(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100368
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電子時計
(51)【国際特許分類】
G04C 3/00 20060101AFI20240719BHJP
G04G 21/00 20100101ALI20240719BHJP
【FI】
G04C3/00 B
G04G21/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004323
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】原口 大輔
【テーマコード(参考)】
2F002
2F101
【Fターム(参考)】
2F002AA00
2F002AB06
2F002AC01
2F002EE00
2F002GA01
2F101AA00
2F101AB00
2F101AC01
2F101AC07
2F101AD02
(57)【要約】
【課題】取得された時差に基づいて、内部月齢情報の修正を自動で行うことができる電子時計を提案すること。
【解決手段】
電子時計1は、内部計時に基づいて時刻表示を行う時刻表示部3と、回転自在に支持された月齢板42を有し、月齢板42が回転することで月齢Aに対応する月相表示を行う月相表示部4と、月齢板42を回転駆動する第3アクチュエータ73cと、時差TDに関する時差情報を取得する時差情報取得手段である操作部6と、内部月齢情報に基づいて第3アクチュエータ73cにより月齢板42を回転駆動する制御回路72と、を備え、内部月齢情報は、月齢板42の基準位置に対する回転位置に対応し、制御回路72は、操作部6によって取得される時差情報に基づいて内部月齢情報を修正する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部計時に基づいて時刻表示を行う時刻表示部と、
回転自在に支持された月齢板を有し、前記月齢板が回転することで月齢に対応する月相表示を行う月相表示部と、
前記月齢板を回転駆動する月齢板用アクチュエータと、
時差に関する時差情報を取得する時差情報取得手段と、
内部月齢情報に基づいて前記月齢板用アクチュエータにより前記月齢板を回転駆動する制御回路と、を備え、
前記内部月齢情報は、前記月齢板の基準位置に対する回転位置に対応し、
前記制御回路は、前記時差情報取得手段によって取得される前記時差情報に基づいて前記内部月齢情報を修正する、
ことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
前記制御回路は、内部時差情報が変更されるとき、変更前の前記時差から変更後の前記時差に変遷する際に、所定の前記時差をまたいだ場合に、前記内部月齢情報を修正するものであり、
前記変更後の時差から前記変更前の時差を引いた値がマイナスであれば前記月齢を加算する修正をし、プラスであれば前記月齢を減算する修正をする、
請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
前記制御回路は、内部時差情報が変更されるとき、変更前の前記時差から変更後の前記時差の差分の絶対値が所定の閾値をこえた場合に、前記内部月齢情報を修正するものであり、
前記変更後の時差から前記変更前の時差を引いた値がマイナスであれば前記月齢を加算する修正をし、プラスであれば前記月齢を減算する修正をする、
請求項1に記載の電子時計。
【請求項4】
前記制御回路は、前記内部計時及び取得された前記時差に基づいて前記内部月齢情報を算出する月齢算出部を備える、
請求項1に記載の電子時計。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記内部計時、取得された前記時差およびメトン周期に基づく19年周期の月齢計算式により、前記内部月齢情報として月齢を算出する、
請求項4に記載の電子時計。
【請求項6】
前記メトン周期に基づく19年周期の月齢計算式は、式(1)、式(2)である、
請求項5に記載の電子時計。
ただし、Aは月齢、Yは年、Dは日、C
mは以下の〔表1〕に基づいて決定され、C
xは、前記時差に基づいて決定されるものであり、0か1であり、%は右記式を左記値で除算した余りを求める。
A=(C
y×11+C
m+D+C
x)%30・・・・(1)
C
y=(Y-2006)%19・・・・(2)
【表1】
【請求項7】
前記メトン周期に基づく19年周期の月齢計算式は、式(3)、式(4)である、
請求項5に記載の電子時計。
ただし、Aは月齢、Yは年、Dは日、C
mは以下の〔表1〕に基づいて決定され、C
xは、前記時差に基づいて決定されるものであり、0か1であり、C
zは、C
yに値に基づいて決定されるものであり、0か1であり、%は右記式を左記値で除算した余りを求める。
A=(C
y×11+C
m+D+C
x+C
z)%30・・・・(3)
C
y=(Y-2006)%19・・・・(4)
【表1】
【請求項8】
前記Czは、前記Cyが7以上であると1とし、Cyが6以下であると0とする、
請求項7に記載の電子時計。
【請求項9】
前記時差は、協定世界時を基準としたものであり、
前記Cxは、前記時差が0以上であると0とし、前記時差が-1以下であると1とする、
請求項6または7に記載の電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
時計には、時刻表示部を有するとともに、月の満ち欠け、すなわち月相を表示する月相表示部を有し、ユーザーに対して現在日付における月齢に対応する月相表示を提供するものがある。月相表示部は、文字板に形成された月齢板用開口と、月(満月)が表示され、かつ回転駆動する月齢板とを有し、月齢板用開口に対して月齢板が一方向に相対回転することで、月齢に対応する月相表示を行う。
【0003】
ここで、時計の月相表示を修正する方法としては、ユーザーが手動で月齢板を回転させることが考えられる。ユーザーは、手動の場合、現在日付における月齢を把握したうえで、時計を手動操作し、月齢板を月齢に対応する月相表示となる回転位置まで回転させることとなるため、ユーザーにとって煩わしい。したがって、現在日付における月齢を自動で算出し、算出された月齢に基づいて月齢板を回転させることが好ましい(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、時計は、所定の位置における時刻(例えば世界標準時(協定世界時))を基準として、時差に基づいて時刻を修正するものがあるが、時計の使用者が移動して、時差に基づく時刻の変更が生じた場合には、時刻の修正の他に月齢の修正も行う必要があり、自動で行うことが望ましい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、取得された時差に基づいて内部月齢情報の修正を自動で行うことができる電子時計を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
