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特開2024-100409保管位置生成装置、システム、方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100409
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】保管位置生成装置、システム、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20240719BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20240719BHJP
   G06Q 10/087 20230101ALI20240719BHJP
【FI】
B65G1/137 A
B65G1/00 501C
G06Q10/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004394
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】315014671
【氏名又は名称】東京ロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】高木 崇光
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄希
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022FF01
3F022MM14
3F522AA02
3F522BB27
3F522BB35
3F522CC01
3F522CC10
3F522GG09
3F522LL09
5L010AA16
5L049AA16
5L049CC52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安全性が高く、かつ、搬送効率の高い搬送を実現する保管位置生成装置、システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】搬送対象となる複数の物体の保管位置(1-1~6-4)を生成する保管位置生成システムであって、保管位置生成装置は、前記各物体の保管位置である第1の保管位置に関する情報を取得する保管位置情報取得部と、前記各物体に関し第1の保管位置と関連付けられる領域に関する情報である領域情報を取得する領域情報取得部と、前記各物体の搬送頻度に関する情報を取得する搬送頻度情報取得部と、第1の保管位置情報、搬送頻度情報及び領域情報に基づいて記領域間における搬送頻度の差を減少させるように、前記各物体の保管位置である第2の保管位置に関する情報を生成する保管位置情報生成部と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象となる複数の物体の保管位置を生成する、保管位置生成装置であって、
各前記物体の保管位置である第1の保管位置に関する情報を取得する、保管位置情報取得部と、
各前記物体に関し前記第1の保管位置と関連付けられる領域に関する情報である領域情報を取得する、領域情報取得部と、
各前記物体の搬送頻度に関する情報を取得する、搬送頻度情報取得部と、
前記第1の保管位置情報、前記搬送頻度情報、及び前記領域情報に基づいて、前記領域間における搬送頻度の差を減少させるように、各前記物体の保管位置である第2の保管位置に関する情報を生成する、保管位置情報生成部と、
を備える、保管位置生成装置。
【請求項2】
前記保管位置情報生成部は、搬送頻度の高い順又は低い順で各領域に各前記物体を順に配分することにより前記第2の保管位置に関する情報を生成する、請求項1に記載の保管位置生成装置。
【請求項3】
前記保管位置情報生成部は、各前記物体に対して前記搬送頻度の順位に応じてポイントを付与し、領域毎の各前記物体に付与された前記ポイントの総和が平均化するように前記第2の保管位置に関する情報を生成する、請求項1に記載の保管位置生成装置。
【請求項4】
前記搬送頻度に関する情報は、各前記物体の累積搬送回数である、請求項1~3のいずれか1項に記載の保管位置生成装置。
【請求項5】
搬送対象となる複数の物体の保管位置を生成する、保管位置生成システムであって、
各前記物体の保管位置である第1の保管位置に関する情報を取得する、保管位置情報取得部と、
各前記物体に関し前記第1の保管位置と関連付けられる領域に関する情報である領域情報を取得する、領域情報取得部と、
各前記物体の搬送頻度に関する情報を取得する、搬送頻度情報取得部と、
前記第1の保管位置情報、前記搬送頻度情報、及び前記領域情報に基づいて、前記領域間における搬送頻度の差を減少させるように、各前記物体の保管位置である第2の保管位置に関する情報を生成する、保管位置情報生成部と、
を備える、保管位置生成システム。
【請求項6】
搬送対象となる複数の物体の保管位置を生成する、保管位置生成方法であって、
各前記物体の保管位置である第1の保管位置に関する情報を取得する、保管位置情報取得ステップと、
各前記物体に関し前記第1の保管位置と関連付けられる領域に関する情報である領域情報を取得する、領域情報取得ステップと、
各前記物体の搬送頻度に関する情報を取得する、搬送頻度情報取得ステップと、
前記第1の保管位置情報、前記搬送頻度情報、及び前記領域情報に基づいて、前記領域間における搬送頻度の差を減少させるように、各前記物体の保管位置である第2の保管位置に関する情報を生成する、保管位置情報生成ステップと、
を備える、保管位置生成方法。
【請求項7】
搬送対象となる複数の物体の保管位置を生成する、保管位置生成プログラムであって、
各前記物体の保管位置である第1の保管位置に関する情報を取得する、保管位置情報取得ステップと、
各前記物体に関し前記第1の保管位置と関連付けられる領域に関する情報である領域情報を取得する、領域情報取得ステップと、
各前記物体の搬送頻度に関する情報を取得する、搬送頻度情報取得ステップと、
前記第1の保管位置情報、前記搬送頻度情報、及び前記領域情報に基づいて、前記領域間における搬送頻度の差を減少させるように、各前記物体の保管位置である第2の保管位置に関する情報を生成する、保管位置情報生成ステップと、
を備える、保管位置生成プログラム。
【請求項8】
一時保管領域に配置されている1又は複数の物体を、搬送ロボットを用いて、前記物体の所定の保管位置が関連付けられた複数の保管領域へと搬送する、搬送システムであって、
前記一時保管領域から搬送される前記物体の搬送頻度に関する情報である第1搬送頻度情報を取得する、第1搬送頻度情報取得部と、
前記保管領域に配置されている前記物体の搬送頻度に関する情報である第2搬送頻度情報を取得する、第2搬送頻度情報取得部と、
前記第1搬送頻度情報と前記第2搬送頻度情報に基づいて、前記一時保管領域に配置されている各前記物体を、前記保管領域間における前記物体の搬送頻度の差を減少させるように各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、搬送指令部と、
を備える、搬送システム。
【請求項9】
前記搬送指令部は、前記保管領域毎に前記搬送頻度の総和を算出し、各前記保管領域間で前記総和の差が小さくなるよう前記物体を各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、請求項8に記載の搬送システム。
【請求項10】
前記第1搬送頻度情報及び前記第2搬送頻度情報は、各前記物体の搬送回数である、請求項8又は9のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項11】
一時保管領域に配置されている1又は複数の物体を、搬送ロボットを用いて、前記物体の所定の保管位置が関連付けられた複数の保管領域へと搬送する、搬送システムであって、
前記一時保管領域から搬送される前記物体の搬送頻度に関する情報である第1搬送頻度情報を取得する、第1搬送頻度情報取得部と、
前記保管領域に配置されている前記物体の搬送頻度に関する情報である第2搬送頻度情報を取得する、第2搬送頻度情報取得部と、
前記第1搬送頻度情報と前記第2搬送頻度情報に基づいて、前記一時保管領域に配置されている各前記物体を、前記保管領域間における前記物体の搬送頻度の差を減少させるように各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、搬送指令部と、
を備える、搬送装置。
【請求項12】
一時保管領域に配置されている1又は複数の物体を、搬送ロボットを用いて、前記物体の所定の保管位置が関連付けられた複数の保管領域へと搬送する、搬送方法であって、
前記一時保管領域から搬送される前記物体の搬送頻度に関する情報である第1搬送頻度情報を取得する、第1搬送頻度情報取得ステップと、
前記保管領域に配置されている前記物体の搬送頻度に関する情報である第2搬送頻度情報を取得する、第2搬送頻度情報取得ステップと、
