センサ流路に冷却流体が流れ、第2センサ流路に冷却流体が流れ、夫々の流路における流量が細管の内径で決まる。このような理由から、内径を等しくすることにより、第1センサ流路に流れる冷却流体の流量と、第2センサ流路に流れる冷却流体の流量とが等しくできる。これにより、合流路センサの検知温度が、冷却流路からの冷却流体と、バイパス流路からの冷却媒体とが等しい量だけ混合したものとして制御に反映させることが可能となる。
【0019】
他の構成として、前記制御部は、前記ラジエータによる冷却流体の放熱を必要としない暖機時において、前記第2ポンプを設定された駆動力で駆動すると共に、前記第2ポンプの吐出圧により前記冷却流路での冷却流体が逆流しない駆動力で前記第1ポンプを駆動しても良い。
【0020】
これによると、制御部は、暖機時に第2ポンプを所定の駆動力で駆動し、第2ポンプの吐出圧によって冷却流路で冷却流体がラジエータに向けて逆流しない駆動力で駆動する。その結果、第1ポンプによって冷却流路の冷却流体をセンサ流路に対して継続的に供給し、合流路センサでの検知温度に冷却流路の冷却流体の温度を常に反映できる。
【0021】
上記構成に加えた構成として、前記発熱源の出口の近傍に冷却流体の温度を検知する出口センサを備え、前記制御部は、前記出口センサの検知結果に基づいて目標温度を設定する制御目標設定部と、前記目標温度と前記合流路センサで検知される検知温度との偏差を小さくするように前記第1ポンプと前記第2ポンプとを制御する温度制御部とを有しても良い。
【0022】
これによると、制御部は、出口センサの検知温度に基づき制御目標設定部において目標温度を設定する。また、制御部は、目標温度が設定された後に、温度制御部において目標温度と合流路センサの検知温度との偏差を小さくするように第1ポンプと第2ポンプとを制御する。この制御では、例えば、出口センサの検知温度と、目標温度との偏差を小さくするように第1ポンプと第2ポンプとを制御するフィードバック制御と異なり、応答性の良い制御を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図6】別実施形態(a)の冷却ユニットの流路を示す回路図である。
【
図7】別実施形態(b)の冷却ユニットの流路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示す冷却ユニット10と、
図2に示す制御ユニット20とでエンジン1(発熱源の一例)の温度を目標値に維持する温度管理装置Aが構成されている。この温度管理装置Aは、自動車等の車両に備えられるものである。
【0025】
図1に示すように、冷却ユニット10は、エンジン1から送り出された冷却水(冷却流体の一例)をラジエータ2に供給し、放熱の後にエンジン1に戻す循環を行う。
図2に示す制御ユニット20は冷却水の制御により、エンジン1を所定の温度に維持する。
【0026】
尚、温度管理装置Aは、冷却流体として、エチレングリコールや、プロピレングリコール等を含むロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、又はハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒が用いられる。
【0027】
〔冷却ユニット〕
図1に示すように、冷却ユニット10は、発熱源としてのエンジン1から出た冷却水(冷却流体の一例)が供給される冷却流路L1と、この冷却流路L1に一部並列するバイパス流路L2と備えている。
【0028】
冷却流路L1は、エンジン1の吐出口1aから出た冷却水をラジエータ2、電動型の第1ポンプP1の順序で供給し、エンジン1の吸入口1bに戻す。バイパス流路L2は、ラジエータ2の上流側の冷却流体をヒータコア3、第2ポンプP2の順序で供給し、冷却流路L1のうち第1ポンプP1より下流側に合流させる。
【0029】
第1ポンプP1は、第1ポンプモータP1mで駆動される。ラジエータ2は、ラジエータファンモータ2mで駆動されるラジエータファン2fの冷却風が供給される。
【0030】
第2ポンプP2は、第2ポンプモータP2mで駆動される。ヒータコア3は、ヒータファンモータ3mで駆動されるヒータファン3fで加熱された温風を車内に供給する。
【0031】
