(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100377
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 69/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A01D69/00 303
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004334
(22)【出願日】2023-01-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】山本 次郎
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
【テーマコード(参考)】
2B076
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076DB08
2B076DC01
(57)【要約】
【課題】低速走行している走行装置の走行速度を微速に増減速することができるコンバインを提供する。
【解決手段】エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、操縦部(5)のフロントパネル(10)に無段変速装置(30)を操作する第1変速レバー(23)を設け、操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(30)を操作する第2変速レバー(16)を設け、第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度よりも低速にする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の左側後方に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の右側後方に作業者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、
前記操縦部(5)のフロントパネル(10)に無段変速装置(30)を操作する第1変速レバー(23)を設け、
前記操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(30)を操作する第2変速レバー(16)を設け、
前記第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、前記第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度よりも低速にすることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、前記第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度に予め設定した減速率(C、D)を乗算した走行速度にする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1変速レバー(23)をフロントパネル(10)に形成されたポート(13D)に接続された遠隔操作用のリモコン(20)に設けた請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記操縦部(5)から作業者が降車している場合には、前記第1変速レバー(23)の操作を有効にして、前記第2変速レバー(16)の操作を無効にし、
前記操縦部(5)に作業者が搭乗している場合には、前記第2変速レバー(16)の操作を有効にして、前記第1変速レバー(23)の操作を無効にする請求項3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記無段変速装置(30)と刈取装置(3)の間の伝動経路に設けられた刈取クラッチ(32)の接続が解除された場合には、前記第1変速レバー(23)の操作が有効にし、
前記刈取クラッチ(32)の接続された場合には、前記第1変速レバー(23)の操作が規制する請求項4記載のコンバイン。
【請求項6】
前記無段変速装置(30)と走行装置(2)の間の伝動経路に無段変速装置(30)の出力回転を増減速するトランスミッション(31)を設け、
該トランスミッション(31)に左右一対のブレーキ機構(31A)と左右一対の逆回転機構(31B)を設け、
前記第1変速レバー(23)が急操作された場合には、前記ブレーキ機構(31A)を作動させて走行装置(2)の走行を停止させる請求項5記載のコンバイン。
【請求項7】
前記リモコン(20)にスイッチ(25)を設け、
前記スイッチ(25)を操作してブレーキ機構(31A)又は逆回転機構(31B)を作動させて走行装置(2)の旋回方式を切替える請求項6記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置の走行速度の増減速を行う無段変速装置を備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいて、圃場や穀稈の状態に合わせて変速レバーを操作して走行装置の走行速度の増減速を行う技術が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、変速レバーを操作して低速走行している走行装置の走行速度を微速に増減速することができないために、例えば、穀粒排出時に排出オーガと搬送装置の荷台の位置合わせが容易に行なうことができず、また、畦超え時には走行装置が急加速に伴う反動による大きな衝撃が機体に加わる恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、低速走行している走行装置の走行速度を微速に増減速することができるコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の左側後方に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の右側後方に作業者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、前記操縦部(5)のフロントパネル(10)に無段変速装置(30)を操作する第1変速レバー(23)を設け、前記操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(30)を操作する第2変速レバー(16)を設け、前記第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、前記第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度よりも低速にすることを特徴とするコンバインである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、前記第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度に予め設定した減速率(C、D)を乗算した走行速度にする請求項1記載のコンバインである。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記第1変速レバー(23)をフロントパネル(10)に形成されたポート(13D)に接続された遠隔操作用のリモコン(20)に設けた請求項1又は2記載のコンバインである。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記操縦部(5)から作業者が降車している場合には、前記第1変速レバー(23)の操作を有効にして、前記第2変速レバー(16)の操作を無効にし、前記操縦部(5)に作業者が搭乗している場合には、前記第2変速レバー(16)の操作を有効にして、前記第1変速レバー(23)の操作を無効にする請求項3記載のコンバインである。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記無段変速装置(30)と刈取装置(3)の間の伝動経路に設けられた刈取クラッチ(32)の接続が解除された場合には、前記第1変速レバー(23)の操作が有効にし、前記刈取クラッチ(32)の接続された場合には、前記第1変速レバー(23)の操作が規制する請求項4記載のコンバインである。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記無段変速装置(30)と走行装置(2)の間の伝動経路に無段変速装置(30)の出力回転を増減速するトランスミッション(31)を設け、該トランスミッション(31)に左右一対のブレーキ機構(31A)と左右一対の逆回転機構(31B)を設け、前記第1変速レバー(23)が急操作された場合には、前記ブレーキ機構(31A)を作動させて走行装置(2)の走行を停止させる請求項5記載のコンバインである。