前記第1搬送頻度情報と前記第2搬送頻度情報に基づいて、前記一時保管領域に配置されている各前記物体を、前記保管領域間における前記物体の搬送頻度の差を減少させるように各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、搬送指令ステップと、
を備える、搬送方法。
【請求項13】
一時保管領域に配置されている1又は複数の物体を、搬送ロボットを用いて、前記物体の所定の保管位置が関連付けられた複数の保管領域へと搬送する、搬送プログラムであって、
前記一時保管領域から搬送される前記物体の搬送頻度に関する情報である第1搬送頻度情報を取得する、第1搬送頻度情報取得ステップと、
前記保管領域に配置されている前記物体の搬送頻度に関する情報である第2搬送頻度情報を取得する、第2搬送頻度情報取得ステップと、
前記第1搬送頻度情報と前記第2搬送頻度情報に基づいて、前記一時保管領域に配置されている各前記物体を、前記保管領域間における前記物体の搬送頻度の差を減少させるように各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、搬送指令ステップと、
を備える、搬送プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体の搬送システムに対して用いられる技術に関し、特に、倉庫等で用いられる搬送システムに対して用いられる技術等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、労働人口の減少、Eコマースの拡大等に伴い、倉庫内に保管された様々な商品を出荷する作業の自動化が進められている。
【0003】
ところで、この種の作業の効率性を高めるため、倉庫内における商品等の物体の搬送システムにおいて、所謂、ピッキングステーション方式、特に、ケース搬送型GTP方式が採用されることがある。
【0004】
ピッキングステーション方式とは、搬送ロボットが、様々な商品等が格納された保管棚からオーダー情報等に応じて所望のケース又は棚そのものを取り出し、ピッキングステーション、すなわち、作業者がコンテナへの商品の仕分け作業等を行う場所へと搬送する方式を言う。また、商品を作業者のもとへと搬送する方式はGTP(Goods-To-Person)方式と呼ばれ、GTP方式には、搬送ロボットがケースを搬送するケース搬送型GTP方式と、棚を搬送する棚搬送型GTP方式がある。
【0005】
搬送システムの例として、特許文献1には、協働して倉庫内の様々な業務を遂行するための多数のロボットが環境中をナビゲート走行する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2020-524848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような多数のロボットが同一の環境中を自律走行するシステムにおいては、複数のロボットが同一の場所への到達を試みる場合がある。このとき、何らの対策も施さなければロボット間において衝突等の危険性が生じることとなる。
【0008】
従前、このような危険を回避するためには、ロボットの移動に関して一定の制約を加えていた。例えば、特許文献1においては、競合する複数のロボットのうちの一部のロボットについて待ち列を作ることによりこのような危険を回避している。
【0009】
しかしながら、ロボットの移動に対して制約を加えると搬送システム全体における効率性が著しく低下するおそれがあった。
【0010】
本発明は上述の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、安全性が高くかつ搬送効率の高い搬送を実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する保管位置生成装置、システム、方法、若しくはプログラム、又は、搬送システム、装置、方法、若しくはプログラム等により解決することができる。
【0012】
すなわち、本発明に係る保管位置生成装置は、搬送対象となる複数の物体の保管位置を生成する、保管位置生成装置であって、各前記物体の保管位置である第1の保管位置に関する情報を取得する、保管位置情報取得部と、各前記物体に関し前記第1の保管位置と関連付けられる領域に関する情報である領域情報を取得する、領域情報取得部と、各前記物体の搬送頻度に関する情報を取得する、搬送頻度情報取得部と、前記第1の保管位置情報、前記搬送頻度情報、及び前記領域情報に基づいて、前記領域間における搬送頻度の差を減少させるように、各前記物体の保管位置である第2の保管位置に関する情報を生成する、保管位置情報生成部と、を備えている。
【0013】
このような構成によれば、領域間における物体の搬送頻度の差を減少させるように新たな保管位置情報を生成することができる。これにより、例えば、複数の搬送ロボットが移動する搬送システムにおけるロボット間の同一領域への移動の可能性を低減させることができ、それにより、安全性が高くかつ搬送効率の高い搬送システムを実現することができる。
【0014】
前記保管位置情報生成部は、搬送頻度の高い順又は低い順で各領域に各前記物体を順に配分することにより前記第2の保管位置に関する情報を生成する、ものであってもよい。
【0015】
このような構成によれば、搬送頻度の高い物体が特定の領域に偏って配置されることを防止することができる。
【0016】
前記保管位置情報生成部は、各前記物体に対して前記搬送頻度の順位に応じてポイントを付与し、領域毎の各前記物体に付与された前記ポイントの総和が平均化するように前記第2の保管位置に関する情報を生成する、ものであってもよい。
【0017】
このような構成によれば、搬送頻度の高い物体が特定の領域に偏って配置されることを防止することができる。
【0018】
前記搬送頻度に関する情報は、各前記物体の累積搬送回数であってもよい。
【0019】
このような構成によれば、単に現在までの搬送回数を参照することにより搬送頻度を特定することができる。
【0020】
別の角度から見た本発明は、搬送対象となる複数の物体の保管位置を生成する、保管位置生成システムであって、各前記物体の保管位置である第1の保管位置に関する情報を取得する、保管位置情報取得部と、各前記物体に関し前記第1の保管位置と関連付けられる領域に関する情報である領域情報を取得する、領域情報取得部と、各前記物体の搬送頻度に関する情報を取得する、搬送頻度情報取得部と、前記第1の保管位置情報、前記搬送頻度情報、及び前記領域情報に基づいて、前記領域間における搬送頻度の差を減少させるように、各前記物体の保管位置である第2の保管位置に関する情報を生成する、保管位置情報生成部と、を備えている。
【0021】
別の角度から見た本発明は、搬送対象となる複数の物体の保管位置を生成する、保管位置生成方法であって、各前記物体の保管位置である第1の保管位置に関する情報を取得する、保管位置情報取得ステップと、各前記物体に関し前記第1の保管位置と関連付けられる領域に関する情報である領域情報を取得する、領域情報取得ステップと、各前記物体の搬送頻度に関する情報を取得する、搬送頻度情報取得ステップと、前記第1の保管位置情報、前記搬送頻度情報、及び前記領域情報に基づいて、前記領域間における搬送頻度の差を減少させるように、各前記物体の保管位置である第2の保管位置に関する情報を生成する、保管位置情報生成ステップと、を備えている。
【0022】
別の角度から見た本発明は、搬送対象となる複数の物体の保管位置を生成する、保管位置生成プログラムであって、各前記物体の保管位置である第1の保管位置に関する情報を取得する、保管位置情報取得ステップと、各前記物体に関し前記第1の保管位置と関連付けられる領域に関する情報である領域情報を取得する、領域情報取得ステップと、各前記物体の搬送頻度に関する情報を取得する、搬送頻度情報取得ステップと、前記第1の保管位置情報、前記搬送頻度情報、及び前記領域情報に基づいて、前記領域間における搬送頻度の差を減少させるように、各前記物体の保管位置である第2の保管位置に関する情報を生成する、保管位置情報生成ステップと、を備えている。
【0023】
別の角度から見た本発明は、一時保管領域に配置されている1又は複数の物体を、搬送ロボットを用いて、前記物体の所定の保管位置が関連付けられた複数の保管領域へと搬送する、搬送システムであって、前記一時保管領域から搬送される前記物体の搬送頻度に関する情報である第1搬送頻度情報を取得する、第1搬送頻度情報取得部と、前記保管領域に配置されている前記物体の搬送頻度に関する情報である第2搬送頻度情報を取得する、第2搬送頻度情報取得部と、前記第1搬送頻度情報と前記第2搬送頻度情報に基づいて、前記一時保管領域に配置されている各前記物体を、前記保管領域間における前記物体の搬送頻度の差を減少させるように各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、搬送指令部と、を備えている。
【0024】
このような構成によれば、一時保管領域から保管領域へと物体を搬送することを通じて、保管領域間における物体の搬送頻度の差を減少させることができる。これにより、例えば、搬送ロボットが同一領域内の物体を搬送する搬送システム等において、搬送効率を向上させることができる。
