▶ 20・20GeneSystems Japan株式会社の特許一覧
▶ 学校法人藤田学園の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100349
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】病理診断管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/20 20180101AFI20240719BHJP
【FI】
G16H40/20
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004294
(22)【出願日】2023-01-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】520401653
【氏名又は名称】20・20GeneSystems Japan株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100189876
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 将晴
(72)【発明者】
【氏名】佐合 高幸
(72)【発明者】
【氏名】田坂 正綱
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】病理医が病理標本とその病理標本情報とを取り違えることがない病理診断管理システムを提供する。
【解決手段】依頼元医の診断所見が示された依頼伝票に基づいた病理標本情報により、病理診断業務を管理する病理診断管理システム1であって、標本コード読取手段40と、標本選択表示手段101を有するサーバ10と、を備える。標本コード読取手段は、病理標本に貼付した標本コード41を読み取り、多数の病理標本情報202、205のリストの中から、標本コードに対応した標本番号が付された病理標本情報を、標本選択表示手段により選択させ、病理標本と異なるタイミングで届いた病理標本情報の中から、病理医の手元にある病理標本に応じた病理標本情報と、それに係る依頼伝票の画像データとを表示可能とさせる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理診断管理システムであって、処理手段と記憶手段と表示手段と標本コード読取手段とを含み、依頼元医の診断所見が示された依頼伝票が病理医側に届けられ、前記依頼伝票に係る病理診断依頼について依頼元医側と病理医側の合意がされてから、前記病理医に病理標本が届けられ、病理標本情報が電子データを基に管理される病理診断業務に適用され、
前記依頼伝票が、少なくとも前記診断所見を所定位置に示す様式とされ、
前記処理手段が、標本選択表示手段として機能され、
前記依頼元医から前記病理医に前記病理標本が届くまでに、前記診断所見を含む前記依頼伝票の画像データが作成され、前記依頼伝票に示された伝票情報と前記病理標本情報とに対応した標本番号が付与され、
前記病理標本には、前記標本番号に対応した標本コードが貼付され、
前記病理標本情報がなすリストに、複数の病理標本情報が含まれていても、
少なくとも前記病理医に至るまでの上流工程において、前記標本コード読取手段が、前記標本コードを読み取り、
前記標本選択表示手段が、前記表示手段に表示された前記リストの中から、読み取った前記標本コードに対応した前記標本番号が付与された前記病理標本情報を選択可能に表示させ、
前記病理標本情報の選択により前記画像データを表示させる、
ことを特徴とする病理診断管理システム。
【請求項2】
前記病理診断管理システムが、前記伝票情報を取得する取得手段を備えると共に、前記処理手段が是正支援手段として機能され、
前記取得手段が光学式情報取得手段とされ、前記画像データが第1電子データと第2電子データとからなり、
第1電子データとして、前記依頼伝票の全体の前記伝票情報を画像データとした第1画像データを取得すると共に、
第2電子データとして、前記依頼伝票の前記所定位置に示された前記伝票情報を第2画像データとし、前記所定位置以外に示された前記伝票情報を光学文字認識により文字データとし、第2画像データと前記文字データとを取得し、
前記是正支援手段が、第1電子データと、第2画像データと前記文字データとからなる第2電子データとを、前記表示手段に対比可能に表示させ、第1画像データと第2画像データをオリジナルとしたままで、光学式文字認識により誤認識された前記文字データの是正を支援し、
第2電子データのみでも、前記依頼伝票に基づく病理診断管理が可能とされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の病理診断管理システム。
【請求項3】
前記記憶手段が病理標本管理手段として機能され、前記処理手段が病理標本情報選別手段として機能され、
前記病理標本管理手段が、前記リストを記憶すると共に、各々の前記病理標本情報に、少なくとも第1電子データの登録がされていることを示す識別表示を併せて記憶させ、
前記病理標本情報選別手段が、前記識別表示が表示されている病理標本情報のみを整合リストに選別し、前記識別表示が表示されていない病理標本情報を前記整合リストから除外する、
ことを特徴とする請求項2に記載の病理診断管理システム。
【請求項4】
更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、
前記合意がされる際に、
前記受入確定手段が、前記整合リストの中から前記病理医が選択した前記病理標本情報について、前記合意を確定させて、確定表示を表示させ、
前記標本作成開始確定手段が、前記確定表示がされた前記病理標本情報が選択されることにより、標本作成の開始を確定させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の病理診断管理システム。
【請求項5】
サーバと、通信手段とを含み、
前記サーバが、前記処理手段と、前記記憶手段として機能され、
前記依頼元医側と前記病理医側とを外部機関が仲介し、前記外部機関が、前記依頼元医側から検体を引き継いで、前記病理標本の作成を分担する病理診断業務に適用され、
前記処理手段が、前記標本選択表示手段と、前記是正支援手段と、前記病理標本情報選別手段と、リスト通知手段と、病理標本情報表示手段として機能され、
前記記憶手段が、前記病理標本管理手段として機能され、
前記リスト通知手段が、前記病理標本が病理医に届くまでに、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストを表示させるリンクを、前記通信手段を介して電子メールにより前記病理医側又は外部機関のいずれかに通知させ、
前記病理標本情報表示手段が、前記リンクを選択した前記病理医側又は外部機関のいずれかに、前記整合リストの中から選択された前記病理標本情報について、少なくとも第1電子データを含んだ前記病理標本情報を表示させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の病理診断管理システム。
【請求項6】
更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、
前記合意が確定される際に、
前記受入確定手段が、前記整合リストの中から前記病理医が選択した前記病理標本情報について、前記合意が確定されて、確定表示が表示され、
前記標本作成開始確定手段が、前記確定表示がされた前記病理標本情報が選択されることにより、標本作成の開始を確定させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の病理診断管理システム。
【請求項7】
更に、前記処理手段が、依頼業務抽出手段として機能され、
前記病理標本管理手段に、各々の病理標本情報に係る業務が、予め設定された進捗のいずれであるかと共に、少なくとも「要至急」又は「追加染色」のいずれかを含む特別業務には特別表示を記憶させて進捗が管理され、
前記依頼業務抽出手段が、いずれかの前記進捗に該当する前記業務を、前記リストの中から抽出させ、前記表示手段には、抽出させた前記業務のリストと共に前記特別表示を表示させ、特別業務の進捗が管理可能とされる、
ことを特徴とする請求項6に記載の病理診断管理システム。
【請求項8】
更に、前記処理手段が、結果通知手段として機能され、
前記結果通知手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている、各々の病理診断結果の画像情報を表示するリンクを、前記通信手段を介して前記依頼元医に通知させ、前記依頼元医が前記リンクを選択することにより、前記画像情報がダウンロード可能とされている、
ことを特徴とする請求項7に記載の病理診断管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理診断を依頼する依頼元医側で作成された、シェーマ図と称されている患部の絵図と依頼元医の診断所見等が記載された依頼伝票に係る情報と、病理標本の現物(以下、病理標本という)とが、異なるタイミングで病理医に届いても、それらが取り違われることなく管理されて、依頼元医の診断所見を踏まえて病理標本が病理医に診断される病理診断管理システムに関する。更に、病理診断に係る情報が高いセキュリティの下で、関係者の間で共有される病理診断管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
依頼元医が患者から検体を採取し、その検体から臨床検査技師が病理標本を作成し、その病理標本を病理医が診断している。病理医は経験と高度な診断技術を備えた有資格者であることが必要であり、その数が限られていることに加えて、病理医には多くの依頼元から様々なタイミングで病理標本が搬入される。
【0003】
病理医側の医療機関には、病理標本の作成をする臨床検査技師が在籍し、その臨床検査技師が作成した病理標本を病理医が診断しているのが一般的であるが、病理医側には外部の依頼元医側が作成した病理標本が引き渡されることもある。また、病理医がいない医療機関もあり、病理医の数も不足しているために、「外部機関」が依頼元医側から病理標本をなす検体を引き継いで、臨床検査技師に病理標本を作成させ、複数の病理医が所属している病理診断医療機関に病理診断を集中させて、医療業務を効率化する必要がある。
【0004】
病理診断の際には、まず、患者情報、患者の症状情報、依頼元医情報と共に、依頼元医の診断所見やシェーマ図、病理医への診断希望事項等を記載した依頼伝票が、依頼元医側から病理医側に引き渡され、病理診断を委託する合意がなされる。合意がされた後に、臨床検査技師により、依頼元医が内視鏡等を使って患者の患部から採取した検体から、病理標本が作成される。病理医は、依頼元医の診断所見等を熟慮して病理標本を診断し、その診断結果を電子データにし、病理診断結果情報が依頼元医と共有される。
【0005】
病理標本に係る情報には、患者の氏名・生年月日・住所等のプライバシー情報、患者の生命に係る依頼元医の診断所見、病理診断希望等の情報等が示された依頼伝票の情報(以下、伝票情報という)が電子データにされて、病理標本と一体に管理される。また、伝票情報には、患者を特定することができるプライバシー情報や、患者の病歴や症状等の極めて秘匿性の高い情報等の、外部に流出させることができない情報が含まれている。
【0006】
また、手書きカルテの原本は依頼元医が保持する必要があり、電子カルテの情報も電子データのままでは外部に持ち出せないようにデータ管理がされるため、手書きカルテ又は印字した電子カルテの写しにより依頼元医の依頼伝票が作成される。病理医は、前記写しに基づいた依頼伝票の電子データと、検体と、検体から作成された病理標本とにより、病理診断をする。
【0007】
病理診断を委託する際には、診断に適し、患部の症状を正しく評価できる病理医が診断したことを、記録に残すために、依頼元医側から病理医側に、事前に依頼伝票が届けられ、病理診断の依頼・受入の合意がされてから、病理標本が病理医側に引き渡されている。依頼伝票が届くタイミングより遅れて、外部機関や病理医側の窓口担当者等を経て、合意の順に限らない順序で多数の病理標本が病理医に届くために、依頼伝票と病理標本とに取り違いが発生する可能性があった。
【0008】
また、依頼伝票には、依頼元医による手書きの診断所見、シェーマ図等の絵図も含まれているために、依頼伝票を電子データにして管理することは困難であった。具体的には、キーボード入力された電子カルテの写しを、Optical Character Recognition/Reader(以下、OCRという。)により電子データにするだけでも、OCRの誤認識により文字情報がオリジナルとは変わることもある。依頼元医による診断所見、シェーマ図等はオリジナルな状態のまま保持する必要がある。オリジナルを保ちつつ、正しい電子データにより、適正に電子データを管理し、病理標本の取り違えが防止できることが必要とされていた。
【0009】
患者に係る電子データは、人のプライバシー、生命に係る極めて秘密性の高い情報であるため、電子データであっても、電子データが作成された医療機関外に開放することはできず、医療機関を跨いで電子データの共有が困難であり、依頼元医側の病理用の第1データベースと、病理医側の病理用の第2データベースが外部にそれぞれ閉じた状態とされている。
【0010】
依頼元医と病理医が病理情報を共有するためには、依頼元医側の病理用の第1データベースと、病理医側の病理用の第2データベースが外部にそれぞれ閉じていても、高いセキュリティを保ちつつ、伝票情報に基づく病理標本情報の電子データ及び病理診断結果の電子データを、依頼元医側から病理医側までが閲覧できる病理診断管理システムが必要とされていた。
【0011】
また、検体が染色された病理標本は、顕微鏡などにより拡大され、それに表れた組織の形状・色相・明度の違いにより診断されるが、染色が薄く、十分な病理診断ができないこともある。その場合には、病理医の指導のもとに追加染色した病理標本を作成することが再び合意され、新たな病理標本が作成され、病理医に引き渡される。一方、至急に病理診断を要する場合もある。追加染色や要至急の病理診断の場合には、病理標本情報と病理標本とが、一般の管理工程とは異なる工程で引き渡されるため、この場合にも取り違いが発生する可能性があった。
【0012】
特許文献1には、依頼者が病理診断を外部に依頼するタイミング、標本を作成するタイミング、依頼書と標本を関連付けるタイミングなどで取り違えるリスクを軽減することを課題とした病理診断管理システムの技術が開示されている。この技術によればプレパラートに記録される標本管理コードを、依頼者端末により生成させた識別子と、標本作成者独自のコードとから構成させる等して、取り違いのリスクを軽減するとされている。
【0013】
従来、患者名や依頼者名が担当者の目視により確認されていたが、依頼管理コード、患者名、依頼者名の一部、日付等を用いたユニークな標本管理コードを用いることにより、プレパラートと依頼データとの対応付けがされるため、取り違いのリスクが低減されるとされている。
【0014】
しかし、標本管理コードに特殊なアルゴリズムに基づくユニークなコードを用いたとしても、通番によるユニークなコードで管理する場合と同様であり、依頼伝票に示された依頼元医の診断所見を含めて確認されなければ、病理標本の取り違いをなくすことはできなかった。特に、事前に依頼元医と病理医との合意をするための依頼伝票を引き渡すルートと、病理診断のために病理標本を引き渡すルートとが別である場合には、病理標本を単に標本管理コードにより管理するだけでは、取り違いのリスクの低減は困難であった。
【0015】
特許文献2には、病理医による適切な診断を可能としながら、病理医が迅速に病理診断を進めることができるとする病理診断処理装置の技術が開示されている。この病理診断処理装置は、診断受付手段と、病理医情報格納手段と、病理医選択手段等とを含んだ装置とされ、患者のデジタル画像データがサーバに送信された後に、病理医選択手段により登録された病理医の中から選択された病理医に、病理診断を依頼するとされている。
【0016】
優先順位に従って、順に病理医が選択されるため、優先順位が上位の病理医により診断が断られても、下位の病理医により病理診断がされ、適切な診断と共に迅速な病理診断を進めることができるとされている。しかし、この病理診断処理装置は、標本からバーチャルスライドが作成されてから、バーチャルスライドの電子データを、選択される病理医に通信させる態様に係る技術であり、病理標本と依頼元医の診断所見が示された依頼伝票を扱う態様には適用できなかった。
【0017】
特許文献3には、外部機関による臨床検体検査システムの技術が開示されている。この技術によれば、外部臨床検査機関と医療機関の各機関の管理サーバをインターネット接続させ、相互に必要な電子データをデータベースに記憶させ、効果的な情報の伝達方式を提供させ、相互の情報が活用可能であるとされている。
【0018】
医療機関において、検査材料の識別子がバーコード化されラベルとして印刷され、そのラベルが貼り付けられた検査材料入り容器が,箱詰めされて引き渡される。外部臨床検査機関においては、医療機関により箱詰めされた検査材料入り容器に、貼付されたラベルのバーコードにより、検査材料が管理可能とされている。しかし、この技術の場合にも、検査材料以外のカルテ等の依頼元医の診断所見が示された依頼伝票が想定されておらず、依頼伝票と検査容器とを、異なるタイミングで外部臨床検査機関に受け入れさせる態様には適用できないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2019-53664号公報
【特許文献2】特開2011-48438号公報
【特許文献3】特開2005-182507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、依頼元医の診断所見を含んだ依頼伝票と、病理標本と、それらに係る電子データとが、複雑な経路で病理医に引き渡されても、依頼伝票に係る情報と、病理標本と、それらに係る電子データとが対応しており、取り違いが発生せず、依頼元医の診断所見を踏まえて、病理標本が病理医に診断される病理診断管理システムを提供することを課題としている。更に、一般の管理工程とは異なる工程で病理診断業務が進められても、取り違いが発生しにくく、依頼元医側と病理医側の夫々の病理に係るデータベースが閉じていても、高いセキュリティを保ちつつ、病理標本情報の共有化ができる病理診断管理システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の発明は、病理診断管理システムであって、処理手段と記憶手段と表示手段と標本コード読取手段とを含み、依頼元医の診断所見が示された依頼伝票が病理医側に届けられ、前記依頼伝票に係る病理診断依頼について依頼元医側と病理医側の合意がされてから、前記病理医に病理標本が届けられ、病理標本情報が電子データを基に管理される病理診断業務に適用され、前記依頼伝票が、少なくとも前記診断所見を所定位置に示す様式とされ、前記処理手段が、標本選択表示手段として機能され、前記依頼元医から前記病理医に前記病理標本が届くまでに、前記診断所見を含む前記依頼伝票の画像データが作成され、前記依頼伝票に示された伝票情報と前記病理標本情報とに対応した標本番号が付与され、前記病理標本には、前記標本番号に対応した標本コードが貼付され、前記病理標本情報がなすリストに、複数の病理標本情報が含まれていても、少なくとも前記病理医に至るまでの上流工程において、前記標本コード読取手段が、前記標本コードを読み取り、前記標本選択表示手段が、前記表示手段に表示された前記リストの中から、読み取った前記標本コードに対応した前記標本番号が付与された前記病理標本情報を選択可能に表示させ、前記病理標本情報の選択により前記画像データを表示させることを特徴としている。
【0022】
依頼元医は、病理診断依頼をする前に、患者を診断して検体を摘出し、その診断所見に基づいて病理診断を病理医に依頼する。病理医は、病理標本だけでなく、依頼元医の診断所見、例えば経過観察や病状の進行速度等の情報を踏まえて、病理診断をすることにより、より的確な病理診断をすることができる。依頼伝票には、紙カルテのほかに電子カルテの写しが含まれていてもよい。紙カルテや電子カルテには、診断所見や依頼元医が描いたシェーマ図が描かれている。
【0023】
依頼元医側は、電子カルテの元電子データを流出させず、紙カルテの原本を持ち出させないため、それらの写しがなす依頼伝票により、病理医に診断所見が示される。依頼伝票は、少なくとも前記依頼元医の診断所見を所定位置に示す様式とされ、シェーマ図を含む様式とすると好適である。依頼伝票の画像データは、合意の前に作成されてもよく、合意の後でも病理医が診断をする前に作成されればよく、画像データの作成手段は限定されず、OCRに限定されず、デジタルカメラであってもよい。依頼伝票に基づいて、依頼元医側と病理医側の合意がされてから、病理標本が作成され、その作成の過程で、病理標本作成情報が伝票情報に追加され、病理標本情報にまとめられればよい。
【0024】
依頼伝票に示された伝票情報と病理標本情報とには対応した標本番号が付与され、病理標本には標本番号に対応した標本コードが貼付される。対応した標本番号とは、他の伝票情報と病理標本情報と区別されればよく、例えば連続番号でもよく、伝票情報と病理標本情報とが同一患者の情報であることが判別されればよく、数字・文字・記号等は限定されない。また標本コードは、2次元コードでもよく、バーコード等の1次元コードでもよく限定されない。
【0025】
標本コード読取手段は、2次元コードリーダ又はバーコードリーダであればよい。病理医に届いた病理標本には、標本コードが貼付されているため、標本コードをリーダで読みとれば、対応した標本番号が取得できる。病理標本情報が病理標本が届くより前、例えば数日前に届いていた場合や、追加染色がされたために病理標本が複数回届く場合等のように、病理標本情報と病理標本が異なったタイミングで届くことがある。病理標本情報がなすリストに、他の患者の病理標本情報を含み、複数の病理標本情報が含まれていても、標本選択表示手段により読み取った標本コードに対応した病理標本情報が選択可能に表示される。
【0026】
選択可能に表示させるとは、例えば、その標本番号に係る病理標本情報のみを着色表示してもよく、その他の病理標本情報を選択不可に表示してもよく、非表示としてもよく、その態様は限定されない。病理標本情報の選択により表示される依頼伝票の画像データには、文字データが含まれていてもよい。第1の発明によれば、病理標本と異なるタイミングで届いた多数の病理標本情報の中から、病理医の手元に届く病理標本に応じた依頼伝票の画像データの確認が容易であり、病理医が患者の病理標本とその病理標本情報とを取り違えることがないという効果を奏する。
【0027】
本発明の第2の発明は、第1の発明の病理診断管理システムにおいて、前記伝票情報を取得する取得手段を備えると共に、前記処理手段が是正支援手段として機能され、前記取得手段が光学式情報取得手段とされ、前記画像データが第1電子データと第2電子データとからなり、第1電子データとして、前記依頼伝票の全体の前記伝票情報を画像データとした第1画像データを取得すると共に、第2電子データとして、前記依頼伝票の前記所定位置に示された前記伝票情報を第2画像データとし、前記所定位置以外に示された前記伝票情報を光学文字認識により文字データとし、第2画像データと前記文字データとを取得し、前記是正支援手段が、第1電子データと、第2画像データと前記文字データとからなる第2電子データとを、前記表示手段に対比可能に表示させ、第1画像データと第2画像データをオリジナルとしたままで、光学式文字認識により誤認識された前記文字データの是正を支援し、第2電子データのみでも、前記依頼伝票に基づく病理診断管理が可能とされることを特徴としている。
