IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ビルシステムの特許一覧

<>
  • 特開-安全作業システム 図1
  • 特開-安全作業システム 図2
  • 特開-安全作業システム 図3
  • 特開-安全作業システム 図4
  • 特開-安全作業システム 図5
  • 特開-安全作業システム 図6
  • 特開-安全作業システム 図7
  • 特開-安全作業システム 図8
  • 特開-安全作業システム 図9
  • 特開-安全作業システム 図10
  • 特開-安全作業システム 図11
  • 特開-安全作業システム 図12
  • 特開-安全作業システム 図13
  • 特開-安全作業システム 図14
  • 特開-安全作業システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100375
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】安全作業システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/00 20060101AFI20240719BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20240719BHJP
   B66B 9/187 20060101ALI20240719BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B66B7/00 J
B66B5/00 D
B66B9/187 Z
B66B3/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004331
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
【テーマコード(参考)】
3F301
3F303
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3F301AA13
3F301CA07
3F301DD00
3F303BA01
3F303CB30
3F303CB31
3F303DC34
3F304BA22
3F305DA04
3F305DA21
(57)【要約】
【課題】 据付工事中の昇降路内に進入する作業員の安全を確保しつつ、昇降路内に設置した作業システムの作業効率低下を抑制できる、安全作業システムを提供する。
【解決手段】 昇降路内を昇降しながら施工作業を実施する作業システムの移動または作業を、人検出システムの出力に応じて制御する安全作業システムであって、人検出システムは、出入口から昇降路内に進入する人を検出する人検出センサと、作業システムと通信する無線機器と、を備え、作業システムは、昇降路内での移動に利用する移動機構と、昇降路内での作業に利用する作業機構と、人検出システムと通信する無線機器と、移動機構と作業機構を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、人検出センサの出力に基づいて検出した人の位置情報と、位置センサの出力に基づいて検出した作業システムの位置情報と、の位置関係に基づき、移動機構と作業機構の制御を制限する安全作業システム。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降しながら施工作業を実施する作業システムの移動または作業を、人検出システムの出力に応じて制御する安全作業システムであって、
前記人検出システムは、
出入口から昇降路内に進入する人を検出する人検出センサと、
前記作業システムと通信する無線機器と、を備え、
前記作業システムは、
前記昇降路内での移動に利用する移動機構と、
前記昇降路内での作業に利用する作業機構と、
前記人検出システムと通信する無線機器と、
前記移動機構と前記作業機構を制御する制御装置と、を備え、
該制御装置は、
前記人検出センサの出力に基づいて検出した前記人の位置情報と、
位置センサの出力に基づいて検出した前記作業システムの位置情報と、
の位置関係に基づき、前記移動機構と前記作業機構の制御を制限することを特徴とする安全作業システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記移動機構の制御として、動作停止、移動速度制限、動作可能のいずれかを選択し、
前記作業機構の制御として、動作停止、動作可能のいずれかを選択することを特徴とする、請求項1に記載の安全作業システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記作業システムの位置が前記人の位置より高い場合は、前記移動機構と前記作業機構の制御として動作停止を選択し、
前記作業システムの位置が前記人の位置より低い場合は、前記作業システムと前記人との距離に応じて、前記移動機構の制御として移動速度制限または動作可能を選択することを特徴とする、請求項2に記載の安全作業システム。
【請求項4】
前記位置センサは、
前記作業システムに設置されたレーザ距離計、または、前記移動機構に取り付けられた回転計測計であることを特徴とする、請求項1に記載の安全作業システム。
【請求項5】
前記人検出システムは、前記出入口に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の安全作業システム。
【請求項6】
前記人検出システムは、前記制御装置からの指令に応じて、前記人に警告する通知装置を備えることを特徴とする、請求項1に記載の安全作業システム。
【請求項7】
前記通知装置は、音声発生装置、または、表示装置であることを特徴とする、請求項6に記載の安全作業システム。
【請求項8】
