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特開2024-100354治療経過共有システム、治療経過共有方法、治療経過共有プログラム及び治療経過共有サーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100354
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】治療経過共有システム、治療経過共有方法、治療経過共有プログラム及び治療経過共有サーバ
(51)【国際特許分類】
   G16H 80/00 20180101AFI20240719BHJP
【FI】
G16H80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004301
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】520207147
【氏名又は名称】Third Way株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100227581
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】太田 順子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】治療経過の把握と評価を支援し、患者と医療者とのコミュニケーションの質を向上する治療経過共有システム、治療経過共有方法、治療経過共有プログラム及び治療経過共有サーバを提供する。
【解決手段】治療経過共有システム1は、第1ユーザの気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として第1ユーザが使用する第1ユーザ端末から取得する患者情報取得部111と、患者日記情報と、前記第1ユーザの治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、患者日記情報にそれぞれ紐づけた有害度、疾患関連度及び気分由来度を算出する患者情報解析部112と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ユーザの気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として前記第1ユーザが使用する第1ユーザ端末から取得する患者情報取得部と、
前記患者日記情報と、前記第1ユーザの治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、前記患者日記情報にそれぞれ紐づけた有害度、疾患関連度、及び気分由来度を算出する、患者情報解析部と、
を備える治療経過共有システム。
【請求項2】
前記有害度、前記疾患関連度、及び/又は、前記気分由来度に基づいて、前記第1ユーザの疾患に関するアラート情報を生成するアラート生成部と、を備える、
請求項1に記載の治療経過共有システム。
【請求項3】
前記気分情報は少なくともポジティブとネガティブに分類され、
前記アラート生成部は、前記有害度が第1の閾値以上、前記疾患関連度が第2の閾値以上、かつ、前記気分情報が前記ネガティブに分類される場合に、前記アラート情報を生成する、
請求項2に記載の治療経過共有システム。
【請求項4】
前記アラート生成部は、前記気分由来度が第3の閾値以下である場合に、前記アラート情報を生成する
請求項3に記載の治療経過共有システム。
【請求項5】
所定の期間における前記第1ユーザの複数の前記患者日記情報について要約された第2ユーザ向けのレポートを生成するレポート生成部を備える、
請求項4に記載の治療経過共有システム。
【請求項6】
前記第2ユーザ向けのレポートは、前記複数の患者日記情報のうち、前記有害度が前記第1の閾値未満、かつ、前記疾患関連度が前記第2の閾値未満である前記患者日記情報についての要約を含む、
請求項5に記載の治療経過共有システム。
【請求項7】
前記第2ユーザ向けのレポートは、前記複数の前記患者日記情報のうち、前記気分由来度が前記第3の閾値以上である前記患者日記情報についての要約を含む、
請求項5に記載の治療経過共有システム。
【請求項8】
前記レポート生成部は、前記所定の期間における前記第1ユーザの前記治療歴情報を含めて前記第2ユーザ向けのレポートを生成する、
請求項5に記載の治療経過共有システム。
【請求項9】
非医療者が用いる一般用語を医療者が用いる医療専門用語に変換する医療用語翻訳辞書を備え、
前記レポート生成部は、要約された前記患者日記情報を、前記医療用語翻訳辞書を用いて医療専門用語に変換した前記第2ユーザ向けのレポートを生成する、
請求項5に記載の治療経過共有システム。
【請求項10】
前記医療用語翻訳辞書は、医療者が用いる医療専門用語を非医療者が用いる一般用語に変換し、
前記アラート生成部は、前記医療用語翻訳辞書を用いて非医療者が用いる用語に変換された前記第1ユーザ向けのアラート情報を生成する、
請求項9に記載の治療経過共有システム。
【請求項11】
前記第2ユーザ向けのレポートは、前記所定の期間に取得された前記患者日記情報の前記気分情報の推移を示す情報を含む、
請求項5に記載の治療経過共有システム。
【請求項12】
前記患者情報解析部は、前記日記文章情報から出来事として意味が通る最小の単位である事象を抽出し、
前記アラート生成部は、前記事象ごとに前記有害度、前記疾患関連度、及び/又は、前記気分由来度に基づいてアラートを生成する、
請求項2又は3に記載の治療経過共有システム。
【請求項13】
前記患者情報取得部は、前記治療歴情報を前記第1ユーザ端末から取得する、
請求項1に記載の治療経過共有システム。
【請求項14】
前記治療歴情報は、院内処方薬の情報を含む、
請求項1に記載の治療経過共有システム。
【請求項15】
患者情報取得部が、第1ユーザの気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として前記第1ユーザが使用する第1ユーザ端末から取得する患者情報取得ステップと、
患者情報解析部が、前記患者日記情報と、前記第1ユーザの治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、前記患者日記情報にそれぞれ紐づく有害度、疾患関連度、及び気分由来度を算出する患者情報解析ステップと、
を備える治療経過共有方法。
【請求項16】
第1ユーザの気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として前記第1ユーザが使用する第1ユーザ端末から取得する患者情報取得ステップと、
前記患者日記情報と、前記第1ユーザの治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、前記患者日記情報にそれぞれ紐づく有害度、疾患関連度、及び気分由来度を算出する患者情報解析ステップと、
をコンピュータに実行させる治療経過共有プログラム。
【請求項17】
第1ユーザの気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として前記第1ユーザが使用する第1ユーザ端末から取得する患者情報取得部と、
前記患者日記情報と、前記第1ユーザの治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、前記患者日記情報にそれぞれ紐づく有害度、疾患関連度、及び気分由来度を算出する、患者情報解析部と、
を備える治療経過共有サーバ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療経過共有システム、治療経過共有方法、治療経過共有プログラム及び治療経過共有サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医薬や医療関連技術の進歩等により、癌や難病など長期的かつ専門的な治療やケアが必要な患者であっても長期入院をする必要が減少し、通院しながら治療が行えるようになっている。通院治療においては、次の対面診療までの間に起こりうる体調の変化や副作用について患者や患者の家族等が不安感を持つという問題がある。このような問題に対して、医師、患者がインターネット等の通信網を介して、治療法、治療経過等の医療データの提供を行い、医療データの蓄積を行ってデータベース化し、中長期的、総合的なエビデンスを構築して、医師及び患者が必要な情報を容易に得られることができる医療情報支援システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、通院治療中の患者のQOL(Quolity of Life)を重視する動きや、治療効果の評価として患者の主観的な指標を導入する動きもある。医療者にとって、患者満足度や治療満足度が重視されるようになってきている。通院時の対面診療は患者にとってそうした満足度を判断する重要な機会である。そのため、医療者は、対面診療において、患者の状態をより正確に把握してより適した治療方針などをわかりやすく提案することが求められる。しかし、医療者が対面診療及びその準備にかけられる時間は限られている。これに対し、患者に由来する情報を治療に活用しようとする技術が提案されている。例えば、患者側端末に質問を表示して、患者由来情報の入力を受け付け、院内サーバにおいて、患者側端末から取得する患者由来情報に基づいて患者の症状を分析し、分析結果を医師側端末に表示する患者由来情報システム、及び診療情報抽出システムが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-221471号公報
