(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100395
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理プログラムおよび情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240719BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240719BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240719BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20240719BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240719BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20240719BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20240719BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G08B25/04 C
G08B25/00 510B
G08B21/00 U
G06Q50/26
G16Y10/40
G16Y40/10
G08G1/01 A
G08B21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004370
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】500168811
【氏名又は名称】株式会社ナビタイムジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】森 雄大
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5C086AA11
5C086AA45
5C086BA22
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA14
5C086DA33
5C087BB74
5C087DD02
5C087DD14
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG07
5C087GG70
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181CC04
5H181DD02
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF22
5H181MC12
5H181MC27
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】交通遮断等の異常発生時に自治体等が迅速かつ適切な対応を行うことを支援できる情報処理システムを提供する。
【解決手段】情報処理システムは、対象とする道路のリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して異常を検知する手段と、異常が検知された場合に平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて前記道路の対応優先度を判定する手段と、判定された対応優先度に応じて通知を行う手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする道路のリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して異常を検知する手段と、
異常が検知された場合に平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて前記道路の対応優先度を判定する手段と、
判定された対応優先度に応じて通知を行う手段と、
を備えた情報処理システム。
【請求項2】
前記代替手段の確保容易性は、代替交通手段の確保容易性と代替道路の確保容易性のうちの一方または両方を含む、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記代替交通手段とは、電車または空路である、請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記代替道路の確保容易性とは、代替道路の有無、および、代替道路が有る場合に代替道路を利用して迂回することで加算される時間である、請求項2または3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記異常を検知する手段は、前記リアルタイムの交通量をプローブ情報に基づいて把握する、請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記異常を検知する手段は、衛星写真、VICSから提供される道路交通情報、定点カメラで撮影された映像のうちの少なくとも1つをさらに考慮