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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024100414
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】除去装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20240719BHJP
   B08B 7/00 20060101ALI20240719BHJP
   F22B 37/48 20060101ALI20240719BHJP
   F28G 13/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B23K26/36
B08B7/00
F22B37/48 Z
F28G13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004401
(22)【出願日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】染谷 竜太
(72)【発明者】
【氏名】柳生 里紗
(72)【発明者】
【氏名】幡野 浩
(72)【発明者】
【氏名】寺田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】井山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】木村 賢一
【テーマコード(参考)】
3B116
4E168
【Fターム(参考)】
3B116AA12
3B116AA47
3B116AB54
3B116BC01
4E168AD03
4E168AD18
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】プラント構成機器の内部において除去処理を効率的に実行可能な除去装置を提供する。
【解決手段】実施形態の除去装置は、レーザ装置と反射素子とを備え、燃料の燃焼によって生ずる燃焼ガスを用いて発電を行う発電プラントを構成するプラント構成機器の内部において燃焼ガスに接触する金属表面に存在する除去対象物を除去する。レーザ装置は、レーザ光をレーザ出射面から出射する。反射素子は、レーザ装置が出射したレーザ光を反射する。ここでは、反射素子によって反射されたレーザ光が除去対象物に照射されることによって、除去対象物が金属表面から除去されるように、反射素子が設置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の燃焼によって生ずる燃焼ガスを用いて発電を行う発電プラントを構成するプラント構成機器の内部において前記燃焼ガスに接触する金属表面に存在する除去対象物を除去するための除去装置であって、
レーザ光をレーザ出射面から出射するレーザ装置と、
前記レーザ装置が出射した前記レーザ光を反射する反射素子と
を備え、
前記反射素子によって反射された前記レーザ光が前記除去対象物に照射されることによって、前記除去対象物が前記金属表面から除去されるように、前記反射素子が設置される、
除去装置。
【請求項2】
前記発電プラントにおける前記プラント構成機器は、排熱回収ボイラであって、前記排熱回収ボイラを構成する構成部品の少なくとも一つが前記金属表面を含む、
請求項1に記載の除去装置。
【請求項3】
前記構成部品は、前記排熱回収ボイラにおいて熱交換器を構成する部品である、
請求項2に記載の除去装置。
【請求項4】
前記反射素子は、平面鏡を含み、前記平面鏡が前記プラント構成機器の内部に設置される、
請求項1に記載の除去装置。
【請求項5】
前記レーザ光は、前記除去対象物を蒸発させるエネルギーを有する、
請求項1に記載の除去装置。
【請求項6】
前記レーザ光の焦点が前記除去対象物以外に位置するように、前記反射素子が設置される、請求項5に記載の除去装置。
【請求項7】
前記反射素子は、凹面鏡を含み、前記凹面鏡が前記プラント構成機器の内部に設置される、
請求項1から請求項3および請求項6の何れか1項に記載の除去装置。
【請求項8】
前記反射素子は、凸面鏡を含み、前記凸面鏡が前記プラント構成機器の内部に設置される、
請求項1から請求項3および請求項6の何れか1項に記載の除去装置。
【請求項9】
前記反射素子に設置され、前記反射素子が前記レーザ光を反射する角度を変えるように構成されている反射角度変更部
を有する、
請求項1に記載の除去装置。
【請求項10】
前記プラント構成機器の内部において前記反射素子を移動させるように構成された反射素子移動部
を有する、
請求項1に記載の除去装置。
【請求項11】
前記除去対象物が除去された前記金属表面に塗料を塗布する塗布部
を有する、
請求項1に記載の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料で形成された金属部材の金属表面は、金属材料と環境との間の相互作用によって、腐食を生じる場合がある。例えば、金属表面は、水膜、環境中の湿分、空気中の酸素等によって、酸化等の腐食反応が生じ、腐食生成物(錆等)が生成される場合がある。また、腐食を誘起する腐食成分が存在する場合には、腐食成分からなる付着物が付着することによって腐食が顕著に発生する。このため、金属部材において減肉等の不具合が生ずる場合がある。その結果、腐食の進行に伴って、金属部材においては、強度の低下が発生する可能性がある。