【0028】
第2の発明によれば、依頼伝票全体が第1画像データとして、例えば、改ざんできないPDF形式の画像データで取得され、依頼元医によるシェーマ図と診断所見等も画像データとして、例えば、拡大して細部が確認しやすいJPG形式のデータで取得され、オリジナルの状態で確認できる。文字データには、依頼伝票番号、依頼元医機関名、検体番号、主治医名等があり、画像データには、患者の署名、生年月日、依頼元医による診断所見、患部のシェーマ図等がある。
【0029】
一方、予め電子カルテにおいて入力された、数字・文字情報等はOCRによる誤認識が少なく、誤認識されていない文字データは、夫々の病理診断を区別させる索引情報として利用できる。依頼伝票の手書き署名等は誤認識されやすく、別に、依頼伝票の文字情報が入力されている場合には、それらとの照合により、食い違いの無い文字データとすればよい。
【0030】
第2の発明によれば、病理標本情報をなす伝票情報が、依頼伝票全体の画像データと一体に管理され、OCRにより読み取った文字データが、病理診断データベースのインデックスとして利用できる索引情報としても活用でき、業務の効率化が図れる。これにより、オリジナルな依頼伝票はオリジナルな外観状態のままで保持させ、光学文字認識させた文字情報をも使って効率的で信頼性の高い病理診断管理をすることができるという効果を奏する。
【0031】
本発明の第3の発明は、第2の発明の病理診断管理システムにおいて、前記記憶手段が病理標本管理手段として機能され、前記処理手段が病理標本情報選別手段として機能され、前記病理標本管理手段が、前記リストを記憶すると共に、各々の前記病理標本情報に、少なくとも第1電子データの登録がされていることを示す識別表示を併せて記憶させ、前記病理標本情報選別手段が、前記識別表示が表示されている病理標本情報のみを整合リストに選別し、前記識別表示が表示されていない病理標本情報を前記整合リストから除外することを特徴としている。
【0032】
第3の発明によれば、依頼伝票の全体の伝票情報の画像データをなす第1電子データの登録がされている病理標本情報には識別表示を表示させ、整合リストに選別し、データの整備状態が判別でき、OCRで読み取った文字データの誤認識の発見と是正を容易にさせる。また、識別表示が表示されていない病理標本情報は不完全な状態の依頼情報として、整備を促すことができる。
【0033】
整合リストの態様は、不完全な状態の病理標本情報が追跡可能に、識別表示がない病理標本情報を見え消し線で表示してもよく、不完全な状態の病理標本情報は整合リストの欄外に、未整合リストとして表示してもよい。第3の発明によれば、病理診断依頼がされた病理標本情報の整備状態が明確となり、また、不完全な状態の病理標本情報の追跡が容易となり、漏れのない病理診断をすることができるという効果を奏する。
【0034】
本発明の第4の発明は、第3の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、前記合意がされる際に、前記受入確定手段が、前記整合リストの中から前記病理医が選択した前記病理標本情報について、前記合意を確定させて、確定表示を表示させ、前記標本作成開始確定手段が、前記確定表示がされた前記病理標本情報が選択されることにより、標本作成の開始を確定させることを特徴としている。
【0035】
第4の発明によれば、病理医側は、依頼元医側との合意がされる際に、識別表示が表示された病理標本情報が整った整合リストを確認すればよく、病理診断依頼の受入れ合意が容易であり、臨床検査技師も、タイミングを外して病理標本を作成することがないという効果を奏する。
【0036】
本発明の第5の発明は、第3の発明の病理診断管理システムにおいて、サーバと、通信手段とを含み、前記サーバが、前記処理手段と、前記記憶手段として機能され、前記依頼元医側と前記病理医側とを外部機関が仲介し、前記外部機関が、前記依頼元医側から検体を引き継いで、前記病理標本の作成を分担する病理診断業務に適用され、前記処理手段が、前記標本選択表示手段と、前記是正支援手段と、前記病理標本情報選別手段と、リスト通知手段と、病理標本情報表示手段として機能され、前記記憶手段が、前記病理標本管理手段として機能され、前記リスト通知手段が、前記病理標本が病理医に届くまでに、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストを表示させるリンクを、前記通信手段を介して電子メールにより前記病理医側又は外部機関のいずれかに通知させ、前記病理標本情報表示手段が、前記リンクを選択した前記病理医側又は外部機関のいずれかに、前記整合リストの中から選択された前記病理標本情報について、少なくとも第1電子データを含んだ前記病理標本情報を表示させることを特徴としている。
【0037】
第5の発明によれば、依頼元医が採取した検体から外部機関の臨床検査技師に病理標本を作成させ、複数の病理医が所属している病理診断医療機関に病理標本を集中させて、病理医の不足に対応しつつ、病理医には依頼元医の診断依頼趣旨が誤りなく伝達され、医業業務の効率化が図られる。サーバは、クラウドサーバであってもよく限定されず、病理医側又は外部機関に属していなくてもよい。病理医側が、電子メールにより通知されたリンクを選択することにより、サーバに記憶されている識別表示がされている整合リストが、通信手段を介して取得され、表示手段に表示されればよい。
【0038】
依頼元医側から届けられた依頼伝票をもとに、病理診断よりも上流の事務処理を担当する病理医側又は外部機関が、整合リストをサーバに記憶させておけばよい。例えば病理診断の合意や病理診断のタイミングに合わせて、サーバの病理標本管理手段に記憶されている整合リストを表示させるリンクを、サーバから電子メールで病理医に通知すればよい。
【0039】
第5の発明によれば、リンクの通知を受けた病理医側又は外部機関は、リンクの選択によりサーバに記憶された伝票情報がなす整合リストを表示させて確認でき、病理医側の病理診断に係るデータベースが外部に開放されていなくても、効率的で、取り違えがない病理診断をすることができるという効果を奏する。
【0040】
本発明の第6の発明は、第5の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、前記合意が確定される際に、前記受入確定手段が、前記整合リストの中から前記病理医が選択した前記病理標本情報について、前記合意が確定されて、確定表示が表示され、前記標本作成開始確定手段が、前記確定表示がされた前記病理標本情報が選択されることにより、標本作成の開始を確定させることを特徴としている。
【0041】
第6の発明によれば、外部機関が依頼元医側と病理医側とを仲介する場合であっても、依頼元医側との合意がされる際に、リンクを選択して整合リストを表示させ、依頼元医の診断所見を踏まえ、病理医側は病理診断依頼を受け入れ、外部機関は標本作成を開始することができる。これにより病理医側が病理診断を合意してから病理標本作成を開始するという基本ルールのもとに、外部機関に所属する臨床検査技師に的確なタイミングで標本作成をさせるという業務を手違いなく、効率的に実施することができるという従来にない有利な効果を奏する。
【0042】
本発明の第7の発明は、第6の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、依頼業務抽出手段として機能され、前記病理標本管理手段に、各々の病理標本情報に係る業務が、予め設定された進捗のいずれであるかと共に、少なくとも「要至急」又は「追加染色」のいずれかを含む特別業務には特別表示を記憶させて進捗が管理され、前記依頼業務抽出手段が、いずれかの前記進捗に該当する前記業務を、前記リストの中から抽出させ、前記表示手段には、抽出させた前記業務のリストと共に前記特別表示を表示させ、特別業務の進捗が管理可能とされることを特徴としている。
【0043】
患者の症状により至急に病理診断が必要である場合や、病理医に引き渡された病理標本の染色状態では、組織の形状・色相・明度が明確でないため、追加染色した別の病理標本が必要な場合もある。このような場合には、依頼順に病理診断されている流れとは、別に病理診断をする必要がある。
【0044】
第7の発明によれば、少なくとも「要至急」又は「追加染色」のいずれかを含む業務には、特別表示を記憶させて進捗が管理され、依頼業務抽出手段により、いずれかの進捗の業務管理をする際に、特別表示が併せて表示される。これにより、特別な進捗状態で管理すべき病理診断を見過ごすことなく、適切なタイミングで、効果的に実施することができる。
【0045】
本発明の第8の発明は、第7の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、結果通知手段として機能され、前記結果通知手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている、各々の病理診断結果の画像情報を表示するリンクを、前記通信手段を介して前記依頼元医に通知させ、前記依頼元医が前記リンクを選択することにより、前記画像情報がダウンロード可能とされていることを特徴としている。
【0046】
第8の発明によれば、病理医側の病理診断に係るデータベースを外部に開放させない状態で、病理医は、病理診断管理システムのデータベースに、画像情報からなる病理診断結果をアップロードさせる。これにより、依頼元医は、病理医側の病理診断に係るデータベースから切り離された状態であっても、病理診断結果を取り違えることなくダウンロードすることができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0047】
・第1の発明によれば、病理標本と異なるタイミングで届いた多数の病理標本情報の中から、病理医の手元に届く病理標本に応じた依頼伝票の画像データの確認が容易であり、病理医が患者の病理標本とその病理標本情報とを取り違えることがないという効果を奏する。
・第2の発明によれば、オリジナルな依頼伝票はオリジナルな外観状態のままで保持させ、光学文字認識させた文字情報をも使って効率的で信頼性の高い病理診断管理をすることができるという効果を奏する。
【0048】
・第3の発明によれば、病理診断依頼がされた病理標本情報の整備状態が明確となり、また、不完全な状態の病理標本情報の追跡が容易となり、漏れのない病理診断をすることができるという効果を奏する。
・第4の発明によれば、病理医側は、依頼元医側との合意がされる際に、識別表示が表示された病理標本情報が整った整合リストを確認すればよく、病理診断依頼の受入れ合意が容易であり、臨床検査技師も、タイミングを外して病理標本を作成することがないという効果を奏する。
【0049】
・第5の発明によれば、リンクの通知を受けた病理医側又は外部機関は、リンクの選択によりサーバに記憶された伝票情報がなす整合リストを表示させて確認でき、病理医側の病理診断に係るデータベースが外部に開放されていなくても、効率的で、取り違えがない病理診断をすることができるという効果を奏する。
・第6の発明によれば、病理医側が病理診断を合意してから病理標本作成を開始するという基本ルールのもとに、外部機関に所属する臨床検査技師に的確なタイミングで標本作成をさせるという業務を手違いなく、効率的に実施することができるという従来にない有利な効果を奏する。
【0050】
・第7の発明によれば、特別な進捗状態で管理すべき病理診断を見過ごすことなく、適切なタイミングで、効果的に実施することができる。
・第8の発明によれば、依頼元医は、病理医側の病理診断に係るデータベースから切り離された状態であっても、病理診断結果を取り違えることなくダウンロードすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図3】病理診断管理システムのブロック図(実施例1)。
【
図7】病理医宛のリンク通知メールの例(実施例1)。
【
図18】追加染色業務フローの説明図(実施例1)。
【
図21】病理診断管理システムのブロック図(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0052】
依頼元医の診断所見が示された依頼伝票に基づいた病理標本情報により、病理診断業務が管理される病理診断管理システムに、標本コード読取手段と標本選択表示手段とを備えさせた。標本コード読取手段により病理標本に貼付した標本コードを読み取り、多数の病理標本情報のリストの中から、標本コードに対応した標本番号が付された病理標本情報を、標本選択表示手段により選択させ、病理医の手元にある病理標本に応じた病理標本情報と、それに係る依頼伝票の画像データとを表示させる。これにより、病理標本と異なるタイミングで届いた、多数の依頼伝票に基づく病理標本情報の中から、病理医の手元にある病理標本に応じた病理標本情報について依頼元医の診断所見を含めて確認することができ、病理医が病理標本とその病理標本情報とを取り違えることがない。
【0053】
また、病理診断管理システムに光学式情報取得手段と是正支援手段とを備えさせ、所定の様式による依頼伝票の全体の画像データと、依頼伝票の各欄の文字データ又は画像データからなる電子データとを取得し、両者を画面に対比して表示させ、誤認識情報の是正を容易にさせる是正支援手段を備えさせた。これにより、直筆で書かれ誤認識が発生しやすい依頼伝票であっても正確に記録でき、信頼性の高い病理標本情報に基づいて病理診断をすることができる。
【0054】
本発明は、依頼元医側と病理医側とを、臨床検査技師が所属する外部機関が仲介し「三者が協働」して病理診断業務が行われる場合、依頼元医側と病理医側の「二者が協働」して病理診断業務が行われる場合のいずれにも適用することができる。
【実施例0055】
実施例1の病理診断管理システム1は、依頼元医側が検体を採取すると共に依頼伝票を作成し、外部機関が、病理標本を作成すると共に、病理標本情報に統合されて表をなす文字データからなる索引情報を作成しサーバにアップロードさせ、検体と依頼伝票と病理標本の運搬をする。そして病理医側が依頼伝票に基づく伝票情報の取得から整合確認、病理診断、病理診断結果のまとめ業務を行う分担とされる。理解を容易にするために、まず
図1、
図2を参照して業務フローを説明する。
【0056】
実施例1では、情報処理手段として機能されるサーバを備えた病理診断管理システム1を、
図1から
図17を参照して説明する。
図1と
図2は、業務フローの説明図を示し、各業務が進行する順序を数字で示している。「依頼元医側」の処理は「数字を円」で囲って示している。「外部機関の運搬」は「数字を細線の正方形」で囲って示し、「外部機関」の他の処理は「数字を太線の正方形」で囲って示している。サーバにおける処理は「数字だけ」で示している。病理医側の処理は「数字を六角形」で囲って示している。なお、「依頼元医側」とは、依頼元医を含む組織をいい、「病理医側」とは病理医を含む組織をいい、「依頼元医」「病理医」と区別している。夫々が外部機関と同様に窓口担当者を含んでいる。
【0057】
図3は、病理診断管理システム1のブロック図を示している。
図4から
図17は、各業務フローに対応した画面表示の具体例を示し、理解を容易にするために、各図の左に業務フローに対応する番号を示している。
図18は、追加染色が必要となった場合の追加染色業務フローを示している。なお、
図4、
図10、
図11が外部機関の画面表示を示し、
図5から
図6、
図8、
図9、
図12から
図16が病理医側の画面表示を示し、
図7は、病理医宛に送られるメールの画面表示、
図17が診断結果ダウンロードの画面表示を示している。
【0058】
病理診断管理システム1により管理される病理診断業務は、予め依頼元医側と病理医側とが事前の業務合意をした上で、第1ステップから第18ステップまでの各ステップを経て進行する(
図1と
図2参照)。「事前の業務合意」とは、予め年度毎に何件の病理診断業務を委託・受託するか等を定めた業務合意をいい、後述する第8ステップの「合意の確定」とは、整った依頼伝票についての病理診断を受入れる合意をしたことをいう。
【0059】
第1ステップでは、依頼元医が患者から検体を採取し、所定の様式による依頼伝票(
図6のA参照)を作成する。依頼伝票の様式は、画像情報として取得すべき「依頼元医による診断所見」と「シェーマ図」とが所定位置に示される様式であればよく、限定されない。依頼元医側に電子カルテシステムが導入されている場合には、依頼伝票の写しだけでなく、電子カルテを印字した写しも届けられると好適である。以下、理解を容易にするために、依頼伝票だけに基づいて説明する。
【0060】
第2ステップでは、依頼元医側から検体と依頼伝票とが外部機関に引き渡される。第3ステップでは、標本番号を索引情報の一つに含んだ表が構成されるように、依頼伝票毎に標本番号を発番し、依頼受付日等と共に、サーバの記憶手段がなす病理標本管理手段に、外部機関がアップロードして記憶させる(
図4参照)。索引情報とは、少なくとも標本番号を含み、伝票情報から病理標本情報に至る情報を含んだ表形式データをなす電子データのうち、抽出・検索の対象となる情報を含んだ、一行をなす情報をいう
【0061】
標本番号は「符号」「西暦の下2桁」「年毎の通し番号」を組として「H」「22」「000001」としているが限定されない。一件の依頼伝票に基づいて、複数の病理標本を作成する場合には、標本番号の後に枝番を付与させればよい。索引情報は「標本番号,依頼受付日,依頼機関名」のように一行で示され、依頼情報から病理診断情報に至る、標本番号を含んだ病理標本情報の全体表を構成する。索引情報には、業務進捗状態を示す、例えば合意がされたことを示す「識別表示○」「(病理標本)未到着」「(病理)診断中」等、「要至急」「追加染色」といった特別表示等も随時追加される(
図8参照)。
【0062】
第4ステップでは、外部機関から病理医側に、依頼伝票を運搬して引き渡す。第5ステップでは、病理医側が、OCRを使って、依頼伝票から伝票情報をなす電子データを取得し、標本番号に対応する電子データとして、既に外部機関が作成している索引情報に引き続き、サーバにアップロードさせる。病理標本管理手段として機能される記憶手段に、前記全体表をなす電子データとして、依頼情報が統合される。
【0063】
具体的には、依頼伝票の全体画像(第1画像データ)をなすPDF形式の第1電子データと、依頼伝票の文字情報をなす文字データと依頼伝票の所定位置にある依頼元医診断所見とシェーマ図とがなすJPG形式の第2画像データとからなる第2電子データとが、病理標本管理手段の標本番号に対応された全体表(
図6参照)に記憶される。
【0064】
文字データは、索引情報をなす、第3ステップで付与された標本番号に引き続き「(標本番号・・),患者名,・・」のように、標本番号に連なる情報として記録され、索引情報とされればよい。画像データは「第1画像データ_標本番号」のように、標本番号を含むファイル名としておくとよい。
【0065】
そして、少なくともオリジナルの依頼伝票全体をなす第1電子データ(
図6符号A参照)が関連づけられている索引情報には、全体画像が記憶されていることを示す識別表示「〇」が付与されて、病理標本管理手段に記憶される(
図5参照)。識別表示が索引情報に付与されている病理標本情報は、第7ステップにおいて整合リストに選別される。
【0066】
第6ステップでは、病理医側において、病理医に至るまでの上流工程の作業として、標本番号に対応した第1電子データと第2電子データとが、サーバの処理手段がなす是正支援手段により、モニター等の表示手段に対比可能に表示され(
図6参照)、オリジナルの依頼伝票全体をなす第1電子データ(
図6符号A参照)と、第2電子データをなす文字データとに食い違いがないかが目視で確認され、光学読取の段階で誤認識があれば、文字データを是正する。
【0067】
第7ステップでは、サーバの処理手段が病理標本情報選別手段として機能され、サーバの記憶手段が病理標本管理手段として記憶している病理標本情報の中から、識別表示を有する病理標本情報のみを整合リストに選別させる。併せて、識別表示が欠落している病理標本情報は未整合リストとしておけばよい(
図8参照)。この段階においては、索引情報の進捗状態は「未確定」とされている。そして病理医宛に、整合リストを表示させるリンクを記載した電子メールを送信させる(
図7参照)。
【0068】
第8ステップでは、病理医が、整合リストを表示させるリンクを選択して、索引情報の進捗状態が「未確定」とされた識別表示が表示された整合リストの各リンクを選択して伝票情報の画像データを閲覧し(
図8参照)、個々の病理診断依頼の内容を確認して、サーバの処理手段がなす受入確定手段により、個々の病理診断の「合意確定」がされる。合意の確定がされると、整合リストをなす各々の索引情報の進捗状態が「確定」とされる(
図9参照)。
【0069】
第9ステップでは、サーバからリンクを示した電子メールにより、外部機関宛に合意の確定通知がされ、確定表示がされた整合リストが確認できるようになる。第9ステップにおいても、図は省略しているが第7ステップと同様にして、受入れが確定した整合リストを表示させるリンクを記載した電子メールが、外部機関宛に送信されればよい。第10ステップでは、サーバの処理手段が標本作成開始確定手段として機能され、外部機関において、確定表示された整合リストが選択され「作成開始」をさせる。そして、標本作成が開始される(
図10参照)。
【0070】
第11ステップでは、標本作成の開始が確定された整合リストの範囲で、臨床検査技師が、第2ステップで受領した検体を切り出し、染色し、病理標本を作成する。併せて病理標本をなすプレパラートに、索引情報をなす標本番号に対応した標本コードが印刷されたシールを貼付させる。標本コードは、プレパラートの限られた範囲に貼付する必要があるため、多くの情報量を記録できる、例えば二次元コードが好適であるが、バーコード、RFIDタグ等であってもよく限定されない。
【0071】
第12ステップでは、外部機関が、作成した病理標本に係る標本作成情報と、染色情報と、検体切出画像とを、標本番号を対応させて、サーバにアップロードさせる(
図11参照)。標本作成情報とは「(標本番号),患者名,依頼機関名,検体番号,臓器名,・・・」等を一行に記録した表形式データであればよく、染色情報とは「(標本番号)、特殊染色名(HE染色名等)、特殊染色コード,・・」等を一行に記録した表形式データであればよい。検体切出画像とは、患者から摘出した「検体の写真と、病理標本を切り出した位置を示す検体切断面を示す絵図」等である。標本作成情報、染色情報、検体切出画像は、伝票情報と共に、それぞれ病理標本情報の一部をなす。
【0072】
第13ステップでは、サーバにおいて、第12ステップでアップロードされた標本作成情報等を、標本番号が対応している索引情報に統合させる。統合後には、整合リストに表示された索引情報に基づいて、伝票情報に係る電子データだけでなく、標本作成情報に係る電子データも一体の全体表として閲覧可能となる。
【0073】
第14ステップでは、外部機関から病理医側に、標本コードを貼付した病理標本が、運搬され引き渡される。第15ステップでは、病理医側において、引き渡された病理標本に付された標本コードが、標本コード読取手段をなす二次元コードリーダで読み取られる。そうすると、「未到着」の状態の整合リストが表示されていた画面の上部の標本番号の欄に、二次元コードに対応した標本番号が表示され(
図12参照)、次の画面に遷移する。
【0074】
第16ステップでは、選択表示手段をなすサーバの処理手段により、病理医側の表示手段には、「未到着」の状態の整合リストの中から、二次元コードリーダで読み取った二次元コードに対応した病理標本情報のみが選択されて表示される画面に遷移し(
