(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100403
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】撮像システム、電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A61B1/045 632
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004384
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】林 佳宏
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161LL02
4C161NN01
4C161PP12
4C161QQ09
4C161RR03
4C161RR26
4C161SS05
4C161WW04
(57)【要約】
【課題】被写体に閃光を照射させて被写体の撮像をローリングシャッタ方式で行う場合に、閃光照射期間の長さの設定の自由度を上げる。
【解決手段】本発明の一態様は、被写体の撮像をローリングシャッタ方式で行うように構成されたCMOSイメージセンサ14と、被写体をストロボ撮影するために閃光を発光する光源装置28と、を備えた電子内視鏡システム1である。このシステムでは、光源装置28は、ある閃光の閃光終了時刻から次の閃光の閃光開始時刻までの期間が、少なくとも1フレーム期間に亘って閃光の発光を禁止する閃光禁止期間より長くなるようにして、閃光を発光する。電子内視鏡システム1は、光源装置28による閃光の発光タイミングに基づいて、CMOSイメージセンサ14によって得られたフレーム単位の撮像画像を処理して表示用画像を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の撮像をローリングシャッタ方式で行うように構成された撮像素子と、
前記被写体をストロボ撮影するために閃光を発光する光源部であって、ある閃光の閃光終了時刻から次の閃光の閃光開始時刻までの期間が、少なくとも1フレーム期間に亘って閃光の発光を禁止する閃光禁止期間より長くなるようにして、前記閃光を発光する光源部と、
前記光源部による閃光の発光タイミングに基づいて、前記撮像素子によって得られたフレーム単位の撮像画像を処理して表示用画像を生成する画像処理部と、
を備え、
前記画像処理部は、
現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻に前記撮像素子のいずれかのラインにおいて閃光が発光された場合、
現在フレームの前記表示用画像のうち、1フレーム前の閃光開始ラインより上側のラインに相当する上側画像を、現在フレームの対応するラインにより得られた撮像画像とし、
現在フレームの前記表示用画像のうち、1フレーム前の閃光終了ラインより下側のラインに相当する下側画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像とし、
現在フレームの前記表示用画像のうち、前記閃光開始ラインから前記閃光終了ラインまでの境界画像を、現在フレームの対応するラインにより得られた撮像画像と、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする、
ことによって、現在フレームの前記表示用画像を生成し、
現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻に前記撮像素子のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合、
現在フレームの前記表示用画像のうち、2フレーム前の閃光開始ラインより上側のラインに相当する上側画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像とし、
現在フレームの前記表示用画像のうち、2フレーム前の閃光終了ラインより下側のラインに相当する下側画像を、2フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像とし、
現在フレームの前記表示用画像のうち、前記閃光開始ラインから前記閃光終了ラインまでの境界画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、2フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする、
ことによって、現在フレームの前記表示用画像を生成する、
撮像システム。
【請求項2】
前記画像処理部は、現在フレームの前記表示用画像の各画素の画素値を増幅する増幅処理部を有し、
前記増幅処理部は、前記閃光の時刻の経過に応じた発光強度のプロファイルと前記撮像素子の読み出し期間に応じて、現在フレームの前記表示用画像のうち前記境界画像の各ラインの画素に対して適用するゲインを、前記境界画像以外の各ラインの画素に適用するゲインよりも大きくする、
請求項1に記載された撮像システム。
【請求項3】
前記画像処理部は、現在フレームの前記表示用画像を対象として、前記境界画像と前記上側画像が隣接する隣接位置から上下の所定数のライン、及び、前記境界画像と前記下側画像が隣接する隣接位置から上下の所定数のラインに含まれる画素の画素値に対して、空間フィルタを施すフィルタ処理部を有する、
請求項1又は2に記載された撮像システム。
【請求項4】
前記画像処理部は、現在フレームの前記表示用画像を対象として、前記境界画像のライン方向の中央位置から上下の所定数のラインに含まれる画素の画素値に対して、空間フィルタを施すフィルタ処理部を有する、
請求項1又は2に記載された撮像システム。
【請求項5】
前記フィルタ処理部は、前記所定数のラインの各ラインに含まれる画素に適用される空間フィルタのフィルタ係数を、前記閃光の時刻の経過に応じた発光強度のプロファイルに応じて設定する、
請求項3に記載された撮像システム。
【請求項6】
前記画像処理部は、現在フレームの前記表示用画像のうち前記境界画像の各ライン、又は、前記境界画像の各ラインに加え、前記境界画像と前記上側画像が隣接する隣接位置より上の所定数のラインと前記境界画像と前記下側画像が隣接する隣接位置より下の所定数のラインとを含む複数のラインの各ラインを対象ラインとして、現在フレームと2フレーム前又は3フレーム前の過去フレームとの間で補間処理を行う補間処理部を有し、
前記補間処理部は、
現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻に前記撮像素子のいずれかのラインにおいて閃光が発光された場合、現在フレームの前記表示用画像のうち各対象ラインに含まれる画素の画素値を、現在フレームの前記表示用画像の対応する画素の画素値と、2フレーム前の撮像画像の対応する画素の画素値と、を加重平均して算出し、
現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻に前記撮像素子のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合、現在フレームの前記表示用画像のうち各対象ラインに含まれる画素の画素値を、現在フレームの前記表示用画像の対応する画素の画素値と、3フレーム前の撮像画像の対応する画素の画素値と、を加重平均して算出する、
請求項1又は2に記載された撮像システム。
【請求項7】
前記補間処理部は、前記境界画像のライン方向の中央において過去フレームの撮像画像の対応する画素の画素値に対する重みが最大となり、前記中央から上下に離れるにつれて過去フレームの撮像画像の対応する画素の画素値に対する重みが低下するように、前記加重平均の重みを設定する、
請求項6に記載された撮像システム。
【請求項8】
前記補間処理部は、前記境界画像と前記上側画像が隣接する隣接位置にあるライン、及び/又は、前記境界画像と前記下側画像が隣接する隣接位置にあるラインに含まれる画素の画素値に対する重みが最大となり、前記隣接位置から上下に離れるにつれて過去フレームの撮像画像の対応する画素の画素値に対する重みが低下するように、前記加重平均の重みを設定する、
請求項6に記載された撮像システム。
【請求項9】
前記補間処理部は、前記対象ラインに含まれる画素に適用される前記加重平均の重みを、前記閃光の時刻の経過に応じた発光強度のプロファイルに応じて設定する、
請求項6に記載された撮像システム。
【請求項10】
マイクロフォンと、
前記マイクロフォンから取得する音声信号から音声周波数を検出する音声検出部と、
請求項1から9のいずれか一項に記載された撮像システムと、を備え、
前記光源部は、前記音声検出部によって検出された音声周波数に同期した周期で前記閃光を発光させる、
電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローリングシャッタ方式の撮像素子を用いて行われるストロボスコピーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、喉頭ストロボスコピーを行うための電子内視鏡システムが知られている。
