(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100402
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】結合構造体および設計システム
(51)【国際特許分類】
F16B 5/10 20060101AFI20240719BHJP
F16B 7/22 20060101ALI20240719BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F16B5/10 Z
F16B7/22
E04B1/58 506Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004382
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】西垣 英一
(72)【発明者】
【氏名】朝賀 泰男
(72)【発明者】
【氏名】弦田 遼平
【テーマコード(参考)】
2E125
3J001
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125BD01
2E125CA51
3J001FA15
3J001GA01
3J001JD33
3J001JE01
3J001KA21
3J039AA06
3J039AB02
3J039BB02
3J039FA02
(57)【要約】
【課題】取り外しが簡単で再利用可能で結合構造体であり、かつ、結合する部材の材料特
性を変化させない結合構造体を提供する。
【解決手段】第1の部材と第2の部材とを結合する結合構造体は、第1の部材に固定され
る第1固定部と、第2の部材に固定される第2固定部と、第1固定部と第2固定部にそれ
ぞれ接続され、弾性部材で形成された接続弾性体であって、第1固定部と第2固定部を結
ぶ第1の方向に沿った弾性変形による伸縮によって第1固定部と第2固定部との距離を変
更可能な接続弾性体と、接続弾性体を前記第1の方向と交差する第2の方向に延伸させる
ことで、接続弾性体の前記第1の方向に沿った弾性変形による伸縮を規制する補強構造体
と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材とを結合する結合構造体であって、
前記第1の部材に固定される第1固定部と、
前記第2の部材に固定される第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部にそれぞれ接続され、弾性部材で形成された接続弾性
体であって、前記第1固定部と前記第2固定部を結ぶ第1の方向に沿った弾性変形による
伸縮によって前記第1固定部と前記第2固定部との距離を変更可能な接続弾性体と、
前記接続弾性体を前記第1の方向と交差する第2の方向に延伸させることで、前記接続
弾性体の前記第1の方向に沿った弾性変形による伸縮を規制する補強構造体と、を備える
結合構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の結合構造体であって、
前記接続弾性体は、環形状を有しており、
前記第1固定部と前記第2固定部は、前記接続弾性体を介して互いに対向する位置に配
置されていて、
前記第1の方向と前記第2の方向とは直交する、結合構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の結合構造体であって、
前記補強構造体は、前記接続弾性体に着脱可能な剛体であり、前記接続弾性体の前記環
形状の内側に取り付けられることで前記接続弾性体の前記第1の方向に沿った弾性変形に
よる伸縮を規制する、結合構造体。
【請求項4】
請求項2に記載の結合構造体であって、
前記補強構造体は、
前記第1の部材と前記第2の部材のうちの一方に着脱可能に固定される第1補強部と
、
前記第1の部材と前記第2の部材のうちの一方に着脱可能に固定される第2補強部と
を有し、
前記第1補強部と前記第2補強部は、それぞれ前記接続弾性体に接続され、前記接続弾
性体を介して互いに対向し、かつ、前記第1補強部と前記第2補強部とを結ぶ線が前記第
2の方向に沿う位置に配置されており、
前記第1補強部と前記第2補強部が前記第1の部材と前記第2の部材のうちの一方に固
定されることで、前記接続弾性体の前記第1の方向に沿った弾性変形による伸縮を規制す
る、結合構造体。
【請求項5】
請求項2に記載の結合構造体であって、
前記接続弾性体は、複数の環状弾性体が前記第1の方向と前記第2の方向を含む平面上
に並んで配置された構成を有している、結合構造体。
【請求項6】
第1の部材と第2の部材とを結合する結合構造体の設計システムであって、
前記第1の部材に固定される第1固定部と、前記第2の部材に固定される第2固定部と
、前記第1固定部と前記第2固定部にそれぞれ接続され、弾性部材で形成された接続弾性
体であって、前記第1固定部と前記第2固定部を結ぶ第1の方向に沿った弾性変形による
伸縮によって前記第1固定部と前記第2固定部との距離を変更可能な接続弾性体と、のそ
れぞれの形状が入力される入力部と、
前記入力部に入力された入力値を用いて、前記第1の部材と前記第2の部材との結合時
に前記第1の方向に沿って加えたい張力を、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記
接続弾性体を延伸させる力を用いて算出し、算出された前記第2の方向に延伸させる力を
得るために最適化した補強構造体の形状を設計する設計部と、
を備える、設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合構造体および設計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部材同士を溶接などで接合する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)
。特許文献1に記載された車体構造では、センターピラーの下部と、サイドシルとの結合
部に垂直板が接合されている。垂直板が接合されることにより、車体の前後・上下・斜め
方向の荷重に対する変形が抑制される。特許文献2には、スナップフィットを用いて、部
品点数を増加させることなく、複数部材を容易に締結する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-039338号公報
【特許文献2】特開2018-131118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車体構造では、垂直板を補強構造として、センターピラーとサ
イドシルとの内部に追加することにより剛性を向上させている。しかしながら、大きなプ
レス品である垂直板を溶接により、センターピラーおよびサイドシルに接合するため、こ
のような構造の解体は困難である。特許文献2に記載されたスナップフィットを用いた締
結では、締結を解除するための爪の取り外しが容易ではない。また、スナップフィットの