【0025】
前記搬送指令部は、前記保管領域毎に前記搬送頻度の総和を算出し、各前記保管領域間で前記総和の差が小さくなるよう前記物体を各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、ものであってもよい。
【0026】
このような構成によれば、搬送頻度の高い物体が特定の領域に偏って配置されることを搬送を通じて是正することができる。
【0027】
前記第1搬送頻度情報及び前記第2搬送頻度情報は、各前記物体の搬送回数であってもよい。
【0028】
このような構成によれば、単に搬送回数を参照することにより搬送頻度を特定することができる。
【0029】
別の角度から見た本発明は、一時保管領域に配置されている1又は複数の物体を、搬送ロボットを用いて、前記物体の所定の保管位置が関連付けられた複数の保管領域へと搬送する、搬送システムであって、前記一時保管領域から搬送される前記物体の搬送頻度に関する情報である第1搬送頻度情報を取得する、第1搬送頻度情報取得部と、前記保管領域に配置されている前記物体の搬送頻度に関する情報である第2搬送頻度情報を取得する、第2搬送頻度情報取得部と、前記第1搬送頻度情報と前記第2搬送頻度情報に基づいて、前記一時保管領域に配置されている各前記物体を、前記保管領域間における前記物体の搬送頻度の差を減少させるように各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、搬送指令部と、を備えている。
【0030】
別の角度から見た本発明は、一時保管領域に配置されている1又は複数の物体を、搬送ロボットを用いて、前記物体の所定の保管位置が関連付けられた複数の保管領域へと搬送する、搬送方法であって、前記一時保管領域から搬送される前記物体の搬送頻度に関する情報である第1搬送頻度情報を取得する、第1搬送頻度情報取得ステップと、前記保管領域に配置されている前記物体の搬送頻度に関する情報である第2搬送頻度情報を取得する、第2搬送頻度情報取得ステップと、前記第1搬送頻度情報と前記第2搬送頻度情報に基づいて、前記一時保管領域に配置されている各前記物体を、前記保管領域間における前記物体の搬送頻度の差を減少させるように各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、搬送指令ステップと、を備えている。
【0031】
別の角度から見た本発明は、一時保管領域に配置されている1又は複数の物体を、搬送ロボットを用いて、前記物体の所定の保管位置が関連付けられた複数の保管領域へと搬送する、搬送プログラムであって、前記一時保管領域から搬送される前記物体の搬送頻度に関する情報である第1搬送頻度情報を取得する、第1搬送頻度情報取得ステップと、前記保管領域に配置されている前記物体の搬送頻度に関する情報である第2搬送頻度情報を取得する、第2搬送頻度情報取得ステップと、前記第1搬送頻度情報と前記第2搬送頻度情報に基づいて、前記一時保管領域に配置されている各前記物体を、前記保管領域間における前記物体の搬送頻度の差を減少させるように各前記保管領域へと搬送するよう前記搬送ロボットへと指令を行う、搬送指令ステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、複数の搬送ロボットが移動する搬送システムにおけるロボット間の同一領域への移動の可能性を低減させることができ、それにより、安全性が高くかつ搬送効率の高い搬送システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、搬送システムの全体構成図である。
図2図2は、搬送ロボットの外観斜視図である。
図3図3は、搬送ロボットに用いて棚上に載置された物体を取り出す場合の動作例に関する説明図である。
図4図4は、倉庫内を平面視した説明図である。
図5図5は、作業者の行う作業イメージを示す説明図である。
図6図6は、領域の他の設定例を示す説明図である。
図7図7は、物体の保管位置最適化処理に関するゼネラルフローチャートである。
図8図8は、保管位置の最適化処理の一例を示す説明図(その1)である。
図9図9は、保管位置の最適化処理の一例を示す説明図(その2)である。
図10図10は、搬送タスクを指令するロボット管理サーバの動作に関するゼネラルフローチャートである。
図11図11は、オーダー情報から搬送タスクを生成するまでの一連の処理に関する概念図である。
図12図12は、領域予約の概念図である。
図13図13は、搬送タスクを実行する搬送ロボットの動作に関するゼネラルフローチャートである。
図14図14は、保管棚からの物体の取り出し処理の詳細フローチャートである。
図15図15は、空きロケーションへの格納処理の詳細フローチャートである。
図16図16は、割当状態の変更処理のための監視処理に関する詳細フローチャートである。
図17図17は、領域1から搬送ロボットが出た直後の状態を示す説明図である。
図18図18は、返却タスクを指令するロボット管理サーバの動作に関するゼネラルフローチャートである。
図19図19は、一時保管棚のステータス情報から返却タスクを生成するまでの一連の処理に関する概念図である。
図20図20は、搬送ロボットによる返却タスク実行の様子を時系列で示す説明図(その1)である。
図21図21は、搬送ロボットによる返却タスク実行の様子を時系列で示す説明図(その2)である。
図22図22は、返却タスクを実行する搬送ロボットの動作に関するゼネラルフローチャートである。
図23図23は、一時保管棚からの物体の取り出し処理の詳細フローチャートである。
図24図24は、保管棚への返却処理の詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0035】
(1.第1の実施形態)
第1の実施形態として、本発明を、倉庫管理システムサーバ10、ロボット管理サーバ20、一時保管棚管理サーバ30、及び搬送ロボット50を備えた搬送システム100に対して適用した例について説明する。なお、本発明の適用対象は、倉庫管理用の搬送システムに限定されず、他の種々の搬送システムに適用することが可能である。
【0036】
(1.1 システムの構成)
図1は、本実施形態に係る搬送システム100の全体構成図である。同図から明らかな通り、本実施形態に係る搬送システム100は、倉庫管理システムサーバ10、ロボット管理サーバ20、一時保管棚管理サーバ30、及び複数の搬送ロボット50(50-1、50-2、・・・、50-N)を備え、それらは互いにネットワークを介して接続され情報の授受が可能に構成されている。
【0037】
倉庫管理システムサーバ10は、所謂、WMS(Warehouse Management System)に係る情報を管理するサーバである。倉庫管理システムサーバ10は、商品オーダーに関する情報等を受領し又は生成する。また、物体の保管棚90における保管位置とその保管位置が属する領域との関係性を示すテーブル等を記憶しており、オーダーされた商品に係る物体が倉庫内のどの位置及びどの領域にあるかを判定することができる。倉庫管理システムサーバ1は、少なくとも、ロボット管理サーバ20との間で情報の授受を行う。
【0038】
なお、本実施形態においては、倉庫管理システムサーバ1が、物体の保管棚90における保管位置とその保管位置が属する領域との関係性を示すテーブル等の情報を記憶する構成について説明するものの、本発明はそのような構成に限定されない。従って、例えば、ロボット管理サーバ20等の他の装置がそのような情報を記憶してもよいし、必要に応じて外部装置に対してリクエストする構成としてもよい。
【0039】
ロボット管理サーバ20は、倉庫管理システムサーバ10、一時保管棚管理サーバ30、複数の搬送ロボット50と接続され、搬送ロボット50や搬送ロボット50に割り当てられるタスク等の管理を行う。また、ロボット管理サーバ20は、搬送ロボット50の現在位置情報を搬送ロボットから直接に又は間接に取得すると共に、搬送ロボット50へのタスク割り当てステータス情報等の管理を行う。
【0040】
なお、本実施形態においては、ロボット管理サーバ20は、搬送ロボット50から提供される通知に基づいてタスクの割り当てステータス情報等を更新するものの、本発明はそのような構成に限定されない。従って、搬送ロボット50を監視し情報取得を行う他の装置等から情報を取得してもよい。
【0041】
一時保管棚管理サーバ30は、一時保管棚80のステータス情報、すなわち、一時保管棚80上の一時保管位置に配置されている物体又は空きロケーション(物体が配置されていない一時保管位置)に関する情報、及び、物体への作業ステータス情報等を管理する。また、一時保管棚管理サーバ30は、一時保管棚80上の一時保管位置に関する予約管理等を行う。なお、作業ステータス情報は、物体への作業が完了したときに作業者から提供されるものであってもよい。一時保管棚管理サーバ30は、ロボット管理サーバ20及び搬送ロボット50との間で情報の授受を行う。
【0042】
