(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100411
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】空調制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/63 20180101AFI20240719BHJP
【FI】
F24F11/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004396
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 智輝
(72)【発明者】
【氏名】堤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 孝一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康樹
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA01
3L260BA80
3L260CA02
3L260CA03
3L260CA04
3L260CA08
3L260EA09
3L260EA26
3L260FA02
3L260GA15
3L260JA15
(57)【要約】
【課題】重み付け多数決による空調制御の具体的な運用方式を提供する。
【解決手段】意見受付部12は、室内にいる対象者から室内の空調に対する意見を受け付ける。集計部15は、意見受付部12が受け付けた意見に重み付けをしたうえで、多数決により意見を集計する。制御部16は、集計部15が集計した結果に基づいて、室内を空調する空調装置90を制御する。集計部15は、例えば、室内の環境に慣れていない対象者からの意見に対する重み付けを、室内の環境に慣れている対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内にいる対象者から前記室内の空調に対する意見を受け付ける意見受付部と、
前記意見受付部が受け付けた意見に重み付けをしたうえで、多数決により前記意見を集計する集計部と、
前記集計部が集計した結果に基づいて、前記室内を空調する空調装置を制御する制御部と
を備え、
前記集計部は、
前記室内の環境に慣れていない対象者からの意見に対する重み付けを、前記室内の環境に慣れている対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくする、
空調制御システム。
【請求項2】
前記集計部は、
省エネルギーになる意見に対する重み付けを、省エネルギーに反する意見に対する重み付けよりも大きくする、
請求項1の空調制御システム。
【請求項3】
前記集計部は、
残業時間帯である場合に、前記意見に対する重み付けを小さくする、
請求項1の空調制御システム。
【請求項4】
前記意見受付部は、
対象者が所持する携帯端末装置からの要求にしたがい、前記携帯端末装置の表示画面に、前記対象者からの意見を受け付けるための意見投票画面を表示し、
前記集計部は、
複数の所定の期間のうち前記意見受付部が対象者の携帯端末装置に意見投票画面を表示した期間の数を、対象者ごとに集計し、
集計した前記期間の数が多い対象者からの意見に対する重み付けを、前記期間の数が少ない対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくする、
請求項1乃至3いずれかの空調制御システム。
【請求項5】
前記集計部は、
室外から前記室内に入ってからの経過時間が所定の時間以内である対象者からの意見に対する重み付けを、前記経過時間が前記所定の時間を超えた対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくする、
請求項1乃至3いずれかの空調制御システム。
【請求項6】
前記対象者が前記室内にいるか否かを検出する在室検出部を更に備え、
前記集計部は、
前記在室検出部が検出した結果に基づいて、前記対象者が室外から前記室内に入ってからの経過時間を求める、
請求項5の空調制御システム。
【請求項7】
前記集計部は、
前記室内に在室している時間が長い対象者からの意見に対する重み付けを、前記室内に在室している時間が短い対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくする、
請求項1乃至3いずれかの空調制御システム。
【請求項8】
前記対象者が前記室内にいるか否かを検出する在室検出部を更に備え、
前記集計部は、
前記在室検出部が検出した結果に基づいて、前記対象者が前記室内に在室している時間を求める、
請求項7の空調制御システム。
【請求項9】
前記集計部は、