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記リモコン(20)にスイッチ(25)を設け、前記スイッチ(25)を操作してブレーキ機構(31A)又は逆回転機構(31B)を作動させて走行装置(2)の旋回方式を切替える請求項6記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、操縦部(5)のフロントパネル(10)に無段変速装置(30)を操作する第1変速レバー(23)を設け、操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(30)を操作する第2変速レバー(16)を設け、第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度よりも低速にするので、第1変速レバー(23)を操作して走行装置(2)の走行速度を微速に増減速することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度に予め設定した減速率(C、D)を乗算した走行速度にするので、コンバインに貯留した穀粒をトラック等の荷台に排出する場合やコンバインの畦超を行う場合に、第1変速レバー(23)を操作して走行装置(2)の走行速度を微速走行させることができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、第1変速レバー(23)をフロントパネル(10)に形成されたポート(13D)に接続された遠隔操作用のリモコン(20)に設けたので、コンバインから所定の距離離れて、作業者が第1変速レバー(23)の操作を安全に行うことができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明による効果に加えて、操縦部(5)から作業者が降車している場合には、第1変速レバー(23)の操作を有効にして、第2変速レバー(16)の操作を無効にし、操縦部(5)に作業者が搭乗している場合には、第2変速レバー(16)の操作を有効にして、第1変速レバー(23)の操作を無効にするので、作業者が第1変速レバー(23)の操作をより安全に行うことができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明による効果に加えて、無段変速装置(30)と刈取装置(3)の間の伝動経路に設けられた刈取クラッチ(32)の接続が解除された場合には、第1変速レバー(23)の操作が有効にし、刈取クラッチ(32)の接続された場合には、第1変速レバー(23)の操作が規制するので、作業者が刈取装置(3)に巻込まれるのを防止することができる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明による効果に加えて、無段変速装置(30)と走行装置(2)の間の伝動経路に無段変速装置(30)の出力回転を増減速するトランスミッション(31)を設け、トランスミッション(31)に左右一対のブレーキ機構(31A)と左右一対の逆回転機構(31B)を設け、第1変速レバー(23)が急操作された場合には、ブレーキ機構(31A)を作動させて走行装置(2)の走行を停止させるので、作業者の意図しない誤操作による走行装置(2)の走行を停止して安全性を高めることができる。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明による効果に加えて、リモコン(20)にスイッチ(25)を設け、スイッチ(25)を操作してブレーキ機構(31A)又は逆回転機構(31B)を作動させて走行装置(2)の旋回方式を切替えるので、圃場の穀稈の植立状態に応じて走行装置(2)の旋回方式を切替えて穀稈の刈取作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図7】主変速レバーで操作される無段変速装置の出力回転の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~3に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0022】
操縦部5の下側には、エンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ(図示省略)によって外部に排出される。
【0023】
操縦部5の操縦席の前方には、フロントパネル10が設けられ、操縦席の左方には、サイドパネル15が設けられている。
【0024】
フロントパネル10の左部には、エンジンのEの出力回転等を表示するタッチパネル式のモニタ11が設けられ、右部には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する操作レバー12が設けられ、モニタ11と操作レバー12の間には、作業者に注意喚起を行うブザー13Aと、後述する無段変速装置30を操作する主変速レバー(請求項の「第2変速レバー」)16と主変速レバー(請求項の「第1変速レバー」)23を切替える切替えスイッチ13Bが設けられ、操作レバー12の後側には、走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ13Cと、遠隔操作用のリモコン20を接続するポート13Dが設けられている。また、フロントパネル10の後部には、操縦部5に搭乗した作業者を感知する感知センサ14が設けられている。なお、操作レバー12の姿勢は、操作レバー12の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ12Sで検出される。
【0025】
サイドパネル15の前部には、無段変速装置30を操作する主変速レバー16が設けられ、主変速レバー16の後側には、無段変速装置30の出力回転を増減速するトランスミッション31を操作する副変速レバー17が設けられ、副変速レバー17の後側には、刈取クラッチ32と脱穀クラッチ33の接続と接続解除を操作する刈脱レバー18が設けられている。
【0026】
主変速レバー16を中立姿勢にした場合には、無段変速装置30の出力回転はゼロになる。主変速レバー16を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速され、前側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速される。また、主変速レバー16を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速され、後側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速される。なお、主変速レバー16の姿勢は、主変速レバー16の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ16Sで検出される。
【0027】
副変速レバー17を後側傾斜姿勢にした場合には、トランスミッション31の出力回転は増減速されない。副変速レバー17を後側傾斜姿勢から前側傾斜姿勢にした場合には、トランスミッション31の出力回転は増速される。なお、副変速レバー17の姿勢は、副変速レバー17の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサで検出される。
【0028】
刈脱レバー18を前側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ32と脱穀クラッチ33の接続は解除される。刈脱レバー18を後側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ32と脱穀クラッチ33が接続される。また、刈脱レバー18を前側傾斜姿勢と後側傾斜姿勢の間に位置する中立姿勢にした場合には、刈取クラッチ32の接続は解除され、脱穀クラッチ33は接続される。なお、刈脱レバー18の姿勢は、刈脱レバー18の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ18Sで検出される。
【0029】
<リモコン>
図4に示すように、リモコン20の上部には、モニタ21が設けられ、モニタ21の下側には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する遠隔操作用の操作レバー22が設けられ、操作レバー22の下側には、無段変速装置30を操作する遠隔操作用の主変速レバー23が設けられている。これにより、グレンタンク7に貯留された穀粒をトラック等の搬送車に排出する場合等に、作業者が操縦部5から降車した後に、リモコン20の操作レバー22を操作してコンバインの旋回操作や主変速レバー23を操作して走行装置2の走行速度を微速走行させることができる。なお、操作レバー22の姿勢は、操作レバー22の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ22Sで検出される。また、リモコン20には、排出オーガの伸縮や旋回を操作するスイッチ(図示省略)が設けられている。
【0030】
モニタ21の上側には、緊急停止時にエンジンEの駆動を停止させる停止スイッチ24が設けられ、操作レバー22と主変速レバー23の間には走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ(請求項の「スイッチ」)25が設けられ、主変速レバー23の下側には遠隔操作中の作業者に注意喚起を行うブザー26が設けられている。これにより、リモコン20等に不具合が発生した場合には緊急停止することができる。