【特許文献2】特開2013-73253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明は、主に情報提供を目的としており、治療経過中、特に自宅療養中に緊急性や重大性がある患者の状態が発生しても患者自身又は医療者が気付かずに対応が遅れるという問題がある。また、患者からの副作用の報告についても様式で細かく設定されており、患者にとって入力が負担となる。一方で、特に、薬や処置の副作用のような有害事象の表出程度の認識や評価は、環境や患者自身の性格による患者の気分変化や気分傾向の影響を受けるため個人差が出る。また、治療、処置、薬の効果や副作用については、患者と医療者とで認識や評価がずれることがある。そのため、そもそも、患者が副作用等であると自覚していない場合はデータが入力されない。さらに、患者による記録は情報共有を目的として公開されており、他人には知られたくない病気についてのつぶやきを気軽に記録するには適していない。
【0006】
また、医療者と患者が信頼関係を対面診療の短い時間で信頼関係を築くうえで、自宅療養中の治療方針とのずれや治療に関する重要事象を正確に把握したり、治療に直接関係ない患者に関する情報を効率的に共有したりすることも重要である。しかし、特許文献2の発明は、患者が使用する端末上で、質問が表示されて回答する形式であり、質問に該当しない内容について患者が伝えたいことがあっても入力できないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、治療経過の把握と評価を支援し、患者と医療者とのコミュニケーションの質を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る治療経過共有システムは、第1ユーザの気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として前記第1ユーザが使用する第1ユーザ端末から取得する患者情報取得部と、前記患者日記情報と、前記第1ユーザの治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、前記患者日記情報にそれぞれ紐づけた有害度、疾患関連度、及び気分由来度を算出する、患者情報解析部と、を備える。
上記した目的を達成するために、本発明に係る治療経過共有方法は、患者情報取得部が、第1ユーザの気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として前記第1ユーザが使用する第1ユーザ端末から取得する患者情報取得ステップと、患者情報解析部が、前記患者日記情報と、前記第1ユーザの治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、前記患者日記情報にそれぞれ紐づく有害度、疾患関連度、及び気分由来度を算出する患者情報解析ステップと、を備える。
上記した目的を達成するために、本発明に係る治療経過共有プログラムは、第1ユーザの気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として前記第1ユーザが使用する第1ユーザ端末から取得する患者情報取得ステップと、前記患者日記情報と、前記第1ユーザの治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、前記患者日記情報にそれぞれ紐づく有害度、疾患関連度、及び気分由来度を算出する患者情報解析ステップと、をコンピュータに実行させる。
上記した目的を達成するために、本発明に係る治療経過共有サーバは、第1ユーザの気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として前記第1ユーザが使用する第1ユーザ端末から取得する患者情報取得部と、前記患者日記情報と、前記第1ユーザの治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、前記患者日記情報にそれぞれ紐づく有害度、疾患関連度、及び気分由来度を算出する、患者情報解析部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記手段を用いる本発明によれば、患者の治療に関する不安を軽減し、患者と医療者とのコミュニケーションの質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る治療経過共有システムを示すシステム構成図である。
図2】患者情報記憶部に記憶される患者情報の例をまとめた表である。
図3】患者情報解析ルーチンを示すフローチャートである。
図4】医療者向け経過サマリの作成ルーチンを示すフローチャートである
図5】患者端末装置に表示される患者日記のマイページ画面の表示例である
図6】患者端末装置に表示される患者日記の日記入力画面の表示例である。
図7】患者端末装置に表示される患者日記の治療歴入力画面の表示例である。
図8】患者端末装置に表示される患者日記の治療歴入力画面の別の表示例である。
図9】医療者端末装置に表示される医療者向け経過サマリ画面の表示例である。
図10】医療者端末装置に表示される患者向け経過サマリ画面の表示例である。
図11】本発明の実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0012】
<構成>
図1は、本発明の実施形態に係る治療経過共有サーバ11を含む治療経過共有システム1を示すシステム構成図である。
【0013】
治療経過共有システム1は、患者(第1ユーザ)がインターネット等のネットワーク経由でサーバに記録する患者日記や治療歴を、医療者(第2ユーザ)及び事業者(第3ユーザ)と共有する治療経過共有サービスを提供するためのシステムである。治療経過共有システム1は、治療経過過程に起こる患者の気分の変化や治療に関連する体調を含む日々の出来事を記録した患者日記に基づいて患者に関する有害事象を抽出しアラートを生成し、患者、医療者、事業者に通知する。患者は、所定の疾患の治療を医療者の医療的指導の下に治療を受けている。所定の疾患は、例えば、癌、難病である。癌の種類は、例えば、乳がん、肝臓がん、大腸がん、肺がん、胃がん、等である。難病は、例えば、国家指定難病である。難病の種類は、例えば、潰瘍性大腸炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、等である。医療者は、当該患者を医療的にケアする医療従事者や医療機関であり、以下の説明では単に医療者と表記する。事業者は、医療の専門知識を有し、患者と医療者の通訳及び橋渡し役として、治療経過共有サービスを提供する。また、事業者は、患者に対して治療費の見積り金額を算出して提示するサービスや、患者が医療者を受診している時の診療録の代理記録や診療時の議事録作成、診療・検査予約リマインダ等のサービスを提供する。以下に説明する実施形態では、患者は癌疾患の治療中という前提で説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る治療経過共有システム1は、ネットワークNWを介して接続された、治療経過共有サーバ11、患者端末装置21(第1ユーザ端末)、事業者端末装置31、医療者端末装置41、の情報処理装置を備える。ネットワークNWは、インターネット、VPN(Virtual Private Network)等の通信ネットワークである。治療経過共有サーバ11は、治療経過共有サービスを提供する事業者が運用するサーバである。患者端末装置21は、治療経過共有サービスを利用する患者やその家族等が使用する端末装置である。事業者端末装置31は、事業者が使用する端末装置である。医療者端末装置41は、治療経過共有サービスを利用する医療者等が使用する端末装置である。なお、説明の簡略化のため図1では患者、事業者、及び医療者をそれぞれ1人と想定して患者端末装置21、事業者端末装置31、及び医療者端末装置41をそれぞれ1台のみ示しているが、治療経過共有サーバ11はネットワークNWを介して複数の患者端末装置21、事業者端末装置31、及び医療者端末装置41と接続可能である。また、治療経過共有サーバ11についても、物理的又は仮想的に複数のサーバから構成されていてもよい。
【0015】