【0003】
例えば、熱交換器を構成する伝熱管等の金属部材において、腐食の進行に伴って腐食生成物や付着物に起因して熱伝導性能が低下する場合がある。
【0004】
上記のような不具合の発生を防止するために、腐食生成物や付着物を除去対象物として除去処理を行う必要がある。除去処理に関する技術として、様々な技術が提案されている。例えば、レーザ光を用いた除去処理等の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4012536号
【特許文献2】特許6893983号
【特許文献3】特許5574354号
【特許文献4】特開2002-022089号公報
【特許文献5】特開2020-026927号公報
【特許文献6】特開昭59-191584号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】小川一義、ほか3名、塩水腐食した熱間圧延鋼板の疲労強度低下要因の検討、P1211~P1216、1985年10月、公益社団法人 日本材料学会、材料、34巻、第385号
【非特許文献2】坂本達郎、ほか2名、塗装前の炭素鋼基材のさび性状と塗膜耐久性の関係に関する基礎検討、p307-310、2015年、公益社団法人 腐食防食学会、材料と環境、64巻
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、除去処理の対象が複雑な形状であるときには、除去処理を効率的に実行することが容易でない場合がある。
【0008】
例えば、レーザ光を用いた除去処理の場合、レーザ光は、コヒーレンスが高く、直線的に空間を伝播する。このため、レーザ装置においてレーザ光が出射するレーザ出射面に対して直接的に対面する金属表面に存在する除去対象物以外に、レーザ装置からレーザ光を直接的に照射することができない。その結果、レーザ光を用いた除去処理によって除去対象物を効率的に除去することは、困難である。除去対象物を内部に含む機器の開口よりもレーザ装置が大きい場合等においては、レーザ光を用いた除去処理によって除去対象物全体を効率的に除去することは困難であり、上記不具合が発生する。
【0009】
特に、燃料の燃焼によって生ずる燃焼ガスの熱を回収して蒸気を発生してタービンを回して発電を行う発電プラントを構成する熱交換器等のプラント構成機器の内部において、燃焼ガスに接触する金属表面に存在する除去対象物を除去する際には、上記不具合の発生が顕在化している。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、プラント構成機器の内部において除去処理を効率的に実行可能な除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の除去装置は、レーザ装置と反射素子とを備え、燃料の燃焼によって生ずる燃焼ガスを用いて発電を行う発電プラントを構成するプラント構成機器の内部において燃焼ガスに接触する金属表面に存在する除去対象物を除去する。レーザ装置は、レーザ光をレーザ出射面から出射する。反射素子は、レーザ装置が出射したレーザ光を反射する。ここでは、反射素子によって反射されたレーザ光が除去対象物に照射されることによって、除去対象物が金属表面から除去されるように、反射素子が設置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プラント構成機器の内部において除去処理を効率的に実行可能な除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態において、発電プラント1を模式的に示す図である。
図2A図2Aは、第1実施形態において、熱交換器6(図1参照)の要部を模式的に示す図である。
図2B図2Bは、第1実施形態において、熱交換器6(図1参照)の要部を模式的に示す図である。
図3図3は、第1実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。
図4A図4Aは、第1実施形態の除去装置80において、除去処理を模式的に示す図である。
図4B図4Bは、第1実施形態の除去装置80において、除去処理を模式的に示す図である。
図4C図4Cは、第1実施形態の除去装置80において、除去処理を模式的に示す図である。
図5図5は、第1実施形態の変形例の除去装置80を模式的に示す図である。
図6図6は、第2実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。
図7図7は、第2実施形態の変形例の除去装置80を模式的に示す図である。
図8図8は、第3実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。
図9図9は、第4実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。
図10図10は、第5実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