して、前記リアルタイムの交通量を把握する、請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記判定する手段は、前記道路の復旧に必要な時間および/またはコスト、前記道路を通って輸送されるべき物資の輸送量および/または重要度のうちの少なくとも1つをさらに考慮して、前記対応優先度を判定する、請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記通知する手段は、判定された対応優先度に応じて、通知の有無、宛先、タイミング、方法のうちの1つまたは2つ以上を設定する、請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記道路は、主要エリア間、主要POI間、事前に登録されたPOI間、主要エリア-主要POI間、主要エリア-事前に登録されたPOI間、主要POI-事前に登録されたPOI間のうちの1つまたは2つ以上である、請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記主要POIは、病院、消防署、物流施設、避難所、学校、介護施設のうちのいずれかに該当するPOIである、請求項9に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記異常を検知する手段は、対象とする道路のリアルタイムの交通量について、平常時の交通量と比較して予め定められた閾値を超えて増加または減少している場合に、異常であると判断する、請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項12】
コンピュータを、
対象とする道路のリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して異常を検知する異常検知手段と、
異常が検知された場合に平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて前記道路の対応優先度を判定する対応優先度判定手段と、
判定された対応優先度に応じて通知を行う通知手段と、
として機能させる情報処理プログラム。
【請求項13】
通信可能に接続された複数のコンピュータによって構成される情報処理システムであって、
対象とする道路のリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して異常を検知する手段と、
異常が検知された場合に平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて前記道路の対応優先度を判定する手段と、
判定された対応優先度に応じて通知を行う手段と、
を備えた情報処理システムを機能させるために、
前記コンピュータの少なくとも1つを、前記手段の少なくとも1つとして機能させるための情報処理プログラム。
【請求項14】
通信可能に接続された複数のコンピュータによって、請求項1または2に記載の情報処理システムを機能させるために、
前記コンピュータのうちの少なくとも1つを、請求項1または2に記載の情報処理システムにおける各手段の少なくとも1つとして機能させるための情報処理プログラム。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1または2に記載の情報処理システムにおける各手段の少なくとも1つとして機能させるための情報処理プログラム。
【請求項16】
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
対象とする道路のリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して異常を検知するステップと、
異常が検知された場合に平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて前記道路の対応優先度を判定するステップと、
判定された対応優先度に応じて通知を行うステップと、
を含む情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理プログラムおよび情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の進行に伴って、台風や豪雨による災害の発生リスクが高まっている。また、日本周辺は地震活動や火山活動が活発であることから、今後も、地震や火山噴火による災害の発生が懸念されている。
【0003】
特許文献1には、災害発生時に物資の輸送計画のための情報を効率的に提供するために、災害情報を管理する所定の外部装置から被害箇所の情報を取得し、被害箇所を含む道路の距離ならびに物資の輸送量および重要度に基づいて復旧優先度を決定することが提案されている。また、復旧優先度の決定にあたっては、拠点間の最短経路が遮断されている場合に、復旧優先度を一律に高く設定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大雨や地震により、市区町村の中心部間の交通や病院、消防署、物流拠点、避難所、学校、介護施設などの各種重要施設間の交通が遮断されると、住民の生命と生活が脅かされる可能性がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、災害発生時に被害箇所の情報を所定の外部装置から取得することから、交通遮断等の異常を速やかに検知することができない。また、特許文献1の技術は、物資の輸送計画のための情報を効率的に提供することを目的として、復旧優先度を道路の距離と物資の輸送量および重要度に基づいて決定するものであり、迂回経路の有無などは考慮されておらず、交通遮断等の異常発生時に自治体等が迅速かつ適切な対応を行うことを支援することを目的とする場合には、対応優先度の判断手法が適切なものとなっていない。