体調の悪い対象者からの意見に対する重み付けを、体調の良い対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくする、
請求項1乃至3いずれかの空調制御システム。
【請求項10】
対象者の体調を検出する体調検出部を更に備え、
前記集計部は、
前記体調検出部が検出した体調に基づいて、前記対象者からの意見に対する重み付けを決定する、
請求項9の空調制御システム。
【請求項11】
前記集計部は、
所定の期間に前記対象者が前記室内にいた日数に基づいて、前記対象者が前記室内の環境に慣れているか否かを判断する、
請求項1乃至3いずれかの空調制御システム。
【請求項12】
前記対象者が前記室内にいるか否かを検出する在室検出部を更に備え、
前記集計部は、
前記在室検出部が検出した結果に基づいて、前記対象者が前記室内にいた日数を求める、
請求項11の空調制御システム。
【請求項13】
前記集計部が集計した結果を前記対象者に通知する結果通知部を更に備える、
請求項1乃至3いずれかの空調制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空調を制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3は、複数の対象者がいる室内で、重み付き多数決により空調を制御するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-253778号公報
【特許文献2】特開2018-017454号公報
【特許文献3】特開2004-205202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術は、どのような場合にどのような重み付けをするかを具体的に明らかにしていない。このため、重み付けにより具体的にどのような効果が得られるかも明らかではない。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
空調制御システムは、室内にいる対象者から前記室内の空調に対する意見を受け付ける意見受付部と、前記意見受付部が受け付けた意見に重み付けをしたうえで、多数決により前記意見を集計する集計部と、前記集計部が集計した結果に基づいて、前記室内を空調する空調装置を制御する制御部とを有する。前記集計部は、前記室内の環境に慣れていない対象者からの意見に対する重み付けを、前記室内の環境に慣れている対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくする。
前記集計部は、省エネルギーになる意見に対する重み付けを、省エネルギーに反する意見に対する重み付けよりも大きくしてもよい。
前記集計部は、残業時間帯である場合に、前記意見に対する重み付けを小さくしてもよい。
前記意見受付部は、対象者が所持する携帯端末装置からの要求にしたがい、前記携帯端末装置の表示画面に、前記対象者からの意見を受け付けるための意見投票画面を表示してもよい。前記集計部は、複数の所定の期間のうち前記意見受付部が対象者の携帯端末装置に意見投票画面を表示した期間の数を、対象者ごとに集計し、集計した前記期間の数が多い対象者からの意見に対する重み付けを、前記期間の数が少ない対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくしてもよい。
前記集計部は、室外から前記室内に入ってからの経過時間が所定の時間以内である対象者からの意見に対する重み付けを、前記経過時間が前記所定の時間を超えた対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくしてもよい。
前記空調制御システムは、前記対象者が前記室内にいるか否かを検出する在室検出部を有してもよい。
前記集計部は、前記在室検出部が検出した結果に基づいて、前記対象者が室外から前記室内に入ってからの経過時間を求めてもよい。
前記集計部は、前記室内に在室している時間が長い対象者からの意見に対する重み付けを、前記室内に在室している時間が短い対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくしてもよい。
前記集計部は、前記在室検出部が検出した結果に基づいて、前記対象者が前記室内に在室している時間を求めてもよい。
前記集計部は、体調の悪い対象者からの意見に対する重み付けを、体調の良い対象者からの意見に対する重み付けよりも大きくしてもよい。
前記空調制御システムは、対象者の体調を検出する体調検出部を有してもよい。
前記集計部は、前記体調検出部が検出した体調に基づいて、前記対象者からの意見に対する重み付けを決定してもよい。
