(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100350
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】乾燥機
(51)【国際特許分類】
F26B 17/28 20060101AFI20240719BHJP
F26B 3/24 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F26B17/28 A
F26B3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004295
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 拓音
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA06
3L113AB05
3L113AB09
3L113AC05
3L113AC32
3L113AC60
3L113AC62
3L113BA37
3L113CB33
3L113DA06
(57)【要約】
【課題】メンテナンス費用を抑制した乾燥機を提供する。
【解決手段】周方向に沿った複数の溝2Gを外周面に有し軸線AX周りに回転する伝熱ローラ2に被乾燥物Mを接触させて被乾燥物Mを乾燥させ、乾燥した被乾燥物Mをスクレーパ3によって伝熱ローラ2から掻き取る乾燥機1において、伝熱ローラ2は、内側から加熱されるローラ本体20と、溝2Gを形成する溝構成体22とを備えたものであり、溝構成体22は、ローラ本体20に着脱可能に取り付けられたものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に沿った複数の溝を外周面に有し軸線周りに回転する伝熱ローラに被乾燥物を接触させて該被乾燥物を乾燥させ、乾燥した該被乾燥物をスクレーパによって該伝熱ローラから掻き取る乾燥機において、
前記伝熱ローラは、内側から加熱されるローラ本体と、前記溝を構成する溝構成体とを備えたものであり、
前記溝構成体は、前記ローラ本体に着脱可能に取り付けられたものであることを特徴とする乾燥機。
【請求項2】
前記溝構成体は、前記軸線方向に重ねられ互いに分離自在な複数の分割体で形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の乾燥機。
【請求項3】
前記ローラ本体と前記溝構成体は、棒状のキーによって回転不能に連結されたものであることを特徴とする請求項1記載の乾燥機。
【請求項4】
前記溝構成体は、該溝構成体を前記周方向に開くことを可能にする切れ目を有するものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の乾燥機。
【請求項5】
前記溝構成体は、前記切れ目に連接して形成され該溝構成体を前記周方向に開く器具を挿入するための切欠き部を有するものであることを特徴とする請求項4記載の乾燥機。
【請求項6】
前記切欠き部は、前記溝構成体の、前記軸線方向における少なくとも一方の端面から前記器具が挿入可能に形成されていることを特徴とする請求項5記載の乾燥機。
【請求項7】
前記溝構成体は、該溝構成体を前記ローラ本体に連結するための棒状のキーが嵌合する被嵌合部と、該被嵌合部と前記周方向において重複する位置に形成され該溝構成体を該周方向に開くことを可能にする切れ目とを有するものであることを特徴とする請求項1または2記載の乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被乾燥物を乾燥させる乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