締結および解除を繰り返すと、爪が破損して、締結を行えなくおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、取り
外しが簡単で再利用可能な結合構造体であり、かつ、結合する部材の材料特性を変化させ
ない結合構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、第1の部材と第2の部材とを結合する結合構造体が提供
される。この結合構造体は、前記第1の部材に固定される第1固定部と、前記第2の部材
に固定される第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部にそれぞれ接続され、弾性
部材で形成された接続弾性体であって、前記第1固定部と前記第2固定部を結ぶ第1の方
向に沿った弾性変形による伸縮によって前記第1固定部と前記第2固定部との距離を変更
可能な接続弾性体と、前記接続弾性体を前記第1の方向と交差する第2の方向に延伸させ
ることで、前記接続弾性体の前記第1の方向に沿った弾性変形による伸縮を規制する補強
構造体と、を備える。
【0008】
この構成によれば、接続弾性体が第1の方向に沿って弾性変形可能な状態で、第1固定
部を第1の部材に固定すると共に、第2固定部を第2の部材に固定した後、補強構造体を
接続弾性体に取り付けて、接続弾性体の第1の方向の弾性変形が規制される。補強構造体
の規制により接続弾性体の伸縮に応じた張力が、第1の部材と第2の部材とを固定する力
として機能する。第1の部材と第2の部材との固定を解除する場合には、固定時の逆の手
順、すなわち、補強構造体を接続弾性体から取り外した後に、接続弾性体を第1の方向に
沿って伸ばして、第1固定部および第2固定部の固定を解除すればよい。本構成によれば
、補強構造体を接続弾性体から取り外し、第1固定部および第2固定部を解除する簡単な
作業で、第1の部材と第2の部材との固定と解除とを繰り返すことができる。すなわち、
本構成を用いることにより、第1の部材と第2の部材とを取り外し可能な再利用可能な結
合構造体を実現できる。また、第1の部材と第2の部材との固定および解除において、第
1の部材と第2の部材との破損や加熱などの結合される部材の材料特性を変化させずに、
複数の部材を結合できる。さらに、本構成は、結合したい部材の外側から結合構造体を追
加できるため、部材の一部取り替えによる修繕やアップグレードが容易に行うことができ
る。部材の一部取り替えが容易になることにより、多品種少量生産における一括企画や共
通モジュール領域の設定が可能になる。
【0009】
(2)上記態様の結合構造体において、前記接続弾性体は、環形状を有しており、前記第
1固定部と前記第2固定部は、前記接続弾性体を介して互いに対向する位置に配置されて
いて、前記第1の方向と前記第2の方向とは直交してもよい。
この構成によれば、第1固定部と第2固定部とが環形状の対向する位置に配置されてい
るため、第1固定部と第2固定部とを結んだ第1の方向に沿って接続弾性体が伸縮するこ
とにより、第1の部材と第2の部材との固定と解除とが行われる。本構成によれば、第1
固定部と第2固定部とが環形状における対向しない位置に配置された場合と比較して、第
1の方向に沿う変形時の伸び代が最大となり、かつ、第1の部材と第2の部材との固定時
の張力が最大となる。そのため、結合構造体が第1の部材と第2の部材とを結合する力を
最大にできる。また、接続弾性体が第1の方向に沿った伸び量が最大となるため、第1の
部材と第2の部材との固定および解除が行いやすい。
【0010】
(3)上記態様の結合構造体において、前記補強構造体は、前記接続弾性体に着脱可能な
剛体であり、前記接続弾性体の前記環形状の内側に取り付けられることで前記接続弾性体
の前記第1の方向に沿った弾性変形による伸縮を規制してもよい。
この構成によれば、補強構造体が環形状の接続弾性体の内側に取り付けられて弾性変形
を規制する。補強構造体は、剛体であるため、接続弾性体に接触している部分の全てで接
続弾性体の弾性変形を規制する。そのため、例えば補強構造体の一部が固定される等の方
法により、固定された接続弾性体の一部に規制する力が加わるよりも、接続弾性体の全体
にバランス良く規制する力が加わる。この結果、接続弾性体の破損を抑制でき、結合構造
体の寿命を延ばして再利用の回数を向上させることができる。
【0011】
(4)上記態様の結合構造体において、前記補強構造体は、前記第1の部材と前記第2の
部材のうちの一方に着脱可能に固定される第1補強部と、前記第1の部材と前記第2の部
材のうちの一方に着脱可能に固定される第2補強部とを有し、前記第1補強部と前記第2
補強部は、それぞれ前記接続弾性体に接続され、前記接続弾性体を介して互いに対向し、
かつ、前記第1補強部と前記第2補強部とを結ぶ線が前記第2の方向に沿う位置に配置さ
れており、前記第1補強部と前記第2補強部が前記第1の部材と前記第2の部材のうちの
一方に固定されることで、前記接続弾性体の前記第1の方向に沿った弾性変形による伸縮
を規制してもよい。
この構成によれば、第1の方向と異なる第2の方向に環形状の接続弾性体を伸ばして、
第1補強部と第2補強部とに固定することで、接続弾性体の第1の方向に沿う伸びが規制
される。これにより、接続弾性体の環形状の縮む力である張力が、第1の部材と第2の部
材とを固定する力として機能する。
【0012】
(5)上記態様の結合構造体において、前記補強構造体は、複数の環状弾性体が前記第1
の方向と前記第2の方向を含む平面上に並んで配置された構成を有していてもよい。
この構成によれば、1つの大きな環形状の接続弾性体ではなく、複数の環状弾性体によ
り1つの接続弾性体が形成される。そのため、用途に応じて固有の形状を有する接続弾性
体および補強構造体を製造せずに、同じ形状の複数の環状弾性体を用途に応じて組み合わ
せた接続弾性体および補強構造体を製造できる。これにより、結合構造体の製造コストを
抑制し、結合構造体を容易に製造できる。
【0013】
(6)本発明の他の一形態によれば、第1の部材と第2の部材とを結合する結合構造体の
設計システムが提供される。この設計システムは、前記第1の部材に固定される第1固定
部と、前記第2の部材に固定される第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部にそ
れぞれ接続され、弾性部材で形成された接続弾性体であって、前記第1固定部と前記第2
固定部を結ぶ第1の方向に沿った弾性変形による伸縮によって前記第1固定部と前記第2
固定部との距離を変更可能な接続弾性体と、のそれぞれの形状が入力される入力部と、前
記入力部に入力された入力値を用いて、前記第1の部材と前記第2の部材との結合時に前
記第1の方向に沿って加えたい張力を、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記接続
弾性体を延伸させる力を用いて算出し、算出された前記第2の方向に延伸させる力を得る
ために最適化した補強構造体の形状を設計する設計部と、を備える。
この構成によれば、ユーザは、第1の部材と第2の部材とを結合するための補強構造体
