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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100370
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】測定装置、及び測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20240719BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01S17/89
H01L27/146 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004325
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100154036
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】久保井 信行
(72)【発明者】
【氏名】戸田 淳
【テーマコード(参考)】
4M118
5J084
【Fターム(参考)】
4M118AB03
4M118CA02
4M118CB02
4M118GA09
4M118GC20
4M118GD04
4M118GD07
5J084AA05
5J084AA13
5J084AA20
5J084AB17
5J084AC07
5J084AC08
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA19
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA40
5J084BA48
5J084BB01
5J084BB20
5J084BB28
5J084BB34
5J084BB35
5J084BB40
5J084CA09
5J084CA48
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】イメージングの空間分解能をより向上させる。
【解決手段】位相変調されたレーザ光を対象物に出射する投光素子と、前記対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光素子とを有し、互いに離隔された位置に設けられた少なくとも2以上のレーザモジュールと、前記レーザモジュールの各々の前記受光素子で受光された前記レーザ光の受光信号を、位相差を補正して合成することで、前記対象物の表面のイメージング結果を導出する演算部と、を備える、測定装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調されたレーザ光を対象物に出射する投光素子と、前記対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光素子とを有し、互いに離隔された位置に設けられた少なくとも2以上のレーザモジュールと、
前記レーザモジュールの各々の前記受光素子で受光された前記レーザ光の受光信号を、位相差を補正して合成することで、前記対象物の表面のイメージング結果を導出する演算部と、
を備える、測定装置。
【請求項2】
前記レーザモジュールの各々は、互いの距離を変更可能に設けられる、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記対象物までの距離を測定する測距センサをさらに備え、
前記レーザモジュールの各々から出射される前記レーザ光の出射面の法線方向からの出射角は、前記測距センサにて測定された前記対象物までの距離に基づいて制御される、請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記測距センサは、光源として垂直共振器型面発光レーザを用いるToFセンサである、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記レーザ光の前記出射角は、1度よりも小さい、請求項3に記載の測定装置。
【請求項6】
前記レーザモジュールの各々、及び前記測距センサは、同一の面上に設けられる、請求項3に記載の測定装置。
【請求項7】
前記演算部は、任意の2つの前記レーザモジュールからなる対ごとに前記受光信号を合成することで、前記イメージング結果を導出する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項8】
前記演算部は、合成された前記受光信号を逆フーリエ変換することで、前記イメージング結果として前記対象物の表面分布を示す関数を導出する、請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記レーザモジュールの各々は、前記レーザ光の出射角を変化させることで、前記対象物の前記表面の領域を走査し、
前記演算部は、前記対象物の前記領域の前記イメージング結果を導出する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項10】
前記受光素子の受光面には、前記レーザ光の発振波長を含む波長帯域を選択的に透過させるバンドパスフィルタがさらに設けられる、請求項1に記載の測定装置。
【請求項11】
前記投光素子は、半導体レーザである、請求項1に記載の測定装置。
【請求項12】
前記受光素子は、フォトダイオードである、請求項1に記載の測定装置。
【請求項13】
前記投光素子は、前記受光素子の受光面に設けられた導波路と、前記導波路を伝搬する前記レーザ光の一部を前記受光素子と反対側に出射させる回折格子とを含み、
前記受光素子は、前記対象物にて反射された前記レーザ光の一部と、前記回折格子で前記受光素子側に出射された前記レーザ光の一部との干渉光を受光する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項14】
前記対象物と前記投光素子との間の距離は、前記レーザ光の発振波長の整数倍に制御される、請求項13に記載の測定装置。
【請求項15】
携帯端末、移動体、又はロボット装置に搭載される、請求項1に記載の測定装置。