【0007】
災害時における住民の生命と生活を保全するために、交通遮断等の異常を速やかに検知できる技術が望まれる。また、交通遮断等の異常発生時に自治体等が迅速かつ適切な対応を行うことを支援できる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る情報処理システムは、
対象とする道路のリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して異常を検知する手段と、
異常が検知された場合に平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて前記道路の対応優先度を判定する手段と、
判定された対応優先度に応じて通知を行う手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、交通遮断等の異常発生時に自治体等の通知先が迅速かつ適切な対応を行うことを支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る情報処理システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係る情報処理システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、対応優先度判定テーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、通知設定テーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、対応優先度の判定の一例を示すテーブルである。
【
図6A】
図6Aは、平常時の交通量の一例を示すグラフである。
【
図6B】
図6Bは、リアルタイムの交通量の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0012】
(情報処理システムの構成)
図1は、一実施の形態に係る情報処理システム1の概略的な構成を示す図である。なお、同図において、各機能を行う機能部は、それぞれ各機能を行う手段ということができる。
【0013】
図1に示すように、情報処理システム1は、車載端末21~2Mと、サーバ3と、通知先端末51~5Nとを備えている。車載端末21~2Mとサーバ3と通知先端末51~5Nとは、インターネット等のネットワーク4を介して互いに通信可能に接続されている。ネットワーク4は、有線回線と無線回線のいずれでもよく、回線の種類や形態は問わない。なお、車載端末21~2Mと、サーバ3と、通知先端末51~5Nの少なくとも一部は、コンピュータにより実現される。
【0014】
車載端末21~2Mは、道路を走行する車両に搭載され、走行中にプローブ情報を生成する装置であり、たとえば据え置き型のカーナビゲーション装置であってもよいし、ナビゲーションアプリがインストールされたスマートフォンやタブレット端末であってもよい。
【0015】
通知先端末51~5Nは、予め定められた通知先の担当者(たとえば、防災管理者)が使用するものであり、たとえば、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末、ノートブックコンピュータ、またはデスクトップコンピュータなどの電子機器である。ここで「通知先」とは、たとえば、自治体であってもよいし、病院、消防署、物流拠点、避難所、学校、介護施設などの各種重要施設であってもよい。
【0016】
次に、サーバ3について説明する。
図1に示すように、サーバ3は、サーバ通信部31と、サーバ制御部32と、サーバ記憶部33とを有している。各部31~33は、互いに通信可能に接続されている。
【0017】
このうちサーバ通信部31は、サーバ3とネットワーク4との間の通信インターフェースである。サーバ通信部31は、ネットワーク4を介してサーバ3と車載端末21~2Mおよび通知先端末51~5Nとの間で情報を送受信する。
【0018】
サーバ記憶部33は、たとえばハードディスク等の固定型データストレージである。サーバ記憶部33には、サーバ制御部32が取り扱う各種データが記憶される。たとえば、サーバ記憶部33は、交通ネットワーク情報を含む経路ネットワーク情報データベース33aと、地図情報を含む地図情報データベース33bと、統計情報データベース33cと、対応優先度判定テーブル33dと、通知設定テーブル33eとを含んでいる。
【0019】