[A]発電プラントの構成
実施形態の除去装置80(図3参照)に関して説明する前に、除去装置80の除去対象物を含む発電プラント1について例示する。
【0015】
図1は、第1実施形態において、発電プラント1を模式的に示す図である。
【0016】
本実施形態の発電プラント1は、図1に示すように、ガスタービン2と、第1発電機3と、排気ダクト4と、熱交換器6を含む排熱回収ボイラ5と、煙突8と、水循環ライン9と、蒸気タービン10と、第2発電機11と、復水器12とを備える。
【0017】
本実施形態の発電プラント1は、燃料(例えば、天然ガス、石油、石炭等の化石燃料)の燃焼によって生ずる燃焼ガスGを用いて発電を行う火力発電プラントである。具体的には、本実施形態の発電プラント1は、例えば、コンバインドサイクル発電方式の火力発電プラントであって、ガスタービン2を内燃機関として用いた内燃力発電が行われると共に、その排熱で汽力発電が行われる。なお、発電プラント1は、コンバインドサイクル発電方式以外の方式であってもよい。
【0018】
本実施形態の発電プラント1では、上記したように、ガスタービン2の回転力が第1発電機3に伝達されることによって、内燃力発電が行われる。
【0019】
ガスタービン2から排出された燃焼ガスGは、排気ダクト4を介して、排熱回収ボイラ5に送られる。排熱回収ボイラ5では、内部に設置された熱交換器6において、水Wと燃焼ガスGとの間の熱交換が行われる。これにより、排熱回収ボイラ5では、水Wが蒸発して蒸気Sとなる。
【0020】
排熱回収ボイラ5を通過した燃焼ガスGは、排気ダクト4を介して、煙突8に送られる。そして、燃焼ガスGが煙突8から大気中に排出される。
【0021】
熱交換器6において蒸発した蒸気Sは、水循環ライン9を介して、蒸気タービン10に導入される。これにより、蒸気タービン10の回転力が第2発電機11に伝達されることによって、発電が行われる。
【0022】
蒸気タービン10を通過した蒸気は、復水器12に送られ、復水器12で凝縮されて水W(凝縮水)に戻される。復水器12で凝縮された水Wは、水循環ライン9を介して、再び、排熱回収ボイラ5に戻される。
【0023】
[B]熱交換器6の構成
図2Aおよび図2Bは、第1実施形態において、熱交換器6(図1参照)の要部を模式的に示す図である。
【0024】
図2Aおよび図2Bに示すように、熱交換器6は、複数の伝熱管13を備える。図2Aでは、伝熱管13の管軸方向(長手方向)が、紙面に沿った状態を示しており、図2Bでは、伝熱管13の管軸方向が、紙面に直交した状態を示している。
【0025】
図2Aおよび図2Bでは図示していないが、伝熱管13は、水循環ライン9を流れる水W(図1参照)が、内部を通過する。このとき、伝熱管13の内部を流れる水Wと伝熱管13の周囲を流れる燃焼ガスGとの間において熱交換が実行される。その結果、伝熱管13の内部を流れる水Wが蒸発して蒸気Sとなる。
【0026】
図2Aおよび図2Bに示すように、伝熱管13の外周面には、熱交換の効率を高めるために、熱交換フィン14が設けられている。熱交換フィン14は、例えば、伝熱管13の外周面に沿って巻き回されて、螺旋状に延びている。この他に、複数枚の熱交換フィン14が伝熱管13の管軸方向に沿って並ぶように、伝熱管13の外周面に設置されていてもよい。一対の伝熱管13が並ぶ間の間隔15、および、一対の熱交換フィン14が並ぶ間の間隔16は、狭隘部である。
【0027】
伝熱管13および熱交換フィン14は、鉄を主成分として含む金属材料(例えば、炭素鋼)で形成されている。伝熱管13および熱交換フィン14は、上述したように、燃焼ガスGに接触する金属表面を含む。
【0028】
図2Aおよび図2Bでは図示していないが、金属表面は、長年の使用や、燃焼ガスGに含有する物質の付着等に起因して、腐食が生じる。その結果、金属表面に腐食生成物や付着物が付着した状態になり、熱伝導性能が低下する場合がある。
【0029】
[C]除去装置80の構成
上記のような腐食生成物や付着物を除去対象物20として除去処理を実行するための除去装置80について図3を用いて説明する。
【0030】
図3は、第1実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。図3では、除去対象物20について除去処理を実行するときの除去装置80の状態を併せて示している。
【0031】
本実施形態の除去装置80は、図3に示すように、発電プラント1(図1参照)を構成するプラント構成機器70の内部において燃焼ガスに接触する金属表面に存在する除去対象物20を除去するために用いられる。
【0032】
ここでは、プラント構成機器70が構成部品71を含み、構成部品71の金属表面に存在する除去対象物20について、除去装置80を用いて除去する場合を示している。プラント構成機器70は、例えば、排熱回収ボイラ5(図1参照)であり、プラント構成機器70の構成部品71は、排熱回収ボイラ5において熱交換器6を構成する伝熱管13(図1参照)である。
【0033】
本実施形態の除去装置80は、図3に示すように、レーザ装置81と反射素子82とを備える。除去装置80を構成する各部について説明する。
【0034】
[C-1]レーザ装置81