図13参照)、病理標本の到着が確認される。ここでは、病理医が、標本コードに対応する病理標本情報がブランクでないことを確認し、電子データと取り違いのない病理標本であることを確認する。選択表示とは、実施例1では、病理標本情報の詳細を一つの画面に表示させているが、リストの中から一つの索引情報を強調表示させるだけであってもよく、態様は限定されないことは勿論のことである。
【0075】
第17ステップでは、病理診断の際にも、標本番号に対応する病理標本情報が選択され、患者情報、依頼元医診断所見を参照しつつ病理診断を行う。ここでも病理標本に付された標本コードを二次元コードリーダで読み取り、診断待ちにある病理標本情報の整合リストの中から(
図14参照)、標本コードに対応した病理標本情報の索引情報のみが選択可能とされ、その標本番号に対応した伝票情報に係る画像データ(
図15参照)を表示させる。そして画像データを確認して病理診断を行う。
【0076】
病理診断が完了したときにも、病理標本に付された標本コードをリーダで読み取り、病理診断結果をなす病理診断書の画像情報を、サーバにアップロードさせる(
図16)。第18ステップでは、依頼元医がサーバから通知された電子メールのリンク(図を省略)を選択して、病理診断結果ダウンロードサイトに至り、病理診断書をダウンロードする(
図17)。
【0077】
次に、病理診断管理システム1の構成を、
図3のブロック図を参照しつつ、実施例1の発明の特徴的な構成である、標本選択表示手段、是正支援手段等を、対応する
図4から
図17に示した画面表示を参照し、上記業務フローに沿って順に説明する。各々の画面表示の構成は例示であって、限定されないことは勿論のことである。
【0078】
病理診断管理システム1は、サーバ10と、依頼元医側、外部機関、病理医側が、夫々使用するコンピュータ(以下、PCという)と、サーバと夫々のPCを通信させる通信手段20と、OCRからなる光学式情報取得手段30と、標本コード読取手段40とからなる。サーバの処理手段100と記憶手段200とが、情報処理手段をなす処理手段と記憶手段として機能され、外部機関PC50、病理医側PC60、依頼元医側PC70の夫々の表示手段が、情報処理手段をなす表示手段として機能される。
【0079】
伝票情報を取得する取得手段である光学式情報取得手段30は、周知のOCRであればよい。光学式情報取得手段30は、依頼伝票からPDF形式、JPG形式等の画像データを取得すると共に、OCRの光学文字認識により依頼伝票の文字情報を文字データに変換して取得し、病理医側PC60に、依頼伝票を第1電子データと第2電子データとして取得させる。電子カルテの写しがあるときには、電子カルテの写しの画像データ・文字データも同様に病理医側PC60に取得させる。
【0080】
病理標本に貼付された標本コード41を読み取る標本コード読取手段40は、周知の二次元コードリーダ、バーコードリーダ、RFIDリーダ等、標本コードの種別に対応したリーダであればよい。標本コード読取手段40は、標本コード41から標本番号を取得し、通信手段20を介してサーバ10に通信させる。
【0081】
外部機関PC50、病理医側PC60、依頼元医側PC70は、いずれも制御手段と記憶手段と表示手段と入力手段を備えた汎用コンピュータであればよく、記憶手段に記憶される電子データが、夫々の業務範囲に応じて異なっている(
図3参照)。制御手段は中央演算処理装置(以下、CPUという)であればよく、記憶手段はHDD、SSD、RAM、ROM等であればよく限定されない。表示手段はモニター等であればよく、入力手段はキーボード、マウス等であればよい。
【0082】
外部機関PC50の記憶手段には、第3ステップで、サーバにアップロードさせた標本番号、電子データをなす索引情報51(
図4参照)と、第12ステップでサーバにアップロードさせた標本作成情報52、染色情報53、検体切出画像情報54が記憶される(
図11参照)。また、追加染色を行った案件については、追加染色情報55も記憶される。
【0083】
病理医側PCの記憶手段には、第5ステップでサーバにアップロードさせた第1電子データ61と第2電子データ62(
図6参照)と、第17ステップで病理診断の最終確定を行ったときの病理診断結果情報63、すなわち病理診断書のデータと、サーバにアップロードさせる病理診断書のPDF形式、JPG形式等の画像情報が記憶されている(
図16参照)。依頼元医PCの記憶手段には、ダウンロードした病理診断書の画像情報が記憶される。
【0084】
サーバ10は、処理手段100と記憶手段200とを備え、予めユーザ登録がされた者だけがサーバにアクセス可能となるようにユーザ管理がされている。サーバ10がなす処理手段100はCPUであればよく、記憶手段200はHDD、SSD、RAM、ROM等であればよく限定されない。サーバ10はクラウドサーバであってもよく、態様は限定されない。ここでサーバ10とは、病理診断業務に係る病理標本情報を管理する情報処理手段であり、各医療機関が独自に管理する外部に閉じたデータベースとは異ならせると好適である。
【0085】
サーバの処理手段100は、以下に示す特徴的な機能をなすように構成される。まず、サーバは、標本選択表示手段101として、病理医が病理標本を確認して病理診断をする際、病理診断結果をアップロードする際に、読み取った病理標本の標本コードに対応した病理標本情報のみが選択され、依頼伝票の画像データが確認容易に、病理医の画面に表示されるように機能される。
【0086】
サーバは是正支援手段102として機能され、伝票情報が電子データとして取得された後、第6ステップで、第1電子データと、第2電子データをなす文字データと第2画像データとを、病理医側PCの表示手段に、対比して表示させて、文字データの誤認識の是正を支援する(
図6参照)
【0087】
サーバは病理標本情報選別手段103として、第5ステップで、少なくとも第1電子データが索引情報に対応付けられた病理標本情報に識別表示を付して、整合リストに選別させる(
図5参照)。サーバはリスト通知手段104として機能され、第7ステップで、整合リストを表示させるリンクを、通信手段を介して電子メールにより、病理医に通知させ(
図7参照)、第9ステップでは外部機関に通知させ、電子データが整った整合リストを確認可能とさせる。
【0088】
サーバは病理標本情報表示手段105として機能され、表示された整合リストの中から選択された病理標本情報について、少なくとも第1電子データを含んだ前記病理標本情報を表示させる(
図6参照)。サーバは受入確定手段106として機能され、第8ステップで整合リストの中から病理医が選択した前記病理標本情報について合意を確定させて、確定表示を表示させる(
図9参照)。サーバは標本作成開始確定手段107として機能され、第10ステップで、確定表示がされた病理標本情報が選択されることにより、標本作成の開始を確定させる(
図10参照)。
【0089】
サーバは結果通知手段108として機能され、第17ステップから第18ステップにかけて、各々の病理診断結果の画像情報を表示するリンクを、依頼元医に通知させ、依頼元医がリンクを選択することにより、画像情報をダウンロード可能とさせる(
図17参照)。サーバは依頼業務抽出手段109として機能され、抽出させる進行状況に応じた業務を抽出し、リストを表示すると共に、特別表示を表示させ、特別業務の進捗を管理可能とさせる(
図9参照)。
【0090】
サーバはユーザ認証手段110として機能され、予め記憶手段に記憶させた認証判定用ユーザ情報215の権限に応じた業務範囲において、サーバに記憶された情報とサーバの機能とを利用可能としている。例えば、依頼元医側、外部機関は病理診断に係る機能について利用が制限される。
【0091】
サーバは電子メールアドレス登録手段111として機能され、依頼元医側、外部機関、病理医側における病理診断情報の取得用の電子メールアドレス216を記憶手段に記憶させる。この電子メールアドレスは整合リストなどを表示させるリンクを通知する際等に利用される。
【0092】
サーバの記憶手段200は、第3ステップ(
図2参照)以下で、病理標本管理手段201として機能され(
図3参照)、標本番号毎の病理標本情報202を索引情報として使用できるように、各ステップにおいて表示させる病理標本情報のリストに、第1電子データ203と第2電子データ204を含む電子データを対応付けて記憶する。標本が作成されたときには、伝票情報と標本作成情報を統合させた病理標本情報205として記憶する。更に、各々の索引情報に第1電子データの登録があれば、その索引情報と共に識別表示207を記憶させ、整合リスト206として記憶させる。
【0093】
この整合リストの索引情報には、文字データ是正済、診断完了等の進捗状況を示す進捗情報208、「要至急」「追加染色」等の通常の管理ルートとは異なることを示す「特別表示」209、合意の確定を示す確定表示情報210等が、業務進行に応じて統合されて記憶される。(各図参照)。これらの文字データは、整合リストに統合された後には、索引情報として利用可能となる。また第12ステップの病理標本作成情報等においては、整合リストの索引情報に、染色情報211、検体切出画像情報212がアップロードされ統合されて記憶される(
図11参照)。
【0094】
また、追加染色がされたときには、整合リストの索引情報に追加染色情報213が統合されて記憶される。追加染色情報とは、追加染色の依頼合意、新たに作成された追加染色の病理標本についての標本作成情報・染色情報・検体切出画像情報等である。第17ステップで、病理診断結果情報214(
図16参照)がアップロードされたときには、索引情報に病理診断結果の画像情報が統合されて記憶される。
【0095】
以上のように、標本番号を必須とする索引情報に、各ステップの業務に応じた情報が随時、追加・統合されるため、業務進行のどの時点においても、索引情報の選択により、常に最新の病理標本情報が確認可能となる。
【0096】
以下、ユーザがサーバにアクセスして業務を行うときの具体的な画面表示を示して、より具体的に説明する(
図4から
図16参照)。画面表示のトップバーには、組織名と担当者名とが表示され、画面表示のサイドバーには、そのユーザの業務範囲に対応する機能一覧が表示される。各図では理解を容易にするため選択した機能を太枠で囲って強調表示し、未選択の機能は斜線で示している。画面中央部には、選択された機能に応じた関連情報が表示される。
【0097】
なお、理解を容易にするために、各図に示す画面表示の左側に、各画面表示に対応する業務フローのステップ番号を示している。なお、第1ステップの検体採取、第2、第4、第14ステップの運搬、第11ステップの病理標本作成の各業務に係る画面表示の図は省略している。
【0098】
図4に示す画面表示においては、第3ステップで、外部機関が作成した、索引情報をなす標本番号の電子データを、サーバにアップロードさせ、サーバに病理標本情報をなす表形式データを「新規作成」する。外部機関は、外部機関PCから通信手段を介してサーバにアクセスし、ユーザ認証をして自らに許可された業務範囲に対応する画面表示を表示させ、サイドバーから「新規作成」を選択する。
【0099】
予め作成した表形式データ、例えば、「特別表示欄」「状態欄」「識別表示欄」「標本番号欄」「依頼受付日欄」「依頼機関名欄」等の項目からなり、別に作成したCSVファイルを選択して、画面上部に配置された「情報取込」を選択し、サーバにアップロードさせ、「確定」の選択により記憶手段に記憶させる。表形式データは、伝票情報から病理標本情報に至るリストの索引情報をなす標本番号を含むデータとされる(
図4参照)。標本番号とともに、依頼受付日、依頼元医の依頼機関名をなす文字データを含めてもよいことは勿論のことである。病理標本管理手段として機能されるサーバをなす記憶手段は、標本番号に連なって一行に示された文字データを索引情報として記憶させる。
【0100】
図5に示す画面表示においては、第5ステップで、病理医側が、第1電子データと第2電子データをサーバに取得させる「伝票取込」の画面表示を示している。上部に配置された「伝票情報取込」により、予め病理医側がOCRを使って作成し、病理医側PCに記憶させてあるPDF形式の第1電子データと、JPG形式の依頼元医診断所見・シェーマ図等からなる第2画像データ等を、対応する標本番号を選択してサーバにアップロードさせる。索引情報に第1電子データが対応付けられたときには、リストの識別表示欄に「〇」の識別表示が表示される。
【0101】
ここで病理標本情報選別手段が、識別表示のある索引情報だけを整合リストに選別させる。識別表示のない索引情報については、例えば網掛表示をさせて整合リストから除外する。また、表形式データに「要至急」が含まれていたときには、他の案件と容易に区別可能となるように、特別表示欄に「要至急」が表示される(
図5参照)。リストをなす索引情報のいずれかが選択されると、電子データの是正を支援する画面表示に遷移する(
図6参照)。
【0102】
図6に示す「電子データ是正」の画面表示は、病理医側における病理医に整合リストが送られる前の工程の第6ステップで使用される。整合リストに表示されたいずれかの索引情報を選択して「是正支援手段」により2つの電子データを対比表示させ、是正が容易にされた状態で、電子データを是正する。画面上部には、標本番号が示され、画面中央部には、第1電子データと第2電子データが左右に対比可能に示される。病理医側において、所定様式の依頼伝票のPDF形式の第1電子データと、光学文字認識された文字データとを対比させながら、文字データに誤認識がないかを確認する。
【0103】
誤認識が発見されたときには、下部に配置された「修正」を選択して、文字データの欄を是正可能な状態とさせて、正しい文字データに是正する(
図6参照)。また、第2画像データをなす依頼元医の診断所見とシェーマ図のJPG形式のデータに画像の欠け等がないかを確認し、電子データに不備がないときには、下部に配置された「確定」を選択する。
図5のリストに戻る場合には、下部に配置された「戻る」を選択する。全ての病理標本情報の誤認識の是正が完了し、「確定」が選択されると、第7ステップに進む(
図6参照)。
【0104】
第7ステップでは、病理標本情報選別手段として機能されるサーバが、文字データ是正済みであり、識別表示がされている索引情報を「整合リスト」に選別させる。更に、第7ステップで、整合リストを表示させる情報サイトのリンクが、病理医に電子メールで通知される(
図7参照)。病理医は、このリンクを選択することにより、整合リストを表示させることができるようになる。なお、電子データの是正は、病理医に至る前の病理医側ではなく、外部機関が担当してもよいことは勿論のことである。
【0105】
図8に示す「受入確定」の画面表示においては、第8ステップで、整合リストに選別された「未確定」と表示されている索引情報を、病理医側で受入確定手段により受け入れる。第7ステップで、整合リストに新たな病理標本情報が追加されたときには、病理医側の操作画面には、サイドバーに表示された「受入確定」の位置に報知マークが表示される。報知マークが表示されているときには、整合リストを画面に表示させればよい。
【0106】
整合リストに並んだ、新しく追加された「未確定」と表示されている索引情報(
図8参照)を1件ずつ選択して内容を確認し、不備がない索引情報については、進捗を示す状態を「確定」に変更し、不備が発見された場合には、状態を「未確定」とする。そうすると「未確定」とさせた索引情報は、整合リストから除外されて、未整合リストに振り分けられる。未整合リストについては、「不備理由」の記入欄に、未確定となった理由、例えば第3ステップでアップロードされた索引情報をなす「患者名」に誤記がある、依頼伝票が未到着である等が記入される。
【0107】
図9に示す画面表示においては、整合リストの索引情報を確定又は未確定のいずれかとした後に、確定状態である整合リストの下部に配置された「合意確定」を選択し、合意を確定させる。合意確定により、個々の病理診断依頼について、病理診断情報が整っていることを確認して、病理診断業務を実施することを合意したことを記録することができる。「合意確定」が選択されると、第9ステップに進み、サーバから合意の確定された整合リストを表示させるリンクを示した電子メールが外部機関に通知される。
【0108】
図10に示す「標本作成開始確定」の画面表示においては、第9ステップの合意の確定通知がされてから、第10ステップで、外部機関により標本作成開始が確定される。新たに追加された合意があるときには、サイドバーに表示された「標本作成開始確定」の位置に報知マークが表示される。外部機関は「標本作成開始確定」の画面を表示させて、合意の確定がされた「整合リスト」を確認し、整合リストの下部に配置された「作成開始」を選択し、標本作成の開始を確定させる。
【0109】
併せて、外部機関は、合意が未確定の「未整合リスト」を確認し、索引情報の誤記については、第3ステップに戻り誤記を修正し、伝票の未到着については運搬状況を確認する。整合リストに選別された索引情報については標本作成が開始されるため、進捗の状態は「標本作成中」に更新される。第11ステップで、外部機関に所属する臨床検査技師が病理標本を作成する。病理標本が完成したら、第12ステップに進む。
【0110】
図11に示す「標本情報アップロード」の画面表示においては、第12ステップで、外部機関が、予め作成した標本番号を付した標本作成情報等をアップロードする。ここでは、上部に配置された「標本作成情報取込」を選択し、標本作成情報の表形式データを取り込ませ、中央部に配置された「染色情報取込」を選択し、染色情報の表形式データを取り込ませ、下部に配置された「検体切出画像取込」を選択し、検体切出画像を取り込ませる。
【0111】
標本作成情報が取り込まれると、標本番号毎に、患者名、依頼元医の依頼機関名、検体番号、臓器名、性別、年齢等のリストが表示される。染色情報が取り込まれると、標本番号毎に、特殊染色名、特殊染色コード等のリストが表示される。標本作成情報、染色情報ともに、スライドバーにより全体が閲覧可能とされているとよい。
【0112】
検体切出画像が取り込まれると、ファイル名に標本番号を含む画像一覧が表示される。電子データを取り込みなおす場合には、画面内に配置された「取消」を選択する。ここで「確定」を選択すると、第13ステップに進み、サーバにおいて取り込んだ電子データが標本番号毎の索引情報に統合され、進捗の状態が、病理標本が病理医側に届けられる前であることを示す「未到着」とされる(
図12参照)。それから第14ステップで病理標本の運搬がされる。
【0113】
図12に示す「到着確認」の画面表示においては、状態が「未到着」となっている。ここで、病理標本情報の整合リストを表示させた状態で、到着した病理標本に貼付された標本コードを標本コード読取手段により取得すると、標本コードが通信手段を介してサーバに送信される。サーバにおいて標本コードに対応した標本番号が抽出され、標本番号に対応する病理標本情報だけが取得され「標本番号」の欄に表示され、病理標本に対応した病理標本情報が、整合リストにおいて選択可能とされる。
【0114】
第16ステップで、選択可能な標本番号を選択すると、その病理標本に係る状態が「到着」に変更され、
図13の選択した一件の病理標本情報の画面表示に遷移する。
図13に示す「到着確認」の画面表示には、病理標本情報の索引情報をなす標本番号、臓器名、特殊染色、患者名、性別、年齢等が一覧表示され、オリジナルの依頼伝票を確認する「伝票確認」が表示される。
【0115】
予め受領している依頼伝票に係る病理標本情報と、到着した病理標本とが対応していることを確認したときには、「確定」を選択し、齟齬があるときには「取消」を選択する。図示を省略しているが、標本コードを読み取ったときに対応する標本番号が索引情報に登録されていなかったとき、標本コードが読み取れなかったときには、病理標本情報が表示されないでブランクの状態となる。到着確認が完了すると、索引情報をなす進捗情報が「未診断」に更新され、第17ステップに進む。
【0116】
図14に示す「診断リスト」の画面表示は、第17ステップで、病理医側PCの表示手段に表示される「診断リスト」の画面を示している。診断リストには、病理医が注意すべき、診断の進捗の状態に応じて「未診断」、「診断中」、「1次診断済」と順次、状態が更新される。「要至急」・「追加染色」等の通常とは異なる工程で管理されるべき病理標本が、見落されないように、整合リストには特別表示が常に表示される。
【0117】
「未診断」の状態があるときには、サイドバーに表示された「診断リスト」の位置に報知マークが表示される。病理医が病理標本の標本コードを標本コード読取手段により取得すると、到着確認の際と同様にして、標本コードに対応する標本番号が取得され「標本番号」の欄に表示され、病理標本に対応した病理標本情報が、リストにおいて選択可能とされる。
【0118】
病理医が、選択可能な病理標本情報を選択すると、
図15に遷移する。
図15に示す「診断リスト」は、第17ステップで病理診断をする画面を示している。病理医は、
図15に示された画面表示において伝票情報等を参照して病理診断をし、その診断所見を入力する。各病理標本情報は、拡大表示されるようにされているとよい。
【0119】
図15には、画面上部に標本番号、進捗状況、検体切出画像の一覧、患者情報の一覧等が表示され、画面左下に依頼伝票の画像データ、標本情報、染色情報がタブの切り替えにより表示され、画面右下に病理医の1次診断における診断所見記入欄が表示される。また、画面下部に「追加染色依頼」の選択表示、1次診断を確定させる「1次診断確定」が表示される。1次診断を確定させると、診断所見記入欄が編集禁止状態となる。
【0120】
次に、最終診断の確定が可能な第2の病理医が、1次診断の診断所見が追加された病理標本情報を閲覧し、病理診断書を作成する。第2の病理医PCにおいて、診断結果情報をPDF形式等の画像データとし、ファイル名に標本番号を付与する。画像データを作成したら、サイドバーから最終診断結果アップロードを選択して、病理診断書のアップロード画面を表示させる(
図16参照)。
【0121】
図16に示す「病理診断結果アップロード」は、診断結果をアップロードする画面表示を示している。画面表示上部に配置された「病理診断書取込」を選択し、病理医側PCに予め記憶させた病理診断結果の画像情報を選択すると、取り込んだ画像情報のファイル名と画像が表示され、最終確認がされる(
図16参照)。
【0122】
ここで「最終診断確定」が選択されると、標本番号に対応して病理診断結果をなす画像情報が統合される。ここで進捗情報が「診断完了」に更新され、更に「公開」ボタンが選択されると、依頼元医等に病理診断書を閲覧可能にする状態とさせ、第18ステップに進む。
【0123】
図17に示す「病理診断結果ダウンロード」は、第18ステップで、依頼元医が病理診断の結果をダウンロードする画面表示を示している。依頼元医には「公開」された病理診断書を表示させるリンクが電子メール等により通知され、そのリンクを選択することにより、病理診断結果ダウンロードの画面が表示される。
【0124】
病理診断結果ダウンロードの画面には、一人の患者に係る病理診断書に係る索引情報と共に、病理診断書の画像情報をダウンロードさせるリンクが示される。画面内に、一人の患者に係る病理診断書をダウンロードさせるリンクだけしか表示されないため、依頼元医が別の患者の病理診断書を誤ってダウンロードすることがなく、病理診断結果をダウンロードする際の取り違いを防ぐこともできる。
【0125】
図18は、追加染色を行うときの追加業務フローの説明図を示している。第17ステップで、病理医が病理標本を確認したときに、病理診断ができる十分な染色がされていないと判断したときは、依頼元医に追加染色依頼を行う(