軸線周りに回転する伝熱ローラに被乾燥物を接触させて該被乾燥物を乾燥させる乾燥機が知られている。この被乾燥物は、汚泥や一般廃棄物の他、食品、染料、高分子化合物など多くの種類がある。この乾燥機において伝熱ローラの伝熱効率を高めるために、伝熱ローラの表面に周方向に沿った多数の溝または突起を形成することが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。また、汚泥や一般廃棄物を一対の伝熱ローラの間に投入して成形と乾燥を同時に行う乾燥機も知られている(例えば、特許文献2等参照)。この特許文献2の乾燥機では成形と乾燥を同時に行うために、伝熱ローラの表面に周方向に沿った多数の溝が形成されている。特許文献1に記載された乾燥機であっても特許文献2に記載された乾燥機であっても、先端が伝熱ローラに近接して配置されたスクレーパを備えている。そして、乾燥して伝熱ローラの外周面に付着した被乾燥物は、スクレーパによって伝熱ローラから掻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-21601号公報
【特許文献2】特開2006-38339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝熱ローラから被乾燥物を掻き取ることを繰り返すことで、極僅かづつではあるが伝熱ローラの外周面は徐々に摩耗していく。また、特許文献2のように一対の伝熱ローラを用いた乾燥機では、一対の伝熱ローラの間に被乾燥物が入り込む際に伝熱ローラの外周面が摩耗したり傷つくことがある。伝熱ローラが摩耗したり傷ついた場合、伝熱ローラを交換する必要がある。また、特許文献2のように成形と乾燥を行う乾燥機では、被乾燥物の成形形状を変更するために溝形状の異なる伝熱ローラに交換することがある。しかしながら、伝熱ローラは、溝を形成するための加工などに手間がかかるため作製費用が高くなってしまう。また、伝熱ローラは、溝が形成された状態で必要な強度を維持可能な肉厚を有する筒部とその筒部を支持できる2枚の鏡板が必要なため材料費が高くなる上に質量が大きいので交換作業に手間がかかる。これらにより、乾燥機のメンテナンス費用が高価になるという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、メンテナンス費用を抑制した乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の乾燥機は、
周方向に沿った複数の溝を外周面に有し軸線周りに回転する伝熱ローラに被乾燥物を接触させて該被乾燥物を乾燥させ、乾燥した該被乾燥物をスクレーパによって該伝熱ローラから掻き取る乾燥機において、
前記伝熱ローラは、内側から加熱されるローラ本体と、前記溝を構成する溝構成体とを備えたものであり、
前記溝構成体は、前記ローラ本体に着脱可能に取り付けられたものであることを特徴とする。
【0007】
本発明の乾燥機によれば、摩耗や傷がつきやすい前記溝構成体を前記ローラ本体から取り外して該溝構成体のみでも交換できるので、この乾燥機のメンテナンス費用を抑制できる。
【0008】
ここで、前記伝熱ローラは、前記溝に前記被乾燥物を担持するものであってもよい。前記スクレーパは、先端が前記伝熱ローラの前記外周面に近接して配置されたものであってもよい。また、前記スクレーパは、前記被乾燥物が担持された前記外周面に先端が対向して配置されたものであってもよい。さらに、前記スクレーパは、前記溝に入り込む爪を有するものであってもよい。前記溝構成体は、前記軸線方向から見て環状をしたものであってもよい。また、前記溝構成体は、筒状をしたものであってもよい。さらに、前記溝構成体は、前記スクレーパの先端が対向する位置に配置されたものであってもよい。
【0009】
本発明の乾燥機において、
前記溝構成体は、前記軸線方向に重ねられ互いに分離自在な複数の分割体で形成されたものであってもよい。
【0010】
摩耗や傷がついた前記分割体のみを交換できるので、この乾燥機のメンテナンス費用をより抑制できる。
【0011】
本発明の乾燥機において、
前記ローラ本体と前記溝構成体は、棒状のキーによって回転不能に連結されたものであってもよい。
【0012】
前記キーによって回転不能に連結することで、前記ローラ本体と前記溝構成体とを同一回転させることができる。
【0013】
さらに、本発明の乾燥機において、
前記溝構成体は、該溝構成体を前記周方向に開くことを可能にする切れ目を有するものであってもよい。
【0014】
前記溝構成体を周方向に開くことで前記ローラ本体から該溝構成体を取り外しやすくなる。