内部計時に基づいて時刻表示を行う時刻表示部と、回転自在に支持された月齢板を有し、前記月齢板が回転することで月齢に対応する月相表示を行う月相表示部と、前記月齢板を回転駆動する月齢板用アクチュエータと、時差に関する時差情報を取得する時差情報取得手段と、内部月齢情報に基づいて前記月齢板用アクチュエータにより前記月齢板を回転駆動する制御回路と、を備え、前記内部月齢情報は、前記月齢板の基準位置に対する回転位置に対応し、前記制御回路は、前記時差情報取得手段によって取得される前記時差情報に基づいて前記内部月齢情報を修正する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明における電子時計は、取得された時差に基づいて、内部月齢情報の修正を自動で行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態における電子時計の全体構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態における電子時計の月相表示部の動作説明図(北半球表示モード)である。
【
図3】
図3は、実施形態における電子時計の月相表示部の動作説明図(南半球表示モード)である。
【
図4】
図4は、実施形態における電子時計のムーブメントのブロック図である。
【
図5】
図5は、時差修正モード時における電子時計の動作説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態における電子時計の月齢算出動作のフロー図である。
【
図7】
図7は、月齢の誤差(周期補正なし)に関する説明図である。
【
図8】
図8は、月齢の誤差(周期補正あり)に関する説明図である。
【
図9】
図9は、月齢の誤差(周期補正あり、時差補正なし)に関する説明図である。
【
図10】
図10は、月齢の誤差(周期補正あり、時差補正あり)に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
〔実施形態〕
図1は、実施形態における電子時計の全体構成図である。
図2は、実施形態における電子時計の月相表示部の動作説明図(北半球表示モード)である。
図3は、実施形態における電子時計の月相表示部の動作説明図(南半球表示モード)である。
図4は、実施形態における電子時計のムーブメントのブロック図である。
図5は、時差修正モード時における電子時計の動作説明図である。また、
図1~
図3、
図5におけるX方向は電子時計の12時6時方向であり、Y方向は電子時計の3時9時方向であり、X方向とY方向と直交する方向は電子時計の上下方向(厚さ方向)である。O1は、電子時計1の中心であり、指針の回転軸と一致する。また、O1を中心としたXY平面における方向を径方向とする。
【0012】
実施形態における電子時計1は、水晶発振器の出力に基づいて内部時刻を計時し、計時した時刻を指針31で示す電子時計である。電子時計1は、計時以外にもアラーム機能やクロノグラフなどの機能を有する多機能型電子時計であってもよい。さらに、通信部により外部の端末機器と無線あるいは有線の少なくともいずれか一方により接続され、端末機器において設定された要求に基づいて、特定の機能(例えば、アラーム機能、端末機器の内部時刻情報に基づいた時刻補正機能、メール受信時などに報知する報知機能など)を実現する端末機器連動型時計であってもよい。
【0013】
電子時計1は、
図1に示すように、外装ケース2と、時刻表示部3と、月相表示部4と、機能表示部5と、操作部6と、ムーブメント7とを備える。本実施形態における電子時計1は、時刻表示部3がアナログ表示式のアナログ電子腕時計であり、月相表示部4が月の満ち欠け、すなわち月相を表示するムーンフェイズウオッチである。電子時計1は、腕時計式として説明するが、ムーンフェイズウオッチとしての機能を有すれば他の時計式、例えば、懐中時計式であってもよい。
【0014】
外装ケース2は、電子時計1の最外郭を構成するものであり、胴21とベゼル22と風防23と図示しない裏蓋とで構成される。胴21は、開口を有し、開口内部の空間にあたる内部空間部S1に時刻表示部3、月相表示部4、機能表示部5およびムーブメント7が保持される。本実施形態においては、胴21は円環状であり、開口は電子時計1の時計中心O1を中心とする円形形状である。開口の形状は、電子時計1の外装ケース2の外形形状や、デザインに合わせて任意の形状とすることができる。胴21は、外周側面の12時方向及び6時方向からそれぞれ突出して形成された先かん24を備える。12時側の先かん24にはベルト8の一端が連結され、6時側の先かん24にはベルト8の他端が連結される。
【0015】
胴21の開口の一方の側である上方向開口を風防23が覆い、他方の側である下方向開口を裏蓋が覆い、それぞれ固定することによって、内部空間部S1が閉塞空間となるため、時刻表示部3、月相表示部4、機能表示部5およびムーブメント7を保護することができる。風防23や裏蓋を胴21に固定するのに際して、それぞれゴムパッキンなどの図示しない防水部材を介することにより、保持力を高め、電子時計1の防塵性や防水性を高めることができる。胴21は、例えば、樹脂材料や金属材料、セラミック材料などにより形成されている。ベゼル22は、風防23を胴21に固定するものであり、環状に形成されて、胴21のうち、内部空間部S1を構成する環状部に固定されている。ベゼル22は、時刻表示部3の径方向外側に位置するものである。ベゼル22は、例えば、樹脂材料や金属材料、セラミック材料などにより形成されている。なお、ベゼル22は、胴21に対して、電子時計1の時計中心O1を中心として回転自在に支持されていてもよい。風防23は、ベゼル22を介して、上方向側開口を覆う形状であり、上方向側から挿入しベゼル22に固定し、ベゼル22を介して胴21に固定することで内部空間部S1を閉塞する。本実施形態では風防23の平面視における外形形状は、円形状をしている。風防23は、例えば、ガラスや透過性の樹脂材料などにより形成されている。裏蓋は、下方向開口部と略同形状の係合部を有し、下方向側から挿入し胴21に固定することで内部空間部S1を閉塞する。本実施形態では裏蓋の外形形状は円形状である。裏蓋は、例えば、胴21と同様に樹脂材料や金属材料、セラミック材料などにより形成されている。なお、ベゼル22は、回転するものでなければ胴21と一体に形成されていてもよい。
【0016】
時刻表示部3は、内部時刻および時差に基づいて時刻表示を行う。時刻表示部3は、指針31と、文字板32と、見返しリング33と、日板34とを有する。本実施形態における時刻表示部3は、ムーブメント7の後述する制御回路72によって計時された内部時刻のうち日、時、分、秒に関する時刻表示を行う。ここで、内部時刻は、年、月、日、時、分、秒を含むものである。
【0017】
指針31は、電子時計1の時計中心O1を回転軸として回動自在にムーブメント7に支持され、ムーブメント7により回転駆動するものである。指針31は棒状であり、金属材料や樹脂材料などにより形成される。本実施形態において、指針31は、秒針31a、分針31b、時針31cであり、文字板32よりも上方向側(風防23側)に配置される。指針31は、ユーザーによる操作部6の操作により回転するものでもある。指針31は、指し示す位置に応じて内部時刻に基づいた時刻表示を行うことができる。
【0018】