【請求項16】
位相変調されたレーザ光を対象物に出射する投光素子と、前記対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光素子とを有し、互いに離隔された位置に設けられた少なくとも2以上のレーザモジュールと、
前記レーザモジュールの各々の前記受光素子で受光された前記レーザ光の受光信号を、位相差を補正して合成することで、前記対象物の表面のイメージング結果を導出する演算部と、
を備える、測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン又はデジタルカメラなどに搭載されるCMOSイメージセンサでは、空間分解能をさらに向上させることが求められている。
【0003】
CMOSイメージセンサで空間分解能を向上させるためには、センサ画素の微細化を行うことが重要となるが、センサ画素の微細化は、センサ画素の飽和電荷量の低下、及びセンサ画素間での混色の増加を招いてしまう。そのため、CMOSイメージセンサの空間分解能を向上させる技術開発は、年々、難度が上昇している。
【0004】
一方で、光は電磁波でもあるため、回折及び干渉などを起こすことが知られている。そこで、宇宙観測などで用いられる電磁波干渉計では、光の干渉性を利用することで、高分解能での宇宙空間の観測を実現している。具体的には、電磁波干渉計は、宇宙空間からの電磁波を異なる複数の場所で受信し、受信した電磁波同士を位相差0で干渉させることで、高分解能で宇宙空間を観測することができる。
【0005】
ここで、宇宙空間から受信する電磁波は、宇宙から地球までの距離が非常に長く、ほぼ平面波としてみなすことができるため、容易に干渉させることができる。しかしながら、通常空間を伝搬する太陽光などは位相がランダムであるため、そのままでは干渉させることが困難である。例えば、下記の特許文献1には、波長及び位相が揃ったレーザ光を対象物に出射し、対象物で反射されたレーザ光を受光することで、受光したレーザ光の干渉縞を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-93085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑みれば、対象物に出射されたレーザ光の反射光を受光し、受光した反射光を位相差補正して合成することで、イメージングの空間分解能を向上させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、位相変調されたレーザ光を対象物に出射する投光素子と、前記対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光素子とを有し、互いに離隔された位置に設けられた少なくとも2以上のレーザモジュールと、前記レーザモジュールの各々の前記受光素子で受光された前記レーザ光の受光信号を、位相差を補正して合成することで、前記対象物の表面のイメージング結果を導出する演算部と、を備える、測定装置が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、位相変調されたレーザ光を対象物に出射する投光素子と、前記対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光素子とを有し、互いに離隔された位置に設けられた少なくとも2以上のレーザモジュールと、前記レーザモジュールの各々の前記受光素子で受光された前記レーザ光の受光信号を、位相差を補正して合成することで、前記対象物の表面のイメージング結果を導出する演算部と、を備える、測定システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る測定装置の構成を示す模式的な斜視図である。
図2】測距センサにて本体部と対象物との間の距離を測定する様子を示す説明図である。
図3】レーザモジュールの各々から測定点にレーザ光を出射すると共に、反射されたレーザ光をレーザモジュールの各々にて受光する様子を示す説明図である。
図4】測定装置の内部構成を示すブロック図である。
図5】複数のレーザモジュールの組み合わせを示す模式図である。
図6】測定装置の第1の動作例の流れを示すフローチャート図である。
図7】測定装置の第2の動作例の流れを示すフローチャート図である。
図8】レーザモジュールの配置及び移動方向の一例を示す模式的な斜視図である。
図9】レーザモジュールの配置及び移動方向の一例を示す模式的な斜視図である。
図10】測定装置の内部構成の変形例を示すブロック図である。
図11】測定装置が搭載された人型ロボットの一例を示す模式図である。
図12】測定装置が搭載されたペット型ロボットの一例を示す模式図である。
図13】測定装置が搭載された移動体の一例を示す模式図である。
図14】可搬型の検出装置として構成された測定装置の概要を示す模式的な斜視図である。
図15】設置型の検出装置として構成された測定装置の概要を示す模式的な斜視図である。
図16】画素をレーザモジュールとして機能させる測定装置の断面構成を示す縦断面図である。
図17】画素をレーザモジュールとして機能させる測定装置の平面構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.測定装置の構成
2.測定装置の動作
3.変形例
【0013】
<1.測定装置の構成>
まず、図1を参照して、本開示の一実施形態に係る測定装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る測定装置10の構成を示す模式的な斜視図である。
【0014】
図1に示すように、測定装置10は、本体部100と、測距センサ120と、複数のレーザモジュール110A,110B,110C,110D(互いを区別しない場合にはまとめてレーザモジュール110とも称する)とを備える。
【0015】