前記人検出センサは、人感センサ、レーザ距離センサ、赤外線距離センサ、超音波センサ、インターロックスイッチのいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の安全作業システム。
【請求項9】
前記人検出センサは、画像を撮影するカメラであることを特徴とする、請求項1に記載の安全作業システム。
【請求項10】
前記人検出システムは、人がいない状態の背景画像と、撮影した画像と比較することで、人が存在するエリアを検出し、該エリアが進入禁止エリアと重なる場合に、撮影した人を前記昇降路内に進入する人として検出することを特徴とする、請求項9に記載の安全作業システム。
【請求項11】
前記カメラは、画像と共に距離情報を取得するデプスカメラ、または、距離情報を取得する距離センサと併用されるカメラであり、
前記人が存在するエリアに関連付けられる距離情報に基づき、前記人の位置情報を判断することを特徴とする、請求項10に記載の安全作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの昇降路内での施工作業に作業システムを用いる場合に、作業員の安全確保と、作業システムの作業効率維持を両立させる、安全作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ据付工事中の昇降路内には、作業床等の重量物が昇降路上部から揚重されている。従来は、昇降路内での壁への穴あけや部材(アンカーなど)の固定といった施工作業を作業床に乗った作業員が実施していたが、作業員が作業床から転落したり、落下物や装置と接触したりする等の事故リスクがあるため、近年は、昇降路内での施工作業の一部を、作業床上に設置した機械やロボットに自動実施させる作業システムが普及しつつある。
【0003】
この種の作業システムに関し、特許文献1には、昇降路の壁面と穴開け工具の軸の交わる角度を検出し、検出角度に基づいて穴開け工具の傾きを調整することで、壁面に対して垂直に穴あけを実施する、エレベータ据付装置が記載されている。そして、このエレベータ据付装置により、昇降路の壁面形状の測定データに影響されることなく、昇降路の壁面に垂直にブラケットを固定するための穴を形成できることが記載されている。
【0004】
特許文献1のような作業システムの利用により、昇降路内での作業員による作業をある程度削減できるが、作業システムでは対応できない施工作業も存在するため、作業システムを利用する場合であっても作業員が昇降路内に進入しなければならない状況も残っている。そのため、作業システムの制御時には、高さ方向に複数存在する出入口の任意の出入口から昇降路に進入しうる作業員の安全に対する配慮が必要となる。
【0005】
また、昇降路内の作業員の安全に配慮した従来技術として、特許文献2が知られている。例えば、同文献の要約書には、課題として「ピット内に保守員などが居るとき、これを自動的に検出して、乗りかごの運転を規制し、釣り合い重りの下部などがピット内の保守員などに接触しないようにする。」と記載されており、解決手段として、「人検出センサ(焦電型赤外線センサ、透過型光電センサ、反射型光電センサ、超音波センサなどのセンサ)4によって、ピット16内に保守員18が居るかどうかを直接、検出させ、ピット16内に保守員18が居るときには、乗りかご2が最上階に行かないように、乗りかご2の運転を規制して、釣り合い重り4がピット16内に入り込まないようにする。」と記載されている。すなわち、特許文献2には、人検出センサを用いて、乗りかごの上下動を運転制御するエレベータの運転制御システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-7095号公報
【特許文献2】特開2013-220895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の運転制御システムは、エレベータ据付後の利用を想定したシステムであるため、作業システムを用いたエレベータ据付工事中に、作業システムによる穴あけ作業に伴い壁の破片が落下したり、ドアのない出入口から作業員が昇降路内を随時覗き込んだりするような、多様な状況での作業員の安全確保については言及がない。作業員が昇降路へ進入したときに、エレベータ据付工事中の作業システムを全停止することで作業員の安全を確保する方法も考えられるが、この場合、作業システムの作業効率が大幅に悪化するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、据付工事中の昇降路内に進入する作業員の安全を確保しつつ、昇降路内に設置した作業システムの作業効率低下を抑制できる、安全作業システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の安全作業システムは、昇降路内を昇降しながら施工作業を実施する作業システムの移動または作業を、人検出システムの出力に応じて制御する安全作業システムであって、前記人検出システムは、出入口から昇降路内に進入する人を検出する人検出センサと、前記作業システムと通信する無線機器と、を備え、前記作業システムは、前記昇降路内での移動に利用する移動機構と、前記昇降路内での作業に利用する作業機構と、前記人検出システムと通信する無線機器と、前記移動機構と前記作業機構を制御する制御装置と、を備え、該制御装置は、前記人検出センサの出力に基づいて検出した前記人の位置情報と、位置センサの出力に基づいて検出した前記作業システムの位置情報と、の位置関係に基づき、前記移動機構と前記作業機構の制御を制限する安全作業システムとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の安全作業システムによれば、据付工事中のエレベータ昇降路内に進入する作業員の安全を確保しつつ、昇降路内に設置した作業システムの作業効率低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の安全作業システムを設置した昇降路の斜視図