前記集計部は、所定の期間に前記対象者が前記室内にいた日数に基づいて、前記対象者が前記室内の環境に慣れているか否かを判断してもよい。
前記集計部は、前記在室検出部が検出した結果に基づいて、前記対象者が前記室内にいた日数を求めてもよい。
前記空調制御システムは、前記集計部が集計した結果を前記対象者に通知する結果通知部を有してもよい。
【発明の効果】
【0006】
このような具体的な状況に応じて、重み付けを増減させることにより、以下に詳細に記載する具体的な効果を奏することができる。
また、集計結果を対象者に通知することにより、対象者の納得感を得ることができ、業務の効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】意見投票画面及び結果通知画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して、空調制御システム10について説明する。
空調制御システム10は、空調装置90を制御する。空調装置90は、オフィスなどの室内の空調をする装置である。空調制御システム10は、空調装置90による空調の対象である室内にいる対象者からの意見に基づいて、空調装置90を制御する。
【0009】
空調制御システム10は、例えば、情報取得部11と、意見受付部12と、在室検出部13と、体調検出部14と、集計部15と、制御部16と、結果通知部17とを有する。これらの機能ブロックは、例えば、サーバ装置や対象者が所持する携帯端末装置などのコンピュータがコンピュータプログラムを実行することによって実現される。サーバ装置は、例えば、クラウド上に構築された仮想サーバであってもよい。
【0010】
情報取得部11は、対象者からの投票に対する重み付けに用いられる情報を取得する。これは、例えば、対象者の役職など対象者についての情報や、政府からの節電要請の有無などの情報である。情報取得部11は、例えば社内の人事データベースなどのデータベースや、外部サーバなどと通信することにより、これらの情報を取得する。
【0011】
意見受付部12は、対象者からの空調に対する意見を受け付ける。例えば、対象者が所持する携帯端末装置を用いて、対象者の意見を取得する。
在室検出部13は、対象者が室内にいるか否かを検出する。例えば、オフィスに設置された屋内測位システムを用いて、対象者が所持する携帯端末装置の位置を測定し、測定した結果に基づいて、対象者が室内にいるか否かを検出する。
体調検出部14は、対象者の体調を検出する。例えば、対象者が装着するウェアラブルデバイスを用いて、対象者の体温や脈拍などのバイタルサインを測定し、測定した結果に基づいて、対象者の体調を検出する。
集計部15は、意見受付部12が受け付けた意見を集計する。例えば、情報取得部11が記憶した情報、在室検出部13や体調検出部14が検出した結果などに基づいて、意見に重み付けをした上で、多数決をする。
制御部16は、集計部15が集計した結果に基づいて、空調装置90を制御する。例えば、多数決の結果、室内が暑すぎるという意見が多ければ、空調装置90の設定温度を下げ、逆に、室内が寒すぎるという意見が多ければ、空調装置90の設定温度を上げる。
結果通知部17は、集計部15が集計した結果を対象者に通知する。例えば、対象者が所持する携帯端末装置を用いて、集計結果を表示する。
【0012】
図2を参照して、意見投票画面20及び結果通知画面70について説明する。
意見投票画面20は、例えば、対象者が所持する携帯端末装置の表示画面に意見受付部12が表示して、対象者の意見を受け付けるための画面である。
結果通知画面70は、例えば、対象者が所持する携帯端末装置の表示画面に結果通知部17が表示して、集計結果を通知するための画面である。
例えば、対象者が携帯端末装置にインストールされたアプリケーションを起動してログインすると、携帯端末装置からの要求にしたがって、携帯端末装置の表示画面に、意見受付部12が意見投票画面20を表示し、結果通知部17が結果通知画面70を表示する。
なお、意見投票画面20と結果通知画面70とは、この例のように同じ画面に並べて表示してもよいし、別々の画面として表示してもよい。
【0013】
意見投票画面20は、例えば、空調種別21と、設定温度22と、投票ボタン23~25とを有する。
空調種別21は、「冷房」「暖房」「送風」など、現在の空調の種別を表す。
設定温度22は、現在の空調の設定温度を表す。
投票ボタン23及び25は、対象者が空調に対する意見を投票するためのボタンである。投票ボタン23は、寒すぎることを表す。投票ボタン25は、暑すぎることを表す。対象者は、投票ボタン23及び25のなかから自分の意見に合うボタンを選択してタッチすることにより、その意見に投票することができる。
【0014】
結果通知画面70は、例えば、投票結果73及び75と、インジケータ76とを有する。