本体部100は、測定装置10の本体に相当し、測距センサ120、及び複数のレーザモジュール110を支持する。具体的には、本体部100は、平板状の筐体にて構成されてもよい。また、本体部100には、測定装置10の動作全般を制御する制御装置、及び測定装置10の各部に電力を供給する電源装置などが搭載されてもよい。例えば、本体部100には、測距センサ120、及び複数のレーザモジュール110に電力を供給する電源回路、測距センサ120、及び複数のレーザモジュール110をそれぞれ制御するロジック回路、及び測距センサ120、及び複数のレーザモジュール110にて取得したセンシング結果を演算する演算回路が搭載されてもよい。
【0016】
複数のレーザモジュール110は、本体部100を構成する平板状の筐体の一主面に互いに離隔して設けられる。具体的には、複数のレーザモジュール110は、本体部100の一主面の多角形(図1では長方形)の各頂点に対応する位置に設けられてもよい。例えば、本体部100が矩形平板状の筐体で構成される場合、複数のレーザモジュール110は、本体部100の一主面の四隅にそれぞれ設けられてもよい。
【0017】
また、複数のレーザモジュール110は、互いの距離を変更可能とするために、所定の方向に移動可能に設けられる。例えば、複数のレーザモジュール110は、複数のレーザモジュール110を頂点とする多角形(図1では長方形)の対角線上を移動可能に設けられてもよい。複数のレーザモジュール110の移動は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によって行われてもよい。
【0018】
複数のレーザモジュール110は、投光素子111及び受光素子112をそれぞれ有するモジュールである。
【0019】
投光素子111は、位相変調されたレーザ光を出射する半導体レーザ素子である。投光素子111は、例えば、青色半導体レーザ、又は赤外線半導体レーザであってもよい。投光素子111から出射されるレーザ光の出射角は、例えば、MEMSミラーなどで制御されてもよい。
【0020】
受光素子112は、投光素子111から出射され、測定対象となる対象物にて反射されたレーザ光を受光するフォトダイオードである。複数のレーザモジュール110は、自身が有する投光素子111から出射され、対象物にて反射されたレーザ光を受光素子112にて受光することができる。受光素子112は、例えば、シリコンフォトダイオード、化合物半導体(InGaAs等)フォトダイオード、又はSPAD(Single Photon Avalanche Diode)であってもよい。また、受光素子112の受光面には、投光素子111から出射されたレーザ光の波長を含む波長帯域を選択的に透過させるバンドパスフィルタが設けられてもよい。
【0021】
受光素子112にて受光されたレーザ光には、対象物の表面の状況が反映されるため、測定装置10は、受光されたレーザ光の強度及び位相から対象物の表面に関する情報を導出することができる。また、測定装置10は、複数のレーザモジュール110の各々で受光されたレーザ光を互いに強め合うように合成することで、対象物の表面分布に関する情報をより高精度かつ高分解能に導出することができる。
【0022】
ただし、複数のレーザモジュール110では、自身の投光素子111以外の投光素子111から出射されたレーザ光の反射光、及び他の自然光が受光素子112で受光されることで、測定のノイズとなってしまう可能性がある。そのため、複数のレーザモジュール110は、自身の投光素子111以外の投光素子111のみからレーザ光を出射した場合の受光強度をあらかじめ測定し、該受光強度をバックグラウンドノイズとして測定結果から差し引いてもよい。これによれば、複数のレーザモジュール110は、あらかじめ測定したバックグラウンドノイズを測定結果から差し引くことで、自身が有する投光素子111から出射されたレーザ光の反射光をより高い精度で測定することができる。
【0023】
測距センサ120は、複数のレーザモジュール110が設けられた本体部100の一主面と同じ面に設けられる。具体的には、測距センサ120は、複数のレーザモジュール110を頂点とする多角形(図1では四角形)の重心に対応する位置に設けられてもよい。
【0024】
測距センサ120は、本体部100と対象物との間の距離を測定するセンサである。例えば、測距センサ120は、垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser: VCSEL)を用いたToF(Time of Flight)センサであってもよい。測距センサ120は、ToFセンサの光源としてVCSELを用いることで、面同士の距離を測定することができる。これによれば、測距センサ120は、より確度の高い距離情報を取得することができる。測距センサ120にて測定された本体部100と対象物との間の距離は、例えば、複数のレーザモジュール110の投光素子111からレーザ光を出射する角度を決定するために用いられる。
【0025】
このような測定装置10では、以下の方法によって対象物の表面のイメージング結果を導出することができる。図2及び図3を参照して、測定装置10による測定の原理について説明する。図2は、測距センサ120にて本体部100と、対象物30との間の距離を測定する様子を示す説明図である。図3は、レーザモジュール110の各々から測定点20にレーザ光を出射すると共に、測定点20にて反射されたレーザ光をレーザモジュール110でそれぞれ受光する様子を示す説明図である。
【0026】
まず、図2に示すように、測距センサ120によって測定対象となる対象物30と本体部100との間の距離Lが測定される。具体的には、測距センサ120は、対象物30に照射した光が対象物30で反射して戻ってくるまでの時間を計測することで(いわゆるToF方式を用いて)、本体部100と対象物30との間の距離Lを測定する。
【0027】
次に、図3に示すように、対象物30の測定点20に対して、レーザモジュール110A,110Bの各々から互いに同期して位相変調されたレーザ光が出射される。なお、測定点20は、レーザモジュール110A,110Bの間の中点から本体部100の主面の法線方向に延在する直線と、該中点及び測定点20を結ぶ直線とがなす角θが1度よりも小さくなるように選択される。
【0028】
対象物30の測定点20に対して出射されたレーザ光は、測定点20にて反射され、レーザ光を出射したレーザモジュール110A,110Bにてそれぞれ受光される。レーザモジュール110A,110Bの各々の受光素子112の測定値V(t),V(t)は、レーザモジュール110A,110Bの間の遅延時間τで位相差を補正すると、例えば、以下の数式1及び数式2にて表される。