図18のα参照)。次に、依頼元医の同意を得た上で、追加染色の合意が病理医に通知される(
図18のβ参照)。
【0126】
追加染色の合意がされたときには、外部機関に追加染色した病理標本の作成を指示する(
図18のγ参照)。これらの依頼は、紙の伝票でされてもよく、電子メールでされてもよく、サーバ13を介して通知がされてもよい。外部機関は追加染色の指示に従って、ステップ2で、引き渡されている検体から、染色条件を変えて、通常の業務フローの第11ステップと同様に、新たに病理標本を作成する。
【0127】
追加染色に係る病理標本情報は、元の標本番号に枝番を付して区別すると共に、特別表示に「追加染色」を表示して管理させる(
図14参照)。これ以降は、通常の業務フローと同様に進行するため説明を省略する。
【実施例0128】
実施例2では、依頼元医側が、依頼伝票と病理標本とを作成して病理医側に運搬し、病理医側が依頼伝票に基づく電子データの作成と病理診断とを行う病理診断管理システム2を、
図19から
図21を参照して説明する。
図19と
図20は、病理診断管理システム2における業務フローを示し、各業務が進行する順序を数字で示している。「依頼元医側」が行う作業は「数字を円」で囲って示し、病理医側が行う作業は「数字を六角形」で囲って示している。情報処理手段をなす病理医側PCにおける処理は、「数字だけ」で示している。なお病理医側PCは業務を委託する委託先PCであってもよい。
【0129】
病理診断管理システム2では、事前の合意に基づき、依頼伝票と病理標本とが同時に、病理医側に引き渡されるため(
図20参照)、実施例1のように「受入確定」、「合意の確定通知」、「病理標本作成の確定」を行う必要がなく、対応するステップを省略させている。病理医側PC又は委託先PC(以下、病理医側PC等という)を情報処理手段として機能させればよい(
図19,
図21参照)。以下、各ステップについて、実施例1と重複する部分については省略して簡単に説明する。
【0130】
第1ステップで、依頼元医の所属する医療機関において、依頼元医が依頼伝票を作成し、依頼元医側に所属する臨床検査技師が、事前の業務合意に基づいて病理標本を作成する(
図20)。第2ステップで、依頼元医側から、依頼伝票と病理標本とが同時に病理医側に運搬され、病理医側に引き継がれる。このとき、標本作成情報と染色情報等の写しも届けられる。
【0131】
第3ステップから第11ステップまでは、病理医側の担当であり、病理医側PC等により処理される。第3ステップでは、病理医側で標本番号を付与し、電子データを病理医側PC等に入力させる。第4ステップでは、病理医側PC等により識別表示が付与される。第5ステップでは、病理医側が第1電子データと第2電子データとを対比させ、文字データを是正させる。
【0132】
第6ステップでは、病理医側PC等が整合リストを選別させる。実施例2では、病理医側PCで整合リストを選別させれば、病理標本情報等のダウンロードが必須ではないため、リスト通知は省略させてもよい。病理医側が委託先PCにてサーバ業務を運用する場合には、リストを通知させればよい。第7ステップでは、病理医側で、病理標本に標本コードを貼付させる。第8ステップでは、病理医側で、標本作成情報・染色情報・検体切出画像を病理医側PCに入力させる。
【0133】
第9ステップでは、病理医側PCが索引情報に標本作成情報を統合させる。第10ステップと第11ステップでは、病理標本情報のリストを病理医側PC等の画面に表示させた状態で、標本コードを読取らせ、標本選択表示手段により、リストの中から対応する病理標本のみを選択表示させる。ここで、実施例1の到着確認作業と同様に、病理標本情報と病理標本とが対応しているかが確認される。
【0134】
第12ステップでは、病理医が病理診断をし、病理診断書を作成する。第13ステップでは、依頼元医が病理診断結果を取得する。病理診断書は、画像データとした病理診断書を電子メール等を介して取得してもよいが、これに限定されない。
【0135】
次に、病理診断管理システム2の構成を、
図21を参照して説明する。実施例1と共通する構成については、同一の符号を付し説明を省略している。病理診断管理システム2は、病理医側PC又は委託先PC80と、光学式情報取得手段30と、標本コード読取手段40と、表示手段と入力手段とを情報処理手段としている。なお、外部機関に委託しない場合には病理医側PCのみで運用すればよい。
【0136】
処理手段は、是正支援手段、病理標本情報選別手段、標本選択表示手段、依頼業務通知手段として機能されればよく、外部に委託しない場合には、実施例1で病理医と外部機関との間で行われる意思確認とリスト通知に必要であった機能は省略してもよい。
【0137】
病理標本管理手段として機能される記憶手段には、実施例1と同様に索引情報と各電子データとが対応付けられ記憶される。
【実施例0138】
実施例3では、病理標本が外部機関を経て病理医側に届くルートと、病理標本が依頼元医側から直接に病理医側に届くルートとを並行して管理することができる病理診断管理システム3を、
図22から
図24を参照して説明する。
図22は、2つのルートが並行して管理される業務フローを示している。
図23は、病理診断医療機関の操作画面の具体例を示している。
図24は、外部機関の仲介の有無により選別させた整合リストを示している。
【0139】
図22は、実施例1で説明した外部機関の仲介「有」のルートを左側に示し、実施例2で説明した外部機関の仲介「無」のルートを右側に示している。仲介「無」のルートには、第4ステップと、第8から第10ステップと、第14ステップに対応する作業がないため、図示を省略している(
図23の破線枠参照)。
【0140】
病理診断管理システム3は、実施例1と同様に、サーバが情報処理手段をなす処理手段と記憶手段として機能される。なお、外部機関の仲介が無い場合についても、サーバがなす情報処理手段は外部機関に管理させると好適である。電子データを病理医側も作成できるように、病理診断医療機関の操作画面のサイドバーには、「新規作成」、「整合リスト」、「標本情報アップロード」の機能も備えている(
図23参照)。
【0141】
また、索引情報に予め「仲介の有無」を登録させている(
図23太枠参照)。仲介「有」が登録されているときには仲介「有」の業務フローの順に業務が進み、索引情報に仲介「無」が登録されているときには、仲介「無」の業務フローの順に業務が進む(
図22参照)。仲介「無」の場合には、運搬に係る第4ステップと第14ステップを省略すると共に、第8ステップから第10ステップに対応する操作(
図8から
図10参照)を省略し、第11ステップ(
図11参照)に進む。
【0142】
具体的には、第7ステップにおいて病理標本情報が整っている索引情報が整合リストに選別されるときに、外部機関の仲介「有」の場合には、仲介「有」の整合リストに選別される(
図24の上段整合リスト)。ここで上段整合リストの近傍にある「受入確定」が選択されたときには、「受入確定」の操作画面に進み(
図8参照)、実施例1と同様に業務フローが進行する(
図22の仲介「有」ルート参照)。
【0143】
第7ステップにおいて、外部機関の仲介「無」の場合には、仲介「無」の整合リストに選別される(
図24の下段整合リスト)。ここで下段整合リストの近傍にある「標本情報アップロード」を選択したときには、「受入確定」と「標本作成開始確定」のステップを省略して、「標本情報アップロード」の操作画面に進み(
図9参照)、実施例2と同様に業務フローが進行する(
図22の仲介「無」ルート参照)。なお、標本作成情報等をアップロードする第12ステップ以降は、仲介の有無で分割しないで統合させた整合リストとすればよい。
【0144】
いずれのルートから病理標本を受け入れる場合であっても、第5ステップで是正済みの病理標本情報のリストから、第15ステップと第16ステップにおいて、手元にある病理標本の標本コードに対応する病理標本情報により依頼伝票の画像データを表示させ、病理標本と病理標本情報の取り違いがない状態で、第17ステップで病理診断を開始させる。
【0145】
そのため、外部機関の仲介「有」のルートで、依頼伝票(第4ステップ)と病理標本(第14ステップ)とが異なるタイミングで引き渡されても、外部機関の仲介「無」のルートで、病理標本の作成(第1ステップ)とは異なるタイミングで標本コードが貼付されても(第11ステップ)、病理医の手元では、依頼伝票の画像データが表示されて確認されるため、病理標本と病理標本情報とを取り違えることがない。
【0146】
(その他)
・実施例1で示した依頼元医側、外部機関、病理医側の夫々が担当する事務手続きの業務範囲は例示に過ぎない。各組織が、どの業務範囲を担当するかは、合意に応じて変更されてもよい。例えば、外部機関により、第1電子データと第2電子データを作成して、文字データの誤認識を是正させてもよい。
・実施例2では、依頼元医側の医療機関が病理標本を作成する例を説明したが、病理医側が病理標本を作成してシステムを運用してもよいことは勿論のことである。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0147】
1,2,3…病理診断管理システム、
10…サーバ、20…通信手段、30…光学式情報取得手段、
40…標本コード読取手段、50…外部機関PC、60…病理医側PC、
70…依頼元医側PC、80…病理医側PC又は委託先PC、41…標本コード、
51…索引情報、52…標本作成情報、53…染色情報、54…検体切出画像情報、
55…追加染色情報、61…第1電子データ、62…第2電子データ、
63…病理診断結果情報、
100…処理手段、200…記憶手段、
101…標本選択表示手段、102…是正支援手段、
103…病理標本情報選別手段、104…リスト通知手段、
105…病理標本情報表示手段、106…受入確定手段、
107…標本作成開始確定手段、108…結果通知手段、109…依頼業務抽出手段、
110…ユーザ認証手段、111…電子メールアドレス登録手段、
201…病理標本管理手段、202…病理標本情報、203…第1電子データ、
204…第2電子データ、205…病理標本情報、206…整合リスト、
207…識別表示、208…進捗情報、209…「特別表示」、210…確定表示情報、
211…染色情報、212…検体切出画像情報、213…追加染色情報、
214…病理診断結果情報、215…認証判定用ユーザ情報、216…電子メールアドレス
【手続補正書】
【提出日】2023-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理診断管理システムにおいて、
依頼元医の診断所見が示された依頼伝票が病理医側に届けられ、前記依頼伝票に係る病理診断依頼について依頼元医側と前記病理医側の合意がされてから、病理医に病理標本が届けられ、病理標本情報が電子データを基に管理される病理診断業務に適し、
処理手段と記憶手段と表示手段と光学式情報取得手段と標本コード読取手段とを含んだ病理診断管理システムであって、
前記電子データが、前記病理標本情報に係る電子データとされ、
前記処理手段が、標本選択表示手段として機能され、
前記記憶手段が、病理標本管理手段として機能され、
前記依頼伝票が、少なくとも前記診断所見を所定位置に示す様式とされ、
前記病理標本が、前記依頼伝票に係る患者の検体から作成され、
前記光学式情報取得手段が、前記依頼伝票の前記所定位置に示された前記診断所見を含んだ画像データを取得し、
前記病理標本情報が、前記依頼伝票に示された患者情報を含む伝票情報と、前記病理標本の作成に係る病理標本作成情報と、前記画像データとからなり、
同一の標本番号が、前記伝票情報と前記病理標本作成情報と前記画像データとに付与され、前記病理標本情報が前記標本番号により紐づけられ、
前記病理標本情報が、リストをなすように前記病理標本管理手段に記憶され、
前記標本番号に対応した標本コードが、前記病理標本に貼付され、
前記表示手段が、前記病理標本管理手段に記憶された前記リストを表示させ、
前記リストに、複数の前記病理標本情報が含まれていても、
前記病理医側の工程において、
前記標本コード読取手段が、前記病理標本に貼付された前記標本コードを読み取り、
前記標本選択表示手段が、読み取った前記標本コードに対応した前記標本番号により紐づけられた前記病理標本情報を、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから抽出して、前記表示手段に表示された前記リストに選択可能に表示させ、
前記病理医側が、選択可能とされた前記病理標本情報を選択することにより、
更に、前記標本選択表示手段が、選択された前記病理標本情報に付与された前記標本番号に紐づく前記依頼伝票の画像データを、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから抽出して前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする病理診断管理システム。
【請求項2】
前記処理手段が、是正支援手段として機能され、
前記光学式情報取得手段により取得される前記画像データが、第1電子データと第2電子データとに含まれ、
第1電子データが、前記依頼伝票の全体の前記伝票情報を画像データとした第1画像データとされ、
第2電子データが、第2画像データと文字データとからなり、第2画像データが前記依頼伝票の前記所定位置に示された前記伝票情報の画像データとされ、前記文字データが前記所定位置以外に示された前記伝票情報を光学文字認識させた文字データとされ、
第1電子データと第2電子データとが、前記病理標本管理手段に記憶され、
前記是正支援手段が、前記病理標本管理手段から第1電子データと第2電子データとを読み出し、第1画像データと第2画像データをオリジナルとしたままで、第1画像データからなる第1電子データと、第2画像データと前記文字データとからなる第2電子データとを、前記表示手段に対比可能に表示させ、光学式文字認識により誤認識された前記文字データの是正を支援させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の病理診断管理システム。
【請求項3】
前記処理手段が、病理標本情報選別手段として機能され、
前記病理標本管理手段が、前記リストを記憶すると共に、各々の前記病理標本情報に、少なくとも第1電子データの登録がされていることを示す識別表示を併せて記憶させ、
前記病理標本情報選別手段が、前記識別表示が表示されている病理標本情報のみを整合リストとして選別し、前記識別表示が表示されていない病理標本情報を前記整合リストから除外して、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記整合リストを前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の病理診断管理システム。
【請求項4】
更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、
前記合意がされる際に、
前記病理医が、前記整合リストの中から前記病理標本情報を選択することにより、
前記受入確定手段が、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、前記合意を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に確定表示を表示させ、
病理標本作成者が、前記確定表示が表示された合意済みの前記病理標本情報を選択することにより、
前記標本作成開始確定手段が、選択された合意済みの前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、標本作成の開始を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に標本作成中の表示を表示させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の病理診断管理システム。
【請求項5】
更に、サーバと、通信手段とを含み、
前記サーバが、前記処理手段と、前記記憶手段として機能され、
前記依頼元医側と前記病理医側とを外部機関が仲介し、前記外部機関が、前記依頼元医側から検体を引き継いで、前記病理標本の作成を分担する病理診断業務に適用され、
前記サーバがなす前記処理手段が、前記標本選択表示手段と、前記是正支援手段と、前記病理標本情報選別手段と、リスト通知手段と、病理標本情報表示手段として機能され、
前記サーバがなす前記記憶手段が、前記病理標本管理手段として機能され、
少なくとも前記病理標本情報選別手段が、前記病理標本情報を前記整合リストに選別させた際に、
前記リスト通知手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストを表示させるリンクを、前記通信手段を介して電子メールにより前記病理医側又は前記外部機関の少なくともいずれかに通知させ、
前記リンクを通知された前記病理医側又は前記外部機関が、前記リンクを選択することにより、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストが、前記表示手段に表示され、
前記整合リストを表示させた前記病理医側又は前記外部機関が、前記整合リストの中から前記病理標本情報を選択することにより、
前記病理標本情報表示手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づく前記病理標本情報を前記表示手段に表示させ、
表示された前記病理標本情報に少なくとも第1電子データが含まれている、
ことを特徴とする請求項3に記載の病理診断管理システム。
【請求項6】
更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、
前記合意がされる際に、
前記病理医が、前記整合リストの中から前記病理標本情報を選択することにより、
前記受入確定手段が、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、前記合意を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に確定表示を表示させ、
病理標本作成者が、前記確定表示が表示された合意済みの前記病理標本情報を選択することにより、
前記標本作成開始確定手段が、選択された合意済みの前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、標本作成の開始を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に標本作成中の表示を表示させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の病理診断管理システム。
【請求項7】
更に、前記処理手段が、依頼業務抽出手段として機能され、
前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報がなす整合リストには、進捗情報と特別表示情報とが記憶され、
前記進捗情報は、少なくとも文字データ是正済、病理標本到着、病理診断中、診断完了を含む各々の前記病理標本情報に係る業務の進捗状態を示す情報とされ、
前記特別表示情報は、少なくとも「要至急」又は「追加染色」のいずれかを含む特別業務に係ることを示す「特別表示」を表示させる情報とされ、
前記依頼業務抽出手段が、いずれかの前記進捗状態に該当する前記業務を、前記病理標本情報管理手段に記憶されている前記整合リストの中から抽出させ、前記表示手段には、抽出させた前記業務に係る整合リストと共に、前記特別表示を常に表示させ、特別業務の進捗が管理可能とされる、
ことを特徴とする請求項6に記載の病理診断管理システム。
【請求項8】
更に、前記処理手段が、結果通知手段として機能され、
前記結果通知手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている、各々の病理診断結果の画像情報を表示するリンクを、前記通信手段を介して前記依頼元医に通知させ、前記依頼元医が前記リンクを選択することにより、前記画像情報がダウンロード可能とされている、
ことを特徴とする請求項7に記載の病理診断管理システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明の第1の発明は、病理診断管理システムにおいて、依頼元医の診断所見が示された依頼伝票が病理医側に届けられ、前記依頼伝票に係る病理診断依頼について依頼元医側と前記病理医側の合意がされてから、病理医に病理標本が届けられ、病理標本情報が電子データを基に管理される病理診断業務に適し、処理手段と記憶手段と表示手段と光学式情報取得手段と標本コード読取手段とを含んだ病理診断管理システムであって、前記電子データが、前記病理標本情報に係る電子データとされ、前記処理手段が、標本選択表示手段として機能され、前記記憶手段が、病理標本管理手段として機能され、前記依頼伝票が、少なくとも前記診断所見を所定位置に示す様式とされ、前記病理標本が、前記依頼伝票に係る患者の検体から作成され、前記光学式情報取得手段が、前記依頼伝票の前記所定位置に示された前記診断所見を含んだ画像データを取得し、前記病理標本情報が、前記依頼伝票に示された患者情報を含む伝票情報と、前記病理標本の作成に係る病理標本作成情報と、前記画像データとからなり、同一の標本番号が、前記伝票情報と前記病理標本作成情報と前記画像データとに付与され、前記病理標本情報が前記標本番号により紐づけられ、前記病理標本情報が、リストをなすように前記病理標本管理手段に記憶され、前記標本番号に対応した標本コードが、前記病理標本に貼付され、前記表示手段が、前記病理標本管理手段に記憶された前記リストを表示させ、前記リストに、複数の前記病理標本情報が含まれていても、前記病理医側の工程において、前記標本コード読取手段が、前記病理標本に貼付された前記標本コードを読み取り、前記標本選択表示手段が、読み取った前記標本コードに対応した前記標本番号により紐づけられた前記病理標本情報を、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから抽出して、前記表示手段に表示された前記リストに選択可能に表示させ、前記病理医側が、選択可能とされた前記病理標本情報を選択することにより、更に、前記標本選択表示手段が、選択された前記病理標本情報に付与された前記標本番号に紐づく前記依頼伝票の画像データを、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから抽出して前記表示手段に表示させることを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
本発明の第2の発明は、第1の発明の病理診断管理システムにおいて、前記処理手段が、是正支援手段として機能され、前記光学式情報取得手段により取得される前記画像データが、第1電子データと第2電子データとに含まれ、第1電子データが、前記依頼伝票の全体の前記伝票情報を画像データとした第1画像データとされ、第2電子データが、第2画像データと文字データとからなり、第2画像データが前記依頼伝票の前記所定位置に示された前記伝票情報の画像データとされ、前記文字データが前記所定位置以外に示された前記伝票情報を光学文字認識させた文字データとされ、第1電子データと第2電子データとが、前記病理標本管理手段に記憶され、前記是正支援手段が、前記病理標本管理手段から第1電子データと第2電子データとを読み出し、第1画像データと第2画像データをオリジナルとしたままで、第1画像データからなる第1電子データと、第2画像データと前記文字データとからなる第2電子データとを、前記表示手段に対比可能に表示させ、光学式文字認識により誤認識された前記文字データの是正を支援させることを特徴としている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