【0015】
また、本発明の乾燥機において、
前記溝構成体は、前記切れ目に連接して形成され該溝構成体を前記周方向に開く器具を挿入するための切欠き部を有するものであってもよい。
【0016】
前記ローラ本体に前記溝構成体が焼き付いてしまった場合でも、前記切欠き部に前記器具を挿入することで該溝構成体を周方向に開けるので、該ローラ本体から該溝構成体を取り外すことができる。
【0017】
本発明の乾燥機において、
前記切欠き部は、前記溝構成体の、前記軸線方向における少なくとも一方の端面から前記器具が挿入可能に形成された態様であってもよい。
【0018】
この態様によれば、前記器具を容易に挿入することができる。
【0019】
ここで、前記切欠き部は、前記溝構成体の、前記軸線方向における両端面から前記器具が挿入可能に形成されていてもよい。こうすることで、前記軸線方向の両端面のいずれからでも前記器具を挿入することができる。
【0020】
また、本発明の乾燥機において、
前記溝構成体は、該溝構成体を前記ローラ本体に連結するための棒状のキーが嵌合する被嵌合部と、該被嵌合部と前記周方向において重複する位置に形成され該溝構成体を該周方向に開くことを可能にする切れ目とを有するものであってもよい。
【0021】
こうすることで、前記キーが嵌合した状態であっても、前記溝構成体を周方向に開くことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の乾燥機によれば、メンテナンス費用を抑制した乾燥機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に相当する乾燥機を示す概略図である。
【
図2】
図1に示した乾燥機の伝熱ローラを示す断面図である。
【
図5】
図2に示した伝熱ローラの分割体を
図2における右側から見た図である。
【
図7】
図2に示した伝熱ローラにおいて、溝構成体を交換する作業を示すフローチャートである。
【
図8】隣り合う分割体を異なる向きで取り付けた例を示す
図4と同様の詳細図である。
【
図9】第1変形例の乾燥機における分割体を
図2における右側から見た図である。
【
図10】第2変形例の乾燥機における伝熱ローラを示す
図2と同様の断面図である。
【
図11】第3変形例の乾燥機における溝構成体を示す
図4と同様の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の説明では、主に有機汚泥や無機汚泥などの汚泥を被乾燥物として成形および乾燥させて成形乾燥物を得る乾燥機を例にして説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に相当する乾燥機を示す概略図である。
【0026】
図1に示すように、乾燥機1は、一対の伝熱ローラ2と、2つのスクレーパ3と、ホッパ4と、蒸気調圧弁5とを有している。この乾燥機1には、高水分被乾燥物と高水分被乾燥物よりも水分量の少ない低水分被乾燥物とが混合されることである程度水分量が調整された被乾燥物Mが供給される。
【0027】
それぞれの伝熱ローラ2は、軸線AX方向の両端部にパイプ状の回転支持軸21を備えている。伝熱ローラ2は、その回転支持軸21によって、軸線AX周りに回転自在に支持されている。一対の伝熱ローラ2のうちの一方の伝熱ローラ2は、不図示のモータから駆動力が伝達されて軸線AX周りに回転する。なお、そのモータは、回転数を任意に調整可能なモータである。他方の伝熱ローラ2は、一方の伝熱ローラ2から駆動力を受けて一方の伝熱ローラ2と同一回転数かつ同一周速で回転する。
図1には、それぞれの伝熱ローラ2の回転方向が白抜きの矢印で示されている。これらの伝熱ローラ2は、軸線AXが互いに平行になるように配置されている。また、これらの伝熱ローラ2は、外周面における1点が互いに近接して配置されている。伝熱ローラ2それぞれの外周面には円周方向に沿った溝2G(