【0031】
旋回スイッチ25が押下しない場合には、走行装置2を大きな半径で緩やかに旋回(マイルドターン)させ、旋回スイッチ25を間欠して押下した場合には、トランスミッション31の後述するブレーキ機構31Aが作動して走行装置2を旋回(ブレーキターン)させ、旋回スイッチ25を継続して押下した場合には、トランスミッション31の後述する逆回転機構31Bが作動して走行装置2を小さな半径で鋭く旋回(スピンターン)させることができる。これにより、圃場面の状態によって旋回方法を切替えて圃場面の凹凸の乱れを抑制することができる。
【0032】
主変速レバー23を中立姿勢にした場合には、無段変速装置30の出力回転はゼロになる。主変速レバー23を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速され、前側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速される。また、主変速レバー23を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速され、後側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速される。なお、主変速レバー23の姿勢は、主変速レバー23の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ23Sで測定される。
【0033】
本実施形態では、フロントパネル10のポート13Dとリモコン20をケーブル(図示省略)で接続しているが無線で接続することもできる。また、本実施形態では、主変速を主変速レバー16と同じく上下方向に延在する操作部を前後方向に操作して無段変速装置30の出力回転の増減速を行うレバー方式にしているが、操作部を周方向に操作して無段変速装置30の出力回転の増減速を行うダイヤル方式や、操作部を複数のスイッチを押下して無段変速装置30の出力回転の増減速を行うスイッチ方式、操作部の感圧スイッチに加わる把持力に応じて無段変速装置30の出力回転の増減速を行うグリップ方式にすることもできる。さらに、本実施形態では、操縦部5から降車した作業者が遠隔操作可能なリモコン20に主変速レバー23を設けているが、フロントパネル10の操作レバー12の近傍に主変速レバー23を設けることもできる。
【0034】
<エンジンの出力回転の伝動図>
図5に示すように、エンジンEの出力回転は、伝動経路L1上に設けられた無段変速装置30に伝動される。無段変速装置30の入力軸35に伝動されたエンジンEの出力回転は、無段変速装置30内で増減速と回転方向の切替えが行われて出力軸36,37に出力される。
【0035】
出力軸36に出力された出力回転はトランスミッション31に伝動されてトランスミッション31内の多段ギヤで増減速されて出力軸38に出力される。
【0036】
また、トランスミッション31内には走行装置2の一側のクローラに出力回転を伝動する出力軸37の回転を停止するブレーキ機構31Aと、走行装置2の一側のクローラに出力回転を伝動する出力軸37の出力回転方向を逆回転させる逆回転機構31Bが設けられている。
【0037】
出力軸38に出力された出力回転は走行装置2に伝動され、左右一対のクローラを回動させる。
【0038】
エンジンEの出力回転は、伝動経路L2上に設けられた脱穀クラッチ33を介して脱穀装置4に伝動される。
【0039】
<無段変速装置>
図6に示すように、無段変速装置30のトラニオン軸40には、扇形ギヤ41が支持され、扇形ギヤ41の外周部に形成されたギヤには、前進用モータ42の出力軸に設けられたギヤ42Aと、後進用モータ43の出力軸に設けられたギヤ43Aが係合している。これにより、主変速レバー16又は主変速レバー23の姿勢に基づいて前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して無段変速装置30のトラニオン軸40を回動してエンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行うことができる。
【0040】
なお、
図6には、無段変速装置30のトラニオン軸40を前進用モータ42と後進用モータ43で回動させる形態を図示しているが、無段変速装置30のトラニオン軸40に径方向に延在するアームを支持し、このアームの外周部に前進用ソレノイドで駆動される前進用シリンダと後進用ソレノイドで駆動される後進用シリンダを連結する形態にすることもできる。
【0041】
<無段変速装置の出力回転>
図7に示すように、無段変速装置30の出力回転は、主変速レバー16を中立姿勢にした場合にはゼロになり、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢にした場合には前進最大出力回転A1[rpm]になり、主変速レバー16を最大後側傾斜姿勢にした場合には後進最大出力回転B1[rpm]になる。一方、無段変速装置30の出力回転は、主変速レバー23を中立姿勢にした場合にはゼロになり、主変速レバー23を最大前側傾斜姿勢にした場合には前進最大出力回転A1[rpm]よりも低速の前進最大出力回転A2[rpm]になり、主変速レバー23を最大後側傾斜姿勢にした場合には後進最大出力回転B1[rpm] よりも低速の後進最大出力回転B2[rpm]になる。
【0042】
作業者は、予めモニタ11を介して最大前側傾斜姿勢時の減速率C(A2/A1×100[%])と、最大後側傾斜姿勢時の減速率D(B2/B1×100[%])を設定することができ、本実形態では、減速率C,Dを30[%]に設定されている。これにより、グレンタンク7に貯留された穀粒をトラック等の搬送車の荷台に排出する場合やコンバインの畦超を行う場合には、操縦部5から降車した作業者が、リモコン20の主変速レバー23を操作して走行装置2の走行速度を微速走行させることができる。また、減速率C,Dは5~50[%]に設定するのが好ましい。
【0043】
<コントローラの接続図>
図8に示すように、コンバインのコントローラ50は、CPU等からなる処理部51と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部52から形成されている。
【0044】
処理部51は、主変速レバー16,23の操作量に基づいて無段変速装置30のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42や後進用モータ43の駆動等を行う。
【0045】
記憶部52は、作業者が予めモニタ11から入力した減速率C,D等が保存されている。
【0046】
コントローラ50の入力側には、操作レバー12の姿勢を検出する角度センサ12Sや主変速レバー16と主変速レバー23を切替える切替えスイッチ13B、走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ13C、操縦部5に搭乗した作業者を感知する感知センサ14、主変速レバー16の姿勢を検出する角度センサ16S、操作レバー22の姿勢を検出する角度センサ22S、主変速レバー23の姿勢を検出する角度センサ23S、走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ25が入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0047】
コントローラ50の出力側には、走行装置2の進行方向等を表示するモニタ11,21や作業者に注意喚起を行うブザー13A,26、トランスミッション31の一側の出力軸37の回転を停止するブレーキ機構31A、トランスミッション31の一側の出力軸37の回転方向を逆回転させる逆回転機構31B、無段変速装置30と刈取装置3の伝動経路に設けられた刈取クラッチ32、無段変速装置30のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42と後進用モータ43が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0048】
<走行装置の走行速度の増減速方法>
図9に示すように、ステップS1でコントローラ50の処理部51は、主変速レバー16と主変速レバー23を切替える切替えスイッチ13Bの入力信号を判断する。切替えスイッチ13Bの入力信号がOFF信号の場合にはステップS2に進み、切替えスイッチ13Bの入力信号がON信号の場合にはステップS10に進む。なお、切替えスイッチ13Bの入力信号がOFF信号の場合には主変速レバー16で操作が有効になり、切替えスイッチ13Bの入力信号がOFF信号の場合には主変速レバー23の操作が有効になる。
【0049】
ステップS2で処理部51は、操縦部5の作業者を感知する感知センサ14の入力信号を判断する。感知センサ14の入力信号がON信号の場合にはステップS3に進み、感知センサ14の入力信号がOFF信号の場合にはステップS1に戻る。これにより、作業者による切替えスイッチ13Bの誤操作を防止して安全性を高めることができる。なお、感知センサ14の入力信号は、作業者が操縦部5に搭乗している場合にはON信号となり、作業者が操縦部5から降車した場合にはOFF信号になる。