【0029】
【数1】
【0030】
数式1及び数式2において、e,eは、レーザモジュール110A,110Bにてそれぞれ受光されたレーザ光の強度を表し、exp部分は、レーザ光の位相部分を表す。また、tは時間、νは振動数である。レーザモジュール110A,110Bにてそれぞれ受光されたレーザ光の位相差を補正する遅延時間τは、レーザモジュール110A,110Bの間の距離D、及び上述した角θを用いてτ=2D・(tanθ)/cと表すことができる。遅延時間τによる位相差の補正は、レーザモジュール110A,110Bにてそれぞれ受光されたレーザ光を互いに強め合うように合成するために行われる。
【0031】
さらに、上記のV(t),V(t)の積を取ることで、レーザモジュール110A,110Bの相関関数r12(D)を導出することができる。相関関数r12(D)を導出することで、レーザモジュール110A,110Bの各々の受光素子112の測定値V(t),V(t)は、互いに合成される。導出された相関関数r12(D)を下記の数式3に示す。λは、レーザモジュール110A,110Bから出射されるレーザ光の波長である。また、θ<1°であるため、tanθ=θと近似することが可能である。
【0032】
【数2】
【0033】
レーザモジュール110A,110Bにてそれぞれ受光されたレーザ光の強度e,eは、測定点20における対象物30の表面分布による散乱又は減衰の影響を受けている。そこで、測定点20における対象物30の表面分布をF(θ)とすると、数式3を逆フーリエ変換することで、測定点20における対象物30の表面分布F(θ)を下記の数式4に示すように導出することができる。なお、Dλ=D/λである。
【0034】
【数3】
【0035】
対象物30の表面分布F(θ)は、対象物30の表面形状の関数であると考えられるため、測定装置10は、表面分布F(θ)を導出することで、対象物30の表面をイメージングすることが可能である。
【0036】
上記の数式4では、対象物30の表面分布F(θ)は、Dλについての積分によって導出されるため、対象物30の表面分布F(θ)の分解能は、Dλの逆数であるλ/Dとなる。例えば、レーザモジュール110A,110Bの投光素子111が波長450nmの青色レーザ光を出射する青色半導体レーザ素子であり、かつレーザモジュール110A,110Bの間の距離が15cmである場合(λ=450nm、D=15cm)、測定装置10は、理想的には150nmの分解能で対象物30の表面分布F(θ)を測定することが可能である。
【0037】
また、上述したように、レーザモジュール110A,110Bは、互いの距離Dが可変となるように設けられる。したがって、測定装置10は、レーザモジュール110A,110Bの間の距離Dを制御することで、測定対象である対象物30に対する分解能を制御することが可能である。
【0038】
さらに、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る測定装置10の内部構成について説明する。図4は、本実施形態に係る測定装置10の内部構成を示すブロック図である。図5は、測定に用いる複数のレーザモジュール110A,110B,110C,110Dの組み合わせを示す模式図である。
【0039】
図4に示すように、測定装置10は、機能構成として、測距センサ120と、投光素子111及び受光素子112を有する複数のレーザモジュール110と、制御部131と、演算部132とを備える。測距センサ120、及び複数のレーザモジュール110については、図1を参照して説明したとおりであるため、ここでの説明は省略する。
【0040】
制御部131は、複数のレーザモジュール110の各々の投光素子111からのレーザ光の出射を制御するロジック回路である。制御部131は、複数のレーザモジュール110の各々の投光素子111から出射されるレーザ光の位相、及びレーザ光の出射タイミングを制御してもよい。例えば、制御部131は、同期して位相変調されたレーザ光を同一の測定点にタイミングを合わせて出射するように、複数のレーザモジュール110の各々の投光素子111を制御してもよい。
【0041】
また、制御部131は、測距センサ120にて測定された本体部100と対象物30との距離に基づいて、複数のレーザモジュール110の各々の投光素子111からレーザ光を出射される測定点20を設定してもよい。例えば、制御部131は、レーザ光を出射する複数のレーザモジュール110の間の中点を通り、本体部100の主面の法線方向に延在する直線からの角度が1度よりも小さくなるように測定点20を設定してもよい。
【0042】
演算部132は、複数のレーザモジュール110の各々の受光素子112にて受光されたレーザ光の測定値に基づいて、測定点20における対象物30の表面分布を導出する演算回路である。演算部132は、上述したように、複数のレーザモジュール110の各々の受光素子112にて受光されたレーザ光を位相補正して合成し、逆フーリエ変換することで、測定点20における対象物30の表面分布を導出してもよい。
【0043】
さらに、制御部131及び演算部132は、レーザ光を出射する測定点20を変更することで、より広範囲の対象物30の表面分布を導出してもよい。このとき、測定点20にレーザ光を出射するレーザモジュール110の組み合わせは、測定点20ごとに都度変更されてもよい。具体的には、まず、制御部131は、レーザ光を出射する測定点20を選択する。次に、制御部131は、測定点20にレーザ光を出射するレーザモジュール110の組み合わせを選択し、選択した組み合わせのレーザモジュール110の投光素子111から出射されるレーザ光の出射角、位相変調、及び出射タイミングを制御する。その後、演算部132は、測定点20で反射された後、レーザモジュール110の受光素子112にて受光されたレーザ光を位相補正して合成し、逆フーリエ変換することで、測定点20における対象物30の表面分布を導出する。制御部131及び演算部132は、測定点20を変更しながら対象物30の表面分布の測定を順次行うことで、対象物30の表面分布をより広い範囲でマッピングすることができる。