例えば特許文献1に記載された電子内視鏡システムでは、CMOSイメージセンサからローリングシャッタ方式により連続的に画素信号を読み出し、被験者の発声に合わせてLEDをストロボ発光させるように構成されている。ストロボ光(閃光)が照射されたときにCMOSイメージセンサからの読み出しが行われているフレームのストロボ光照射後に読み出されるラインの画素信号を下側画像としてフレームバッファに保持し、次のフレームにおいて、前のフレームの下側画像よりも上側のラインの画素信号を画像信号処理部へ直接出力した後、フレームバッファに保持される前のフレームの下側画像を画像信号処理部へ出力する。これにより、ローリングシャッタを用いたストロボ撮影において、ストロボ露光用の期間を設けることなく、同一のストロボ発光により撮影される1画面分の画像を得る、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記電子内視鏡システムでは、ストロボ光(閃光)を照射させる期間(閃光照射期間)がCMOSイメージセンサの1ラインの読み出し未満である必要があるという問題がある。閃光照射期間がCMOSイメージセンサの1ラインの読み出し未満の短期間である場合、声帯の観察に十分な明るさを得るためにLED等の光源の光強度を増加させなければならず、光源の放熱対策を強化する必要が生じたり、光源の耐久性が劣化したりする等の悪影響が発生する。また、光源の強度を増加させずにCMOSイメージセンサのゲインを上げるようにしたならばS/N比の低下を招く。
【0005】
そこで、本発明は、被写体に閃光を照射させて被写体の撮像をローリングシャッタ方式で行う場合に、閃光照射期間の長さの設定の自由度を上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、
被写体の撮像をローリングシャッタ方式で行うように構成された撮像素子と、
前記被写体をストロボ撮影するために閃光を発光する光源部であって、ある閃光の閃光終了時刻から次の閃光の閃光開始時刻までの期間が、少なくとも1フレーム期間に亘って閃光の発光を禁止する閃光禁止期間より長くなるようにして、前記閃光を発光する光源部と、
前記光源部による閃光の発光タイミングに基づいて、前記撮像素子によって得られたフレーム単位の撮像画像を処理して表示用画像を生成する画像処理部と、
を備えた、撮像システムである。
前記画像処理部は、現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻に前記撮像素子のいずれかのラインにおいて閃光が発光された場合、
現在フレームの前記表示用画像のうち、1フレーム前の閃光開始ラインより上側のラインに相当する上側画像を、現在フレームの対応するラインにより得られた撮像画像とし、
現在フレームの前記表示用画像のうち、1フレーム前の閃光終了ラインより下側のラインに相当する下側画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像とし、
現在フレームの前記表示用画像のうち、前記閃光開始ラインから前記閃光終了ラインまでの境界画像を、現在フレームの対応するラインにより得られた撮像画像と、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする、ことによって、現在フレームの前記表示用画像を生成する。
前記画像処理部は、現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻に前記撮像素子のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合、
現在フレームの前記表示用画像のうち、2フレーム前の閃光開始ラインより上側のラインに相当する上側画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像とし、
現在フレームの前記表示用画像のうち、2フレーム前の閃光終了ラインより下側のラインに相当する下側画像を、2フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像とし、
現在フレームの前記表示用画像のうち、前記閃光開始ラインから前記閃光終了ラインまでの境界画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、2フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする、ことによって、現在フレームの前記表示用画像を生成する。
【0007】
前記撮像システムは、前記画像処理部は、現在フレームの前記表示用画像の各画素の画素値を増幅する増幅処理部を有し、
前記増幅処理部は、前記閃光の時刻の経過に応じた発光強度のプロファイルと前記撮像素子の読み出し期間に応じて、現在フレームの前記表示用画像のうち前記境界画像の各ラインの画素に対して適用するゲインを、前記境界画像以外の各ラインの画素に適用するゲインよりも大きくしてもよい。
【0008】
前記画像処理部は、現在フレームの前記表示用画像を対象として、前記境界画像と前記上側画像が隣接する隣接位置から上下の所定数のライン、及び、前記境界画像と前記下側画像が隣接する隣接位置から上下の所定数のラインに含まれる画素の画素値に対して、空間フィルタを施すフィルタ処理部を有してもよい。
【0009】
前記画像処理部は、現在フレームの前記表示用画像を対象として、前記境界画像のライン方向の中央位置から上下の所定数のラインに含まれる画素の画素値に対して、空間フィルタを施すフィルタ処理部を有してもよい。
【0010】
前記フィルタ処理部は、前記所定数のラインの各ラインに含まれる画素に適用される空間フィルタのフィルタ係数を、前記閃光の時刻の経過に応じた発光強度のプロファイルに応じて設定してもよい。
【0011】
前記画像処理部は、現在フレームの前記表示用画像のうち前記境界画像の各ライン、又は、前記境界画像の各ラインに加え、前記境界画像と前記上側画像が隣接する隣接位置より上の所定数のラインと前記境界画像と前記下側画像が隣接する隣接位置より下の所定数のラインとを含む複数のラインの各ラインを対象ラインとして、現在フレームと2フレーム前又は3フレーム前の過去フレームとの間で補間処理を行う補間処理部を有してもよい。
その場合、前記補間処理部は、
現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻に前記撮像素子のいずれかのラインにおいて閃光が発光された場合、現在フレームの前記表示用画像のうち各対象ラインに含まれる画素の画素値を、現在フレームの前記表示用画像の対応する画素の画素値と、2フレーム前の撮像画像の対応する画素の画素値と、を加重平均して算出し、
現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻に前記撮像素子のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合、現在フレームの前記表示用画像のうち各対象ラインに含まれる画素の画素値を、現在フレームの前記表示用画像の対応する画素の画素値と、3フレーム前の撮像画像の対応する画素の画素値と、を加重平均して算出する。
【0012】
前記補間処理部は、前記境界画像のライン方向の中央において過去フレームの撮像画像の対応する画素の画素値に対する重みが最大となり、前記中央から上下に離れるにつれて過去フレームの撮像画像の対応する画素の画素値に対する重みが低下するように、前記加重平均の重みを設定してもよい。
【0013】
前記補間処理部は、前記境界画像と前記上側画像が隣接する隣接位置にあるライン、及び/又は、前記境界画像と前記下側画像が隣接する隣接位置にあるラインに含まれる画素の画素値に対する重みが最大となり、前記隣接位置から上下に離れるにつれて過去フレームの撮像画像の対応する画素の画素値に対する重みが低下するように、前記加重平均の重みを設定してもよい。
【0014】
前記補間処理部は、前記対象ラインに含まれる画素に適用される前記加重平均の重みを、前記閃光の時刻の経過に応じた発光強度のプロファイルに応じて設定してもよい。
【0015】
本開示の一態様は、
マイクロフォンと、
前記マイクロフォンから取得する音声信号から音声周波数を検出する音声検出部と、
請求項1から9のいずれか一項に記載された撮像システムと、を備え、
前記光源部は、前記音声検出部によって検出された音声周波数に同期した周期で前記閃光を発光させる、電子内視鏡システムである。
【発明の効果】
【0016】
上述の撮像システム及び電子内視鏡システムによれば、被写体に閃光を照射させて被写体の撮像をローリングシャッタ方式で行う場合に、閃光照射期間の長さの設定の自由度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態の電子内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】CMOSイメージセンサの動作と閃光の発光タイミングとの関係を示す図である。
【
図3】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて、声帯振動周波数が1000Hzの場合に応じて閃光を発光するときの合成画像を生成する際の動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて、声帯振動周波数が250Hzの場合に応じて閃光を発光するときの合成画像を生成する際の動作を示すタイミングチャートである。
【
図5】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて、声帯振動周波数が125Hzの場合に応じて閃光を発光するときの合成画像を生成する際の動作を示すタイミングチャートである。