文字板32は、指針31とムーブメント7との間に配置され、ムーブメント7を保護するものである。文字板32は、ユーザーに対して電子時計1の美観を与える機能を有する。文字板32の表面上(風防23と対向する側)には、時字321,322,323が設けられている。つまり、時字321~323は、上下方向において風防23と対向するように配置され、風防23を介してユーザーが視認することができる。ユーザーは、指針31(秒針31a、分針31bおよび時針31c)と時字321~323との相対位置により、時刻表示に基づいた現在時刻を認識することができる。本実施形態では、時字321~323のうち、いずれかと秒針31aとが対向することで秒を表示し、時字321~323と分針31bとの相対位置により分を表示し、時字321~323と時針31cとの相対位置により時を表示する。文字板32は、風防23を介して日板34をユーザーに視認させる日板用開口324が形成されている。日板用開口324は、文字板32の上下方向において日板34と対向する位置に形成されており、文字板32を上下に貫通するものである。本実施形態における日板用開口324は、矩形形状であり、文字板32において「4時」の位置に形成されている。
【0019】
見返しリング33は、文字板32の径方向外側に配置されている。見返しリング33は、環状に形成され、かつ指針31の先端よりも径方向外側に配置されている。本実施形態における時刻表示部3は、時差修正機能に応じた情報表示を行うことができる。情報表示としては、タイムゾーン表示であり、見返しリング33に時差修正マーク331~335が設けられている。時差修正マーク331は、基準時差、すなわち時差0を示すものであり、指針31の回転方向に応じた時差のプラスマイナス方向をも示すものであり、秒針31aが0秒を指し示す位置に形成されている。時差修正マーク332は、基準時差に対してタイムゾーンとしてプラス方向に5離れた時差、すなわち時差+5を示すものであり、秒針31aが5秒を指し示す位置に形成されている。時差修正マーク333は、基準時差に対してタイムゾーンとしてプラス方向に10離れた時差、すなわち時差+10を示すものであり、秒針31aが10秒を指し示す位置に形成されている。時差修正マーク334は、基準時差に対してタイムゾーンとしてマイナス方向に5離れた時差、すなわち時差-5を示すものであり、秒針31aが55秒を指し示す位置に形成されている。時差修正マーク335は、基準時差に対してタイムゾーンとしてマイナス方向に10離れた時差、すなわち時差-10を示すものであり、秒針31aが50秒を指し示す位置に形成されている。なお、時刻表示部3は、時刻表示機能と異なる機能に応じた設定情報などの情報表示を行うことができる。情報表示としては、アラーム機能のON・OFFの設定や、アラームの設定時刻、クロノグラフ表示、タイムゾーン表示、受信動作に関する表示、サマータイムの設定表示などが挙げられる。この場合、文字板32および見返しリング33には、図示しない機能マークが設けられており、指針31(秒針31a、分針31b、時針31c)と機能マークとの相対位置により、情報表示に基づいた各機能の設定情報等を認識することができる。
【0020】
日板34は、回転することで、日表示を行うものである。日板34は、上下方向から見た場合に円形状に形成されており、上下方向において文字板32とムーブメント7との間に配置されている。日板34は、時計中心O1を回転軸として、回動自在にムーブメント7に対して支持され、ムーブメント7により回転駆動するものである。日板34は、日マーク341が複数形成されている。日マーク341は、日板用開口324および風防23を介してユーザーに視認されることで内部時刻に基づいて現在日を日表示するものである。本実施形態における日マーク341としては、日に対応した数字の「1」~「31」であり、日板34のうち、周方向において1周の領域に時計回りに形成されている。
【0021】
月相表示部4は、
図1~
図3に示すように、月齢板42が回転することで月齢に対応する月相表示を行うものである。月相表示部4は、月齢板用開口41と、月齢板42と、月齢板回転方向マーク43,44とを有する。
【0022】
月齢板用開口41は、風防23を介して月齢板42をユーザーに視認させるものである。本実施形態における月齢板用開口41は、文字板32に形成されている。月齢板用開口41は、上下方向において月齢板42と対向し、文字板32が月齢板42と対向する領域のうち、12時方向に略扇形状に形成されている。月齢板用開口41は、月齢板回転方向Rにおいて両端部に凹部411,412が形成されている。凹部411,412は、月齢板42の後述する月マーク421,422と上下方向において重なった場合に、月の満ち欠けを表示するものである。なお、
図2および
図3においては、図示された月マーク421,422の動作を分かりやすくするために、月齢板用開口41(凹部411,412を含む)が点線で図示されている。
【0023】
月齢板42は、回転することで、月齢に対応する月相表示を行うものである。月齢板42は、上下方向から見た場合に円形状に形成されており、上下方向において文字板32とムーブメント7との間に配置されている。月齢板42は、月齢板42の月齢板中心O2を回転軸として、回動自在にムーブメント7に対して支持され、ムーブメント7により回転駆動するものである。ここで、月齢板42は、時計回りの回転が正回転、反時計周りの回転が逆回転であり、月齢板回転方向Rのうち、時計回り方向が正転方向RY、反時計回り方向が逆転方向RNである。月齢板42は、上下方向における両面のうち、文字板32と対向する対向面に2つの月マーク421,422が形成されている。月マーク421,422は、月齢板中心O2を挟んで対向、すなわち月齢板回転方向Rにおいて180度離れて形成されている。つまり、本実施形態における月相表示部4は、1回転で2朔望周期の朔望周期分の月齢に対応する月相表示を行うものである。本実施形態における月マーク421,422は、同一(形状、色などが同じ)のものであり、月マーク421,422をユーザーが視認しても区別をすることはできない。例えば、電子時計1が後述する北半球表示モードDNであると、月齢板42は正転方向RYに回転駆動し、
図2に示すように、1回転することで、月マーク421に対応する第1朔望周期における新月(月齢=0)の月相表示(同図左上の月齢板42)、月マーク421に対応する第1朔望周期における満月(月齢=15)の月相表示(同図右上の月齢板42)、月マーク422に対応する第2朔望周期における新月(月齢=0)の月相表示(同図右下の月齢板42、月マーク421に対応する第1朔望周期における新月の月相表示でもある)、月マーク422に対応する第2朔望周期における満月(月齢=15)の月相表示(同図左下の月齢板42)、月マーク421に対応する第1朔望周期における新月の月相表示(月マーク422に対応する第2朔望周期における新月の月相表示でもある)を順に行う。一方、電子時計1が後述する南半球表示モードDSであると、月齢板42は逆転方向RNに回転駆動し、
図3に示すように、1回転することで、月マーク422に対応する第2朔望周期における新月(月齢=0)の月相表示(同図左上の月齢板42)、月マーク422に対応する第2朔望周期における満月(月齢=15)の月相表示(同図左下の月齢板42)、月マーク421に対応する第1朔望周期における新月(月齢=0)の月相表示(同図右下の月齢板42、月マーク422に対応する第2朔望周期における新月の月相表示でもある)、月マーク421に対応する第1朔望周期における満月(月齢=15)の月相表示(同図右上の月齢板42)、月マーク422に対応する第2朔望周期における新月の月相表示(月マーク421に対応する第1朔望周期における新月の月相表示でもある)を順に行う。
【0024】