冷却ユニット10は、出口センサSaと、合流路センサSbとを備えている。出口センサSaは、吐出口1aの近傍に配置された冷却水の水温を検知する。合流路センサSbは、冷却流路L1に流れた冷却水と、バイパス流路L2とに流れた冷却水との混合後の温度を検知する。
【0032】
特に、第1ポンプP1と第2ポンプP2とは、第2ポンプP2を上側に配置し、第1ポンプP1を下側に配置した単一のユニットとして構成されている。
【0033】
〔合流路センサ〕
図1に示すように、冷却ユニット10は、第1ポンプP1が送り出した冷却水の一部を送り出すように細管で成る第1センサ流路4を有し、第2ポンプP2が送り出した冷却水の一部を送り出すように細管で成る第2センサ流路5を有し、これらに流れる冷却水が合流して流れる合流路6を有している。
【0034】
第1センサ流路4と第2センサ流路5とを成す細管は等しい内径に形成されている。合流路6は、バイパス流路L2のうち第2ポンプP2の吸引側に接続しており、合流路センサSbは、合流路6に流れる冷却水が接触する位置に備えられる。
【0035】
第1センサ流路4の細管と、第2センサ流路5の細管とは、冷却流路L1のうち第1ポンプP1より下流の流路の内径、バイパス流路L2のうち第2ポンプP2の下流の流路の内径の何れよりも小さい。また、この冷却ユニット10では、第2ポンプP2として、第1ポンプP1の吸い上げ揚程より、吸い上げ揚程性能の高いものが用いられる。
【0036】
このように、細管の流路抵抗が冷却流路L1とバイパス流路L2との何れより大きいため、細管に流れる冷却水の水量は、第2ポンプP2の吸引力によって決まる。第1センサ流路4の細管と、第2センサ流路5の細管とは等しい内径であるため、第1センサ流路4と第2センサ流路5に略等しい流量(単位時間あたりの流量)の冷却水が流れる。
【0037】
その結果、合流路センサSbは、冷却流路L1からの微量の冷却水を含み、バイパス流路L2からの微量の冷却水を含む冷却水の水温を検知する。前述したように、第2ポンプP2を上側に配置し、第1ポンプP1を下側に配置しているため、バイパス流路L2に流れる高温の冷却水と、冷却流路L1に流れる低温の冷却水とが対流によって混合する現象が抑制され、冷却流路L1からの冷却水とバイパス流路L2からの冷却水とが等しい比率(1:1の比率)で混合し、このように混合して冷却水が合流路センサSbに接触することになる。
【0038】
〔制御ユニット〕
図2に示すように、制御ユニット20は、マイクロプロセッサ、メモリ等を有し、ECUとして機能する制御部21を備えている。
【0039】
制御部21は、出口センサSaと、合流路センサSbと、スロットル開度センサ26とエンジン回転センサ27とからの信号が入力する。また、この制御部21は、第1ポンプモータP1mと、第2ポンプモータP2mと、ラジエータファンモータ2mと、ヒータファンモータ3mとに制御信号を出力する。
【0040】
制御部21は、負荷算出部22と、制御目標設定部23と、マップデータ23aと、温度制御部24とを有している。これら負荷算出部22と、制御目標設定部23と、温度制御部24とは、制御部21のメモリに記憶されるソフトウエアで構成されるものであるが、一部がロジック等のハードウエアで構成されるものでも良い。
【0041】
エンジン回転センサ27は、変速段、走行系に作用するトルクの値、エアフローセンサで検知される空気量等に基づいてエンジン1に作用する負荷を検知する。
【0042】
〔制御ユニット:制御形態〕
制御ユニット20は、冷却ユニット10を構成する出口センサSaと合流路センサSbとの検知結果に基づき、冷却ユニット10を構成する第1ポンプP1と第2ポンプP2とを制御することによりエンジン1の温度を目標とする値に維持する。
【0043】
制御部21は、
図3のフローチャートに示す温度管理制御を実行する。この温度管理制御は、エンジン1の始動後に、制御部21が暖機を行う閾値となる基準水温Tcをセットし、出口センサSaで検知した出口水温Taを取得する(#01、#02ステップ)。
【0044】
温度管理制御は、出口水温Taが基準水温Tcより低い場合(#03ステップのYes:Ta≦Tc)に暖機ルーチン(#100ステップ)が実行される。これに対し、出口水温Taが基準水温Tcより高い場合(#03ステップのNo)に温度維持ルーチンが実行される(#200ステップ)。
【0045】