【0044】
図5に示すように、測定装置10が4つのレーザモジュール110A,110B,110C,110Dを備える場合、制御部131及び演算部132は、4つのレーザモジュール110A,110B,110C,110Dから2つのレーザモジュールの組み合わせを選択することで、6つの相関関数r12,r13,r23,r14,r24,r34を導出することができる。
【0045】
このとき、測定装置10は、レーザモジュール110A,110Bによる測定(相関関数r12)と、レーザモジュール110C,110Dによる測定(相関関数r34)とを同時に行うことができる。同様に、測定装置10は、レーザモジュール110A,110Cによる測定(相関関数r13)と、レーザモジュール110B,110Dによる測定(相関関数r24)とを同時に行うことができる。さらに、測定装置10は、レーザモジュール110B,110Cによる測定(相関関数r23)と、レーザモジュール110A,110Dによる測定(相関関数r14)とを同時に行うことができる。
【0046】
すなわち、測定装置10は、N個のレーザモジュール110を備える場合、N×(N-1)/2個の測定点20の表面分布をN×(N-1)/4回の測定で導出することができる。これによれば、測定装置10は、導出した測定点20の表面分布をマッピングすることで、より広い範囲の対象物30のイメージング結果を導出することが可能である。また、測定装置10は、より多くのレーザモジュール110を備えることで、より広い範囲の対象物30のイメージング結果をより高速で導出することが可能である。
【0047】
<2.測定装置の動作>
続いて、図6及び図7を参照して、本実施形態に係る測定装置10の動作について説明する。図6は、本実施形態に係る測定装置10の第1の動作例の流れを示すフローチャート図である。図7は、本実施形態に係る測定装置10の第2の動作例の流れを示すフローチャート図である。
【0048】
(第1の動作例)
第1の動作例は、測定装置10からレーザ光が出射される角度を変更することで、対象物30の表面にレーザ光が出射される測定点20を変更する動作例である。
【0049】
図6に示すように、まず、測定装置10は、ユーザにて設定された分解能に応じて、レーザモジュール110の各々を移動させる(S101)。具体的には、測定装置10は、レーザモジュール110の各々を移動させることで、ユーザにて設定された分解能を達成するようにレーザモジュール110の各々の間の距離を変動させる。
【0050】
次に、測定装置10は、対象物30までの垂直距離を測定する(S102)。例えば、測定装置10は、ToF方式の測距センサ120を用いることで、本体部100の主面に垂直な方向での本体部100と対象物30との間の距離を測定してもよい。
【0051】
続いて、測定装置10は、レーザモジュール110からレーザ光を出射する角度θを設定する(S103)。具体的には、測定装置10は、本体部100と対象物30との間の距離を用いて、レーザ光を出射するレーザモジュール110の間の中間点からレーザ光が出射される測定点20への角度θが1°よりも小さくなるように測定点20及び角度θを設定する。
【0052】
その後、測定装置10は、レーザモジュール110の各々の投光素子111からレーザ光を測定点20に出射することで、測定を実行する(S104)。次に、測定装置10は、測定点20で反射したレーザ光の受光信号を合成して、逆フーリエ変換(逆FFT)を実行する(S105)。具体的には、測定装置10は、測定点20で反射したレーザ光をレーザモジュール110の各々の受光素子112で受光し、位相差補正した上で受光信号の相関関数を導出する。さらに、測定装置10は、導出した相関関数を逆フーリエ変換する。これにより、測定装置10は、θ方向の対象物30の表面分布F(θ)を導出することができる(S106)。
【0053】
次に、測定装置10は、レーザモジュール110の各々からレーザ光を出射する角度θをdθ変更する(S107)。具体的には、測定装置10は、レーザ光を出射するレーザモジュール110の間の中間点からレーザ光が出射される測定点20への角度θをdθ変更することで、レーザ光が出射される測定点20を変更する。また、測定装置10は、変更したレーザ光を出射する角度θが最大値(1°)に到達したか否かを判断する(S108)。
【0054】
角度θが最大値に到達していない場合(S108/No)、測定装置10は、ステップS104~S107の動作を再度実行することで、θ方向の対象物30の表面分布F(θ)を導出する。一方、角度θが最大値に到達した場合(S108/Yes)、測定装置10は、導出された対象物30の表面分布F(θ)をマッピングすることで、対象物30のイメージング結果を導出する(S109)。
【0055】
以上の第1の動作例によれば、測定装置10は、レーザ光が出射される角度θを変更しながら対象物30の表面を走査することで、対象物30の表面のイメージング結果を導出することができる。
【0056】
(第2の動作例)
第2の動作例は、ユーザが測定装置10を動かすことで、対象物30の表面にレーザ光が出射される測定点20を変更する動作例である。
【0057】
図7に示すステップS201~S206の動作は、図6に示すステップS101~S106の動作と実質的に同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0058】
θ方向の対象物30の表面分布F(θ)を導出した(S206)後、測定装置10は、加速度を検知したか否かを判断する(S207)。加速度が検知された場合(S207/Yes)、測定装置10は、ユーザによって測定装置10が対象物30の表面に沿って動かされたと判断し、ステップS204~S206の動作を再度実行することで、θ方向の対象物30の表面分布F(θ)を導出する。なお、このときのレーザ光の出射角θは、ステップS203で設定された角度θのままであってもよい。
【0059】
一方、加速度が検知されなかった場合(S207/No)、測定装置10は、ユーザによる対象物30の測定が終了したと判断して、導出された対象物30の表面分布F(θ)をマッピングすることで、対象物30のイメージング結果を導出する(S208)。