月齢板回転方向マーク43,44は、各半球表示モードDにおける月齢板回転方向Rを表示するものである。月齢板回転方向マーク43,44は、文字板32の表面上に設けられている。月齢板回転方向マーク43は、北半球表示モードDNに対応するものであり、時計回りの矢印図形および北に対応した省略英字の「N」とで構成されている。月齢板回転方向マーク44は、南半球表示モードDSに対応するものであり、反時計回りの矢印図形および南に対応した省略英字の「S」とで構成されている。
【0025】
機能表示部5は、電子時計1の時刻表示機能と異なる機能に基づいた電子時計1の状態の表示、すなわち機能表示を行う。機能表示部5は、機能針51と、機能マーク板52とを有する。本実施形態における機能表示部5は、制御回路72によって計時された内部時刻に基づいた現在曜日の表示、すなわち曜日表示、制御回路72によって計測されている二次電池76の残量の表示、すなわち残量表示、制御回路72に記憶されている北半球表示モードDNおよび南半球表示モードDSのいずれか一方である月相表示部4の半球表示モードDの表示、すなわち半球表示モード表示を行う。
【0026】
機能針51は、機能マーク板52の機能マーク中心O3を回転軸として回動自在にムーブメント7に支持され、ムーブメント7により回転駆動するものである。機能針51は棒状であり、金属材料や樹脂材料などにより形成される。本実施形態において、機能針51は、機能マーク板52よりも上方向側(風防23側)に配置される。機能針51は、ユーザーによる操作部6の操作により回転、すなわち上記機能表示のうちいずれかを指示するものである。機能針51は、指し示す位置に応じて、各機能に対応する基づいた機能表示を行うことができる。
【0027】
機能マーク板52は、機能針51とムーブメント7との間に配置されている。本実施形態における機能マーク板52は、文字板32の一部として形成されている。機能マーク板52の表面上(風防23と対向する側)には、曜日マーク、残量マーク522、北半球表示モードマーク523および南半球表示モードマーク524が設けられている。つまり、機能マーク521~524は、上下方向において風防23と対向するように配置され、風防23を介してユーザーが視認することができる。ユーザーは、機能針51と機能マーク521~524との相対位置により、機能表示に基づいた電子時計1の状態を認識することができる。曜日マーク521は、機能針51の位置に基づいて現在曜日を曜日表示するものである。本実施形態における曜日マーク521としては、各曜日(日曜日から土曜日まで)にそれぞれ対応した省略英字の「S」、「M」、「T」、「W」、「T」、「F」、「S」であり、機能マーク板52のうち、2時方向から5時方向までの領域に時計回りに形成されている。残量マーク522としては、機能針51の位置に基づいて二次電池76の残量を残量表示するものである。本実施形態における残量マーク522としては、残量に対応した図形の第1残量図形、第1残量図形よりも径方向において幅が狭い第2残量図形、第2残量図形よりも径方向において幅が狭い第3残量図形、第3残量図形よりも径方向において幅が狭い第4残量図形であり、機能マーク板52のうち、10時方向から6時方向までの領域に反時計回りに形成されている。半球表示モードマーク523,524は、半球表示モードDに対応するものであり、機能針51の位置に基づいて現在表示モードDRを半球表示モード表示するものである。本実施形態における北半球表示モードマーク523としては、北に対応した省略英字の「N」であり、機能マーク板52のうち、1時方向の領域に形成されている。本実施形態における南半球表示モードマーク524としては、南に対応した省略英字の「S」であり、機能マーク板52のうち、11時方向の領域に形成されている。なお、機能マーク板52は、文字板32の一部として形成されているが、これに限定されるものではなく、文字板32と異なる板材に構成されていてもよい。この場合、文字板32に図示しない機能マーク板用開口を形成し、機能マーク板52を上下方向において、上下方向において文字板32とムーブメント7との間に配置することとなる。
【0028】
操作部6は、ユーザーが操作することで、ムーブメント7に対して、操作に基づいた機能動作を実現するものである。操作部6は、制御回路72に対して各種指示を行うものである。本実施形態における操作部6は、時差に関する時差情報を取得する時差情報取得手段である。操作部6は、制御回路72に対して月齢Aを算出するための指示である月齢算出指示を行うものである。具体的には、電子時計1は、ユーザーによる操作部6の操作、すなわち時差修正モードにおける操作(月齢算出指示)により、指針31を駆動して時差情報に対応する時差修正マーク331~335または時字321~323のいずれかを指示する。指示された時差修正マーク331~335または時字321~323に対応した時差情報に基づいて制御回路72の記憶部723に記憶された時差情報が更新され、この更新された時差情報もしくは更新前後の時差情報を用いて月齢Aを算出し、算出された月齢Aに基づいて、月相表示部4の月齢板42の回転位置、本実施形態ではステップ位置を変更する時差修正モード時における月齢修正動作が行われる。また、操作部6は、制御回路72に対して北半球表示モードDNおよび南半球表示モードDSのいずれか一方から他方に月相表示部4の半休表示モードDを切り替えるための指示を行うものでもある。ここで、北半球表示モードDNは、月相表示部4を北半球用月齢に対応する月相表示となるように制御するモードであり、月齢板42を月齢板回転方向Rのうち一方、本実施形態では正転方向RYに回転駆動させるものである。南半球表示モードDSは、月相表示部4を南半球用月齢に対応する月相表示となるように制御するモードであり、月齢板42を月齢板回転方向Rのうち他方、本実施形態では逆転方向RNに回転駆動させるものである。なお、同一日時、同経度における北半球用月齢および南半球用月齢は、同一月齢となる一方、北半球用月相に対応する月相表示および南半球用月相に対応する月相表示が異なる。具体的には、電子時計1は、ユーザーによる操作部6の操作により、半球表示モードDを切替え、月相表示部4の月齢板42の回転位置、本実施形態ではステップ位置を変更し、以後の月齢板42回転方向を現在の回転方向から反対の回転方向とし、機能表示部5の機能針51が切り替えられた半球表示モードDに対応する半球表示モードマーク523,524を指し示す半球表示モード切替動作が行われる。操作部6は、リューズ61と、プッシュボタン62と、プッシュボタン63とを有する。リューズ61は、胴21の側面から突出して形成されており、ユーザーの操作により、突出方向に1段又は複数段引き出すことができ、軸心周りに回転することができる。リューズ61は、突出方向に引き出されていない0段とは異なる段、例えば2段にした状態で、回転することで、時刻表示状態の指針31を強制的に回転させることができ、時刻表示を補正することができる。プッシュボタン62,63は、胴21の側面から突出して形成されており、ユーザーの操作により突出方向と反対方向に押圧することができる。プッシュボタン62,63は、外力が作用していない状態では、突出方向に突出した状態を維持する。プッシュボタン62,63は、例えば、いずれか一方または両方を押圧することで、機能表示部5における曜日表示または残量表示を切り替えることができる。操作部6は、ムーブメント7の制御回路72と接続されており、ユーザーによる操作状態を操作信号として、制御回路72に出力する。
【0029】
ムーブメント7は、