図2参照)が複数形成されている。2つの伝熱ローラ2の溝2Gは軸線AX方向において互い違いに位置しており、伝熱ローラ2どうしの近接部分では溝2Gの開口部は他方のローラの外周面に塞がれて矩形状の空間が形成される。一対の伝熱ローラ2が回転することでその空間に被乾燥物が押し込まれ、被乾燥物は溝2G内を満たし溝2Gに担持される。一方と他方の伝熱ローラ2は、溝2Gの位置が異なる他は同一形状をしているので、以下の説明では一方の伝熱ローラ2について説明し、他方の伝熱ローラ2については説明を省略することがある。
【0028】
回転支持軸21は不図示のロータリージョイントに接続されている。一端側のロータリージョイントには蒸気が送り込まれる。この蒸気は飽和蒸気であるが、過熱蒸気であってもよい。この蒸気は、一端側の回転支持軸21の内部を経由して伝熱ローラ2内に供給されて伝熱ローラ2を加熱する。伝熱ローラ2を加熱した後の蒸気はドレンとなって他端側の回転支持軸21およびロータリジョイントを経由して乾燥機1の外部に排出される。
【0029】
2つのスクレーパ3は、先端がそれぞれの伝熱ローラ2に近接し対向して配置されている。また、スクレーパ3には、先端位置を調整するための不図示の調整機構が設けられている。スクレーパ3は、複数の爪が形成された櫛刃状をしている。それらの爪の数は、伝熱ローラ2の溝2G(
図2参照)と同数であり、それぞれの爪がその溝2Gに入り込んでいる。
【0030】
ホッパ4は、一対の伝熱ローラ2の上方に配置されている。ホッパ4は上方と下方が開口している。被乾燥物Mは、上方の開口を通してホッパ4に投入されてホッパ4内に貯留される。貯留された被乾燥物Mは、ホッパ4下側の開口から一対の伝熱ローラ2間の上部に供給される。
【0031】
蒸気調圧弁5は、上述したロータリージョイントおよび回転支持軸21を介してそれぞれの伝熱ローラ2に送り込まれる蒸気の圧力を調整するための自動弁である。蒸気調圧弁5を通過した蒸気は、各伝熱ローラ2に供給される。蒸気調圧弁5の開度を高めることで、伝熱ローラ2に供給される蒸気圧が増加し、結果として伝熱ローラ2の加熱量が高まる。
【0032】
伝熱ローラ2が
図1に示した白抜きの矢印の方向に回転することで、伝熱ローラ2の溝2G(
図2参照)には、ホッパ4に貯留された被乾燥物Mが順次圧入されていく。そして、圧入された被乾燥物Mは、それらの溝2Gによって成形されるとともに加熱された伝熱ローラ2に接触した部分から熱が伝わることで乾燥して乾燥物になる。乾燥物は、溝2Gの形状に応じた断面形状に成形される。伝熱ローラ2の回転に伴ってスクレーパ3に達した乾燥物は、スクレーパ3によって伝熱ローラ2から掻き取られてある程度の長さで自然に折れて落下していく。すなわち、溝2Gに入り込んだスクレーパ3の爪によって乾燥物が掻き取られていく。被乾燥物Mが汚泥であれば長さは概ね10mm前後となる。ただし、この長さは、被乾燥物Mの性状によって異なり、乾燥物となった状態における水分量によって変動する傾向がある。すなわち、乾燥物の水分量が少ないと長く、乾燥物の水分量が多いと短くなる。落下した乾燥物は、不図示のクッションホッパに排出される。
【0033】
図2は、
図1に示した乾燥機の伝熱ローラを示す断面図である。この
図2では、断面を示すハッチングは省略している。この
図2には、伝熱ローラ2を軸線AXに沿って切断した切断面が示されており、後述するキー25を含む断面が示されている。
【0034】
伝熱ローラ2は、ローラ本体20と、回転支持軸21(
図1参照)と、溝構成体22と、一対の鏡板23と、固定リング24と、キー25とを備えている。なお、
図2では、回転支持軸21は図示省略している。ローラ本体20は、筒状をしている。ローラ本体20の一端側部分は他の部分に対して肉厚に形成され、さらにその一端側部分には径方向に突出した突出部20aが形成されている。蒸気調圧弁5(
図1参照)を通った蒸気は、ローラ本体20の内側に形成された空間Sに送り込まれ、ローラ本体20を内側から加熱する。溝構成体22は、ローラ本体20に着脱可能に取り付けられている。この溝構成体22によって溝2Gが構成されている。溝構成体22は、軸線AX方向に重ねられた複数の分割体221によって形成されている。なお、
図2では、92個の分割体221によって溝構成体22が形成されている例を示しているが、分割体221の数は任意で構わない。ローラ本体20が加熱されると、加熱されたローラ本体20から熱が伝わり溝構成体22も加熱される。溝構成体22については後に詳述する。