【0060】
以上の第2の動作例によれば、測定装置10は、レーザ光が出射される角度θを固定し、ユーザの操作によって対象物30の表面を走査することで、対象物30の表面のイメージング結果を導出することができる。
【0061】
<3.変形例>
続いて、以下では、本実施形態に係る測定装置10の第1~第7の変形例について説明する。
【0062】
(第1の変形例)
図8及び図9を参照して、第1の変形例について説明する。第1の変形例は、本体部100上のレーザモジュール110の配置及び移動方向のバリエーションを示す変形例である。図8及び図9は、レーザモジュール110の配置及び移動方向の一例を示す模式的な斜視図である。
【0063】
図8に示すように、レーザモジュール110A,110B,110C,110Dは、本体部100の矩形形状の主面の各辺に対応する位置に設けられてもよい。このとき、レーザモジュール110A,110B,110C,110Dは、本体部100の主面の中心に向かう方向に移動可能に設けられてもよい。
【0064】
図9に示すように、レーザモジュール110A,110B,110C,110Dは、本体部100の矩形形状の主面の四隅に対応する位置に設けられてもよい。このとき、レーザモジュール110A,110B,110C,110Dは、本体部100の主面の各辺に沿って移動可能に設けられてもよい。
【0065】
ただし、レーザモジュール110A,110B,110C,110Dの移動方向については、特に限定されない。レーザモジュール110A,110B,110C,110Dの移動方向は、本体部100の矩形形状の主面の対角線方向、各辺が対向する方向、各辺に沿った方向、又は任意の円の円周方向のいずれであってもよい。測定装置10は、レーザモジュール110A,110B,110C,110Dの各々の間の距離を任意に変更することで、対象物30のイメージング結果の分解能を動的に変化させることが可能である。
【0066】
(第2の変形例)
図10を参照して、第2の変形例について説明する。第2の変形例は、測定装置10における演算を測定装置10の外部のクラウド上で行うバリエーションを示す変形例である。図10は、測定装置10の内部構成の変形例を示すブロック図である。
【0067】
図10に示すように、測定装置10は、図4で示した演算部132に替えて通信部133を備えてもよい。
【0068】
通信部133は、ネットワーク50を介してクラウド70とデータを送受信する。通信部133は、例えば、ネットワーク50に接続するための通信デバイスなどで構成された通信インタフェースであってもよい。通信部133は、例えば、有線若しくは無線LAN(Local Area Network)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カードなどであってもよく、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は各種通信用のモデムなどであってもよい。ネットワーク50は、有線又は無線によって接続されたネットワークであり、例えば、インターネット通信網、家庭内LAN、赤外線通信網、ラジオ波通信網、又は衛星通信網などであってもよい。
【0069】
クラウド70は、演算処理能力に優れたコンピュータ群で構成されるネットワークサービスである。クラウド70は、例えば、図4で示す演算部132で実行された演算を代わりに実行することが可能である。具体的には、クラウド70は、通信部133から送信された受光素子112で受光したレーザ光の測定値を位相差補正して合成し、逆フーリエ変換することで、測定点20における対象物30の表面分布を導出することができる。導出された測定点20における対象物30の表面分布は、測定装置10の通信部133に送信される。
【0070】
これによれば、測定装置10は、逆フーリエ変換などの処理負荷が高い演算をクラウド70に実行させることで、測定装置10の内部での処理負荷を軽減することが可能である。
【0071】
(第3の変形例)
第3の変形例は、レーザモジュール110の各々の投光素子111からのレーザ光の出射角が固定されたバリエーションを示す変形例である。
【0072】
測定装置10は、レーザモジュール110の各々の投光素子111からのレーザ光の出射角が固定された場合でも対象物30の表面のイメージング結果を導出することが可能である。例えば、測定装置10は、測定時の本体部100と対象物30との間の距離を規定することで、レーザモジュール110の各々の投光素子111から出射されたレーザ光を同一の測定点20に照射することができる。これによれば、測定装置10は、同様に、測定点20における対象物30の表面分布を導出することができる。
【0073】
(第4の変形例)
図11図13を参照して、第4の変形例について説明する。第4の変形例は、測定装置10がロボットに搭載されたバリエーションを示す変形例である。図11は、測定装置10が搭載された人型ロボット1の一例を示す模式図である。図12は、測定装置10が搭載されたペット型ロボット2の一例を示す模式図である。図13は、測定装置10が搭載された移動体3の一例を示す模式図である。
【0074】
図11に示すように、人型ロボット1では、測定装置10は、人型ロボット1の頭部の目に対応する位置に設けられたレーザモジュール110にてレーザ光の出射及び受光を行うことで、人型ロボット1の周囲の環境のイメージング結果を取得してもよい。図12に示すように、ペット型ロボット2では、測定装置10は、ペット型ロボット2の頭部の目に対応する位置に設けられたレーザモジュール110にてレーザ光の出射及び受光を行うことで、ペット型ロボット2の周囲の環境のイメージング結果を取得してもよい。図13に示すように、移動体3では、測定装置10は、移動体3の側面全周に所定の間隔で設けられたレーザモジュール110にてレーザ光の出射及び受光を行うことで、移動体3の周囲の環境のイメージング結果を取得してもよい。移動体3は、例えば、走行した領域のゴミ等を回収するロボット掃除機である。
【0075】
測定装置10は、これらのロボット(人型ロボット1、ペット型ロボット2、又は移動体3など)に搭載されることで、ロボットの周囲の環境のイメージング結果を取得することができる。これによれば、これらのロボットは、測定装置10で導出されたイメージング結果を用いて、動作を判断及び制御することが可能である。