また、自動車の車内の温度上昇を図る場合に、エンジン1から送り出された冷却水をヒータコア3に供給する車内温調(#04ステップ)が実行される。
【0046】
車内温調(#04ステップ)は、目標とする室温が設定されている状況において、ヒータファンモータ3mに電流を供給しヒータファン3fが駆動することで室温の上昇が図られる。これに対し、車内温調を必要としない場合には、ヒータファン3fは停止状態が維持されるが、バイパス流路L2に冷却水は流れる状態が維持される。
【0047】
〔暖機ルーチン〕
暖機ルーチン(#100ステップ)は、
図4に示すように、第1ポンプP1を第1駆動力で駆動し、第2ポンプP2を第2駆動力で駆動する(#101、#102ステップ)。この暖機ルーチンにおいて、第1駆動力は、第2駆動力より低い値に設定される。
【0048】
具体的に説明すると、制御部21が、バイパス流路L2に対して設定量の冷却水を供給するように第2駆動力に対応する電流を第2ポンプモータP2mに供給する。これにより、第2ポンプP2が駆動され、吐出口1aから送り出された冷却水のうち、冷却流路L1から分岐した設定量(単位時間あたりの値)の冷却水がバイパス流路L2に供給され、吸入口1bからエンジン1に戻される。
【0049】
暖機ルーチン(#100ステップ)では、第1駆動力に対応する電流を第1ポンプモータP1mに供給する。これにより、第1ポンプP1が駆動され、第1ポンプP1の吐出圧が、第2ポンプP2の吐出圧によって冷却流路L1で冷却流体が逆流する不都合を抑制しつつ、僅かな冷却水を第1ポンプP1から吐出する。
【0050】
例えば、第2ポンプP2だけが駆動された場合には、第2ポンプP2の吐出圧によって冷却流路L1の冷却水が逆流し、分岐箇所からバイパス流路L2の始端部(
図1の上端)に冷却水が流れ込み、暖機に要する時間の延長を招くことになる。この不都合を解消し、合流路センサSbに冷却流路L1の冷却水を流すために、第2駆動力より低い駆動力となる第1駆動力で第1ポンプP1が駆動される。
【0051】
更に、第1ポンプP1の駆動により冷却水の一部が第1センサ流路4に供給される。これと同様に第2ポンプP2の駆動によりバイパス流路L2の冷却水の一部が第2センサ流路5に供給される。
【0052】
〔温度維持ルーチン〕
温度維持ルーチン(#200ステップ)は、
図5に示すように、出口センサSaで検知された出口水温Taを取得し、スロットル開度センサ26で検知された信号、及び、エンジン回転センサ27で検知された信号を取得し、これらに基づき、目標水温Txが設定される(#201~#203ステップ)。
【0053】
#202ステップは、スロットル開度とエンジン回転に基づきエンジン負荷を算出する。#203ステップは、エンジン負荷と、出口水温Taとに基づき制御目標設定部23が、マップデータ23aを参照することにより目標水温Txが設定される。
【0054】
次に、温度維持ルーチンでは、合流路センサSbで検知された合流水温Tbを取得し、目標水温Txと偏差が収束するようにPID制御等の制御により第1ポンプP1の駆動力と、第2ポンプP2の駆動力を制御する(#204、#205ステップ)。
【0055】
エンジン1は、稼動に伴い温度が上昇するものであり、温度維持ルーチンは、冷却水を介してエンジン1の温度を奪う制御が基本となる。従って、この温度維持ルーチンでは、単位時間あたりに冷却流路L1に供給する冷却水の水量が、単位時間あたりにバイパス流路L2に供給する冷却水の水量より多くなるように第1ポンプP1と第2ポンプP2との駆動量が各別に設定される。
【0056】
〔温度管理制御の変形例〕
この変形例では、例えば、スロットル開度センサ26と、エンジン回転センサ27からの信号とに基づき、エンジン1に作用する負荷の増大が見込まれる場合(負荷算出部22が負荷の増大を想定できる場合)には、出口水温Taと基準水温Tcとが変化(上昇)する以前であっても、負荷の増大を見込んで、例えば、専用のマップデータに基づき目標水温Txを設定することが考えられる。
【0057】
この変形例の制御では、例えば、専用のマップデータに基づき目標水温Txを設定した後には、先に説明した温度維持ルーチン(#200ステップ)と同様に、目標水温Txと合流路センサSbで検知された合流水温Tbとの偏差を小さくする制御形態の実行が可能となり、この制御によりエンジン1のオーバヒートを抑制できる。
【0058】