治療経過共有システム1において、患者は患者端末装置21からユーザ認証を経て、治療経過共有サーバ11にアクセスし、日々の患者日記や治療歴を登録する。治療経過共有サーバ11に登録され蓄積された患者日記は、患者は自身の患者日記のみを患者端末装置21で閲覧可能である。患者日記は、事業者が事業者端末装置31で閲覧すること、及び、患者の疾患を担当する医療者が医療者端末装置41で閲覧することが可能である。つまり、ある患者の日記が、他の患者に公開されることはない。また、患者の疾患を担当しない他の医療者にも公開されることはない。そのため、患者はプライベートに配慮された環境でサービスを利用することができ、例えば、他の患者に知られたくない病気に関する内容についても記録しやすくなっている。
【0016】
治療経過共有サーバ11は、患者情報取得部111、患者情報解析部112、アラート生成部113、レポート生成部114、制御部115、数理モデル管理部116、患者情報記憶部121、医療医薬情報記憶部122、及び、医療用語翻訳辞書123、数理モデル記憶部124を備え、内部で相互に通信可能に接続されている。
【0017】
患者情報取得部111は、患者情報を取得して患者情報記憶部121に記憶する。患者情報は、患者属性情報、治療歴情報、患者日記情報、等を含む。患者情報の詳細は後述する。
【0018】
患者情報取得部111は、患者の気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として取得する。具体的には、患者情報取得部111は、患者端末装置21において患者が入力し治療経過共有サーバ11に対して送信した、気分情報と日記文章情報と、をネットワークNWを介して、患者端末装置21から取得する機能を有する。気分情報は、本実施形態では、「とてもうれしい」、「少しうれしい」、「ふつう」、「少しかなしい」、「とてもかなしい」の5段階の指標からいずれかを患者が選択できるように設定されている。患者情報取得部111は、取得した気分情報と日記文章情報と、を取得した日時を示す情報及びユーザ認証で特定された患者の患者IDとともに、患者ごとに、すなわち患者IDと紐づけられて、患者情報記憶部121に記憶される。なお、患者は、患者日記を1日に複数回登録することも可能である。
【0019】
また、患者情報取得部111は、治療歴情報を取得する。具体的には、患者情報取得部111は、患者端末装置21において患者が入力し治療経過共有サーバ11に対して送信した、治療歴情報をネットワークNWを介して、患者端末装置21から取得する。また、患者情報取得部111は、事業者端末装置31において事業者が入力し治療経過共有サーバ11に対して送信した、治療歴情報をネットワークNWを介して、事業者端末装置31から取得する。また、患者情報取得部111は、医療者端末装置41において医療者が入力し治療経過共有サーバ11に対して送信した、治療歴情報をネットワークNWを介して、医療者端末装置41から取得してもよい。
【0020】
患者情報解析部112は、患者情報取得部111が取得した患者日記情報と、患者情報記憶部121に記憶されている同じ患者の治療歴情報と、を数理モデルを用いて解析し、患者日記情報に紐づく有害度A、疾患関連度D、及び気分由来度Fを算出する機能を有する。具体的には、以下の解析を行う。
【0021】
患者情報解析部112は、患者の日記文章情報について数理モデルとして自然言語解析モデルを用いて、事象Eを抽出する事象抽出処理を行う。事象とは、日記文章情報に現れた出来事として意味が通る最小の一単位であり、1回分の日記文章情報から複数抽出される場合もある。例えば、ある日の患者の日記文章情報が「曇っている。なんだか起きたら腰が痛くて、ぎっくり腰になりそう・・・。ただし、具合は良い。お薬はちゃんと飲めた。」であった場合、意味が通る最小の単位としては、例えば、(1)「曇っている。」、(2)「起きたら腰が痛くて」、(3)「ぎっくり腰になりそう」、(4)「具合は良い」、(5)「薬はちゃんと飲めた」のように分割することができ、それぞれが事象Eに該当する。このように1回の日記文章情報に複数の事象が有る場合、切り出した順にn番目の事象はEn(nは自然数)として扱われる。事象Eの抽出には、辞書、コーパス、形態素解析、構造解析、及び構文解析等を組合せて行う一般的な自然言語解析の前処理手法を用いることができる。患者情報解析部112は、日記文章情報に対して事象抽出処理を実行して抽出した事象Eを、患者日記情報に紐づく解析結果として、患者情報記憶部121に記憶する。
【0022】
次に、患者情報解析部112は、抽出した事象Eごとに、有害度A、疾患関連度D、及び気分由来度Fを算出する事象解析処理を行う。有害度Aは、事象Eが患者にとって好ましくない程度を、例えば0から1の間の数値で表したものであり、この場合、1は最も好ましくない程度であることを表している。疾患関連度Dは、事象Eが患者の疾患に関連する程度を、例えば0から1の間の数値で表したものであり、この場合、1が疾患に関連する程度が最も強いことを表している。気分由来度Fは、事象Eが患者の気分に由来する程度を、例えば0から1の間の数値で表したものであり、この場合、1が気分に由来する程度が最も強いことを表している。
【0023】
患者情報解析部112の事象解析処理は、数理モデルとして、例えば、事象解析用の学習済みモデルを用いる。事象解析用の学習モデルは、過去に複数の患者から集めた患者日記情報、その患者に紐づく治療歴情報、及び一般的な医療情報を教師データとして意味解析や文脈解析等の自然言語処理を機械学習(例えばディープラーニング)させた学習済みモデルである。事象解析用の学習済みモデルは、患者日記情報を入力として、事象Eに含まれるネガティブな単語やフレーズを識別して因子分解し、有害事象との相関を解析して、事象Eごとに数値化された有害度Aを出力する。また事象解析用の学習済みモデルは、患者日記情報を入力として、事象Eに含まれる疾患に関連する単語やフレーズを識別して患者の疾患との相関を解析し、数値化された疾患関連度Dを出力する。さらに事象解析用の学習済みモデルは、患者日記情報、具体的には、気分情報を入力として、事象Eと気分情報との相関を解析して、数値化された気分由来度Fを出力する。なお事象解析用の学習済みモデルは、気分由来度Fの算出においては、過去の気分情報、及びその推移も含めた統計情報を利用して解析を行ってもよい。患者情報解析部112は、事象解析用の学習済みモデルから出力された有害度Aと、疾患関連度Dと、を、解析の対象となった患者日記情報及び事象Eに紐づく解析結果として、患者情報記憶部121に記憶する。また、患者情報解析部112は、事象解析用の学習済みモデルから出力された気分由来度Fを、解析の対象となった患者日記情報に紐づく解析結果として、患者情報記憶部121に記憶する。
【0024】
患者情報解析部112は、また、患者情報取得部111が取得した気分情報を、少なくともポジティブ(P)又はネガティブ(N)に分類して、患者情報記憶部121に解析した気分情報に紐づく解析結果として記憶する。分類は、例えば、5段階の指標からなる気分情報である「とてもうれしい」、「少しうれしい」、「ふつう」、「少しかなしい」、「とてもかなしい」について、「とてもうれしい」と「少しうれしい」はポジティブで、「ふつう」、「少しかなしい」、「とてもかなしい」はネガティブと予め決められたルールを適用してもよく、患者の性格や、過去の気分情報の推移等を考慮してルールを適宜変更して適用しても良い。
【0025】
アラート生成部113は、事象ごとに有害度A、疾患関連度D、及び/又は、気分由来度F、に基づいてアラートを生成する。
【0026】
アラート生成部113は、患者情報解析部112において事象Eについて算出された有害度Aを第1の閾値Atと比較して事象Eが有害事象か否かを判定する機能を有する(有害事象判定)。また、アラート生成部113は、患者情報解析部112において事象Eについて算出された疾患関連度Dを第2の閾値Dtと比較して、事象Eが治療に関連するか否かを判定する機能を有する(疾病関連判定)。さらに、アラート生成部113は、患者情報解析部112において事象Eについて算出された気分由来度Fを第3の閾値Ftと比較して、事象Eが患者の気分に由来するものか否かを判定する機能を有する(気分由来判定)。
【0027】
また、アラート生成部113は、有害事象判定、疾病関連判定、気分由来判定、のそれぞれの判定結果のいずれか又は組み合わせが、所定の条件を満たす場合にアラート情報を生成する。具体的には、アラート生成部113は、有害度Aが第1の閾値以上、疾患関連度Dが第2の閾値以上、かつ、気分由来度Fが第3の閾値未満である場合、すなわち事象Eが気分に由来しない有害事象であってかつ治療に関連すると判定した場合に、当該事象Eに関するアラート情報を生成する。
【0028】