なお、本実施形態においては、一時保管棚管理サーバ30は、搬送ロボット50から提供される通知に基づいて一時保管棚ステータス情報等を更新するものの、本発明はそのような構成に限定されない。従って、一時保管棚80にセンサ等を設けて直接情報取得を行ってもよいし、又は一時保管棚80を監視し情報取得を行う他の装置等から情報を取得してもよい。
【0043】
搬送ロボット50は、ロボット管理サーバ20との間で情報の授受を行い、ロボット管理サーバ20から割り当てられるタスクを実行する。
【0044】
図2は、本実施形態に係る搬送ロボット50の外観斜視図である。本実施形態において、搬送ロボット50は、少なくとも移動機能、物体のマニピュレーション機能、及び物体の搬送機能を有するモバイルマニピュレータである。本実施形態において、物体のマニピュレーションには、物体の棚からの取り出し、物体の格納スロット55への格納、物体の格納スロットからの取り出し、物体の棚への載置等が含まれる。
【0045】
後述の通り、本実施形態において、搬送ロボット50は、保管棚90と一時保管棚80との間で物体の搬送作業を行う。より具体的には、搬送ロボット50は、一方の棚から物体を取り出し、搬送し、他方の棚へと格納する作業を行う。
【0046】
同図から明らかな通り、搬送ロボット50は、略直方体形状の全体形状を有し、前面には、左右一対のカメラ56、LiDARセンサ57、及び3つの格納スロット55(55-1、55-2、55-3)を有し、右側面には、1つのロボットアーム52を備えている。また、搬送ロボット50の底面には、図示しない全方位移動機構が備えられている。この移動機構によりモバイルマニピュレータは自在な向きで移動することができる。本実施形態では、全方位移動機構として、オムニホイールを採用している。
【0047】
なお、本実施形態においては、全方位への移動機構としてオムニホイールを採用するものの、本発明はこのような構成に限定されない。従って、メカナムホイール等、全方位移動を可能とする他の構成を採用してもよい。また、移動機構は、全方位移動機構に限定されない。従って、差動二輪等の移動方位が限定された他の移動機構を採用してもよい。また、車輪である必要はなく、脚部を用いるものであってもよい。さらに、床面上を移動する必要はなく、ドローン等の飛行体として構成してもよい。
【0048】
搬送ロボット50は、カメラ56、LiDARセンサ57等を備えている。これにより、倉庫内の環境地図、推定現在位置等に基づいて目的地まで自律走行することができる。
【0049】
図2において、各格納スロット55には、直方体形状の物体60が格納されている。すなわち、本実施形態に係る搬送ロボット50は最大で3つの物体を積載可能に構成されている。なお、本実施形態においては、搬送対象物体の大きさから、3つの物体の搬送を最大として説明するものの、本発明は、そのような構成に限定されない。例えば、物体が格納スロット55の大きさに比べて十分小さい場合には最大積載個数を4つ以上としてもよい。
【0050】
ロボットアーム52は、5つの駆動関節部(A-J1~A-J5)を備えたアームである。より詳細には、ロボットアーム52は、搬送ロボット50の右側面に回動可能に取り付けられたL字形状の第1リンク521、第1リンク521の先端に回動可能に取り付けられた棒状の第2リンク522、第2リンク522の先端に回動可能に取り付けられ屈曲した形状を有する第3リンク523、第3リンク523の先端近傍に回動可能に取り付けられるスライドテーブル部53を有している。
【0051】
第1リンク521の付け根、第1リンク521と第2リンク522の間、第2リンク522と第3リンク523の間には、それぞれ左右方向に延び床面に平行な軸回りに回動させる第1~第3の3つの駆動関節部(A-J1~A-J3)が備えられている。また、第3リンク523とスライドテーブル部53との間には、第4の駆動関節部(A-J4)が備えられている。同図の例にあっては、第4の駆動関節部(A-J4)は、スライドテーブル部53を第3リンク523に対して垂直な軸回りに回動させる。スライドテーブル部53は、物体を吸引してスライドテーブル部53の大面積面に対して平行にスライドする吸引部54(図3参照)を備えており、第5の駆動関節部(A-J5)を構成している。
【0052】
搬送ロボット50は、このようなロボットアーム52を備えていることにより、棚上のあらゆる位置の物体にもリーチングすることができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、搬送ロボット50は、ロボットアーム52を備えるものとしたが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、物体の取り出し、搬送及び載置等が出来れば他の機構を備えたロボットであってもよい。
【0054】
図3は、搬送ロボット50に用いて棚上に載置された物体60を取り出す場合の動作例に関する説明図である。同図(A)は、搬送ロボット50による物体の取り出し動作の第1の例である。同図から明らかな通り、搬送ロボット50は、ロボットアーム52を用いて、床面付近の低い位置の棚上の物体60-3に対してリーチングすることができる。
【0055】
より詳細には、まず、搬送ロボット50は、ロボットアーム52の手先位置を床面近付の目標物体60-3の正面付近に配置する。このとき、スライドテーブル部53は、取り出し対象となる物体60-3の底面に対して平行に配置される。次に、搬送ロボット50は、吸引部54をスライドさせて物体60-3を吸引する。最後に、搬送ロボット50は、吸引部54を、物体60-3との一体性を保持したまま、物体60-3を引き出す方向にスライドさせる。これにより、物体60-3をスライドテーブル部53上に載置することができる。なお、スライドテーブル部53上に載置された物体60-3は、その後、格納スロット55-3に載置され搬送される。
【0056】
同図(B)は、搬送ロボット50による物体の取り出し動作の第2の例である。同図から明らかな通り、搬送ロボット50は、ロボットアーム52を用いて、搬送ロボット50の本体高さより高い位置にある棚上の物体60-3に対してリーチングすることができる。
【0057】
より詳細には、まず、搬送ロボット50は、ロボットアーム52の手先位置を棚の最上段にある目標物体60-3の正面付近に配置する。このとき、スライドテーブル部53は、取り出し対象となる物体60-3の底面に対して平行に配置される。次に、搬送ロボット50は、吸引部54をスライドさせて物体60-3を吸引する。最後に、搬送ロボット50は、吸引部54を、物体60-3との一体性を保持したまま、物体60-3を引き出す方向にスライドさせる。これにより、物体60-3をスライドテーブル部53上に載置することができる。なお、スライドテーブル部53上に載置された物体60-3は、その後、格納スロット55-3に格納されて搬送される。
【0058】
なお、倉庫管理システムサーバ10、ロボット管理サーバ20、一時保管棚管理サーバ30は、それぞれ、例えば、PC等の情報処理装置で構成される。各装置は、ROM、RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等を含みプログラムやデータ等を記憶する記憶部と、CPU、GPU等の演算装置から成りプログラムの実行処理等を行う制御部と、外部装置との間で通信を行う通信ユニットと、キーボード、マウス等からの入力信号を受け付ける入力部と、ディスプレイ等への出力を行う表示部と、スピーカ等への出力を行う音声出力部等を備えている。
【0059】
また、搬送ロボット50も同様に、ROM、RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等を含みプログラムやデータ等を記憶する記憶部と、CPU、GPU等の演算装置から成りプログラムの実行処理等を行う制御部と、外部装置との間で通信を行う通信ユニットと、入力信号を受け付ける入力部と、ディスプレイ等への出力を行う表示部と、スピーカ等への出力を行う音声出力部等を備えている。
【0060】
(1.2 システムの動作)
(システムの概要)
まず、本実施形態において、倉庫内で動作する搬送システム100の概要について説明する。
【0061】
図4は、倉庫内を平面視した説明図である。本発明に係る搬送システム100は、所謂ケース搬送型GTP方式の搬送システムである。倉庫内には、複数の保管棚90が配置される領域と、1又は複数の一時保管棚80が配置される領域があり、作業者は一時保管棚80の近傍にて一時保管棚から物体(例えば、ケース)を取り出して、ケース内の商品の仕分け等の作業を行う。搬送ロボット50は、タスクとしてこれらの棚の間において1又は複数の物体(A~Z、A2~D2)の搬送又は返却を行う。
【0062】
より詳細には、同図の例にあっては、保管棚90が配置される領域には、第1~第5の保管棚90(90-1~90-5)が互いに長辺を平行に配置され、保管棚90の間には直線的な通路が形成されている。
【0063】
保管棚90上には、仮想的に保管位置(又は保管区画)が設定されている。例えば、第1の保管棚90-1には、1-1~1-6までの6つの保管位置が設定されている。同図の例にあっては、各保管位置(1-1~1-6、2-1~2-6、3-1~3-6、4-1~4-6、5-1~5-6)には、それぞれ物体(A~Z、A2~D2)が載置されて保管されている。物体は、例えば、ケースであり、各ケース内には、例えば、1又は複数の商品が格納されている。