〔実施形態の作用効果〕
この温度管理装置Aでは、冷却流路L1からの冷却水を細管で成る第1センサ流路4に分岐させ、バイパス流路L2に流れる冷却水を細管で成る第2センサ流路5に分岐させ、これらの冷却水を互いに1/2となる割合で合流路6で混合させ、この合流路6の冷却水の水温を合流路センサSbで検知する。
【0059】
合流路6に流れる冷却水の流速が大きいため、僅かな温度変化の検知も合流路センサSbで検知可能となる。また、合流路センサSbは、水温に影響するラジエータ2と、ヒータコア3との下流であるため、これらを通過することで変化した水温を短いタイムラグで検知し、応答性の良い制御を可能にする。
【0060】
更に、暖機ルーチン(#100ステップ)では、第2ポンプP2の吐出圧により冷却流路L1で冷却流体が逆流することがなく僅かな冷却水が吐出される。これにより暖機時においてラジエータ2を流れた冷却水がバイパス流路L2に流れることがなく、効率的な暖機を行い、この暖機時に車内の空調を行う場合に、ヒータコア3の温度低下を招くこともない。
【0061】
この温度管理装置Aでは、冷却流路L1にサーモスタットを備えていないため、暖機ルーチンの実行時であっても、エンジン1に対する負荷が増大したことを判定した場合には、第2ポンプP2に流れる冷却水の流量を増大させることが可能であり、ラジエータ2に冷却水を供給することによりエンジン1の温度上昇を抑制できる。
【0062】
温度維持ルーチン(#200ステップ)では、出口センサSaの検知結果と、エンジン1に作用する負荷とに基づいて目標水温Txを設定するため、例えば、出口センサSaの検知結果のみに基づいて目標水温Txを設定する制御形態と比較してエンジン負荷を反映した温度管理を可能にする。
【0063】
また、温度維持ルーチン(#200ステップ)は、出口センサSaで検知された水温をフィードバックするものではなく、合流路センサSbで検知された水温をフィードバックする形態の制御となるため、ラジエータ2を通過した冷却水の水温と、ヒータコア3を通過した冷却水の水温とを適正に反映した応答性の良い制御を可能にする。
【0064】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0065】
(a)
図6に示すように、冷却ユニット10において、第1ポンプP1より下流の冷却流路L1のうち、第2ポンプP2から送り出された冷却水が合流した位置より下流位置の冷却水の一部を送り出すように細管で成る第2センサ流路5を形成する。
【0066】
この別実施形態(a)では、細管で成る第1センサ流路4と、合流路6と、合流路センサSbとの配置は、実施形態と異なるものではない。この別実施形態(a)の構成であっても、実施形態と同様に合流路6の水温を検知できる。
【0067】
(b)
図7に示すように、合流路6の下流側の端部を第1ポンプP1の吸引側に接続する。この別実施形態(b)では、細管で成る第1センサ流路4と、細管で成る第2センサ流路5との配置は、実施形態と異なるものではない。この別実施形態(b)の構成であっても、実施形態と同様に合流路センサSbによって合流路6の水温を検知できる。
【0068】
(c)発熱源は、車両に備えられるエンジン1に限るものではなく、例えば、EV車(電気自動車)に備えられる二次電池、あるいは、FCV車(燃料電池車)に備えられる燃料電池であっても良い。
【0069】
このように、発熱源として電池を対象にして温度管理を行うことにより、EV車の二次電池では、最も効率のよい放電を可能にし、FCV車では最も効率の良い発電を可能にする。
【0070】
(d)温度維持ルーチンは、制御形態はPID制御に限るものでなく、実施形態と異なる形態のフィードバック制御の実行が可能である。
【0071】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、冷却流体の制御により発熱源の温度を管理する温度管理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 エンジン(発熱源)
2 ラジエータ
4 第1センサ流路
5 第2センサ流路
6 合流路
21 制御部
23 制御目標設定部
24 温度制御部
A 温度管理装置
L1 冷却流路
L2 バイパス流路
P1 第1ポンプ
P2 第2ポンプ
Sa 出口センサ
Sb 合流路センサ