本発明の第3の発明は、第2の発明の病理診断管理システムにおいて、前記処理手段が、病理標本情報選別手段として機能され、前記病理標本管理手段が、前記リストを記憶すると共に、各々の前記病理標本情報に、少なくとも第1電子データの登録がされていることを示す識別表示を併せて記憶させ、前記病理標本情報選別手段が、前記識別表示が表示されている病理標本情報のみを整合リストとして選別し、前記識別表示が表示されていない病理標本情報を前記整合リストから除外して、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記整合リストを前記表示手段に表示させることを特徴としている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
本発明の第4の発明は、第3の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、前記合意がされる際に、前記病理医が、前記整合リストの中から前記病理標本情報を選択することにより、前記受入確定手段が、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、前記合意を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に確定表示を表示させ、病理標本作成者が、前記確定表示が表示された合意済みの前記病理標本情報を選択することにより、前記標本作成開始確定手段が、選択された合意済みの前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、標本作成の開始を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に標本作成中の表示を表示させることを特徴としている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
本発明の第5の発明は、第3の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、サーバと、通信手段とを含み、前記サーバが、前記処理手段と、前記記憶手段として機能され、前記依頼元医側と前記病理医側とを外部機関が仲介し、前記外部機関が、前記依頼元医側から検体を引き継いで、前記病理標本の作成を分担する病理診断業務に適用され、前記サーバがなす前記処理手段が、前記標本選択表示手段と、前記是正支援手段と、前記病理標本情報選別手段と、リスト通知手段と、病理標本情報表示手段として機能され、前記サーバがなす前記記憶手段が、前記病理標本管理手段として機能され、少なくとも前記病理標本情報選別手段が、前記病理標本情報を前記整合リストに選別させた際に、前記リスト通知手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストを表示させるリンクを、前記通信手段を介して電子メールにより前記病理医側又は前記外部機関の少なくともいずれかに通知させ、前記リンクを通知された前記病理医側又は前記外部機関が、前記リンクを選択することにより、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストが、前記表示手段に表示され、前記整合リストを表示させた前記病理医側又は前記外部機関が、前記整合リストの中から前記病理標本情報を選択することにより、前記病理標本情報表示手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づく前記病理標本情報を前記表示手段に表示させ、表示された前記病理標本情報に少なくとも第1電子データが含まれていることを特徴としている。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
本発明の第6の発明は、第5の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、前記合意がされる際に、前記病理医が、前記整合リストの中から前記病理標本情報を選択することにより、前記受入確定手段が、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、前記合意を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に確定表示を表示させ、病理標本作成者が、前記確定表示が表示された合意済みの前記病理標本情報を選択することにより、前記標本作成開始確定手段が、選択された合意済みの前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、標本作成の開始を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に標本作成中の表示を表示させることを特徴としている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
本発明の第7の発明は、第6の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、依頼業務抽出手段として機能され、前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報がなす整合リストには、進捗情報と特別表示情報とが記憶され、前記進捗情報は、少なくとも文字データ是正済、病理標本到着、病理診断中、診断完了を含む各々の前記病理標本情報に係る業務の進捗状態を示す情報とされ、前記特別表示情報は、少なくとも「要至急」又は「追加染色」のいずれかを含む特別業務に係ることを示す「特別表示」を表示させる情報とされ、前記依頼業務抽出手段が、いずれかの前記進捗状態に該当する前記業務を、前記病理標本情報管理手段に記憶されている前記整合リストの中から抽出させ、前記表示手段には、抽出させた前記業務に係る整合リストと共に、前記特別表示を常に表示させ、特別業務の進捗が管理可能とされることを特徴としている。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理診断管理システムにおいて、
依頼元医の診断所見が示された依頼伝票が病理医側に届けられ、前記依頼伝票に係る病理診断依頼について依頼元医側と前記病理医側の合意がされてから、病理医に病理標本が届けられ、病理標本情報が電子データを基に管理される病理診断業務に適し、
処理手段と記憶手段と表示手段と光学式情報取得手段と標本コード読取手段とを含んだ病理診断管理システムであって、
前記処理手段が、標本選択表示手段として機能され、
前記記憶手段が、病理標本管理手段として機能され、
前記依頼伝票に示された伝票情報が、前記診断所見と、患者に関する情報とを含み、
前記患者に関する情報が、患者の氏名を含む病理診断依頼に係る情報とされ、
前記依頼伝票の様式が、少なくとも前記診断所見を所定位置に示すと共に、前記患者に関する情報を前記所定位置以外に示す様式とされ、
前記光学式情報取得手段が、前記所定位置に示された前記診断所見を含む伝票情報の画像データを取得し、
前記病理標本情報が、少なくとも前記患者に関する情報の電子データを含み、前記画像データの取得後には前記画像データが追加され、前記病理標本の作成後には病理標本作成情報の電子データが追加された電子データとされ、
同一の標本番号が、前記患者に関する情報の電子データと前記画像データと前記病理標本作成情報の電子データとに付与され、前記病理標本情報が前記標本番号により紐づけられ、
前記病理標本情報が、病理標本情報リストをなすように前記病理標本管理手段に記憶され、
前記表示手段が、前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報リストを表示させ、
前記病理標本が、前記依頼伝票に係る患者の検体から作成されたときに、
前記標本番号に対応した標本コードが、前記病理標本に貼付され、
前記病理標本作成情報が、前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報リストをなす前記病理標本情報に追加され、
前記病理標本作成情報が追加された前記病理標本情報リストに、複数の前記病理診断依頼に係る前記病理標本情報が含まれていても、
前記病理医側の工程において、
前記標本コード読取手段が、前記病理標本に貼付された前記標本コードを読み取り、
前記標本選択表示手段が、読み取った前記標本コードに対応した前記標本番号により紐づけられた前記病理標本情報を、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報リストのなかから抽出して、前記表示手段に選択可能に表示させ、
前記病理医側が、選択可能とされた前記病理標本情報を選択することにより、
更に、前記標本選択表示手段が、選択された前記病理標本情報の標本番号に紐づいた前記画像データを、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから抽出して前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする病理診断管理システム。
【請求項2】
前記処理手段が、是正支援手段として機能され、
前記光学式情報取得手段により取得される前記画像データが、第1電子データと第2電子データとに含まれ、
第1電子データが、前記依頼伝票の全体の前記伝票情報を画像データとした第1画像データとされ、
第2電子データが、第2画像データと文字データとからなり、第2画像データが前記依頼伝票の前記所定位置に示された前記診断所見を含む伝票情報の画像データとされ、前記文字データが前記所定位置以外に示された前記患者に関する情報を光学文字認識させた文字データとされ、
同一の前記標本番号が、第1電子データをなす第1画像データと、第2電子データをなす第2画像データと前記文字データの夫々に付与され、
第1電子データと第2電子データとが、前記病理標本管理手段に記憶され、
前記病理診断業務に係る担当者が、前記表示手段に表示された前記病理標本情報リストのなかから、いずれかの前記病理標本情報を選択することにより、
前記是正支援手段が、選択された前記病理標本情報の標本番号に紐づけられた第1電子データと第2電子データとを、前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報のなかから読み出し、第1画像データと第2画像データをオリジナルとしたままで、第1画像データからなる第1電子データと、第2画像データと前記文字データとからなる第2電子データとを、前記表示手段に並べて表示させ、光学式文字認識により誤認識された前記文字データの是正を支援させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の病理診断管理システム。
【請求項3】
前記処理手段が、病理標本情報選別手段として機能され、
前記病理標本管理手段が、前記病理標本情報リストを記憶すると共に、各々の前記病理標本情報に、少なくとも第1電子データの登録がされていることを示す識別表示を併せて記憶させ、
前記病理標本情報選別手段が、前記識別表示が表示されている病理標本情報のみを整合リストとして選別し、前記識別表示が表示されていない病理標本情報を前記整合リストから除外して、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記整合リストを前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の病理診断管理システム。
【請求項4】
更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、
前記依頼元医側と前記病理医側との間で、整った依頼伝票についての病理診断を受入れる合意がされる際に、
前記病理医が、前記整合リストのなかから前記病理標本情報を選択することにより、
前記受入確定手段が、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、前記合意を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に確定表示を表示させ、
病理標本作成者が、前記確定表示が表示された合意済みの前記病理標本情報を選択することにより、
前記標本作成開始確定手段が、選択された合意済みの前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、標本作成の開始を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に標本作成中の表示を表示させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の病理診断管理システム。
【請求項5】
更に、サーバと、通信手段とを含み、
前記サーバが、前記処理手段と、前記記憶手段として機能され、
前記依頼元医側と前記病理医側とを外部機関が仲介し、前記外部機関が、前記依頼元医側から検体を引き継いで、前記病理標本の作成を分担する病理診断業務に適用され、
前記サーバがなす前記処理手段が、前記標本選択表示手段と、前記是正支援手段と、前記病理標本情報選別手段と、リスト通知手段と、病理標本情報表示手段として機能され、
前記サーバがなす前記記憶手段が、前記病理標本管理手段として機能され、
少なくとも前記病理標本情報選別手段が、前記病理標本情報を前記整合リストに選別させた際に、
前記リスト通知手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストを表示させるリンクを、前記通信手段を介して電子メールにより前記病理医側又は前記外部機関の少なくともいずれかに通知させ、
前記リンクを通知された前記病理医側又は前記外部機関が、前記リンクを選択することにより、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストが、前記表示手段に表示され、
前記整合リストを表示させた前記病理医側又は前記外部機関が、前記整合リストのなかから前記病理標本情報を選択することにより、
前記病理標本情報表示手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づく前記病理標本情報を前記表示手段に表示させ、
表示された前記病理標本情報に少なくとも第1電子データが含まれている、
ことを特徴とする請求項3に記載の病理診断管理システム。
【請求項6】
更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、
前記依頼元医側と前記病理医側との間で、整った依頼伝票についての病理診断を受入れる合意がされる際に、
前記病理医が、前記整合リストのなかから前記病理標本情報を選択することにより、
前記受入確定手段が、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、前記合意を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に確定表示を表示させ、
病理標本作成者が、前記確定表示が表示された合意済みの前記病理標本情報を選択することにより、
前記標本作成開始確定手段が、選択された合意済みの前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、標本作成の開始を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に標本作成中の表示を表示させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の病理診断管理システム。
【請求項7】
更に、前記処理手段が、依頼業務抽出手段として機能され、
前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報がなす前記整合リストには、進捗情報と特別表示情報とが記憶され、
前記進捗情報は、少なくとも文字データ是正済、病理標本到着、病理診断中、診断完了を含む各々の前記病理標本情報に係る業務の進捗状態を示す情報とされ、
前記特別表示情報は、少なくとも「要至急」又は「追加染色」のいずれかを含む特別業務に係ることを示す「特別表示」を表示させる情報とされ、
前記依頼業務抽出手段が、いずれかの前記進捗状態に該当する前記業務を、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストのなかから抽出させ、前記表示手段には、抽出させた前記業務に係る整合リストと共に、前記特別表示を常に表示させ、特別業務の進捗が管理可能とされる、
ことを特徴とする請求項6に記載の病理診断管理システム。
【請求項8】
更に、前記処理手段が、結果通知手段として機能され、
前記結果通知手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている、各々の病理診断結果の画像情報を表示するリンクを、前記通信手段を介して前記依頼元医に通知させ、前記依頼元医が前記リンクを選択することにより、前記画像情報がダウンロード可能とされている、
ことを特徴とする請求項7に記載の病理診断管理システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理診断を依頼する依頼元医側で作成された、シェーマ図と称されている患部の絵図と依頼元医の診断所見等が記載された依頼伝票に係る情報と、病理標本の現物(以下、病理標本という)とが、異なるタイミングで病理医に届いても、それらが取り違われることなく管理されて、依頼元医の診断所見を踏まえて病理標本が病理医に診断される病理診断管理システムに関する。更に、病理診断に係る情報が高いセキュリティの下で、関係者の間で共有される病理診断管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
依頼元医が患者から検体を採取し、その検体から臨床検査技師が病理標本を作成し、その病理標本を病理医が診断している。病理医は経験と高度な診断技術を備えた有資格者であることが必要であり、その数が限られていることに加えて、病理医には多くの依頼元から様々なタイミングで病理標本が搬入される。
【0003】
病理医側の医療機関には、病理標本の作成をする臨床検査技師が在籍し、その臨床検査技師が作成した病理標本を病理医が診断しているのが一般的であるが、病理医側には外部の依頼元医側が作成した病理標本が引き渡されることもある。また、病理医がいない医療機関もあり、病理医の数も不足しているために、「外部機関」が依頼元医側から病理標本をなす検体を引き継いで、臨床検査技師に病理標本を作成させ、複数の病理医が所属している病理診断医療機関に病理診断を集中させて、医療業務を効率化する必要がある。
【0004】
病理診断の際には、まず、患者情報、患者の症状情報、依頼元医情報と共に、依頼元医の診断所見やシェーマ図、病理医への診断希望事項等を記載した依頼伝票が、依頼元医側から病理医側に引き渡され、病理診断を委託する合意がなされる。合意がされた後に、臨床検査技師により、依頼元医が内視鏡等を使って患者の患部から採取した検体から、病理標本が作成される。病理医は、依頼元医の診断所見等を熟慮して病理標本を診断し、その診断結果を電子データにし、病理診断結果情報が依頼元医と共有される。
【0005】
病理標本に係る情報には、患者の氏名・生年月日・住所等のプライバシー情報、患者の生命に係る依頼元医の診断所見、病理診断希望等の情報等が示された依頼伝票の情報(以下、伝票情報という)が電子データにされて、病理標本と一体に管理される。また、伝票情報には、患者を特定することができるプライバシー情報や、患者の病歴や症状等の極めて秘匿性の高い情報等の、外部に流出させることができない情報が含まれている。
【0006】
また、手書きカルテの原本は依頼元医が保持する必要があり、電子カルテの情報も電子データのままでは外部に持ち出せないようにデータ管理がされるため、手書きカルテ又は印字した電子カルテの写しにより依頼元医の依頼伝票が作成される。病理医は、前記写しに基づいた依頼伝票の電子データと、検体と、検体から作成された病理標本とにより、病理診断をする。
【0007】
病理診断を委託する際には、診断に適し、患部の症状を正しく評価できる病理医が診断したことを、記録に残すために、依頼元医側から病理医側に、事前に依頼伝票が届けられ、病理診断の依頼・受入の合意がされてから、病理標本が病理医側に引き渡されている。依頼伝票が届くタイミングより遅れて、外部機関や病理医側の窓口担当者等を経て、合意の順に限らない順序で多数の病理標本が病理医に届くために、依頼伝票と病理標本とに取り違いが発生する可能性があった。
【0008】
また、依頼伝票には、依頼元医による手書きの診断所見、シェーマ図等の絵図も含まれているために、依頼伝票を電子データにして管理することは困難であった。具体的には、キーボード入力された電子カルテの写しを、Optical Character Recognition/Reader(以下、OCRという。)により電子データにするだけでも、OCRの誤認識により文字情報がオリジナルとは変わることもある。依頼元医による診断所見、シェーマ図等はオリジナルな状態のまま保持する必要がある。オリジナルを保ちつつ、正しい電子データにより、適正に電子データを管理し、病理標本の取り違えが防止できることが必要とされていた。
【0009】
患者に係る電子データは、人のプライバシー、生命に係る極めて秘密性の高い情報であるため、電子データであっても、電子データが作成された医療機関外に開放することはできず、医療機関を跨いで電子データの共有が困難であり、依頼元医側の病理用の第1データベースと、病理医側の病理用の第2データベースが外部にそれぞれ閉じた状態とされている。
【0010】
依頼元医と病理医が病理情報を共有するためには、依頼元医側の病理用の第1データベースと、病理医側の病理用の第2データベースが外部にそれぞれ閉じていても、高いセキュリティを保ちつつ、伝票情報に基づく病理標本情報の電子データ及び病理診断結果の電子データを、依頼元医側から病理医側までが閲覧できる病理診断管理システムが必要とされていた。
【0011】
また、検体が染色された病理標本は、顕微鏡などにより拡大され、それに表れた組織の形状・色相・明度の違いにより診断されるが、染色が薄く、十分な病理診断ができないこともある。その場合には、病理医の指導のもとに追加染色した病理標本を作成することが再び合意され、新たな病理標本が作成され、病理医に引き渡される。一方、至急に病理診断を要する場合もある。追加染色や要至急の病理診断の場合には、病理標本情報と病理標本とが、一般の管理工程とは異なる工程で引き渡されるため、この場合にも取り違いが発生する可能性があった。
【0012】
特許文献1には、依頼者が病理診断を外部に依頼するタイミング、標本を作成するタイミング、依頼書と標本を関連付けるタイミングなどで取り違えるリスクを軽減することを課題とした病理診断管理システムの技術が開示されている。この技術によればプレパラートに記録される標本管理コードを、依頼者端末により生成させた識別子と、標本作成者独自のコードとから構成させる等して、取り違いのリスクを軽減するとされている。
【0013】
従来、患者名や依頼者名が担当者の目視により確認されていたが、依頼管理コード、患者名、依頼者名の一部、日付等を用いたユニークな標本管理コードを用いることにより、プレパラートと依頼データとの対応付けがされるため、取り違いのリスクが低減されるとされている。