【0050】
ステップS3で処理部51は、サイドパネル15に設けられた主変速レバー16の姿勢を検出している角度センサ16Sの検出値を読込んでステップS4に進む。
【0051】
ステップS4で処理部51は、角度センサ16Sの検出値に基づいて無段変速装置30のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42と後進用モータ43を回動させてステップS5に進む。これにより、作業者が操作した主変速レバー16の姿勢に基づいて走行装置2の走行速度を増減速することができる。
【0052】
ステップS5で処理部51は、フロントパネル10に設けられた操作レバー12の姿勢を検出している角度センサ12Sの検出値を読込んでステップS6に進む。
【0053】
ステップS6で処理部51は、フロントパネル10に設けられた走行装置2の走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ13Cの押下状態を判断してステップS7に進む。
【0054】
ステップS7で処理部51は、旋回スイッチ13Cが押下されていないと判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aを作動させずに走行装置2をマイルドターンさせ、旋回スイッチ13Cが間欠して押下されていると判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aの一側のブレーキ機構31Aを作動させて走行装置2をブレーキターンさせ、旋回スイッチ13Cが継続して押下されていると判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対の逆回転機構31Bの一側の逆回転機構31Bを作動させて走行装置2をスピンターンさせてステップS8に進む。これにより、圃場の穀稈の植立状態に応じて旋回方式を切替えて穀稈の刈取作業を効率良く行うことができる。
【0055】
ステップS8で処理部51は、フロントパネル10に設けられたモニタ11に走行装置2が前進中と判断した場合には前進中、走行装置2が停止中と判断した場合には停止中、走行装置2が後進中と判断した場合には後進中の表示を行ってステップS9に進む。これにより、作業者に走行装置2の走行状態を視認させて安全性を向上させることができる。
【0056】
ステップS9で処理部51は、走行装置2が前進中又は後進中と判断した場合にはフロントパネル10に設けられたブザー13Aを鳴らして警報を行い、走行装置2が停止中と判断した場合にはブザー13Aでの警報を中止してステップS1に戻る。これにより、走行装置2が前後方向に移動している場合には作業者の注意を喚起して安全性をより向上させることができる。
【0057】
ステップS10で処理部51は、操縦部5の作業者を感知する感知センサ14の入力信号を判断する。感知センサ14の入力信号がOFF信号の場合にはステップS11に進み、感知センサ14の入力信号がON信号の場合にはステップS1に戻る。これにより、作業者による切替えスイッチ13Bの誤操作を防止して安全性を高めることができる。
【0058】
ステップS11で処理部51は、サイドパネル15に設けられた刈脱レバー18の姿勢を検出している角度センサ18Sの検出値を判断する。角度センサ18Sの検出値から刈取クラッチ32の接続が解除されていると判断した場合にはステップS12に進み、角度センサ18Sの検出値から刈取クラッチ32が接続されていると判断した場合にはステップS1に戻る。これにより、操縦部5から降車した作業者が刈取装置3等に巻込まれるのを防止することができる。
【0059】
ステップS12で処理部51は、リモコン20に設けられた主変速レバー23の姿勢を検出している角度センサ23Sの検出値を読込んで主変速レバー23の操作が所定の操作速度範囲で行われているか否か判断する。本実施形態では、予め設定した設定時間である1秒以内に主変速レバー23が中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に又は最大後側傾斜姿勢に操作されていない、すなわち、所定の操作速度範囲と判断した場合にはステップS13に進み、予め設定した設定時間である1秒以内に主変速レバー23が中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に又は最大後側傾斜姿勢に操作されている、すなわち、所定の操作速度範囲外と判断した場合にはステップS19に進む。これにより、作業者が意図せず、例えば作業者の作業服が主変速レバー23に引掛かって主変速レバー23が操作された場合等の作業者の意図しない誤操作を防止することができる。なお、設置時間はモニタ11から入力することができる。
【0060】
ステップS13で処理部51は、角度センサ23Sの検出値に基づいて無段変速装置30のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42と後進用モータ43を回動させてステップS14に進む。これにより、作業者が操作した主変速レバー23の姿勢に基づいて走行装置2の走行速度を増減速することができる。
【0061】
ステップS14で処理部51は、リモコン20に設けられた操作レバー22の姿勢を検出している角度センサ22Sの検出値を読込んでステップS15に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者が操作レバー22を操作して走行装置2の旋回操作を容易に行うことができる。
【0062】
ステップS15で処理部51は、リモコン20に設けられた走行装置2の走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ25の押下状態を判断してステップS16に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者が旋回スイッチ25を押下して走行装置2の旋回方式を容易に切替えることができる。
【0063】
ステップS16で処理部51は、旋回スイッチ25が押下されていないと判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aを作動させずに走行装置2をマイルドターンさせ、旋回スイッチ25が間欠して押下されていると判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aの一側のブレーキ機構31Aを作動させて走行装置2をブレーキターンさせ、旋回スイッチ25が継続して押下されていると判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対の逆回転機構31Bの一側の逆回転機構31Bを作動させて走行装置2をスピンターンさせてステップS17に進む。これにより、圃場の穀稈の植立状態に応じて旋回方式を切替えて穀稈の刈取作業を効率良く行うことができる。
【0064】
ステップS17で処理部51は、リモコン20に設けられたモニタ21に走行装置2が前進中と判断した場合には前進中、走行装置2が停止中と判断した場合には停止中、走行装置2が後進中と判断した場合には後進中の表示を行ってステップS18に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者に走行装置2の走行状態を視認させて安全性を向上させることができる。
【0065】
ステップS18で処理部51は、走行装置2が前進中又は後進中と判断した場合にはリモコン20に設けられたブザー26を鳴らして警報を行い、走行装置2が停止中と判断した場合にはブザー26での警報を中止してステップS1に戻る。これにより、走行装置2が前後方向に移動している場合には操縦部5から降車した作業者の注意を喚起して機体から所定の距離離れてより安全確保をすることができる。
【0066】
ステップS19で処理部51は、トランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aを作動させてトランスミッション31の出力軸の回転を停止して走行装置2の走行を停止してステップS20に進む。操縦部5から降車した作業者の意図しない誤操作による走行装置2の走行を停止して安全性を高めることができる。
【0067】
ステップS20で処理部51は、リモコン20に設けられたモニタ21にブレーキ機構31Aが作動して走行装置2が停止しているブレーキ作動中、主変速レバー23を中立姿勢に操作して下さいと表示してステップS21に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者にブレーキ機構31Aが作動して走行装置2が停止していることを視認させて安全性を向上させることができる。
【0068】
ステップS21で処理部51は、リモコン20に設けられたブザー26を鳴らして警報を行いステップS22に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者に作業者にブレーキ機構31Aが作動して走行装置2が停止していることをより認識させて安全性を向上させることができる。
【0069】