【0076】
(第5の変形例)
図14を参照して、第5の変形例について説明する。第5の変形例は、測定装置10を可搬型の検出装置として構成した変形例である。図14は、可搬型の検出装置として構成された測定装置10Aの概要を示す模式的な斜視図である。
【0077】
図14に示すように、測定装置10Aは、本体部100と、脚部140A,140B,140C,140Dとを備える。本体部100の対象物30と対向する面(図示されない裏面)には、図1で示したように、複数のレーザモジュール110、及び測距センサ120が設けられる。測定装置10Aは、測距センサ120にて本体部100と対象物30との距離を測定した後、測定点20に複数のレーザモジュール110からレーザ光を出射することで、測定点20のイメージング結果を取得することができる。
【0078】
脚部140A,140B,140C,140Dは、延在方向に伸縮可能な棒状の構造部材である。脚部140A,140B,140C,140Dは、例えば、本体部100の側面に設けられてもよい。脚部140A,140B,140C,140Dは、対象物30の上で本体部100を支持することで、本体部100と対象物30との間の距離を固定することができる。これによれば、測定装置10Aは、複数のレーザモジュール110から出射されるレーザ光をより高い精度で測定点20に照射することができるため、より理想に近い空間分解能を得ることが可能である。
【0079】
(第6の変形例)
図15を参照して、第6の変形例について説明する。第6の変形例は、測定装置10を設置型の検出装置として構成した変形例である。図15は、設置型の検出装置として構成された測定装置10Bの概要を示す模式的な斜視図である。
【0080】
図15に示すように、測定装置10Bは、複数のレーザモジュール110、及び測距センサ120が設けられた本体部100と、設置部150とを備える。
【0081】
設置部150は、平板状の構造部材である。設置部150の表面には本体部100が設けられ、設置部150の表面と反対の裏面には測定装置10Bを壁又は扉などに取り付けるためのフック、ピン、又は接着シートなどが設けられる。測定装置10Bは、室内に設置されることで、室内に存在する対象物30をモニターすることができる。また、室内に設置された測定装置10Bは、既知である部屋の壁間の距離を基準とすることで、対象物30までの距離をより高い精度で測定することができる。したがって、測定装置10Bは、複数のレーザモジュール110から出射されるレーザ光をより高い精度で対象物30に照射することができるため、より理想に近い空間分解能を得ることが可能である。
【0082】
(第7の変形例)
図16及び図17を参照して、第7の変形例について説明する。第7の変形例は、撮像装置の画素Pxをレーザモジュール110として機能させる変形例である。図16は、測定装置10Cの断面構成を示す縦断面図である。図17は、測定装置10Cの平面構成を示す上面図である。
【0083】
図16に示すように、測定装置10Cは、光電変換部171及び画素分離部173を含む半導体基板170と、絶縁層174と、導波路161と、回折格子162と、マイクロレンズ163とを備える。
【0084】
半導体基板170は、例えば、シリコン基板である。半導体基板170には、画素Pxごとに画素分離部173で離隔された光電変換部171が設けられる。光電変換部171は、入射光を電荷に変換するフォトダイオードである。光電変換部171は、第1導電型(例えばp型)にドーピングされた半導体基板170の内部に第2導電型(例えばn型)領域を形成することで構成される。画素分離部173は、画素Px間に設けられた絶縁層であり、半導体基板170の厚み方向に延在することで、画素Pxの各々に設けられた光電変換部171を電気的に分離する。画素分離部173は、二酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、又は酸窒化シリコン(SiON)などの絶縁性材料で構成されてもよい。
【0085】
絶縁層174は、透明な絶縁性材料で構成され、半導体基板170の受光面側に設けられる。絶縁層174は、二酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、又は酸窒化シリコン(SiON)などで構成されてもよい。
【0086】
導波路161は、レーザ光Lbを各画素に伝搬させる光路として機能する。導波路161は、絶縁層174及びマイクロレンズ163よりも屈折率が高い材料で構成され、レーザ光Lbを導波路161の境界面で全反射させることで、レーザ光Lbをほぼ損失なく画素Pxの各々に伝搬させることができる。導波路161は、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、又は酸化タンタル(Ta)などの高屈折率材料で構成されてもよい。
【0087】
例えば、図17に示すように、導波路161は、光源181にて発生したレーザ光Lbを画素Pxの各々に伝搬する。具体的には、導波路161は、光源181から画素Pxの列方向(図17に正対して縦方向)に延在した後、行方向(図17に正対して横方向)に延在する各行の画素Pxに分岐される。これによれば、導波路161は、マッハツェンダー等の光スイッチ182にて各行の画素Pxへのレーザ光の分岐を制御することで、行単位で画素Pxの各々にレーザ光を伝搬させることができる。
【0088】
回折格子162は、導波路161の進行方向と直交する方向に延在する直線状の凹凸で構成された格子である。回折格子162は、導波路161と同じ材料で構成されてもよい。回折格子162は、導波路161を進行するレーザ光Lbを散乱させることで、導波路161の外部に出射される出射光Lx及び参照光Ldを発生させることができる。なお、出射光Lx及び参照光Ldの出射角は、レーザ光Lbの波長、及び回折格子162のピッチで制御することが可能である。出射光Lx及び参照光Ldの出射角は、1°未満となるように制御されることが望ましい。
【0089】