図3に示すように、アンテナ71、制御回路72、アクチュエータ73、輪列機構74、発電機構75、二次電池76などを備え、電子時計1の計時機能やその他の機能動作などを行う。
【0030】
アンテナ71は、標準電波を受信するものである。つまり、電子時計1は、電波時計でもある。アンテナ71は、制御回路72と電気的に接続されており、標準電波の信号が制御回路72に出力される。なお、アンテナ71は衛星が出力するGPS(GLOBAL POSITIONING SYSTEM)信号を受信するものであってもよい。
【0031】
制御回路72は、指針31、日板34、月齢板42および機能針51の回転位置、回転方向を制御するものである。制御回路72は、電子時計1の制御を行う回路であり、図示しない発振器から出力されたクロック信号に基づき、電子時計1の内部時刻を計時したり、時差TDを記憶したり、各機能に応じた制御信号を出力する。制御回路72は、受信IC721と、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)といった記憶部を含む制御IC722とを有する。受信IC721は、アンテナ71により受信された標準電波の信号を処理するものであり、制御IC722に標準電波に基づいた時刻情報(年情報、月情報、日情報、時情報、分情報、秒情報、時差情報を含む)を出力する。制御IC722は、内部計時に基づいて、すなわち内部計時の結果である内部時刻に基づいて指針31に時刻表示を行わせるための制御信号をアクチュエータ73に出力する。制御IC722は、受信IC721から出力された時刻情報に基づいて内部時刻を補正するものでもある。ここで、時刻情報は、協定世界時であり、年(西暦)に対応する年情報、月に対応する情報、日に対応する日情報、分に対応する分情報、秒に対応する情報、時差TDに対応する時差情報が含まれる。つまり、時差TDは、協定世界時(UTC)を基準としたものであり、協定世界時に対応する時差(基準時差)を0として、東経側をプラス、西経側をマイナスとするものである。なお、発振器は、電子時計1の表示時刻の計時やその他の機能動作に関する基準周波数を生成するための源振であり、例えば水晶振動子を用いることができる。水晶振動子は外部温度により発振特性が変動しやすいため、温度補償型水晶振動器(TCXO)を用いてもよい。
【0032】
制御回路72は、内部月齢情報に基づいて月齢板アクチュエータである後述する第3アクチュエータ73cにより月齢板42を回転駆動するものである。本実施形態における制御回路72は、月齢板42の基準位置に対する回転位置に対応する内部月齢情報が記憶されている。制御回路72は、月齢Aに基づいて月齢板用アクチュエータである後述する第3アクチュエータ73cにより月齢板42の回転方向である月齢板回転方向Rおよび月齢板42の基準位置に対する回転位置である月齢板回転位置(内部月齢情報)を制御するものである。本実施形態における制御回路72は、月齢板42を回転駆動させる際に、ステップ回転駆動させるものであるので、月齢板回転位置は月齢板ステップ位置Sである。つまり、月齢板42は、第3アクチュエータ73cにより、複数回ステップ回転駆動することで1回転することとなる。本実施形態における月齢板42は、60ステップで1回転するものであり、2朔望周期の朔望周期分の月齢に対応する月相表示を行うものであるので、1朔望周期は30ステップとなる。例えば、月齢板42は、
図2および
図3に示すように、12時の方向におけるステップ位置を現在月齢板ステップ位置SRとし、月マーク421に対応する第1朔望周期における新月(月齢M=0)の月相表示における現在月齢板ステップ位置SRを0(SR=0)とすると、月マーク421に対応する第1朔望周期における満月(M=15)の月相表示における現在月齢板ステップ位置SRを15(SR=15)とし、月マーク422に対応する第2朔望周期における新月(M=0)の月相表示における現在月齢板ステップ位置SRを30(SR=30)とし、月マーク422に対応する第2朔望周期における満月(M=15)の月相表示における現在月齢板ステップ位置SRを45(SR=45)とする。
【0033】
制御回路72は、内部時刻に基づいて日が変更されると、月齢板42を第3アクチュエータ73cにより1ステップ分回転駆動させる、すなわち1日1ステップ回転駆動させるものであり、1ステップが1日あたりに、月齢板42が動作する量である。また、制御回路72は、59日に1回、月齢板42を1日1ステップ分ではなく、2ステップ分第3アクチュエータ73cによりステップ回転駆動させるものである。
【0034】
制御回路72は、内部計時の結果である内部時刻及び取得された時差TDに基づいて月齢Aを算出する月齢算出部である。本実施形態における制御回路72は、操作部6による月齢算出指示に基づいて、月齢Aを算出するものである。具体的には、制御回路72は、ユーザーが操作部6を操作することで、電子時計1に記憶されている時差TD、すなわち現在の時差TDを修正する時差修正モード時において、時差修正モードとなったことを操作部6による月齢算出指示として、月齢Aを算出するものである。制御回路72は、内部時刻、取得された時差TD(記憶されている時差TD)および以下の式(3)、式(4)により、月齢Aを算出する。ただし、Aは月齢、Yは年(グレゴリオ暦)、Dは日、C
mは以下の〔表1〕に基づいて決定される。また、C
xは、時差TDに基づいて決定されるものであり、0か1である。本実施形態におけるC
xは、時差TDが0以上であると0とし、時差TDが-1以下であると1とする。また、C
zは、周期に基づいて決定されるものであり、0か1であり、本実施形態のC
zは、C
yが7以上であると1とし、C
yが6以下であると0とする。また、%は右記式を左記値で除算した余りを求めるものである。以下の式(3)および式(4)は、メトン周期に基づいた19年周期の月齢簡易計算式であり、月齢Aを精度良く算出するために、時差TDに関する補正値C
xおよび周期に関する補正値C
zを加えたものである。メトン周期は、ある日付での月相が一致する周期の1つであり、19太陽年は235朔望周期(朔望月)にほぼ等しい(1周期が19年)という周期のことである。
A=(C
y×11+C
m+D+C
x+C
z)%30・・・・(3)
C
y=(Y-2006)%19・・・・(4)
【表1】
【0035】
ここで、Cyが7以上であるとCzにより月齢Aを+1補正するのは、後の数十年を対象として、算出される月齢Aと実際の月齢との月齢誤差が±1日以内にどれだけ収まるかにより決定されたものである。Cy=0の年の年間平均誤差は0.15日の遅れであり、計算式よりCyが1増加する毎に0.056日ずつ遅れが発生する。この遅れ量の積算値が0.5日を超えるタイミングで+1日の補正をすることが好ましく、0.5日から年平均誤差0.15日を引いた値を0.056で割ると約6.25日となることから、+1日の補正をするタイミングはCy=7以上の範囲が適切である。
【0036】
また、時差TDが-1以下であるとCxにより月齢Aを補正するのは、時差による月齢増加量から算出している。時差が1時間マイナスとなる度に、その地点でのある日時の月齢は1÷24=0.042日ずつ増加する。月齢計算式を日本(UTC+9)において最適化した場合、時差により月齢が0.5日分増加するのは-0.5÷0.042=-12となり、日本から12時間分のマイナス時差となる時差帯である。このことから、月齢計算結果に対し+1の補正をすることにより実際の月齢と表示月齢の差が最も小さくなる境界は+9-12=-3、すなわちUTC-3である。一方、月齢を0~29の整数で表示しようとした場合、計算結果の月齢が15のときに時計は満月を表示することとなる。しかし実際の満月の月齢は平均約14.75日であるため、計算結果が実際の月齢に対し+0.25日となる場合が、最も満月の日に満月表示の頻度が多いということになる。月齢計算結果に+1の補正をすることにより満月日に満月表示をする頻度を多くする境界は、(-0.5+0.25)÷0.42=-6であることから、+9-6=+3、すなわちUTC+3である。以上2つの観点を両方満たそうとする場合、これらの中点であるUTC±0が境界として適切である。