【
図6】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて、声帯振動周波数が115Hzの場合に応じて閃光を発光するときの合成画像を生成する際の動作を示すタイミングチャートである。
【
図7】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて、声帯振動周波数が63Hzの場合に応じて閃光を発光するときの合成画像を生成する際の動作を示すタイミングチャートである。
【
図8】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて、声帯振動周波数とフレームレートの関係を示す図である。
【
図9】
図1に示したシステムに対して、増幅処理部とフィルタ処理部を追加した実施形態を説明する図である。
【
図10】
図9に示す実施形態の電子内視鏡システムにおいて、合成画像の画質を向上させる方法の例を説明する図である。
【
図11】合成画像に対して適用される空間フィルタ処理の例を示す図である。
【
図12】合成画像に対して適用される空間フィルタ処理の例を示す図である。
【
図13】合成画像に対して適用される空間フィルタ処理の例を示す図である。
【
図14】
図1に示したシステムに対して、増幅処理部と補間処理部を追加した実施形態を説明する図である。
【
図15】
図14に示す実施形態の電子内視鏡システムにおいて、合成画像の画質を向上させる方法の例を説明する図である。
【
図16】
図14に示す実施形態の電子内視鏡システムにおいて、合成画像の画質を向上させる方法の例を説明する図である。
【
図17】
図14に示す実施形態の電子内視鏡システムにおいて、合成画像の画質を向上させる方法の例を説明する図である。
【
図18】合成画像に対して適用されるフレーム補間処理の例を示す図である。
【
図19】合成画像に対して適用されるフレーム補間処理の例を示す図である。
【
図20】合成画像に対して適用されるフレーム補間処理の例を示す図である。
【
図21】
図1とは異なる実施形態の電子内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図22】
図1とは異なる実施形態の電子内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の撮像システムの一実施形態である電子内視鏡システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。電子内視鏡システム1は、医療用に特化されたシステムであり、特に喉頭ストロボスコピーに利用される。喉頭ストロボスコピーでは、術者は、閃光を断続的に発光させる光源装置と電子スコープを用いて、ストロボ撮影を行って画像を表示させることで被写体としての声帯を観察する。
図1に示すように、一実施形態の電子内視鏡システム1は、電子スコープ(内視鏡)10、光源装置を内蔵するプロセッサ20、モニタ30、及び、マイクロフォン40を備えている。プロセッサ20は、モニタ30及びマイクロフォン40に接続されている。
【0019】
プロセッサ20は、音声処理回路31、及び、周波数検出回路32を備える。
声帯のストロボ撮影を行う場合、患者が発生する音声に基づく声帯振動周波数に応じて間欠的に閃光を点灯(発光)させる。患者が発する声がマイクロフォン40により集音される。音声処理回路31は、マイクロフォン40により集音された音声からノイズ等を除去し、声帯振動周波数の検出に適した音声波形とする。周波数検出回路32は、音声処理回路31により得られた音声波形から声帯振動周波数を検出する。
【0020】
プロセッサ20は、システムコントローラ21、操作パネル26、タイミング制御回路27、及び、光源装置28(光源部の一例)を備えている。
システムコントローラ21は、各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1全体を統合的に制御する。システムコントローラ21は、操作パネル26に入力される術者(観察者)からの指示に応じて、電子内視鏡システム1の各動作、及び各動作のためのパラメータを変更する。システムコントローラ21は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に供給する。
【0021】
タイミング制御回路27は、システムコントローラ21の制御の下、周波数検出回路32によって検出された声帯振動周波数に応じて閃光の発光タイミングを決定し、決定した閃光の発光タイミングを示す信号(発光タイミング信号)を逐次、光源装置28に送信する。なお、タイミング制御回路27は、システム起動時にシステムコントローラ21から、発光禁止期間の長さに関するデータを受信し、当該発光禁止期間の長さが維持されるようにして発光タイミングを決定する。タイミング制御回路27は、発光タイミング信号を逐次、実時間で合成部24に送信する。
【0022】
閃光禁止期間とは、ある閃光の閃光終了時刻から次の閃光の閃光開始時刻までの期間の最短期間を意味する。つまり、ある閃光の閃光終了時刻から閃光禁止期間が経過するまでは、次の閃光の発光が禁止される。閃光禁止期間は、少なくとも1フレーム期間(1フレーム周期)、あるいはそれ以上の長さの期間である。閃光禁止期間を少なくとも1フレーム期間とするのは、1フレーム期間内においてCMOSイメージセンサ14の同一のラインに対して2回以上の露光が行われてしまうことを避けるためである。
【0023】
光源装置28は、タイミング制御回路27から送られる発光タイミング信号に同期して、声帯等の被写体を照明するための閃光Lを出射する。閃光Lは、白色光、擬似白色光、あるいは特定の波長帯域の特殊光であってもよい。一実施形態によれば、光源装置28から出射した閃光Lは、集光レンズによりLCB(Light Carrying Bundle)11の入射端面に集光されてLCB11内に入射される。
光源装置28の光源の種類は限定しないが、例えばLED、レーザダイオード、高輝度ランプ(例えば、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ又はハロゲンランプ)などである。以下の説明では、光源装置28の光源がLEDである場合を例にして説明する。
【0024】
LCB11内に入射された閃光Lは、LCB11内を伝播する。LCB11内を伝播した閃光Lは、電子スコープ10の先端に配置されたLCB11の射出端面から射出され、配光レンズ12を介して被写体に照射される。配光レンズ12からの閃光Lによって照明された被写体からの戻り光は、対物レンズ13を介してCMOSイメージセンサ14の受光面上で光学像を結ぶ。
【0025】
CMOSイメージセンサ14は、被写体の撮像をローリングシャッタ方式で行うように構成された撮像素子の一例である。CMOSイメージセンサ14は、例えばベイヤ型画素配置を有し、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の画像信号を生成して出力する。なお、CMOSイメージセンサ14に代えて、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサやその他の種類の撮像装置を適用してもよい。CMOSイメージセンサ14は、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0026】
電子スコープ10内に設けられるCMOSドライバ15は、システムコントローラ21から供給されるクロックパルスに従って、CMOSイメージセンサ14をプロセッサ20側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。CMOSドライバ15は、CMOSイメージセンサ14から入力される撮像画像に対してA/D変換を含む所定の処理を施してプロセッサ20の画像入力処理部22に出力する。
CMOSドライバ15には、CMOSイメージセンサ14から被写体を撮像した撮像信号が所定のフレーム周期で入力される。
【0027】
フレーム周期(1フレーム期間)は、例えば1/120秒、1/60秒、又は1/30秒であるが、以下では、フレーム周期が1/60秒の場合を例にして説明する。すなわち、上記閃光禁止期間の長さは、少なくとも1/60秒である。
【0028】
プロセッサ20は、モニタ30に表示すべき画像を生成するために、画像入力処理部22、フレームバッファ23、合成部24、及び、画像出力処理部25を備える。
画像入力処理部22は、CMOSドライバ15から送られるフレーム単位の撮像画像に対してノイズ除去処理、デモザイク処理、マトリックス演算等の所定の信号処理を施し、フレーム単位の撮像画像(現在フレームの撮像画像)をフレームバッファ23及び合成部24に送信する。
フレームバッファ23は、画像入力処理部22から送られる撮像画像をフレーム単位でバッファリングするメモリである。一実施形態では、フレームバッファ23は、現在フレームよりも1フレーム前、2フレーム前、及び、3フレーム前のフレームの3フレーム分の撮像画像を一時的に格納する。なお、後述するフレーム補間処理を行わない場合には、フレームバッファ23は、現在フレームよりも1フレーム前、及び、2フレーム前のフレームの2フレーム分の撮像画像を一時的に格納すればよい。
【0029】
合成部24は、タイミング制御回路27から受信する発光タイミング信号が示す発光タイミングに基づいて、フレームバッファ23に格納されている複数のフレームの撮像画像を合成することで、合成画像を生成する。合成画像の生成の具体例については、後で詳述する。