アラート生成部113は、生成したアラート情報に基づいて、医療者に提供することを目的とした医療者向けアラート情報と、患者に提供することを目的とした患者向けアラート情報(第1ユーザ向けアラート情報)と、を生成する。具体的には、アラート生成部113は、生成したアラート情報を後述する医療用語翻訳辞書123を用いて医療者が用いる医療専門用語による医療者向けの表現に変換し、医療者向けアラート情報を生成する。同様に、アラート生成部113は、生成したアラート情報を医療用語翻訳辞書123を用いて患者(非医療者)が用いる一般用語による患者向けの表現に変換し、患者向けアラート情報を生成する。アラート生成部113は、生成したアラート情報と、医療者向けアラート情報と、患者向けアラート情報と、を患者日記情報に紐づけて患者情報記憶部121に記憶する。また、アラート生成部113は、ネットワークNWを介して、アラート情報を事業者端末装置31に、医療者向けアラート情報を医療者端末装置41に、患者向けアラート情報を患者端末装置21に、それぞれ送信する。
【0029】
第1の閾値Atは、事象Eが患者にとって好ましくないか否かの判断基準値であり、例えば有害度Aが第1の閾値At以上であれば、アラート生成部113は、事象Eが有害度の高い有害事象であると判断し、有害度Aが第1の閾値At未満であれば事象Eは有害度が低い無害事象であると判断する。第1の閾値Atは、有害度Aが取り得る0から1の間の数値として治療経過共有サーバ11に記憶されている。第1の閾値Atは、治療経過共有サーバ11であらかじめ設定された値、事業者端末装置31から指定された値、又は、患者若しくは患者日記情報に紐づけられて患者若しくは事象Eの特性に合わせて調整された値、等を使用することができる。例えば、患者の疾患に関連した服用薬の副作用に関連する事象Eについて、主疾患である癌の他に高血圧や糖尿病などの基礎疾患があり、薬の副作用のリスクが高くなる患者に対しては第1の閾値Atを低く補正してわずかな副作用でもアラートが出るようにしたり、過去に繰り返し起きた同じ事象で患者自身が適切に対応できている事象については第1の閾値Atを高く設定してアラートの頻度を抑制したり、してもよい。このような患者又は事象Eに応じた第1の閾値Atの情報は、例えば後述する患者情報記憶部121、医療医薬情報記憶部122や、図示しない記憶部に記憶されており、アラート生成部113はこのような記憶部から第1の閾値Atを抽出して設定する。
【0030】
第2の閾値Dtは、事象Eが患者の疾患の症状、治療、処置、薬の副作用等に関連しているかの判断基準値であり、例えば疾患関連度Dが第2の閾値Dt以上であれば、アラート生成部113は、事象Eが疾患関連度Dの高い事象であると判断し、疾患関連度Dが第2の閾値Dt未満であれば事象Eは治療関連度が低い事象であると判断する。第2の閾値Dtは、疾患関連度Dが取り得る0から1の間の数値として治療経過共有サーバ11に記憶されている。第2の閾値Dtは、治療経過共有サーバ11であらかじめ設定された値、事業者端末装置31から指定された値、又は、患者若しくは患者情報に紐づけられて患者若しくは事象Eの特性に合わせて調整された値、等を使用することができる。例えば、患者の主疾患である癌の種類、ステージ、治療方法、又は服薬状況に応じて第2の閾値Dtを補正してもよい。このような患者又は事象Eに応じた第2の閾値Dtの情報は、例えば後述する患者情報記憶部121、医療医薬情報記憶部122や、図示しない記憶部に記憶されており、アラート生成部113はこのような記憶部から第2の閾値Dtを抽出して設定する。
【0031】
第3の閾値Ftは、事象Eが患者の気分に由来するものか否かの判断基準値であり、例えば気分由来度Fが第3の閾値Ft以上であれば、アラート生成部113は、事象Eが気分に由来する事象であると判断し、気分由来度Fが第3の閾値Ft未満であれば事象Eは気分に由来しない事象であると判断する。第3の閾値Ftは、気分由来度Fが取り得る0から1の間の数値でとして治療経過共有サーバ11に記憶されている。第3の閾値Ftは、治療経過共有サーバ11であらかじめ設定された値、事業者端末装置31から指定された値、又は、患者若しくは患者日記情報に紐づけられて患者若しくは事象Eの特性に合わせて調整された値、等を使用することができる。例えば、過去の事象解析の結果において患者のメンタル面と体調面との相関が弱い傾向がみられる場合に第3の閾値Ftを低く補正したり、直近数回の気分情報が連続してネガティブに分類される場合には第3の閾値Ftを高く設定したり、する。このような患者又は事象Eに応じた第3の閾値Ftの情報は、例えば後述する患者情報記憶部121、医療医薬情報記憶部122や、図示しない記憶部に記憶されており、アラート生成部113はこのような記憶部から第3の閾値Ftを抽出して設定する。
【0032】
レポート生成部114は、患者情報記憶部121に記憶されている所定の期間における所定の患者の複数の患者情報の要約を含む経過サマリを生成する。具体的には、レポート生成部114は、所定の期間における所定の患者の複数の患者日記情報のうち、患者日記情報に紐づいた有害度Aが第1の閾値未満、かつ、疾患関連度Dが第2の閾値未満である患者日記情報について要約されたレポートを含む経過サマリを生成する。より具体的には、患者情報記憶部121は、医療者端末装置41からの特定の患者Xの所定の期間Tについての患者日記に関する経過サマリの作成要求に応じて、患者情報記憶部121に記憶されている患者情報から、その特定の患者について所定の期間に登録された患者の複数の患者日記情報とそれに紐づく患者日記情報の解析結果を抽出し、自然言語解析による要約処理を行って経過サマリを生成する。レポート生成部114は、経過サマリに所定の期間における所定の患者の複数の治療歴情報の要約を含めてもよい。経過サマリには、医療者向け経過サマリ(第2ユーザ向けのレポート)と患者向け経過サマリが含まれる。
【0033】
医療者向け経過サマリは、患者の気分情報の時系列推移を示す情報である「気分メータ」と、患者の日常生活を要約した「日記サマリ」と、患者日記情報及び治療歴情報から生成されたアラート情報及び治療歴情報の履歴である「治療・アラート履歴」を含む。このうちの「日記サマリ」について、レポート生成部114は、有害度Aが第1の閾値At未満、かつ、疾患関連度Dが第2の閾値Dt未満の事象Eを抽出して、要約処理を行い、「日記サマリ」を生成する。すなわち、レポート生成部114は、治療に関連しない無害事象である事象Eを抽出して「日記サマリ」を生成する。医療者向け経過サマリの「日記サマリ」は医療用語翻訳辞書123を用いて医療者が用いる医療専門用語に変換されたテキストによる文章が生成される。「治療・アラート履歴」は、同様に、医療用語翻訳辞書123を用いて医療者が用いる医療専門用語に変換されたテキストによる文章が生成されてもよいし、統計情報やイベントの時系列情報をグラフや図式的に示してもよい。生成された医療者向け経過サマリの「気分メータ」、「日記サマリ」、「治療・アラート履歴」は、制御部115により、ネットワークNWを介して医療者端末装置41に送信、表示される。医療者向け経過サマリの画面表示例については後述する。
【0034】
患者向け経過サマリは、例えば、患者の日常生活を要約した「日記サマリ」と、アラート情報や治療歴情報を要約した「治療経過とその評価」と、を含む。患者向け経過サマリは、患者の気分情報の時系列推移を示す「気分メータ」を含んでもよい。なお、「気分メータ」は医療者向け経過サマリに含まれる「気分メータ」と同じものでよい。患者向け経過サマリの「日記サマリ」は医療用語翻訳辞書123を用いて患者が用いる一般用語に変換されたものが生成される。「治療経過とその評価」は、同様に医療用語翻訳辞書123を用いて患者が用いる一般用語に変換されたテキストによる文章が生成されてもよいし、アラート発生や治療の記録の統計情報や時系列情報をグラフや図式的に示してもよい。生成された患者向け経過サマリの「日記サマリ」及び「治療経過とその評価」は、制御部115により、ネットワークNWを介して患者端末装置21に送信される。患者向け経過サマリは、患者自身やその家族が過去の患者日記や治療歴の内容を振り返ったりアラートを確認したりすることで患者が治療内容を評価する、いわゆる患者報告アウトカム(Patient Reported Outcomes)の生成に利用することができる。患者向け経過サマリの画面表示例については後述する。
【0035】
また、レポート生成部114は、経過サマリに、患者情報記憶部121に記憶されている所定の期間における所定の患者の治療歴情報の要約を含めてもよい。例えば、前回の診察から今回の診察までの間の、治療方針、手術・処置歴、投薬歴を含めることができる。より具体的には、例えば、治療方針として出力Nで2週おきの放射線治療と毎週の薬剤点滴という指示が出ていたこと、手術・処置歴として実際の放射線治療を行った日とその出力や、薬剤点滴を行った日、等を一覧や要約として経過サマリに含めることができる。これにより、例えば、放射線治療を主治医の所属施設とは異なる施設で行う場合に、主治医の指示と、実際の治療内容とに相違点がある場合でも、主治医はその内容を把握することができる。
【0036】