の形状を簡単に設計できる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、結合構造体、固定
部材、結合構造体の設計装置、構造体結合方法、固定方法、結合構造体の設計方法、およ
びこれらの装置を備える又は方法を実現するシステム、これら装置または方法を実行する
ためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装
置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態としての結合部材により結合された構造体の概略斜視図である。
【
図2】第1部材および第2部材の分解斜視図である。
【
図5】接続弾性体と、第1固定部と、第2固定部との概略正面図である。
【
図6】接続弾性体と、第1固定部と、第2固定部との概略側面図である。
【
図7】接続弾性体がZ軸負方向側に延伸した状態の接続弾性体の概略正面図である。
【
図8】第2固定部が第2部材の第2係合部に固定された状態の接続弾性体の概略正面図である。
【
図9】接続弾性体の内側に補強部材が取り付けられた状態の概略正面図である。
【
図10】第2実施形態の構造体の概略斜視図である。
【
図11】
図10に示されるA1部が拡大された概略正面図である。
【
図13】第3実施形態の伸縮していない状態の接続弾性体の概略正面図である。
【
図14】第3実施形態の延伸した状態の接続弾性体の概略正面図である。
【
図15】補強部材の形状を設計する設計システムのブロック図である。
【
図17】Z軸方向に沿って延伸した状態の接続弾性体の概略正面図である。
【
図19】変形例3の伸縮していない状態の接続弾性体の概略正面図である。
【
図20】変形例3の延伸した状態の接続弾性体の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての結合部材10により結合された構造体100の概
略斜視図である。
図1に示されるように、構造体100は、第1部材(第1の部材)20
と、第2部材(第2の構造体)30と、第1部材20と第2部材30とを結合する結合部
材(結合構造体)10と、を備えている。本実施形態では、第1部材20および第2部材
30の外側から結合部材10により、第1部材20と第2部材30とが結合されている。
第1部材20と第2部材30との組立時に、結合部材10が弾性変形の伸びを利用し、組
立後の第1部材20と第2部材30との固定時に、結合部材10の弾性変形を規制した張
力を利用して固定する。そのため、本実施形態の弾性変形を利用した結合部材10を用い
ることにより、第1部材20と第2部材30との取り外しが簡単であり、結合部材10の
再利用が可能である。さらに、結合部材10の結合および解除を行っても、第1部材20
および第2部材30を破損させることなく、結合部材10は、第1部材20および第2部
材30の材料特性を変化させないで、第1部材20と第2部材30とを結合できる。
【0017】
図2は、第1部材20および第2部材30の分解斜視図である。
図2に示されるように
、第1部材20は、直方体における一部の面がない形状を有する。本実施形態の第1部材
20は、鉄やアルミニウムなどの金属性の材料で形成されている。なお、
図2には、略直
方体形状を有する第1部材20の各辺に平行なX,Y,Z軸から構成される直交座標系C
Sが示されている。
図2に示される直交座標系CSは、
図1および
図3以降に示される直
交座標系CSと対応している。
【0018】
第1部材20は、係合面21と、係合面21に接続する側面22,23と、係合面21
に対向する背面25と、係合面21と側面22,23と背面25とを接続する底面24と
、から構成されている。係合面21と、側面22,23と、背面25とは、XY平面に平
行な底面24から、Z軸負方向に沿って延びる長方形の面である。係合面21と背面25
とにおけるZ軸負方向側へと延びる長さは同じである。係合面21における底面24と反
対側の一部には、矩形状の開口である第1係合部21Hが形成されている。第1係合部2
1Hには、後述する結合部材10の第1固定部16(
図3)が係合する。
【0019】
側面22と側面23とにおけるZ軸負方向側へと延びる長さは、同じであり、係合面2
1および背面25がZ軸負方向側へと伸びる長さよりも長い。係合面21および背面25
よりも更にZ軸負方向側へと延びた側面22,23の一部は、
図1に示されるように、後
述する第2部材30に開口として形成されたスリット34H2,34H3,36H2,3
6H3を挿通する。
【0020】
第2部材30は、一部に開口が形成された直方体形状を有する。本実施形態の第2部材
30は、鉄やアルミニウムなどの金属性の材料で形成されている。第2部材30は、YZ
平面に平行な面でX軸に沿った両端に位置する底面32,33と、底面32,33に接続
してZ軸正方向に位置すると共にXY平面に平行な面を有する挿通面34と、挿通面34
に対向する係合面36と、挿通面34と係合面36とに接続してY軸負方向側に位置する
と共にZX平面に平行な面を有する正面31と、正面31に対向する背面35と、を備え
ている。
【0021】
挿通面34には、2つの矩形状のスリット34H2,34H3が形成されている。スリ
ット34H2は、Y軸に沿って延びる矩形状の開口である。スリット34H2は、第1部
材20の側面22の断面よりも大きな面積を有する。スリット34H3は、スリット34
H2と同じ形状を有する。スリット34H2のY軸に平行な中心軸と、スリット34H3
のY軸に平行な中心軸との距離は、第1部材20の側面22と側面23との距離と同じで
ある。そのため、第1部材20と第2部材との組み付け時に、第1部材20の側面22,
23のそれぞれは、第2部材30の挿通面34におけるスリット34H2,34H3のそ
れぞれに挿通する。
【0022】
係合面36には、挿通面34のスリット34H2,32H3と同じ形状のスリット36
H2,36H3と、Y軸負方向側に形成された開口である第2係合部36H1とが形成さ
れている。係合面36においてスリット36H2,36H3のそれぞれが形成された位置
は、挿通面34においてスリット34H2,34H3のそれぞれが形成された位置と同じ
である。また、第1部材20の係合面21と背面25との距離は、挿通面34のY軸に沿
った長さよりも若干小さい。さらに、第1部材20の係合面21および背面25の下端か
ら、側面22,23の下端までの長さは、第2部材30の挿通面34から係合面36まで
の距離よりも大きい。そのため、第1部材20と第2部材30とを組み付けると、第1部
材20の側面22,23が、第2部材の挿通面34のスリット34H2,34H3を挿通
した後、係合面36のスリット36H2,36H3を挿通する。その後、第1部材20の
係合面21と背面25とのそれぞれの下端が挿通面34に接触して、
図1に示される状態
に組み付けられる。
【0023】
第2部材30の係合面36に形成された第2係合部36H1は、X軸に沿って延びる矩
形状の開口である。第2係合部36H1は、係合面36のX軸に沿って、スリット36H