ステップS22で処理部51は、リモコン20に設けられた主変速レバー23の姿勢を検出している角度センサ23Sの検出値を読込んで主変速レバー23が中立姿勢に操作されたか否か判断する。主変速レバー23が中立姿勢に操作されている場合にはステップS23に戻り、主変速レバー23が中立姿勢に操作されていない場合にはステップS20に戻る。
【0070】
ステップS23で処理部51は、トランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aの作動を停止してステップS1に戻る。
【符号の説明】
【0071】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
4 脱穀装置
5 操縦部
10 フロントパネル
13D ポート
15 サイドパネル
16 主変速レバー(第2変速レバー)
20 リモコン
23 主変速レバー(第1変速レバー)
25 旋回スイッチ(スイッチ)
30 無段変速装置
31 トランスミッション
31A ブレーキ機構
31B 逆回転機構
32 刈取クラッチ
C 減速率
D 減速率
E エンジン
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置の走行速度の増減速を行う無段変速装置を備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいて、圃場や穀稈の状態に合わせて変速レバーを操作して走行装置の走行速度の増減速を行う技術が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、変速レバーを操作して低速走行している走行装置の走行速度を微速に増減速することができないために、例えば、穀粒排出時に排出オーガと搬送装置の荷台の位置合わせが容易に行なうことができず、また、畦超え時には走行装置が急加速に伴う反動による大きな衝撃が機体に加わる恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、低速走行している走行装置の走行速度を微速に増減速することができるコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の左側後方に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の右側後方に作業者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、前記操縦部(5)のフロントパネル(10)に、又は前記フロントパネル(10)に接続された遠隔操作用のリモコン(20)に、無段変速装置(30)を操作する第1変速レバー(23)を設け、前記操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(30)を操作する第2変速レバー(16)を設け、前記第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、前記第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度に予め設定した減速率(C、D)を乗算した走行速度にし、該減速率(C、D)を5~50[%]に設定したことを特徴とするコンバインである。
【0007】
【0008】
請求項2記載の発明は、前記第1変速レバー(23)をフロントパネル(10)に形成されたポート(13D)に接続された遠隔操作用のリモコン(20)に設けた請求項1又は1記載のコンバインである。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記操縦部(5)から作業者が降車している場合には、前記第1変速レバー(23)の操作を有効にして、前記第2変速レバー(16)の操作を無効にし、前記操縦部(5)に作業者が搭乗している場合には、前記第2変速レバー(16)の操作を有効にして、前記第1変速レバー(23)の操作を無効にする請求項2記載のコンバインである。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記無段変速装置(30)と刈取装置(3)の間の伝動経路に設けられた刈取クラッチ(32)の接続が解除された場合には、前記第1変速レバー(23)の操作が有効にし、前記刈取クラッチ(32)の接続された場合には、前記第1変速レバー(23)の操作が規制する請求項3記載のコンバインである。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記無段変速装置(30)と走行装置(2)の間の伝動経路に無段変速装置(30)の出力回転を増減速するトランスミッション(31)を設け、該トランスミッション(31)に左右一対のブレーキ機構(31A)と左右一対の逆回転機構(31B)を設け、前記第1変速レバー(23)が急操作された場合には、前記ブレーキ機構(31A)を作動させて走行装置(2)の走行を停止させる請求項4記載のコンバインである。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記リモコン(20)にスイッチ(25)を設け、前記スイッチ(25)を操作してブレーキ機構(31A)又は逆回転機構(31B)を作動させて走行装置(2)の旋回方式を切替える請求項5記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、操縦部(5)のフロントパネル(10)に、又はフロントパネル(10)に接続された遠隔操作用のリモコン(20)に、無段変速装置(30)を操作する第1変速レバー(23)を設け、操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(30)を操作する第2変速レバー(16)を設け、第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度に予め設定した減速率(C、D)を乗算した走行速度にし、減速率(C、D)を5~50[%]に設定したので、第1変速レバー(23)を操作して走行装置(2)の走行速度を微速に増減速することができる。
【0014】
また、コンバインに貯留した穀粒をトラック等の荷台に排出する場合やコンバインの畦超を行う場合に、第1変速レバー(23)を操作して走行装置(2)の走行速度を微速走行させることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、第1変速レバー(23)をフロントパネル(10)に形成されたポート(13D)に接続された遠隔操作用のリモコン(20)に設けたので、コンバインから所定の距離離れて、作業者が第1変速レバー(23)の操作を安全に行うことができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、操縦部(5)から作業者が降車している場合には、第1変速レバー(23)の操作を有効にして、第2変速レバー(16)の操作を無効にし、操縦部(5)に作業者が搭乗している場合には、第2変速レバー(16)の操作を有効にして、第1変速レバー(23)の操作を無効にするので、作業者が第1変速レバー(23)の操作をより安全に行うことができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明による効果に加えて、無段変速装置(30)と刈取装置(3)の間の伝動経路に設けられた刈取クラッチ(32)の接続が解除された場合には、第1変速レバー(23)の操作が有効にし、刈取クラッチ(32)の接続された場合には、第1変速レバー(23)の操作が規制するので、作業者が刈取装置(3)に巻込まれるのを防止することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明による効果に加えて、無段変速装置(30)と走行装置(2)の間の伝動経路に無段変速装置(30)の出力回転を増減速するトランスミッション(31)を設け、トランスミッション(31)に左右一対のブレーキ機構(31A)と左右一対の逆回転機構(31B)を設け、第1変速レバー(23)が急操作された場合には、ブレーキ機構(31A)を作動させて走行装置(2)の走行を停止させるので、作業者の意図しない誤操作による走行装置(2)の走行を停止して安全性を高めることができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明による効果に加えて、リモコン(20)にスイッチ(25)を設け、スイッチ(25)を操作してブレーキ機構(31A)又は逆回転機構(31B)を作動させて走行装置(2)の旋回方式を切替えるので、圃場の穀稈の植立状態に応じて走行装置(2)の旋回方式を切替えて穀稈の刈取作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図7】主変速レバーで操作される無段変速装置の出力回転の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~3に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0022】
操縦部5の下側には、エンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ(図示省略)によって外部に排出される。