【0064】
保管棚90の配置された領域には、搬送システム100の設計者又はユーザにより仮想的に複数の領域(領域1~3)が設定されている。領域1には、2つの保管棚90-1、90-2が配置され、領域2には、2つの保管棚90-3、90-4が配置され、領域3には、1つの保管棚90-5が配置されている。
【0065】
一時保管棚80には、仮想的に一時保管位置(又は一時保管区画)(a~j)が設定されており、これらの一時保管位置にそれぞれ搬送された物体が載置される。作業者は、この載置された物体を取り出して商品の仕分け作業等を行い、再度、物体を一時保管棚の元の位置へと返却する。
【0066】
図5は、作業者70の行う作業イメージを示す説明図である。同図の例にあっては、一時保管棚80の各一時保管位置に物体60が載置されている。なお、一時保管位置は、一時保管棚80の棚板上に設定され、一時保管位置には、一時保管棚80の前面(すなわち、作業者70がアクセスする側)及び背面(すなわち、搬送ロボット50がアクセスする側)のいずれの方向からもアクセス可能に構成されている。
【0067】
作業者70の近傍には作業台が配置され、各作業台上には、仕分けコンテナ71が複数配置されている。作業者70は、オーダー情報に応じて、一時保管棚80から物体60であるケースを取り出し、取り出したケースから商品を取り出し、仕分けコンテナ71へと移し、物体60を再度一時保管棚80へと返却する。作業者70は、仕分けが完了した仕分けコンテナ71をベルトコンベア75へと載置する。
【0068】
なお、このとき、物体60に関する作業の完了は、所定の手段を用いて、倉庫管理システムサーバ10、ロボット管理サーバ20、一時保管棚管理サーバ30等へと通知される。この通知を受けて、一時保管棚管理サーバ30は、当該物体60に関する作業ステータス情報を作業完了状態(又は返却待ち状態)へと更新する。所定の手段は、作業者による所定の装置への入力であってもよいし、何らかの認識手段を用いるものであってもよい。
【0069】
なお、本実施形態においては、物体格納又は保管の手段として棚を採用するものの、他の物体格納手段又は物体保管手段を用いてもよい。従って、例えば、テーブル、台又は箱等の物体を保持可能な他の手段であってもよい。また、領域だけを設定し、当該領域内に台や棚等を何ら設けない構成としてもよい。
【0070】
また、本実施形態においては、物体を一時的に保管することを想定するため便宜的に一時保管棚80と称呼するもののこのような名称に限定されない。従って、一時保管棚80を単に格納棚等のように称呼してもよい。
【0071】
さらに、領域の設定方法はこのような形態に限定されない。従って、他の態様で設定してもよい。
【0072】
図6は、領域の他の設定例を示す説明図である。同図(A)は、領域の他の設定例(その1)である。同図の例にあっては、「領域1」は、保管棚90の間の通路のみをカバーするように設定されている。また、「領域2」は、通路領域に加えて保管棚90を含む領域をカバーするように設定されている。同図(B)は、領域の他の設定例(その2)である。同図の例にあっては、「領域1」~「領域4」の各領域は、2つの保管棚90とのみならずその周辺の領域を一定程度カバーするように設定されている。
【0073】
(物体の保管位置の最適化処理(リロケーション処理))
次に、搬送システム100の稼働に際して、例えば、倉庫管理システムサーバ10上にて実行される物体ロケーション最適化処理について説明する。
【0074】
なお、本実施形態においては、倉庫管理システムサーバ10にて物体の保管位置最適化処理が行われるものとして説明するもののこのような構成に限定されない。例えば、ロボット管理サーバ20等の他の装置で実行されるものとしてもよいし、保管位置最適化処理用の情報処理装置をネットワーク上に配置してもよい。
【0075】
図7は、物体の保管位置最適化処理に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、物体ロケーション最適化処理の開始信号が検出されると、倉庫管理システムサーバ10は、物体関連データを記憶部から読み出す処理を行う(S1)。本実施形態においては、物体関連データには、物体の識別情報(物体A~Z、物体A2~D2)と、各物体の保管棚90における保管位置情報(1-1~1-6、2-1~2-6、3-1~3-6、4-1~4-6、5-1~5-6)と、各物体の累積の搬送回数が含まれる。なお、物体の搬送回数とは、搬送システムを稼働させることにより、物体が搬送ロボット50によって保管棚90から取り出された回数である。
【0076】
なお、本実施形態においては、物体関連データには、物体の累積の搬送回数が含まれるものとして説明したが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、例えば、物体の累積期間を直近1カ月等の所定期間に限定してもよい。このような構成によれば、物体に関連する商品の出荷頻度の変動や季節性を搬送回数に反映することができる。
【0077】
また、過去の累積搬送回数ではなく、その日のオーダー情報など、所定のオーダー情報から算出される物体毎の搬送回数を使用してもよい。このような構成によれば、オーダーの傾向、例えば、物体に関連する商品の出荷傾向が変動する場合であっても、搬送効率と安全性を向上させることができる。
【0078】
さらに、箱等の物体に含まれる商品の単位で搬送回数をカウントし、商品の搬送回数の総和により各物体の搬送回数としてもよい。このような構成によれば、物体の内容物が変更される場合であっても、適切に搬送頻度を考慮することができる。
【0079】
物体関連データの読出処理の後、倉庫管理システムサーバ10は、物体の保管位置を最適化する処理を実行する(S2)。具体的には、各物体の搬送頻度に基づいて、所定の条件の下に各物体の保管位置を新たに生成する処理を行う。所定の条件とは、例えば、領域間における搬送頻度の差を減少させることである。
【0080】
このような構成によれば、後述の通り、例えば、複数の搬送ロボット50が移動する搬送システム100における搬送ロボット50間の同一領域への移動の可能性を低減させることができ、それにより、安全性が高くかつ搬送効率の高い搬送システム100を実現することができる。
【0081】
図8は、保管位置の最適化処理の一例を示す説明図(その1)である。同図上段においては、6つの保管棚90が平行に配置され各保管棚90の間の通路には領域1~3が設定されている。各保管棚90には4つの物体が配置されており、各保管位置(1-1~6-4)には、A~Xの物体が順に配置されている。このとき、各物体の搬送頻度(累積搬送回数)はAからXに近付く程、小さくなっている。例えば、物体Aの搬送回数は100回、物体Bの搬送回数は90回、物体Xの搬送回数は2回である。すなわち、同図上段の状態においては領域1に搬送頻度の高い物体が偏って配置されている。
【0082】
同図上段の状態において、各物体の搬送頻度に基づく保管位置の最適化処理を行うと、領域間の搬送頻度の差を減少させるよう保管位置が変更され同図下段に示す状態となる。すなわち、搬送頻度が高い順位の物体から、各領域に順に(左から右に、下段から上段に)配置していくことにより、各領域の搬送回数の総和を互いに近付け、領域間で物体の搬送頻度を平均化することができる。
【0083】
このような構成によれば、搬送頻度の高い物体が特定の領域に偏って配置されることを防止することができる。
【0084】
図9は、保管位置の最適化処理の一例を示す説明図(その2)である。同図上段においては、6つの保管棚90が平行に配置され各保管棚90の間の通路には領域1~3が設定されている。各保管棚90には4つの物体が配置されており、各保管位置(1-1~6-4)には、A~Xの物体が順に配置されている。このとき、各物体の搬送頻度(累積搬送回数)はAからXに近付く程小さくなっており、各物体には搬送回数の順位に応じてポイントが付与されている。例えば、一位の物体Aには1ポイント、二位の物体Bには2ポイント、・・・24位のXには24ポイントが付与される。このポイント付与により、領域1に接する物体に係るポイントの総和は36ポイント、領域2に接する物体に係るポイントの総和は100ポイント、領域3に接する物体に係るポイントの総和は164ポイントである。
【0085】
同図上段の状態において、各物体の搬送頻度に基づく保管位置の最適化処理を行うと、領域間の搬送頻度の差を減少させるよう保管位置が変更され同図下段に示す状態となる。すなわち、搬送頻度が高い順位の物体から、図の左から右に、下段から上段に向かって、配置していくことにより、各領域に係るポイントの総和を互いに近付けることができる。これにより、各領域のポイント総和はいずれも100ポイントとなり、すなわち、領域間で物体の搬送頻度が平均化されることとなる。
【0086】
このような構成によれば、搬送頻度の高い物体が特定の領域に偏って配置されることを防止することができる。