【0037】
制御回路72は、操作部6により時差修正モード時においてユーザーにより時差が修正されたか否かを判断するものである。本実施形態における制御回路72は、リューズ61が1段の位置にある状態で、リューズ61が回転されたか否かを判断することで、時差が修正されたか否かを判断する。制御回路72は、リューズ61が1段の位置であると、記憶されている時差TDに基づいて秒針31aを後述する第1アクチュエータ73aによりステップ回転駆動する。具体的には、制御回路72は、時字321~323のうち、時差TDに対応する時字321~323と対向する位置まで、秒針31aを現在の位置から移動させる。時差修正モード時における時字321~323は、時字321(12時に対応する時字)を時差0に対応するものとし、時字321に対して時計回り方向を時差TDとしてプラス方向、時字321に対して反時計回り方向を時差TDとしてマイナス方向とし、隣り合う時字321~323間を時差TDとして1時差分とする。例えば、制御回路72は、記憶されている時差が9の場合、
図5に示すように、時字321~323のうち、秒針31aを9秒に対応する時字321~323と対向する位置まで、秒針31aを第1アクチュエータ73aによりステップ回転駆動する。
【0038】
アクチュエータ73は、指針31、日板34、月齢板42および機能針51を回転駆動するものである。アクチュエータ73は、駆動回路や駆動部等を含み、制御回路72からの制御信号が駆動回路に入力され、入力された制御信号に基づいた駆動信号を駆動部に出力し、入力された駆動信号に基づいて駆動部が駆動する。本実施形態におけるアクチュエータ73は、ステッピングモータやエレクトリックモータ等のステップ回転駆動を行うことができるモータであり、秒針31aを回転駆動する第1アクチュエータ73aと、分針31b、時針31cを回転駆動する第2アクチュエータ73bと、月齢板42を回転駆動する月齢板用アクチュエータである第3アクチュエータ73cと、機能針51および日板34を回転駆動する第4アクチュエータ73dで構成されている。
【0039】
輪列機構74は、アクチュエータ73が出力する駆動力を指針31、日板34、月齢板42および機能針51に伝達するものである。輪列機構74は、輪列歯車等を含み、一端がアクチュエータ73に連結され、他端が指針31、日板34、月齢板42および機能針51に連結されている。本実施形態における輪列機構74は、第1アクチュエータ73と秒針31aとを連結する第1輪列機構74aと、第2アクチュエータ73bと、分針31b、時針31cとを連結する第2輪列機構74bと、第3アクチュエータ73cと月齢板42とを連結する第3輪列機構74cと、第4アクチュエータ73cと機能針51および日板34とを連結する第4輪列機構74dで構成されている。
【0040】
発電機構75は、外部エネルギーによって発電し、発電した電力を二次電池76や制御回路72などの電子部品に供給する。発電機構75には、光エネルギーを変換する光電変換素子や、熱エネルギーを変換する熱電変換素子、振動エネルギー等の機械運動から発電する機械電気変換素子などを用いることができる。
【0041】
二次電池76は、発電機構75によって発電した電力を蓄電することができるとともに、制御回路72やアクチュエータ73、その他の電子部品等に供給する電力源である。二次電池76には例えば、リチウムイオン電池や全固体電池等を用いることができる。
【0042】
次に、電子時計1による月齢Aの算出について説明する。本実施形態における電子時計1は、時差修正モード時において時差TDが修正された場合に、月齢Aを算出する。
図6は、実施形態における電子時計の月齢算出動作のフロー図である。なお、本実施形態における電子時計1の時差修正モード時における月齢Aの算出動作は、月齢板42のステップ回転駆動動作も含んで説明する。まず、制御回路72は、リューズ61が1段の位置にあるか否かを判定する(ステップST1)。ここでは、制御回路72は、ユーザーが時差修正を行うために、操作部6を操作する意思があるか否かを判定する。
【0043】
次に、制御回路72は、リューズ61が1段の位置にないと判定する(ステップST1:NO)と、日が変更されているか否かを判定する(ステップST2)。ここでは、制御回路72は、内部時刻に基づいて日情報が1カウント分カウントアップしたかないかを判定することで、月齢板42のステップ回転駆動を行うか否かを判定する。
【0044】
次に、制御回路72は、日が変更されると判定する(ステップST2:Yes)と、月齢板42のカウントNが58であるか否かを判定する(ステップST3)。ここでは、制御回路72は、月齢板42が1周60ステップ(60日)の2ステップ前、すなわち58ステップ分ステップ回転駆動したか否かを判定する。なお、制御回路72は、日が変更されていないと判定する(ステップST2:No)と、本制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0045】
次に、制御回路72は、月齢板42のカウントNが58でないと判定する(ステップST3:No)と、月齢板42を1ステップ分回転駆動させる(ステップST4)。
【0046】
次に、制御回路72は、月齢板42のカウントNを1カウント分カウントアップし(ステップST5)、本制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0047】
また、制御回路72は、月齢板42のカウントNが58であると判定する(ステップST3:Yes)と、月齢板42を2ステップ分回転駆動させる(ステップST4)。
【0048】
次に、制御回路72は、月齢板42のカウントNを0、すなわちリセットし(ステップST6)、本制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。つまり、制御回路72は、月齢板42が1回転する間に、1回2ステップ分回転駆動させる。
【0049】
また、制御回路72は、リューズ61が1段の位置にあると判定する(ステップST1:Yes)と、時差TDに基づいて秒針31aをステップ回転駆動する(ステップST8)。ここでは、制御回路72は、時差修正モードである場合に、時字321~323のうち、記憶されている時差TDに対応する時字321~323と対向する位置まで、秒針31aを現在の位置から移動させることで、ユーザーに時差を表示する。
【0050】
次に、制御回路72は、リューズ61が回転されたか否かを判定する(ステップST9)。ここでは、制御回路72は、ユーザーが時差を修正する意思があるのか否かを判定する。
【0051】
次に、制御回路72は、リューズ61が回転されたと判定する(ステップST9:Yes)と、リューズ61の回転に基づいて秒針31aをステップ回転駆動する(ステップST10)。ここでは、記憶されている時差TDに対応する時字321~323と対向する位置にある秒針31aを修正後の時差TDに対応する時字321~323と対向する位置まで、ユーザーがリューズ61を回転させることで、秒針31aをステップ回転駆動させる。