制御部115は、治療経過共有サーバ11を統括的に制御する機能を有する。具体的には、制御部115は、治療経過共有サーバ11内の各部の動作、通信、エラー処理を制御する機能を有する。
【0037】
数理モデル管理部116は、数理モデルの生成、更新、管理を行う。数理モデルは、生成又は更新した数理モデルを数理モデル記憶部124に記憶したり、数理モデルのバージョン管理を行う。
【0038】
患者情報記憶部121は、治療経過共有システム1を利用する患者ごとに患者に関する患者情報を記憶している。また、患者情報記憶部121は、レポート生成部114が生成した経過サマリや、利用履歴、変更履歴、エラーログ等の情報も記憶している。
【0039】
図2は、本発明の実施形態に係る患者情報記憶部121に記憶される患者情報の例をまとめた表である。図2を参照しながら患者情報について以下に説明する。患者情報は、患者属性情報と、治療歴情報と、患者日記情報と、アラート情報と、を含む。患者情報は、患者ごとに生成される。
【0040】
患者属性情報は、患者ID、氏名、生年月日、及び性別の情報を含む。患者IDは、患者を識別するための患者識別情報であり患者ごとにユニークな値が設定される。
【0041】
治療歴情報は、疾患ごとに生成され、その疾患に関して、治療方針、手術・処置歴、投薬歴、検査歴、副作用歴、検査・計測データ、診療議事録等の情報を含む。治療方針、手術・処置歴、投薬歴、検査歴、副作用歴、検査・計測データ、診療議事録は、それぞれ、評価情報を含む。評価情報は、患者によって付与される評価情報であり、例えば、「A(良い)」、「B(普通、可も不可もなし)」、「C(悪い)」等の段階評価から選択された情報が記憶される。投薬歴の情報に関する評価の場合は、薬の種類ごと、摂取方法、摂取時間帯、服用期間、等の分類ごとに評価が記憶されてもよい。
【0042】
治療方針は、患者の診断結果と、診断結果や患者の体の状態とに基づいて主治医や担当医が提示及び選択した治療法とその説明である。患者の診断結果は、患者のがんの種類、部位、状態、大きさ、性質、広がり、等を含む。治療法は、手術治療、薬物療法(抗がん剤治療)、放射線治療のいずれか又は組み合わせを含む。
手術・処置歴は、具体的には、例えば、放射線治療に関する情報を含む。放射線治療に関する情報には、X線や陽子線といった線種、外照射や内照射の区別、ライナックや強度変調放射線治療といった照射技術の区分、照射出力、照射間隔の情報を含む。照射間隔は、照射線治療を実施単位での間隔を示す情報であり、疾患の種類や経過によって例えば数日から数週間である。
【0043】
投薬歴は、処方箋による処方薬の種類や名称と使用摂取履歴、院内処方された薬(院内処方薬)や処置剤の種類や名称と使用摂取履歴、サプリメントや市販薬の種類や名称と使用摂取履歴、を含む。処方箋による処方薬は、お薬手帳や処方箋発行時に付与される二次元コード等により患者や補助者が患者端末装置21から画像やテキスト等で登録してもよい。院内処方された薬や処置剤については、患者や補助者が患者端末装置21から画像やテキスト等で登録してもよい。投薬歴は、具体的には、例えば、癌疾患の薬物療法に関する情報を含む。薬物療法に関する情報は、化学療法、ホルモン療法、分子標的両方に関する情報を含む。投薬歴は、点滴の処置に関する情報を含む。
検査・計測データは、患者が診断前から治療の過程で受けた検査に関する時系列情報である。検査の種類や検査結果を含む。
副作用歴は、薬や処置により患者に生じる副作用の時系列情報である。副作用歴は、後遺症に関する情報を含んでもよい。
診療議事録は、主治医や担当医による患者の診察の内容を記録した情報である。
【0044】
患者日記情報は、日記ごとに生成され、その日記に関して、記録された日時に関する情報、気分情報、日記文章情報、その日記文章情報から抽出された事象Eに関する情報、を含む。気分情報は、気分情報をポジティブ又はネガティブに分類した分類結果を含む。日記文章情報は、日記のタイトルと内容に関する情報を含む。事象Eは、その事象Eの解析結果である有害度A、疾患関連度D、気分由来度Fの情報を含む。
【0045】
アラート情報は、アラート生成部113が生成したアラートごとに生成され、日時、対象日記、対象事象、内容、の情報が含まれる。
【0046】
患者情報のうち、患者日記情報は、患者により患者端末装置21から登録される。また、治療歴情報も、主に患者により患者端末装置21から登録される。治療歴情報の一部、例えば診療議事録は、診察に同席する事業者の事業者端末装置31から登録されてもよい。また、患者情報のうち、患者日記情報以外は事業者端末装置31や医療者端末装置41から登録された情報を記憶してもよく、また、医療者の所属する医療機関の有する患者に関するカルテ等の電子データと連携しても良い。
【0047】
医療医薬情報記憶部122は、患者、事業者、及び医療者が参照するための一般情報源としての医療医薬情報が記憶されている。医療医薬情報は、例えば、疾患、症状、治療方法、処置方法、薬剤、副作用、検査、及び治験データ等に関連する情報である。具体的には、各種治療ガイドライン、今日の治療薬辞書、各製薬メーカーのインタビューフォーム等である。
【0048】
医療用語翻訳辞書123は、医療者が用いる医療専門用語や医学的な表現と患者等の非医療者が用いる一般用語や平易な表現とを対応付けて辞書データを構成したもので、相互に変換可能な機能を有する。医療用語翻訳辞書123は、既存の辞書を用いてもよく、さらに治療経過共有システム1の患者情報記憶部121や医療医薬情報記憶部122に蓄積される患者情報や医療医薬情報に基づいて変換の対応付けを自動抽出する従来技術の辞書作成モデル等により随時追加更新を行っても良い。
【0049】
数理モデル記憶部124は、数理モデルを記憶する。数理モデルは、自然言語解析モデルと、事象解析用の学習済みモデルと、を含む。数理モデルは、例えば、機械学習モデル、深層学習モデル、などの一種であってもよい。また、単一のモデルである必要はなく、複数の独立したモデルを組み合わせたり、切り替えたりして実現してもよい。数理モデル記憶部124は、医療用語翻訳辞書123を更新する辞書作成モデルを含んでもよい。
【0050】
これら、患者情報記憶部121、医療医薬情報記憶部122、医療用語翻訳辞書123の3つの記憶部に記憶される情報は、治療経過共有サーバ11においてあらかじめ入力されたものが含まれていもよく、また、ネットワークNWを介して外部から入力及び更新を随時行うことにより取得したものが含まれていてもよい。なお、本実施形態では患者情報記憶部121、医療医薬情報記憶部122、医療用語翻訳辞書123の3つの記憶部を別体としているが、それぞれの情報を一体とし記憶した物理的又は仮想的に一つの記憶部であってもよい。
【0051】
患者端末装置21、事業者端末装置31、及び医療者端末装置41は、例えばPCや、スマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような情報処理端末装置である。患者端末装置21は、端末入力部211と端末出力部212とを備える。事業者端末装置31は、端末入力部311と端末出力部312とを備える。医療者端末装置41は端末入力部411と端末出力部412とを備える。患者端末装置21、事業者端末装置31、及び医療者端末装置41は、各端末装置にインストールされた専用のアプリケーションソフトウェアによって治療経過共有サーバ11にアクセスしてもよい。また、患者端末装置21、事業者端末装置31、及び医療者端末装置41は、治療経過共有サーバ11が提供する動作環境(API(アプリケーションプログラミングインタフェース)、プラットフォーム等)を利用して治療経過共有サーバ11にアクセスしてもよい。
【0052】
端末入力部211、311、411は、文字入力手段やマイク等であり、患者が入力するテキストや患者の音声等を取得する機能を有する。文字入力手段は端末出力部212、312、412の表示手段と一体であるタッチパネルや患者端末装置21、事業者端末装置31、及び医療者端末装置41と別体の有線又は無線接続される外部キーボードなどであっても構わない。
【0053】
端末出力部212、312、412は、スピーカー、表示画面、振動発生機構等であり、治療経過共有サーバ11から配信される表示画面やメッセージ、警告、音声等を表示再生する機能や警告音・警告振動を発する機能を有する。表示画面は、例えば、スマートフォンにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等である。端末出力部212、312、412は、患者端末装置21、事業者端末装置31、及び医療者端末装置41と別体の有線又は無線接続されるディスプレイ装置であっても構わない。
【0054】
<患者日記解析処理の流れ>
図3は、患者情報解析ルーチンを示すフローチャートである。患者日記情報を解析して事象を抽出し事象についてアラートを生成するための患者日記解析ルーチンについて、図3を参照しながら説明する。
【0055】