図2】実施例1の安全作業システムを設置した昇降路の側面図
図3】実施例1の作業システムの外観斜視図
図4】実施例1の人検出システムを設置した出入口の正面図
図5】実施例1の安全作業システムの機能ブロック図
図6図5の作業項目記録部に記録される作業指令の一例
図7図5の作業計画部で実行される処理の制御フローチャート
図8図5の動作制限部で実行される処理の制御フローチャート
図9図5の揚重機制御部で実行される処理の制御フローチャート
図10図5の作業機構制御部で実行される処理の制御フローチャート
図11】実施例2の人検出システムを設置した出入口の正面図
図12】実施例2の人検出センサで取得した画像
図13図11の人検出演算装置で実行される処理の制御フローチャート
図14】実施例3の人検出システムを設置した出入口の正面図
図15図14の人検出演算装置で実行される処理の制御フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明に係る安全作業システムの実施例を説明する。
【実施例0013】
図1から図10を用いて、本発明に係る安全作業システム100の実施例1を説明する。
【0014】
<安全作業システム100>
まず、図1図2を用いて、本実施例の安全作業システム100と昇降路1の関係を概説する。この安全作業システム100は、昇降路1内を昇降しながら与えられた施工作業を自動で実施する作業システム2と、昇降路1への人の出入を検出する人検出システム3を備える。図1は、本実施例の安全作業システム100を設置した昇降路1の斜視図であり、図2は、図1の側面図である。なお、両図では、5階建ビルの昇降路1を例示しているが、任意のN階層(Nは自然数)のビルの昇降路1に、本発明の安全作業システム100を設置できることは言うまでもない。
【0015】
図1に示すように、昇降路1内の左右には、一対のレール11(11a、11b)が垂直に取り付けられる。また、昇降路1内には、レール11にガイドされて昇降する、作業システム2が設置される。さらに、昇降路1の前側には、各階の床高さに合わせて複数の出入口12が設けられており、各出入口の上部前側には人検出システム3が取り付けられている。なお、エレベータ据付工事中の状態を示す図1においては、各々の出入口12にドアが設けられていないため、作業員は開放された出入口12を通り、昇降路1内に自由に進入することができる。
【0016】
図2は、主に、本実施例で用いる各種パラメータを説明するための側面図である。ここに示すように、Hは、昇降路1の底部から作業システム2までの高さである。HからHは、昇降路1の底部から各階の出入口12までの高さである。PからPは、各階の出入口12の近傍の作業員の検出状態を示す情報であり、ONは作業員を検知した状態を示し、OFFは作業員を検知しない状態を示す。DからDは、作業システム2から各階の出入口12までの距離である。作業システム2より下階の出入口12との距離Dは、原則として負数で示されるが、近傍に作業員がいない出入口12との距離Dは、作業システム2より下階の出入口12であっても、+∞で示される。従って、図2の例では、作業員がいる1階との距離DはH-Hで演算される所定の負数であり、作業員がいる5階との距離DはH-Hで演算される所定の正数であるのに対し、作業員がいない2階から4階の各階に対応する、距離Dから距離D(図示せず)は何れも+∞である。
【0017】
以下では、作業システム2と人検出システム3を概説した後、両システムの連携により実現される、本実施例の安全作業システム100について詳細に説明することとする。
【0018】
<作業システム2>
次に、上記した図1図2に加え、図3の外観斜視図も用いて、作業システム2の主要部を説明する。図1から図3に示すように、作業システム2は、一対の揚重機21(21a、21b)、一対のロープ22(22a、22b)、作業床23、作業機構24、ツール置き場25、部材置き場26、位置センサ27、制御装置28、無線機器29を備える。以下、各々の詳細を順次説明する。
【0019】
揚重機21は、昇降路1の上端部に設置され、ロープ22を巻き取るウィンチであり、本実施例の移動機構の要部である。なお、作業システム2の昇降時には、揚重機21aと揚重機21bの回転制御を同期させることで、ロープ22a、22bの巻き取り量を略等しく制御する。
【0020】
ロープ22は、上端側が揚重機21に巻き付けられ、下端側が作業床23と連結されたワイヤロープである。従って、左右の揚重機21が所望方向に同期回転することにより、ロープ22に揚重された作業床23が水平を維持したまま昇降路1を上下に移動する。
【0021】
作業床23は、ガイドシュー(図示せず)を利用してレール11にならって上下移動する、鋼板などの高剛性床である。この作業床23の上面には、図3に示すように、作業機構24、ツール置き場25、部材置き場26、制御装置28、無線機器29が配置されており、下面には、位置センサ27が配置されている。
【0022】
作業機構24は、昇降路1内での施工作業を実施する多関節ロボットであり、アーム先端に適切なハンドツールを装着することで所望の施工作業を実施することができる。例えば、昇降路1の内壁に穴をあけたい場合は、作業機構24のアーム先端にドリルツール24aを装着して施工作業を実施する。なお、以下では、作業機構24として、任意のM個(Mは自然数)の関節を備えた多関節ロボットを利用するものとして説明する。
【0023】
ツール置き場25は、作業機構24のアーム先端に装着する各種ハンドツールの保管場所である。作業床23上にツール置き場25を設けたことで、作業機構24はアーム先端に装着するハンドツールを作業毎に随時変更しながら施工作業を実施することができる。
【0024】