レーザ装置81は、図3に示すように、レ-ザ発振器811と導波デバイスL81とレ-ザ出射部812とを含み、レーザ光Lをレーザ出射面S81から出射するように構成されている。
【0035】
レーザ装置81において、レ-ザ発振器811は、レーザ光Lの光源である。導波デバイスL81は、例えば、光ファイバを含み、レ-ザ発振器811から出射されたレーザ光Lをレ-ザ出射部812へ導く。レ-ザ出射部812は、レーザ出射面S81を含み、レ-ザ発振器811から出射されたレーザ光Lが導波デバイスL81を介してレーザ出射面S81からレーザ装置81の外部へ出射するように構成されている。
【0036】
ここでは、レーザ装置81は、除去対象物20を蒸発させるエネルギーを有するレーザ光Lを出射する。レーザ光Lは、パルス波、連続波のどちらでもよい。
【0037】
[C-2]反射素子82
反射素子82は、例えば、鏡であって、図3に示すように、レーザ装置81が出射したレーザ光Lを反射するように構成されている。
【0038】
除去対象物20について除去処理を実行するとき、反射素子82は、反射素子82によって反射されたレーザ光Lが除去対象物20に照射されることによって、除去対象物20が構成部品71の金属表面から除去されるように設置される。
【0039】
本実施形態では、反射素子82は、平面鏡であり、平面鏡がプラント構成機器70の内部に設置される。反射素子82は、レーザ装置81から出射され、プラント構成機器70の開口から内部に入ったレーザ光Lを反射し、レーザ光Lの進行方向を変える。これにより、反射素子82で反射されたレーザ光Lが除去対象物20に入射し、除去対象物20が蒸発する。
【0040】
反射素子82は、プラント構成機器70の開口よりも小さいサイズであり、プラント構成機器70の開口から内部に設置される。
【0041】
[D]除去処理方法
本実施形態において、除去装置80を用いて除去対象物20を除去する除去処理を実行する際には、まず、プラント構成機器70の内部に反射素子82を設置する。ここでは、図3に示したように、例えば、レーザ装置81のレーザ出射面S81に対して直接的に対面する金属表面以外の金属表面に存在する除去対象物20を除去するときに、反射素子82の設置を行う。反射素子82の設置は、例えば、除去処理を実行する作業者がプラント構成機器70の内部の状態を確認し、実行される。あるいは、必要に応じてレーザ装置81のレーザ出射面S81と反射素子82を棒や板状の接続部品で接続して一体化させて、内部に挿入して実行される。
【0042】
その後、レーザ装置81からレーザ光Lを出射し、反射素子82によって反射されたレーザ光Lが除去対象物20に照射される。これにより、除去対象物20が除去される。
【0043】
図4Aから図4Cは、第1実施形態の除去装置80において、除去処理を模式的に示す図である。
【0044】
図4Aから図4Cでは、除去対象物20が金属表面に存在する構成部品71(例えば、熱交換器6の伝熱管13等;図2A参照)の断面を示しており、除去対象物20を除去する除去処理の様子を図4Aから図4Cの順で示している。
【0045】
図4Aに示すように、構成部品71の金属表面には、除去対象物20が存在する。除去対象物20は、腐食生成物18および付着物19である。腐食生成物18は、燃焼ガスGによって構成部品71の材料(例えば、炭素鋼)が腐食することで生成された物質である。付着物19は、燃焼ガスGに含まれる成分が付着した物質であって、例えば、硫酸アンモニウムなどの物質を含む。
【0046】
図4Bに示すように、レーザ光Lを除去対象物20に照射する。本実施形態では、除去装置80において、レーザ装置81から出射されたレーザ光Lが、反射素子82で反射された後に、除去対象物20に入射する。
【0047】
これにより、図4B中の除去対象物20を拡大して示し、図4A中の除去対象物20に示すような形態で簡略化して図示する図4Cに示すように、本実施形態では、除去対象物20がレーザによって蒸発した腐食生成物、腐食成分、衝撃で飛散した微量な錆等の分解生成物21に分解される。
【0048】
ここでは、除去対象物20において特徴的な吸収波長に対応する波長を有するレーザ光Lを用いて除去処理が実行することで、除去対象物20を選択的かつ効率的に除去可能である。つまり、光と物質の相互作用であるレーザアブレーション効果を用いて、除去処理が実行される。レーザアブレーション効果を十分に得るために、除去対象物20を構成する化合物の吸収特性、除去対象物20の密度、除去対象物20の厚み、レーザ光Lのレーザ発振波長、レーザ光Lのレーザパワー密度等の因子が考慮される。
【0049】
除去対象物20に一定以上のエネルギー密度を持つレーザ光Lを照射することで、除去対象物20がレーザ光Lの光エネルギーを吸収して瞬間的に加熱状態になる。その結果、除去対象物20がプラズマ化し、分解生成物21として昇華する。なお、プラズマ化された物質は、再結合により、再生成物が生ずる場合があるが、粒子サイズが小さいため、構成部品71の機能低下が生じにくく、目視可能な塵埃を発生させにくい。
【0050】
[E]まとめ
以上のように、本実施形態の除去装置80は、レーザ装置81と、レーザ装置81が出射したレーザ光Lを反射する反射素子82とを備える。除去装置80は、反射素子82によって反射されたレーザ光Lが除去対象物20に照射されることによって、除去対象物20が金属表面から除去されるように、反射素子82がプラント構成機器70の内部に設置される。