当該ルーチンは、患者端末装置21において、インストールされたアプリから治療経過共有サーバ11へのログイン(患者認証)が完了し、患者日記情報の登録を受け付ける画面(後述する日記入力画面)に遷移した状態でスタートする。患者端末装置21の使用者は、基本的に患者本人とするが、患者の家族、補助者、介護者等の周囲の者が代理で入力しても良い。以下では患者端末装置21の使用者を患者として説明している。
【0056】
ステップS101において、患者端末装置21は、端末入力部211において患者により選択された患者の気分情報と、同様に患者によって入力された患者の日記である日記文章情報と、を1回の患者日記情報として治療経過共有サーバ11に送信する。このとき、患者端末装置21で入力された治療歴情報もあわせて送信してもよい。
【0057】
ステップS102において、治療経過共有サーバ11は、患者情報取得部111において、患者端末装置21から送信された患者日記情報を取得して、患者情報記憶部121に記憶する。併せて送信された治療歴情報がある場合には、治療歴情報も患者情報記憶部121に記憶される。
【0058】
ステップS103において、治療経過共有サーバ11の患者情報解析部112は、ステップS102で取得した患者日記情報を解析し、事象Eを抽出する。1回分の患者日記情報に事象がn個ある場合は事象E1からEnとして抽出する。続いて、患者情報解析部112は、抽出した事象Eごとに、有害度A、疾患関連度D、及び気分由来度F(n番目の事象に対しては有害度An、疾患関連度Dn、及び気分由来度Fn)を算出する。そして、治療経過共有サーバ11の制御部115は、算出された有害度A、疾患関連度D、及び気分由来度Fを、算出のもととなった事象E及び事象Eの抽出元の患者日記情報と紐づけて、患者情報記憶部121に記憶する。
【0059】
ステップS104において、治療経過共有サーバ11のアラート生成部113は、ステップS103で抽出された事象Eの有害度Aが第1の閾値At以上、疾患関連度Dが第2の閾値Dt以上、及び気分由来度Fが第3の閾値Ft未満か否かを判定する。事象Eが複数ある場合は、事象Eごとに判定が実行される。判定が真、すなわち、有害度Aが第1の閾値At以上、疾患関連度Dが第2の閾値Dt以上、かつ、気分由来度Fが第3の閾値Ft未満である場合は、ステップS105へ進む。一方、判定が偽の場合には当該ルーチンをリターンする。事象Eが複数ある場合は、すべての事象Eが偽判定であれば当該ルーチンをリターンする。
【0060】
ステップS105において、アラート生成部113は、ステップS104で真の判定がされた事象Eについてアラート情報を生成する。また、アラート生成部113は、生成したアラート情報に基づき、医療用語翻訳辞書123を用いて医療者が用いる表現で記載された医療者向けアラート情報を生成する。同様に、アラート生成部113は、生成したアラート情報に基づき、医療用語翻訳辞書123を用いて患者が用いる表現で記載された患者向けアラート情報を生成する。さらに、アラート生成部113は、生成したアラート情報と、医療者向けアラート情報と、患者向けアラート情報とを、患者情報記憶部121に、患者に紐づけて記憶する。そして、治療経過共有サーバ11の制御部115は、患者向けアラート情報を患者端末装置21に、アラート情報を事業者端末装置31に、医療者向けアラート情報を医療者端末装置41に、それぞれ送信し、当該ルーチンをリターンする。
【0061】
ステップS106において、事業者端末装置31は、治療経過共有サーバ11からアラート情報を受信し、端末出力部312に出力して当該ルーチンをリターンする。同様にステップS107において、患者端末装置21は、治療経過共有サーバ11から患者向けアラート情報を受信し、端末出力部212に出力して当該ルーチンをリターンする。さらに同様にステップS108において、医療者端末装置41は、治療経過共有サーバ11から医療者向けアラート情報を受信し、端末出力部412に出力して当該ルーチンをリターンする。
【0062】
<医療者向け経過サマリの作成処理の流れ>
図4は、医療者向け経過サマリの作成ルーチンを示すフローチャートである。医療者が用いる治療経過サマリを作成して表示するための経過サマリ作成ルーチンについて、図4を参照しながら説明する。当該ルーチンは、医療者端末装置41において、インストールされたアプリから治療経過共有サーバ11へのログイン(医療者認証)が完了し、閲覧したい患者を特定する画面に遷移した状態でスタートする。医療者端末装置41の使用者は、基本的に医療者とするが、医療者の補助者が代理で入力しても良い。以下では医療者端末装置41の使用者を医療者として説明している。
【0063】
ステップS201において、医療者端末装置41は、経過サマリの閲覧要求を治療経過共有サーバ11に送信する。当該閲覧要求には、端末入力部411において医療者により入力又は選択された患者X及び期間Tの情報が含まれる。
【0064】
ステップS202において、治療経過共有サーバ11のレポート生成部114は、患者情報記憶部121に記憶されている患者Xの患者情報から期間Tの複数の患者日記情報とアラート情報と治療歴情報とを抽出する。
【0065】
ステップS203において、レポート生成部114は、ステップS202で抽出した患者日記情報の気分情報に基づいて気分メータを生成する。
【0066】
ステップS204において、レポート生成部114は、ステップS202で抽出した患者日記情報の日記文章情報に基づいて日記サマリを生成する。
【0067】
ステップS205において、治療経過共有サーバ11は、レポート生成部114において、ステップS201で抽出した治療歴情報と、ステップS202で抽出したアラート情報と、に基づいて治療・アラート履歴を生成する。
【0068】
ステップS206において、治療経過共有サーバ11は、制御部115において、ステップS203で生成された気分メータ、ステップS204で生成された日記サマリ、及びステップS205で生成された治療・アラート履歴を、医療者向け経過サマリとして医療者端末装置41に送信して当該ルーチンをリターンする。
【0069】
ステップS207において、医療者端末装置41は、取得した医療者向け経過サマリを端末出力部412に出力して当該ルーチンをリターンする。
【0070】
患者向け経過サマリの作成は、「治療・アラート履歴」が「治療経過とその評価」の生成となることを除いて上記医療者向け経過サマリの作成ルーチンとほぼ同様であるため説明を省略する。
【0071】
<端末装置画面>
図5は患者端末装置21に表示される患者日記のマイページ画面の表示例である。図6は患者端末装置21に表示される患者日記の日記入力画面の表示例である。図7は、患者端末装置に表示される患者日記の治療歴入力画面の表示例である。図8は、患者端末装置に表示される患者日記の治療歴入力画面の別の表示例である。図9は医療者端末装置41に表示される医療者向け経過サマリ画面の表示例である。以下これらの図に基づき、本実施形態の主な端末装置画面を説明する。
【0072】
まず、患者端末装置21の主な表示画面について説明する。治療経過共有サーバ11は、患者認証後、図4に示す患者日記のマイページ画面511を患者端末装置21に表示させる。
【0073】
患者日記のマイページ画面511には、図5に示すように過去に登録した患者日記情報と日記を新規作成するためのボタン等が整理されて表示される。具体的には、「あなたの日記」領域512内の上から順に「今日」である「1月10日」の患者日記情報領域521、1月9日に登録された患者日記情報領域531、1月8日に登録された患者日記情報領域541と、新しい順に配置されている。「1月10日」の患者日記情報領域521内には、「新しい日記を作成」ボタン522が配置されている。過去の日時の患者日記情報領域531、541内には、日付の右側に「編集」ボタン532、542が、日付の下の左側に気分情報を示すフェイスアイコン533、543及びその説明534、544が、その右側に日記文章情報である日記のタイトル535、545及び日記の内容536、546が、その下にその日の薬の服用に関する情報を示す領域537、547が配置されている。図5の日記の内容546に示すように、すべての日記の内容を表示できない場合は、下向きの三角印を選択することで、すべての内容を表示させることができる。患者は、「新しい日記を作成」ボタンを選択し、新規の患者日記の登録を治療経過共有サーバ11に要求する。これを受けて、治療経過共有サーバ11は、図6に示す日記入力画面611を患者端末装置21に表示させる。同様に、患者は、522や「編集」ボタン532、542を選択することで、図示しない日記編集画面を患者端末装置21に表示させて、患者日記情報を編集することができる。
【0074】
日記入力画面611には、患者の気分を表す気分指標として患者が選択するためのフェイスアイコンとその説明が5種類表示されている気分選択領域621と、日記のタイトルを入力するための例えばテキストボックスであるタイトル入力領域622と、日記の内容を入力するための例えばテキストボックスである日記入力領域623と、服薬に関する情報を選択するための服薬選択領域624と、が配置されている。また、入力を確定するための「日記を登録」ボタン631と、入力を取り消して一つ前の画面に戻る「キャンセル」ボタン632と、治療歴を入力するための「治療歴」ボタン633と、が配置されている。