画像出力処理部25は、合成部24により生成された合成画像をフレーム単位で処理してモニタ表示用の画面データを生成し、生成されたモニタ表示用の画面データを所定のビデオフォーマット信号に変換する。変換されたビデオフォーマット信号は、モニタ30に出力される。これにより、被写体(声帯)の画像がモニタ30の表示画面に表示される。
フレームバッファ23、合成部24、及び画像出力処理部25は、本発明の画像処理部の一例を構成する。
【0030】
次に、
図2を参照して、閃光に基づくCMOSイメージセンサ14の動作について説明する。
図2において、(a)は連続するN番目フレームとN+1番目フレームの2フレーム期間(1/60秒+1/60秒)のCMOSイメージセンサ14の動作を示し、(b)は閃光Lを示し、(c)は(a)の一部を拡大して示している。
CMOSイメージセンサ14では、無効画素領域を除く有効画素領域において複数のラインの各々に時間差を設けて各フレームにおける露光を開始する。なお、無効画素領域は、1ライン又は複数のラインからなる。
図2(a)に示すように、CMOSイメージセンサ14では、無効画素領域を除く有効画素領域に含まれるラインLN1,LN2,…,LNn(有効画素領域の最後のライン)の順(上から下に向かうラインの順)に時間差を設けてN番目フレームにおける露光を開始する。
図2(c)に拡大して示すように、各フレーム期間には、有効画素領域の各画素領域に対して、露光の開始から電荷の蓄積を行う電荷蓄積期間T
INTと、1フレーム期間の電荷蓄積が終了して、蓄積した電荷に応じた信号を読み出す信号読み出し期間T
ROと、を含む。信号読み出し期間T
ROには、電荷蓄積を行うことはできない。
【0031】
図2(a),(b)に示すように、閃光Lは、閃光開始時刻Tsから閃光終了時刻Teまでの短い時間に発光する光であり、N番目フレームにおいて有効画素領域の一部のライン群、及び、N+1番目フレームにおいて有効画素領域の一部のライン群の電荷蓄積に利用される。閃光開始時刻Tsから閃光終了時刻Teまでの期間が、閃光照射期間である。ここで
図2(c)の拡大図を参照すると、閃光Lの閃光開始時刻Tsに対応するラインを閃光開始ラインLsと定義し、閃光Lの閃光終了時刻Teに対応するラインを閃光終了ラインLeと定義する。
ラインLN1から閃光開始ラインLsまでの各ラインに対しては、閃光Lによって生ずる電荷がN+1番目フレームの電荷蓄積期間T
INTで蓄積される。他方、閃光終了ラインLeから有効画素領域の最後のラインLNnまでの各ラインに対しては、閃光Lによって生ずる電荷がN番目フレームの電荷蓄積期間T
INTに蓄積される。閃光開始ラインLsから閃光終了ラインLeまでの各ラインに対しては、閃光Lの一部によって生ずる電荷がN番目フレームの電荷蓄積期間T
INTに蓄積され、閃光Lの残りの一部によって生ずる電荷がN+1番目フレームの電荷蓄積期間T
INTで蓄積される。
【0032】
図2からわかるように、閃光Lによって得られる1枚の表示用画像は、以下の上側画像、下側画像、及び、境界画像を、適宜合成した合成画像を基に得ることができる。
・ラインLN1から閃光開始ラインLsまでの各ラインにより、N+1番目フレームの期間で得られる上側画像
・閃光終了ラインLeから有効画素領域の最後のラインLNnまでの各ラインにより、N番目フレームの期間で得られる下側画像
・閃光開始ラインLsから閃光終了ラインLeまでの各ラインにより、N番目及びN+1番目フレームの期間で得られる、上側画像と下側画像の間の境界画像
【0033】
なお、本実施形態の電子内視鏡システム1では、発光禁止期間が確保されている限り、閃光Lの発光タイミングを任意に設定可能であり、また、閃光照射期間を任意に設定可能である。そのため、あるフレームにおいてCMOSイメージセンサ14の有効画素領域のいずれのラインの電荷蓄積期間TINTの開始時刻においても閃光Lが生じない場合もあり得る。そのような場合も考慮し、より具体的には、プロセッサ20の合成部24は、以下の処理Pa,処理Pbに場合分けして表示用画像の基礎となる合成画像を生成する。
【0034】
[処理Pa]合成部24は、現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光された場合、以下のようにして現在フレームの合成画像を生成する。
(a-1)現在フレームの合成画像のうち、1フレーム前の閃光開始ラインより上側のラインに相当する上側画像を、現在フレームの対応するラインにより得られた撮像画像とする。
(a-2)現在フレームの合成画像のうち、1フレーム前の閃光終了ラインより下側のラインに相当する下側画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像とする。
(a-3)現在フレームの合成画像のうち、閃光開始ラインから閃光終了ラインまでの境界画像を、現在フレームの対応するラインにより得られた撮像画像と、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする。
【0035】
[処理Pb]合成部24は、現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合、以下のようにして現在フレームの合成画像を生成する。
(b-1)現在フレームの合成画像のうち、2フレーム前の閃光開始ラインより上側のラインに相当する上側画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像とする。
(b-2)現在フレームの合成画像のうち、2フレーム前の閃光終了ラインより下側のラインに相当する下側画像を、2フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像とする。
(b-3)現在フレームの合成画像のうち、閃光開始ラインから閃光終了ラインまでの境界画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、2フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする。
【0036】
次に、
図3~
図7の各タイミングチャートを参照して、電子内視鏡システム1において、マイクロフォン40から得られる声帯振動周波数が異なる場合に、上記処理Pa,Pbに基づいて合成画像を生成する際の具体的な動作の例について説明する。なお、
図3~
図7の各図では、発光禁止期間を概ね1フレーム期間(1/60秒)に設定した場合を例に示している。
図3~
図7の各図では、M番目フレーム、M+1番目フレーム、…の各フレーム単位で、(a)CMOSイメージセンサ14の動作(CMOS動作)、(b)閃光の発光タイミング、(c)CMOSイメージセンサ14により得られる撮像画像、及び、(d)合成部24による合成画像をそれぞれ示している。
図3~
図7の(a)には、(b)に示す閃光の発光期間を縦線で示している。
図3~
図7の(b)には、声帯振動の波形も示してある。声帯振動周波数Fvに応じて、発光禁止期間の条件を満たすように、閃光L1,L2,L3,…の発光タイミングが調整されている。
【0037】
(I)声帯振動周波数Fv=1000Hzの場合(
図3)
図3において閃光L1はM番目のフレーム期間に発光されるため、M番目フレームの撮像画像として閃光L1による下側画像IM_L1が得られ、M+1番目フレームの撮像画像として閃光L1による上側画像IM_L1aが得られる。同様にして、M+1番目フレームの撮像画像として閃光L2による下側画像IM_L2が得られ、M+2番目フレームの撮像画像として閃光L2による上側画像IM_L2aが得られる。M+2番目フレームの撮像画像として閃光L3による下側画像IM_L3が得られ、M+3番目フレームの撮像画像として閃光L3による上側画像IM_L3aが得られる。
図3において閃光L4はM+4番目フレーム期間に発光されるため、M+4番目フレームの撮像画像として閃光L4による下側画像IM_L4が得られ、M+5番目フレームの撮像画像として閃光L4による上側画像IM_L4aが得られる。同様に、M+5番目フレームの撮像画像として閃光L5による下側画像IM_L5が得られ、M+6番目フレームの撮像画像として閃光L5による上側画像IM_L5aが得られる。
【0038】
M+1~M+3番目フレームの各フレームの合成画像を作成する際には、各フレームの直前フレームの露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光されているため、上記処理Paに従い、以下のようにして合成画像が生成される。
例えば、現在フレームとしてのM+1番目フレームの合成画像を生成する際には、当該合成画像のうち、M番目フレームの閃光開始ラインより上側のラインに相当する上側画像を、M+1番目フレーム(現在フレーム)の対応するラインにより得られた上側画像IM_L1aとするとともに、当該合成画像のうち、M番目フレームの閃光終了ラインより下側のラインに相当する下側画像を、M番目フレーム(1フレーム前)の対応するラインにより得られた下側画像IM_L1とする。なお、
図3では見えないが、M+1番目フレームの合成画像のうち、閃光開始ラインから閃光終了ラインまでの境界画像を、M+1番目フレーム(現在フレーム)の対応するラインにより得られた撮像画像と、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする。