2と、スリット36H3との中間に形成されている。第1部材20と第2部材30とを組
み付けた
図1に示される状態において、第1部材20の第1係合部21Hの重心と、第2
部材30の第2係合部36H1との重心とを結んだ線は、YZ平面と略平行な面上に位置
する。
【0024】
図3は、結合部材10の概略正面図である。結合部材10は、Z軸正方向側に形成され
た第1固定部16と、Z軸負方向側に形成された第2固定部17と、第1固定部16と第
2固定部17とのそれぞれに接続された環形状の接続弾性体14と、接続弾性体14の環
形状の内側に取り付けられている補強部材(補強構造体)11と、を備えている。
【0025】
図4は、補強部材11の概略正面図である。補強部材11は、鉄などの剛体により形成
されている。補強部材11は、接続弾性体14に着脱可能な部材である。補強部材11は
、ZX平面上において、八角形の外枠12と、8角形の内部に張り巡らされた複数の梁1
3と、を備えている。
図4では示されていないが、外枠12には、全周に亘って八角形の
重心に向かって凹んだ溝が形成されている。複数の梁13の形状や太さは、トポロジー最
適化により決定される。詳細については後述するが、補強部材11は、外枠12に形成さ
れた溝に接続弾性体14が嵌め込まれる、すなわち、環形状の接続弾性体14の内側に取
り付けられることで接続弾性体14の弾性変形による伸縮を規制する。
【0026】
図5は、接続弾性体14と、第1固定部16と、第2固定部17との概略正面図である
。
図6は、接続弾性体14と、第1固定部16と、第2固定部17との概略側面図である
。
図5に示されるように、接続弾性体14は、補強部材11が取り付けられていない状態
で、補強部材11よりも若干小さい八角形の形状を有する。接続弾性体14は、樹脂など
の伸縮可能な弾性体で形成されている。第1固定部16と第2固定部17とは、X軸を挟
んで、接続弾性体14を介して互いに対向する位置に配置されている。第1固定部16お
よび第2固定部17は、接続弾性体14と異なり、伸縮できない剛体(例えば、鉄、アル
ミニウム、およびプラスチックなど)で形成されている。
【0027】
第1固定部16のX軸に沿う長さは、第1部材20の係合面21に形成された第1係合
部21HのX軸に沿う長さよりも小さい。
図6に示されるように、第1固定部16は、接
続弾性体14に接続してZ軸正方向側に延びている弾性体接続部16Aと、弾性体接続部
16Aに接続してY軸正方向側に延びている溝部16Bと、溝部16Bに接続してZ軸負
方向側に延びている返し部16Cと、を備えている。弾性体接続部16Aと、溝部16B
と、返し部16Cとにより、
図6に示されるように、溝部16BがZ軸正方向側に凹んだ
溝形状を形成する。そのため、後述するように、第1固定部16は、第1部材20の第1
係合部21Hに係合可能である。
【0028】
図5に示される第2固定部17のX軸に沿う長さは、第2部材30の係合面36に形成
された第2係合部36H1のX軸に沿う長さよりも小さい。
図6に示されるように、第2
固定部17は、接続弾性体14に接続してZ軸負方向側に延びている弾性体接続部17A
と、弾性体接続部17Aに接続してY軸正方向側に延びている溝部17Bと、溝部17B
に接続してZ軸正方向側に延びている返し部17Cと、を備えている。溝部17BのY軸
に沿って伸びる長さは、第2部材30の係合面36におけるY軸負方向側の端部から第2
係合部36H1のY軸負方向側の端部までの距離よりも若干長い。第1固定部16と同じ
ように、第2固定部17では、弾性体接続部17Aと、溝部17Bと、返し部17Cとに
より、溝部17BがZ軸負方向側に凹んだ溝形状を形成する。そのため、後述するように
、第2固定部17は、第2部材30の第2係合部36H1に係合可能である。
【0029】
図7から
図9までの各図は、第1部材20と第2部材30とを結合する際の説明図であ
る。
図7~9には、結合部材10の周りが拡大された概略正面図が示されている。
図7に
は、第1部材20と第2部材30とを結合する際に、結合部材10の第1固定部16が第
1部材20の第1係合部21Hに固定され、接続弾性体14がZ軸負方向側に延伸した状
態が示されている。
図7に示されるように、第1部材20と第2部材30とを結合するた
めに、結合部材10の第1固定部16を第1部材20の第1係合部21Hに係合させてか
ら、結合部材10の第2固定部17をZ軸負方向側に引っ張る。接続弾性体14は、第1
固定部16と第2固定部17とを結ぶZ軸方向(第1の方向)に沿った弾性変形の伸縮に
よって第1固定部16と第2固定部17との距離を変更可能であるため、
図7に示される
ように接続弾性体14がZ軸負方向側に延びる。
【0030】
図8には、結合部材10の第1固定部16に加えて、第2固定部17が第2部材30の
第2係合部36H1(不図示)に固定された状態が示されている。
図8に示される第1固
定部16が第1係合部21Hに固定され、かつ、第2固定部17が第2係合部36H1に
固定された状態では、接続弾性体14がZ軸方向に沿って伸縮可能であるため、第1部材
20は、第2部材30に対してZ軸方向に沿って移動可能である。
【0031】
図9には、接続弾性体14の内側に補強部材11を取り付けた状態が示されている。接
続弾性体14に補強部材11が取り付けられると、補強部材11の外枠12が全周に亘っ
て接続弾性体14の伸縮を規制する。特に、補強部材11は、補強部材11の取り付け前
に接続弾性体14が伸縮可能であった第1固定部16と第2固定部17とを結ぶZ軸方向
に対して、直交するX軸方向(第2の方向)に延伸させる。これにより、補強部材11が
接続弾性体14のZ軸方向に沿った弾性変形の伸縮を規制し、
図1に示されるような結合
された構造体100が完成する。
【0032】
結合部材10により結合された構造体100の結合を解除して、第1部材20と第2部
材30とに分解するためには、結合時と逆のプロセスが行われればよい。具体的には、図
9に示される状態から、補強部材11を取り外して、
図8に示された状態に移行する。そ
の後、結合部材10の第2固定部17を第2部材30の第2係合部36H1(
図7~9で
不図示)から取り外して、
図7に示された状態に移行する。その後、結合部材10の第1
固定部16を第1部材20の第1係合部21Hから取り外せばよい。なお、結合時および
解除時において、第1固定部16と第2固定部17との結合および解除の順番は反対であ
ってもよい。
【0033】
以上のように、本実施形態の結合部材10の接続弾性体14は、第1固定部16と第2
固定部17とを結ぶZ軸方向(第1の方向)に沿った弾性変形の伸縮によって第1固定部
16と第2固定部17との距離を変更可能である。補強部材11は、補強部材11の取り
付け前に接続弾性体14が伸縮可能であった第1固定部16と第2固定部17とを結ぶZ
軸方向に対して、直交するX軸方向(第2の方向)に延伸させる。これにより、補強部材
11は、接続弾性体14のZ軸方向に沿った弾性変形の伸縮を規制する。本実施形態では
、
図7~9に示されるように、接続弾性体14がZ軸方向に沿って弾性変形可能な状態で