投票結果73及び75は、それぞれの意見に投票した対象者の割合を表す。例えば、投票結果73は、寒すぎると投票した対象者の割合を表し、投票結果75は、暑すぎると投票した対象者の割合を表す。ただし、上述したように、対象者による投票は、重み付けをした上で集計されるので、投票結果73及び75が表す割合も、単純に対象者の数ではなく、重み付けをした上での集計結果である。
インジケータ76は、投票結果73及び75が表す割合を、棒グラフ化したものである。
【0015】
集計部15は、例えば所定の期間(例えば10分間)に一回、対象者による投票を集計する。この集計期間内に同一の対象者が複数回投票した場合、意見受付部12は、投票を一回しか受け付けない。例えば、最後の投票だけを有効とみなす。これにより、集計期間中に意見が変わった場合でも、最新の意見に沿った投票をすることができる。
結果通知部17は、現在進行中の投票の途中経過を投票結果73~75やインジケータ76に表示してもよいし、完了した前回の投票の結果を表示してもよい。
【0016】
このように、投票結果やそれに基づく空調の制御状態を表示することにより、対象者は、周りの人がどのように感じているのかを把握することができるので、自分の意見が通らなかった場合でも納得感を得ることができ、パフォーマンスの低下を抑えることができる。
【0017】
図3を参照して、集計処理50について説明する。
集計処理50は、所定の間隔(例えば10分)ごとに集計部15が実行して、集計期間(例えば集計処理50の実行開始前10分から実行開始時までの10分間)における投票を集計する。
集計処理50は、例えば、初期化工程51と、対象者繰り返し工程52と、在室判定工程53と、投票判定工程54と、重み付け初期化工程55と、慣れ重み付け工程56と、省エネ重み付け工程57と、時間帯重み付け工程58と、利用頻度重み付け工程59と、経過時間重み付け工程60と、在室時間重み付け工程61と、役職重み付け工程62と、体調重み付け工程63と、投票累積工程64と、制御決定工程65とを有する。
【0018】
最初に、初期化工程51において、集計部15は、集計結果を初期化する。例えば、「寒すぎる」「ちょうどよい」「暑すぎる」それぞれの集計結果を「0」に初期化する。
その後、対象者繰り返し工程52に進む。
【0019】
次に、対象者繰り返し工程52において、集計部15は、対象者それぞれについて、在室判定工程53~投票累積工程64を繰り返す。
【0020】
在室判定工程53において、集計部15は、在室検出部13の検出結果に基づいて、その対象者が集計期間中に在室していたか否かを判定する。その対象者が在室していた場合は、投票判定工程54へ進む。対象者が在室していなかった場合は、その対象者についての対象者繰り返し工程52を終了し、次の対象者についての対象者繰り返し工程52に進む。
【0021】
投票判定工程54において、集計部15は、意見受付部12が集計期間の間にその対象者から受け付けた意見があるか否かを判定する。意見がある場合は、重み付け初期化工程55へ進む。意見がない場合は、その対象者についての対象者繰り返し工程52を終了し、次の対象者についての対象者繰り返し工程52に進む。
【0022】
重み付け初期化工程55において、集計部15は、その対象者からの意見についての重み付けを初期化する。例えば、重み付けを「10」に初期化する。その後、慣れ重み付け工程56に進む。
【0023】
慣れ重み付け工程56において、集計部15は、その対象者がその室内の環境に慣れているか否かを判定する。例えば、集計部15は、在室検出部13の検出結果に基づいて、所定の期間(例えば、集計処理50を実行している当日の100日前から当日までの100日間)の間に、その対象者が在室していた日数を算出する。集計部15は、算出した日数が所定の閾値(例えば、20日(週5日勤務として4週間))未満である場合、その対象者がその室内の環境に慣れていないと判定し、算出した日数が閾値以上である場合、その対象者がその室内に慣れていると判定する。
【0024】
そして、集計部15は、その対象者がその室内の環境に慣れていないと判定した場合、その対象者からの意見についての重み付けを大きくする。例えば、重み付けを「1」増やす。逆に、その対象者がその室内の環境に慣れていると判定した場合、その対象者からの意見についての重み付けを小さくする。例えば、重み付けを「1」減らす。重み付けの増減は、どちらか一方の場合のみ行い、もう一方の場合は行わないこととしてもよい。
その後、省エネ重み付け工程57に進む。
【0025】
これにより、新入社員や中途社員などそのオフィス環境が初めての対象者や、異動者などそのオフィス勤務経験が浅い人や、長期休暇者などそのオフィスに久しぶりに勤務する人など、そのオフィスの雰囲気に慣れていないため、意見を出しづらく反映しにくい状態にある「弱者」の意見を尊重することができる。