部材置き場26には、作業機構24が実施する施工作業に必要な部材(例えば、アンカーなど)の保管場所である。作業床23上に部材置き場26を設けたことで、作業機構24は作業に必要な部材を随時取得しながら施工作業を実施することができる。
【0025】
位置センサ27は、昇降路1の底部から作業床23までの高さHを検出するためのセンサである。この位置センサ27は、例えばレーザ距離計であり、作業床23の下面に下側を向けて取り付けることで、作業床23の高さHを検出することができる。
【0026】
制御装置28は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の記憶装置、通信装置などのハードウェアを備えたコンピュータであり、人検出システム3、揚重機21、作業機構24、および、位置センサ27と、有線または無線で通信可能に接続されている。この制御装置28は、人検出システム3と位置センサ27から取得した情報に基づいて、揚重機21と作業機構24を制御するが、この制御の詳細は後述することとする。なお、この制御装置28では、演算装置が所定のプログラムを実行することで、後述する各機能部を実現するが、以下では、この種のコンピュータ分野における周知技術に関する記載は適宜省略する。
【0027】
無線機器29は、制御装置28と人検出システム3の無線通信に利用する装置であり、具体的には、WiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線通信規格に従った無線通信機器である。
【0028】
<人検出システム3>
次に、図4を用いて、人検出システム3を概説する。図1図2に示したように、各階の出入口12の前側上部には、人検出システム3が設置されている。図4は、各階に設置した人検出システム3の正面図である。ここに示すように、本実施例の人検出システム3は、人検出センサ31と、無線機器32と、通知装置33を備えている。以下、各々の詳細を順次説明する。
【0029】
人検出センサ31は、所定距離内にいる作業員を検出するためのセンサであり、例えば焦電型赤外線センサである。人検出センサ31として焦電型赤外線センサを用いる場合、昇降路1内に進入しようとする作業員が出入口12に近づき、人検出センサ31の検出範囲31a内に入ると、作業員が発する赤外線を検出した人検出センサ31の検出値Aが徐々に大きくなるため、人検出センサ31は作業員の接近を検出することができる。一方、作業員が出入口12から遠ざかると、人検出センサ31の検出値Aが徐々に小さくなるため、人検出センサ31は作業員の離脱を検出することができる。なお、以下では、n階の人検出センサ31の検出値をAと称することとする。
【0030】
無線機器32は、人検出システム3が作業システム2と無線通信を行う際に利用する装置であり、具体的には、WiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線通信規格に従った無線通信機器である。
【0031】
通知装置33は、出入口12近傍の作業員に所望の情報を通知するための装置であり、具体的には、スピーカなどの音声発生装置や、ディスプレイやLEDなどの表示装置、あるいは、その両方で構成される。
【0032】
<作業システム2と人検出システム3の連携>
上記した作業システム2と人検出システム3を連携させた、本実施例の安全作業システム100では、ある階の人検出システム3の人検出センサ31の検出値は、その人検出システム3の設置階を特定する情報(例えば、階床情報やIDなど)と共に、作業システム2の制御装置28に無線送信される。そして、制御装置28は、人検出システム3と位置センサ27から取得した情報に基づいて、揚重機21と作業機構24を制御するとともに、作業員に通知すべき情報を通知指令の形態で人検出システム3に無線送信する。制御装置28より通知指令を受信した通知装置33は、所望の通知情報を作業員に通知する。以下では、この一連の処理を主導する制御装置28の詳細構造と、制御装置28で実行される動作フローを詳細に説明する。
【0033】
<<制御装置28の機能ブロック図>>
図5は、本実施例の安全作業システム100の要部の機能ブロック図であり、制御装置28が内蔵する各種機能部と、それら機能部と有線通信または無線通信を介して接続される構成を示したものである。ここに示すように、制御装置28は、作業項目記録部28a、作業計画部28b、昇降路情報記録部28c、人検出情報取得部28d、距離情報取得部28e、動作制限部28f、揚重機制御部28g、作業機構制御部28hを備えており、各階の人検出システム3、揚重機21、作業機構24、および、位置センサ27と、通信可能に接続されている。なお、3Aは1階の出入口12に設置した人検出システム、3Bは2階の出入口12に設置した人検出システム、3NはN階の出入口12に設置した人検出システムである。以下、各機能部を順次説明する。
【0034】
作業項目記録部28aは、図6に例示する作業データベースが予め記録された機能部である。このデータベースには、作業番号毎に、揚重機21への指令を生成するために必要な情報と、作業機構24への指令を生成するために必要な情報が登録されている。揚重機21の関連情報は、例えば、作業を実施する際の揚重機21の目標高さHrefや、その高さへ移動する際の移動速度Vref等である。また、作業機構24の関連情報は、例えば、施工作業を実施する際のツール動作の有無や、その施工作業実施時の目標関節角度Jref等である。なお、作業機構24がM個の関節を有する多関節ロボットであれば、各関節に所望の姿勢を採らせることができるよう、作業番号毎の目標関節角度Jfefとして、M関節分の目標関節角度J1ref、J2ref、・・・、JMrefが登録されている。
【0035】