【0014】
しかし、標本管理コードに特殊なアルゴリズムに基づくユニークなコードを用いたとしても、通番によるユニークなコードで管理する場合と同様であり、依頼伝票に示された依頼元医の診断所見を含めて確認されなければ、病理標本の取り違いをなくすことはできなかった。特に、事前に依頼元医と病理医との合意をするための依頼伝票を引き渡すルートと、病理診断のために病理標本を引き渡すルートとが別である場合には、病理標本を単に標本管理コードにより管理するだけでは、取り違いのリスクの低減は困難であった。
【0015】
特許文献2には、病理医による適切な診断を可能としながら、病理医が迅速に病理診断を進めることができるとする病理診断処理装置の技術が開示されている。この病理診断処理装置は、診断受付手段と、病理医情報格納手段と、病理医選択手段等とを含んだ装置とされ、患者のデジタル画像データがサーバに送信された後に、病理医選択手段により登録された病理医の中から選択された病理医に、病理診断を依頼するとされている。
【0016】
優先順位に従って、順に病理医が選択されるため、優先順位が上位の病理医により診断が断られても、下位の病理医により病理診断がされ、適切な診断と共に迅速な病理診断を進めることができるとされている。しかし、この病理診断処理装置は、標本からバーチャルスライドが作成されてから、バーチャルスライドの電子データを、選択される病理医に通信させる態様に係る技術であり、病理標本と依頼元医の診断所見が示された依頼伝票を扱う態様には適用できなかった。
【0017】
特許文献3には、外部機関による臨床検体検査システムの技術が開示されている。この技術によれば、外部臨床検査機関と医療機関の各機関の管理サーバをインターネット接続させ、相互に必要な電子データをデータベースに記憶させ、効果的な情報の伝達方式を提供させ、相互の情報が活用可能であるとされている。
【0018】
医療機関において、検査材料の識別子がバーコード化されラベルとして印刷され、そのラベルが貼り付けられた検査材料入り容器が,箱詰めされて引き渡される。外部臨床検査機関においては、医療機関により箱詰めされた検査材料入り容器に、貼付されたラベルのバーコードにより、検査材料が管理可能とされている。しかし、この技術の場合にも、検査材料以外のカルテ等の依頼元医の診断所見が示された依頼伝票が想定されておらず、依頼伝票と検査容器とを、異なるタイミングで外部臨床検査機関に受け入れさせる態様には適用できないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2019-53664号公報
【特許文献2】特開2011-48438号公報
【特許文献3】特開2005-182507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、依頼元医の診断所見を含んだ依頼伝票と、病理標本と、それらに係る電子データとが、複雑な経路で病理医に引き渡されても、依頼伝票に係る情報と、病理標本と、それらに係る電子データとが対応しており、取り違いが発生せず、依頼元医の診断所見を踏まえて、病理標本が病理医に診断される病理診断管理システムを提供することを課題としている。更に、一般の管理工程とは異なる工程で病理診断業務が進められても、取り違いが発生しにくく、依頼元医側と病理医側の夫々の病理に係るデータベースが閉じていても、高いセキュリティを保ちつつ、病理標本情報の共有化ができる病理診断管理システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の発明は、病理診断管理システムにおいて、依頼元医の診断所見が示された依頼伝票が病理医側に届けられ、前記依頼伝票に係る病理診断依頼について依頼元医側と前記病理医側の合意がされてから、病理医に病理標本が届けられ、病理標本情報が電子データを基に管理される病理診断業務に適し、処理手段と記憶手段と表示手段と光学式情報取得手段と標本コード読取手段とを含んだ病理診断管理システムであって、前記処理手段が、標本選択表示手段として機能され、前記記憶手段が、病理標本管理手段として機能され、前記依頼伝票に示された伝票情報が、前記診断所見と、患者に関する情報とを含み、前記患者に関する情報が、患者の氏名を含む病理診断依頼に係る情報とされ、前記依頼伝票の様式が、少なくとも前記診断所見を所定位置に示すと共に、前記患者に関する情報を前記所定位置以外に示す様式とされ、前記光学式情報取得手段が、前記所定位置に示された前記診断所見を含む伝票情報の画像データを取得し、前記病理標本情報が、少なくとも前記患者に関する情報の電子データを含み、前記画像データの取得後には前記画像データが追加され、前記病理標本の作成後には病理標本作成情報の電子データが追加された電子データとされ、同一の標本番号が、前記患者に関する情報の電子データと前記画像データと前記病理標本作成情報の電子データとに付与され、前記病理標本情報が前記標本番号により紐づけられ、前記病理標本情報が、病理標本情報リストをなすように前記病理標本管理手段に記憶され、前記表示手段が、前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報リストを表示させ、前記病理標本が、前記依頼伝票に係る患者の検体から作成されたときに、前記標本番号に対応した標本コードが、前記病理標本に貼付され、前記病理標本作成情報が、前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報リストをなす前記病理標本情報に追加され、前記病理標本作成情報が追加された前記病理標本情報リストに、複数の前記病理診断依頼に係る前記病理標本情報が含まれていても、前記病理医側の工程において、前記標本コード読取手段が、前記病理標本に貼付された前記標本コードを読み取り、前記標本選択表示手段が、読み取った前記標本コードに対応した前記標本番号により紐づけられた前記病理標本情報を、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報リストのなかから抽出して、前記表示手段に選択可能に表示させ、前記病理医側が、選択可能とされた前記病理標本情報を選択することにより、更に、前記標本選択表示手段が、選択された前記病理標本情報の標本番号に紐づいた前記画像データを、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから抽出して前記表示手段に表示させることを特徴としている。
【0022】
依頼元医は、病理診断依頼をする前に、患者を診断して検体を摘出し、その診断所見に基づいて病理診断を病理医に依頼する。病理医は、病理標本だけでなく、依頼元医の診断所見、例えば経過観察や病状の進行速度等の情報を踏まえて、病理診断をすることにより、より的確な病理診断をすることができる。依頼伝票には、紙カルテのほかに電子カルテの写しが含まれていてもよい。紙カルテや電子カルテには、診断所見や依頼元医が描いたシェーマ図が描かれている。
【0023】
依頼元医側は、電子カルテの元電子データを流出させず、紙カルテの原本を持ち出させないため、それらの写しがなす依頼伝票により、病理医に診断所見が示される。依頼伝票は、少なくとも前記依頼元医の診断所見を所定位置に示す様式とされ、シェーマ図を含む様式とすると好適である。依頼伝票の画像データは、合意の前に作成されてもよく、合意の後でも病理医が診断をする前に作成されればよく、画像データの作成手段は限定されず、OCRに限定されず、デジタルカメラであってもよい。依頼伝票に基づいて、依頼元医側と病理医側の合意がされてから、病理標本が作成され、その作成の過程で、病理標本作成情報が伝票情報に追加され、病理標本情報にまとめられればよい。
【0024】
依頼伝票に示された伝票情報と病理標本情報とには対応した標本番号が付与され、病理標本には標本番号に対応した標本コードが貼付される。対応した標本番号とは、他の伝票情報と病理標本情報と区別されればよく、例えば連続番号でもよく、伝票情報と病理標本情報とが同一患者の情報であることが判別されればよく、数字・文字・記号等は限定されない。また標本コードは、2次元コードでもよく、バーコード等の1次元コードでもよく限定されない。
【0025】
標本コード読取手段は、2次元コードリーダ又はバーコードリーダであればよい。病理医に届いた病理標本には、標本コードが貼付されているため、標本コードをリーダで読みとれば、対応した標本番号が取得できる。病理標本情報が病理標本が届くより前、例えば数日前に届いていた場合や、追加染色がされたために病理標本が複数回届く場合等のように、病理標本情報と病理標本が異なったタイミングで届くことがある。病理標本情報がなすリストに、他の患者の病理標本情報を含み、複数の病理標本情報が含まれていても、標本選択表示手段により読み取った標本コードに対応した病理標本情報が選択可能に表示される。
【0026】
選択可能に表示させるとは、例えば、その標本番号に係る病理標本情報のみを着色表示してもよく、その他の病理標本情報を選択不可に表示してもよく、非表示としてもよく、その態様は限定されない。病理標本情報の選択により表示される依頼伝票の画像データには、文字データが含まれていてもよい。第1の発明によれば、病理標本と異なるタイミングで届いた多数の病理標本情報のなかから、病理医の手元に届く病理標本に応じた依頼伝票の画像データの確認が容易であり、病理医が患者の病理標本とその病理標本情報とを取り違えることがないという効果を奏する。
【0027】
本発明の第2の発明は、第1の発明の病理診断管理システムにおいて、前記処理手段が、是正支援手段として機能され、前記光学式情報取得手段により取得される前記画像データが、第1電子データと第2電子データとに含まれ、第1電子データが、前記依頼伝票の全体の前記伝票情報を画像データとした第1画像データとされ、第2電子データが、第2画像データと文字データとからなり、第2画像データが前記依頼伝票の前記所定位置に示された前記診断所見を含む伝票情報の画像データとされ、前記文字データが前記所定位置以外に示された前記患者に関する情報を光学文字認識させた文字データとされ、同一の前記標本番号が、第1電子データをなす第1画像データと、第2電子データをなす第2画像データと前記文字データの夫々に付与され、第1電子データと第2電子データとが、前記病理標本管理手段に記憶され、前記病理診断業務に係る担当者が、前記表示手段に表示された前記病理標本情報リストのなかから、いずれかの前記病理標本情報を選択することにより、前記是正支援手段が、選択された前記病理標本情報の標本番号に紐づけられた第1電子データと第2電子データとを、前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報のなかから読み出し、第1画像データと第2画像データをオリジナルとしたままで、第1画像データからなる第1電子データと、第2画像データと前記文字データとからなる第2電子データとを、前記表示手段に並べて表示させ、光学式文字認識により誤認識された前記文字データの是正を支援させることを特徴としている。
【0028】
第2の発明によれば、依頼伝票全体が第1画像データとして、例えば、改ざんできないPDF形式の画像データで取得され、依頼元医によるシェーマ図と診断所見等も画像データとして、例えば、拡大して細部が確認しやすいJPG形式のデータで取得され、オリジナルの状態で確認できる。文字データには、依頼伝票番号、依頼元医機関名、検体番号、主治医名等があり、画像データには、患者の署名、生年月日、依頼元医による診断所見、患部のシェーマ図等がある。
【0029】
一方、予め電子カルテにおいて入力された、数字・文字情報等はOCRによる誤認識が少なく、誤認識されていない文字データは、夫々の病理診断を区別させる索引情報として利用できる。依頼伝票の手書き署名等は誤認識されやすく、別に、依頼伝票の文字情報が入力されている場合には、それらとの照合により、食い違いの無い文字データとすればよい。
【0030】
第2の発明によれば、病理標本情報をなす伝票情報が、依頼伝票全体の画像データと一体に管理され、OCRにより読み取った文字データが、病理診断データベースのインデックスとして利用できる索引情報としても活用でき、業務の効率化が図れる。これにより、オリジナルな依頼伝票はオリジナルな外観状態のままで保持させ、光学文字認識させた文字情報をも使って効率的で信頼性の高い病理診断管理をすることができるという効果を奏する。
【0031】
本発明の第3の発明は、第2の発明の病理診断管理システムにおいて、前記処理手段が、病理標本情報選別手段として機能され、前記病理標本管理手段が、前記病理標本情報リストを記憶すると共に、各々の前記病理標本情報に、少なくとも第1電子データの登録がされていることを示す識別表示を併せて記憶させ、前記病理標本情報選別手段が、前記識別表示が表示されている病理標本情報のみを整合リストとして選別し、前記識別表示が表示されていない病理標本情報を前記整合リストから除外して、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記整合リストを前記表示手段に表示させることを特徴としている。
【0032】
第3の発明によれば、依頼伝票の全体の伝票情報の画像データをなす第1電子データの登録がされている病理標本情報には識別表示を表示させ、整合リストに選別し、データの整備状態が判別でき、OCRで読み取った文字データの誤認識の発見と是正を容易にさせる。また、識別表示が表示されていない病理標本情報は不完全な状態の依頼情報として、整備を促すことができる。
【0033】
整合リストの態様は、不完全な状態の病理標本情報が追跡可能に、識別表示がない病理標本情報を見え消し線で表示してもよく、不完全な状態の病理標本情報は整合リストの欄外に、未整合リストとして表示してもよい。第3の発明によれば、病理診断依頼がされた病理標本情報の整備状態が明確となり、また、不完全な状態の病理標本情報の追跡が容易となり、漏れのない病理診断をすることができるという効果を奏する。
【0034】
本発明の第4の発明は、第3の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、前記依頼元医側と前記病理医側との間で、整った依頼伝票についての病理診断を受入れる合意がされる際に、前記病理医が、前記整合リストのなかから前記病理標本情報を選択することにより、前記受入確定手段が、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、前記合意を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に確定表示を表示させ、病理標本作成者が、前記確定表示が表示された合意済みの前記病理標本情報を選択することにより、前記標本作成開始確定手段が、選択された合意済みの前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、標本作成の開始を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に標本作成中の表示を表示させることを特徴としている。
【0035】
第4の発明によれば、病理医側は、依頼元医側との合意がされる際に、識別表示が表示された病理標本情報が整った整合リストを確認すればよく、病理診断依頼の受入れ合意が容易であり、臨床検査技師も、タイミングを外して病理標本を作成することがないという効果を奏する。
【0036】
本発明の第5の発明は、第3の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、サーバと、通信手段とを含み、前記サーバが、前記処理手段と、前記記憶手段として機能され、前記依頼元医側と前記病理医側とを外部機関が仲介し、前記外部機関が、前記依頼元医側から検体を引き継いで、前記病理標本の作成を分担する病理診断業務に適用され、前記サーバがなす前記処理手段が、前記標本選択表示手段と、前記是正支援手段と、前記病理標本情報選別手段と、リスト通知手段と、病理標本情報表示手段として機能され、前記サーバがなす前記記憶手段が、前記病理標本管理手段として機能され、少なくとも前記病理標本情報選別手段が、前記病理標本情報を前記整合リストに選別させた際に、前記リスト通知手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストを表示させるリンクを、前記通信手段を介して電子メールにより前記病理医側又は前記外部機関の少なくともいずれかに通知させ、前記リンクを通知された前記病理医側又は前記外部機関が、前記リンクを選択することにより、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストが、前記表示手段に表示され、前記整合リストを表示させた前記病理医側又は前記外部機関が、前記整合リストのなかから前記病理標本情報を選択することにより、前記病理標本情報表示手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報のなかから、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づく前記病理標本情報を前記表示手段に表示させ、表示された前記病理標本情報に少なくとも第1電子データが含まれていることを特徴としている。
【0037】
第5の発明によれば、依頼元医が採取した検体から外部機関の臨床検査技師に病理標本を作成させ、複数の病理医が所属している病理診断医療機関に病理標本を集中させて、病理医の不足に対応しつつ、病理医には依頼元医の診断依頼趣旨が誤りなく伝達され、医業業務の効率化が図られる。サーバは、クラウドサーバであってもよく限定されず、病理医側又は外部機関に属していなくてもよい。病理医側が、電子メールにより通知されたリンクを選択することにより、サーバに記憶されている識別表示がされている整合リストが、通信手段を介して取得され、表示手段に表示されればよい。
【0038】
依頼元医側から届けられた依頼伝票をもとに、病理診断よりも上流の事務処理を担当する病理医側又は外部機関が、整合リストをサーバに記憶させておけばよい。例えば病理診断の合意や病理診断のタイミングに合わせて、サーバの病理標本管理手段に記憶されている整合リストを表示させるリンクを、サーバから電子メールで病理医に通知すればよい。
【0039】
第5の発明によれば、リンクの通知を受けた病理医側又は外部機関は、リンクの選択によりサーバに記憶された伝票情報がなす整合リストを表示させて確認でき、病理医側の病理診断に係るデータベースが外部に開放されていなくても、効率的で、取り違えがない病理診断をすることができるという効果を奏する。
【0040】
本発明の第6の発明は、第5の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、受入確定手段と標本作成開始確定手段として機能され、前記依頼元医側と前記病理医側との間で、整った依頼伝票についての病理診断を受入れる合意がされる際に、前記病理医が、前記整合リストのなかから前記病理標本情報を選択することにより、前記受入確定手段が、選択された前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、前記合意を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に確定表示を表示させ、病理標本作成者が、前記確定表示が表示された合意済みの前記病理標本情報を選択することにより、前記標本作成開始確定手段が、選択された合意済みの前記病理標本情報の前記標本番号に紐づいた前記病理標本管理手段に記憶されている前記病理標本情報に、標本作成の開始を確定させて、前記病理標本管理手段に記憶させ、前記表示手段に表示された前記病理標本情報に標本作成中の表示を表示させることを特徴としている。
【0041】
第6の発明によれば、外部機関が依頼元医側と病理医側とを仲介する場合であっても、依頼元医側との合意がされる際に、リンクを選択して整合リストを表示させ、依頼元医の診断所見を踏まえ、病理医側は病理診断依頼を受け入れ、外部機関は標本作成を開始することができる。これにより病理医側が病理診断を合意してから病理標本作成を開始するという基本ルールのもとに、外部機関に所属する臨床検査技師に的確なタイミングで標本作成をさせるという業務を手違いなく、効率的に実施することができるという従来にない有利な効果を奏する。
【0042】
本発明の第7の発明は、第6の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、依頼業務抽出手段として機能され、前記病理標本管理手段に記憶された前記病理標本情報がなす前記整合リストには、進捗情報と特別表示情報とが記憶され、前記進捗情報は、少なくとも文字データ是正済、病理標本到着、病理診断中、診断完了を含む各々の前記病理標本情報に係る業務の進捗状態を示す情報とされ、前記特別表示情報は、少なくとも「要至急」又は「追加染色」のいずれかを含む特別業務に係ることを示す「特別表示」を表示させる情報とされ、前記依頼業務抽出手段が、いずれかの前記進捗状態に該当する前記業務を、前記病理標本管理手段に記憶されている前記整合リストのなかから抽出させ、前記表示手段には、抽出させた前記業務に係る整合リストと共に、前記特別表示を常に表示させ、特別業務の進捗が管理可能とされることを特徴としている。
【0043】
患者の症状により至急に病理診断が必要である場合や、病理医に引き渡された病理標本の染色状態では、組織の形状・色相・明度が明確でないため、追加染色した別の病理標本が必要な場合もある。このような場合には、依頼順に病理診断されている流れとは、別に病理診断をする必要がある。
【0044】
第7の発明によれば、少なくとも「要至急」又は「追加染色」のいずれかを含む業務には、特別表示を記憶させて進捗が管理され、依頼業務抽出手段により、いずれかの進捗の業務管理をする際に、特別表示が併せて表示される。これにより、特別な進捗状態で管理すべき病理診断を見過ごすことなく、適切なタイミングで、効果的に実施することができる。
【0045】
本発明の第8の発明は、第7の発明の病理診断管理システムにおいて、更に、前記処理手段が、結果通知手段として機能され、前記結果通知手段が、前記病理標本管理手段に記憶されている、各々の病理診断結果の画像情報を表示するリンクを、前記通信手段を介して前記依頼元医に通知させ、前記依頼元医が前記リンクを選択することにより、前記画像情報がダウンロード可能とされていることを特徴としている。
【0046】
第8の発明によれば、病理医側の病理診断に係るデータベースを外部に開放させない状態で、病理医は、病理診断管理システムのデータベースに、画像情報からなる病理診断結果をアップロードさせる。これにより、依頼元医は、病理医側の病理診断に係るデータベースから切り離された状態であっても、病理診断結果を取り違えることなくダウンロードすることができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0047】
・第1の発明によれば、病理標本と異なるタイミングで届いた多数の病理標本情報のなかから、病理医の手元に届く病理標本に応じた依頼伝票の画像データの確認が容易であり、病理医が患者の病理標本とその病理標本情報とを取り違えることがないという効果を奏する。
・第2の発明によれば、オリジナルな依頼伝票はオリジナルな外観状態のままで保持させ、光学文字認識させた文字情報をも使って効率的で信頼性の高い病理診断管理をすることができるという効果を奏する。
【0048】