【0035】
鏡板23は、ローラ本体20の両端部分に溶接によって固定されている。この鏡板23に回転支持軸21(
図1参照)が取り付けられることで、ローラ本体20は、蒸気の流路を除いて軸線AX方向の両端が閉塞されている。固定リング24は、他端側の鏡板23にネジ止めされた不図示の止め板によって一端側に向かって押し付けられて固定されている。この固定リング24は、ローラ本体20の突出部20aとの間に溝構成体22を挟み込むことで、溝構成体22が軸線AX方向に移動しないように保持している。キー25は、溝構成体22の軸線AX方向の長さと同じ長さを有する棒状をしている。
【0036】
図3は、
図2のA-A断面図である。なお、
図3では、断面部分だけを示し、背景を図示省略している。また、溝構成体22については、断面を示すハッチングを省略している。
【0037】
図3に示すようにローラ本体20と溝構成体22は、ともに軸線AXを中心とした円筒状をしている。従って、ローラ本体20と溝構成体22は、軸線AX方向から見るとそれぞれ環状をしている。また、ローラ本体20および溝構成体22(分割体221)の周方向が、伝熱ローラ2の周方向になっている。溝構成体22の内径は、ローラ本体20の外径よりもほんの少しだけ大きい。溝構成体22は、ローラ本体20の外周面に嵌め合わされている。ローラ本体20の外周面には、軸キー溝20bが形成されている。また、溝構成体22を構成する複数の分割体221それぞれの内周面には、穴キー溝221aが形成されている。この穴キー溝221aが、被嵌合部の一例に相当する。ローラ本体20と溝構成体22は、軸キー溝20b及び穴キー溝221aに嵌合した角柱状のキー25によって互いに周方向に回転不能に連結されている。従って、ローラ本体20を回転させると溝構成体22はローラ本体20と同一方向に同一回転数で一体として回転する。
【0038】
【0039】
図4に示すように、溝構成体22を構成する各分割体221は、ローラ本体20の外周面において分割体221の厚み方向に重ねられ、いわゆる積層状態となっている。各分割体221は互いに分離自在なものである。従って、ローラ本体20から固定リング24を取り外すことで、分割体221は、他端側にあるものから順に個々にローラ本体20から抜き取ることができる。分割体221の厚み方向は、軸線AX(
図2参照)方向と一致している。各分割体221の外側部分には、伝熱ローラ2の外周面の溝2Gになる窪みが形成されている。この窪みが分割体221外周の角部分に矩形状に形成されているため、本実施形態の分割体221は断面がL字状をしている。なお、分割体221の断面は、
図4では上下が逆のL字状に表れている各分割体221に窪みを設けることで、伝熱ローラ2には分割体221と同数の溝2Gが形成されている。窪みは、分割体221の厚み方向中央部分に断面形状として凹形状となる様に形成してもよいが、切削加工のしやすさから分割体221外周の角部分に、上述の様に断面がL字状となる様に形成することが好ましい。本実施形状のように、分割体221の外周の角部分に断面が概して矩形状をした窪みを形成すれば、窪みを形成するための切削加工が特にしやすい。
図1に示したスクレーパ3は、溝構成体22と軸線AX方向の長さ(幅)が概略一致しており、その先端が溝構成体22に対向する位置に配置されている。すなわち、スクレーパ3と溝構成体22とは、軸線AX方向における位置と長さがほぼ一致している。そして、スクレーパ3の先端は、溝構成体22によって形成されている伝熱ローラ2の外周面に近接し対向して配置されている。
【0040】
図5は、
図2に示した伝熱ローラの分割体を
図2における右側から見た図である。また、
図6は、
図5のC-C断面図である。
【0041】
図5および
図6に示すように、各分割体221は、全周のうち1ヵ所に、切欠き部221cと切れ目221dとが形成されている。切欠き部221cは、穴キー溝221aに連接し、穴キー溝221aから外周側に向かって形成されている。切れ目221dは、切欠き部221cに連接し、切欠き部221cからさらに外周側に向かって形成されている。従って、穴キー溝221aと切れ目221dは、分割体221の周方向において重複する位置に形成されている。切れ目221dを有することで、溝構成体22(分割体221)は、切れ目221dが離間する離間方向(