図6の例では、作業番号iについては、揚重機21の関連情報である、目標高さHa、移動速度Vaが登録されているが、作業機構24の関連情報である、ツール動作、目標関節角度の登録がない。情報の無登録は、指令生成の必要が無いことを示すため、作業番号iに関しては、揚重機21への指令のみが生成され、作業機構24への指令は生成されない。一方、作業番号i+1、i+2に関しては、揚重機21の関連情報が登録されておらず、作業機構24の関連情報のみが登録されているため、作業機構24への指令のみが生成され、揚重機21への指令が生成されないことになる。
【0036】
作業計画部28bは、作業項目記録部28aの作業データベースに登録されている作業番号順に、揚重機21への指令を生成する際に利用する作業床23の目標高さHrefと移動速度Vrefを更新するとともに、作業機構24への指令を生成する際に利用するツール動作と目標関節角度Jrefを更新する機能部である。この詳細は図7を用いて後述する。
【0037】
昇降路情報記録部28cは、各階の出入口12について、昇降路1の底部からの高さH(n=1~N、図1図2の例ではN=5)を記録した機能部である。
【0038】
人検出情報取得部28dは、無線機器29を介して、各出入口の人検出システム3の検出値Aを受信し、その検出値Aに基づいて各出入口での人検出状態Pを判断する機能部である。受信した検出値Aが所定の基準値Ath以上である場合、人検出情報取得部28dは、当該階の作業員が昇降路1内に進入しようとしていると判断し、当該階の人検出状態PをONに設定する。一方、受信した検出値Aが所定の基準値Ath未満である場合、人検出情報取得部28dは、当該階の出入口12の近傍には作業員がいないと判断し、当該階の人検出状態PをOFFに設定する。
【0039】
距離情報取得部28eは、位置センサ27が計測した、昇降路1の底部からの作業床23の高さHを取得する機能部である。
【0040】
動作制限部28fは、昇降路情報記録部28cから取得した各出入口の高さH、人検出情報取得部28dから取得した各出入口の人検出状態P、および、距離情報取得部28eから取得した作業床23の高さHを用いて、昇降路1に進入する作業員と作業システム2の位置関係を判断し、判断結果に応じて、揚重機21と作業機構24に課す動作制限を選択する機能部である。以下では、揚重機21(ウィンチ)に課す動作制限状態をLと称し、作業機構24(ロボット)に課す動作制限状態をLと称する。この詳細は図8を用いて後述する。
【0041】
揚重機制御部28gは、作業計画部28bで更新された作業床23の目標高さHrefおよび移動速度Vrefと、動作制限部28fで設定された揚重機21の動作制限状態Lに基づいて、揚重機21を制御するための指令を生成する機能部である。この詳細は図9を用いて後述する。
【0042】
作業機構制御部28hは、作業計画部28bで更新された作業機構24のツール動作および目標関節角度Jrefと、動作制限部28fで設定された作業機構24の動作制限状態Lに基づいて、作業機構24を制御するための指令を生成する機能部である。この詳細は図10を用いて後述する。
【0043】
以上で概説した、作業計画部28b、動作制限部28f、揚重機制御部28g、作業機構制御部28hによる詳細処理について、図7から図10を用いて説明する。
【0044】
<<作業計画部28bの動作>>
図7を用いて、作業計画部28bにおける動作フローを説明する。
【0045】
ステップS11では、作業計画部28bは、現在の作業番号の作業が完了しているかを確認する。例えば、図6の作業番号iのように、作業内容が揚重機21の移動であれば、距離情報取得部28eから取得した高さHが、Href-Hoff≦H≦Href+Hoffを満足すれば移動完了状態であると判断する。なお、Hrefは当該作業番号に対応する目標高さであり、Hoffは揚重機位置の許容誤差である。また、図6の作業番号i+1、i+2のように、作業内容が作業機構24の施工作業であれば、作業機構24から取得した各関節の回転角度Jm(m=1~M)の各々が、Jmref-Jmoff≦Jm≦Jmref+Jmoffを満足すれば作業完了状態であると判断する。なお、Jmrefは当該作業番号に対応する目標関節角度であり、Jmoffは各関節角度の許容誤差である。そして、現在の作業が完了している場合は、ステップS12に遷移し、完了していない場合はフローを終了する。
【0046】
ステップS12では、作業計画部28bは、作業番号を次の番号に更新し、ステップS13に遷移する。
【0047】
ステップS13では、作業計画部28bは、次の作業番号の作業内容に揚重機制御に関する情報が存在するかを確認する。そして、図6の作業番号iのように、揚重機制御に関する情報が存在すれば、ステップS14に遷移し、無い場合はステップS15に遷移する。
【0048】
ステップS14では、作業計画部28bは、作業データベースに登録されている情報に従って、作業床23の目標高さHrefと移動速度Vrefを更新し、ステップS15に遷移する。
【0049】
ステップS15では、作業計画部28bは、次の作業番号の作業内容に作業機構制御に関する情報が存在するかを確認する。そして、図6の作業番号i+1、i+2のように、作業機構制御に関する情報が存在すれば、ステップS16に遷移し、無い場合はフローを終了する。
【0050】
ステップS16では、作業計画部28bは、作業データベースに登録されている情報に従って、作業機構24の各関節の目標関節角度Jmrefとハンドツールの動作状態を更新し、フローを終了する。
【0051】
<<動作制限部28fの動作>>
図8を用いて、動作制限部28fにおける動作フローを説明する。
【0052】
ステップS21では、動作制限部28fは、人検出情報取得部28dから各階の人検出状態Pを取得し、ステップS22に遷移する。
【0053】
ステップS22では、動作制限部28fは、距離情報取得部28eから作業床23の高さHを取得し、ステップS23に遷移する。
【0054】