現在フレームとしてM+2番目フレーム及びM+3番目フレームの各フレームについて合成画像を生成する場合についても同様である。
【0039】
現在フレームとしてのM+4番目フレームの合成画像を作成する際には、1フレーム前のM+3番目フレームの露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されていないため、以下のようにして合成画像を生成する。
M+4番目フレームの合成画像のうち、2フレーム前のM+2番目フレームの閃光開始ラインより上側のラインに相当する上側画像を、1フレーム前のM+3番目フレームの対応するラインにより得られた撮像画像IM_L3aとするとともに、当該合成画像のうち、2フレーム前のM+2番目フレームの閃光終了ラインより下側のラインに相当する下側画像を、2フレーム前のM+2番目フレームの対応するラインにより得られた撮像画像IM_L3とする。
図3では見えないが、M+4番目フレームの合成画像のうち、閃光開始ラインから閃光終了ラインまでの境界画像を、1フレーム前のM+3番目フレームの対応するラインにより得られた撮像画像と、2フレーム前のM+2番目フレームの対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする。
要するに、M+4番目フレームの合成画像を作成する際には、撮像画像IM_L4aが得られておらず、撮像画像IM_L4,IM_L4aに基づく合成画像を作成することができないため、
図3に示すように、M+3番目フレームの合成画像を再生することになる(つまり、M+3番目フレームの合成画像と同一となる)。
【0040】
現在フレームとしてM+5番目フレーム及びM+6番目フレームの各フレームに対しては、M+1~M+3番目フレームの各フレームの合成画像を作成する場合と同様に、上記処理Paに従って合成画像が生成される。
【0041】
(II)声帯振動周波数Fv=250Hzの場合(
図4)
図4(b)に示すように、声帯振動周波数Fvが250Hzである場合、ある閃光後の発光禁止期間が経過してから次の閃光を発光させるまでの期間が、声帯振動周波数Fvが1000Hzである場合よりも長くなる。
図4において閃光L1はM番目のフレーム期間に発光されるため、M番目フレームの撮像画像として閃光L1による下側画像IM_L1が得られ、M+1番目フレームの撮像画像として閃光L1による上側画像IM_L1aが得られる。同様にして、M+1番目フレームの撮像画像として閃光L2による下側画像IM_L2が得られ、M+2番目フレームの撮像画像として閃光L2による上側画像IM_L2aが得られる。M+2番目フレームの撮像画像として閃光L3による下側画像IM_L3が得られ、M+3番目フレームの撮像画像として閃光L3による上側画像IM_L3aが得られる。
図4において閃光L4はM+4番目フレーム期間に発光され、M+4番目フレームの撮像画像として閃光L4による全有効画素領域の画像IM_L4が得られる。
【0042】
現在フレームとしてM+1番目~M+3番目フレームの各フレームの合成画像を作成する際には、各フレームの直前フレームの露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光されているため、上記処理Paに従って合成画像が生成される。この合成画像の生成は、(I)の声帯振動周波数Fv=1000Hzの場合のM+1~M+3番目フレームの各フレームの合成画像を作成する場合と同じである。
現在フレームとしてM+4番目フレームについても、上記処理Paに従って合成画像が生成されるが、1フレーム前のM+3番目フレームの露光開始時刻ではCMOSイメージセンサ14の無効画素領域において閃光が発光されているため、実質的な合成は行われず、M+4番目フレームの合成画像は、撮像画像IM_L4となる。
現在フレームとしてM+5番目フレームについては、1フレーム前のM+4番目フレームの露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合に相当するため、上記処理Pbに従って合成画像が生成される。その結果、M+5番目フレームの合成画像は、M+4番目フレームの合成画像と同一となる。
【0043】
(III)声帯振動周波数Fv=125Hzの場合(
図5)
図5(b)に示すように、声帯振動周波数Fvが125Hzである場合、ある閃光後の発光禁止期間が経過してから次の閃光を発光させるまでの期間が、声帯振動周波数Fvが250Hzである場合よりもさらに長くなる。
図5において閃光L1はM番目のフレーム期間に発光されるため、M番目フレームの撮像画像として閃光L1による下側画像IM_L1が得られ、M+1番目フレームの撮像画像として閃光L1による上側画像IM_L1aが得られる。同様にして、M+1番目フレームの撮像画像として閃光L2による下側画像IM_L2が得られ、M+2番目フレームの撮像画像として閃光L2による上側画像IM_L2aが得られる。M+3番目フレームの撮像画像として閃光L3による下側画像IM_L3が得られ、M+4番目フレームの撮像画像として閃光L3による上側画像IM_L3aが得られる。M+4番目フレームの撮像画像として閃光L4による下側画像IM_L4が得られる。
【0044】
現在フレームとしてM+1番目~M+2番目フレームの各フレームの合成画像を作成する際には、各フレームの直前フレームの露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光されているため、上記処理Paに従って合成画像が生成される。この合成画像の生成は、(I)の声帯振動周波数Fv=1000Hzの場合のM+1~M+3番目フレームの各フレームの合成画像を作成する場合と同じである。
現在フレームとしてM+3番目フレームについては、1フレーム前のM+2番目フレームの露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合に相当するため、上記処理Pbに従って合成画像が生成される。その結果、M+3番目フレームの合成画像は、M+2番目フレームの合成画像と同一となる。
現在フレームとしてM+4番目~M+5番目フレームの各フレームの合成画像を作成する際には、各フレームの直前フレームの露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光されているため、上記処理Paに従って合成画像が生成される。すなわち、M+4番目~M+5番目フレームの各フレームの合成画像は、M+1番目~M+2番目フレームの各フレームの合成画像を作成する場合と同様にして作成される。
【0045】
(IV)声帯振動周波数Fv=115Hzの場合(
図6)
図6(b)に示すように、声帯振動周波数Fvが115Hzである場合、ある閃光後の発光禁止期間が経過してから次の閃光を発光させるまでの期間が非常に短くなる。
図6において閃光L1はM番目のフレーム期間に発光されるため、M番目フレームの撮像画像として閃光L1による下側画像IM_L1が得られ、M+1番目フレームの撮像画像として閃光L1による上側画像IM_L1aが得られる。同様にして、M+1番目フレームの撮像画像として閃光L2による下側画像IM_L2が得られ、M+2番目フレームの撮像画像として閃光L2による上側画像IM_L2aが得られる。M+2番目フレームの撮像画像として閃光L3による下側画像IM_L3が得られ、M+3番目フレームの撮像画像として閃光L3による上側画像IM_L3aが得られる。M+3番目フレームの撮像画像として閃光L4による下側画像IM_L4が得られ、M+4番目フレームの撮像画像として閃光L4による上側画像IM_L4aが得られる。M+4番目フレームの撮像画像として閃光L5による下側画像IM_L5が得られる。
【0046】
現在フレームとしてM+1番目~M+5番目フレームの各フレームの合成画像を作成する際には、各フレームの直前フレームの露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光されているため、上記処理Paに従って合成画像が生成される。この合成画像の生成は、(I)の声帯振動周波数Fv=1000Hzの場合のM+1~M+3番目フレームの各フレームの合成画像を作成する場合と同じである。
【0047】
(V)声帯振動周波数Fv=63Hzの場合(
図7)
図7(b)に示すように、声帯振動周波数Fvが63Hzである場合、ある閃光後の発光禁止期間が経過してから次の閃光を発光させるまでの期間が非常に長くなる。
図7において閃光L1はM番目のフレーム期間に発光されるため、M番目フレームの撮像画像として閃光L1による下側画像IM_L1が得られ、M+1番目フレームの撮像画像として閃光L1による上側画像IM_L1aが得られる。同様にして、M+2番目フレームの撮像画像として閃光L2による下側画像IM_L2が得られ、M+3番目フレームの撮像画像として閃光L2による上側画像IM_L2aが得られる。M+4番目フレームの撮像画像として閃光L3による下側画像IM_L3が得られ、M+5番目フレームの撮像画像として閃光L3による上側画像IM_L3aが得られる。
【0048】
現在フレームとしてM+1番目フレームの合成画像を作成する際には、当該フレームの直前フレーム(M番目フレーム)の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光されているため、上記処理Paに従って合成画像が生成される。