【0026】
なお、その対象者がその室内の環境に慣れているか否かは、在室検出部13の検出結果に基づいて判定するのではなく、例えば情報取得部11が取得した人事データに含まれるその対象者の入社日や異動日などの情報に基づいて判定してもよい。
【0027】
省エネ重み付け工程57において、集計部15は、その対象者からの意見が省エネルギーになるものか否かを判定する。例えば、空調の種別が「冷房」であり、その対象者からの意見が「寒すぎる」である場合、その意見は省エネルギーになるものであると判定する。これに対し、その対象者からの意見が「暑すぎる」である場合は、その意見は省エネルギーに反するものであると判定する。逆に、空調の種別が「暖房」である場合は、「暑すぎる」という意見が省エネルギーになり、「寒すぎる」という意見が省エネルギーに反すると判定する。空調の種別は、例えば、空調装置90から取得してもよいし、制御部16から取得してもよい。
【0028】
そして、集計部15は、その意見が省エネルギーになると判定した場合、その意見についての重み付けを大きくする。例えば、重み付けを「1」増やす。逆に、その意見が省エネルギーに反すると判定した場合、その意見についての重み付けを小さくする。例えば、重み付けを「1」減らす。なお、重み付けの増減は、どちらか一方の場合のみ行い、もう一方の場合は行わないこととしてもよい。
その後、時間帯重み付け工程58に進む。
【0029】
これにより、省エネルギーに反する意見が反映されにくくなり、空調装置90を省エネルギー優先で運転することができる。しかし、省エネルギーに反する意見を無視するわけではないので、省エネルギーに反する意見が大多数を占める場合は、それにしたがった運転をするので、行き過ぎた省エネルギーを防ぐことができる。
【0030】
なお、節電の必要が高いか否かに基づいて、重み付けの増減量を変えてもよい。例えば、情報取得部11が取得した情報に基づいて、政府から節電要請が出ているか否かを判定し、政府から節電要請が出ている場合に、節電の必要が高いと判断する。あるいは、定期的にあるいは不定期に「節電デー」を設けて、節電デーである場合は、節電の必要が高いと判断してもよい。節電デーであるか否かは、例えば、情報取得部11が取得した情報に基づいて判断する。例えば、水曜日は節電デーとして、節電の必要が高いと判断する。
節電の必要が高いと判断した場合、集計部15は、例えば、重み付けの増減量を増やしてもよい。例えば、省エネルギーになる意見については、重み付けを「2」増やし、省エネルギーに反する意見については、重み付けを「2」減らす。
逆に、節電の必要が低いと判断した場合、集計部15は、重み付けの増減量を減らしてもよいし、重み付けを増減しなくてもよい。
これにより、節電の必要が高い場合に、省エネルギーを推進することができる。
【0031】
時間帯重み付け工程58において、集計部15は、この集計処理50の実行を開始した時刻が、重み付けを変化させるべき時間帯のなかにあるか否かを判定する。例えば、「ノー残業デー」の定時退社時刻を過ぎた時刻である場合、重み付けを小さくするべき時間帯であると判定する。
【0032】
そして、重み付けを変化させるべき時間帯にあると判定した場合、集計部15は、その意見についての重み付けを増減させる。例えば、重み付けを小さくするべき時間帯であると判定した場合、重み付けを「1」減らす。逆に、重み付けを大きくするべき時間帯であると判定した場合は、重み付けを「1」増やす。
【0033】
これにより、時間帯によって、対象者の意見の反映しやすさを変化させることができる。例えば、定時退社時刻を過ぎた時間帯に重み付けを小さくすれば、空調の制御に対象者の意見が反映されにくくなるので、快適性が下がる。これにより、早く仕事を片付けて帰宅しようという気持ちになるので、残業時間を抑制することができる。
【0034】
なお、重み付けを大きくし又は小さくする時間帯を更に細かく分けて、重み付けの増減量を変えてもよい。例えば、定時退社時刻から30分間は、重み付けを「1」減らし、その後、30分経過するごとに、重み付けの減少量を「1」ずつ増やしていく。すなわち、定時退社時刻の1時間後までは、重み付けを「2」減らし、1時間半後までは、重み付けを「3」減らす。これにより、時間が経つほど快適性が更に下がっていくので、残業時間抑制の効果を更に高めることができる。
また、対象者によって定時退社時刻が異なってもよい。例えば、フレックスタイム制において、出社時刻から所定の時間が経過した時刻を定時退社時刻としてもよい。例えば、集計部15は、在室検出部13が検出した結果に基づいて、その対象者が出社した時刻を判定し、その時刻から所定の時間が経過した時刻を、その対象者についての定時退社時刻としてもよい。
【0035】