【0052】
次に、制御回路72は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップST11)。ここでは、制御回路72は、時差修正モードである場合に、ユーザーが時差TDの修正を行うことができる時間を経過したか否かを判定する。例えば、制御回路72は、0.5秒ごとに1カウントするカウンターを有し、カウンターで3カウント、すなわち1.5秒経過したか否かを判定する。
【0053】
また、制御回路72は、リューズ61が回転されていないと判定する(ステップST9:No)と、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップST11)。
【0054】
次に、制御回路72は、秒針31aの現在位置に基づいて、時差TDを記憶する(ステップST12)。ここでは、制御回路72は、リューズ61が回転されることで、時差TDが修正された場合は、修正された時差TDを記憶し、リューズ61が回転しないことで、時差TDが修正されない場合は、記憶されている時差TDを再度記憶する。
【0055】
次に、制御回路72は、記憶されている時差TDに基づいて月齢Aを算出する(ステップST13)。ここでは、制御回路72は、修正された時差TDまたは再度記憶された時差TDのいずれかに基づいて月齢Aを算出する。
【0056】
次に、制御回路72は、時針31cおよび分針31bを時差TDに基づいてステップ回転駆動させる(ステップST14)。ここでは、制御回路72は、時差修正モード時に、時差TDが修正された場合は、内部時刻および修正前の時差TDと修正後の時差TDとの差分に基づいて、時刻表示部3により現在の時差TDに対応する時刻表示を行う。
【0057】
次に、制御回路72は、算出された月齢Aに基づいて、月齢板42の回転を行うか否かを判定する(ステップST15)。ここでは、制御回路72は、内部月齢情報に対応する現在月齢板ステップ位置SRと、算出された月齢Aに対応する算出月齢板ステップ位置SCとに差があるか否かを判定する。
【0058】
次に、制御回路72は、月齢板42の回転を行うと判定する(ステップST15:Yes)と、算出された月齢Aに基づいて月齢板42をステップ回転駆動する(ステップST16)。
【0059】
次に、制御回路72は、日板34の回転を行うか否かを判定する(ステップST17)。ここでは、制御回路72は、時差修正モード時に、時差TDが修正された場合は、内部時刻、修正前の時差TDおよび修正後の時差TDに基づいて、時刻表示部3による時刻表示において、時刻が進むことで日を跨ぐ、あるいは時刻が戻ることで日を跨ぐか否かを判定する。
【0060】
また、制御回路72は、月齢板42の回転を行わないと判定する(ステップST15:No)と、日板34の回転を行うか否かを判定する(ステップST17)。
【0061】
次に、制御回路72は、日板34の回転を行うと判定する(ステップST17:Yes)と、日板34をステップ回転駆動する(ステップ18)。ここでは、制御回路72は、時差修正モード時に、時差TDが修正され、時刻が日を跨ぐ場合は、修正前の時差TDに対する修正後の時差TDの差分方向、すなわちプラス方向またはマイナス方向に応じて、日板34を1ステップ分ステップ回転駆動する。
【0062】
次に、制御回路72は、リューズ61が1段の位置にあるか否かを判定し(ステップST1)、リューズ61が1段の位置にないと判定する(ステップST1:NO)まで、上記ステップST8~ステップST18を繰り返す。
【0063】
以上のように、本実施形態における電子時計1は、内部時刻、取得された時差TDおよび上記式(3)、式(4)により、月齢Aを算出するので、メトン周期に基づいた月齢簡易計算式により、月齢Aを算出する。ここで、上記式(3)、式(4)は整数のみに基づいた計算式であり、月齢Aが整数として算出される。従って、電子時計1において月齢Aを算出する際の演算負荷を抑制できる。また、本実施形態における電子時計1は、メトン周期に基づいた月齢簡易計算式に対して、時差TDに基づいて決定される補正値であるCxによる補正を行うため、時差TD、すなわち経度に基づいた月齢誤差を抑制することができ、精度の良い月齢Aを算出することができる。また、本実施形態における電子時計1は、メトン周期に基づいた月齢簡易計算式に対して、周期に基づいて決定される補正値であるCzによる補正を行うため、メトン周期に基づいた月齢簡易計算式において発生する月齢誤差を抑制することができ、精度の良い月齢Aを算出することができる。
【0064】
実際の月齢と、電子時計によって算出された月齢の誤差について、周期補正の有無による違いについて説明する。
図7は、月齢の誤差(周期補正なし)に関する説明図である。
図8は、月齢の誤差(周期補正あり)に関する説明図である。
図7、
図8においては、縦軸が実際の月齢と算出された月齢Aとの誤差[日]であり、横軸は西暦[年]であり(2023年から2044年まで)、実際の月齢と、算出された月齢Aとを比較したものである。
図7は、時差TDが9であり、周期に基づいて決定される補正値であるC
zによる補正を行っていない場合の算出された月齢Aの誤差を示すものである。
図8は、時差TDが9であり、周期に基づいて決定される補正値であるC
zによる補正を行った場合の算出された月齢Aの誤差を示すものである。
【0065】
図7および
図8に示すように、同一時差TDにおいて、C
zによる補正を行った場合は、C
zによる補正を行っていない場合と比較して、誤差が±1日に収まっている。具体的には、2023年から2044年までのうち、誤差が±1日に収まっている率は、C
zによる補正を行っていない場合が66.3%であり、C
zによる補正を行った場合が88.9%となった。
【0066】
次に、時差補正の有無による算出された月齢の誤差について、説明をする。以下の説明においては、周期補正はされているものとする。
図9は、月齢の誤差(周期補正あり、時差補正なし)に関する説明図である。
図10は、月齢の誤差(周期補正あり、時差補正あり)に関する説明図である。
図9,
図10は、
図7,
図8と同様に縦軸が実際の月齢と算出された月齢Aとの誤差[日]であり、横軸は西暦[年]であり(2023年から2044年まで)、実際の月齢と、算出された月齢Aとを比較したものである。
【0067】
図9は、時差TDが-10であり、周期に基づいて決定される補正値であるC
zによる補正を行い、かつ時差TDに基づいて決定される補正値であるC
xによる補正を行っていない場合の算出された月齢Aの誤差を示すものである。
図10は、時差TDが-10であり、周期に基づいて決定される補正値であるC
zによる補正を行い、かつ時差TDに基づいて決定される補正値であるC
xによる補正も行った場合の算出された月齢Aの誤差を示すものである。
【0068】
図9および
図10に示すように、同一時差TDにおいて、C
zにより補正を行うとともにC
xよる補正を行った場合は、C
zによる補正を行い、C
xよる補正を行っていない場合と比較して、誤差が±1日に収まっている期間の割合が高い。具体的には、2023年から2044年までのうち、誤差が±1日に収まっている率は、C
xによる補正を行っていない場合が55.0%であり、C