交通ネットワーク情報は、鉄道やバス等の交通網や道路網を規定する情報である。交通網の情報としては、交通機関の路線情報、時刻表情報、料金情報等を含む。道路網の情報は、例えば交差点等の道路網表現上の結節点であるノードのデータと、ノード間の道路区間であるリンクのデータとの組み合わせによって表現される。
【0020】
地図情報は、全国および各地方の道路地図などの地図データと、地図データに対応付けられた地図オブジェクト情報を含む。地図オブジェクト情報とは、地図上に表示される施設の形状についての形状情報、地図上に表示される注記についての注記情報、地図上に表示される記号についての記号情報などである。また、地図情報は公共交通機関の路線図に関する路線図情報を含んでいてもよい。
【0021】
統計情報データベース33cには、異常検知の対象とする道路(道路名+区間(出発地~目的地))ごとに、過去の交通量の統計情報(たとえば1時間ごとの交通量の平均値)が平常時の交通量として記憶されている。ここで「過去の交通量の統計情報」は、車載端末21~2Nから収集された過去のプローブ情報に基づいて生成されたものであってもよいし、過去のプローブ情報に加えて、衛星写真、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)から提供される道路交通情報、定点カメラで撮影された映像のうちの少なくとも1つをさらに考慮して生成されたものであってもよい。
【0022】
対象とする道路は、主要エリア間、主要POI間、事前に登録されたPOI(任意で登録可能なPOI)間、主要エリア-主要POI間、主要エリア-事前に登録されたPOI間、主要POI-事前に登録されたPOI間のうちの1つまたは2つ以上であってもよい。ここで「主要POI」は、たとえば、病院、消防署、物流施設、避難所、学校、介護施設のうちのいずれかに該当するPOIであってもよい。また、「主要エリア」は、市区町村の中心部(たとえば、役所の所在地域)であってもよい。対象とする道路は、進行方向(上りと下り)で区別して登録されていてもよいし、区別せずに登録されていてもよい。
【0023】
上記の交通ネットワーク情報、地図情報、過去の交通量の統計情報は、所定のタイミングでアップデートされてもよい。
【0024】
対応優先度判定テーブル33dには、対象とする道路について、平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて対応優先度を判定するためのルールが規定されている。ここで「代替手段の確保容易性」とは、対象とする道路を車両で走行することの代わりとなり得る代替交通手段の確保容易性と代替道路(迂回経路)の確保容易性のうちの一方または両方を含んでいてもよい。また、「代替交通手段の確保容易性」とは、代替交通手段(たとえば、電車や空路など)の有無であってもよいし、代替交通手段の有無とその他の判断基準(例えば、代替交通手段を利用する場合に加算される所要時間(加算される所要時間が少ないものほど変更は容易)、代替交通手段が定期運航しているものか(定期運航しているものへの変更は容易だが、そうでなければ大変)、公共交通かどうか(電車への変更は容易だが、空路への変更は大変、空路の中でも飛行機よりヘリの方が更に大変)、代替交通手段の定員(定員に余裕がある乗り物への変更は容易だが、定員が少数の乗り物への変更は大変)との組み合わせであってもよい。また、「代替道路(迂回経路)の確保容易性」とは、代替道路(迂回経路)の有無であってもよいし、代替道路(迂回経路)の有無と代替道路(迂回経路)を利用する場合に加算される所要時間との組み合わせであってもよい。
【0025】
図3は、対応優先度判定テーブル33dの一例を示す図である。
図3に示す例では、(a)リアルタイムの交通量が平常時の交通量の20%未満であり、(b)代替交通手段が無く、(c)代替道路が無いか、または代替経路が有るが迂回に要する時間が60分以上である場合に、対応優先度が4と判定される。また、(a)リアルタイムの交通量が平常時の交通量の20%未満であり、(b)代替交通手段が有り、(c)代替道路が無いか、または代替経路が有るが迂回に要する時間が60分以上である場合に、対応優先度が3と判定される。また、(a)リアルタイムの交通量が平常時の交通量の20%未満であり、(b)代替交通手段が無く、(c)代替経路が有りであって迂回に要する時間が60分未満である場合に、対応優先度が2と判定される。また、(a)リアルタイムの交通量が平常時の交通量の20%未満であり、(b)代替交通手段が有り、(c)代替経路が有りであって迂回に要する時間が60分未満である場合に、対応優先度が1と判定される。また、(a)リアルタイムの交通量が平常時の交通量の20%以上である場合に、対応優先度が0と判定される。なお、
図3に示す例では、対応優先度は5段階で判定されるが、これに限定されるものではなく、対応優先度は4段階以下または6段階以上で判定されてもよい。
【0026】
通知設定テーブル33eには、対応優先度に応じて通知を行うためのルールが規定されている。たとえば、通知設定テーブル33eには、対応優先度ごとに、通知の有無、宛先(通知先)、タイミング、方法のうちの1つまたは2つ以上の設定が規定されていてもよい。
【0027】
図4は、通知設定テーブル33eの一例を示す図である。