【0051】
このため、本実施形態では、構成部品71においてレーザ出射面S81に直接的に対面する金属表面以外の金属表面に存在している除去対象物20に対しても、反射素子82を用いて、レーザ光Lを照射可能である。その結果、本実施形態では、レーザ光Lを用いた除去処理によって除去対象物20を効率的に除去可能である。
【0052】
なお、除去対象物20が除去された金属表面は、例えば、塗料が塗布されることによって塗布層で被覆される。この場合、除去対象物20が金属表面と塗布層との間に介在していないため、塗布層が金属表面から剥離することを抑制可能である。塗布は、金属表面について粗面化処理を施した後に実行してもよい。
【0053】
[F]変形例
上記実施形態の変形例について説明する。
【0054】
図5は、第1実施形態の変形例の除去装置80を模式的に示す図である。図5では、図3と同様に、除去対象物20について除去処理を実行するときの除去装置80の状態を併せて示している。
【0055】
図5に示すように、除去装置80は、複数の反射素子82を備え、複数の反射素子82をプラント構成機器70の内部に設置してもよい。そして、複数の反射素子82において、順次、レーザ光Lが反射することで、レーザ光Lを除去対象物20に照射してもよい。
【0056】
<第2実施形態>
[A]除去装置80の構成
図6は、第2実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。図6では、図3と同様に、除去対象物20について除去処理を実行するときの除去装置80の状態を併せて示している。
【0057】
図6に示すように、本実施形態の除去装置80は、反射素子82の形態が、第1実施形態の場合(図3参照)と異なる。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第1実施形態と同様である。このため、重複する構成については、同一の符号を付して適宜、説明を省略する。
【0058】
本実施形態の除去装置80において、反射素子82は、図6に示すように、平面鏡でなく、凹面鏡である。
【0059】
ここでは、凹面鏡である反射素子82は、反射したレーザ光Lの焦点が除去対象物20以外に位置するように、プラント構成機器70の内部に設置される。本実施形態では、反射したレーザ光Lの焦点が、プラント構成機器70を構成する構成部品71の内部に位置するように、反射素子82が設置される。例えば、外形が円柱状である構成部品71の中心軸にレーザ光Lの焦点が一致するように、反射素子82が設置される。また、反射したレーザ光Lの焦点が除去対象物20に位置してもよい。
【0060】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の除去装置80において、凹面鏡である反射素子82は、反射したレーザ光Lの焦点が除去対象物20以外に位置するように、プラント構成機器70の内部に設置される。このため、図6から判るように、出射面S81の位置や反射素子82に対する光の入射角度が変化しても、確実に構成部品71の表面にレーザ光Lが照射される。その結果、平面鏡を用いる場合よりも出射面S81を広い範囲に設置して、除去対象物20が金属表面から除去される。
【0061】
したがって、本実施形態では、除去対象物20の除去を省力して実行可能である。
【0062】
[C]変形例
上記実施形態の変形例について説明する。
【0063】
図7は、第2実施形態の変形例の除去装置80を模式的に示す図である。図7では、図6と同様に、除去対象物20について除去処理を実行するときの除去装置80の状態を併せて示している。
【0064】
図7に示すように、除去装置80を構成する反射素子82は、凹面鏡でなく、凸面鏡でもよい。
【0065】
この場合においても、上記の実施形態の場合と同様に、除去対象物20の広い範囲にレーザ光Lが照射される。その結果、レーザ光Lの焦点が除去対象物20に一致する場合よりも多い除去対象物20が金属表面から除去される。
【0066】
したがって、本変形例においても、除去対象物20の除去を効率的に実行可能である。
【0067】
<第3実施形態>
[A]除去装置80の構成
図8は、第3実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。図8では、図3と同様に、除去対象物20について除去処理を実行するときの除去装置80の状態を併せて示している。
【0068】
図8に示すように、本実施形態の除去装置80は、第1実施形態の場合(図3参照)と異なり、反射角度変更部83を備える。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第1実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0069】
本実施形態の除去装置80において、反射角度変更部83は、図8に示すように、
反射素子82に設置されており、反射素子82がレーザ光Lを反射する角度を変えるように構成されている。
【0070】