現在フレームとしてM+2番目フレームの合成画像を作成する際には、当該フレームの直前フレーム(M+1番目フレーム)の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されていないため、上記処理Pbに従って合成画像が生成される。
現在フレームとしてM+3番目フレームの合成画像を作成する際には、当該フレームの直前フレーム(M+2番目フレーム)の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光されているため、上記処理Paに従って合成画像が生成される。
現在フレームとしてM+4番目フレームの合成画像を作成する際には、当該フレームの直前フレーム(M+3番目フレーム)の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されていないため、上記処理Pbに従って合成画像が生成される。
現在フレームとしてM+5番目フレームの合成画像を作成する際には、当該フレームの直前フレーム(M+4番目フレーム)の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光されているため、上記処理Paに従って合成画像が生成される。
その結果、
図7に示すようにして、各フレームの合成画像が生成される。
【0049】
以上、
図3~
図7を参照して具体的に説明したように、電子内視鏡システム1では、閃光の発光タイミングは、連続する閃光の発光の間隔が、予め定められた発光禁止期間より長くなり、かつ声帯振動周波数に同期するようにして、決定される。
このとき、ローリングシャッタ方式で動作するCMOSイメージセンサ14の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されない場合には、連続する2フレームの合成画像が同一となり、フレームレートが低下する。例えば、
図6に示したように、声帯振動周波数Fvが115Hzの場合には、いずれのフレームに対しても、露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいても閃光が発光されるため、各フレームの合成画像が同一とならず、フレームレートが高い(約60fps)。それに対して、
図7に示したように、声帯振動周波数Fvが63Hzの場合には、露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されない状況が、1フレームおきに発生するため、連続する2フレームずつ合成画像が同一となり、フレームレートが低い(約30fps)。
【0050】
図8に、声帯振動周波数Fvと合成画像のフレームレートの関係を示す。
本実施形態の電子内視鏡システム1では、フレームレートは、声帯振動周波数Fvと、予め定められた発光禁止期間に応じて設定される閃光の発光タイミングと、に基づいて不連続に変動する。これは、ある閃光後の発光禁止期間が経過してから次の閃光を発光させるまでの期間が、声帯振動周波数に応じて不連続に変化するためである。
図8を参照すると、いずれの声帯振動周波数に対しても少なくとも30fpsのフレームレートが確保され、声帯振動周波数が高くなるにつれてフレームレートが60fps近くなり、高フレームレートが得られることがわかる。閃光照射期間と閃光禁止期間の合計長が声帯振動周波数Fvに対応する周期と一致するとフレームレートが高くなるため、
図8に示すように、声帯振動周波数Fvに対して周期的にフレームレートが高くなる。
なお、
図8は、
図3~
図7に示したように、発光禁止期間を概ね1フレーム期間(1/60秒)に設定した場合の結果を示しており、発光禁止期間をさらに長くした場合には、
図8と異なる結果となる。
【0051】
次に、上記処理Pa,Pbによって得られた合成画像に対して行われる好ましい後処理について説明する。
上述したように、上記処理Paでは、現在フレームの合成画像のうち、閃光開始ラインから閃光終了ラインまでの境界画像を、現在フレームの対応するラインにより得られた撮像画像と、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする。他方、上記処理Pbでは、現在フレームの合成画像のうち、閃光開始ラインから閃光終了ラインまでの境界画像を、1フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、2フレーム前の対応するラインにより得られた撮像画像と、を加算した画像とする。
合成画像のうちの境界画像は、合成画像の上側画像と下側画像に挟まれた領域である。この境界画像は、
図2に示したように、閃光Lの閃光照射期間(Ts~Te)と信号読み出し期間T
ROが少なくとも部分的に重複し、閃光Lによる露光が十分に行われない期間における画像である。そのため、仮に、この境界画像に対して何らの処理も行わないとしたならば、
図3~
図7の(d)に示すように、合成画像において水平方向の黒線として目立ってしまい、垂直方向に移動する黒線として観察者に視認される。
そこで、合成画像において境界画像の水平方向の黒線が目立たないように、合成画像に対する後処理として、境界画像及びその近傍のラインの画像に対して以下で説明する画像処理を施すことが好ましい。
【0052】
一実施形態では、合成画像に対する後処理は、以下の3つの処理Pc1~Pc3のうちのいずれか、又は2以上の処理の組合せである。
[処理Pc1]デジタルゲイン付与処理
デジタルゲイン付与処理は、境界画像の各ラインの各画素の画素値を増幅する処理である。デジタルゲインを付与することにより、閃光による露光が十分でない状態で得られた境界画像の輝度が補正される。
[処理Pc2]空間フィルタ処理
空間フィルタ処理は、現在フレームの合成画像に含まれる境界画像、あるいは境界画像とその近傍の所定数のラインの画素の画素値に対して、画像の平滑化(ぼかし)を目的とした空間フィルタを施す処理である。
[処理Pc3]フレーム補間処理
フレーム補間処理は、現在フレームに含まれる境界画像、あるいは境界画像とその近傍の所定数のラインを対象として、現在フレームと2フレーム前又は3フレーム前の過去フレームとの間で補間を行う処理である。
【0053】
処理Pc1のみでもよいが、処理Pc1と処理Pc2を組み合わせるか、あるいは、処理Pc1と処理Pc3を組み合わせることが、合成画像において境界画像の水平方向の黒線をより効果的に目立たなくする上で好ましい。
【0054】
(i)合成画像に対する後処理についての第1の態様
合成画像に対する後処理についての第1の態様は、上記処理Pc1と上記処理Pc2を組み合わせた処理である。
この第1の態様を実装した場合のシステム構成を
図9に示す。
図9に示すように、第1の態様では、
図1に示したプロセッサ20において、合成部24と画像出力処理部25の間に、増幅処理部51とフィルタ処理部52をさらに含む。
図10は、合成画像に対する後処理についての第1の態様が適用される場合の画像処理を説明する図である。
図10において、(a)はCMOSイメージセンサ14の垂直同期信号Vsync、(b)はCMOSイメージセンサ14の動作(CMOS動作)、(c)は閃光L、(d)はCMOSイメージセンサ14によって取得される撮像画像、(e)は合成画像、(f)はデジタルゲイン付与後補正画像、(g)は空間フィルタ処理済み補正画像、をそれぞれ示している。
【0055】
図10を参照すると、
図10(a),(b)に示すように、垂直同期信号Vsyncに同期してCMOSイメージセンサ14がフレーム単位でローリングシャッタ方式により露光を開始する。
図10(d)に示すように、現在フレームを基準とすると、1フレーム前に発光された閃光Lに対して1フレーム前の撮像画像として下側画像IM_Lが得られ、現在フレームの撮像画像として上側画像IM_Laが得られる。
図10(e)に示すように、現在フレームの合成画像は、下側画像IM_Lと上側画像IM_Laを合成した画像であるが、この合成画像には、境界画像において水平方向の黒線が目立つ状態となっている。
【0056】
図9に示した増幅処理部51は、合成部24によって生成された現在フレームの合成画像のうち境界画像の各ラインの各画素の画素値(デジタル値)を増幅することでデジタルゲイン付与後補正画像(
図10(f))を生成する。これにより、境界画像の各ラインの各画素の輝度が増加し、境界画像において水平方向の黒線が目立ち難くなる。
【0057】
図9に示したフィルタ処理部52は、現在フレームの合成画像を対象として、境界画像と上側画像IM_Laが隣接する隣接位置から上下の所定数のライン、及び、境界画像と下側画像IM_Lが隣接する隣接位置から上下の所定数のラインに含まれる画素の画素値に対して、空間フィルタを施すことで、空間フィルタ処理済み補正画像(
図10(g))を生成する。これにより、境界画像とその近傍の画像に対する平滑化が行われ、境界画像において水平方向の黒線がさらに目立ち難くなる。
ここで適用される空間フィルタは、境界画像と上側画像IM_Laの間、及び、境界画像と下側画像IM_Lの間を平滑化するフィルタであれば如何なる公知の空間フィルタであってもよく、例えばガウシアンフィルタや平均化フィルタが挙げられる。
【0058】
次に、
図11~
図13を参照して、合成画像に対する後処理についての第1の態様における具体的な空間フィルタの設定例について説明する。
図11~
図13の各図において、(a)は境界画像の各ラインの各画素に対するデジタルゲインの設定、(b)は閃光プロファイル、(c)は空間フィルタに対する処理対象画素、(d)は空間フィルタのフィルタ係数(カーネル)、をそれぞれ示している。各図の(a)では、