、第1固定部16を第1部材20に固定すると共に、第2固定部17を第2部材30に固
定する。その後、補強部材11を接続弾性体14に取り付けることにより、接続弾性体1
4のZ軸方向に沿った弾性変形が規制される。補強部材11の規制により接続弾性体14
の伸縮に応じた張力が、第1部材20と第2部材30とを固定する力として機能する。第
1部材20と第2部材30との固定を解除する場合には、固定時の逆の手順、すなわち、
補強部材11を接続弾性体14から取り外した後に、接続弾性体14をZ軸方向に沿って
伸ばして、第1固定部16および第2固定部17の固定を解除すればよい。これにより、
本実施形態では、補強部材11を接続弾性体14から取り外し、第1固定部16および第
2固定部17を解除する簡単な作業で、第1部材20と第2部材30との固定と解除とを
繰り返すことができる。すなわち、第1部材20と第2部材30とを取り外し可能で再利
用可能な結合部材10を実現できる。また、第1部材20と第2部材30との固定および
解除において、第1部材20と第2部材30との破損や加熱などの結合される部材の材料
特性を変化させずに、複数の部材を結合できる。さらに、本実施形態では、結合したい部
材の外側から結合部材10を追加できるため、部材の一部取り替えによる修繕やアップグ
レードが容易におこなえる。部材の一部取り替えが容易になることにより、多品種少量生
産における一括企画や共通モジュール領域の設定が可能になる。
【0034】
また、本実施形態では、接続弾性体14は、第1固定部16と第2固定部17とのそれ
ぞれに接続された環形状を有する。第1固定部16と第2固定部17とは、X軸を挟んで
、接続弾性体14を介して互いに対向する位置に配置されている。本実施形態では、第1
固定部16と第2固定部17とが環形状の対向する位置に配置されているため、第1固定
部16と第2固定部17とを結んだZ軸方向に沿って接続弾性体14が伸縮する。これに
より、第1部材20と第2部材30との固定と解除とが行われる。本実施形態によれば、
第1固定部16と第2固定部17とが環形状における対向しない位置に配置された場合と
比較して、Z軸方向に沿う変形時の伸び代が最大となり、かつ、第1部材20と第2部材
30との固定時の張力が最大となる。そのため、結合部材10が第1部材20と第2部材
30とを結合する力を最大にできる。また、接続弾性体14がZ軸方向に沿った伸び量が
最大となるため、第1部材20と第2部材30との固定および解除を行いやすい。
【0035】
また、環形状の接続弾性体14の内側に取り付けられることで接続弾性体14の弾性変
形による伸縮を規制する。本実施形態の補強部材11は、剛体であるため、接続弾性体1
4に接触している部分の全てで接続弾性体14の弾性変形を規制する。そのため、例えば
補強部材11の一部が固定される等の方法により、固定された接続弾性体14の一部に規
制する力が加わるよりも、接続弾性体14の全体にバランス良く規制する力が加わる。こ
の結果、接続弾性体14の破損を抑制でき、構造体100の寿命を延ばして再利用の回数
を向上させることができる。
【0036】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態の構造体100aの概略斜視図である。第2実施形態の構造体
100aでは、第1実施形態の構造体100と比較して、結合部材10が補強部材11を
備えない点と、補強部材11の代わりに接続弾性体14の一部に配置された第1補強部1
1A(
図11)および第2補強部11Bが接続弾性体14の伸縮を規制する点と、が異な
る。そのため、第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形
態と同じ構成等についての説明を省略する。
【0037】
図11は、
図10に示されるA1部が拡大された概略正面図である。
図11に示される
ように、第2実施形態の第2部材30aの正面31aには、爪部31Gが形成されている
。第2実施形態の結合部材10aの接続弾性体14aの一部には、第1補強部11Aが配
置されている。
【0038】
図12は、
図11に示されるB1断面の概略図である。
図12に示されるように、第2
部材30aの正面31aは、平面部31Fと、爪部31Gとを備えている。爪部31Gは
、ZX平面に平行な平面部31FからY軸正方向側に延びた溝部31G1と、溝部31G
1に接続してX軸正方向に延びた返し部31G2と、を備えている。平面部31Fと、溝
部31G1と、返し部31G2とにより、
図12に示されるように、溝部31G1がX軸
負方向側に凹んだ溝形状を形成する。
【0039】
第1補強部11Aは、接続弾性体14aの一部に形成され、
図12に示せるように接続
弾性体14aよりも太くて断面が円形状の弾性変形可能な部分を形成する。第1補強部1
1Aが配置された接続弾性体14aの断面の直径は、第2部材30aの平面部31Fと返
し部31G2との距離よりも若干小さい。
【0040】
図10に示されるように、第2実施形態の第2部材30aでは、正面31aにおいて爪
部31Gに対向する位置に、同形状の爪部31GGが形成されている。爪部31GGが正
面31aにおいて形成されている位置は、係合面36に形成された第2係合部36H1の
重心を通るYZ平面を挟んで爪部31Gの線対称の位置である。第2実施形態の結合部材
10aでは、接続弾性体14aにおいて、第1補強部11Aが配置された位置と対向する
位置に第2補強部11Bが形成されている。第2補強部11Bが形成される位置は、接続
弾性体14aの重心を通るYZ平面を挟んで第1補強部11Aの線対称の位置である。
【0041】
以上のように、第1補強部11Aと第2補強部11Bとは、それぞれ接続弾性体14a
に接続され、接続弾性体14aを介して互いに対向している。また、第1補強部11Aと
第2補強部11Bとを結ぶ線は、X軸方向(第2の方向)に沿う位置に配置されている。
そのため、
図10に示されるように、第1補強部11Aが第2部材30aの爪部31Gに
固定され、かつ、第2補強部11Bが第2部材30aの爪部31GGに固定されることに
より、接続弾性体14aのZ軸方向に沿った弾性変形の伸縮が規制される。すなわち、第
2実施形態の構造体100aでは、Z軸方向と異なるX軸方向に環形状の接続弾性体14
aを延伸させて、第1補強部11Aを爪部31Gに固定すると共に第2補強部11Bを爪
部31GGに固定することで、接続弾性体14aのZ軸方向に沿う伸びが規制される。こ
れにより、接続弾性体14aの環形状の縮む力である張力が、第1部材20と第2部材3
0aとを固定する力として機能する。
【0042】
<第3実施形態>
図13および
図14は、第3実施形態の接続弾性体14bの概略正面図である。
図13
,
図14には、第3実施形態の結合部材のうち、補強部材を除く接続弾性体14b、第1
固定部16、および第2固定部17が示されている。第3実施形態では、第1実施形態と
比較して、接続弾性体14bが2つの環状の弾性体である環状部材(環状弾性体)14R
1,14R2を有している点と、環状部材14R,14R2に合わせて補強部材の形状が
異なる点と、が異なる。そのため、第3実施形態では、第1実施形態と異なる点について