【0075】
気分選択領域621は、本実施形態では、「とてもうれしい」、「少しうれしい」、「ふつう」、「少しかなしい」、「とてもかなしい」の5段階の気分指標とそれに対応するフェイスアイコンの組み合わせが表示されている。患者は、表示された5段階の気分指標のうち一つを選択することができる。図6では、一番左の「とてもうれしい」が選択されている状態を破線で示している。なお、図6の気分指標の選択状態は一例で、アイコンの色が変化するなど選択状態が明示されていれば良い。
【0076】
患者は、タイトル入力領域622及び日記入力領域623において、自由に文字を入力することができる。図6では、タイトル入力領域613に日記のタイトルとして「経過5日目」と、日記入力領域614に日記の内容として「今日はまだぎっくり腰の痛みが続いている。腰は痛いけど、ダンスはできたし、気分もすごくいい!」と入力されている状態を示している。なお日記のタイトルは入力必須ではなく、空欄のまま患者日記を登録しても構わない。
【0077】
また、日記入力画面611には、日記の入力を確定し、治療経過共有サーバ11に送信及び記録するための「日記を登録」ボタン631、及び、日記の登録を行なわずに日記入力画面611を終了し前の画面に戻るための「キャンセル」ボタン632が用意されている。患者が、少なくとも気分指標を選択し、かつ、日記の内容を入力した上で「日記を登録」ボタン631を選択すると、1回の患者日記情報として治療経過共有サーバ11に記録される。患者が「日記を登録」ボタン631又は「キャンセル」ボタン632を選択すると、日記入力画面611からマイページ画面511に遷移する。また、患者が「治療歴の入力」ボタン633を選択すると、図7又は図8に示す治療歴入力画面711に遷移する。
【0078】
このように、患者は患者専用のマイページにアクセスして、その日の気分を5段階の指標から簡単に選択し、その日の出来事や感じたことを自由に文字として記録できる。
【0079】
次に、図6及び図7を参照しながら、治療歴の入力画面について説明する。患者は、日記入力画面611の「治療歴の入力」ボタン633を選択することにより、又は、マイページ画面511等各画面の上部に表示されるメニューから「治療歴入力」を選択することにより、治療歴入力画面711に遷移することができる。
【0080】
治療歴入力画面711には、治療歴情報を新たに登録するための選択肢、テキストボックス、ボタン等が整理されて表示される。具体的には、図7及び図8に示すように「治療を受けた日」を入力又は選択する領域721、「治療を受けた場所」を入力又は選択する領域722、「治療の種類」を選択する領域723、が配置されている。図6及び図7では、「治療を受けた日」の領域721に入力される情報は「日にち」を単位としているが、時間帯や時刻が含まれるようにしてもよい。また、「治療を受けた場所」の領域722は、あらかじめ患者が登録した情報や入力履歴から選択できるようにしてもよい。「治療の種類」の領域723は、患者が登録した疾患に関連する治療の種類や、過去の選択履歴から選択できるようにしてもよい。治療歴入力画面711の下部には、入力を取り消して一つ前の画面に戻る「キャンセル」ボタン731及び入力を確定するための「日記を登録」ボタン732が配置されている。
【0081】
治療歴入力画面には、「治療の種類」での選択結果に応じて表示される項目が含まれる。具体的には、例えば、図7に示すように「治療の種類」において「放射線照射」が選択された場合、「照射出力」と「照射間隔」を入力又は選択する領域724と領域725が表示される。また、図8に示すように、「治療の種類」において「点滴」が選択された場合、「薬剤の名称」と「備考」を入力又は選択する領域726と領域727が表示される。
【0082】
また、図示しないが、メニューから「治療歴の閲覧」を選択することで、登録済みの治療歴の一覧を示す画面が表示される。患者は、この治療歴の一覧から、過去に入力した治療歴を選択して、修正等の編集を行ったり、統計情報やグラフを参照したりすることができる。
【0083】
次に、医療者が利用する医療者端末装置41に表示される医療者向け経過サマリ画面について説明する。治療経過共有サーバ11に蓄積された患者日記情報や治療歴情報について、治療経過共有サーバ11は、医療者端末装置41からの要求に応じて、医療者端末装置41に、図9に示すような医療者向け経過サマリ画面811を表示する。
【0084】
図9の医療者向け経過サマリ画面811では、上部に患者である「小田春さん」の治療日記の経過サマリであることを示すページのタイトルとともに、気分メータ領域821、日記サマリ領域831、及び治療・アラート履歴領域841が配置されている。
【0085】
気分メータ領域821には、患者が過去に登録した患者日記情報のデータから指定された所定の期間の気分情報を抽出して時系列変化グラフとして表示するグラフ領域823が設けられる。グラフ領域823の左端には5段階のフェイスアイコンが縦方向に配置され、フェイスアイコンの右側に気分情報の折れ線グラフが表示される。また、気分メータ領域821には、表示期間セレクタ822が配置されている。医療者は、表示期間セレクタ822から所望の期間を選択することができ、選択した期間によってグラフが更新される。
【0086】
日記サマリ領域831には、患者が過去に登録した患者日記情報から、指定の期間について抽出され要約処理をされた日記サマリ833が表示される。また、気分メータ領域821と同様の表示期間セレクタ832が配置されており、治療経過共有サーバ11は選択された期間に応じて日記サマリ833の表示内容を更新する。
【0087】
治療・アラート履歴領域841には、患者が過去に登録した患者日記情報及び治療歴情報に基づいて出力されたアラート履歴843、服薬異常履歴845、照射出力履歴846、等が表示される。アラート履歴843は、アラートが発生した日を星印により示している。服薬異常履歴845もは、患者が登録した服薬の記録に基づいて、処方時の用法・用量とは異なる服薬があったことを示す服薬異常を星印により示している。これら星印を選択することで、医療者はアラートの詳細をポップアップ画面等で参照できる。照射出力は、実際に放射線照射を行った日とその時の出力をグラフで示している。医療者は、グラフの要素を選択することで、その要素に紐づく治療歴情報を参照できる。また、気分メータ領域821と同様の表示期間セレクタ842が配置されており、治療経過共有サーバ11は選択された期間に応じて治療・アラート履歴843の表示内容を更新する。
【0088】
次に、患者が利用する患者端末装置21に表示される患者向け経過サマリ画面について説明する。治療経過共有サーバ11に蓄積された患者日記情報や治療歴情報について、治療経過共有サーバ11は、患者端末装置21からの要求に応じて、患者端末装置21に、図10に示すような患者向け経過サマリ画面911を表示する。
【0089】
図10の患者向け経過サマリ画面911では、上部に患者の治療日記の経過サマリであることを示すページのタイトルとともに、気分メータ領域921、治療経過とその評価領域931が配置されている。
【0090】
気分メータ領域921は、医療者向け経過サマリの気分メータ領域821と同様のため説明を省略する。
【0091】
治療経過とその評価領域931には、表示期間セレクタ932、患者が過去に登録した患者日記情報及び治療歴情報に基づいて出力されたアラート履歴933、服薬異常履歴934、照射出力履歴935、等が表示される。これらの詳細は医療者向け経過サマリと同様である。また、治療経過とその評価領域931には、「治療経過の評価」領域936が表示される。「治療経過の評価」領域936は、表示期間セレクタ932で選択された期間について、処方された薬や施術される処置図ごとに、患者の評価を入力、選択、表示できるように構成される。例えば、図10では、治療経過の評価936には、処方薬J、処方薬K、放射線治療(図10では放射線と表記)、点滴Lの項目が示されている。各項目は、治療のスケジュールに合わせて、所定の期間ごと、又は、施術ごと、に評価を選択できるようになっている。例えば、処方薬Jは患者により、例えば、「A(良い)」、「B(火もなし不可もなし)」、「C(悪い)」の3段階評価において、既に「C」の評価が得られた期間と、その後について「未評価」の期間が表示されている。患者は、該当する領域を選択することで、評価の新規入力や編集を行うことができる。このようにして、患者は、気分メータの履歴や、治療やアラートの履歴を参照しながら、過去の治療内容について評価をすることができる。
【0092】