図2(c)と同様に、閃光開始ラインと閃光終了ラインの近傍の複数のライン(Line X~Line X+9)を対象として、電荷蓄積期間T
INT及び信号読み出し期間T
ROを示しているが、併せて、各図の(b)に示す閃光プロファイルを垂直方向に圧縮したものを表示している。
なお、閃光プロファイルとは、閃光の時刻の経過に応じた発光強度のプロファイルであり、換言すれば、横軸に時間、縦軸に閃光の発光強度をとったときの閃光の発光特性を意味する。
【0059】
図2(b)では、説明の便宜のために理想的なパルス状の閃光プロファイルを示したが、実際の閃光プロファイルは、発光強度の大小に応じて変動し得る。例えば、
図11~
図13の(b)は、同一のLEDに起因する閃光であり、
図11(b)、
図12(b)、
図13(b)の順に発光強度を低下させた(つまり、LED電流を低下させた)ときの閃光プロファイルである。このように、LEDの発光強度を変動させると、光源装置28内の駆動回路や電源回路などの特性の変化に応じて、LEDによる閃光プロファイル(特に、立ち上がり時と立ち下がり時)が変動する。
【0060】
また、
図11~
図13の(a)を参照すると、閃光プロファイルと、電荷蓄積ができない信号読み出し期間T
ROと、の重複度合いに応じて、境界画像の各ラインの露光量が変化する。
そこで、好ましくは、増幅処理部51は、閃光プロファイルとCMOSイメージセンサ14の信号読み出し期間に応じて、現在フレームの合成画像のうち境界画像の各ラインの画素に対して適用するゲインを、境界画像以外の各ラインの画素に適用するゲインよりも大きくする。
【0061】
例えば、
図11(a)のデジタルゲインの設定例において、Line X、Line X+1では、閃光プロファイルと信号読み出し期間T
ROがほとんど重複していないため、デジタルゲインを「1.0」に設定するが、Line X+3では、信号読み出し期間T
ROが閃光プロファイルと大きく重複している。すなわち、閃光のピークの部分が信号読み出し期間T
ROに相当し、前後のいずれのフレームにおいても露光されない状態となるため、デジタルゲインを「1.2」に設定する。Line X+2~Line X+7では、閃光プロファイル中、前後のいずれのフレームにおいても露光されない部分があるため、仮に境界画像を増幅させないとしたならば、境界画像において水平方向の黒線が目立ち易くなる。そこで、これらのラインに対して1より大きいデジタルゲイン(つまり、実質的に画素値を増幅させるようなゲイン)を設定することで露光量の低下を補償する。このとき、
図11(a)に示すように、境界画像の各ラインの電荷蓄積量(あるいは発光強度の積分量)が小さいほど大きなゲインが設定されるため、効果的に各画素の輝度を増加させることができる。
【0062】
図11~
図13の(c)は、フィルタ処理の処理対象画素群P
ADJの例を示している。
処理対象画素群P
ADJは、境界画像と上側画像が隣接する隣接位置から上下の所定数のライン、及び、境界画像と下側画像が隣接する隣接位置から上下の所定数のラインに含まれる画素群である。フィルタ処理部52は、この処理対象画素群P
ADJに含まれる各画素に対して、それぞれ
図11~
図13の(d)に示すフィルタ係数によるフィルタ処理を行う。
図11~
図13の(d)に示す5×5のフィルタ係数は、各画素にベイヤ配列のカラーフィルタが配置されている場合のフィルタ係数であり、実質的には3×3のフィルタ係数である。
好ましくは、フィルタ処理部52は、所定数のラインの各ラインに含まれる画素に適用される空間フィルタのフィルタ係数を、閃光プロファイルに応じて設定する。
例えば、
図13(d)に示すフィルタ係数は、
図11(d)及び
図12(d)に示すフィルタ係数と比較して、注目画素の重みが大きく、垂直方向の画素の重みが低いものとなっている。閃光プロファイルに応じてフィルタ係数を最適化させることで、閃光プロファイルに対して適切な平滑化処理を行うことができる。
【0063】
一実施形態では、フィルタ処理部52は、現在フレームの合成画像を対象として、境界画像のライン方向の中央位置から上下の所定数のラインに含まれる画素の画素値に対して、空間フィルタを施す。すなわち、
図11~
図13の(c)に示す処理対象画素群P
ADJとは異なり、処理対象画素群を境界画像のライン方向の中央位置から上下の所定数のラインに含まれる画素群としてもよく、その場合も、境界画像とその近傍の画像に対する平滑化が行われ、境界画像において水平方向の黒線をさらに目立ち難くすることができる。
【0064】
(ii)合成画像に対する後処理についての第2の態様
合成画像に対する後処理についての第2の態様は、上記処理Pc1と上記処理Pc3を組み合わせた処理である。
この第2の態様を実装した場合のシステム構成を
図14に示す。
図14に示すように、第2の態様では、
図1に示したプロセッサ20において、合成部24と画像出力処理部25の間に、増幅処理部51と補間処理部53をさらに含む。
図15~
図17はそれぞれ、合成画像に対する後処理についての第2の態様が適用される場合の画像処理を説明する図である。
図15~
図17の各図において、(a)はCMOSイメージセンサ14の垂直同期信号Vsync、(b)はCMOSイメージセンサ14の動作(CMOS動作)、(c)は閃光L、(d)はCMOSイメージセンサ14によって取得される撮像画像、(e)は合成画像、(f)はデジタルゲイン付与後補正画像、(g)はフレーム補間処理済み補正画像、をそれぞれ示している。なお、
図15(c)及び
図16(c)では、閃光の発光タイミングの基礎となる声帯振動の波形を示している。
図15(c)は、声帯振動周波数Fvが比較的大きい場合の閃光タイミングを示しており、
図16(c)は、声帯振動周波数Fvが小さい場合(例えばFv=63Hz)の閃光タイミングを示している。
【0065】
図15を参照すると、
図15(a),(b)に示すように、垂直同期信号Vsyncに同期してCMOSイメージセンサ14がフレーム単位でローリングシャッタ方式により露光を開始する。
図15(d)に示すように、現在フレームを基準とすると、閃光L1に対して2フレーム前の撮像画像として下側画像IM_L1が得られ、閃光L1に対して1フレーム前の撮像画像として上側画像IM_L1aが得られ、閃光L2に対して1フレーム前の撮像画像として下側画像IM_L2が得られ、閃光L2に対して現在フレームの撮像画像として上側画像IM_L2aが得られる。
図15(e)に示すように、現在フレームの合成画像は、下側画像IM_L2と上側画像IM_L2aを合成した画像であるが、この合成画像には、境界画像において水平方向の黒線が目立つ状態となっている。
【0066】
図16を参照すると、
図15と同様に、垂直同期信号Vsyncに同期してCMOSイメージセンサ14がフレーム単位でローリングシャッタ方式により露光を開始する。
図16では、
図15の場合よりも声帯振動周波数Fvが小さく、
図15の場合と閃光L1,L2の発光タイミングが異なる。そのため、
図16(d)に示すように、現在フレームを基準とすると、閃光L1に対して3フレーム前の撮像画像として下側画像IM_L1が得られ、閃光L1に対して2フレーム前の撮像画像として上側画像IM_L1aが得られ、閃光L2に対して1フレーム前の撮像画像として下側画像IM_L2が得られ、閃光L2に対して現在フレームの撮像画像として上側画像IM_L2aが得られる。
図16(e)に示すように、現在フレームの合成画像は、下側画像IM_L2と上側画像IM_L2aを合成した画像であるが、この合成画像には、
図15の場合と同様に境界画像において水平方向の黒線が目立つ状態となっている。
【0067】
図17は、
図15及び
図16とは異なり、現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合の画像処理である。この例では、
図17(d)に示すように、現在フレームを基準とすると、閃光L1に対して3フレーム前の撮像画像として下側画像IM_L1が得られ、閃光L1に対して2フレーム前の撮像画像として上側画像IM_L1aが得られ、閃光L2に対して2フレーム前の撮像画像として下側画像IM_L2が得られ、閃光L2に対して1フレーム前の撮像画像として上側画像IM_L2aが得られる。
図17(e)に示すように、現在フレームの合成画像は、下側画像IM_L2と上側画像IM_L2aを合成した画像であるが、この合成画像には、
図15及び
図16の場合と同様に境界画像において水平方向の黒線が目立つ状態となっている。
【0068】
図14に示した増幅処理部51は、合成部24によって生成された現在フレームの合成画像のうち境界画像の各ラインの各画素の画素値(デジタル値)を増幅することでデジタルゲイン付与後補正画像(
図15(f)~
図17(f))を生成する。これにより、境界画像の各ラインの各画素の輝度が増加し、境界画像において水平方向の黒線が目立ち難くなる。この点は、
図9の第1の態様と同じである。
【0069】
図14に示した補間処理部53は、現在フレームの合成画像のうち境界画像の各ライン、又は、境界画像の各ラインに加え、境界画像と上側画像が隣接する隣接位置より上の所定数のラインと境界画像と下側画像が隣接する隣接位置より下の所定数のラインとを含む複数のラインの各ラインを対象ラインとして、現在フレームと2フレーム前又は3フレーム前の過去フレームとの間で補間処理を行う。具体的には、補間処理部53は、フレームバッファ23に格納されている2フレーム前及び3フレーム前の撮像画像を読み出し、以下のようにフレーム補間処理を行う。