ステップS23では、動作制限部28fは、昇降路1に進入しようとする作業員と作業システム2の最短距離Dminを算出した後、ステップS24に遷移する。最短距離Dminは次のように算出する。まず、動作制限部28fは、ステップS21で取得した各階の人検出状態Pに従って、作業システム2と各階の作業員との距離D(n=1~N)を算出する。具体的には、動作制限部28fは、人検出状態PがONの階では、H-Hを距離Dに設定し、人検出状態PがOFFの階では、+∞をDに設定する(図2参照)。そして、各階に対応する距離Dを全て算出した後、動作制限部28fは、算出したDの最小値を最短距離Dminに設定する。
【0055】
なお、求めた最短距離Dminが+∞以外の値であれば、昇降路1に進入する作業員のいる可能性があるため、動作制限部28fは、人検出状態PがONである階床の人検出システム3に対し、作業員への通知指令を送信する。そして、通知指令を受信した人検出システム3の通知装置33が作業員に警告を発すれば、作業員は作業システム2が稼働中であることに気付き、昇降路1から離れると考えられるため、作業員の安全を確保することができる。
【0056】
ステップS24では、動作制限部28fは、Dmin≦0を満足するか判断する。そして、要件を満足する場合、すなわち、作業員が作業システム2の下側にいる場合は、ステップS25に遷移し、要件を満足しない場合、すなわち、作業員が作業システム2の上側にいる場合は、ステップS26に遷移する。
【0057】
ステップS25では、動作制限部28fは、揚重されている作業システム2の落下の可能性や施工作業時に発生した破片物や部材の落下の可能性があるため、作業員にとって危険な状態と判断し、揚重機21の動作制限状態Lと、作業機構24の動作制限状態Lを、共に停止状態に設定し、フローを終了する。
【0058】
一方、ステップS26では、動作制限部28fは、0<Dmin≦Daを満足するか判断する。そして、要件を満足する場合、すなわち、作業員が作業システム2の上側におり、かつ、作業員との距離が近い場合は、ステップS27に遷移し、満足しない場合、すなわち、作業員が作業システム2の上側におり、かつ、作業員との距離がある程度遠い場合は、ステップS28に遷移する。
【0059】
ステップS27では、動作制限部28fは、上昇時に作業システム2が作業員に接触する危険性があると判断し、揚重機21の動作制限状態Lを停止状態に設定するとともに、施工作業時に作業員の危険はないと判断し、作業機構24の動作制限状態Lを動作可能状態に設定して、フローを終了する。
【0060】
一方、ステップS28では、動作制限部28fは、Da<Dmin≦Dbを満足するか判断する。そして、要件を満足する場合、すなわち、作業員が作業システム2の上側におり、かつ、作業員との距離がある程度離れている場合は、ステップS29に遷移し、満足しない場合、すなわち、作業員との距離が相当に遠い場合は、ステップS2aに遷移する。
【0061】
ステップS29では、動作制限部28fは、速度の遅い上昇時であれば作業システム2が作業員に接触する危険性が存在しないが、速度の速い上昇時であれば作業システム2が作業員に接触する危険性が存在すると判断し、揚重機21の動作制限状態Lを速度制限状態に設定するとともに、作業機構24の動作制限状態Lを動作可能状態に設定して、フローを終了する。
【0062】
一方、ステップS2aでは、動作制限部28fは、作業システム2と作業員が相当に離れているため、作業システム2に起因する作業員の危険は存在しないと判断し、揚重機21の動作制限状態Lと作業機構24の動作制限状態Lを共に動作可能状態に設定して、フローを終了する。
【0063】
<<揚重機制御部28gの動作>>
図9を用いて、揚重機制御部28gにおける動作フローを説明する。
【0064】
ステップS31では、揚重機制御部28gは、動作制限部28fで設定された揚重機21の動作制限状態Lを取得して、ステップS32に遷移する。
【0065】
ステップS32では、揚重機制御部28gは、揚重機21の動作制限状態Lが停止状態に設定されているか判断する。そして、要件を満たす場合は、ステップS33に遷移し、要件を満たさない場合は、ステップS34に遷移する。
【0066】
ステップS33では、揚重機制御部28gは、揚重機21に対する制御出力をOFFにして、揚重機21を停止する。その後、動作フローを終了する。これにより、作業システム2の昇降が停止する。
【0067】
ステップS34では、揚重機制御部28gは、動作制限状態Lが速度制限状態に設定されているか判断する。そして、要件を満たす場合は、ステップS35に遷移し、要件を満たさない場合は、ステップS36に遷移する。
【0068】
ステップS35では、揚重機制御部28gは、目標高さを、作業項目記録部28aに登録されている目標高さHrefに更新するとともに、移動速度を、作業項目記録部28aに登録されている移動速度Vrefではなく、より遅い制限速度Vsに更新し、ステップS37に遷移する。なお、制限速度Vsは自由に設定可能であり、一定でも、作業システム2と作業員の距離Dminに依存してもよい。たとえば、Dminが正で大きい場合はVsの大きさも大きく、Dminが正で小さい場合はVsの大きさも小さくなるというように、距離Dminに依存して可変でもよい。
【0069】
一方、ステップS36では、揚重機制御部28gは、目標高さと移動速度をそれぞれ作業項目記録部28aに登録されているHref、Vrefに更新し、ステップS37に遷移する。
【0070】
ステップS37では、揚重機制御部28gは、揚重機21に対する制御出力をONにして、ステップS35またはステップS36で更新された目標高さと移動速度に応じた指令を生成し、作業床23の高さHが、Href-Hoff≦H≦Href+Hoffを満足するまで揚重機21を制御してから、動作フローを終了する。
【0071】
<<作業機構制御部28hの動作>>
図10を用いて、作業機構制御部28hにおける動作フローを説明する。
【0072】
ステップS41では、作業機構制御部28hは、動作制限部28fで設定された作業機構24の動作制限状態Lを取得して、ステップS42に遷移する。