図5における左右方向)に開くことが可能になっているが、離間方向に広げる荷重が加わっていないときには切れ目221dは閉じて周方向の端面は接触している。逆に言えば、離間方向に分割体221を押し広げることで、分割体221は切れ目221d部分で周方向の端面が分離して周方向に開く。分割体221が弾性変形する範囲内で押し広げれば、この離間方向の力を解除すると切れ目221dは再び閉じる。
【0042】
分割体221がローラ本体20に取り付けられた状態で、切欠き部221cに楔を挿入するか、切欠き部221cにマイナスドライバーなどの先端を挿入してそのマイナスドライバーを捩じることで、切れ目221dが離間させて分割体221を周方向に開くことができる。これらの楔およびマイナスドライバーが、器具の一例に相当する。切欠き部221cは、軸線AX方向に貫通して分割体221に形成されている。このため、軸線AX方向における分割体221の両端面のいずれからでも楔およびマイナスドライバーを挿入することができる。ただし、切欠き部221cは、軸線AX方向における分割体221の端面から分割体221の厚み方向の途中までのみに形成されていてもよい。その場合、溝構成体22の軸線AX方向における少なくとも他端側の端面から楔またはマイナスドライバーが挿入できるように切欠き部221cを形成することが好ましい。ただし、溝構成体22の軸線AX方向における両端面のいずれからでも楔およびマイナスドライバーが挿入できるように軸線AX方向における分割体221の両端面それぞれに切欠き部221cを形成することがより好ましい。ローラ本体20に分割体221が焼き付いてローラ本体20から分割体221が容易に抜き取れない場合でも、切欠き部221cに楔やマイナスドライバーを挿入することで溝構成体22(各分割体221)を周方向に開けるので、ローラ本体20から溝構成体22を抜き取ることができる。
【0043】
また、穴キー溝221aと切れ目221dが分割体221の周方向において離れていると、分割体221を周方向に開こうとしたときにキー25(
図2参照)が邪魔をして分割体221が開きにくい。穴キー溝221aと切れ目221dが分割体221の周方向において重複する位置に形成することで、キー25が邪魔することなく分割体221を周方向に開くことができる。
【0044】
図7は、
図2に示した伝熱ローラにおいて、溝構成体を交換する作業を示すフローチャートである。
【0045】
図7に示すように、溝構成体22を交換する作業では、まず固定リング24を固定している不図示の止め板のネジを外して固定リング24をローラ本体20から抜き取る(ステップS11)。次に、軸線AX方向に重ねられている複数の分割体221のうち最も他端側にある分割体221の切欠き部221cに楔を挿入するか、切欠き部221cにマイナスドライバーを挿入してマイナスドライバーを捩じる(ステップS12)。ただし、このステップS12は、ローラ本体20に分割体221が焼き付いてしまっているときなどローラ本体20から分割体221が容易に抜き取れない場合に分割体221を抜き取りやすくするための作業である。従って、実行しなくてもローラ本体20から分割体221が容易に抜き取れる場合には、ステップS12は省略してよい。そして、複数の分割体221のうち最も他端側にある分割体221をローラ本体20から抜き取る(ステップS13)。次に、交換する全ての分割体221の抜き取りが完了したか否かを判断する(ステップS14)。完了していなければ(ステップS14でNO)、完了するまでステップS12~ステップS14を繰り返して、他端側にあるものから順に分割体221を抜き取っていく。
【0046】
交換する全ての分割体221の抜き取りが完了したら(ステップS14でYES)、新しい分割体221又は交換する必要のない分割体221をローラ本体20に取り付ける(ステップS15)。次に、全ての分割体221の取り付けが完了したか否かを判断する(ステップS16)。完了していなければ(ステップS16でNO)、完了するまでステップS15~ステップS16を繰り返して、分割体221を取り付けていく。全ての分割体221の取り付けが完了したら(ステップS16でYES)、固定リング24をローラ本体20に取り付ける(ステップS17)。以上で溝構成体22を交換する作業が完了する。