図4に示す例では、対応優先度が4の場合は、(a)通知が有りであり、(b)通知の宛先(通知先)は自治体および関係する各種重要施設であり、(c)通知のタイミングは、毎日(平日および休日)、24時間(営業時間内および営業時間外)、即時であり、(d)通知方法は、通常の電子メール+プッシュ通知(即時に伝わるよう、メールに加えてプッシュ通知も行う)であると規定されている。また、対応優先度が3の場合は、(a)通知が有りであり、(b)通知の宛先(通知先)は自治体および関係する各種重要施設であり、(c)通知のタイミングは、毎日、営業時間内のみ、即時であり、(d)通知方法は、通常の電子メール+プッシュ通知であると規定されている。また、対応優先度が2の場合は、(a)通知が有りであり、(b)通知の宛先(通知先)は自治体であり、(c)通知のタイミングは、平日のみ、24時間、毎時であり、(d)通知方法は、通常の電子メール(プッシュ通知なし)であると規定されている。また、対応優先度が1の場合は、(a)通知が有りであり、(b)通知の宛先(通知先)は自治体であり、(c)通知のタイミングは、平日のみ、営業時間内のみ、毎時であり、(d)通知方法は、通常の電子メール(プッシュ通知なし)であると規定されている。また、対応優先度が0の場合は、(a)通知が無しであると規定されている。なお、通知の宛先(通知先)は、同じ「自治体および関係する各種重要施設」または「自治体」の中でも優先度のレベルに応じて通知する宛先を更に細かく分けて規定されてもよい(たとえば、優先度3では「自治体および関係する各種重要施設」の担当のみを通知先とし、優先度4では「自治体および関係する各種重要施設」の全体を通知先とするなど)。
【0028】
なお、サーバ記憶部33は、必ずしもサーバ3内に設けられていなくてもよく、サーバ記憶部33の一部または全部は、ネットワーク4を介してサーバ3と通信可能に接続された別の装置内に設けられていてもよい。
【0029】
サーバ制御部32は、異常検知部32aと、対応優先度判定部32bと、通知部32cとを有している。これらの各部32a~32cは、サーバ3内のプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、ハードウェアで実装されてもよい。
【0030】
異常検知部32aは、対象とする道路(道路名+区間(出発地~目的地))のリアルタイムの交通量を、車載端末21~2Mにて生成されるプローブ情報(実際の走行ログ)に基づいて把握する。一変形例として、異常検知部32aは、対象とする道路のリアルタイムの交通量を、車載端末21~2Mにて生成されるプローブ情報に加えて、衛星写真、VICSから提供される道路交通情報、定点カメラで撮影された映像のうちの少なくとも1つをさらに考慮して把握してもよい。別の変形例として、異常検知部32aは、対象とする道路のリアルタイムの交通量を、プローブ情報を含まずに、衛星写真、VICSから提供される道路交通情報、定点カメラで撮影された映像のうちの少なくとも1つに基づいて把握してもよい。
【0031】
異常検知部32aは、統計情報データベース33cを参照し、把握されたリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して、対象とする道路(道路名+区間(出発地~目的地))の異常を検知する。たとえば、異常検知部32aは、対象とする道路のリアルタイムの交通量(
図6B参照)について、平常時の交通量(
図6A参照)と比較して予め定められた閾値を超えて減少している場合(たとえば平常時の交通量の20%未満である場合)に、異常である(災害等で交通が遮断されている可能性がある)と判断してもよい。また、たとえば、異常検知部32aは、対象とする道路のリアルタイムの交通量について、平常時の交通量と比較して予め定められた閾値を超えて増加している場合(たとえば平常時の交通量の200%以上である場合)に、異常である(経済活動が特に活発である)と判断してもよい。
【0032】
対応優先度判定部32bは、異常検知部32aにより異常が検知された場合に、対応優先度判定テーブル33dを参照し、平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて、対象とする道路(道路名+区間(出発地~目的地))の対応優先度を判定する。ここで、「代替手段の確保容易性」に関し、対応優先度判定部32bは、経路ネットワーク情報データベース33aおよび地図情報データベース33bを参照し、対象とする道路として道路名とともに設定されている区間の出発地および目的地を探索条件とする経路探索を行うことで、代替手段の確保容易性(たとえば、代替手段(代替交通手段および/または代替道路)の有無、および代替手段を利用する場合に加算される所要時間)の情報を取得してもよい。あるいは、対応優先度判定部32bは、他の車載端末21~2Mから取得されるプローブ情報(実際の走行ログ)に基づいて、代替道路(迂回経路)の有無、および代替道路(迂回経路)を利用する場合に加算される所要時間)の情報を取得してもよい。
【0033】