説明し、第1実施形態と同じ形状等についての説明を省略する。
【0043】
図13には、接続弾性体14bの弾性変形が規制されていない状態が示されている。図
13に示されるように、接続弾性体14bは、第1固定部16の下端側であるZ軸負方向
側に接続している環状部材14R1と、一端であるZ軸正方向側が環状部材14R1に接
続されると共に他端であるZ軸負方向側が第2固定部17の上端側であるZ軸正方向側に
接続している環状部材14R2と、を備えている。
【0044】
環状部材14R1,14R2のそれぞれは、同じ形状を有しており、樹脂などの伸縮可
能な弾性体である。環状部材14R1,14R2の形状は、補強部材で弾性変形が規制さ
れていない状態で、第1固定部16と第2固定部17とを結ぶZ軸方向に対して交差する
X軸方向に長軸を有する楕円である。そのため、環状部材14R1,14R2は、Z軸方
向とX軸方向とを含むZX平面上に並んで配置さているとも換言できる。なお、図示され
ていない第3実施形態の補強部材は、第1実施形態の補強部材11と同じように、弾性変
形が規制されていない環状部材14R1,14R2の内側と同じ面積を有する剛体で形成
されている。そのため、環状部材14R1,14R2のそれぞれの内側に第3実施形態の
補強部材が取り付けられることで、環状部材14R1,14R2のそれぞれの弾性変形が
規制される。
【0045】
図14には、第1固定部16と第2固定部17とを結ぶZ軸方向に沿って伸びた状態の
接続弾性体14bが示されている。
図14に示されるように、補強部材により弾性変形が
規制されていない環状部材14R1,14R2は、Z軸方向などの所定の方向に沿って伸
縮できる。環状部材14R1,14R2の形状が変化してZ軸方向に沿って延伸すると、
第1固定部16と第2固定部17とのZ軸方向に沿う距離が大きくなる。これにより、第
1実施形態の結合部材10のように、接続弾性体14bが第1部材20と第2部材30と
を固定した後に、補強部材により各環状部材14R1,14R2の弾性変形が規制される
。この結果、第1部材20と第2部材30とが環状部材14R1,14R2の張力により
固定される。
【0046】
以上のように、第3実施形態では、環状部材14R1,14R2は、Z軸方向とX軸方
向とを含むZX平面上に並んで配置さている。すなわち、第3実施形態では、第1実施形
態のように1つの大きな環形状の接続弾性体14ではなく、複数の環状部材14R1,1
4R2により1つの接続弾性体14bが形成される。そのため、用途に応じて固有の形状
を有する接続弾性体および補強部材を製造せずに、同じ形状の複数の環状部材14R1,
14R2と、環状部材14R1,14R2に取り付ける補強部材と、を用途に応じて組み
合わせた接続弾性体14bを製造できる。これにより、結合部材の製造コストを抑制し、
結合部材を容易に製造できる。
【0047】
<第4実施形態>
図15は、補強部材11(
図4)の形状を設計する設計システム200のブロック図で
ある。設計システム200は、第1固定部16と、第2固定部17と、接続弾性体14と
のそれぞれの形状が設計領域として入力されることにより、トポロジー最適化を用いて、
補強部材11の外枠12および梁13の太さや形状を自動で設計する。
【0048】
設計システム200は、データセンターなどで用いられるコンピュータ(computer)で
ある。
図15に示されるように、設計システム200は、第1固定部16と、第2固定部
17と、接続弾性体14とのそれぞれの形状の入力を受け付ける入力部210と、入力部
210が受け付けた入力値を用いて補強部材11の形状を設計する設計部220と、を備
えている。
【0049】
設計部220は、
図15に示されるように、接続弾性体14の弾性変形を規制するため
にZ軸方向(第1の方向)に加えたい張力を設定する張力設定部221と、張力設定部2
21により設定された張力から接続弾性体14をZ軸方向に直交するX軸方向(第2の方
向)に延伸させる力を算出する最適化部222として機能する。張力設定部221は、入
力部210のようにユーザから入力される張力を設定値として用いてもよいし、予め設定
された張力の値を設定値として用いてもよい。
【0050】
最適化部222は、張力設定部221により設定された設定値を用いてX軸方向に加え
る力を算出する。また、最適化部222は、張力設定部221により設定された設定値を
トポロジー最適化に用いることにより、設計領域である接続弾性体14の内側に取り付け
られる補強部材11の形状を設計する。最適化部222は、外枠12の太さ、および、梁
13の形状および太さを変化させて最適化することにより、補強部材11の形状を決定す
る。このように、
図15に示される設計システム200を用いることにより、システムの
ユーザは、第1部材20と第2部材30とを結合するための補強部材11を備える結合部
材10を簡単に設計できる。
【0051】
<実施形態の変形例>
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種
々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また
、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウ
ェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成
の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0052】
<変形例1>
上記第1実施形態から第3実施形態までの各実施形態では、第1固定部16と第2固定
部17との距離を変更可能な接続弾性体14と、接続弾性体14の弾性変形による伸縮を
規制する補強部材11とを備える結合部材10の一例について説明したが、結合部材10
が備える構成や形状については変形可能である。例えば、結合部材10における第1固定
部16と第2固定部17とのそれぞれは、第1部材20と第2部材30とのそれぞれに固
定できる形状の範囲で変形可能であり、周知の形状を用いることができる。
【0053】
接続弾性体14,14aおよび環状部材14R1,14R2は、環形状を有していたが
、環形状以外の形状を有していてもよい。第1固定部16と第2固定部17とは、接続弾
性体14を介して対向する位置に配置されていたが、異なる位置に配置されていてもよい
。例えば、
図5に示される接続弾性体14において、ZX平面の重心に対して45°の位
置と、135°の位置とに第1固定部と第2固定部とのそれぞれが配置されていてもよい
。
【0054】
接続弾性体14,14a,14bの弾性変形を規制する補強構造体については、第1実
施形態のような接続弾性体14の内側に取り付けられる剛体であってもよいし、第2部材
30などの他の部材に固定される第1補強部11Aや第2補強部11Bであってもよい。
第1実施形態では、補強部材11の外枠12の全周に亘って凹んだ溝が形成され、当該溝
に接続弾性体14がはめ込まれることにより、補強部材11が接続弾性体14の内側に取