【0070】
補間処理部53は、
図15及び
図16に示すように、現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光された場合、現在フレームの合成画像のうち各対象ラインに含まれる画素の画素値を、現在フレームの合成画像の対応する画素の画素値と、2フレーム前の撮像画像(
図15では下側画像IM_L1、
図16では上側画像IM_L1a)の対応する画素の画素値と、を加重平均して算出する。
【0071】
補間処理部53は、
図17に示すように、現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合、現在フレームの合成画像のうち各対象ラインに含まれる画素の画素値を、現在フレームの合成画像の対応する画素の画素値と、3フレーム前の撮像画像の対応する画素の画素値と、を加重平均して算出する。
図17に示した例では、現在フレームの合成画像に対して、3フレーム前の撮像画像である下側画像IM_L1をフレーム補間の基礎とする。
以上説明したように、フレーム補間処理を行うことで、境界画像において水平方向の黒線を目立ち難くさせつつ、動画として見た場合の違和感を生じなくさせることができる。
【0072】
次に、
図18~
図20を参照して、合成画像に対する後処理についての第2の態様における具体的な設定例について説明する。
図18~
図20の各図において、(a)は境界画像の各ラインの各画素に対するデジタルゲインの設定、(b)は閃光プロファイル、(c)は、補間処理における直前フレーム比率と現在フレーム比率、をそれぞれ示している。なお、
図18~
図20の(a),(b)はそれぞれ、
図11~
図13の(a),(b)と同じである。
図18~
図20の(c)において、「現在フレーム比率」とは、フレーム補間の基礎とする現在フレームの合成画像に含まれる注目画素の画素値の、全体の画素値に対する重み(又は比率)(%)である。「直前フレーム比率」とは、フレーム補間の基礎とする直前のフレームの撮像画像の上記注目画素の画素値の、全体の画素値に対する重み(又は比率)(%)である。
ここで、「直前のフレーム」とは、現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれかのラインにおいて閃光が発光された場合には、現在フレームより2フレーム前のフレームであり、現在フレームより1フレーム前の露光開始時刻にCMOSイメージセンサ14のいずれのラインにおいても閃光が発光されなかった場合には、3フレーム前のフレームである。
【0073】
一実施形態では、補間処理部53は、境界画像のライン方向の中央において過去フレーム(つまり、2フレーム前又は3フレーム前)の撮像画像の対応する画素の画素値に対する重みが最大となり、中央から上下に離れるにつれて過去フレームの撮像画像の対応する画素の画素値に対する重みが低下するように、加重平均の重みを設定する。例えば
図18(c)では、境界画像のライン方向の中央において直前フレーム比率が最大(80%)となり、中央から上下に離れるにつれて直前フレーム比率が低下するように設定した例が示される。
このように直前フレーム比率を設定する理由は以下のとおりである。すなわち、一般的に閃光プロファイルは、発光の開始から発光強度が徐々に立ち上がり、発光の終了に向かって発光強度が徐々に立ち下がる特性となるため、設定されるデジタルゲインは、閃光プロファイルにおいて発光強度が最も高い中央における露光量の低下を補償すべく、例えば
図18(a)に示すように、閃光プロファイルの中央に対応するライン(すなわち、境界画像の中央のライン)が最も大きくなる。その際、境界画像の中央のラインでは、デジタルゲインを大きくしたことでノイズも増幅されるため、この増幅されたノイズが観察者に与える違和感を軽減させるために、境界画像の中央にいくほど直前フレーム比率が大きくなるように設定されている。
【0074】
一実施形態では、補間処理部53は、境界画像と上側画像が隣接する隣接位置にあるライン、及び/又は、境界画像と下側画像が隣接する隣接位置にあるラインに含まれる画素の画素値に対する重みが最大となり、隣接位置から上下に離れるにつれて過去フレーム(つまり、2フレーム前又は3フレーム前)の撮像画像の対応する画素の画素値に対する重みが低下するように、加重平均の重みを設定してもよい。
【0075】
一実施形態では、補間処理部53は、補間処理の対象ラインに含まれる画素に適用される加重平均の重みを閃光プロファイルに応じて設定する。
図18~
図20はそれぞれ異なる閃光プロファイルを示しており、この閃光プロファイルに応じて、各図の(c)に示す直前フレーム比率と現在フレーム比率がそれぞれ異なっている。閃光プロファイルに応じて比率を調整することで、より違和感のない合成画像を生成することができる。
【0076】
以上説明したように、電子内視鏡システム1では、被写体の撮像をローリングシャッタ方式で行うように構成されたCMOSイメージセンサ14を有する電子スコープ10と、被写体をストロボ撮影するために閃光を発光する光源装置28を有するプロセッサ20と、を備える。光源装置28は、ある閃光の閃光終了時刻から次の閃光の閃光開始時刻までの期間が、少なくとも1フレーム期間に亘って閃光の発光を禁止する閃光禁止期間より長くなるようにして、閃光を発光する。プロセッサ20は、光源装置28による閃光の発光タイミングに基づいて、CMOSイメージセンサ14によって得られたフレーム単位の撮像画像を処理して合成画像を生成し、合成画像を基にモニタ表示用の画面データを生成する。
すなわち、電子内視鏡システム1では、少なくとも1フレーム期間に亘って閃光の発光を禁止する閃光禁止期間が設定されている。そして、一発の閃光の照射期間である閃光照射期間の長さは、閃光同士の間隔である閃光禁止期間の長さを1フレーム期間以上とする限り、自由に設定することができる。そのため、十分な光量によってストロボスコピーを実現することができる。
【0077】
電子内視鏡システム1では、
図3~
図7に例示したように、閃光の発光タイミング次第では、CMOSイメージセンサ14の露光開始時刻のいずれかのラインにおいて閃光が発光されることを許容している。そのため、フレームレートの低下を抑制できる上、光源装置28をCMOSイメージセンサ14の同期信号(Vsync等)に同期して発光動作させる必要がない。
その一方で、合成画像を生成する際には、CMOSイメージセンサ14によって得られた上側画像と下側画像を合成するため、上側画像と下側画像の境界である境界画像に対応する水平方向の黒線が生ずる場合がある。この水平方向の黒線は、境界画像に対してデジタルゲイン付与処理、空間フィルタ処理、及び、フレーム補間処理のうち少なくともいずれかの処理を行うことで目立たなくすることができる。
なお、本実施形態とは異なり、1フレーム期間内においてすべてのラインに共通の露光期間を設定する疑似グローバルシャッタ方式でCMOSイメージセンサを動作させた場合、画像の合成処理は必要ないが、CMOSイメージセンサにおける読み出し速度の低下を余儀なくされ、フレームレートの低下を抑制することができない。
【0078】
図1に示した電子内視鏡システム1では、光源装置28がプロセッサ20に内蔵されているため、タイミング制御回路27から合成部24に発光タイミング信号を送信する処理が容易となる利点があるが、
図21及び
図22に示すように、他の構成を採ることもできる。
図21及び
図22の各図では、
図1のシステムに含まれる部分と同一の部分について同一の符号を付している。
【0079】
図21の電子内視鏡システム1Aは、光源装置を電子スコープに内蔵させた場合の実施形態を示している。
図21に示すように、電子内視鏡システム1Aは、電子スコープ10Aとプロセッサ20Bを備え、電子スコープ10Aは、
図1に示した電子スコープ10と比較すると、タイミング制御回路27及び光源装置28を備えている点で電子スコープ10と異なる。この構成では、電子スコープ10Aは、自身で設定するフレーム期間を基に閃光禁止期間の長さを設定できる。
【0080】
図22の電子内視鏡システム1Bは、電子スコープと、プロセッサと、光源装置とを、それぞれ別装置とした場合の実施形態を示している。
図22に示すように、電子内視鏡システム1Bは、電子スコープ10、プロセッサ20B、及び、光源システム50を備える。このシステムでは、プロセッサ20Bは、光源システム50のタイミング制御回路27に対して発光禁止期間の長さに関するデータを通知するCPU29を有する。CPU29は、当該データを電子内視鏡システム1Bの起動時に1回だけ通知すればよい。
【0081】
以上、本発明の撮像システム及び電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の撮像システム及び電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B…電子内視鏡システム
10,10A…電子スコープ
11…LCB
12…配光レンズ
13…対物レンズ
14…CMOSイメージセンサ
15…CMOSドライバ
20,20A,20B…プロセッサ
21…システムコントローラ
22…画像入力処理部
23…フレームバッファ
24…合成部
25…画像出力処理部
26…操作パネル
27…タイミング制御回路
28…光源装置
29…CPU
30…モニタ
31…音声処理回路
32…周波数検出回路
40…マイクロフォン
50…光源システム
51…増幅処理部
52…フィルタ処理部
53…補間処理部