・第3の発明によれば、病理診断依頼がされた病理標本情報の整備状態が明確となり、また、不完全な状態の病理標本情報の追跡が容易となり、漏れのない病理診断をすることができるという効果を奏する。
・第4の発明によれば、病理医側は、依頼元医側との合意がされる際に、識別表示が表示された病理標本情報が整った整合リストを確認すればよく、病理診断依頼の受入れ合意が容易であり、臨床検査技師も、タイミングを外して病理標本を作成することがないという効果を奏する。
【0049】
・第5の発明によれば、リンクの通知を受けた病理医側又は外部機関は、リンクの選択によりサーバに記憶された伝票情報がなす整合リストを表示させて確認でき、病理医側の病理診断に係るデータベースが外部に開放されていなくても、効率的で、取り違えがない病理診断をすることができるという効果を奏する。
・第6の発明によれば、病理医側が病理診断を合意してから病理標本作成を開始するという基本ルールのもとに、外部機関に所属する臨床検査技師に的確なタイミングで標本作成をさせるという業務を手違いなく、効率的に実施することができるという従来にない有利な効果を奏する。
【0050】
・第7の発明によれば、特別な進捗状態で管理すべき病理診断を見過ごすことなく、適切なタイミングで、効果的に実施することができる。
・第8の発明によれば、依頼元医は、病理医側の病理診断に係るデータベースから切り離された状態であっても、病理診断結果を取り違えることなくダウンロードすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図3】病理診断管理システムのブロック図(実施例1)。
【
図7】病理医宛のリンク通知メールの例(実施例1)。
【
図18】追加染色業務フローの説明図(実施例1)。
【
図21】病理診断管理システムのブロック図(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0052】
依頼元医の診断所見が示された依頼伝票に基づいた病理標本情報により、病理診断業務が管理される病理診断管理システムに、標本コード読取手段と標本選択表示手段とを備えさせた。標本コード読取手段により病理標本に貼付した標本コードを読み取り、多数の病理標本情報のリストのなかから、標本コードに対応した標本番号が付された病理標本情報を、標本選択表示手段により選択させ、病理医の手元にある病理標本に応じた病理標本情報と、それに係る依頼伝票の画像データとを表示させる。これにより、病理標本と異なるタイミングで届いた、多数の依頼伝票に基づく病理標本情報のなかから、病理医の手元にある病理標本に応じた病理標本情報について依頼元医の診断所見を含めて確認することができ、病理医が病理標本とその病理標本情報とを取り違えることがない。
【0053】
また、病理診断管理システムに光学式情報取得手段と是正支援手段とを備えさせ、所定の様式による依頼伝票の全体の画像データと、依頼伝票の各欄の文字データ又は画像データからなる電子データとを取得し、両者を画面に対比して表示させ、誤認識情報の是正を容易にさせる是正支援手段を備えさせた。これにより、直筆で書かれ誤認識が発生しやすい依頼伝票であっても正確に記録でき、信頼性の高い病理標本情報に基づいて病理診断をすることができる。
【0054】
本発明は、依頼元医側と病理医側とを、臨床検査技師が所属する外部機関が仲介し「三者が協働」して病理診断業務が行われる場合、依頼元医側と病理医側の「二者が協働」して病理診断業務が行われる場合のいずれにも適用することができる。
【実施例0055】
実施例1の病理診断管理システム1は、依頼元医側が検体を採取すると共に依頼伝票を作成し、外部機関が、病理標本を作成すると共に、病理標本情報に統合されて表をなす文字データからなる索引情報を作成しサーバにアップロードさせ、検体と依頼伝票と病理標本の運搬をする。そして病理医側が依頼伝票に基づく伝票情報の取得から整合確認、病理診断、病理診断結果のまとめ業務を行う分担とされる。理解を容易にするために、まず
図1、
図2を参照して業務フローを説明する。
【0056】
実施例1では、情報処理手段として機能されるサーバを備えた病理診断管理システム1を、
図1から
図17を参照して説明する。
図1と
図2は、業務フローの説明図を示し、各業務が進行する順序を数字で示している。「依頼元医側」の処理は「数字を円」で囲って示している。「外部機関の運搬」は「数字を細線の正方形」で囲って示し、「外部機関」の他の処理は「数字を太線の正方形」で囲って示している。サーバにおける処理は「数字だけ」で示している。病理医側の処理は「数字を六角形」で囲って示している。なお、「依頼元医側」とは、依頼元医を含む組織をいい、「病理医側」とは病理医を含む組織をいい、「依頼元医」「病理医」と区別している。夫々が外部機関と同様に窓口担当者を含んでいる。
【0057】
図3は、病理診断管理システム1のブロック図を示している。
図4から
図17は、各業務フローに対応した画面表示の具体例を示し、理解を容易にするために、各図の左に業務フローに対応する番号を示している。
図18は、追加染色が必要となった場合の追加染色業務フローを示している。なお、
図4、
図10、
図11が外部機関の画面表示を示し、
図5から
図6、
図8、
図9、
図12から
図16が病理医側の画面表示を示し、
図7は、病理医宛に送られるメールの画面表示、
図17が診断結果ダウンロードの画面表示を示している。
【0058】
病理診断管理システム1により管理される病理診断業務は、予め依頼元医側と病理医側とが事前の業務合意をした上で、第1ステップから第18ステップまでの各ステップを経て進行する(
図1と
図2参照)。「事前の業務合意」とは、予め年度毎に何件の病理診断業務を委託・受託するか等を定めた業務合意をいい、後述する第8ステップの「合意の確定」とは、整った依頼伝票についての病理診断を受入れる合意をしたことをいう。
【0059】
第1ステップでは、依頼元医が患者から検体を採取し、所定の様式による依頼伝票(
図6のA参照)を作成する。依頼伝票の様式は、画像情報として取得すべき「依頼元医による診断所見」と「シェーマ図」とが所定位置に示される様式であればよく、限定されない。依頼元医側に電子カルテシステムが導入されている場合には、依頼伝票の写しだけでなく、電子カルテを印字した写しも届けられると好適である。以下、理解を容易にするために、依頼伝票だけに基づいて説明する。
【0060】
第2ステップでは、依頼元医側から検体と依頼伝票とが外部機関に引き渡される。第3ステップでは、標本番号を索引情報の一つに含んだ表が構成されるように、依頼伝票毎に標本番号を発番し、依頼受付日等と共に、サーバの記憶手段がなす病理標本管理手段に、外部機関がアップロードして記憶させる(
図4参照)。索引情報とは、少なくとも標本番号を含み、伝票情報から病理標本情報に至る情報を含んだ表形式データをなす電子データのうち、抽出・検索の対象となる情報を含んだ、一行をなす情報をいう
【0061】
標本番号は「符号」「西暦の下2桁」「年毎の通し番号」を組として「H」「22」「000001」としているが限定されない。一件の依頼伝票に基づいて、複数の病理標本を作成する場合には、標本番号の後に枝番を付与させればよい。索引情報は「標本番号,依頼受付日,依頼機関名」のように一行で示され、依頼情報から病理診断情報に至る、標本番号を含んだ病理標本情報の全体表を構成する。索引情報には、業務進捗状態を示す、例えば合意がされたことを示す「識別表示○」「(病理標本)未到着」「(病理)診断中」等、「要至急」「追加染色」といった特別表示等も随時追加される(
図8参照)。
【0062】
第4ステップでは、外部機関から病理医側に、依頼伝票を運搬して引き渡す。第5ステップでは、病理医側が、OCRを使って、依頼伝票から伝票情報をなす電子データを取得し、標本番号に対応する電子データとして、既に外部機関が作成している索引情報に引き続き、サーバにアップロードさせる。病理標本管理手段として機能される記憶手段に、前記全体表をなす電子データとして、依頼情報が統合される。
【0063】
具体的には、依頼伝票の全体画像(第1画像データ)をなすPDF形式の第1電子データと、依頼伝票の文字情報をなす文字データと依頼伝票の所定位置にある依頼元医診断所見とシェーマ図とがなすJPG形式の第2画像データとからなる第2電子データとが、病理標本管理手段の標本番号に対応された全体表(
図6参照)に記憶される。
【0064】
文字データは、索引情報をなす、第3ステップで付与された標本番号に引き続き「(標本番号・・),患者名,・・」のように、標本番号に連なる情報として記録され、索引情報とされればよい。画像データは「第1画像データ_標本番号」のように、標本番号を含むファイル名としておくとよい。
【0065】
そして、少なくともオリジナルの依頼伝票全体をなす第1電子データ(
図6符号A参照)が関連づけられている索引情報には、全体画像が記憶されていることを示す識別表示「〇」が付与されて、病理標本管理手段に記憶される(
図5参照)。識別表示が索引情報に付与されている病理標本情報は、第7ステップにおいて整合リストに選別される。
【0066】
第6ステップでは、病理医側において、病理医に至るまでの上流工程の作業として、標本番号に対応した第1電子データと第2電子データとが、サーバの処理手段がなす是正支援手段により、モニター等の表示手段に対比可能に表示され(
図6参照)、オリジナルの依頼伝票全体をなす第1電子データ(
図6符号A参照)と、第2電子データをなす文字データとに食い違いがないかが目視で確認され、光学読取の段階で誤認識があれば、文字データを是正する。
【0067】
第7ステップでは、サーバの処理手段が病理標本情報選別手段として機能され、サーバの記憶手段が病理標本管理手段として記憶している病理標本情報のなかから、識別表示を有する病理標本情報のみを整合リストに選別させる。併せて、識別表示が欠落している病理標本情報は未整合リストとしておけばよい(
図8参照)。この段階においては、索引情報の進捗状態は「未確定」とされている。そして病理医宛に、整合リストを表示させるリンクを記載した電子メールを送信させる(
図7参照)。
【0068】
第8ステップでは、病理医が、整合リストを表示させるリンクを選択して、索引情報の進捗状態が「未確定」とされた識別表示が表示された整合リストの各リンクを選択して伝票情報の画像データを閲覧し(
図8参照)、個々の病理診断依頼の内容を確認して、サーバの処理手段がなす受入確定手段により、個々の病理診断の「合意確定」がされる。合意の確定がされると、整合リストをなす各々の索引情報の進捗状態が「確定」とされる(
図9参照)。
【0069】
第9ステップでは、サーバからリンクを示した電子メールにより、外部機関宛に合意の確定通知がされ、確定表示がされた整合リストが確認できるようになる。第9ステップにおいても、図は省略しているが第7ステップと同様にして、受入れが確定した整合リストを表示させるリンクを記載した電子メールが、外部機関宛に送信されればよい。第10ステップでは、サーバの処理手段が標本作成開始確定手段として機能され、外部機関において、確定表示された整合リストが選択され「作成開始」をさせる。そして、標本作成が開始される(
図10参照)。
【0070】
第11ステップでは、標本作成の開始が確定された整合リストの範囲で、臨床検査技師が、第2ステップで受領した検体を切り出し、染色し、病理標本を作成する。併せて病理標本をなすプレパラートに、索引情報をなす標本番号に対応した標本コードが印刷されたシールを貼付させる。標本コードは、プレパラートの限られた範囲に貼付する必要があるため、多くの情報量を記録できる、例えば二次元コードが好適であるが、バーコード、RFIDタグ等であってもよく限定されない。
【0071】
第12ステップでは、外部機関が、作成した病理標本に係る標本作成情報と、染色情報と、検体切出画像とを、標本番号を対応させて、サーバにアップロードさせる(
図11参照)。標本作成情報とは「(標本番号),患者名,依頼機関名,検体番号,臓器名,・・・」等を一行に記録した表形式データであればよく、染色情報とは「(標本番号)、特殊染色名(HE染色名等)、特殊染色コード,・・」等を一行に記録した表形式データであればよい。検体切出画像とは、患者から摘出した「検体の写真と、病理標本を切り出した位置を示す検体切断面を示す絵図」等である。標本作成情報、染色情報、検体切出画像は、伝票情報と共に、それぞれ病理標本情報の一部をなす。
【0072】
第13ステップでは、サーバにおいて、第12ステップでアップロードされた標本作成情報等を、標本番号が対応している索引情報に統合させる。統合後には、整合リストに表示された索引情報に基づいて、伝票情報に係る電子データだけでなく、標本作成情報に係る電子データも一体の全体表として閲覧可能となる。
【0073】
第14ステップでは、外部機関から病理医側に、標本コードを貼付した病理標本が、運搬され引き渡される。第15ステップでは、病理医側において、引き渡された病理標本に付された標本コードが、標本コード読取手段をなす二次元コードリーダで読み取られる。そうすると、「未到着」の状態の整合リストが表示されていた画面の上部の標本番号の欄に、二次元コードに対応した標本番号が表示され(
図12参照)、次の画面に遷移する。
【0074】
第16ステップでは、選択表示手段をなすサーバの処理手段により、病理医側の表示手段には、「未到着」の状態の整合リストのなかから、二次元コードリーダで読み取った二次元コードに対応した病理標本情報のみが選択されて表示される画面に遷移し(
図13参照)、病理標本の到着が確認される。ここでは、病理医が、標本コードに対応する病理標本情報がブランクでないことを確認し、電子データと取り違いのない病理標本であることを確認する。選択表示とは、実施例1では、病理標本情報の詳細を一つの画面に表示させているが、リストのなかから一つの索引情報を強調表示させるだけであってもよく、態様は限定されないことは勿論のことである。
【0075】
第17ステップでは、病理診断の際にも、標本番号に対応する病理標本情報が選択され、患者情報、依頼元医診断所見を参照しつつ病理診断を行う。ここでも病理標本に付された標本コードを二次元コードリーダで読み取り、診断待ちにある病理標本情報の整合リストのなかから(
図14参照)、標本コードに対応した病理標本情報の索引情報のみが選択可能とされ、その標本番号に対応した伝票情報に係る画像データ(
図15参照)を表示させる。そして画像データを確認して病理診断を行う。
【0076】
病理診断が完了したときにも、病理標本に付された標本コードをリーダで読み取り、病理診断結果をなす病理診断書の画像情報を、サーバにアップロードさせる(
図16)。第18ステップでは、依頼元医がサーバから通知された電子メールのリンク(図を省略)を選択して、病理診断結果ダウンロードサイトに至り、病理診断書をダウンロードする(
図17)。
【0077】
次に、病理診断管理システム1の構成を、
図3のブロック図を参照しつつ、実施例1の発明の特徴的な構成である、標本選択表示手段、是正支援手段等を、対応する
図4から
図17に示した画面表示を参照し、上記業務フローに沿って順に説明する。各々の画面表示の構成は例示であって、限定されないことは勿論のことである。
【0078】
病理診断管理システム1は、サーバ10と、依頼元医側、外部機関、病理医側が、夫々使用するコンピュータ(以下、PCという)と、サーバと夫々のPCを通信させる通信手段20と、OCRからなる光学式情報取得手段30と、標本コード読取手段40とからなる。サーバの処理手段100と記憶手段200とが、情報処理手段をなす処理手段と記憶手段として機能され、外部機関PC50、病理医側PC60、依頼元医側PC70の夫々の表示手段が、情報処理手段をなす表示手段として機能される。
【0079】
伝票情報を取得する取得手段である光学式情報取得手段30は、周知のOCRであればよい。光学式情報取得手段30は、依頼伝票からPDF形式、JPG形式等の画像データを取得すると共に、OCRの光学文字認識により依頼伝票の文字情報を文字データに変換して取得し、病理医側PC60に、依頼伝票を第1電子データと第2電子データとして取得させる。電子カルテの写しがあるときには、電子カルテの写しの画像データ・文字データも同様に病理医側PC60に取得させる。
【0080】
病理標本に貼付された標本コード41を読み取る標本コード読取手段40は、周知の二次元コードリーダ、バーコードリーダ、RFIDリーダ等、標本コードの種別に対応したリーダであればよい。標本コード読取手段40は、標本コード41から標本番号を取得し、通信手段20を介してサーバ10に通信させる。
【0081】
外部機関PC50、病理医側PC60、依頼元医側PC70は、いずれも制御手段と記憶手段と表示手段と入力手段を備えた汎用コンピュータであればよく、記憶手段に記憶される電子データが、夫々の業務範囲に応じて異なっている(
図3参照)。制御手段は中央演算処理装置(以下、CPUという)であればよく、記憶手段はHDD、SSD、RAM、ROM等であればよく限定されない。表示手段はモニター等であればよく、入力手段はキーボード、マウス等であればよい。
【0082】
外部機関PC50の記憶手段には、第3ステップで、サーバにアップロードさせた標本番号、電子データをなす索引情報51(
図4参照)と、第12ステップでサーバにアップロードさせた標本作成情報52、染色情報53、検体切出画像情報54が記憶される(
図11参照)。また、追加染色を行った案件については、追加染色情報55も記憶される。
【0083】
病理医側PCの記憶手段には、第5ステップでサーバにアップロードさせた第1電子データ61と第2電子データ62(
図6参照)と、第17ステップで病理診断の最終確定を行ったときの病理診断結果情報63、すなわち病理診断書のデータと、サーバにアップロードさせる病理診断書のPDF形式、JPG形式等の画像情報が記憶されている(
図16参照)。依頼元医PCの記憶手段には、ダウンロードした病理診断書の画像情報が記憶される。
【0084】
サーバ10は、処理手段100と記憶手段200とを備え、予めユーザ登録がされた者だけがサーバにアクセス可能となるようにユーザ管理がされている。サーバ10がなす処理手段100はCPUであればよく、記憶手段200はHDD、SSD、RAM、ROM等であればよく限定されない。サーバ10はクラウドサーバであってもよく、態様は限定されない。ここでサーバ10とは、病理診断業務に係る病理標本情報を管理する情報処理手段であり、各医療機関が独自に管理する外部に閉じたデータベースとは異ならせると好適である。
【0085】
サーバの処理手段100は、以下に示す特徴的な機能をなすように構成される。まず、サーバは、標本選択表示手段101として、病理医が病理標本を確認して病理診断をする際、病理診断結果をアップロードする際に、読み取った病理標本の標本コードに対応した病理標本情報のみが選択され、依頼伝票の画像データが確認容易に、病理医の画面に表示されるように機能される。
【0086】
サーバは是正支援手段102として機能され、伝票情報が電子データとして取得された後、第6ステップで、第1電子データと、第2電子データをなす文字データと第2画像データとを、病理医側PCの表示手段に、対比して表示させて、文字データの誤認識の是正を支援する(
図6参照)
【0087】
サーバは病理標本情報選別手段103として、第5ステップで、少なくとも第1電子データが索引情報に対応付けられた病理標本情報に識別表示を付して、整合リストに選別させる(
図5参照)。サーバはリスト通知手段104として機能され、第7ステップで、整合リストを表示させるリンクを、通信手段を介して電子メールにより、病理医に通知させ(
図7参照)、第9ステップでは外部機関に通知させ、電子データが整った整合リストを確認可能とさせる。
【0088】
サーバは病理標本情報表示手段105として機能され、表示された整合リストのなかから選択された病理標本情報について、少なくとも第1電子データを含んだ前記病理標本情報を表示させる(
図6参照)。サーバは受入確定手段106として機能され、第8ステップで整合リストのなかから病理医が選択した前記病理標本情報について合意を確定させて、確定表示を表示させる(
図9参照)。サーバは標本作成開始確定手段107として機能され、第10ステップで、確定表示がされた病理標本情報が選択されることにより、標本作成の開始を確定させる(
図10参照)。
【0089】
サーバは結果通知手段108として機能され、第17ステップから第18ステップにかけて、各々の病理診断結果の画像情報を表示するリンクを、依頼元医に通知させ、依頼元医がリンクを選択することにより、画像情報をダウンロード可能とさせる(
図17参照)。サーバは依頼業務抽出手段109として機能され、抽出させる進行状況に応じた業務を抽出し、リストを表示すると共に、特別表示を表示させ、特別業務の進捗を管理可能とさせる(
図9参照)。
【0090】
サーバはユーザ認証手段110として機能され、予め記憶手段に記憶させた認証判定用ユーザ情報215の権限に応じた業務範囲において、サーバに記憶された情報とサーバの機能とを利用可能としている。例えば、依頼元医側、外部機関は病理診断に係る機能について利用が制限される。
【0091】
サーバは電子メールアドレス登録手段111として機能され、依頼元医側、外部機関、病理医側における病理診断情報の取得用の電子メールアドレス216を記憶手段に記憶させる。この電子メールアドレスは整合リストなどを表示させるリンクを通知する際等に利用される。
【0092】
サーバの記憶手段200は、第3ステップ(
図2参照)以下で、病理標本管理手段201として機能され(
図3参照)、標本番号毎の病理標本情報202を索引情報として使用できるように、各ステップにおいて表示させる病理標本情報のリストに、第1電子データ203と第2電子データ204を含む電子データを対応付けて記憶する。標本が作成されたときには、伝票情報と標本作成情報を統合させた病理標本情報205として記憶する。更に、各々の索引情報に第1電子データの登録があれば、その索引情報と共に識別表示207を記憶させ、整合リスト206として記憶させる。
【0093】
この整合リストの索引情報には、文字データ是正済、診断完了等の進捗状況を示す進捗情報208、「要至急」「追加染色」等の通常の管理ルートとは異なることを示す「特別表示」209、合意の確定を示す確定表示情報210等が、業務進行に応じて統合されて記憶される。(各図参照)。これらの文字データは、整合リストに統合された後には、索引情報として利用可能となる。また第12ステップの病理標本作成情報等においては、整合リストの索引情報に、染色情報211、検体切出画像情報212がアップロードされ統合されて記憶される(
図11参照)。
【0094】
また、追加染色がされたときには、整合リストの索引情報に追加染色情報213が統合されて記憶される。追加染色情報とは、追加染色の依頼合意、新たに作成された追加染色の病理標本についての標本作成情報・染色情報・検体切出画像情報等である。第17ステップで、病理診断結果情報214(
図16参照)がアップロードされたときには、索引情報に病理診断結果の画像情報が統合されて記憶される。
【0095】
以上のように、標本番号を必須とする索引情報に、各ステップの業務に応じた情報が随時、追加・統合されるため、業務進行のどの時点においても、索引情報の選択により、常に最新の病理標本情報が確認可能となる。
【0096】
以下、ユーザがサーバにアクセスして業務を行うときの具体的な画面表示を示して、より具体的に説明する(
図4から
図16参照)。画面表示のトップバーには、組織名と担当者名とが表示され、画面表示のサイドバーには、そのユーザの業務範囲に対応する機能一覧が表示される。各図では理解を容易にするため選択した機能を太枠で囲って強調表示し、未選択の機能は斜線で示している。画面中央部には、選択された機能に応じた関連情報が表示される。