り付けられたが、接続弾性体14に対する補強部材11の取り付け方法については、周知
の方法を用いることができる。接続弾性体14,14a,14bの弾性変形を規制する補
強構造体は、必ずしも第1固定部16と第2固定部17とを結んだ方向(第1の方向)に
直交した方向ではなく、所定の角度(例えば60°)を有する交差した方向(第2の方向
)に接続弾性体14,14a,14bを延伸させることにより、第1の方向の伸縮を規制
してもよい。
【0055】
第2実施形態では、接続弾性体14aの弾性変形を規制するために、
図11,12に示
されるように、接続弾性体14aの一部に配置された第1補強部11Aおよび第2補強部
11Bのそれぞれが爪部31G,31GGに溝形状に嵌め込まれた。しかし、その他の方
法により接続弾性体14aの弾性変形が規制されてもよい。例えば、第1補強部11Aお
よび第2補強部11Bにボルトが挿通する孔が形成され、かつ、ボルトの雄ネジと螺合す
る雌ネジが第2部材30aに形成されていてもよい。この場合に、第1補強部11Aおよ
び第2補強部11Bに形成された孔を挿通したボルトの雄ネジが、第2部材30aの雌ネ
ジに螺合することにより、第1補強部11Aおよび第2補強部11Bの位置が固定される
。この結果、第1補強部11Aと第2補強部12Bとを結ぶ方向に沿って接続弾性体14
aが引っ張られるため、第1固定部16と第2固定部17とを結ぶ方向の伸縮が規制され
る。
【0056】
図16は、変形例1の結合部材10cの概略正面図である。変形例1の結合部材10c
では、第1実施形態の結合部材10と比較して、接続弾性体14cの形状および補強部材
11cの形状が異なる。第3実施形態の接続弾性体14cの形状は、円や楕円ではなく、
図16に示されるように、Z軸を長軸とする長方形から、Z軸に沿う中間部分が内側に凹
んだ凹部14Dを有する多角形である。第3実施形態の補強部材11cは、接続弾性体1
4cの内側に凹んだ凹部14DがX軸方向に沿って外側に延伸することを規制する剛体で
ある。なお、補強部材11cは、第1実施形態と異なり、接続弾性体14cの内側ではな
く外側に係合して接続弾性体14cの弾性変形を規制する。補強部材11cは、
図16に
示されるように、接続弾性体14cの全周ではなく、凹部14Dのみに接触する。
【0057】
図17は、Z軸方向に沿って伸びた状態の接続弾性体14cの概略正面図である。
図1
7に示されるように、接続弾性体14cは、補強部材11cにより弾性変形が規制されて
いない状態では、Z軸方向に沿って伸縮可能である。接続弾性体14cは、凹部14Dが
X軸に沿って外側に広がることにより、Z軸方向に沿って伸びることできる。
【0058】
<変形例2>
図18は、変形例2の構造体100dの概略斜視図である。変形例2の構造体100d
では、第2実施形態の構造体100aと比較して、第1補強部11Adおよび第2補強部
11Bdの形状と、第2部材30dの正面31dに形成された爪部31Gd,31GGd
の位置と、が異なる。
【0059】
変形例2の第1補強部11Adおよび第2補強部11Bdは、剛体で形成されている。
第1補強部11Adは、環形状の接続弾性体14d上に配置されずに、
図18に示される
ように、接続弾性体14dの一部と係合すると共に、第2部材30dの正面31dに形成
された爪部31Gdに固定される。同じように、第2補強部11Bdは、環形状の接続弾
性体14d上に配置されずに、接続弾性体14dの一部と係合すると共に、第2部材30
dの正面31dに形成された爪部31GGdに固定される。爪部31Gd,31GGdの
それぞれが、正面31dにおいてX軸に平行な同軸上に形成されている。そのため、爪部
31Gd,31GGdに固定される第1補強部11Adと第2補強部11Bdとを結ぶ方
向は、X軸に平行な方向であり、第1固定部16と第2固定部17と結ぶZ軸方向に直交
する。以上のように、第1補強部11Adおよび第2補強部12Bdは、接続弾性体14
d上に配置されている必要はなく、接続弾性体14dと別体で形成されてもよい。
【0060】
<変形例3>
図19および
図20は、変形例3の接続弾性体14eの概略正面図である。
図19,2
0には、第3実施形態(
図13,14)と同じように、変形例3の結合部材のうち、補強
部材を除く接続弾性体14e、第1固定部16e、および第2固定部17eが示されてい
る。変形例2の接続弾性体14eは、第3実施形態の接続弾性体14bと比較して、9つ
の環状部材14R1e~14R9eを有している点が異なる。
【0061】
図19には、接続弾性体14eの弾性変形が規制されていない状態が示されている。各
環状部材14R1e~14R9eは、同じ楕円形状を有しており、樹脂などの伸縮可能な
弾性体である。
図20に示されるように、9つの環状部材14R1e~14R9eは、Z
X平面上において、X軸とZ軸とのそれぞれに沿って3個ずつ、計9個配置されている。
【0062】
Z軸正方向側に位置する3つの環状部材14R1e,14R4e、14R7eは、第1
固定部16のZ軸負方向側に接続されている。Z軸負方向側に位置する3つの環状部材1
4R3e,14R6e、14R9eは、第2固定部17のZ軸正方向側に接続されている
。また、6つの環状部材14R1e~14R3e,14R7e~14R9eのそれぞれは
、隣接する2つの環状部材に接続されている。2つの環状部材14R4e,14R6eの
それぞれは、隣接する3つの環状部材に接続されている。中心に配置された環状部材14
R5eは、隣接する4つの環状部材14R2e,14R4e,14R6e,14R8eに
接続している。
【0063】
なお、
図19,20に図示されていない変形例2の補強部材は、第1実施形態の補強部
材11と同じように、弾性変形が規制されていない環状部材14R1e~14R9eの内
側と同じ面積を有する剛体で形成されている。そのため、環状部材14R1e~14R9
eのそれぞれの内側に第3実施形態の補強部材が取り付けられることで、環状部材14R
1e~14R9eのそれぞれの弾性変形が規制される。
【0064】
図20には、第1固定部16eと第2固定部17eとを結ぶZ軸方向に沿って伸びた状
態の接続弾性体14eが示されている。
図20に示されるように、補強部材により弾性変
形が規制されていない環状部材14R1e~14R9eは、Z軸方向などの所定の方向に
沿って伸縮できる。環状部材14R1e~14R9eの形状が変形してZ軸方向に沿って
伸びると、第1固定部16eと第2固定部17eとのZ軸方向に沿う距離が大きくなる。
【0065】
<変形例4>
図21は、変形例4の構造体100fの概略斜視図である。構造体100fは、第1部
材20fと、第2部材30fと、第1部材20fと第2部材30とを結合する結合部材1
0に加えて、第3部材40と、第2部材30fと第3部材40とを結合する結合部材10
と、を備えている。
図21に示されるように、2つの結合部材10のうちの一方では、第
1固定部16が第1部材20fに固定され、第2固定部17が第2部材30fに固定され
ている。2つの結合部材10のうちの他方では、第1固定部16が第2部材30fに固定