【0087】
図7に戻り、保管位置の最適化処理の後、当該処理で生成された新たな保管位置に関するデータ(リロケーションデータ)を記憶部へと記憶する処理を行って、処理は終了する。なお、このデータはユーザに画像情報等として提供され、ユーザはそれに応じて、物体の保管位置を変更する。この変更は搬送ロボット50を用いて行ってもよいし、人手により行ってもよい。
【0088】
(保管棚から一時保管棚への物体搬送動作)
次に、上述の手順を経て配置された物体を、搬送ロボット50が、保管棚90から取り出し、一時保管棚80へと搬送する動作について説明する。
【0089】
図10は、搬送タスクを指令するロボット管理サーバ20の動作に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、ロボット管理サーバ20は、倉庫管理システムサーバ10に対して商品のオーダー情報をリクエストする処理を行う(S10)。このリクエスト処理の後、ロボット管理サーバ20は、倉庫管理システムサーバ10からオーダー情報を受信するまで待機状態となる(S11NO)。
【0090】
倉庫管理システムサーバ10は、このリクエストを受領すると、オーダー情報をロボット管理サーバ20へと送信する。オーダー情報は、オーダーの識別情報、各識別情報に関連付けられる物体、及び物体の保管位置の情報を含む。
【0091】
ロボット管理サーバ20は、オーダー情報を受信すると(S11YES)、搬送タスクリストの生成処理とグループ化処理を行う(S12)。
【0092】
搬送タスクリストの生成処理とは、オーダー情報に基づいて、搬送対象となる物体をその保管棚90上の保管位置の属する領域毎に分類する処理である。また、グループ化処理とは、搬送タスクリストに含まれる単位搬送タスクを搬送ロボット50の最大積載個数に基づいてグループ化して搬送ロボット50へと割り当てる搬送タスクとする処理である。
【0093】
図11は、オーダー情報から搬送タスクを生成するまでの一連の処理に関する概念図である。同図の例にあっては、ロボット管理サーバ20は、倉庫管理システムサーバ10からオーダー情報として、2つのオーダー情報を受領する(S10、S11)。
【0094】
各オーダーには、識別子として「オーダー1」、「オーダー2」が付与されており、「オーダー1」には、4つの搬送対象物体(A、G、V、J)に関する情報とその保管棚90上の保管位置情報(1-1、2-1、4-4、2-4)、「オーダー2」には、3つの搬送対象物体(Y,E,Q)に関する情報とその保管棚90上の保管位置情報(5-1、1-5、3-5)が関連付けられている。
【0095】
その後、ロボット管理サーバ20は、オーダー情報に基づいて、搬送タスクリストを生成する(S12)。ここで、領域1には保管位置として1-1~1-6、2-1~2-6が含まれ、領域2には、3-1~3-6、4-1~4-6が含まれ、領域3には5-1~5-6が含まれる。そのため、領域1に関連付けられる搬送対象物体リストとして、A(1-1)、G(2-1)、E(1-5)、J(2-4)が特定され、領域2に関連付けられる搬送対象物体リストとして、V(4-4)、Q(3-5)が特定され、領域3に関連付けられる搬送対象物体リストとしてY(5-1)が特定される。
【0096】
搬送タスクリストの生成処理の後、ロボット管理サーバ20は、グループ化処理を行う(S13)。本実施形態に係る搬送ロボット50の物体の最大積載個数は3個なので、搬送元領域が同一な単位タスクを3個ずつグループ化して、搬送ロボット50へと割り当てる搬送タスクとする。すなわち、領域1に関しては、「タスク1」として3つの物体「A、G、E」を搬送対象とし、「タスク2」として1つの物体「J」を搬送対象とする。領域2に関しては、「タスク3」として2つの物体「V、Q」を搬送対象とし、領域3に関しては「タスク4」として1つの物体「Y」を搬送対象とする。
【0097】
図10に戻り、グループ化処理が完了すると、ロボット管理サーバ20は、グループ化された搬送タスクのうちからタスク割り当て状態にない領域に関する搬送タスクを抽出し、抽出された搬送タスクのうちから1つを選択する処理を行う(S13)。その後、ロボット管理サーバ20は、選択した搬送タスクに係る物体の保管位置の属する領域に関して予約処理を行い、当該領域をタスク割り当て状態とする(S15)。予約処理とは、対象となる領域に他の搬送ロボット50が重複して進入することがないよう、当該領域に係る他の搬送タスク又は返却タスクを排除する処理である。
【0098】
図12は、領域予約の概念図である。同図の例にあっては、領域1に対して予約処理がなされタスク割り当て状態となっている。これにより、2以上の搬送ロボット50が領域1内で作業する可能性が排除される。
【0099】
このような構成によれば、複数の搬送ロボット50同士が通路等の領域内で干渉し、例えば、所謂デッドロック状態となること等を防止することができる。また、領域内において1台のみの搬送ロボット50の移動が保証されることから高速移動がしやすくなり、搬送システム100として搬送効率を向上させることができる。
【0100】
予約処理の後、ロボット管理サーバ20は、選択した搬送タスクを搬送タスクリストから削除して搬送タスクリストを更新する処理を行う(S16)。
【0101】
搬送タスクリストの更新処理の後、ロボット管理サーバ20は、一時保管棚管理サーバ30へと一時保管棚80の空き状況に関する空きロケーション情報のリクエスト処理を行う(S17)。このリクエスト処理の後、ロボット管理サーバ20は、空きロケーション情報を受信するまで待機状態となる(S18NО)。
【0102】
一時保管棚管理サーバ30は、一時保管棚80の各一時保管位置に存在する物体、及び、一時保管棚80の空きロケーション情報を管理している。一時保管棚管理サーバ30は、ロボット管理サーバ20から空きロケーション情報のリクエストを受領すると、ロボット管理サーバ20に対して、予約可能な空きロケーション情報を送信する。
【0103】
一時保管棚管理サーバ30から空きロケーション情報を受信すると(S18YES)、ロボット管理サーバ20は、選択した搬送タスクに係る物体の個数分だけ一時保管棚80上の一時保管位置を選択し、一時保管棚管理サーバ30に対して、予約リクエストを送信する処理を行う(S20)。
【0104】
この予約リクエストを受信すると、一時保管棚管理サーバ30は、予約リクエストに応じて一時保管棚80の一時保管位置を予約する。すなわち、1つの一時保管位置に2つ以上の物体が搬送されないように一時保管位置をブロックする。
【0105】
予約処理が完了すると、ロボット管理サーバ20は、ロボットの選択処理を行う(S21)。ロボット管理サーバ20は、各搬送ロボット50の現在位置情報、現在のタスク割り当てステータス等の情報を取得している。これらの情報に基づき、ロボット管理サーバ20は、現在、搬送タスクが割り当てられていない搬送ロボット50のうちから、任意の搬送ロボット50を選択する処理を行う。
【0106】
選択処理の後、ロボット管理サーバ20は、選択した搬送ロボット50に対して所定の指令処理を行う(S22)。指令は、搬送タスク情報及び予約した空きロケーションに関する情報を含むものである。また、このとき、ロボット管理サーバ20は、指令を行った搬送ロボット50がタスク実行中であるとしてタスク割り当てステータス情報を更新する。
【0107】
この指令処理の後、搬送タスクリストに係るすべての搬送タスクを搬送ロボット50に対して指令したか否かを判定する(S23)。この判定の結果、未だすべての搬送タスクを搬送ロボット50に対して指令していない場合(S23NO)、再度一連の処理(S13~S23)を実行する。
【0108】
一方、すべての搬送タスクを搬送ロボット50に対して指令した場合(S23YES)、再度、オーダー情報の取得処理から一連の処理(S10~S23)を実行する。
【0109】
図13は、搬送タスクを実行する搬送ロボットの動作に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、ロボット管理サーバ20から指令を受信するまで待機状態となる(S31NO)。
【0110】
その後、ロボット管理サーバ20から指令を受信すると(S31YES)、搬送ロボット50は、保管棚90から物体を取り出す処理を実行する(S32)。
【0111】
図14は、保管棚90からの物体の取り出し処理の詳細フローチャートである。処理が開始すると、搬送ロボット50は、指令された搬送タスクに係る搬送対象物体を取り出す順序を決定する処理を実行する(S321)。この順序は、様々な手法で決定することができる。例えば、搬送ロボット50からの距離が近い順に取り出していってもよい。或いは、所謂巡回セールスマン問題を解いて、全ての物体の取り出しに要する総距離が最小となるよう経路を計画して順序を決定してもよい。
【0112】
取り出し順の決定処理の後、搬送ロボット50は、現在位置から最初の取り出し対象となる物体の前までの移動経路の計画処理を行う(S322)。この経路計画は既存の様々な手法により実現することができる。例えば、環境地図を用いて経路計画を行ってもよい。
【0113】