一変形例として、対応優先度判定部32bは、平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに加えて、対象とする道路の復旧に必要な時間および/またはコストと、対象とする道路を通って輸送されるべき物資の輸送量および/または重要度のうちの少なくとも1つをさらに考慮して、対応優先度を判定してもよい。ここで、対象とする道路の復旧に必要な時間および/またはコストと、対象とする道路を通って輸送されるべき物資の輸送量および/または重要度の情報は、外部(たとえば自治体など)に予め登録されている情報であってもよい。
【0034】
具体的には、たとえば、対応優先度判定部32bは、対象とする道路の復旧に必要な時間および/またはコストが予め定められた基準値を超えていた場合には、優先的に対応すべき道路であるとして、対応優先度判定テーブル33dに従って判定される対応優先度を一段階さらに高くしてもよい。また、たとえば、対応優先度判定部32bは、対象とする道路を通って輸送されるべき物資の輸送量および/または重要度が予め定められた基準値を超えていた場合には、優先的に対応すべき道路であるとして、対応優先度判定テーブル33dに従って判定される対応優先度を一段階さらに高くしてもよい。
【0035】
通知部32cは、対応優先度判定部32bにより判定された対応優先度に応じて、通知設定テーブル33eを参照して、通知先端末51~5Nに対する通知を行う。たとえば、通知部32cは、判定された対応優先度に応じて、通知設定テーブル33eを参照して、通知の有無、宛先、タイミング(たとえば毎日(平日+休日)か平日のみか、24時間(営業時間内+営業時間外)か営業時間内のみか、即時か定時か、など)、方法(たとえばプッシュ通知を行うか否かなど)のうちの1つまたは2つ以上を設定して、当該通知の設定に従って、通知先端末51~5Nに対する通知を行ってもよい。
【0036】
対象とする道路について、代替道路(迂回経路)が有りの場合には、通知部32cは、通知にあわせて代替道路(迂回経路)の情報を送信してもよい。この場合、通知部32cは、他の車載端末21~2Mから取得されるプローブ情報(実際の走行ログ)に基づいて、送信すべき代替道路(迂回経路)の情報を生成してもよい。
【0037】
(動作の一例)
次に、このような構成からなる情報処理システム1の動作の一例について、
図2を参照して説明する。
図2は、情報処理システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0038】
図2に示すように、まず、サーバ3の異常検知部32aが、対象とする道路のリアルタイムの交通量を把握する(ステップS10)。異常検知部32aは、対象とする道路のリアルタイムの交通量を、車載端末21~2Mにて生成されるプローブ情報に基づいて把握してもよいし、衛星写真、VICSから提供される道路交通情報、定点カメラで撮影された映像のうちの少なくとも1つに基づいて把握してもよいし、プローブ情報と、衛星写真、VICSから提供される道路交通情報、定点カメラで撮影された映像のうちの少なくとも1つとの組み合わせに基づいて把握してもよい。
【0039】
次に、異常検知部32aは、統計情報データベース33cを参照し、対象とする道路について、把握されたリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較し(ステップS11)、異常の有無を判断する(ステップS12)。たとえば、異常検知部32aは、対象とする道路のリアルタイムの交通量について、平常時の交通量と比較して予め定められた閾値を超えて減少している場合(たとえば平常時の交通量の20%未満である場合)または予め定められた閾値を超えて増加している場合(たとえば平常時の交通量の200%以上である場合)に、異常ありと判断し、そうでない場合に、異常なしと判断してもよい。
【0040】
具体的には、たとえば、
図5を参照し、「○○○〇高速自動車道(地点A~地点B)」と「○○○〇高速自動車道(地点B~地点C)」と「△△△△バイパス(地点a~地点b)」については、リアルタイムの交通量が平常時の交通量の0%であり、平常時の交通量と比較して予め定められた閾値を超えて減少している(平常時の交通量の20%未満である)ことから、異常検知部32aは、異常あり(災害等で交通が遮断されている可能性がある)と判断する。他方、「□□号線」については、リアルタイムの交通量が平常時の交通量の120%であり、平常時の交通量と比較して予め定められた閾値を超えて減少していない(平常時の交通量の20%以上である)ことから、異常検知部32aは、異常なしと判断する。
【0041】
そして、対象とする道路について異常が検知された場合には(ステップS12:YES)、対応優先度判定部32bが、対応優先度判定テーブル33dを参照し、平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて、当該道路の対応優先度を判定する(ステップS13)。
【0042】
具体的には、たとえば、
図5を参照し、異常ありと判断された「○○○〇高速自動車道(地点A~地点B)」と「○○○〇高速自動車道(地点B~地点C)」について、リアルタイムの交通量が平常時の交通量の0%であり、代替交通手段が無く、代替道路も無いことから、対応優先度判定部32bは、対応優先度判定テーブル33d(