【0047】
以上説明した乾燥機1によれば、摩耗や傷により、所望の形状に成形された乾燥物を得ることが難しくなった溝構成体22をローラ本体20から取り外して正常な溝構成体22と交換できるので交換部品として廉価であり、乾燥機1のメンテナンス費用を抑制できる。また、質量が大きい伝熱ローラ2全てを交換する必要がなくなるので、交換作業が容易になる。加えて、溝構成体22が複数の分割体221で構成されているので摩耗や傷がついた分割体221のみを交換できる。これにより、乾燥機1のメンテナンス費用をより抑制できる。またさらに、比較的質量が小さい分割体221を取り換えることで溝構成体22を交換できるので、交換作業がより容易になる。
【0048】
図8は、隣り合う分割体を異なる向きで取り付けた例を示す
図4と同様の詳細図である。なお、
図8では、断面を示すハッチングは省略している。
【0049】
成形と乾燥を行う乾燥機1では、成形形状を変更するために伝熱ローラ2の溝2Gの形状を変更することがある。本実施形態のように溝構成体22を複数の分割体221で構成し、分割体221の窪みを分割体221外周の角部分に形成することで、
図8に示すように溝2Gの幅を変更することができる。
図8の伝熱ローラ2では、隣り合う分割体221を逆向きにローラ本体20へ取り付けることで、溝2Gの幅を2倍にしている。なお、このように分割体221の組合せの構成を変えた場合はそれに応じた形状のスクレーパを用いることになる。
【0050】
続いて、変形例の乾燥機1について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素の名称には、これまで用いた符号と同じ符号を付すことがあり、重複する説明は省略することがある。
【0051】
図9は、第1変形例の乾燥機における分割体を
図2における右側から見た図である。
【0052】
図9に示すように、第1変形例の分割体221は、切れ目221dの外周側部分に開先221eが形成され、切れ目221dの外周側部分が溶接によって接合されている点が先の実施形態と異なる。
図9では、溶加材をドット模様で示している。この第1変形例の乾燥機1では、分割体221をローラ本体20から抜き取る際にローラ本体20から分割体221が容易に抜き取れない場合には、ステップS12の前に溶接部分を削り取る。これにより、分割体221を周方向に開けるようになり、開くことでローラ本体20から溝構成体22を容易に抜き取ることができる。
【0053】
この第1変形例の乾燥機1でも、先の実施形態と同様の効果を奏する。加えて、第1変形例の乾燥機1は、分割体221の切れ目221dが意図しないで離間方向に離れてしまうことや、切れ目221d部分が径方向にずれて段差が生じてしまうことがないといった効果も有する。
【0054】
図10は、第2変形例の乾燥機における伝熱ローラを示す
図2と同様の断面図である。なお、この
図10でも、断面を示すハッチングは省略している。
【0055】
図10に示すように、第2変形例の伝熱ローラ2は、分割体221が積層されて溝構成体22を成しているのではなく、溝構成体22が一体に形成されている点が先の実施形態と異なる。この第2変形例の溝構成体22の断面図は、
図5に示した分割体221の断面図と符号が221から22に代わる以外は同一であるため記載を省略するが、
図5も参照して説明する。第2変形例の溝構成体22における切れ目221dは、溝構成体22の軸線AX方向全長に連続して形成されている。そして、溝構成体22を離間方向に押し広げることで、溝構成体22は切れ目221d部分で分離して周方向に開く。
【0056】