この経路計画処理の後、搬送ロボット50は、目標となる物体の前へと移動する処理を行う(S323)。なお、このとき、搬送ロボット50の停止位置は事前設計しておいてもよい。
【0114】
目標となる物体の前へと移動した後、搬送ロボット50は、搬送ロボット50前面に設けられたカメラ56又は不図示の手先カメラを利用して物体を認識し、ロボットアーム52を用いて物体を取り出す処理を実行する(S325)。
【0115】
物体を取り出す処理を行った後、搬送ロボット50は、格納スロット55のうちの1つを選択した後、取り出した物体を当該格納スロット55へと格納する処理を行う(S326)。また、搬送ロボット50は、物体を格納した後、選択した格納スロットにどの物体を格納したかを記憶部へと記憶する処理を行う(S326)。
【0116】
記憶処理の後、搬送ロボット50は、割り当てられた搬送タスクに係るすべての物体を保管棚90から取り出したか否かを判定する(S327)。未だすべての物体を取り出していない場合(S327NO)、目標となる物体を次の順序の物体へと変更する処理を行い(S328)、再度一連の処理(S322~S327)を実行する。
【0117】
一方、すべての物体を取り出したと判定される場合(S327YES)、取り出した物体に関する搬送回数情報を更新する処理を行う(S330)。より詳細には、倉庫管理システムサーバ10に記憶された搬送回数情報を1回分カウントアップするために、搬送された各物体に関する識別情報と搬送回数情報を倉庫管理システムサーバ10へと送信する処理を行う。これにより倉庫管理システムサーバ10に記憶されている搬送回数情報は更新される。
【0118】
搬送回数情報の更新処理が完了すると、割当状態の変更処理のための監視処理を開始するようロボット管理サーバ20へと信号を送信する(S331)。この信号を受け、ロボット管理サーバ20は、後述の監視処理を開始する。その後、処理は終了する。
【0119】
図16は、ロボット管理サーバ20において実行される割当状態の変更処理のための監視処理に関する詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、搬送ロボット50から監視処理の開始を指令する信号を受信すると、ロボット管理サーバ20は、処理を開始し、指令した受信した搬送ロボット50の現在位置情報を取得する処理を行う(S341)。この位置情報は当該搬送ロボット50から直接取得してもよいし、他の搬送ロボット50の監視システムを用いて間接に取得してもよい。
【0120】
その後、ロボット管理サーバ20は、位置情報に基づいて予約した領域から搬送ロボット50が出たか否かを判定する(S342)。未だ領域内に搬送ロボット50が存在する場合(S342NO)、再度位置情報の取得処理(S341)を繰り返す。
【0121】
一方、予約した領域から搬送ロボット50が出たことが検出された場合(S342YES)、ロボット管理サーバ20は、搬送ロボット50が出た当該領域に関する予約を解除し、タスクが割り当てられた状態から、割り当て待ちの状態へと変更する処理を行う(S343)。この処理により、再び当該領域に対して、搬送ロボットがアクセスすることが可能となる。その後、処理は終了する。
【0122】
図17は、領域1から搬送ロボット50が出た直後の状態を示す説明図である。同図から、搬出ロボット50が領域1から出たことをロボット管理サーバ20が検出し、領域へのタスク割り当て状態を解除したことが看取される。
【0123】
図13に戻り、物体の取り出し処理の後、搬送ロボット50は、一時保管棚80上の予約した空きロケーションへの物体の格納処理を実行する(S35)。
【0124】
図15は、空きロケーションへの格納処理の詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、搬送ロボット50は、保管棚90から取り出して格納スロット55へと格納した複数の物体の一時保管棚80の空きロケーションへの格納順を決定する処理を行う(S351)。この順序は、様々な手法で決定することができる。例えば、搬送ロボット50からの距離が近い順に格納していってもよい。
【0125】
格納順の決定処理の後、搬送ロボット50は、搬送ロボット50の現在位置から一時保管棚80の空きロケーションの前までの移動経路の計画処理を行う(S352)。この経路計画は既存の様々な手法により実現することができる。例えば、環境地図を用いて経路計画を行ってもよい。
【0126】
この経路計画処理の後、搬送ロボット50は、目標となる空きロケーションの前へと移動する処理を行う(S353)。なお、このとき、搬送ロボット50の停止位置は事前設計しておいてもよい。
【0127】
目標となる物体の前へと移動した後、搬送ロボット50は、搬送ロボット50前面に設けられたカメラ56又は不図示の手先カメラを利用して空きロケーションを認識し、ロボットアーム52を用いて物体を載置することにより一時保管棚80へと物体を格納する処理を実行する(S355)。
【0128】
この格納処理の後、搬送ロボット50は、物体が格納された一時保管位置情報、格納した物体の識別情報等の情報を一時保管棚管理サーバ30へと通知する処理を行う(S356)。一時保管棚管理サーバ30は、この通知に基づき、一時保管棚80上のどの一時保管位置にどの物体が格納された状態であるかを記憶する。
【0129】
この通知処理の後、搬送ロボット50は、割り当てられた搬送タスクに係るすべての物体を一時保管棚80へと格納したか否かを判定する処理を行う(S357)。この判定処理の結果、未だすべての物体を格納していないと判定された場合、搬送ロボット50は、目標となる空きロケーションを変更する処理を行い(S328)、再度一連の処理(S352~S357)を実行する。一方、搬送して来たすべての物体を一時保管棚80へと格納したと判定した場合、処理は終了する。
【0130】
図13に戻り、空きロケーションへの格納処理の完了後、搬送ロボット50は、ロボット管理サーバ20へと割り当てられたタスクを完了したことを通知する処理を行う(S36)。この通知処理の後、再び、搬送ロボット50はロボット管理サーバ20からの指令を待機する状態となる(S31NO)。
【0131】
なお、ロボット管理サーバ20は、搬送ロボット50からタスク完了通知を受信すると、当該搬送ロボットがタスクが割り当てられていない状態へと変更されたとして、タスク割り当てステータス情報を更新する。
【0132】
このような構成によれば、保管棚90から一時保管棚80へと物体を搬送する搬送タスクにおいて、同一の領域内の保管棚90に保管された物体が搬送されることになる。そのため、搬送作業の効率化を図ることができる。
【0133】
(一時保管棚から保管棚への物体返却動作)
次に、搬送ロボット50が、一時保管棚80から物体を取り出し、保管棚90へと返却する動作について説明する。
【0134】
図18は、返却タスクを指令するロボット管理サーバ20の動作に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、ロボット管理サーバ20は、一時保管棚管理サーバ30に対して一時保管棚80のステータス情報のリクエスト処理を行う(S41)。このリクエスト処理の後、ロボット管理サーバ20は待機状態となる(S42NO)。
【0135】
一時保管棚管理サーバ30は、一時保管棚80の一時保管位置に現在格納されている物体又は空きロケーションに関する情報と、作業ステータス情報、すなわち、格納された物体について作業者による作業が完了しており返却待ち状態にあるか否かに関する情報を記憶・管理している。一時保管棚管理サーバ30は、ロボット管理サーバ20からステータス情報に関するリクエストを受信すると、ロボット管理サーバ20に対して一時保管棚80のステータス情報、すなわち、一時保管位置と、各一時保管位置に格納されている物体、及び、その物体に関する作業ステータス(作業が完了しているか否か)に関する情報を送信する。
【0136】
図19は、一時保管棚管理サーバ10から取得される一時保管棚80のステータス情報の概念図である。同図の例にあっては、ロボット管理サーバ20は、一時保管棚管理サーバ30から、ステータス情報として、a~jまでの各保管位置とそこに格納される物体、さらにその作業状態に関する情報を取得する(S41、S42)。なお、「a:-:-」は、aの一時保管位置には物体が存在せず、そのため作業状態に関する情報が存在しないことを表している。「b:D:完了」は、bの一時保管位置に物体Dが存在し、同物体については作業が完了している状態(すなわち、返却待ち状態)にあることを表している。「c:E:未完了」は、cの一時保管位置には物体Eが存在し、同物体については作業が未だ完了していない状態(すなわち、返却待ちではない状態)にあることを表している。
【0137】
図18に戻り、待機状態にあったロボット管理サーバ20は、一時保管棚管理サーバ30からステータス情報を受信すると(S42YES)、倉庫管理システムサーバ10から各物体の搬送回数情報を取得する処理を行う(S43)。取得処理の後、物体管理サーバ20は、搬送回数情報に基づいて、各領域に含まれる(又は接する)複数の物体の搬送回数の総和を算出する(S45)。