利用頻度重み付け工程59において、集計部15は、その対象者がシステムを利用した頻度を算出する。例えば、集計部15は、在室検出部13が検出した結果に基づいて、所定の期間(例えば、集計処理50を実行している当日の100日前から当日までの100日間)の間に、その対象者が在室していた集計期間を抽出する。そして、抽出した集計期間それぞれについて、その集計期間にその対象者の携帯端末装置に意見受付部12が意見投票画面を表示したか否かを判定する。そして、その対象者が在室していた集計期間の数と、その対象者の携帯端末装置に意見投票画面を表示した集計期間の数とを数えて、在室していた集計期間の数に対する意見を受け付けた集計期間の数の割合を算出して、利用頻度とする。
【0036】
そして、算出した利用頻度が高い場合、集計部15は、その対象者の意見についての重み付けを大きくする。例えば、重み付けを「1」増やす。逆に、利用頻度が低い場合、その対象者の意見についての重み付けを小さくする。例えば、重み付けを「1」減らす。なお、重み付けの増減は、どちらか一方の場合のみ行い、もう一方の場合は行わないこととしてもよい。利用頻度が高いか否かは、例えば算出した利用頻度を所定の閾値(例えば、0.5)と比較することによって判断する。
その後、経過時間重み付け工程60に進む。
【0037】
対象者の利用頻度が高いほど意見が反映されやすくなるので、対象者がシステムを利用しようという動機付けとなり、空調制御システム10の利用を促進することができる。
【0038】
なお、利用頻度が高いか低いかの二段階ではなく、三段階以上に分けてもよい。例えば、利用頻度が0.7以上である場合は、重み付けを「1」増やし、利用頻度が0.3未満である場合は、重み付けを「1」減らし、0.3以上0.7未満である場合は、重み付けを増減しないこととしてもよい。
また、利用頻度を閾値と比較するのではなく、例えば、全対象者のなかでの順位に基づいて、利用頻度が高いか低いかを判定してもよい。
利用頻度は、意見投票画面を表示した集計期間の数ではなく、例えば、意見投票画面を表示するアプリケーションを起動していた時間や日数に基づいて算出してもよい。
【0039】
経過時間重み付け工程60において、集計部15は、その対象者がその室内に入ってからの経過時間を取得する。例えば、在室検出部13の検出結果に基づいて、入室後の経過時間を算出する。
【0040】
そして、算出した経過時間が短いほど、その対象者の意見についての重み付けを大きくする。例えば、経過時間を所定の閾値(例えば30分)と比較して、経過時間が閾値未満である場合は、重み付けを「1」増やす。逆に、経過時間が閾値以上である場合は、重み付けを「1」減らす。なお、重み付けの増減は、どちらか一方の場合のみ行い、もう一方の場合は行わないこととしてもよい。
その後、在室時間重み付け工程61に進む。
【0041】
これにより、例えば外出により外気に触れていた対象者の意見が反映されやすくなるので、その対象者の不快感を早期に改善して、業務の効率を上げることができる。
【0042】
なお、経過時間が長いか短いかの二段階ではなく、三段階以上に分けてもよい。例えば、経過時間が10分未満である場合は、重み付けを「1」増やし、1時間以上である場合は、重み付けを「1」減らし、10分以上1時間未満である場合は、重み付けを増減しないこととしてもよい。
【0043】
在室時間重み付け工程61において、集計部15は、その対象者がその室内にいた時間を取得する。例えば、在室検出部13の検出結果に基づいて、所定の期間(例えば、過去7日間)の間に、その対象者が在室していた時間を算出する。
【0044】
そして、在室時間が長いほど、その対象者の意見についての重み付けを大きくする。例えば、取得した在室時間が、その時点で在室している全対象者の在室時間の平均以上である場合、重み付けを「1」増やす。逆に、平均未満である場合、重み付けを「1」減らす。なお、重み付けの増減は、どちらか一方の場合のみ行い、もう一方の場合は行わないこととしてもよい。
その後、役職重み付け工程62に進む。
【0045】
これにより、在室時間が長い対象者の意見が反映されやすくなる。室内にいる時間が長いほど、室内の環境が対象者のパフォーマンスに及ぼす影響が大きいので、在室時間が長い対象者の意見が反映されやすいことにより、業務の効率を上げることができる。
【0046】
なお、在室時間が長いか短いかの二段階ではなく、三段階以上に分けてもよい。例えば、在室時間が全対象者のなかで上位20%に入る場合に重み付けを「1」増やし、逆に下位20%に入る場合に重み付けを「1」減らし、それ以外の場合に重み付けを増減しないこととしてもよい。
また、在室時間を他の対象者と比較するのではなく、所定の閾値と比較することにより、在室時間が長いか短いかを判定してもよい。
【0047】
役職重み付け工程62において、集計部15は、その対象者の役職を判定する。例えば、情報取得部11が取得した人事データに基づいて、その対象者の役職を判定する。