【0097】
なお、理解を容易にするために、各図に示す画面表示の左側に、各画面表示に対応する業務フローのステップ番号を示している。なお、第1ステップの検体採取、第2、第4、第14ステップの運搬、第11ステップの病理標本作成の各業務に係る画面表示の図は省略している。
【0098】
図4に示す画面表示においては、第3ステップで、外部機関が作成した、索引情報をなす標本番号の電子データを、サーバにアップロードさせ、サーバに病理標本情報をなす表形式データを「新規作成」する。外部機関は、外部機関PCから通信手段を介してサーバにアクセスし、ユーザ認証をして自らに許可された業務範囲に対応する画面表示を表示させ、サイドバーから「新規作成」を選択する。
【0099】
予め作成した表形式データ、例えば、「特別表示欄」「状態欄」「識別表示欄」「標本番号欄」「依頼受付日欄」「依頼機関名欄」等の項目からなり、別に作成したCSVファイルを選択して、画面上部に配置された「情報取込」を選択し、サーバにアップロードさせ、「確定」の選択により記憶手段に記憶させる。表形式データは、伝票情報から病理標本情報に至るリストの索引情報をなす標本番号を含むデータとされる(
図4参照)。標本番号とともに、依頼受付日、依頼元医の依頼機関名をなす文字データを含めてもよいことは勿論のことである。病理標本管理手段として機能されるサーバをなす記憶手段は、標本番号に連なって一行に示された文字データを索引情報として記憶させる。
【0100】
図5に示す画面表示においては、第5ステップで、病理医側が、第1電子データと第2電子データをサーバに取得させる「伝票取込」の画面表示を示している。上部に配置された「伝票情報取込」により、予め病理医側がOCRを使って作成し、病理医側PCに記憶させてあるPDF形式の第1電子データと、JPG形式の依頼元医診断所見・シェーマ図等からなる第2画像データ等を、対応する標本番号を選択してサーバにアップロードさせる。索引情報に第1電子データが対応付けられたときには、リストの識別表示欄に「〇」の識別表示が表示される。
【0101】
ここで病理標本情報選別手段が、識別表示のある索引情報だけを整合リストに選別させる。識別表示のない索引情報については、例えば網掛表示をさせて整合リストから除外する。また、表形式データに「要至急」が含まれていたときには、他の案件と容易に区別可能となるように、特別表示欄に「要至急」が表示される(
図5参照)。リストをなす索引情報のいずれかが選択されると、電子データの是正を支援する画面表示に遷移する(
図6参照)。
【0102】
図6に示す「電子データ是正」の画面表示は、病理医側における病理医に整合リストが送られる前の工程の第6ステップで使用される。整合リストに表示されたいずれかの索引情報を選択して「是正支援手段」により2つの電子データを対比表示させ、是正が容易にされた状態で、電子データを是正する。画面上部には、標本番号が示され、画面中央部には、第1電子データと第2電子データが左右に対比可能に示される。病理医側において、所定様式の依頼伝票のPDF形式の第1電子データと、光学文字認識された文字データとを対比させながら、文字データに誤認識がないかを確認する。
【0103】
誤認識が発見されたときには、下部に配置された「修正」を選択して、文字データの欄を是正可能な状態とさせて、正しい文字データに是正する(
図6参照)。また、第2画像データをなす依頼元医の診断所見とシェーマ図のJPG形式のデータに画像の欠け等がないかを確認し、電子データに不備がないときには、下部に配置された「確定」を選択する。
図5のリストに戻る場合には、下部に配置された「戻る」を選択する。全ての病理標本情報の誤認識の是正が完了し、「確定」が選択されると、第7ステップに進む(
図6参照)。
【0104】
第7ステップでは、病理標本情報選別手段として機能されるサーバが、文字データ是正済みであり、識別表示がされている索引情報を「整合リスト」に選別させる。更に、第7ステップで、整合リストを表示させる情報サイトのリンクが、病理医に電子メールで通知される(
図7参照)。病理医は、このリンクを選択することにより、整合リストを表示させることができるようになる。なお、電子データの是正は、病理医に至る前の病理医側ではなく、外部機関が担当してもよいことは勿論のことである。
【0105】
図8に示す「受入確定」の画面表示においては、第8ステップで、整合リストに選別された「未確定」と表示されている索引情報を、病理医側で受入確定手段により受け入れる。第7ステップで、整合リストに新たな病理標本情報が追加されたときには、病理医側の操作画面には、サイドバーに表示された「受入確定」の位置に報知マークが表示される。報知マークが表示されているときには、整合リストを画面に表示させればよい。
【0106】
整合リストに並んだ、新しく追加された「未確定」と表示されている索引情報(
図8参照)を1件ずつ選択して内容を確認し、不備がない索引情報については、進捗を示す状態を「確定」に変更し、不備が発見された場合には、状態を「未確定」とする。そうすると「未確定」とさせた索引情報は、整合リストから除外されて、未整合リストに振り分けられる。未整合リストについては、「不備理由」の記入欄に、未確定となった理由、例えば第3ステップでアップロードされた索引情報をなす「患者名」に誤記がある、依頼伝票が未到着である等が記入される。
【0107】
図9に示す画面表示においては、整合リストの索引情報を確定又は未確定のいずれかとした後に、確定状態である整合リストの下部に配置された「合意確定」を選択し、合意を確定させる。合意確定により、個々の病理診断依頼について、病理診断情報が整っていることを確認して、病理診断業務を実施することを合意したことを記録することができる。「合意確定」が選択されると、第9ステップに進み、サーバから合意の確定された整合リストを表示させるリンクを示した電子メールが外部機関に通知される。
【0108】
図10に示す「標本作成開始確定」の画面表示においては、第9ステップの合意の確定通知がされてから、第10ステップで、外部機関により標本作成開始が確定される。新たに追加された合意があるときには、サイドバーに表示された「標本作成開始確定」の位置に報知マークが表示される。外部機関は「標本作成開始確定」の画面を表示させて、合意の確定がされた「整合リスト」を確認し、整合リストの下部に配置された「作成開始」を選択し、標本作成の開始を確定させる。
【0109】
併せて、外部機関は、合意が未確定の「未整合リスト」を確認し、索引情報の誤記については、第3ステップに戻り誤記を修正し、伝票の未到着については運搬状況を確認する。整合リストに選別された索引情報については標本作成が開始されるため、進捗の状態は「標本作成中」に更新される。第11ステップで、外部機関に所属する臨床検査技師が病理標本を作成する。病理標本が完成したら、第12ステップに進む。
【0110】
図11に示す「標本情報アップロード」の画面表示においては、第12ステップで、外部機関が、予め作成した標本番号を付した標本作成情報等をアップロードする。ここでは、上部に配置された「標本作成情報取込」を選択し、標本作成情報の表形式データを取り込ませ、中央部に配置された「染色情報取込」を選択し、染色情報の表形式データを取り込ませ、下部に配置された「検体切出画像取込」を選択し、検体切出画像を取り込ませる。
【0111】
標本作成情報が取り込まれると、標本番号毎に、患者名、依頼元医の依頼機関名、検体番号、臓器名、性別、年齢等のリストが表示される。染色情報が取り込まれると、標本番号毎に、特殊染色名、特殊染色コード等のリストが表示される。標本作成情報、染色情報ともに、スライドバーにより全体が閲覧可能とされているとよい。
【0112】
検体切出画像が取り込まれると、ファイル名に標本番号を含む画像一覧が表示される。電子データを取り込みなおす場合には、画面内に配置された「取消」を選択する。ここで「確定」を選択すると、第13ステップに進み、サーバにおいて取り込んだ電子データが標本番号毎の索引情報に統合され、進捗の状態が、病理標本が病理医側に届けられる前であることを示す「未到着」とされる(
図12参照)。それから第14ステップで病理標本の運搬がされる。
【0113】
図12に示す「到着確認」の画面表示においては、状態が「未到着」となっている。ここで、病理標本情報の整合リストを表示させた状態で、到着した病理標本に貼付された標本コードを標本コード読取手段により取得すると、標本コードが通信手段を介してサーバに送信される。サーバにおいて標本コードに対応した標本番号が抽出され、標本番号に対応する病理標本情報だけが取得され「標本番号」の欄に表示され、病理標本に対応した病理標本情報が、整合リストにおいて選択可能とされる。
【0114】
第16ステップで、選択可能な標本番号を選択すると、その病理標本に係る状態が「到着」に変更され、
図13の選択した一件の病理標本情報の画面表示に遷移する。
図13に示す「到着確認」の画面表示には、病理標本情報の索引情報をなす標本番号、臓器名、特殊染色、患者名、性別、年齢等が一覧表示され、オリジナルの依頼伝票を確認する「伝票確認」が表示される。
【0115】
予め受領している依頼伝票に係る病理標本情報と、到着した病理標本とが対応していることを確認したときには、「確定」を選択し、齟齬があるときには「取消」を選択する。図示を省略しているが、標本コードを読み取ったときに対応する標本番号が索引情報に登録されていなかったとき、標本コードが読み取れなかったときには、病理標本情報が表示されないでブランクの状態となる。到着確認が完了すると、索引情報をなす進捗情報が「未診断」に更新され、第17ステップに進む。
【0116】
図14に示す「診断リスト」の画面表示は、第17ステップで、病理医側PCの表示手段に表示される「診断リスト」の画面を示している。診断リストには、病理医が注意すべき、診断の進捗の状態に応じて「未診断」、「診断中」、「1次診断済」と順次、状態が更新される。「要至急」・「追加染色」等の通常とは異なる工程で管理されるべき病理標本が、見落されないように、整合リストには特別表示が常に表示される。
【0117】
「未診断」の状態があるときには、サイドバーに表示された「診断リスト」の位置に報知マークが表示される。病理医が病理標本の標本コードを標本コード読取手段により取得すると、到着確認の際と同様にして、標本コードに対応する標本番号が取得され「標本番号」の欄に表示され、病理標本に対応した病理標本情報が、リストにおいて選択可能とされる。
【0118】
病理医が、選択可能な病理標本情報を選択すると、
図15に遷移する。
図15に示す「診断リスト」は、第17ステップで病理診断をする画面を示している。病理医は、
図15に示された画面表示において伝票情報等を参照して病理診断をし、その診断所見を入力する。各病理標本情報は、拡大表示されるようにされているとよい。
【0119】
図15には、画面上部に標本番号、進捗状況、検体切出画像の一覧、患者情報の一覧等が表示され、画面左下に依頼伝票の画像データ、標本情報、染色情報がタブの切り替えにより表示され、画面右下に病理医の1次診断における診断所見記入欄が表示される。また、画面下部に「追加染色依頼」の選択表示、1次診断を確定させる「1次診断確定」が表示される。1次診断を確定させると、診断所見記入欄が編集禁止状態となる。
【0120】
次に、最終診断の確定が可能な第2の病理医が、1次診断の診断所見が追加された病理標本情報を閲覧し、病理診断書を作成する。第2の病理医PCにおいて、診断結果情報をPDF形式等の画像データとし、ファイル名に標本番号を付与する。画像データを作成したら、サイドバーから最終診断結果アップロードを選択して、病理診断書のアップロード画面を表示させる(
図16参照)。
【0121】
図16に示す「病理診断結果アップロード」は、診断結果をアップロードする画面表示を示している。画面表示上部に配置された「病理診断書取込」を選択し、病理医側PCに予め記憶させた病理診断結果の画像情報を選択すると、取り込んだ画像情報のファイル名と画像が表示され、最終確認がされる(
図16参照)。
【0122】
ここで「最終診断確定」が選択されると、標本番号に対応して病理診断結果をなす画像情報が統合される。ここで進捗情報が「診断完了」に更新され、更に「公開」ボタンが選択されると、依頼元医等に病理診断書を閲覧可能にする状態とさせ、第18ステップに進む。
【0123】
図17に示す「病理診断結果ダウンロード」は、第18ステップで、依頼元医が病理診断の結果をダウンロードする画面表示を示している。依頼元医には「公開」された病理診断書を表示させるリンクが電子メール等により通知され、そのリンクを選択することにより、病理診断結果ダウンロードの画面が表示される。
【0124】
病理診断結果ダウンロードの画面には、一人の患者に係る病理診断書に係る索引情報と共に、病理診断書の画像情報をダウンロードさせるリンクが示される。画面内に、一人の患者に係る病理診断書をダウンロードさせるリンクだけしか表示されないため、依頼元医が別の患者の病理診断書を誤ってダウンロードすることがなく、病理診断結果をダウンロードする際の取り違いを防ぐこともできる。
【0125】
図18は、追加染色を行うときの追加業務フローの説明図を示している。第17ステップで、病理医が病理標本を確認したときに、病理診断ができる十分な染色がされていないと判断したときは、依頼元医に追加染色依頼を行う(
図18のα参照)。次に、依頼元医の同意を得た上で、追加染色の合意が病理医に通知される(
図18のβ参照)。
【0126】
追加染色の合意がされたときには、外部機関に追加染色した病理標本の作成を指示する(
図18のγ参照)。これらの依頼は、紙の伝票でされてもよく、電子メールでされてもよく、サーバ13を介して通知がされてもよい。外部機関は追加染色の指示に従って、ステップ2で、引き渡されている検体から、染色条件を変えて、通常の業務フローの第11ステップと同様に、新たに病理標本を作成する。
【0127】
追加染色に係る病理標本情報は、元の標本番号に枝番を付して区別すると共に、特別表示に「追加染色」を表示して管理させる(
図14参照)。これ以降は、通常の業務フローと同様に進行するため説明を省略する。
【実施例0128】
実施例2では、依頼元医側が、依頼伝票と病理標本とを作成して病理医側に運搬し、病理医側が依頼伝票に基づく電子データの作成と病理診断とを行う病理診断管理システム2を、
図19から
図21を参照して説明する。
図19と
図20は、病理診断管理システム2における業務フローを示し、各業務が進行する順序を数字で示している。「依頼元医側」が行う作業は「数字を円」で囲って示し、病理医側が行う作業は「数字を六角形」で囲って示している。情報処理手段をなす病理医側PCにおける処理は、「数字だけ」で示している。なお病理医側PCは業務を委託する委託先PCであってもよい。
【0129】
病理診断管理システム2では、事前の合意に基づき、依頼伝票と病理標本とが同時に、病理医側に引き渡されるため(
図20参照)、実施例1のように「受入確定」、「合意の確定通知」、「病理標本作成の確定」を行う必要がなく、対応するステップを省略させている。病理医側PC又は委託先PC(以下、病理医側PC等という)を情報処理手段として機能させればよい(
図19,
図21参照)。以下、各ステップについて、実施例1と重複する部分については省略して簡単に説明する。
【0130】
第1ステップで、依頼元医の所属する医療機関において、依頼元医が依頼伝票を作成し、依頼元医側に所属する臨床検査技師が、事前の業務合意に基づいて病理標本を作成する(
図20)。第2ステップで、依頼元医側から、依頼伝票と病理標本とが同時に病理医側に運搬され、病理医側に引き継がれる。このとき、標本作成情報と染色情報等の写しも届けられる。
【0131】
第3ステップから第11ステップまでは、病理医側の担当であり、病理医側PC等により処理される。第3ステップでは、病理医側で標本番号を付与し、電子データを病理医側PC等に入力させる。第4ステップでは、病理医側PC等により識別表示が付与される。第5ステップでは、病理医側が第1電子データと第2電子データとを対比させ、文字データを是正させる。
【0132】
第6ステップでは、病理医側PC等が整合リストを選別させる。実施例2では、病理医側PCで整合リストを選別させれば、病理標本情報等のダウンロードが必須ではないため、リスト通知は省略させてもよい。病理医側が委託先PCにてサーバ業務を運用する場合には、リストを通知させればよい。第7ステップでは、病理医側で、病理標本に標本コードを貼付させる。第8ステップでは、病理医側で、標本作成情報・染色情報・検体切出画像を病理医側PCに入力させる。
【0133】
第9ステップでは、病理医側PCが索引情報に標本作成情報を統合させる。第10ステップと第11ステップでは、病理標本情報のリストを病理医側PC等の画面に表示させた状態で、標本コードを読取らせ、標本選択表示手段により、リストのなかから対応する病理標本のみを選択表示させる。ここで、実施例1の到着確認作業と同様に、病理標本情報と病理標本とが対応しているかが確認される。
【0134】
第12ステップでは、病理医が病理診断をし、病理診断書を作成する。第13ステップでは、依頼元医が病理診断結果を取得する。病理診断書は、画像データとした病理診断書を電子メール等を介して取得してもよいが、これに限定されない。
【0135】
次に、病理診断管理システム2の構成を、
図21を参照して説明する。実施例1と共通する構成については、同一の符号を付し説明を省略している。病理診断管理システム2は、病理医側PC又は委託先PC80と、光学式情報取得手段30と、標本コード読取手段40と、表示手段と入力手段とを情報処理手段としている。なお、外部機関に委託しない場合には病理医側PCのみで運用すればよい。
【0136】
処理手段は、是正支援手段、病理標本情報選別手段、標本選択表示手段、依頼業務通知手段として機能されればよく、外部に委託しない場合には、実施例1で病理医と外部機関との間で行われる意思確認とリスト通知に必要であった機能は省略してもよい。
【0137】
病理標本管理手段として機能される記憶手段には、実施例1と同様に索引情報と各電子データとが対応付けられ記憶される。
【実施例0138】
実施例3では、病理標本が外部機関を経て病理医側に届くルートと、病理標本が依頼元医側から直接に病理医側に届くルートとを並行して管理することができる病理診断管理システム3を、
図22から
図24を参照して説明する。
図22は、2つのルートが並行して管理される業務フローを示している。
図23は、病理診断医療機関の操作画面の具体例を示している。
図24は、外部機関の仲介の有無により選別させた整合リストを示している。
【0139】
図22は、実施例1で説明した外部機関の仲介「有」のルートを左側に示し、実施例2で説明した外部機関の仲介「無」のルートを右側に示している。仲介「無」のルートには、第4ステップと、第8から第10ステップと、第14ステップに対応する作業がないため、図示を省略している(
図23の破線枠参照)。
【0140】
病理診断管理システム3は、実施例1と同様に、サーバが情報処理手段をなす処理手段と記憶手段として機能される。なお、外部機関の仲介が無い場合についても、サーバがなす情報処理手段は外部機関に管理させると好適である。電子データを病理医側も作成できるように、病理診断医療機関の操作画面のサイドバーには、「新規作成」、「整合リスト」、「標本情報アップロード」の機能も備えている(
図23参照)。
【0141】
また、索引情報に予め「仲介の有無」を登録させている(
図23太枠参照)。仲介「有」が登録されているときには仲介「有」の業務フローの順に業務が進み、索引情報に仲介「無」が登録されているときには、仲介「無」の業務フローの順に業務が進む(
図22参照)。仲介「無」の場合には、運搬に係る第4ステップと第14ステップを省略すると共に、第8ステップから第10ステップに対応する操作(
図8から
図10参照)を省略し、第11ステップ(
図11参照)に進む。
【0142】
具体的には、第7ステップにおいて病理標本情報が整っている索引情報が整合リストに選別されるときに、外部機関の仲介「有」の場合には、仲介「有」の整合リストに選別される(
図24の上段整合リスト)。ここで上段整合リストの近傍にある「受入確定」が選択されたときには、「受入確定」の操作画面に進み(
図8参照)、実施例1と同様に業務フローが進行する(
図22の仲介「有」ルート参照)。
【0143】
第7ステップにおいて、外部機関の仲介「無」の場合には、仲介「無」の整合リストに選別される(
図24の下段整合リスト)。ここで下段整合リストの近傍にある「標本情報アップロード」を選択したときには、「受入確定」と「標本作成開始確定」のステップを省略して、「標本情報アップロード」の操作画面に進み(
図9参照)、実施例2と同様に業務フローが進行する(
図22の仲介「無」ルート参照)。なお、標本作成情報等をアップロードする第12ステップ以降は、仲介の有無で分割しないで統合させた整合リストとすればよい。
【0144】
いずれのルートから病理標本を受け入れる場合であっても、第5ステップで是正済みの病理標本情報のリストから、第15ステップと第16ステップにおいて、手元にある病理標本の標本コードに対応する病理標本情報により依頼伝票の画像データを表示させ、病理標本と病理標本情報の取り違いがない状態で、第17ステップで病理診断を開始させる。
【0145】
そのため、外部機関の仲介「有」のルートで、依頼伝票(第4ステップ)と病理標本(第14ステップ)とが異なるタイミングで引き渡されても、外部機関の仲介「無」のルートで、病理標本の作成(第1ステップ)とは異なるタイミングで標本コードが貼付されても(第11ステップ)、病理医の手元では、依頼伝票の画像データが表示されて確認されるため、病理標本と病理標本情報とを取り違えることがない。
【0146】
(その他)
・実施例1で示した依頼元医側、外部機関、病理医側の夫々が担当する事務手続きの業務範囲は例示に過ぎない。各組織が、どの業務範囲を担当するかは、合意に応じて変更されてもよい。例えば、外部機関により、第1電子データと第2電子データを作成して、文字データの誤認識を是正させてもよい。
・実施例2では、依頼元医側の医療機関が病理標本を作成する例を説明したが、病理医側が病理標本を作成してシステムを運用してもよいことは勿論のことである。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0147】
1,2,3…病理診断管理システム、
10…サーバ、20…通信手段、30…光学式情報取得手段、
40…標本コード読取手段、50…外部機関PC、60…病理医側PC、
70…依頼元医側PC、80…病理医側PC又は委託先PC、41…標本コード、
51…索引情報、52…標本作成情報、53…染色情報、54…検体切出画像情報、
55…追加染色情報、61…第1電子データ、62…第2電子データ、
63…病理診断結果情報、
100…処理手段、200…記憶手段、
101…標本選択表示手段、102…是正支援手段、
103…病理標本情報選別手段、104…リスト通知手段、
105…病理標本情報表示手段、106…受入確定手段、
107…標本作成開始確定手段、108…結果通知手段、109…依頼業務抽出手段、
110…ユーザ認証手段、111…電子メールアドレス登録手段、
201…病理標本管理手段、202…病理標本情報、203…第1電子データ、
204…第2電子データ、205…病理標本情報、206…整合リスト、
207…識別表示、208…進捗情報、209…「特別表示」、210…確定表示情報、
211…染色情報、212…検体切出画像情報、213…追加染色情報、
214…病理診断結果情報、215…認証判定用ユーザ情報、216…電子メールアドレス
24