切欠き部221cも溝構成体22の軸線AX方向全長に連続して形成されている。切欠き部221cと切れ目221dは連接して形成されている。ただし、切欠き部221cは、軸線AX方向における溝構成体22の端面が開口するように形成されていれば、軸線AX方向の途中で途切れていてもよい。その場合、溝構成体22の軸線AX方向における少なくとも他端側の端面から楔またはマイナスドライバーが挿入できるように切欠き部221cを形成することが好ましい。ただし、溝構成体22の軸線AX方向における両端面のいずれからでも楔およびマイナスドライバーが挿入できるように切欠き部221cは軸線AX方向における溝構成体22の両端面それぞれに形成されていることがより好ましい。ローラ本体20に溝構成体22が焼き付いてローラ本体20から溝構成体22が容易に抜き取れない場合でも、切欠き部221cに楔やマイナスドライバーを挿入することで溝構成体22を周方向に開けるので、ローラ本体20から溝構成体22を容易に抜き取ることができる。
【0057】
穴キー溝221aは、切欠き部221cと連接している。また、穴キー溝221aと切れ目221dは、溝構成体22の周方向において重複する位置に軸線AX方向全長に連続して形成されている。穴キー溝221aと切れ目221dは、溝構成体22の周方向において重複する位置に形成することで、キー25が邪魔することなく溝構成体22を周方向に開くことができる。
【0058】
この第2変形例の乾燥機1でも、先の実施形態と同様の効果を奏する。ただし、溝構成体22が摩耗や傷がついた場合には、溝構成体22を一体として交換する必要がある。また、
図8を用いて説明したような伝熱ローラ2の溝幅の変更はできない。
【0059】
図11は、第3変形例の乾燥機における溝構成体を示す
図4と同様の詳細図である。なお、この
図11でも、断面を示すハッチングは省略している。
【0060】
図11に示すように、第3変形例の溝構成体22は、大径分割体222と小径分割体223とから構成されている点が先の実施形態と異なる。大径分割体222と小径分割体223とは、内径は同一であるが外径は異なる。そして、これらの外径の差によって伝熱ローラ2の溝2Gが形成されている。すなわち、伝熱ローラ2の溝2Gは、主に小径分割体223の外周面と大径分割体222の側面によって画定されている。
【0061】
この第3変形例の乾燥機1でも、先の実施形態と同様の効果を奏する。また、内径が同一で外径(肉厚)の異なる筒状の部材をそれぞれ輪切りにすることで大径分割体222と小径分割体223を作ることができるので、溝構成体22を廉価に作製できる。加えて、
図11では、大径分割体222と小径分割体223とが隣り合うように配置した例を示しているが、小径分割体223を連続して複数並べることで溝2Gの幅を複数倍にすることができる。さらに、軸線AX方向の厚み(幅)の異なる種類の小径分割体223を用意しておくことで溝2Gの幅を任意に調整できる。またさらに、外径(肉厚)の異なる種類の小径分割体223を用意しておくことで溝2Gの深さを任意に調整できる。
【0062】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、本実施形態では一対の伝熱ローラ2によって成形された乾燥物を得る乾燥機1を例にして説明したが、成形を伴わないで被乾燥物Mを一対の伝熱ローラ2で単に乾燥させるだけの乾燥機1に本発明を適用してもよい。また、特許文献1のような単独の伝熱ローラ2で被乾燥物Mを乾燥させる乾燥機1に本発明を適用してもよい。加えて、軸線AX方向に分割された複数の分割体221を重ねることで溝構成体22を構成する場合、その分割数はいくつであっても構わない。さらに、溝構成体22の溝2Gは、断面が、あり溝状、円弧状、U字状、V字状など矩形以外の形状であってもよい。また、ローラ本体20は、蒸気によって加熱されるものであったが、液体などの他の流体で加熱されるものであってもよく、内側にヒータを配置してそのヒータによって加熱されるものであってもよい。またさらに、ローラ本体20に突出部20aを設ける代わりに、ローラ本体20の、軸線AX方向両端部分それぞれに固定リング24を取り付け可能にして、2つの固定リング24で溝構成体22を挟み込むことで溝構成体22が軸線AX方向に移動しないように保持してもよい。
【0063】
なお、以上説明した各変形例の記載にのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 乾燥機
2 伝熱ローラ
3 スクレーパ
20 ローラ本体
22 溝構成体
2G 溝
AX 軸線
M 被乾燥物