【0048】
そして、判定した役職が高いほど、その対象者の意見についての重み付けを大きくする。例えば、その対象者が課長以上である場合、重み付けを「1」増やす。
その後、体調重み付け工程63に進む。
【0049】
これにより、役職の高い対象者の意見が反映されやすくなる。役職が高いほど、時間単価が高くなり、責任が重くなる。役職の高い対象者の意見が反映されやすいことにより、役職の高い対象者のパフォーマンスを高く保つことができる。
【0050】
体調重み付け工程63において、集計部15は、その対象者の体調を判定する。例えば、体調検出部14が検出した結果に基づいて、その対象者の体調を判定する。
【0051】
そして、判定した体調が悪いほど、その対象者の意見についての重み付けを大きくする。例えば、対象者の体調を数値化し、数値化した体調を所定の閾値と比較することにより、体調が良いか悪いかを判定する。体調が悪いと判定した場合は、重み付けを「1」増やし、逆に、体調が良いと判定した場合は、重み付けを「1」減らす。なお、重み付けの増減は、どちらか一方の場合のみ行い、もう一方の場合は行わないこととしてもよい。
その後、投票累積工程64に進む。
【0052】
これにより、体調の悪い対象者の意見が反映されやすくなるので、体調の悪い人にやさしい空調制御を実現することができる。
【0053】
なお、対象者の体調が良いか悪いかは、体調検出部14の検出結果に基づいて判定するのではなく、自己申告に基づいて判定してもよい。例えば、意見投票画面20に体調入力欄を設け、対象者が自分の体調を入力することにより、対象者の体調を取得してもよい。
【0054】
投票累積工程64において、その対象者の意見に対応する集計結果に、重み付け初期化工程55~体調重み付け工程63で算出した重み付けを加算する。
【0055】
集計部15は、在室判定工程53~投票累積工程64をすべての対象者について繰り返すことにより、対象者の意見を集計する。すべての対象者についての処理が終わったのち、制御決定工程65に進む。
【0056】
制御決定工程65において、集計部15は、集計した結果に基づいて、空調装置90に対する制御を決定する。例えば、「寒すぎる」「暑すぎる」の集計結果のうち、「寒すぎる」という意見がもっとも多かった場合は空調装置90の設定温度を1℃上げ、「暑すぎる」という意見がもっとも多かった場合は設定温度を1℃下げる。あるいは、単純にもっとも多かった意見にしたがうのではなく、例えば、意見の割合に応じて、設定温度の変更幅を変えてもよい。
【0057】
以上のように、様々な条件に基づいて、対象者からの意見に重み付けをした上で、多数決により集計することにより、空調を適切に制御することができる。
室内の環境に慣れていない対象者からの意見に対する重み付けを大きくすることにより、意見を出しづらい人の意見を適切に反映することができる。
省エネルギーになる意見に対する重み付けを大きくすることにより、省エネルギーを推進することができる。
残業時間帯である場合に、重み付けを小さくすることにより、残業を抑制することができる。
積極的に投票する対象者からの意見に対する重み付けを大きくすることにより、システムの利用を促進することができる。
入室した直後の対象者からの意見に対する重み付けを大きくすることにより、業務の効率を向上することができる。
在室時間が長い対象者からの意見に対する重み付けを大きくすることにより、業務の効率を向上することができる。
体調の悪い対象者からの意見に対する重み付けを大きくすることにより、体調の悪い人にやさしい空調を実現できる。
また、集計結果を対象者に通知することにより、対象者の納得感を高め、業務の効率を向上することができる。
【0058】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【0059】
なお、集計結果の初期値は、「0」以外であってもよい。例えば、管理者が誘導したい方向の意見についての集計結果を「10」に初期化することによりバイアスをかけ、意見が拮抗した場合に、その方向の意見が勝つようにしてもよい。
【0060】
また、重み付けの増減は、加算・減算ではなく、乗算によるものであってもよい。例えば、重み付けを増やす場合は「1.1」を乗じ、重み付けを減らす場合は「0.9」を乗じるようにしてもよい。
【0061】
オフィス環境を快適に保つためには、空調制御は欠かせない。しかしながら、人によっては「暑がり・寒がり」といった体質もあるため、一人ひとりの好みに合った環境を提供することは難しい。
従来の「暑い・寒い」を申告して多数決を取る空調システムに加え、一人ひとりのステータス(体調、役職、位置情報、申告頻度等)や会社方針(節電方針、イベント日等)に応じて、異なった投票の重みづけが行われる独自制御をする。空調動作を単なる多数決制御ではなく申告者の状態や会社方針を加味させることが出来るため、より快適なオフィス環境の提供や省エネの推進をする。