反射角度変更部83は、例えば、反射素子82を回動可能に支持しており、モータを駆動することによって、反射素子82の反射面の向きが変わるように構成されている。その他、圧電素子によって反射素子82の反射面を変形させることなどの様々な手段によって、反射素子82がレーザ光Lを反射する角度を変えるように構成されていてもよい。
【0071】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の除去装置80では、反射角度変更部83によって、反射素子82のレーザ光Lを反射する角度が変わる。このため、図8から判るように、除去対象物20の広い範囲にレーザ光Lが照射される。
【0072】
したがって、本実施形態では、除去対象物20の除去を効率的に実行可能である。
【0073】
<第4実施形態>
[A]除去装置80の構成
図9は、第4実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。図9では、図3と同様に、除去対象物20について除去処理を実行するときの除去装置80の状態を併せて示している。
【0074】
図9に示すように、本実施形態の除去装置80は、第1実施形態の場合(図3参照)と異なり、反射素子移動部84を備える。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第1実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0075】
本実施形態の除去装置80において、反射素子移動部84は、図9に示すように、プラント構成機器70の内部において反射素子82を移動させるように構成されている。
【0076】
ここでは、反射素子移動部84は、例えば、レール841とワイヤ842とを含む。レール841は、例えば、直線状であって、反射素子82が直線的に移動するようにガイドする。ワイヤ842は、反射素子82に取り付けられる。例えば、作業者がワイヤ842を操作することで、反射素子82がレール841に沿って移動する。その他、モータなどの様々な駆動手段によって、反射素子82が移動するように構成されていてもよい。また、このレール841は左右方向(紙面に対して横方向)に設置している例を示したが、上下方向(紙面に対して垂直方向)または構成部品71の長軸方向(紙面に対して奥から手前方向)に設置しても良い。
【0077】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の除去装置80では、反射素子移動部84によって、除去対象物20に対する反射素子82の位置が変わる。このため、図9から判るように、除去対象物20の広い範囲にレーザ光Lが照射される。
【0078】
したがって、本実施形態では、除去対象物20の除去を効率的に実行可能である。
【0079】
<第5実施形態>
[A]除去装置80の構成
図10は、第5実施形態の除去装置80を模式的に示す図である。図10では、除去対象物20について除去処理を実行した後の除去装置80の状態を併せて示している。
【0080】
図10に示すように、本実施形態の除去装置80は、第1実施形態の場合(図3参照)と異なり、塗布部86を備える。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第1実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0081】
本実施形態において除去対象物20が除去された後の金属表面は、除去装置80がレーザ光Lの照射が継続されることで(例えば、図3参照)、構成部品71の表面が粗面化される。
【0082】
塗布部86は、上記のように粗面化処理が施された金属表面に塗料を塗布するために、プラント構成機器70の内部に設置される。具体的には、塗布部86は、塗装ノズルを含む塗装装置を含む。
【0083】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の除去装置80では、塗布部86を備える。
【0084】
本実施形態では、除去対象物20が除去された金属表面について粗面化し、塗布が行われる。この場合、除去対象物20が金属表面と塗布層との間に介在していないため、塗布層が金属表面から剥離することを抑制可能である。
【0085】
<その他>
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することができる。本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1:発電プラント、2:ガスタービン、3:第1発電機、4:排気ダクト、5:排熱回収ボイラ、6:熱交換器、8:煙突、9:水循環ライン、10:蒸気タービン、11:第2発電機、12:復水器、13:伝熱管、14:熱交換フィン、15:間隔、16:間隔、18:腐食生成物、19:付着物、20:除去対象物、21:分解生成物、70:プラント構成機器、71:構成部品、80:除去装置、81:レーザ装置、82:反射素子、83:反射角度変更部、84:反射素子移動部、86:塗布部、811:レ-ザ発振器、812:レ-ザ出射部、841:レール、842:ワイヤ、G:燃焼ガス、L:レーザ光、L81:導波デバイス、S81:レーザ出射面、W:水、S:蒸気
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10