され、第2固定部17が第2部材30fに固定されている。2つの結合部材10により、
第1部材20fと第2部材30fとが結合され、第2部材30fと第3部材40とが固定
されている。このように、複数の部材が複数の結合構造体により結合されていてもよい。
【0066】
<変形例5>
図22は、変形例5の構造体100gの概略斜視図である。構造体100gでは、変形
例4の構造体100fと比較して、第2部材30gに結合される直方体形状の第3部材4
0gおよび第4部材50が、互いの部材の長軸が直交ではない角度で交差している点が異
なる。すなわち、結合部材10の第1固定部16と第2固定部17とを結ぶZ軸方向と直
交せずに、所定の傾きを有する角度(例えば60°)で、第2部材30gに対して第3部
材40gおよび第4部材50が結合されている。このように、結合部材10の接続弾性体
14が結合時に伸縮する方向と、結合される2つの部材の長軸の方向とが平行でなくても
よい。
【0067】
上記実施形態および変形例では、一例として定義した直交座標系CSを用いて、結合部
材10等の形状についてX,Y,Z軸を用いて説明したが、結合部材10等の形状につい
ては、定義される座標系によって異なる表現を用いることもできる。本明細書では、Z軸
が鉛直方向に平行な軸として各形状を説明したが、例えば、第1部材20と第2部材30
とが水平方向に対して90°傾いた状態であっても、直交座標系CSを同様に水平方向に
90°傾ければ、傾けた後の直交座標系CSを用いた説明は、同じ形状や位置関係を説明
していることと同義である。
【0068】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施
の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない
。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると
共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なも
のとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0069】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
第1の部材と第2の部材とを結合する結合構造体であって、
前記第1の部材に固定される第1固定部と、
前記第2の部材に固定される第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部にそれぞれ接続され、弾性部材で形成された接続弾性
体であって、前記第1固定部と前記第2固定部を結ぶ第1の方向に沿った弾性変形による
伸縮によって前記第1固定部と前記第2固定部との距離を変更可能な接続弾性体と、
前記接続弾性体を前記第1の方向と交差する第2の方向に延伸させることで、前記接続
弾性体の前記第1の方向に沿った弾性変形による伸縮を規制する補強構造体と、を備える
結合構造体。
[適用例2]
適用例1に記載の結合構造体であって、
前記接続弾性体は、環形状を有しており、
前記第1固定部と前記第2固定部は、前記接続弾性体を介して互いに対向する位置に配
置されていて、
前記第1の方向と前記第2の方向とは直交する、結合構造体。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の結合構造体であって、
前記補強構造体は、前記接続弾性体に着脱可能な剛体であり、前記接続弾性体の前記環
形状の内側に取り付けられることで前記接続弾性体の前記第1の方向に沿った弾性変形に
よる伸縮を規制する、結合構造体。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載の結合構造体であって、
前記補強構造体は、
前記第1の部材と前記第2の部材のうちの一方に着脱可能に固定される第1補強部と
、
前記第1の部材と前記第2の部材のうちの一方に着脱可能に固定される第2補強部と
を有し、
前記第1補強部と前記第2補強部は、それぞれ前記接続弾性体に接続され、前記接続弾
性体を介して互いに対向し、かつ、前記第1補強部と前記第2補強部とを結ぶ線が前記第
2の方向に沿う位置に配置されており、
前記第1補強部と前記第2補強部が前記第1の部材と前記第2の部材のうちの一方に固
定されることで、前記接続弾性体の前記第1の方向に沿った弾性変形による伸縮を規制す
る、結合構造体。
[適用例5]
適用例1または適用例4までのいずれか一項に記載の結合構造体であって、
前記接続弾性体は、複数の環状弾性体が前記第1の方向と前記第2の方向を含む平面上
に並んで配置された構成を有している、結合構造体。
[適用例6]
第1の部材と第2の部材とを結合する結合構造体の設計システムであって、
前記第1の部材に固定される第1固定部と、前記第2の部材に固定される第2固定部と
、前記第1固定部と前記第2固定部にそれぞれ接続され、弾性部材で形成された接続弾性
体であって、前記第1固定部と前記第2固定部を結ぶ第1の方向に沿った弾性変形による
伸縮によって前記第1固定部と前記第2固定部との距離を変更可能な接続弾性体と、のそ
れぞれの形状が入力される入力部と、
前記入力部に入力された入力値を用いて、前記第1の部材と前記第2の部材との結合時
に前記第1の方向に沿って加えたい張力を、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記
接続弾性体を延伸させる力を用いて算出し、算出された前記第2の方向に延伸させる力を
得るために最適化した補強構造体の形状を設計する設計部と、
を備える、設計システム。
【符号の説明】
【0070】
10,10a,10c…結合部材(結合構造体)
11,11c…補強部材(補強構造体)
11A,11Ad…第1補強部
11B,11Bd…第2補強部
12…外枠
13…梁
14,14a,14b,14c,14d,14e…接続弾性体
14D…凹部
14R,14R1,14R2,14R1e~14R9e…環状部材(環状弾性体)
16,16e…第1固定部
16A…弾性体接続部
16B…溝部
16C…返し部
17,17e…第2固定部
17A…弾性体接続部
17B…溝部
17C…返し部
20,20f,20g…第1部材(第1の部材)
21…第1部材の係合面
21H…第1部材の第1係合部
22,23…第1部材の側面
24…第1部材の底面
25…第1部材の背面
30,30a,30d,30f,30g…第2部材
31,31a,31d…第2部材の正面
31F…平面部
31G,31Gd…爪部
31G1…溝部
31G2…返し部
31GG,31GGd…爪部
32…第2部材の底面
34…第2部材の挿通面
34H2,34H3…挿通面のスリット
35…第2部材の背面
36…第2部材の係合面
36H1…第2部材の第2係合部
36H2,36H3…第2部材のスリット
40,40g…第3部材
50…第4部材
100,100a,100d,100f,100g…構造体
200…設計システム
210…入力部
220…設計部
221…張力設定部
222…最適化部
CS…直交座標系