zによる補正を行った場合が88.3%となった。従って、時差TDに基づいた補正を行った場合は、周期に基づいた補正を行った場合よりも、精度の良い月齢Aを算出することができる。
【0069】
また、使用者が異なるタイムゾーンに移動した場合において、使用者による時差修正の操作により、月齢板42による月齢表示を精度よく行うことができる。
【0070】
また、本実施形態における電子時計1は、制御回路72は、操作部6による月齢算出指示に基づいて、月齢Aを算出するので、月齢Aの算出頻度を低減することができ、算出された月齢Aに基づいて月齢板42をステップ回転駆動させる頻度を低減することができる。これにより、制御回路72の電力消費を抑制することができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、内部時刻、取得された時差TDおよび上記式(3)、式(4)により、時差TDに基づいた補正および周期に基づいた補正を行って月齢Aを算出するが、これに限定されるものではない。制御回路72は、内部計時の結果である内部時刻、取得された時差TD(記憶されている時差TD)および以下の式(1)、式(2)により、時差TDのみに基づいた補正を行って月齢Aを算出してもよい。ただし、Aは月齢、Yは年、Dは日、C
mは以下の〔表1〕に基づいて決定される。また、C
xは、時差TDに基づいて決定されるものであり、0か1である。本実施形態におけるC
xは、時差TDが0以上であると0とし、時差TDが-1以下であると1とする。また、%は右記式を左記値で除算した余りを求めるものである。
A=(Cy×11+Cm+D+Cx)%30・・・・(1)
Cy=(Y-2006)%19・・・・(2)
【表1】
上記の式(1)および式(2)は、メトン周期に基づいた月齢簡易計算式であり、月齢Aを精度良く算出するために、時差TDに関する補正値C
xを加えたものである。電子時計1において、内部時刻、取得された時差TDおよび上記の式(1)、式(2)を用いて月齢Aを算出することにより、月齢Aを算出する際の演算負荷を抑制できる。また、本実施形態における電子時計1は、メトン周期に基づいた月齢簡易計算式に対して、時差TDに基づいて決定される補正値であるC
xによる補正を行うため、時差TD、すなわち経度に基づいた月齢誤差を抑制することができ、精度の良い月齢Aを算出することができる。また、本実施形態における電子時計1は、メトン周期に基づいた月齢簡易計算式に対して、周期に基づいて決定される補正値であるC
zによる補正を行うため、メトン周期に基づいた月齢簡易計算式において発生する月齢誤差を抑制することができるとともに、精度の良い月齢Aを算出することができる。
【0072】
また、本実施形態においては、月齢Aを算出する際に、時差TDに基づいた補正、すなわち時差修正を行うが、これに限定されるものではない。制御回路72は、内部時差情報が変更されるとき、変更前の時差から変更後の時差に変遷する際に、所定の時差をまたいだ場合に、内部月齢情報を修正してもよい。例えば、制御回路72は、時差修正モードにおいて、記憶されている時差TDから修正された時差TDに変遷する際に、所定の時差、ここでは時差0をまたいだ場合に、修正された時差TDから記憶されている時差TDを引いた値がマイナスであれば月齢Aを加算、例えば月齢Aを+1する修正をし、プラスであれば月齢Aを減算、例えば月齢Aを-1する修正してもよい。この場合は、月齢Aの算出をすることなく、月齢板42を修正に基づき回転駆動させることで月齢Aを修正することもできるので、時差修正モード時における演算負荷を軽減でき、時差の変化に応じた月齢表示を行うことができる。
【0073】
また、制御回路72は、内部時差情報が変更されるとき、変更前の時差から変更後の時差の差分の絶対値が所定の閾値をこえた場合に、内部月齢情報を修正してもよい。例えば、制御回路72は、時差修正モードにおいて、修正された時差TDから記憶されている時差TDを引いた時差の差分の絶対値である時差差分値が閾値12を超えた場合に、修正された時差TDから記憶されている時差TDを引いた値がマイナスであれば月齢Aを加算、例えば月齢Aを+1する修正をし、プラスであれば月齢Aを減算、例えば月齢Aを-1する修正してもよい。この場合は、月齢Aの算出をすることなく、月齢板42を修正に基づき回転駆動させることで月齢Aを修正することもできるので、時差修正モード時における演算負荷を軽減でき、時差の変化に応じた月齢表示を行うことができる。
【0074】
また、本実施形態においては、制御回路72は、ユーザーの操作部6の操作により時差修正モードとなった場合に、月齢Aを算出するが、これに限定されるものではなく、自動的に月齢Aを算出してもよい。制御回路72は、例えば、電子時計1が外部から時刻情報を取得する場合、時刻情報を取得する動作を行うごとに月齢Aを算出してもよい。また、制御回路72は、電子時計1が日をまたぐ、すなわち日付変更が行われる場合に、日が変更されるごとに月齢Aを算出してもよい。ここで、日付変更としては、内部計時に基づいた日付変更、自動的に内部時差情報を変更することによる日付変更、サマータイムのON/OFFを変更することによる日付変更などである。さらに、制御回路72は、半球表示モードDを切替えた場合、半球表示モードDを切替えるごとに月齢Aを算出してもよい。
【0075】
また、本実施形態においては、月齢Aを算出する際に、時差TDに基づいた修正を行うが、これに限定されるものではない。電子時計1において、月相表示部4を有しており、制御回路72が月齢Aを算出することがなくても、すなわち月齢板42を操作部6の操作により回転駆動させることで、現在月齢に対応した月齢表示を行うものであっても、時差修正モードの際に、取得された時差TDに基づいて月齢板42を回転駆動させることで月齢Aを修正するようにしてもよい。
【0076】
また、本実施形態においては、時差修正機能に応じた情報表示を見返しリング33に設けているが、これに限定されるものではなく、機能表示部5の機能マーク板52に時差修正マークを設け、時差修正モード時に機能針51が指し示すようにしてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、北半球表示モードDNの場合に、時差修正モードを行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、南半球表示モードDSの場合でも時差修正モードを行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 電子時計
2 外装ケース
21 胴
22 ベゼル
23 風防
24 先かん
3 時刻表示部
31 指針
32 文字板
321~323 時字
324 日板用開口
33 見返しリング
34 日板
341 日マーク
4 月相表示部
41 月齢板用開口
411,412 凹部
42 月齢板
421,422 月マーク
43,44 月齢板回転方向マーク
5 機能表示部
51 機能針
52 機能マーク板
6 操作部
61 リューズ
62,63 プッシュボタン
7 ムーブメント
71 アンテナ
72 制御回路
73 アクチュエータ
73a 第1アクチュエータ
73b 第2アクチュエータ
73c 第3アクチュエータ(月齢板用アクチュエータ)
73d 第4アクチュエータ
74 輪列機構
74a 第1輪列機構
74b 第2輪列機構
74c 第3輪列機構
74d 第4輪列機構
75 発電機構
76 二次電池
8 ベルト
O1 時計中心
O2 月齢板中心
O3 機能マーク中心