【0073】
ステップS42では、作業機構制御部28hは、作業機構24の動作制限状態Lが停止状態に設定されているか判断する。そして、要件を満たす場合は、ステップS43に遷移し、要件を満たさない場合は、ステップS44に遷移する。
【0074】
ステップS43では、作業機構制御部28hは、作業機構24に対する制御出力をOFFに設定して、作業機構24の動作を停止する。例えば、ドリルツール24aを利用中の場合、ドリルによる打設や回転が停止される。
【0075】
ステップS44では、作業機構制御部28hは、作業機構24の各関節の目標角度を作業項目記録部28aに登録されているJrefに更新する。また、作業ツールの動作状態ON、OFFを、作業項目記録部28aに登録された内容にしたがって更新して、ステップS45に遷移する。
【0076】
ステップS45では、作業機構制御部28hは、作業機構24に対する制御出力をONにして、ステップS44で更新された目標関節角度に応じた指令を生成し、作業機構24の各関節角度JmがJmref-Jmoff≦Jm≦Jmref+Jmoffを満足するまで、作業機構24の各関節を制御するとともに、作業機構24の先端に取り付けられたハンドツールの動作状態がONの場合はハンドツールを動作させ、OFFの場合は停止させてから、動作フローを終了する。
【0077】
<本実施例の効果>
上述の処理により、据付工事中の昇降路1に進入する作業員の位置と、作業床23の位置の関係に基づき、揚重機21の動作制限状態Lと作業機構の動作制限状態Lを設定し、揚重機21と作業機構24の動作を制限することができる。従って、昇降路内に進入する作業員の安全を確保しつつ、作業システムの作業効率低下を抑制することができる。
【0078】
なお、位置センサ27としてレーザ距離計を昇降路1の下側に向けて作業床23の位置を計測したが、昇降路1の上部に向けて上部までの距離を計測し、昇降路1の全長から距離を減算することで作業床23の位置を計測してもよい。さらに、レーザ距離計ではなく、揚重機21の回転軸にエンコーダ(回転計測計)を設置して、計測した回転量や回転角度を用いて作業床23の高さの位置を算出してもよい。
【0079】
人検出システム3における人検出センサ31は、赤外線測距センサ、超音波センサ、を用いてもよい。例えば、レーザ距離センサを用いる場合、作業員が昇降路1に進入する際に、レーザ距離センサで取得される距離が短くなる。従って、人検出情報取得部28dにおいては、各出入口12におけるレーザ距離センサの検出値B(n=1~N)があらかじめ設定されている基準値Bth以下である場合、作業員が昇降路1内に進入したと判断し、人検出状態PをONに設定する。判断方法は異なるが、同様に基準値との比較で人検出状態Pを判断できる。その他にも、レーザカーテンのようなインターロック装置で人検出システム3を構成してもよい。
【実施例0080】
次に、図11から図13を用いて、本発明に係る安全作業システム100の実施例2を説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0081】
実施例1では、人検出システム3の人検出センサ31として焦電型赤外線センサ等を用いたが、本実施例では、人検出センサ31としてカメラを用いるため、それに伴う種々の変更がある。以下、本実施例の詳細を説明する。
【0082】
本実施例の人検出システム3を図11に示す。この人検出システム3は、人検出センサ31、無線機器32、通知装置33、および、人検出演算装置34で構成される。検出センサ31は画像を撮影するカメラであり、撮影方向を下側に向けて出入口12の上部に設置されている。
【0083】
検出センサ3(カメラ)により撮影される画像Pの一例を図12に示す。図には、出入口12の端Eが図示されており、端Eより上側が昇降路1内、下側が出入口12近傍の床面である。人検出演算装置34では、画像Pにおいて作業員が存在する画像エリアを検出し、その作業員検出エリアA2と進入禁止エリアA1の重複を検知することで作業員の昇降路1内への進入を検出する。
【0084】
人検出演算装置34における動作フローを図13に示す。
【0085】
まず、ステップS51では、人検出演算装置34は、検出センサ31が撮影した出入口12の画像Pを取得して、ステップS52に遷移する。
【0086】
ステップS52では、人検出演算装置34は、画像Pにおける作業員検出エリアA2を検出し、ステップS53に遷移する。ここでは、例えば、背景差分が用いられる。作業員が存在しない場合の背景画像P’をあらかじめ記録しておき、撮影した画像Pと背景画像P’を画素毎に比較して、各画素の色を表すRGB値が互いに異なっている画素の集合を作業員検出エリアA2として抽出する。撮影した画像Pと背景画像P’が同じ場合は、作業員検出エリアA2が無いと判断される。
【0087】
ステップS53では、人検出演算装置34は、進入禁止エリアA1と作業員検出エリアA2の位置を比較し、進入禁止エリアA1と作業員検出エリアA2が重複するかを判断する。そして、重複する場合は、ステップS54に遷移し、重複しない場合は、ステップS55に遷移する。
【0088】
ステップS54では、人検出演算装置34は、昇降路1内に作業員が進入したと判断し、当該階の出入口12における人検出状態PをONに設定してステップS56に遷移する。
【0089】
一方、ステップS55では、人検出演算装置34は、昇降路1内に作業員が進入しないと判断し、当該階の出入口12における人検出状態PをOFFに設定してステップS56に遷移する。
【0090】
ステップS56では、人検出演算装置34は、設定した人検出状態Pを、無線機器32、29を介して制御装置28に送信し、動作フローが終了する。
【0091】
従って、本実施例の制御装置28の人検出情報取得部28dでは、実施例1と異なり、人検出状態Pが受信されるため、実施例1のように基準値による人検出状態Pを設定する必要はない。