【0023】
操縦部5の操縦席の前方には、フロントパネル10が設けられ、操縦席の左方には、サイドパネル15が設けられている。
【0024】
フロントパネル10の左部には、エンジンのEの出力回転等を表示するタッチパネル式のモニタ11が設けられ、右部には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する操作レバー12が設けられ、モニタ11と操作レバー12の間には、作業者に注意喚起を行うブザー13Aと、後述する無段変速装置30を操作する主変速レバー(請求項の「第2変速レバー」)16と主変速レバー(請求項の「第1変速レバー」)23を切替える切替えスイッチ13Bが設けられ、操作レバー12の後側には、走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ13Cと、遠隔操作用のリモコン20を接続するポート13Dが設けられている。また、フロントパネル10の後部には、操縦部5に搭乗した作業者を感知する感知センサ14が設けられている。なお、操作レバー12の姿勢は、操作レバー12の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ12Sで検出される。
【0025】
サイドパネル15の前部には、無段変速装置30を操作する主変速レバー16が設けられ、主変速レバー16の後側には、無段変速装置30の出力回転を増減速するトランスミッション31を操作する副変速レバー17が設けられ、副変速レバー17の後側には、刈取クラッチ32と脱穀クラッチ33の接続と接続解除を操作する刈脱レバー18が設けられている。
【0026】
主変速レバー16を中立姿勢にした場合には、無段変速装置30の出力回転はゼロになる。主変速レバー16を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速され、前側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速される。また、主変速レバー16を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速され、後側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速される。なお、主変速レバー16の姿勢は、主変速レバー16の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ16Sで検出される。
【0027】
副変速レバー17を後側傾斜姿勢にした場合には、トランスミッション31の出力回転は増減速されない。副変速レバー17を後側傾斜姿勢から前側傾斜姿勢にした場合には、トランスミッション31の出力回転は増速される。なお、副変速レバー17の姿勢は、副変速レバー17の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサで検出される。
【0028】
刈脱レバー18を前側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ32と脱穀クラッチ33の接続は解除される。刈脱レバー18を後側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ32と脱穀クラッチ33が接続される。また、刈脱レバー18を前側傾斜姿勢と後側傾斜姿勢の間に位置する中立姿勢にした場合には、刈取クラッチ32の接続は解除され、脱穀クラッチ33は接続される。なお、刈脱レバー18の姿勢は、刈脱レバー18の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ18Sで検出される。
【0029】
<リモコン>
図4に示すように、リモコン20の上部には、モニタ21が設けられ、モニタ21の下側には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する遠隔操作用の操作レバー22が設けられ、操作レバー22の下側には、無段変速装置30を操作する遠隔操作用の主変速レバー23が設けられている。これにより、グレンタンク7に貯留された穀粒をトラック等の搬送車に排出する場合等に、作業者が操縦部5から降車した後に、リモコン20の操作レバー22を操作してコンバインの旋回操作や主変速レバー23を操作して走行装置2の走行速度を微速走行させることができる。なお、操作レバー22の姿勢は、操作レバー22の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ22Sで検出される。また、リモコン20には、排出オーガの伸縮や旋回を操作するスイッチ(図示省略)が設けられている。
【0030】
モニタ21の上側には、緊急停止時にエンジンEの駆動を停止させる停止スイッチ24が設けられ、操作レバー22と主変速レバー23の間には走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ(請求項の「スイッチ」)25が設けられ、主変速レバー23の下側には遠隔操作中の作業者に注意喚起を行うブザー26が設けられている。これにより、リモコン20等に不具合が発生した場合には緊急停止することができる。
【0031】
旋回スイッチ25が押下しない場合には、走行装置2を大きな半径で緩やかに旋回(マイルドターン)させ、旋回スイッチ25を間欠して押下した場合には、トランスミッション31の後述するブレーキ機構31Aが作動して走行装置2を旋回(ブレーキターン)させ、旋回スイッチ25を継続して押下した場合には、トランスミッション31の後述する逆回転機構31Bが作動して走行装置2を小さな半径で鋭く旋回(スピンターン)させることができる。これにより、圃場面の状態によって旋回方法を切替えて圃場面の凹凸の乱れを抑制することができる。
【0032】
主変速レバー23を中立姿勢にした場合には、無段変速装置30の出力回転はゼロになる。主変速レバー23を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速され、前側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速される。また、主変速レバー23を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置30の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置30の出力回転は増速され、後側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置30の出力回転は減速される。なお、主変速レバー23の姿勢は、主変速レバー23の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ23Sで測定される。
【0033】
本実施形態では、フロントパネル10のポート13Dとリモコン20をケーブル(図示省略)で接続しているが無線で接続することもできる。また、本実施形態では、主変速を主変速レバー16と同じく上下方向に延在する操作部を前後方向に操作して無段変速装置30の出力回転の増減速を行うレバー方式にしているが、操作部を周方向に操作して無段変速装置30の出力回転の増減速を行うダイヤル方式や、操作部を複数のスイッチを押下して無段変速装置30の出力回転の増減速を行うスイッチ方式、操作部の感圧スイッチに加わる把持力に応じて無段変速装置30の出力回転の増減速を行うグリップ方式にすることもできる。さらに、本実施形態では、操縦部5から降車した作業者が遠隔操作可能なリモコン20に主変速レバー23を設けているが、フロントパネル10の操作レバー12の近傍に主変速レバー23を設けることもできる。
【0034】
<エンジンの出力回転の伝動図>
図5に示すように、エンジンEの出力回転は、伝動経路L1上に設けられた無段変速装置30に伝動される。無段変速装置30の入力軸35に伝動されたエンジンEの出力回転は、無段変速装置30内で増減速と回転方向の切替えが行われて出力軸36,37に出力される。
【0035】
出力軸36に出力された出力回転はトランスミッション31に伝動されてトランスミッション31内の多段ギヤで増減速されて出力軸38に出力される。
【0036】
また、トランスミッション31内には走行装置2の一側のクローラに出力回転を伝動する出力軸37の回転を停止するブレーキ機構31Aと、走行装置2の一側のクローラに出力回転を伝動する出力軸37の出力回転方向を逆回転させる逆回転機構31Bが設けられている。
【0037】
出力軸38に出力された出力回転は走行装置2に伝動され、左右一対のクローラを回動させる。
【0038】
エンジンEの出力回転は、伝動経路L2上に設けられた脱穀クラッチ33を介して脱穀装置4に伝動される。
【0039】
<無段変速装置>