図3参照)に従って、対応優先度が4であると判定する。また、異常ありと判断された「△△△△バイパス(地点a~地点b)」について、リアルタイムの交通量が平常時の交通量の0%であり、代替交通手段は有り、代替道路も有るが迂回に要する時間が60分であることから、対応優先度判定部32bは、対応優先度判定テーブル33d(
図3参照)に従って、対応優先度が3であると判定する。
【0043】
次いで、通知部32cが、対応優先度判定部32bにより判定された対応優先度に応じて、通知設定テーブル33eを参照して、通知先端末51~5Nに通知を送信する(ステップS14)。
【0044】
具体的には、たとえば、
図5を参照し、対応優先度が4と判定された「○○○〇高速自動車道(地点A~地点B)」と「○○○〇高速自動車道(地点B~地点C)」について、通知部32cは、通知設定テーブル33e(
図4参照)を参照して通知設定を行い、宛先として設定された自治体および関係する各種重要施設に対し、営業時間の内外に関わらず、電子メールに加えて、プッシュ通知で通知を送信する。また、対応優先度が3と判定された「△△△△バイパス(地点a~地点b)」について、通知部32cは、通知設定テーブル33e(
図4参照)を参照して通知設定を行い、宛先として設定された自治体および関係する各種重要施設に対し、営業時間内に限り、電子メールに加えて、プッシュ通知で通知を送信する。「△△△△バイパス(地点a~地点b)」については、代替道路(迂回経路)が有りであるため、通知部32cは、通知にあわせて代替道路(迂回経路)の情報(たとえば地図情報)を送信してもよい。この場合、通知部32cは、他の車載端末21~2Mから取得されるプローブ情報(実際の走行ログ)に基づいて、送信すべき代替道路(迂回経路)の情報を生成してもよい。
【0045】
以上のような本実施の形態によれば、対象とする道路の状況についてリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して異常を自ら検知するため、災害情報(被害箇所情報)を外部の装置から取得する場合に比べて、交通遮断等の異常を速やかに検知することができる。また、異常が検知された場合に、平常時の交通量との比較と代替手段の確保容易性とに基づいて当該道路の対応優先度を自動的に判定し、判定された対応優先度に応じて通知を適切に配信するため、交通遮断等の異常発生時に自治体等の通知先が迅速かつ適切な対応を行うことを支援できる。
【0046】
なお、上述した実施の形態では、情報処理システム1は、対象とする道路のリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して予め定められた閾値を超えて減少している場合(たとえば平常時の交通量の20%未満である場合)に、災害等で交通が遮断されている可能性がある(異常である)と判断して、自治体や各種重要施設等の通知先に対して通知を行ったが、本発明の活用は災害時に限定されるものではない。
【0047】
たとえば、情報処理システム1は、対象とする道路のリアルタイムの交通量を平常時の交通量と比較して予め定められた閾値を超えて増加している場合(たとえば平常時の交通量の200%以上である場合)に、当該道路に関係するエリアの経済活動が活発である(異常である)と判断して、自治体等の通知先に対して通知を行ってもよいし、当該道路に関係する工場の稼働状況が活発である(異常である)と判断して、当該工場を管理する企業の本社に対して通知を行ってもよい。
【0048】
なお、上述した実施形態で説明した情報処理システム1の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ハードウェアで構成する場合には、情報処理システム1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0049】
また、情報処理システム1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0050】
さらに、一つまたは複数の情報処理装置によって情報処理システム1を機能させてもよい。複数の情報処理装置を用いる場合、情報処理装置のうちの1つをコンピュータとし、当該コンピュータが所定のプログラムを実行することにより情報処理システム1の少なくとも1つの手段として機能が実現されてもよい。
【0051】
また、方法の発明においては、全ての工程(ステップ)をコンピュータによって自動制御で実現するようにしてもよい。また、各工程をコンピュータに実施させながら、工程間の進行制御を人の手によって実施するようにしてもよい。また、さらには、全工程のうちの少なくとも一部を人の手によって実施するようにしてもよい。
【0052】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や様々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 情報処理システム
21~2M 車載端末
3 サーバ
31 サーバ通信部
32 サーバ制御部
32a 異常検知部
32b 対応優先度判定部
32c 通知部
33 サーバ記憶部
33a 経路ネットワーク情報データベース
33b 地図情報データベース
33c 統計情報データベース
33d 対応優先度判定テーブル
33e 通知設定テーブル
4 ネットワーク
51~5N 通知先端末