【0092】
上述の処理により、人検出システム3で人検出状態Pを設定し、制御装置28に送信する方法でも同等以上の効果で課題を解決できる。
【実施例0093】
次に、図14図15を用いて、本発明に係る安全作業システム100の実施例3を説明する。なお、上記実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0094】
上記実施例の安全作業システム100では、各出入口に人検出システム3を設置することで、各出入口から昇降路1内に進入する作業員を検出した。従って、出入口12と同数の人検出システム3を設置する必要があった。これに対し、本実施例の安全作業システム100は、複数の出入口12毎に1つの人検出システム3を設置し、その1つの人検出システムで各出入口から昇降路1内に進入する作業員を個別に検出する。以下、人検出システム3の設置数を大幅に削減できる、本実施例の安全作業システム100の詳細を説明する。
【0095】
図14に示す本実施例の人検出センサ31は、画像Pを撮影でき、かつ、距離情報も取得できるデプスカメラ、若しくは、カメラと距離センサを併用した複合センサである。この人検出センサ31は、昇降路1の内側、かつ、出入口12の下部に、上向きで取り付けられる。従って、この人検出センサ31は、同システムを取り付けた階床の出入口12、および、上方複数階分の出入口12から昇降路1内に進入する作業員を個別に検出することができる。なお、デプスカメラや距離センサの実用範囲には制限があるため、一つの人検出システム3で担当可能な範囲は3階床程度である。例えば、1階に設置した人検出システム3では、1~3階の出入口12から昇降路1に進入する作業員を検出できるが、4階以上の出入口12から進入する作業員を検出できないため、昇降路1の高さに応じて適当な数の人検出システム3を配置すれば良い。
【0096】
人検出センサ31で撮影される画像Pは、前後方向や左右方向の逆転があるものの、基本的には実施例2の図12と同じであるが、本実施例の人検出センサ31は上側を向いているため、出入口12の端Eは各階の天井と昇降路1の境界に相当する。人検出演算装置34では、画像Pにおいて作業員が存在する画像エリアを検出し、その検出エリアと図12に示す進入禁止エリアA1を比較することで作業員の昇降路1内への進入を検出し、さらに、作業員検出エリアA2の距離情報を用いて、何階の出入口12への進入であるかを判断する。
【0097】
本実施例の人検出演算装置34における動作フローを図15に示す。以後、実施例2で説明した図13の動作フローとの共通点の説明を適宜省略しつつ、1階の出入口12に取り付けられた人検出システム3の動作フローについて述べる。
【0098】
本実施例のステップS53では、人検出演算装置34は、人検出センサ31で撮影した画像Pの進入禁止エリアA1と作業員検出エリアA2が重複するかを判断する。そして、重複する場合は、1~3階の何れかの出入口12に作業員が存在すると判断し、ステップS61に遷移する。一方、重複しない場合は、1~3階の何れの出入口12にも作業員が存在しないと判断し、ステップS55に遷移する。
【0099】
本実施例のステップS55では、人検出演算装置34は、1~3階の人検出状態である、P、P、Pを全てOFFに設定して、ステップS56に遷移する。
【0100】
一方、ステップS61では、人検出演算装置34は、制御装置28の昇降路情報記録部28cから、担当する1階から3階の出入口12の高さ情報H、H、H、および、1つ上の階床である4階の出入口12の高さ情報Hを取得して、ステップS62に遷移する。
【0101】
ステップS62では、人検出演算装置34は、まず、作業員検出エリアA2のデプス情報に基づいて作業員と人検出センサ31の距離D’を算出する。ここでは、作業員検出エリアA2を形成する各画素のデプス情報の平均値を、作業員と人検出センサ31の距離D’として扱う。そして、0≦D’<H-Hを満足する場合、作業員は1階の出入口12にいると判断する。同様に、H-H≦D’<H-Hを満足する場合、作業員は2階の出入口12にいると判断し、H-H≦D’<H-Hを満足する場合、作業員は3階の出入口12にいると判断する。このようにして、作業員が存在する出入口12を特定すると、ステップS54に遷移する。
【0102】
ステップS54では、人検出演算装置34は、作業員がいると特定した出入口12の人検出状態PをONに設定するとともに、その他の出入口12の人検出状態PをOFFに設定し、ステップS68に遷移する。例えば、1階の出入口12に作業員がいると判断された場合、PをON、PとPをOFFに設定する。
【0103】
以上の処理により、1個の人検出システム3で複数階の出入口12における作業員の昇降路1内への進入を検出することでも、同等以上の効果で課題を解決できる。今回は1個の人検出システム3で3階床の出入口12を対応する条件で説明したが、これに限定されるわけではない。また、本実施例の人検出システム3は、必ずしも出入口12に設置する必要は無く、例えば、昇降路1の底部に設置しても良い。
【符号の説明】
【0104】
100 安全作業システム
1 昇降路
11 レール
12 出入口
2 作業システム
21 揚重機
22 ロープ
23 作業床
24 作業機構
24a ドリルツール
25 ツール置き場
26 部材置き場
27 位置センサ
28 制御装置
28a 作業項目記録部
28b 作業計画部
28c 昇降路情報記録部
28d 人検出情報取得部
28e 距離情報取得部
28f 動作制限部
28g 揚重機制御部
28h 作業機構制御部
29 無線機器
3 人検出システム
31 人検出センサ
32 無線機器
33 通知装置
34 人検出演算装置
P 撮影した画像
P’ 背景画像
E 出入口の端
A1 進入禁止エリア
A2 作業員検出エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15