【0138】
算出処理の後、物体管理サーバ20は、返却タスクの生成処理を行う(S46)。より詳細には、物体管理サーバ20は、領域毎の搬送回数の総和と、一時保管棚管理サーバ30に配置され作業が完了した各物体の搬送回数に基づいて、領域間の搬送回数の総和が小さくなるように、返却対象となる各物体について新たな返却先(すなわち、保管棚90上における新たな保管位置)を生成し、当該保管位置へと返却するタスクを生成する。
【0139】
返却タスクの生成処理の後、ロボット管理サーバ20は、搬送ロボット50の選択処理を行う(S47)。ロボット管理サーバ20は、各搬送ロボット50の現在位置情報、現在のタスク割り当てステータス等の情報を取得している。これらの情報に基づき、ロボット管理サーバ20は、現在、タスクが割り当てられていない搬送ロボット50のうちから、任意の搬送ロボット50を選択する処理を行う。
【0140】
選択処理の後、ロボット管理サーバ20は、選択した搬送ロボット50に対して所定の指令処理を行う(S48)。指令は、返却タスクに関する情報を含むものである。
【0141】
この指令処理の後、一時保管棚80上にあって作業が完了しているすべての物体が返却されたか否かを判定する(S49)。この判定の結果、未だすべての物体が返却されていない場合(S49NO)、再度一連の処理(S45~S49)を実行する。一方、すべての物体が返却された場合(S49YES)、再度、一時保管棚ステータス情報の取得処理から一連の処理(S41~S49)を実行する。
【0142】
図20及び図21は、搬送ロボット50による返却タスク実行の様子を時系列で示す説明図(その1及び2)である。図20(A)、図20(B)、図21(A)、図21(B)の順で時系列が進行する。
【0143】
図20(A)から明らかな通り、初期状態において、保管棚90には、各保管位置(1-1、1-2、・・・、6-4)に各物体(A、B、・・・、X)が配置されている。また、各領域に関する物体の累積搬送回数の総和は、領域1(A~H)が500回、領域2(I~P)が300回、領域3(Q~X)が100回である。
【0144】
図20(B)は、3つの物体(C、J、W)が一時保管棚80へと搬送された状態を示している。物体Cの累積搬送回数が100回、物体Jの累積搬送回数が50回、物体Wの累積搬送回数が10回であるとすると、領域1に係る物体の累積搬送回数の総和は400回、領域2に係る物体の累積搬送回数の総和は250回、領域3に係る物体の累積搬送回数の総和は90回である(S43、S45)。
【0145】
この状態において、ロボット管理サーバ20が物体の返却タスクを生成すると、領域間の搬送回数の総和が小さくなるように、返却対象となる各物体について新たな返却先が生成される。すなわち、同図の例にあっては、最も累積搬送回数が大きい物体Cの新たな返却先は最も累積搬送回数の小さい領域である領域3となる。また、次に累積搬送回数の大きい物体Jの返却先は次に累積搬送回数の小さい領域である領域2となる。さらに、累積搬送回数の最も小さい物体Wの返却先は累積搬送回数が最大の領域である領域1となる。返却タスクはこれらの領域を返却先として各物体について生成される。
【0146】
搬送ロボット50は、これらの返却タスクを実行する。図21(A)は、一例として、搬送ロボット50が物体Cを領域3へと返却するタスクを実行する様子を示している。
【0147】
返却対象となるすべての物体(C、J、W)について返却タスクの実行が完了すると、保管棚90は、図21(B)に示す状態となる。同図から明らかな通り、各領域に関する物体の累積搬送回数の総和は、領域1(物体Wを返却)が410回、領域2(物体Jを返却)が300回、領域3(部隊Cを返却)が190回である。図20(A)に示す初期状態において、累積搬送回数の最大領域と最小領域の差は400回(=500回-100回)であったのに対して、図21(B)に示す状態においては累積搬送回数の最大領域と最小領域の差は220回(=410回-190回)となっている。これより、領域間での累積搬送回数の差が平均化されている。
【0148】
このような構成によれば、一時保管領域から保管領域へと物体を搬送することを通じて、保管領域間における物体の搬送頻度の差を減少させることができる。これにより、例えば、搬送ロボットが同一領域内の物体を搬送する搬送システム等において、搬送効率を向上させることができる。
【0149】
図22は、返却タスクを実行する搬送ロボット50の動作に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、搬送ロボット50は、ロボット管理サーバ20から指令を受信するまで待機状態となる(S51NO)。
【0150】
その後、ロボット管理サーバ20から指令を受信すると(S51YES)、搬送ロボット50は、一時保管棚80から返却対象となる物体を取り出す処理を実行する(S52)。
【0151】
図23は、一時保管棚80からの物体の取り出し処理の詳細フローチャートである。処理が開始すると、搬送ロボット50は、現在位置から最初の取り出し対象となる物体の前までの移動経路の計画処理を行う(S521)。この経路計画は既存の様々な手法により実現することができる。例えば、環境地図を用いて経路計画を行ってもよい。
【0152】
この経路計画処理の後、搬送ロボット50は、目標となる物体の前へと移動する処理を行う(S522)。なお、このとき、搬送ロボット50の停止位置は事前設計しておいてもよい。
【0153】
目標となる物体の前へと移動した後、搬送ロボット50は、搬送ロボット50前面に設けられたカメラ56又は不図示の手先カメラを利用して物体を認識し、ロボットアーム52を用いて物体を取り出す処理を実行する(S523)。物体を取り出す処理を行った後、搬送ロボット50は、格納スロット55のうちの1つを選択した後、取り出した物体を当該格納スロット55へと格納する処理を行う(S523)。このとき、搬送ロボット50は、物体を格納した後、選択した格納スロット55にどの物体を格納したかを記憶部へと記憶する処理を行う。
【0154】
記憶処理の後、搬送ロボット50は、一時保管棚管理サーバ30へと取り出した物体とその一時保管位置に関する情報を通知する処理を行う(S525)。これにより、一時保管棚管理サーバ30は、一時保管棚ステータス情報を更新する。その後、処理は終了する。
【0155】
図22に戻り、一時保管棚80からの物体の取り出し処理の後、搬送ロボット50は、保管棚90への返却処理を実行する(S55)。
【0156】
図24は、保管棚90への返却処理の詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、搬送ロボット50は、搬送ロボット50の現在位置から目標となる保管棚90の保管位置の前までの移動経路の計画処理を行う(S551)。この経路計画は既存の様々な手法により実現することができる。例えば、環境地図を用いて経路計画を行ってもよい。
【0157】
この経路計画処理の後、搬送ロボット50は、目標となる保管位置の前へと移動する処理を行う(S552)。なお、このとき、搬送ロボット50の停止位置は事前設計しておいてもよい。
【0158】
目標となる保管位置の前へと移動した後、搬送ロボット50は、格納スロット55から物体を取り出してスライドテーブル部53上に載せ、格納準備を行う処理を行う(S553)。
【0159】
物体の取り出し処理の後、搬送ロボット50は、搬送ロボット50前面に設けられたカメラ56又は不図示の手先カメラを利用して返却位置となる保管位置を認識する処理を行う(S555)。この認識処理の後、搬送ロボット50は、ロボットアーム52を用いて物体を載置することにより保管棚90へと物体を返却する処理を実行する(S556)。その後、処理は終了する。
【0160】
図22に戻り、保管棚90への返却処理の完了後、搬送ロボット50は、ロボット管理サーバ20へと割り当てられたタスクを完了したことを通知する処理を行う(S56)。この通知処理の後、再び、搬送ロボット50はロボット管理サーバ20からの指令を待機する状態となる(S51NO)。
【0161】
このような構成によれば、一時保管棚80から保管棚90へと物体を搬送する返却タスクにおいて、同一の領域内に保管されるべき物体がまとめて搬送される。そのため、搬送作業の効率化を図ることができる。
【0162】
(2.変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記の実施形態は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、搬送システム等を製造する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0164】
10 倉庫管理システム(WMS)サーバ
20 ロボット管理サーバ
30 一時保管棚管理サーバ
50 搬送ロボット
70 作業者
80 一時保管棚
90 保管棚
100 搬送システム
図1
図2
図3
図4
図5
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