一人ひとりのステータス(体調、役職、位置情報、申告頻度等)や会社方針(節電方針、イベント日等)に応じて、投票ポイントの重みづけが行われる多数決集計を行い、その結果を空調温度設定へリアルタイムに反映する。
スマートフォン等の端末から「暑い・寒い」を申告して多数決を取ることで空調を基準温度から変更できることに加え、「一人ひとりのステータス(役職、位置情報、申告頻度等)」と「会社方針(節電方針、イベント日等)」によって、1申告あたりのポイント数が増減される。
例えば、役職が高い社員や外出先から戻ってきた社員はポイント数を増加させたり、会社方針で節電日と決まれば省エネに働く方向の申告がポイント増(冷房なら「寒い」申告)となる。
申告したユーザーはフィードバックとして多数決状況が端末で確認出来る。申告の多数決状況が割合表示されることで、付近に居る人がどのように感じているのかを直接確認ができ、それ応じた標準温度(予めシステム上で設定)からの温度変更値も分かる。
「暑い・寒い」の申告による重みづけに個々のユーザー状態を反映することで、一人ひとりの状態に寄り添った空調制御を可能する。
多数決の状況をフィードバックとして確認することで、ユーザーに対して効果の実感や付近の状態理解に繋がる。
会社方針(省エネ方針、イベント日)を反映することで、省エネ効果や利用促進も期待できる。
外出により外気に触れて体が暑い/寒い状態の社員は、その不快感を早期に改善して業務のパフォーマンスを上げる必要がある。そこで、外出直後の社員からの投票の重みづけを強くする。例えば、位置検知による測位情報から外出直後かどうかを判別し、外出直後なら投票の重みづけを強くする。
役職が高いほど時間単価や責任が上がるため、高いパフォーマンスを維持する必要がある。そのため、空調設備の優先権を付与するために、役職による重みづけをする。例えば、役職が高いほど投票の重みづけを強くする。
昨今の電力ひっ迫状況や「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」を目指すという社会情勢の中で、政府からの節電要請や省エネ性向上といったニーズにこたえる必要がある。そのため、節電時(突発もしくは定期予定)に投票の重みづけを変える。例えば、暖房/冷房それぞれの制御時に節電モードとなった場合、節電方向になる投票の重みづけを強くする。例えば、冷房の場合は寒い(温度を上げる方向)の申告投票を暑いよりも強くする。
本システムが含まれるアプリケーションの利用頻度で投票の重みづけをユーザー毎に変えることで、アプリケーションの利用を促す。そうすることで、アプリケーションの使用頻度を高くして、サービスを受ける人や位置情報などのデータ収集を増加させることでサービスの質向上を狙う。例えば、アプリケーションの位置情報連携や各サービスの利用状況から利用頻度の高いユーザーは重みづけを強くする。
「働き方改革」の一環として残業時間の削減が企業で必要とされている。そのような中で残業時間の快適性を敢えて下げることで社員に帰宅を促す。例えば、特定日の特定時間以降は空調制御を予め設定された標準温度になり、申告状態もリセットされる。そこから、再度申告されたものについては、30分毎に時間に応じて0.1倍ずつ重みづけが減少していく。
「オフィス環境に慣れない人」(初めてのオフィス利用、日が浅い人、期間が空いて久しぶりに勤務した人)を「弱者」として扱う。オフィス環境に慣れない人は、「オフィスの雰囲気」に慣れておらず、意見を出しづらい・反映しづらい状態にあるので、申告の重み付けをする。例えば、新入社員/中途社員などのオフィス環境が初めての人等、異動者など、そのオフィス勤務経験が浅い人等、長期休暇者など、そのオフィスに久しぶりに勤務する人などを対象とする。例えば、位置情報データによる取得(初めて検知した人はオフィス経験浅い人と判断)、もしくは、人事データから取得(異動日等から判断)によって判断する。
【符号の説明】
【0062】
10 空調制御システム、11 情報取得部、12 意見受付部、13 在室検出部、14 体調検出部、15 集計部、16 制御部、17 結果通知部、20 意見投票画面、21 空調種別、22 設定温度、23,25 投票ボタン、70 結果通知画面、73,75 投票結果、76 インジケータ、50 集計処理、51 初期化工程、52 対象者繰り返し工程、53 在室判定工程、54 投票判定工程、55 重み付け初期化工程、56 慣れ重み付け工程、57 省エネ重み付け工程、58 時間帯重み付け工程、59 利用頻度重み付け工程、60 経過時間重み付け工程、61 在室時間重み付け工程、62 役職重み付け工程、63 体調重み付け工程、64 投票累積工程、65 制御決定工程、90 空調装置。