以上のように、本実施形態における治療経過共有システム1では、治療経過共有サーバ11が、患者端末装置21にから患者の気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として取得して、取得した患者日記情報と、患者情報記憶部121に記憶されている患者の治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、患者日記情報にそれぞれ紐づく有害度A、疾患関連度D、及び気分由来度Fを算出する。そして、治療経過共有サーバ11は、算出された有害度Aが第1の閾値At以上、疾患関連度Dが第2の閾値Dt以上、かつ気分由来度Fが第3の閾値Ft未満の場合に患者の状態に関するアラート情報を生成する。生成されたアラート情報は、事業者端末装置31に表示される。また、生成されたアラート情報を患者の用いる表現に変換した患者向けアラート情報が、患者端末装置21に表示される。
【0093】
つまり、治療経過共有システム1は、患者の記録した患者日記情報から気分に由来しないが疾患に関連する有害事象が抽出された場合に、アラート情報を事業者及び患者に提供することで、患者の治療経過における状態について緊急かつ重要な事象について患者本人や事業者に知らせることができる。また、患者には患者向けアラート情報が患者の用いる平易な表現で提供される。
【0094】
これにより、次回の診療までの期間に患者に発生する重要な有害事象、治療薬による副作用、処置による不具合、等が発生した場合でも、アラートを受けた患者自身又は事業者の介在により必要な措置を講じることによって自宅で治療する患者や家族の不安を軽減することができる。また、患者がアラート情報の内容を確実に理解できる。また、患者は、日記という形式で、自宅治療中の日常生活における日々のたわいのないことや、周囲には言いづらい治療過程についてつぶやくように簡単かつ自由に記録できる。また、患者日記から患者の日常を要約し、気分の推移を可視化して、医療者に提供することで、限られた時間で行われる対面診療において医療者から患者に向けて発生するコミュニケーションの質を向上することができる。
【0095】
また、治療経過共有サーバ11の患者情報記憶部121に、患者日記情報やその解析結果、アラート情報等が患者情報として記録され蓄積される。そしてレポート生成部114は、医療者端末装置41からの要求に応じて、患者情報記憶部121から特定の患者の所定の期間の患者日記情報やアラート情報を抽出し、医療者向け経過サマリを医療者の用いる表現で生成して、医療者端末装置41に表示させる。すなわち、治療経過共有システム1は、前回の診療から今回の診療までの期間の患者の治療経過を簡潔にまとめたサマリを医療者に提供する。これにより、限られた診療時間において医療者が患者の自宅治療中の状態を効率的に理解することができ、患者満足度や治療満足度を向上させることができる。
【0096】
また、レポート生成部114は、医療者向け経過サマリに患者の気分情報の時系列推移を示すグラフを生成し、医療者端末装置41に表示する。これにより、医療者が患者の自宅治療中の気分変動を効率的に理解したり、治療経過の判断や患者とのコミュニケーションに役立てたりすることで、患者満足度や治療満足度を向上させることができる。
【0097】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0098】
上記実施形態において、アラート生成部113は、1回分の患者日記情報から算出される有害度A、疾患関連度D、及び気分由来度Fに基づいてアラートを生成するか否かを判断しているが、例えば、過去の複数回分の患者日記情報から算出される有害度A、疾患関連度D、及び気分由来度Fの統計情報や経時変化情報を用いて判断してもよい。これにより、患者自身では気づきにくい、長期にわたってゆっくり悪化するタイプの有害事象や有害度は小さいが散発的に発生する有害事象等を発見することができ、アラート生成の信頼度が向上する。
【0099】
上記実施形態において、アラート生成部113は、有害度Aが第1の閾値At以上、疾患関連度Dが第2の閾値Dt以上、かつ、気分由来度Fが第3の閾値Ft以下である場合に、アラート情報を生成しているが、アラート生成部113は、有害度Aが第1の閾値At以上、疾患関連度Dが第2の閾値Dt以上、かつ、気分情報がネガティブに分類される場合にアラート情報を生成してもよい。これにより、ネガティブな気分を由来とする可能性の少ない場合にアラートが出るため、気分による体調変化によるアラートを減少させることができる。
【0100】
上記実施形態において、レポート生成部114は、有害度Aが第1の閾値At未満、かつ、疾患関連度Dが第2の閾値Dt未満である患者日記情報について要約された日記サマリを生成してもよい。これにより、医療者に患者の疾患に関連しない無害事象の要約を提供できる。医療者が当該要約を利用して患者の日常を効率的に理解したり、患者との意思疎通又はコミュニケーションが円滑化されたりすることで、患者満足度や治療満足度を向上させることができる。
【0101】
上記実施形態において、レポート生成部114は、有害度Aと疾患関連度Dに基づいて医療者向けレポートを生成していたが、有害度A,疾患関連度Dに加え、気分由来度Fを考慮して医療者向けレポートを生成しても良い。すなわち疾患との関連がなく気分に由来した無害事象についてのレポートを生成してもよい。この場合、具体的には、レポート生成部114は、患者情報記憶部121に記憶されている所定の期間における前記患者の複数の患者日記情報のうち、患者日記情報に紐づいた有害度Aが第1の閾値At未満、疾患関連度Dが第2の閾値Dt未満、かつ、気分由来度Fが第3の閾値Ft以上である患者日記情報について要約されたレポートを生成する。これにより、医療者は、患者が大きく落ち込んだ時やとても嬉しかった日常の出来事について効率的に把握して、診療において患者とのコミュニケーションに役立てることができる。
【0102】
また、治療経過共有システム1は、治療開始前の患者に対し、想定される治療方針ごとに、選択肢となり得る薬や処置の保険適用の有無や自己負担額、治療費総額の見積金額を算出して提示するサービスを合わせて搭載してもよい。これにより、患者の治療費に対する不安を軽減することができ、患者による治療内容の評価の一指標として参考にすることができる。
【0103】
<プログラム>
ここで、本実施形態に係る治療経過共有サーバ11を構成する各機能を実現するためのプログラムの詳細について説明する。
【0104】
治療経過共有サーバ11は、図11で示すコンピュータ801に実装される。そして、治療経過共有サーバ11の各構成要素の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置804に記憶されている。CPU802は、プログラムを補助記憶装置804から読み出して主記憶装置803に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU802は、プログラムに従って、上記の記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置803に確保する。
【0105】
当該プログラムは、具体的には、コンピュータ801に、患者の気分を示す気分情報と、日記文章情報と、を患者日記情報として取得する患者情報取得ステップと、前記患者日記情報と、記憶されている前記患者の治療歴情報と、を数理モデルにより解析して、前記患者日記情報にそれぞれ紐づく有害度、疾患関連度、及び気分由来度を算出する患者情報解析ステップと、を実行させるものである。
【0106】
なお、補助記憶装置804は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェースを介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムがネットワークを介してコンピュータ801に配信される場合、配信を受けたコンピュータ801が当該プログラムを主記憶装置803に展開し、上記処理を実行しても構わない。
【0107】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても構わない。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置804に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても構わない。
【0108】
これまで説明してきた実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0109】
1 治療経過共有システム
11 治療経過共有サーバ
111 患者情報取得部
112 患者情報解析部
113 アラート生成部
114 レポート生成部
115 制御部
121 患者情報記憶部
122 医療医薬情報記憶部
123 医療用語翻訳辞書
21 患者端末装置
31 事業者端末装置
41 医療者端末装置
211、311、411 端末入力部
212、312、412 端末出力部
NW ネットワーク

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11