図6に示すように、無段変速装置30のトラニオン軸40には、扇形ギヤ41が支持され、扇形ギヤ41の外周部に形成されたギヤには、前進用モータ42の出力軸に設けられたギヤ42Aと、後進用モータ43の出力軸に設けられたギヤ43Aが係合している。これにより、主変速レバー16又は主変速レバー23の姿勢に基づいて前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して無段変速装置30のトラニオン軸40を回動してエンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行うことができる。
【0040】
なお、
図6には、無段変速装置30のトラニオン軸40を前進用モータ42と後進用モータ43で回動させる形態を図示しているが、無段変速装置30のトラニオン軸40に径方向に延在するアームを支持し、このアームの外周部に前進用ソレノイドで駆動される前進用シリンダと後進用ソレノイドで駆動される後進用シリンダを連結する形態にすることもできる。
【0041】
<無段変速装置の出力回転>
図7に示すように、無段変速装置30の出力回転は、主変速レバー16を中立姿勢にした場合にはゼロになり、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢にした場合には前進最大出力回転A1[rpm]になり、主変速レバー16を最大後側傾斜姿勢にした場合には後進最大出力回転B1[rpm]になる。一方、無段変速装置30の出力回転は、主変速レバー23を中立姿勢にした場合にはゼロになり、主変速レバー23を最大前側傾斜姿勢にした場合には前進最大出力回転A1[rpm]よりも低速の前進最大出力回転A2[rpm]になり、主変速レバー23を最大後側傾斜姿勢にした場合には後進最大出力回転B1[rpm] よりも低速の後進最大出力回転B2[rpm]になる。
【0042】
作業者は、予めモニタ11を介して最大前側傾斜姿勢時の減速率C(A2/A1×100[%])と、最大後側傾斜姿勢時の減速率D(B2/B1×100[%])を設定することができ、本実形態では、減速率C,Dを30[%]に設定されている。これにより、グレンタンク7に貯留された穀粒をトラック等の搬送車の荷台に排出する場合やコンバインの畦超を行う場合には、操縦部5から降車した作業者が、リモコン20の主変速レバー23を操作して走行装置2の走行速度を微速走行させることができる。また、減速率C,Dは5~50[%]に設定するのが好ましい。
【0043】
<コントローラの接続図>
図8に示すように、コンバインのコントローラ50は、CPU等からなる処理部51と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部52から形成されている。
【0044】
処理部51は、主変速レバー16,23の操作量に基づいて無段変速装置30のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42や後進用モータ43の駆動等を行う。
【0045】
記憶部52は、作業者が予めモニタ11から入力した減速率C,D等が保存されている。
【0046】
コントローラ50の入力側には、操作レバー12の姿勢を検出する角度センサ12Sや主変速レバー16と主変速レバー23を切替える切替えスイッチ13B、走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ13C、操縦部5に搭乗した作業者を感知する感知センサ14、主変速レバー16の姿勢を検出する角度センサ16S、操作レバー22の姿勢を検出する角度センサ22S、主変速レバー23の姿勢を検出する角度センサ23S、走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ25が入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0047】
コントローラ50の出力側には、走行装置2の進行方向等を表示するモニタ11,21や作業者に注意喚起を行うブザー13A,26、トランスミッション31の一側の出力軸37の回転を停止するブレーキ機構31A、トランスミッション31の一側の出力軸37の回転方向を逆回転させる逆回転機構31B、無段変速装置30と刈取装置3の伝動経路に設けられた刈取クラッチ32、無段変速装置30のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42と後進用モータ43が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0048】
<走行装置の走行速度の増減速方法>
図9に示すように、ステップS1でコントローラ50の処理部51は、主変速レバー16と主変速レバー23を切替える切替えスイッチ13Bの入力信号を判断する。切替えスイッチ13Bの入力信号がOFF信号の場合にはステップS2に進み、切替えスイッチ13Bの入力信号がON信号の場合にはステップS10に進む。なお、切替えスイッチ13Bの入力信号がOFF信号の場合には主変速レバー16で操作が有効になり、切替えスイッチ13Bの入力信号がOFF信号の場合には主変速レバー23の操作が有効になる。
【0049】
ステップS2で処理部51は、操縦部5の作業者を感知する感知センサ14の入力信号を判断する。感知センサ14の入力信号がON信号の場合にはステップS3に進み、感知センサ14の入力信号がOFF信号の場合にはステップS1に戻る。これにより、作業者による切替えスイッチ13Bの誤操作を防止して安全性を高めることができる。なお、感知センサ14の入力信号は、作業者が操縦部5に搭乗している場合にはON信号となり、作業者が操縦部5から降車した場合にはOFF信号になる。
【0050】
ステップS3で処理部51は、サイドパネル15に設けられた主変速レバー16の姿勢を検出している角度センサ16Sの検出値を読込んでステップS4に進む。
【0051】
ステップS4で処理部51は、角度センサ16Sの検出値に基づいて無段変速装置30のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42と後進用モータ43を回動させてステップS5に進む。これにより、作業者が操作した主変速レバー16の姿勢に基づいて走行装置2の走行速度を増減速することができる。
【0052】
ステップS5で処理部51は、フロントパネル10に設けられた操作レバー12の姿勢を検出している角度センサ12Sの検出値を読込んでステップS6に進む。
【0053】
ステップS6で処理部51は、フロントパネル10に設けられた走行装置2の走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ13Cの押下状態を判断してステップS7に進む。
【0054】
ステップS7で処理部51は、旋回スイッチ13Cが押下されていないと判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aを作動させずに走行装置2をマイルドターンさせ、旋回スイッチ13Cが間欠して押下されていると判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aの一側のブレーキ機構31Aを作動させて走行装置2をブレーキターンさせ、旋回スイッチ13Cが継続して押下されていると判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対の逆回転機構31Bの一側の逆回転機構31Bを作動させて走行装置2をスピンターンさせてステップS8に進む。これにより、圃場の穀稈の植立状態に応じて旋回方式を切替えて穀稈の刈取作業を効率良く行うことができる。
【0055】
ステップS8で処理部51は、フロントパネル10に設けられたモニタ11に走行装置2が前進中と判断した場合には前進中、走行装置2が停止中と判断した場合には停止中、走行装置2が後進中と判断した場合には後進中の表示を行ってステップS9に進む。これにより、作業者に走行装置2の走行状態を視認させて安全性を向上させることができる。
【0056】
ステップS9で処理部51は、走行装置2が前進中又は後進中と判断した場合にはフロントパネル10に設けられたブザー13Aを鳴らして警報を行い、走行装置2が停止中と判断した場合にはブザー13Aでの警報を中止してステップS1に戻る。これにより、走行装置2が前後方向に移動している場合には作業者の注意を喚起して安全性をより向上させることができる。
【0057】
ステップS10で処理部51は、操縦部5の作業者を感知する感知センサ14の入力信号を判断する。感知センサ14の入力信号がOFF信号の場合にはステップS11に進み、感知センサ14の入力信号がON信号の場合にはステップS1に戻る。これにより、作業者による切替えスイッチ13Bの誤操作を防止して安全性を高めることができる。
【0058】
ステップS11で処理部51は、サイドパネル15に設けられた刈脱レバー18の姿勢を検出している角度センサ18Sの検出値を判断する。角度センサ18Sの検出値から刈取クラッチ32の接続が解除されていると判断した場合にはステップS12に進み、角度センサ18Sの検出値から刈取クラッチ32が接続されていると判断した場合にはステップS1に戻る。これにより、操縦部5から降車した作業者が刈取装置3等に巻込まれるのを防止することができる。
【0059】