マイクロレンズ163は、測定装置10Cに入射する光を集光するレンズであり、画素Pxごとに導波路161の上に設けられる。マイクロレンズ163は、二酸化シリコン(SiO)などの無機材料で構成されてもよく、アクリル樹脂などの有機材料で構成されてもよい。
【0090】
ここで、導波路161からマイクロレンズ163側に出射された出射光Lxは、マイクロレンズ163を介して測定対象である対象物30に出射される。対象物30に出射された出射光Lxは、対象物30の表面で反射されて反射光Lrとなる。反射光Lrは、導波路161から半導体基板170側に出射された参照光Ldと干渉した後、光電変換部171にて電荷に変換される。
【0091】
ここで、反射光Lrの位相と参照光Ldの位相とが揃った場合、反射光Lr及び参照光Ldは、絶縁層174を通過時に互い強め合うように干渉する。したがって、光電変換部171は、反射光Lr及び参照光Ldが干渉した光を光電変換することで、上記の数式3で表される相関関数r12(D)に対応した電荷信号を得ることが可能である。
【0092】
反射光Lrの位相と参照光Ldの位相とが揃う場合としては、導波路161から対象物30の表面までの距離が出射光Lx(すなわち、レーザ光Lb)の波長の整数倍である場合が考えられる。よって、測定装置10Cは、対象物30までの距離を適切に制御することで、図1に示す測定装置10と同様に対象物30の表面分布のイメージング結果を取得することができる。
【0093】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0094】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0095】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
位相変調されたレーザ光を対象物に出射する投光素子と、前記対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光素子とを有し、互いに離隔された位置に設けられた少なくとも2以上のレーザモジュールと、
前記レーザモジュールの各々の前記受光素子で受光された前記レーザ光の受光信号を、位相差を補正して合成することで、前記対象物の表面のイメージング結果を導出する演算部と、
を備える、測定装置。
(2)
前記レーザモジュールの各々は、互いの距離を変更可能に設けられる、前記(1)に記載の測定装置。
(3)
前記対象物までの距離を測定する測距センサをさらに備え、
前記レーザモジュールの各々から出射される前記レーザ光の出射面の法線方向からの出射角は、前記測距センサにて測定された前記対象物までの距離に基づいて制御される、前記(1)又は(2)に記載の測定装置。
(4)
前記測距センサは、光源として垂直共振器型面発光レーザを用いるToFセンサである、前記(3)に記載の測定装置。
(5)
前記レーザ光の前記出射角は、1度よりも小さい、前記(3)又は(4)に記載の測定装置。
(6)
前記レーザモジュールの各々、及び前記測距センサは、同一の面上に設けられる、前記(3)~(5)のいずれか一項に記載の測定装置。
(7)
前記演算部は、任意の2つの前記レーザモジュールからなる対ごとに前記受光信号を合成することで、前記イメージング結果を導出する、前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の測定装置。
(8)
前記演算部は、合成された前記受光信号を逆フーリエ変換することで、前記イメージング結果として前記対象物の表面分布を示す関数を導出する、前記(7)に記載の測定装置。
(9)
前記レーザモジュールの各々は、前記レーザ光の出射角を変化させることで、前記対象物の前記表面の領域を走査し、
前記演算部は、前記対象物の前記領域の前記イメージング結果を導出する、前記(1)~(8)のいずれか一項に記載の測定装置。
(10)
前記受光素子の受光面には、前記レーザ光の発振波長を含む波長帯域を選択的に透過させるバンドパスフィルタがさらに設けられる、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の測定装置。
(11)
前記投光素子は、半導体レーザである、前記(1)~(10)のいずれか一項に記載の測定装置。
(12)
前記受光素子は、フォトダイオードである、前記(1)~(11)のいずれか一項に記載の測定装置。
(13)
前記投光素子は、前記受光素子の受光面に設けられた導波路と、前記導波路を伝搬する前記レーザ光の一部を前記受光素子と反対側に出射させる回折格子とを含み、
前記受光素子は、前記対象物にて反射された前記レーザ光の一部と、前記回折格子で前記受光素子側に出射された前記レーザ光の一部との干渉光を受光する、前記(1)~(12)のいずれか一項に記載の測定装置。
(14)
前記対象物と前記投光素子との間の距離は、前記レーザ光の発振波長の整数倍に制御される、前記(13)に記載の測定装置。
(15)
携帯端末、移動体、又はロボット装置に搭載される、前記(1)~(14)のいずれか一項に記載の測定装置。
(16)
位相変調されたレーザ光を対象物に出射する投光素子と、前記対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光素子とを有し、互いに離隔された位置に設けられた少なくとも2以上のレーザモジュールと、
前記レーザモジュールの各々の前記受光素子で受光された前記レーザ光の受光信号を、位相差を補正して合成することで、前記対象物の表面のイメージング結果を導出する演算部と、
を備える、測定システム。
【符号の説明】
【0096】
10 測定装置
20 測定点
30 対象物
50 ネットワーク
70 クラウド
100 本体部
110,110A,110B,110C,110D レーザモジュール
111 投光素子
112 受光素子
120 測距センサ
131 制御部
132 演算部
133 通信部
140A,140B,140C,140D 脚部
150 設置部
161 導波路
162 回折格子
163 マイクロレンズ
170 半導体基板
171 光電変換部
173 画素分離部
174 絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17