ステップS12で処理部51は、リモコン20に設けられた主変速レバー23の姿勢を検出している角度センサ23Sの検出値を読込んで主変速レバー23の操作が所定の操作速度範囲で行われているか否か判断する。本実施形態では、予め設定した設定時間である1秒以内に主変速レバー23が中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に又は最大後側傾斜姿勢に操作されていない、すなわち、所定の操作速度範囲と判断した場合にはステップS13に進み、予め設定した設定時間である1秒以内に主変速レバー23が中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に又は最大後側傾斜姿勢に操作されている、すなわち、所定の操作速度範囲外と判断した場合にはステップS19に進む。これにより、作業者が意図せず、例えば作業者の作業服が主変速レバー23に引掛かって主変速レバー23が操作された場合等の作業者の意図しない誤操作を防止することができる。なお、設置時間はモニタ11から入力することができる。
【0060】
ステップS13で処理部51は、角度センサ23Sの検出値に基づいて無段変速装置30のトラニオン軸40を回動させる前進用モータ42と後進用モータ43を回動させてステップS14に進む。これにより、作業者が操作した主変速レバー23の姿勢に基づいて走行装置2の走行速度を増減速することができる。
【0061】
ステップS14で処理部51は、リモコン20に設けられた操作レバー22の姿勢を検出している角度センサ22Sの検出値を読込んでステップS15に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者が操作レバー22を操作して走行装置2の旋回操作を容易に行うことができる。
【0062】
ステップS15で処理部51は、リモコン20に設けられた走行装置2の走行装置2の旋回方式を切替える旋回スイッチ25の押下状態を判断してステップS16に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者が旋回スイッチ25を押下して走行装置2の旋回方式を容易に切替えることができる。
【0063】
ステップS16で処理部51は、旋回スイッチ25が押下されていないと判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aを作動させずに走行装置2をマイルドターンさせ、旋回スイッチ25が間欠して押下されていると判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aの一側のブレーキ機構31Aを作動させて走行装置2をブレーキターンさせ、旋回スイッチ25が継続して押下されていると判断した場合にはトランスミッション31に設けられた左右一対の逆回転機構31Bの一側の逆回転機構31Bを作動させて走行装置2をスピンターンさせてステップS17に進む。これにより、圃場の穀稈の植立状態に応じて旋回方式を切替えて穀稈の刈取作業を効率良く行うことができる。
【0064】
ステップS17で処理部51は、リモコン20に設けられたモニタ21に走行装置2が前進中と判断した場合には前進中、走行装置2が停止中と判断した場合には停止中、走行装置2が後進中と判断した場合には後進中の表示を行ってステップS18に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者に走行装置2の走行状態を視認させて安全性を向上させることができる。
【0065】
ステップS18で処理部51は、走行装置2が前進中又は後進中と判断した場合にはリモコン20に設けられたブザー26を鳴らして警報を行い、走行装置2が停止中と判断した場合にはブザー26での警報を中止してステップS1に戻る。これにより、走行装置2が前後方向に移動している場合には操縦部5から降車した作業者の注意を喚起して機体から所定の距離離れてより安全確保をすることができる。
【0066】
ステップS19で処理部51は、トランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aを作動させてトランスミッション31の出力軸の回転を停止して走行装置2の走行を停止してステップS20に進む。操縦部5から降車した作業者の意図しない誤操作による走行装置2の走行を停止して安全性を高めることができる。
【0067】
ステップS20で処理部51は、リモコン20に設けられたモニタ21にブレーキ機構31Aが作動して走行装置2が停止しているブレーキ作動中、主変速レバー23を中立姿勢に操作して下さいと表示してステップS21に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者にブレーキ機構31Aが作動して走行装置2が停止していることを視認させて安全性を向上させることができる。
【0068】
ステップS21で処理部51は、リモコン20に設けられたブザー26を鳴らして警報を行いステップS22に進む。これにより、操縦部5から降車した作業者に作業者にブレーキ機構31Aが作動して走行装置2が停止していることをより認識させて安全性を向上させることができる。
【0069】
ステップS22で処理部51は、リモコン20に設けられた主変速レバー23の姿勢を検出している角度センサ23Sの検出値を読込んで主変速レバー23が中立姿勢に操作されたか否か判断する。主変速レバー23が中立姿勢に操作されている場合にはステップS23に戻り、主変速レバー23が中立姿勢に操作されていない場合にはステップS20に戻る。
【0070】
ステップS23で処理部51は、トランスミッション31に設けられた左右一対のブレーキ機構31Aの作動を停止してステップS1に戻る。
【符号の説明】
【0071】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
4 脱穀装置
5 操縦部
10 フロントパネル
13D ポート
15 サイドパネル
16 主変速レバー(第2変速レバー)
20 リモコン
23 主変速レバー(第1変速レバー)
25 旋回スイッチ(スイッチ)
30 無段変速装置
31 トランスミッション
31A ブレーキ機構
31B 逆回転機構
32 刈取クラッチ
C 減速率
D 減速率
E エンジン
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の左側後方に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の右側後方に作業者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記エンジン(E)と走行装置(2)の間の伝動経路にエンジン(E)の出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置(30)を設け、
前記操縦部(5)のフロントパネル(10)に、又は前記フロントパネル(10)に接続された遠隔操作用のリモコン(20)に、無段変速装置(30)を操作する第1変速レバー(23)を設け、
前記操縦部(5)のサイドパネル(15)に無段変速装置(30)を操作する第2変速レバー(16)を設け、
前記第1変速レバー(23)で増減速させた走行装置(2)の走行速度を、前記第2変速レバー(16)で増減速させた走行装置(2)の走行速度に予め設定した減速率(C、D)を乗算した走行速度にし、該減速率(C、D)を5~50[%]に設定したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記第1変速レバー(23)をフロントパネル(10)に形成されたポート(13D)に接続された遠隔操作用のリモコン(20)に設けた請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記操縦部(5)から作業者が降車している場合には、前記第1変速レバー(23)の操作を有効にして、前記第2変速レバー(16)の操作を無効にし、
前記操縦部(5)に作業者が搭乗している場合には、前記第2変速レバー(16)の操作を有効にして、前記第1変速レバー(23)の操作を無効にする請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記無段変速装置(30)と刈取装置(3)の間の伝動経路に設けられた刈取クラッチ(32)の接続が解除された場合には、前記第1変速レバー(23)の操作が有効にし、
前記刈取クラッチ(32)の接続された場合には、前記第1変速レバー(23)の操作が規制する請求項3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記無段変速装置(30)と走行装置(2)の間の伝動経路に無段変速装置(30)の出力回転を増減速するトランスミッション(31)を設け、
該トランスミッション(31)に左右一対のブレーキ機構(31A)と左右一対の逆回転機構(31B)を設け、
前記第1変速レバー(23)が急操作された場合には、前記ブレーキ機構(31A)を作動させて走行装置(2)の走行を停止させる請求項4記載のコンバイン。
【請求項6】
前記リモコン(20)にスイッチ(25)を設け、
前記スイッチ(25)を操作してブレーキ機構(31A)又は逆回転機構(31B)を作動させて走行装置(2)の旋回方式を切替える請求項5記載のコンバイン。